説明

反射型同一線上ホログラフィック記憶システム

【課題】本発明は、物体光(15)と参照光(2)との間の改善された重複が達成される反射型同一線上ホログラフィック記憶システム(1)に関する。
【解決手段】同一線上ホログラフィック記憶システム(1)は、物体光(15)上へデータページをインプリントする空間光変調器(14,22)を有し、空間光変調器を、ホログラフィック記憶媒体(9)を介して透過した参照光(2)の一部(10)の光路内に設置し、物体光(15)を、透過した参照光(10)上へデータページをインプリントすることによって生成する。ホログラフィック記憶媒体の内部の参照光(2)の直径を、物体光(15)の直径と適合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体光と参照光との間の改善された重複が達成される反射型同一線上ホログラフィック記憶システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラフィックデータ記憶において、デジタルデータは、二つのコヒーレントなレーザビームの重ね合わせによって作り出される干渉パターンを記録することによって記憶され、ここで、一つのビーム、いわゆる「物体光」は空間光変調器によって変調され、記録される情報を運搬する。第二のビームは、参照光としての役割を果たす。干渉パターンは、記憶材料の特定の性質を変更し、この変更は干渉パターンの局所的な強度に依存する。記録されたホログラムの読み取りは、記録中と同じ条件を用いて、ホログラムを参照光で照射することによって実行される。この結果、記録された物体光が生成される。
【0003】
ホログラフィックデータ記憶の一つの利点はデータ容量の増大である。従来型の光学記憶媒体と異なり、ホログラフィック記憶媒体の容量は、単なる少数の層ではなく、情報を記憶するために用いられる。ホログラフィックデータ記憶の一つの更なる利点は、例えば、二つのビーム間の角度を変えること又は多重化シフトを用いること等によって同じ容量で多数のデータを記憶することの実現性である。さらに、単一ビットを記憶するのではなく、データはデータページとして記憶される。一般的に、データページは、明暗パターンのマトリックス、すなわち、複数ビットをコード化する二次元バイナリアレイ又はグレイ値のアレイからなる。これは記憶密度の増大に加え、データ転送速度の増大を達成することを可能にする。データページは、空間光変調器(spatial light modulator:SLM)によって物体光上にインプリントされ、検出器アレイで検出される。SLMの分かりやすい例は、値「0」を有する画素が光を遮る場合、及び値「1」を有する画素が光を透過又は反射する場合は、振幅SLMであり、情報ビット「0」と「1」(逆もまた同様)が各々「0」と「π」の位相シフトによって表現される場合は、位相SLMである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
WO2005/109410 A1において、直線ホログラフィック記憶システムが開示される。このシステムにおいて、反射空間光変調器は、ホログラフィック記憶媒体を介して透過した参照光の光路内に設置される。物体光を、透過した参照光から生成し、ホログラフィック記憶媒体に向けて、それが参照光と干渉する。同一線上の設定及び比較的単純な光学系が、コンパクトかつ費用効率の高いシステムを可能にする。同時に利用できるレーザ出力は、非常に効率的に用いられる。同じレーザビームが参照光と物体光とに用いられる場合、要求されるレーザ出力を、ほぼ二つの要素によって減少する。
【0005】
本発明の目的は、改善された反射型同一線上ホログラフィック記憶システムを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、物体光上にデータページをインプリントする空間光変調器を有し、空間光変調器を、ホログラフィック記憶媒体を介して透過した参照光の一部の光路内に設置し、物体光を、参照光上へデータページをインプリントすることによって生成する同一線上ホログラフィック記憶システムであって、ホログラフィック記憶媒体の内部の参照光の直径を、物体光の直径と適合することによって、この目的を達成する。
【0007】
実験的研究は、参照光と物体光との間の重複が期待されたほどではないことを示した。参照光の直径は一般的に、物体光の直径より小さい。これは、ホログラムが非常にローパスフィルタリングされることを意味し、粗悪な品質を引き起こす。ホログラフィック記憶媒体の内部の参照光の直径と物体光の直径とを適合することによって、この問題は解決される。参照光及び物体光は、極めて完全にホログラフィック記憶媒体の内部のフーリエ面において重複する。したがって、ホログラフィック材料は非常に効率的に用いられ、高いデータ容量をもたらす。
【0008】
利点として、ホログラフィック記憶媒体の内部の参照光の直径を、物体光の焦点に関連して参照光の焦点をシフトすることによって物体光の直径と適合する。これは、参照光の光路内に第1のレンズを設置することによって達成される。第2のレンズは、好ましくは第1のレンズによって導入された位相変化についての補正のために提供される。最適な補正のために、第2のレンズの焦点距離は、第1のレンズの−2倍の焦点距離である。レンズ使用の利点は、ずれに非常に敏感でないことである。
