説明

反射防止フィルム用積層ポリエステルフィルム

【課題】 外光反射による干渉ムラが高度に軽減され、各種の光学用途の基材として好適に利用することのできる反射防止フィルム用積層ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、メラミン化合物およびウレタン樹脂を含有する塗布層を有し、当該塗布層側の絶対反射率が波長400〜800nmのすべての波長範囲に対して4.0%以上であることを特徴とする反射防止フィルム用積層ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フィルム用積層ポリエステルフィルムに関するものであり、例えば、液晶ディスプレイ(以下、LCDと略記する)、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと略記する)、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略記する)等、外光反射による干渉ムラの軽減が必要な各種光学用の積層ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステルフィルムを基材とする光学用フィルムが、LCD、PDP、有機EL等の表示部材製造用等をはじめ、各種光学用途等に使用されている。これらの光学用フィルムには、優れた透明性、視認性が要求される。
【0003】
これらの光学用フィルムは、プラスチックフィルムにハードコート層、反射防止層等の表面機能層を積層して使用されている。プラスチックフィルムとしては、透明なポリエステルフィルムが一般的に使用され、基材のポリエステルフィルムと表面機能層との密着性を向上させるために、これらの中間層として易接着の塗布層が設けられる場合が一般的である。
【0004】
反射防止フィルムとしては、一般的には、表面機能層の屈折率の違いを利用した光の干渉現象により外光の反射防止を行う。
【0005】
近年、LCD、PDPなどの表示部材等の用途では、さらなる大画面化および高画質化が求められ、それに伴って特に蛍光灯下での虹彩状色彩(干渉ムラ)の抑制に対する要求レベルが高くなってきている。また、蛍光灯は昼光色の再現性のため3波長形が主流となってきており、より干渉ムラが出やすくなっている。さらに、コストダウン等を達成するために反射防止層の簡素化への要求も高くなり、屈折率の高い表面機能層が選択されるようになっている。そのため、ポリエステルフィルム上に積層する塗布層の光学設計が重要になってきており、ポリエステル基材の屈折率と表面機能層の屈折率との間となる高い屈折率を有する塗布層が求められている。
【0006】
ポリエステルフィルムと塗布層と表面機能層の3層でできる限り反射防止能を出すためには、単層薄膜の反射防止の理論より、塗布層の屈折率を、下記式(1)を満たす付近に設計することが必要である。
【0007】
【数1】

上記式中、nは塗布層の屈折率であり、nはポリエステル基材の屈折率、nは表面機能層の屈折率である。
【0008】
上記式(1)より、一般的に使用されるポリエステル基材と表面機能層の屈折率から考えると、塗布層の屈折率は、1.57以上であることが好ましい。
【0009】
一方、塗布層が設けられた積層ポリエステルフィルムの反射率は、単層薄膜の反射の理論より、入射角が0°の場合、理論的には下記式(2)により表される。
【0010】
【数2】

上記式中、nは空気の屈折率、σは4πnd/λ、dは塗布層の膜厚、λは波長である。
【0011】
一般的に使用されるポリエステル基材と上述の塗布層の屈折率から上記式(2)を用いると、反射率は高い方が好ましいという結果になる。
【0012】
反射防止フィルムを設計する際、塗布層の屈折率が低いと外光反射による干渉ムラの発生を十分に抑えられない場合がある。外光反射による干渉ムラが顕著に発生しているフィルムを、LCD、PDP、有機EL等の表示部材として使用すると、視認性の悪化による各種不具合が顕在化する傾向にある。また、干渉ムラの顕著な発生は視認性を悪化させるばかりでなく、目の疲労や健康障害を起こす要因になることも考えられる。
【0013】
そのため、塗布層の屈折率を高くして、干渉ムラを改善した例が知られており、例えば、塗布層中に屈折率の高い金属酸化物を含有させることにより、塗布層中の屈折率を上げる方法がある。この場合は、フィルムの透明性が低下し、反射防止フィルム用として十分な性能を発揮できない場合がある(特許文献1)。また別の例としては、金属キレート化合物と樹脂を組み合わせる方法もある。この場合は、水溶液中での金属キレートの不安定さから、組み合わせによっては塗布液の安定性が十分でない場合があり、長時間の生産を行う場合、液交換作業の増加を招く可能性がある(特許文献2〜5)。
【特許文献1】特開2004−54161号公報
【特許文献2】特開2005−97571号公報
【特許文献3】特開2006−76292号公報
【特許文献4】特開2006−103249号公報
【特許文献5】特開2006−175627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、外光反射による干渉ムラが軽減された、各種光学用途に好適な反射防止フィルム用積層ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記実情に鑑み、鋭意検討した結果、特定の構成からなる積層ポリエステルフィルムを用いれば、上述の課題を容易に解決できることを知見し、本発明を完成させるに至った。
【0016】
すなわち、本発明の要旨は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、メラミン化合物およびウレタン樹脂を含有する塗布層を有し、当該塗布層側の絶対反射率が波長400〜800nmのすべての波長範囲に対して4.0%以上であることを特徴とする反射防止フィルム用積層ポリエステルフィルムに存する。
【0017】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムは単層構成であっても多層構成であってもよく、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。
【0018】
本発明において使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、p−オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
【0019】
また、フィルムの耐候性の向上、PDPのカラーフィルター等に用いられる色素の劣化防止のために、ポリエステルフィルム中に紫外線吸収剤を含有させてもよい。紫外線吸収剤は、紫外線吸収能を有する化合物で、ポリエステルフィルムの製造工程で付加される熱に耐えうるものであれば特に限定されない。
