説明

反射鏡基体の収容トレイ、並びにこれを用いた集積物及びその梱包体

【課題】複数の反射鏡基体Wを無駄なスペースを少なくして収容することができ、しかも、トレイ自身の薄肉化、軽量化によって運搬コストを低減させることができる反射鏡基体の収容トレイ10を提供すること。
【解決手段】反射鏡基体(WA、WB)を伏せた姿勢で多数並列させて収容する収容トレイ(10A、10B)において、各反射鏡基体(WA、WB)を収容する収容部1が、一の反射鏡基体WBの椀状部Bの開口縁部が載置される底板部11と、一の反射鏡基体WBを水平方向に位置決めする突起部12と、底板部11の中央に形成され、口縁部131が他の反射鏡基体WAの椀状部Bの外面に当接する支持開口部13と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射鏡基体を伏せた姿勢で多数並列させて収容する反射鏡基体の収容トレイと、この収容トレイを用いた集積物及びその梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
照明装置、映写機等の光源ランプは、高輝度のものになるほど発熱が著しく、光源ランプと組み合わせて使用する反射鏡の温度上昇も激しくなる。特に近年は、各分野において光源ランプの高輝度化及び小型化が進んでおり、反射鏡部分は、550℃を超える高温となる。一般に反射鏡は、前方へ開口した凹曲面を有する略椀状の反射鏡基体と、この反射鏡基体の凹曲面にコーティングされた反射膜とから成り、そのいずれにも高温に耐える耐熱特性が必要となる。そのため、現在では、反射鏡基体を熱膨張係数の低いホウケイ酸ガラスや結晶化ガラスから形成している。
【0003】
従来、かかる反射鏡基体の運搬・搬送は、格子状の仕切りで収容空間を区画した段ボールケース内に複数の反射鏡基体を収容し、これら段ボールケース同士を積み重ねた状態で行っていた。しかしながら、この段ボールケースによる運搬は、反射鏡基体が略椀状を成しているため、収容空間に無駄なスペースが多く、反射鏡基体の運搬コストや保管コストが嵩む問題があった。
【0004】
また、現在までに、CRTディスプレイ用ファンネルを、無駄なスペースを少なくして運搬する梱包用パッドが提案されている(例えば下記特許文献1参照)。しかしながら、この梱包用パッドは、パッドの枠部同士を当接させて積み重ねていたため、パッド自体に所定の強度が必要であり、パッド自体の薄肉化、軽量化による運搬コストの低減化に限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−43943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の反射鏡基体の運搬・搬送に上記のような問題があったことに鑑みて為されたもので、反射鏡基体を無駄なスペースを少なくして収容することができ、しかも、トレイ自身の薄肉化、軽量化によって運搬コストを低減させることができる反射鏡基体の収容トレイと、この収容トレイを用いた集積物及びその梱包体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前方へ開口した凹曲面を有する椀状部と該椀状部の後部に突設されたネック部とを備えた反射鏡基体を、前記凹曲面を下方へ向けた姿勢で多数並列させて収容する反射鏡基体の収容トレイであって、
前記反射鏡基体をそれぞれ収容する収容部が、一の反射鏡基体の椀状部の開口縁部が載置される底板部と、前記底板部に載置された前記一の反射鏡基体を水平方向に位置決めする突起部と、前記底板部の中央において下方に開口するよう形成された支持開口部と、を備え、前記支持開口部は、前記反射鏡基体を収容した複数の当該収容トレイを上下に重ねたとき、該支持開口部の口縁部が下側の収容トレイに収容された他の反射鏡基体の椀状部の外面と当接するよう形成されていることを特徴としている。
【0008】