【0009】
代替の方法として、ホログラフィック記憶媒体の内部の参照光の直径を、平行でない参照光を用いることによって物体光の直径と適合する。この目的のために、利点として、光源によって放出された参照光を平行にするために提供される平行レンズがわずかにシフトされる。この解決法は、追加の要素が光路に必要とされないという利点を有する。
【0010】
本発明の更なる実施例によると、ホログラフィック記憶媒体の内部の参照光の直径を、参照光の焦点を拡大することによって物体光の直径と適合する。これは、参照光の光路内に設置された第1の位相板で有利に達成される。第1の位相板は、好ましくは第1の位相板によって導入された位相変化についての補正のために提供される。最適な補正のために、第2の位相板の位相シフトは、第1の位相板の−1/2倍の位相シフトである。もちろん、第1及び第2の位相板と第1及び第2のレンズとを各々、同様に結合することが可能である。この方法において、位相板は参照光の直径の拡大を支援する。
【0011】
利点として、空間光変調器は、ホログラフィック記憶媒体へ引き返して物体光を反射する。この方法では、ホログラフィック記憶媒体が設置される場合、参照光及び物体光は、対物レンズのフーリエ面において完全に重複する。したがって、ホログラフィック材料が非常に効率的に用いられ、データ容量を増大する。物体光の反射は、好ましくは画素が反射可能な状態と透過可能な状態又は吸収可能な状態との間で切替可能な空間光変調器によって達成される。振幅及び/又は位相に影響を与える空間光変調器は、同様に適用可能である。代替の方法として、デジタルミラー装置を用いる。後者では、空間光変調器は、光軸に関して有利に傾く。全ての上記の解決法は、物体光の光路外のデータページのオフ切替された画素の光を容易に方向付けることを可能にする。
【0012】
よりよい理解のために、本発明は図面の参照とともに以下の説明においてより詳細に説明されることができる。本発明は、この実施例に限定されず、特定される特徴もまた、本発明の範囲から逸脱することなく便宜上組み合わせられる及び/又は変更されることができることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】周知の反射型同一線上ホログラフィック記憶システムを概略的に描く図である。
【図2】本発明による反射型同一線上ホログラフィック記憶システムを説明するための図である。
【図3】参照光と物体光の焦点域を描く図である。
【図4】本発明による反射型同一線上ホログラフィック記憶システムの他の設定を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、周知の反射型同一線上ホログラフィック記憶システム1を概略的に描く。レーザ3によって放出され、レンズ4によって平行化されたレーザビーム2を、非偏光ビームスプリッタ5によって対物レンズ8に向かって光路をそらす。対物レンズ8は、ビームをホログラフィック記憶媒体9に焦点を合わせる。ホログラフィック記憶媒体は、二つのカバー層9a、9b及びホログラフィック層9cを有する。透過したビーム10を、追加の対物レンズ11によって平行化し、反射可能な空間光変調器(SLM)14上へ光学バイナリ位相板13を介して伝送する。SLM14の画素を、反射可能な状態と透過可能又は吸収可能な状態との間で切り替えることができる。SLM14は、ホログラフィック記憶媒体9へ引き返して入射光線10の一部15を反射する。バイナリ位相板13は、SLMと適合した画素であり、反射光15のフーリエピークを減少する。非偏光ビームスプリッタ5からホログラフィック記憶媒体9に向かって進んだ光線2は参照光であり、一方でホログラフィック記憶媒体9に向かって反射可能なSLM14によって反射された光線15は物体光である。反射可能なSLM14は、物体光15の前方の波上へデータをインプリントするために用いられる。二つのビーム2,15は、ホログラフィック記憶媒体内で干渉し、ホログラムを作成する。
【0015】
情報を読み出すために、反射可能なSLM14を切り替え、レーザ3から入射する光は、ホログラフィック記憶媒体9に向かって反射されないような状態となる。ホログラフィック記憶媒体9は、対物レンズ8を経由したレーザ3によって放出された光線2によって照射される。ホログラフィック記憶媒体9内に記録されたホログラムは、入射光線2の一部17を映し、物体光17を再構築し、それは記憶されたデータページに対応する。アレイ検出器21に向かうリターンパス上で、物体光17は、非偏光ビームスプリッタ5を通過する。選択的には、フーリエフィルタ19は、二つのレンズ18及び20の間に導入され、4fイメージングシステムを形成する。フーリエフィルタ19は、バイナリ位相板13によって生成された高い周波数の要素を打ち消すことを可能にする。バイナリ位相板13が個々の画素からなる位相板である場合、これは特に有用である。
【0016】
本発明にかかる反射型同一線上ホログラフィック記憶システムを、図2によって説明する。本ホログラフィック記憶システムは、図1のシステムと同一である。しかしながら、二つの追加のレンズ6,12が光路に含まれる。第1のレンズ6は焦点距離
【0017】
【数1】