【0020】
紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤があるが、透明性の観点からは有機系紫外線吸収剤が好ましい。有機系紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、環状イミノエステル系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系などが挙げられる。耐久性の観点からは環状イミノエステル系、ベンゾトリアゾール系がより好ましい。また、紫外線吸収剤を2種類以上併用して用いることも可能である。
【0021】
ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤としては、下記に限定されるものではないが、例えば、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチル−3’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5'−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−ニトロ−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0022】
環状イミノエステル系の紫外線吸収剤としては、下記に限定されるものではないが、例えば、2−メチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−ブチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−フェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(1−または2−ナフチル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(4−ビフェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−m−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−ベンゾイルフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−メトキシフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−o−メトキシフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−シクロヘキシル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−(またはm−)フタルイミドフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、N−フェニル−4−(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)フタルイミド、N−ベンゾイル−4−(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)アニリン、N−ベンゾイル−N−メチル−4−(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)アニリン、2−(p−(N−メチルカルボニル)フェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2,2’−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−エチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−テトラメチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−デカメチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン 、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(4,4’−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2,6−または1,5−ナフチレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−メチル−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−ニトロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−クロロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(1,4−シクロヘキシレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、1,3,5−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ベンゼン、1,3,5−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ナフタレン、2,4,6−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ナフタレン、2,8−ジメチル−4H,6H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d’)ビス(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、2,7−ジメチル−4H,9H−ベンゾ(1,2−d;4,5−d’)ビス(1,3 )−オキサジン−4,9−ジオン、2,8−ジフェニル−4H,8H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d’)ビス(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、2,7−ジフェニル−4H,9H−ベンゾ(1,2−d;4,5−d’)ビス(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、6,6’−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ビス(2−エチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−エチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−エチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ブチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−ブチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−オキシビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−オキシビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−スルホニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−スルホニルビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−カルボニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6’−カルボニルビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−エチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−オキシビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−スルホニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7’−カルボニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7’−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7’−ビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン 、6,7’−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7’−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などが挙げられる。
【0023】
上記化合物のうち、色調を考慮した場合、黄色味が付きにくいベンゾオキサジノン系の化合物が好適に用いられ、その例としては、下記の一般式(1)で表されるものがより好適に用いられる。
【0024】
【化1】

【0025】
上記式中、Rは2価の芳香族炭化水素基を表しXおよびXはそれぞれ独立して水素または以下の官能基群から選ばれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0026】
官能基群:アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、アルコキシル基、アリールオキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基、ニトロ基
【0027】
上記構造式で表される化合物の中でも、本発明においては、2、2’−(1、4−フェニレン)ビス[4H−3、1−ベンゾオキサジン−4−オン]が特に好ましい。
【0028】
なお、本発明の反射防止フィルム用積層ポリエステルフィルムにおいては、基体となるポリエステルフィルムに紫外線吸収剤を、通常10.0重量%以下、好ましくは0.3〜1.8重量%の範囲で含有させることもできる。10.0重量%を超える量の紫外線吸収剤を含有させた場合は、表面に紫外線吸収剤がブリードアウトし、接着性低下等、表面機能性の悪化を招くおそれがある。
【0029】
また、共押出し法による多層構造のフィルムの場合、少なくとも3層構造のものが好ましく、紫外線吸収剤は、その中間層に配合することが好ましい。中間層に紫外線吸収剤を配合することにより、当該化合物がフィルム表面へブリードアウトしてくるのを防ぐことができ、その結果、フィルムの接着性等の特性を維持することができる。
【0030】
本発明の反射防止フィルム用積層ポリエステルフィルムを紫外線吸収が必要とする用途に用いる場合には、波長380nmの光線透過率が5.0%以下であることが好ましく、より好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下である。波長380nmの光線透過率が5.0%より大きくなると、ポリエステルフィルムを透過する紫外線によって、フィルタ中の色素が劣化するのを防ぐのに十分とは言えない場合がある。
【0031】
さらにフィルム加工中の熱履歴等により、フィルム中に含有しているオリゴマーがフィルムの表面に析出し、生産ラインの汚染やフィルムヘーズの悪化等によるフィルムの視認性の悪化を招く場合があるため、多層構造フィルムの最外層を形成するポリエステルとして含有するオリゴマー量を低減したものを用いることが好ましい。ポリエステル中のオリゴマー量を低減する方法としては、固相重合等を用いることができる。
【0032】
本発明のフィルムのポリエステル層中には、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することが好ましい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0033】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0034】
また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.01〜3μm、好ましくは0.01〜2μmの範囲である。平均粒径が0.01μm未満の場合には、易滑性を十分に付与できなかったり、粒子が凝集して、分散性が不十分となり、フィルムの透明性を低下させたりする場合がある。一方、3μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、後工程において種々の表面機能層を塗設させる場合等に不具合が生じる場合がある。
【0035】
さらにポリエステル層中の粒子含有量は、通常0.001〜5重量%、好ましくは0.005〜3重量%の範囲である。粒子含有量が0.001重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、5重量%を超えて添加する場合にはフィルムの透明性が不十分な場合がある。
【0036】
ポリエステル層中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのが良い。
【0037】
また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0038】
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
【0039】