また、本発明は、前記支持開口部の口縁部から上方へ隆起形成された倒立カップ状の仕切部をさらに備え、前記底板部に載置された前記一の反射鏡基体の椀状部の凹曲面と前記仕切部の外面との間に隙間が確保されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記突起部が、前記一の反射鏡基体よりも開口縁部の外寸が大きい反射鏡基体を載置し得る段差部を備えていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記収容トレイを用いて複数の前記反射鏡基体を多段積みして成る集積物を特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記集積物を梱包容器内に収容して成る梱包体を特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る反射鏡基体の収容トレイによれば、各収容部の底板部上に一の反射鏡基体の開口縁部を載置するとともに、その底板部の中央に形成された支持開口部の口縁部を他の反射鏡基体の椀状部の外面に当接させることができるので、複数の反射鏡基体を上下に多段積みしたとき、各反射鏡基体の椀状部の開口空間内に直下の反射鏡基体のネック部を挿入することができ、複数の反射鏡基体を無駄なスペースを少なくして収容することができ、反射鏡基体の運搬コストや保管コストを低減させることができる。
【0013】
しかも、複数の反射鏡基体を上下に多段積みしたとき、上方の反射鏡基体の荷重を、支持開口部の口縁部を介して、直下の伏せた姿勢の反射鏡基体の椀状部の外面で支えることができるので、上方の反射鏡基体の荷重を収容トレイの枠部同士を当接させて支える必要がなく、収容トレイ自体を薄肉化、軽量化することができる。このことによっても、反射鏡基体の運搬コストの低減を図ることができる。
【0014】
また、各収容部の支持開口部が仕切部を備える反射鏡基体の収容トレイによれば、複数の反射鏡基体を上下に多段積みしたとき、各段の反射鏡基体同士を隔離することができ、各反射鏡基体の凹曲面の清浄性を維持することができる。また、仕切部の外面と反射鏡基体の凹曲面との間に所定の隙間が確保されているので、仕切部との接触により反射鏡基体の凹曲面に傷、汚れ等を付けるおそれもない。
【0015】
また、各収容部の突起部が段差部を備える反射鏡基体の収容トレイによれば、開口縁部のサイズが異なる複数種類の反射鏡基体を収容することができ、汎用性に優れている。
【0016】
また、本発明に係る反射鏡基体の収容トレイを用いて複数の反射鏡基体を多段積みして成る集積物、及びこの集積物を梱包容器内に収容して成る梱包体によれば、多数の反射鏡基体を安全かつ確実に運搬することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態の反射鏡基体の収容トレイの平面図である。
【図2】図1中のA1−A1線矢視断面端面図である。
【図3】図1中のA2−A2線矢視断面端面図である。
【図4】収容される反射鏡基体の縦断面図である。
【図5】本実施形態の反射鏡基体の収容トレイの収容部内に反射鏡基体を収容した状態の部分拡大断面端面図である。
【図6】本実施形態の反射鏡基体の収容トレイを用いて複数の反射鏡基体を上下に段積みした状態の部分拡大断面端面図である。
【図7】本実施形態の反射鏡基体の収容トレイの収容部内に開口縁部の外寸が大きい他の反射鏡基体を収容した状態の部分拡大断面端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施形態の反射鏡基体の収容トレイ10は、図1〜図3に示すように、反射鏡基体を収容するための収容部1が複数、横並び状態で連設され、これら複数の収容部1が枠部2により囲まれて構成されている。本実施形態の収容トレイ10は、合成樹脂材の真空成形により平面視矩形の大略平板形状に形成されており、計42個(縦6個×横7個)の収容部1を有する。各収容部1に一つずつ反射鏡基体が収容される。
【0019】
図4に示すように、反射鏡基体Wは、前方へ開口した凹曲面Cを有する椀状部Bと、この椀状部Bの後部に突設されたネック部Nとを備えている。椀状部Bの凹曲面Cは、目的の照度を得るための理想曲面に一致するように成形されており、後の工程で、凹曲面Cに反射膜がコーティングされる。したがって、反射鏡基体Wの運搬・搬送時において、椀状部Bの凹曲面Cに傷、汚れ等を付けることは許されない。また、既に反射膜がコーティングされた反射鏡基体Wを運搬・搬送する場合、凹曲面Cの反射膜に傷、汚れ等を付けることも許されない。他方、反射鏡基体Wのネック部Nは、後の工程で、図4中の点線で図示するように、光源ランプを挿入固定するための支持孔hが開設される。
【0020】
