説明

反射防止フィルムの欠陥検査方法及び欠陥検査装置

【課題】異物を伴わない単なるフィルム基材の波打ち現象を欠陥と誤認識することのない反射防止フィルム基材の欠陥検査方法を提供する。
【解決手段】フィルム基材5に照射された照射光のうち斜め方向に反射する光を受光する第一の反射撮像光学系7,10とフィルム基材5に照射された照射光のうち垂直方向に透過する光を受光する第二の透過撮像光学系6,9とを備え、第一の反射撮像光学系が欠陥を検出した場合、第二の透過撮像光学系もフィルム基材上の同じ位置に欠陥を検出していた場合に限り、当該部位に欠陥があると判定することを特徴とする反射防止フィルム基材5の欠陥検査方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示用ディスプレイ画面の表面に貼り付けて外光反射を低減してディスプレイ画面を見やすくするための反射防止フィルムに係わり、特には反射防止フィルムを製造する際に巻き込まれる異物に起因する欠陥と基材フィルムの単なる波うちを光学的に識別するための検査方法とそのための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等の表示デバイスでは、“見易さ”は最も重要な品質特性の一つであり、当該品質を達成する目的で表示画面上には、表示画面保護や防塵とともに外部からの光の映りこみを防止するため、透明フィルム(以下、フィルム基材あるいは単にフィルムとも記す。)にハードコート層や反射防止層をコーティングにより形成して製造される反射防止フィルムが貼られている。
【0003】
反射防止フィルムの製造は、長尺帯状の透光性のフィルム基材に対し、主に金属酸化物からなるゾルゲル溶液を塗工・乾燥する工程を単数または複数回行い、所定の厚みの光学膜を形成している。反射防止フィルムの製造工程で顕在化する欠陥には、異物の付着や異物混入に起因する膜厚の変動ムラや色相の変化などによる光学的に検地可能な欠陥が存在する。
【0004】
したがって、反射防止フィルムの製造工程には欠陥の検出を行うために欠陥検査装置画導入設置されている。図1は、本発明に係る反射防止フィルムのインラインの欠陥検出装置構成の一例を示す概略図であるが、ほぼ同一の構成が一般的に使用されている。
【0005】
ここでは、複数のローラ1〜ローラ4からなる搬送ユニット(ローラの回転による搬送)により基材5を搬送し、LED、蛍光灯、ハロゲンランプ、キセノンランプ等を用いた照明光源6及び照明光源7によってフィルム基材の全幅を照明する。
【0006】
フィルム基材5を矢印8で示す方向に搬送しながら基材の幅方向を全走査できるよう複数のラインCCDカメラ9及びCCDカメラ10を配置し、基材5の搬送距離に応じた信号をロータリーエンコーダ13より取得しつつ、一定の搬送距離毎に前記ラインCCDカメラ9及び10によって基材表面を複数の所定の方向から撮像する。
【0007】
撮像した画像は画像処理装置11及び12でデジタル画像処理され、欠陥部分の抽出および判定が行われ、欠陥と判定された部位については、当該欠陥の属性を示すデータ(欠陥の位置を示す座標、ラインCCDカメラの画素数、濃度値)が、記憶機構のデータベースに保存され制御装置14系を通じてアクセスできるようになっている。
【0008】
画像データを取得する撮像系には、照明光源6、ラインCCDカメラ9、画像処理装置11の組み合わせた透過光学系、照明光源7、ラインCCDカメラ10、画像処理装置12を組み合わせを反射光学系のいずれかまたは両方を備えることが可能である。図3に上記の検査フローを示すが、透過光学系・反射光学系とも画像処理等は同じアルゴリズムが採用されている。
【0009】
一般に、欠陥の抽出処理は撮像された画像に対し、予め設定した閾値で二値化処理を行い、欠陥の検出を行う。図2は欠陥の抽出処理を説明するための図で、図2(a)はアナログ撮像画像21を示し、図2(b)は撮像画像の線分22に沿ったの画像信号の強度分布23を示す。図2(a)に示すアナログ撮像画像21を予め設定した閾値で二値化処理
すると、図2(c)に示すデジタル化された二値化画像25を得る。図2(d)は、図2(c)のデジタル画像信号23を同じ線分22上で二値化処理した信号強度26を示し階段状となる。
【0010】
上記反射防止フィルムの製造工程においては、長尺帯状の透光性のフィルム基材に対し、塗工・乾燥を1回ないし複数回行って、所望の光学特性を有する光学膜を形成する。基材に異物が付着した状態で塗工を行ったり、塗工液中に異物が混入したりした場合に異物を巻き込まれると、図4に模式的に示すように、当該異物41を中心として、クレーター状に膜厚変動部42を伴った欠陥が発生する。(以下、クレーター42と記す。)