【0018】
を有し、非偏光ビームスプリッタ5と対物レンズ8との間に配置される。この第1のレンズ6の機能は、ホログラム層9cの前面に向かって焦点をシフトすることである。焦点距離
【0019】
【数2】

【0020】
を有する第2のレンズ12は、対物レンズ11とバイナリ位相板13との間に設置される。第2のレンズ12の機能は、第1のレンズ6によって導入された位相変化についての補正をすることである。反射可能な設定のため、第2のレンズ12は2回通過する。結果的に、等式
【0021】
【数3】

【0022】
が実行される場合、レンズ6,12はお互いを補正する。従って、第1のレンズ6が凸レンズである場合、第2のレンズは凹レンズである。
【0023】
非偏光ビームスプリッタ5を、偏光ビームスプリッタに置換することができる。この場合、追加の1/4波長板7を必要とする。もちろん、第1のレンズ6と対物レンズ8との間に非偏光ビームスプリッタ5を設置することも可能である。この方法において、第1のレンズ6は、アレイ検出器の光路上の再構成された物体光17を変更しない。
【0024】
参照光2及び物体光15の焦点域を、図3に示す。カバーレンズ9a,9bは、簡単のため示さない。二つの追加のレンズ6,12、SLM14及びアレイ検出器21は、異なる4f−システムの共役像平面において設置される。結果的に、二つの追加のレンズ6,12は、任意の共役像平面における光線の直径を変えず、特にSLM13の位置及びアレイ検出器21の位置を変えない。説明されるように、参照光2の焦点を、ホログラム層9cの前面に対するΔfの量によってシフトする。結果として、物体光との重複(図3の太線)は、ホログラフィック材料内でほぼ完全である。
【0025】
以下において、追加のレンズ6,12の焦点距離は、例示的なホログラフィック記憶媒体のために算出されることができる。フーリエ面におけるホログラムの直径Dは、
【0026】
【数4】

【0027】
である。ただし、
【0028】
【数5】

【0029】
は対物レンズ11の焦点距離であり、λは物体光15の波長であり、dはSLM14の画素サイズである。
【0030】
【数6】

【0031】
=5mm、λ=405nm、d=13,6μmとし、フーリエ面内のホログラムの直径は、300μmである。焦点からの距離xにおいて参照光2の直径
【0032】
【数7】

【0033】
は、
【0034】
【数8】

【0035】
によって与えられる。参照光2の焦点を300μmに拡大するために、焦点を少なくとも230μm近くシフトする必要がある。
【0036】
レイトレーシングプログラム(ZEMAX)を用いたシミュレーションは、図2における第1の追加のレンズ6が100mmと120mmとの間の焦点距離を有する場合、そのような焦点シフトが達成されることができることを示す。結果的に、第2のレンズ12の焦点距離は、−240mmと−200mmとの間である。このシミュレーションに関して、対物レンズ8,11の焦点距離
【0037】
【数9】