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常10〜300μm、好ましくは50〜250μmの範囲である。
【0040】
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70〜170℃であり、延伸倍率は通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
【0041】
また、本発明においては積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルム製造に関しては同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
【0042】
次に本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層の形成について説明する。塗布層に関しては、ポリエステルフィルムの延伸工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングを採用してもよく、両者を併用してもよい。製膜と同時に塗布が可能であるため、製造が安価に対応可能であり、塗布層の厚みを延伸倍率により変化させることができるという点でインラインコーティングが好ましく用いられる。
【0043】
インラインコーティングについては、以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては、特に縦延伸が終了した横延伸前にコーティング処理を施すことができる。インラインコーティングによりポリエステルフィルム上に塗布層が設けられる場合には、製膜と同時に塗布が可能になると共に塗布層を高温で処理することができ、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造できる。
【0044】
本発明においては、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、メラミン化合物およびウレタン樹脂を含有する塗布層を有し、当該塗布層側の絶対反射率が波長400〜800nmのすべての波長範囲に対して4.0%以上であることを必須の要件とするものである。
【0045】
本発明におけるメラミン化合物とは、化合物中にメラミン骨格を有する化合物のことである。例えば、アルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、およびこれらの混合物を用いることができる。エーテル化に用いるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール等が好適に用いられる。また、メラミン化合物としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できるし、メラミン化合物の反応性を上げるために触媒を使用することも可能である。
【0046】
本発明におけるウレタン樹脂とはウレタン結合を分子内に有する高分子化合物のことである。インラインコーティングの適正を考慮した場合、水分散性または水溶性のウレタン樹脂が好ましい。水分散性または水溶性を付与させるためには、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホニル基、リン酸基、エーテル基等の親水性基をウレタン樹脂に導入することが重要である。前記の親水性基のなかでも、塗膜物性及び密着性の点からカルボン酸基またはスルホン酸基が好ましい。
【0047】
本発明で用いる塗布層の構成成分であるウレタン樹脂を作成する方法の一つに、水酸基とイソシアネートとの反応によるものがある。原料として用いられる水酸基としては、ポリオールが好適に用いられ、例えば、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネート系ポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても、複数種用いても良い。
【0048】
ポリエーテルポリオール類としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0049】
ポリエステルポリオール類としては、多価カルボン酸(マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等)またはそれらの酸無水物と多価アルコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、ジメタノールベンゼン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、アルキルジアルカノールアミン、ラクトンジオール等)の反応から得られるものが挙げられる。
【0050】
ポリカーボネート系ポリオール類としては、多価アルコール類とジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等とから、脱アルコール反応によって得られるポリカーボネートジオール、例えば、ポリ(1,6−ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。
【0051】
ウレタン樹脂を得るために使用されるポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が例示される。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。
【0052】
ウレタン樹脂を合成する際に鎖延長剤を使用しても良く、鎖延長剤としては、イソシアネート基と反応する活性基を2個以上有するものであれば特に制限はなく、一般的には、水酸基またはアミノ基を2個有する鎖延長剤を主に用いることができる。
【0053】
水酸基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の脂肪族グリコール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート等のエステルグリコールといったグリコール類を挙げることができる。また、アミノ基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、1 ,8−オクタンジアミン、1 ,9−ノナンジアミン、1 ,10−デカンジアミン等の脂肪族ジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、イソプロビリチンシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1 ,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。