収容トレイ10の各収容部1は、図1〜図3に示すように、反射鏡基体Wの椀状部Bの開口縁部Eを載置し得る略正方形状の底板部11と、底板部11を取り囲んで上方へ突設され、底板部11上に載置された反射鏡基体Wを水平方向に位置決めする突起部12と、底板部11の中央に形成された支持開口部13と、底板部11の四隅において下方へ突設された脚部14と、から構成されている。このことで、図5に示すように、各収容部1において、底板部11が反射鏡基体Wの椀状部Bの開口縁部Eを下方から支えるとともに、突起部12がその開口縁部Eを側方から支えることによって、反射鏡基体Wが凹曲面Cを下方へ向けた姿勢(伏せた姿勢)で収容される。
【0021】
各収容部1の支持開口部13は、その口縁部131が他の反射鏡基体の椀状部Bの外面に当接可能に形成されている。したがって、図6に示すように、一の収容トレイ10Aの各収容部1内に一の反射鏡基体WAを収容した後、各一の反射鏡基体WA上に他の収容トレイ10Bを被せれば、他の収容トレイ10Bの各収容部1の支持開口部13の口縁部131を、一の反射鏡基体WAの椀状部Bにおけるネック部N寄りの外面に当接させることができる。その後、他の収容トレイ10Bの各収容部1内に他の反射鏡基体WBを収容し、これらの作業を繰り返すことによって、複数の反射鏡基体(WA、WB)を上下方向に多段積みすることができる。
【0022】
また、本実施形態の支持開口部13は、図5に示すように、その口縁部131から上方へ隆起形成された倒立カップ状の仕切部15を備えている。仕切部15は、口縁部131から上方へ立設された筒状の周壁部151と周壁部151の上部を覆う天板部152とから成り、下方に向かって開口している。そして、仕切部15の外面と、底板部11上に載置された反射鏡基体Wの凹曲面Cとの間に所定の隙間S1が確保され、また、図6に示すように、複数の反射鏡基体(WA、WB)を多段積みしたとき、仕切部15の内面と、一の反射鏡基体WAのネック部Nとの間に所定の隙間S2が確保されるように形成されている。
【0023】
本実施形態の突起部12は、図5に示すように、その高さ方向の中程に段差部121を備えている。このことで、本実施形態の収容トレイ10は、図7に示すように、上記反射鏡基体W(WA、WB)よりも開口縁部Eの外寸が大きい他の反射鏡基体WCを段差部121上に載置することによって、各収容部1内に他の反射鏡基体WCを収容することができる。なお、図7では、反射鏡基体WCの開口縁部Eに設けられた鍔部Fを段差部121上に載置した例を図示しているが、開口縁部Eの鍔部Fが設けられていない部分を段差部121上に載置することも可能であり、また、鍔部を持たない反射鏡基体を段差部121上に載置することも可能である。同様に、図5において、鍔部を持たない反射鏡基体を底板部11上に載置することも可能である。
【0024】
このように本実施形態の反射鏡基体の収容トレイ10によれば、各収容部1の底板部11上に一の反射鏡基体の開口縁部Eを載置するとともに、その底板部11の中央に形成された支持開口部13の口縁部131を他の反射鏡基体の椀状部Bの外面に当接させることができるので、本実施形態の反射鏡基体の収容トレイ10を用いて複数の反射鏡基体を上下に多段積みしたとき、各反射鏡基体の椀状部Bの開口空間内に直下の反射鏡基体のネック部Nを挿入することができ、複数の反射鏡基体を無駄なスペースを少なくして収容することができ、反射鏡基体の運搬コストや保管コストを低減させることができる。
【0025】
しかも、複数の反射鏡基体を上下に多段積みしたとき、上方の反射鏡基体の荷重を、支持開口部13の口縁部131を介して、直下の伏せた姿勢の反射鏡基体の椀状部Bの外面で支えることができる。したがって、上方の反射鏡基体の荷重を、収容トレイ10の枠部2同士を当接させて支える必要がなく、収容トレイ10自体を薄肉化、軽量化することができる。このことによっても、反射鏡基体の運搬コストの低減を図ることができる。
【0026】
なお、実際に本実施形態の反射鏡基体の収容トレイ10を用いて反射鏡基体を運搬する際には、図6に示すように、複数の収容トレイ(10A、10B...)を用いて複数の反射鏡基体(WA、WB...)を上下に多段積みした集積物の状態とし、当該集積物を例えばダンボール箱や樹脂製のコンテナ容器などの梱包容器内に収めた梱包体として運搬することができる。これら集積物または梱包体によれば、多数の反射鏡基体を安全かつ確実に運搬することができる。
【0027】