製品の特性上、膜厚変動部は、その大きさにもよるが反射防止フィルムの反射防止機能に影響を及ぼすため、製品の出荷規格としては、中心の異物41の位置検出だけではなくクレーター42全体の面積で欠陥判定を行う必要がある。
【0011】
クレーター42の膜厚変動について、紫外光の300から400nmの波長域の光源を用いた反射検査を行う事で検出可能なことが知られており、また可視波長領域の透過検査を使用することで、クレーター42中心に生じる異物を検出可能であることが知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−16654号公報
【特許文献2】特開2010−34382号公報
【特許文献3】特開2006−038728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
欠陥検査装置の概略構成例を図 1に示したが、欠陥検査は、フィルム基材1が搬送ローラ2と搬送ローラ3の間を移動する際にCCDカメラ10でフィルム基材表面を撮像しデジタル画像処理して行われる。しかしながら、フィルム基材1の搬送時にローラ2とローラ3の間でフィルム基材に振動が発生しフィルムの面が暴れて波打ちが生じると波打ちを欠陥として認識・検出してしまうという不具合が生じることがある。
そこで本発明は、異物を伴わない単なるフィルム基材の波打ち現象を欠陥と誤認識することのない欠陥検査方法を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を達成するための請求項1に記載の発明は、フィルム基材に照射された照射光のうち斜め方向に反射する光を受光する第一の撮像光学系とフィルム基材に照射された照射光のうち垂直方向に透過する光を受光する第二の撮像光学系とを備え、第一の撮像光学系が欠陥を検出した場合、第二の撮像光学系もフィルム基材上の同じ位置に欠陥を検出していた場合に限り、当該部位に欠陥があると判定することを特徴とする反射防止フィルムの欠陥検査方法としたものである。
請求項2に記載の発明は、フィルム基材に照射された照射光のうち斜め方向に反射する光を受光する第一の撮像光学系と、フィルム基材に照射された照射光のうち垂直方向に透過する光を受光する第二の撮像光学系と、第一の撮像光学系と第二の撮像光学系から得られる欠陥パターンをデジタル的に比較照合するための画像処理装置と、を備えることを特徴とする反射防止フィルムの欠陥検査装置としたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明になる欠陥検査装置を使用する欠陥判定方法によれば、欠陥検査装置がフィルム基材搬送時に発生する異物源を伴わない純粋なフィルム基材の波うち現象を「欠陥」と誤
認識することがない。したがって、効率的な欠陥検査が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明になる欠陥検査装置の概略構成を説明する概念図である。
【図2】(a)〜(d)欠陥のアナログパターンをある閾値でデジタル化する様子を説明する図面である。
【図3】欠陥判定のアルゴリズムを説明するフロー図である。
【図4】フィルム基材上の欠陥の有り様を模式的に説明する断面視の図である。
【図5】フィルム基材の波うち部分からの反射光と透過光の挙動を模式的に説明する図である。(a)反射光、(b)透過光。
【図6】反射撮像系と透過撮像系の画像比較のアルゴリズムを説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を図面を用いて説明する。
【0018】
図1は、本発明になる反射防止フィルムのインライン欠陥検出装置の構成の概略図である。
【0019】
フィルム基材5は、複数のローラ1〜ローラ4からなる搬送ユニット(ローラの回転による搬送)によりを矢印方向8に搬送され、LED、蛍光灯、ハロゲンランプ、キセノンランプ等を用いた照明光源6及び照明光源7によって基材の全幅が照明される。
【0020】
フィルム基材5の表面状態を撮像する光学系として、少なくとも2系統を備えており、一方は反射像を捉える第一の撮像光学系(以下、反射撮像光学系)、他方は透過像を撮像する第二の撮像光学系(以下、透過撮像光学系)である。第一の撮像光学系は、第一の光源7、ラインCCDカメラ10、画像処理装置12を備え、第二の光学系は、第二の光源6、CCDカメラ9、画像処理装置11とを備えている。基材5の搬送距離に応じた信号をロータリーエンコーダ13より取得しつつ、一定の搬送距離毎に前記ラインCCDカメラ9及び10によって基材表面を複数の所定の方向から撮像する。
【0021】