【0038】
は5mmであり、媒体の屈折率はn=1である。n>1に関して、同じ焦点距離が追加のレンズ6,12に必要とされるが、計算はより難しくなる。
【0039】
本発明にかかるホログラフィック記憶システム1のその他の設定を図4に示す。デジタルミラー装置22(digital mirror device:DMD)は、反射可能なSLM14として用いられる。通例的に、DMD22を、入射光を逆反射するために光軸に関して約12°の角度で回転しなければならない。アレイ検出器21及びDMD22を4fシステムの共役面内に設置することを確実にするために、図に示されるように、アレイ検出器は同じ量傾いている。この方法では、光路長は、全ての画素に関して一定に保たれる。
【0040】
追加のレンズ6,12の代わりに、位相板を用いて、ホログラムのフーリエ面内の参照光2の直径を拡大することも可能である。しかしながら、第1の板の位相シフトは、各々の位置において第2の位相板の−2倍の位相シフトとしなければならない。レンズ使用の利点は、ずれに非常に敏感でないということである。
【0041】
更なる代替の方法は、平行でない光線を用いることによって、すなわち平行レンズ4をシフトすることによって、追加のレンズ6,12なしで参照光2の焦点をシフトすることである。この場合では、物体光15の光路が変更され、フーリエ面においてホログラムの直径を増加する。これは最大データ密度の減少に対応する。
【0042】
好ましくは、ホログラフィック記憶媒体9を、反射を減少するために防反射コーティングする。同時にカバー層9a,9bはむしろ厚くすべきであり、ホログラフィック記憶媒体9の外側の層での反射は、不要なホログラムを作り出さない。ホログラフィック記憶媒体9の全体の厚さは、例えば、3mmとすることができる。厚いカバー層9a,9bは、参照光の直径が大きいことを意味し、不要なホログラムは非常に弱くなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体光上にデータページをインプリントする空間光変調器を有し、前記空間光変調器を、ホログラフィック記憶媒体を介して透過した参照光の一部の光路内に設置し、前記物体光を、前記参照光上へデータページをインプリントすることによって生成する同一線上ホログラフィック記憶システムであって、
前記ホログラフィック記憶媒体の内部の前記参照光の直径を、前記物体光の直径と適合することを特徴とする同一線上ホログラフィック記憶システム。
【請求項2】
前記ホログラフィック記憶媒体の内部の前記参照光の直径を、前記物体光の焦点に関連して前記参照光の焦点をシフトすることによって前記物体光の直径と適合することを特徴とする請求項1に記載の同一線上ホログラフィック記憶システム。
【請求項3】
前記参照光の焦点をシフトする第1のレンズを有することを特徴とする請求項2に記載の同一線上ホログラフィック記憶システム。
【請求項4】
前記第1のレンズによって導入された位相変化についての補正をする第2のレンズをさらに有することを特徴とする請求項3に記載の同一線上ホログラフィック記憶システム。
【請求項5】
前記第2のレンズの焦点距離は、前記第1のレンズの−2倍の焦点距離であることを特徴とする請求項4に記載の同一線上ホログラフィック記憶システム。
【請求項6】
前記ホログラフィック記憶媒体の内部の前記参照光の直径を、平行でない参照光を用いることによって前記物体光の直径と適合することを特徴とする請求項1に記載の同一線上ホログラフィック記憶システム。
【請求項7】
前記ホログラフィック記憶媒体の内部の前記参照光の直径を、前記参照光の焦点を拡大することによって前記物体光の直径と適合することを特徴とする請求項1に記載の同一線上ホログラフィック記憶システム。
【請求項8】
前記参照光の焦点を、第1の位相板を用いて拡大することを特徴とする請求項1に記載の同一線上ホログラフィック記憶システム。
【請求項9】
前記第1の位相板によって導入された位相変化についての補正をする第2の位相板をさらに有することを特徴とする請求項8に記載の同一線上ホログラフィック記憶システム。
【請求項10】
前記第2の位相板の位相シフトは、前記第1の位相板の−1/2倍の位相シフトであることを特徴とする請求項9に記載の同一線上ホログラフィック記憶システム。
【請求項11】
同一線上ホログラフィックデータ記憶の方法であって、
参照光をホログラフィック記憶媒体上へ照射するステップと、
物体光を得るために前記ホログラフィック記憶媒体を介して透過した前記参照光の一部上へデータページをインプリントするステップと、
前記ホログラフィック記憶媒体上へ前記物体光を照射するステップと、
前記参照光と前記物体光との間の干渉によって前記ホログラフィック記憶媒体内にホログラムを生成するステップとを有し、
前記ホログラフィック記憶媒体内の前記参照光の直径を、前記物体光の直径と適合することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−205792(P2009−205792A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−42781(P2009−42781)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing 
【住所又は居所原語表記】46 Quai A. Le Gallo, F−92100 Boulogne−Billancourt, France
【Fターム(参考)】