また、本実施形態の反射鏡基体の収容トレイ10によれば、各収容部1の支持開口部13が仕切部15を備えているので、複数の反射鏡基体を上下に多段積みしたとき、各段の反射鏡基体同士を隔離することができ、各反射鏡基体の凹曲面Cの清浄性を維持することができる。また、仕切部15の外面と反射鏡基体の凹曲面Cとの間に所定の隙間S1が確保されているので、仕切部15との接触により反射鏡基体の凹曲面Cに傷、汚れ等を付けるおそれもない。なお、本実施形態は一例であり、本発明に係る反射鏡基体の収容トレイは、仕切部15を備えない態様としてもよい。仕切部15を省略することで、収容トレイの製造コストを低減することができる。
【0028】
また、本実施形態の反射鏡基体の収容トレイ10によれば、各収容部1の突起部12が段差部121を備えているので、開口縁部Eのサイズが異なる複数種類の反射鏡基体を収容することができ、汎用性に優れている。本実施形態では、二種類の反射鏡基体を載置可能な二段構造の段差部121を例示しているが、本発明に係る収容トレイにおいては、段差部を三段以上の構成としてもよい。
【0029】
以上、本実施形態の反射鏡基体の収容トレイ10について説明したが、本発明はその他の形態でも実施することができる。例えば、上記実施形態では、各収容部1の底板部11を平面視略正方形状に形成しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、円形状等の他の平面視形状に形成してもよい。収容すべき反射鏡基体の開口縁部の形状に応じて種々の設計変更が可能である。また、必ずしも反射鏡基体の開口縁部の全周を底板部で支える必要はなく、開口縁部を部分的に底板部で支えるようにしてもよい。
【0030】
本発明は、その他、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づいて種々の改良、修正、変形を加えた態様で実施し得るものである。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内でいずれかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施してもよく、また、一体に構成されている発明特定事項を複数の部材から構成したり、複数の部材から構成されている発明特定事項を一体に構成した形態で実施してもよい。
【符号の説明】
【0031】
10 反射鏡基体の収容トレイ
1 収容部
11 底板部
12 突起部
121 段差部
13 支持開口部
131 口縁部
15 仕切部
W、WA、WB、WC 反射鏡基体
B 椀状部
C 凹曲面
E 開口縁部
N ネック部
S1 反射鏡基体の凹曲面と仕切部の外面との間の隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方へ開口した凹曲面を有する椀状部と該椀状部の後部に突設されたネック部とを備えた反射鏡基体を、前記凹曲面を下方へ向けた姿勢で多数並列させて収容する反射鏡基体の収容トレイであって、
前記反射鏡基体をそれぞれ収容する収容部が、
一の反射鏡基体の椀状部の開口縁部が載置される底板部と、
前記底板部に載置された前記一の反射鏡基体を水平方向に位置決めする突起部と、
前記底板部の中央において下方に開口するよう形成された支持開口部と、
を備え、
前記支持開口部は、前記反射鏡基体を収容した複数の当該収容トレイを上下に重ねたとき、該支持開口部の口縁部が下側の収容トレイに収容された他の反射鏡基体の椀状部の外面と当接するよう形成されていることを特徴とする反射鏡基体の収容トレイ。
【請求項2】
前記支持開口部の口縁部から上方へ隆起形成された倒立カップ状の仕切部をさらに備え、
前記底板部に載置された前記一の反射鏡基体の椀状部の凹曲面と前記仕切部の外面との間に隙間が確保されている請求項1に記載の反射鏡基体の収容トレイ。
【請求項3】
前記突起部が、前記一の反射鏡基体よりも開口縁部の外寸が大きい反射鏡基体を載置し得る段差部を備えている請求項1または請求項2に記載の反射鏡基体の収容トレイ。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れかに記載の収容トレイを用いて複数の前記反射鏡基体を多段積みして成る集積物。
【請求項5】
請求項4に記載の集積物を梱包容器内に収容して成る梱包体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−91499(P2013−91499A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233121(P2011−233121)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】