【0054】
塗布層の屈折率を上げるために、ウレタン樹脂には芳香族化合物を含有することが好ましい。ポリエステルフィルム製造工程において、着色がしにくいという点で、芳香族化合物としては、ベンゼン骨格、あるいはナフタレン骨格であることが好ましい。
【0055】
本発明における反射防止フィルム用積層ポリエステルフィルムにおいて、塗布面状の向上、塗布面上に種々の表面機能層が積層されたときの反射防止能の向上や透明性を向上させるためにウレタン樹脂以外のバインダーポリマーを併用することも可能である。ウレタン樹脂を用いず、メラミン化合物とポリエステル樹脂のみの構成で塗布層を形成すると、表面機能層との密着性が十分でない場合があるため、本発明の趣旨を損なわない範囲で併用する必要がある。
【0056】
本発明において使用する「バインダーポリマー」とは高分子化合物安全性評価フロースキーム(昭和60年11月 化学物質審議会主催)に準じて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による数平均分子量(Mn)が1000以上の高分子化合物で、かつ造膜性を有するものと定義する。
【0057】
バインダーポリマーの具体例としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリビニル(ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体等)、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。
【0058】
さらに塗布層の屈折率を上げるために、ナフタレン骨格を有する化合物を塗布層中に含有することが好ましい。塗布層中にナフタレン骨格を有する化合物を含有させる方法としては、例えば、ナフタレン骨格を導入したバインダーポリマーを用いることで実現できる。特にポリエステル樹脂にはより多くのナフタレン骨格を導入することができるため好ましい。
【0059】
ナフタレン骨格を有する化合物をポリエステル樹脂に組み込む方法としては、例えば、ナフタレン環に置換基として水酸基を2つあるいはそれ以上導入してジオール成分あるいは多価水酸基成分とするか、あるいはカルボン酸基を2つあるいはそれ以上導入してジカルボン酸成分あるいは多価カルボン酸成分として作成する方法がある。当該ナフタレン骨格としては、代表的なものとして、1,5−ナフタレンジカルボン酸および、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。
【0060】
さらに塗布層中には本発明の主旨を損なわない範囲において、メラミン化合物以外の架橋剤を併用することも可能である。メラミン化合物以外の架橋剤としては、種々公知の樹脂が使用できるが、例えば、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物等が挙げられる。
【0061】
本発明におけるエポキシ化合物としては、例えば、分子内にエポキシ基を含む化合物、そのプレポリマーおよび硬化物が挙げられる。代表的な例は、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの縮合物である。特に、低分子ポリオールのエピクロロヒドリンとの反応物は、水溶性に優れたエポキシ樹脂を与える。
【0062】
本発明におけるオキサゾリン化合物としては、分子内にオキサゾリン環を持つ化合物であり、オキサゾリン環を有するモノマーや、オキサゾリン化合物を原料モノマーの1つとして合成されるポリマーも含まれる。
【0063】
本発明におけるイソシアネート化合物としては、分子内にイソシアネート基を持つ化合物を指し、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートや、これらの重合体、誘導体等が挙げられる。
【0064】
これらの架橋剤は、単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。さらにインラインコーティングへの適用等を配慮した場合、水溶性または水分散性を有することが好ましい。
【0065】
また、塗布層の固着性、滑り性改良を目的として、不活性粒子を含有してもよく、具体例としてはシリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン、有機粒子等が挙げられる。
【0066】
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料等が含有されてもよい。
【0067】
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層中のメラミン化合物の含有量に関しては、塗布層全体の重量比で、通常20〜90%の範囲、より好ましくは30〜70%の範囲である。20%未満の場合、表面機能層を積層後の視認性が良くない場合があり、90%を超える場合、表面機能層との密着性が良くない場合がある。また、ウレタン樹脂の含有量に関しては、塗布層全体の重量比で10〜80%の範囲、より好ましくは10〜70%の範囲である。10%未満の場合、表面機能層との密着性が低下してしまう場合があり、80%を超えると塗布層の屈折率の低下により、表面機能層を積層後の視認性が良くない場合がある。
【0068】
さらにインラインコーティングの場合は、上述の一連の化合物を水溶液または水分散体として、固形分濃度が0.1〜50重量%程度を目安に調整した塗布液をポリエステルフィルム上に塗布する要領にて積層ポリエステルフィルムを製造するのが好ましい。また、本発明の主旨を損なわない範囲において、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、塗布液中には少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は1種類のみでもよく、適宜、2種類以上を使用してもよい。
【0069】
本発明における積層ポリエステルフィルムに関して、ポリエステルフィルム上に設けられる塗布層の膜厚は、通常0.005〜1μm、好ましくは0.005〜0.5μm、より好ましくは0.03〜0.3μmの範囲である。塗布量が0.005μ未満の場合には、塗布厚みの均一性が不十分な場合がる。一方、1μmを超えて塗布する場合には、滑り性低下、反射防止能の低下等の不具合を生じる場合がある。
【0070】
本発明において、塗布層を設ける方法はリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。塗工方式に関しては「コーティング方式」槇書店 原崎勇次著 1979年発行に記載例がある。
【0071】