第一のラインCCDカメラ10と第二のラインCCDカメラ9のフィルム基材5上の焦点は同じ位置であることが望ましいが、CCDカメラ装置の配置の関係上困難な場合もあり絶対条件ではない。ロータリーエンコーダによる搬送距離の算出から異なるタイミングで取得された同じ位置の位置合わせも電子的に行えるからである。
【0022】
撮像した画像は第一の画像処理装置11及び第二の画像処理装置12でデジタル画像処理され、第一の画像処理で欠陥部分の抽出および判定が行われ、欠陥と判定された部位については、第二の画像処理装置における当該部位の画像データとの比較が制御装置14またはいずれかの画像処理装置11,12で行われる。第二の画像処理装置においても欠陥と判定されていればこれは真正の欠陥と判定される。判定されていなければフィルム基材の波うちを誤認識したものと判断される。
【0023】
欠陥判定のアルゴリズムの一例は図3に記載したが、CCDカメラの分解能や異物の大きさ、外観形状、再現性など幾つかの条件を満たすものが欠陥と判定され、その点から実用上問題が無いものは欠陥とは判定されない。
【0024】
反射撮像光学系と透過撮像光学系の撮像効果の違いは、反射撮像系ついては図5(a)で示すとおり、フィルムの波打ちが生じた箇所では反射光の一部がCCDカメラ方向に反射されず、検出される反射光強度が低減して欠陥として誤検出されてしまう可能性がある。アナログデータからデジタル化する閾値については、フィルム基材と反射防止層の屈折率と厚みを考慮して純粋な波うち部分の反射光の挙動を予めシミュレーションして設定しておく必要がある。
【0025】
一方透過撮像光学系では、図5(b)に示すとおり、波打ちの影響は受けにくく、一部CCDカメラに到達する光量が若干低下するのが見られるが反射光学系ほどではない。斜めに入射して斜め方向に反射する光の方が直進光よりもフィルム基材の波うちの影響を受けやすいからと推察している。したがって、反射撮像系と透過撮像系の両方で欠陥と判定されない部位については波打ちに起因する誤判定とし、欠陥とは判定されない。
【0026】
上記のアルゴリズムの概要を図6に示した。透過撮像光学系で検出した欠陥情報及び反射撮像光学系で検出した欠陥情報を高速で比較照合する機能を持った検査装置とする必要がある。デジタル化された画像データの照合比較処理は、制御装置14で行ってもよいし、いずれかの画像処理装置でもよいし、別途特別な処理装置を設けてもよい。
【0027】
検査装置において透過光学系及び反射光学系を用いて通常通り検査を行い、欠陥として検出された箇所の座標等の欠陥情報を保存する。
【0028】
透過の光学系で検出した欠陥について、欠陥座標を用いて、反射光学系にて欠陥として検出されていないか確認を行い、透過・反射光学系双方で検出した欠陥のみ、欠陥として出力するということである。
【符号の説明】
【0029】
1、2,3,4、搬送ローラ
5、フィルム基材
6、第二の光源
7、第一の光源
8、洗浄ユニット(拭き取り)
9、CCDカメラ(第二)
10、CCDカメラ(第一)
11、画像処理装置(第二)
12、画像処理装置(第一)
13、ロータリーエンコーダ
21、欠陥領域のアナログ画像
22、断面視図の基準面
23、アナログ信号の強度分布(のピーク値)
24、デジタル化の閾値
25、欠陥領域のデジタル画像
26、デジタル信号の強度分布
41、異物
42、膜厚変動部
43、フィルム基材
44、クレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム基材に照射された照射光のうち斜め方向に反射する光を受光する第一の撮像光学系とフィルム基材に照射された照射光のうち垂直方向に透過する光を受光する第二の撮像光学系とを備え、第一の撮像光学系が欠陥を検出した場合、第二の撮像光学系もフィルム基材上の同じ位置に欠陥を検出していた場合に限り、当該部位に欠陥があると判定することを特徴とする反射防止フィルムの欠陥検査方法。
【請求項2】
フィルム基材に照射された照射光のうち斜め方向に反射する光を受光する第一の撮像光学系と、フィルム基材に照射された照射光のうち垂直方向に透過する光を受光する第二の撮像光学系と、第一の撮像光学系と第二の撮像光学系から得られる欠陥パターンをデジタル的に比較照合するための画像処理装置と、を備えることを特徴とする反射防止フィルムの欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−247343(P2012−247343A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120236(P2011−120236)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】