本発明において、ポリエステルフィルム上に塗布層を形成する際の乾燥および硬化条件に関しては特に限定されるわけではなく、例えば、オフラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、80〜200℃で3〜40秒間、好ましくは100〜180℃で3〜40秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
【0072】
一方、インラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、70〜280℃で3〜200秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
【0073】
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0074】
塗布層が積層されたポリエステルフィルムの絶対反射率は、波長400〜800nmのすべての波長範囲において4.0%以上、より好ましくは4.5%以上であり、塗布層を積層しないポリエステルフィルムの絶対反射率未満であることが好ましい。また、波長400〜800nmにおいて絶対反射率が極小値を持つことが好ましい。すなわち、波長400〜800nmの極小値における絶対反射率が4.0%以上であることが好ましい。絶対反射率が4.0%を下回る場合には、フィルムの塗布層上に、ハードコート層、反射防止層等の表面機能層を積層したときの反射防止能が悪化することにより、干渉ムラが強くなり、視認性が低下する場合がある。
【0075】
本発明のポリエステルフィルムには、塗布層の上にハードコート層や反射防止層といった表面機能層を設けるのが一般的である。ハードコート層に使用される材料としては、特に限定されないが、例えば、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、テトラエトキシシラン等の反応性珪素化合物等の硬化物が挙げられる。これらのうち生産性及び硬度の両立の観点より、紫外線硬化性の多官能(メタ)アクリレートを含む組成物の重合硬化物であることが特に好ましい。
【0076】
紫外線硬化性の多官能(メタ)アクリレートを含む組成物としては特に限定されるものでない。例えば、公知の紫外線硬化性の多官能(メタ)アクリレートを一種類以上混合したもの、紫外線硬化性ハードコート材として市販されているもの、或いはこれら以外に本
実施形態の目的を損なわない範囲において、その他の成分を更に添加したものを用いることができる。
【0077】
紫外線硬化性の多官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えばジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ) アクリレート、1,6−ビス(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)ヘキサン等の多官能アルコールの(メタ)アクリル誘導体や、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、そしてポリウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0078】
紫外線硬化性の多官能(メタ)アクリレートを含む組成物に含まれるその他の成分は特に限定されるものではない。例えば、無機又は有機の微粒子、重合開始剤、重合禁止剤、酸化防止剤、分散剤、界面活性剤、光安定剤及びレベリング剤等が挙げられる。また、ウェットコーティング法において成膜後乾燥させる場合には、任意の量の溶媒を添加することができる。
【0079】
ハードコート層の形成方法は、有機材料を用いた場合にはロールコート法、ダイコート法等の一般的なウェットコート法が採用される。形成されたハードコート層には必要に応じて加熱や紫外線、電子線等の活性エネルギー線照射を施し、硬化反応を行うことができる。
【0080】
次に、本発明における反射防止層は単層構造又は多層構造をとることができる。単層構造の場合、ハードコート層上に該ハードコート層よりも屈折率の低い層(低屈折率層)を1層形成する。また、多層構造の場合、ハードコート層の上に屈折率の異なる層を多層積層する。多層構造にすることによって、反射率をより効果的に下げることができる。具体的には、ハードコート層側から見て順に高屈折率層及び低屈折率層からなる2層構造や、3層以上の多層構造が挙げられる。
【0081】
反射防止層中の低屈折率層に用いられる材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、酸化ケイ素、アルコキシシラン等のケイ素化合物、アクリル系化合物、フッ素原子含有化合物等が挙げられる。
【0082】
反射防止層中の高屈折率層に用いられる材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化インジウムスズ等の金属酸化物、チタンキレート、ジルコニウムキレート等の金属元素を含有する有機化合物、ベンゼン骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格等の共役系が多数存在するものや、硫黄等を含有させた高屈折率な有機化合物等が挙げられる。
【0083】
反射防止層には前記の化合物以外に、無機又は有機の顔料、重合体、重合開始剤、光重合開始剤、重合禁止剤、酸化防止剤、分散剤、界面活性剤、光安定剤、レベリング剤等を含有させることも可能である。
【0084】
反射防止層を設ける方法は、真空蒸着法、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法等のドライコーティング法や、リバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート、スピンコート、スプレーコート法等のウェットコーティング法が挙げられる。
【発明の効果】
【0085】
本発明の反射防止フィルム用積層ポリエステルフィルムによれば、種々の表面機能層を積層した際の反射防止能に優れた光学用フィルムを提供することができ、その工業的価値は高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0086】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
【0087】
(1)ポリエステルの固有粘度の測定
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0088】
(2)平均粒径(d50:μm)の測定
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA−CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
【0089】
(3)ポリエステルフィルムにおける一方の層表面からの反射率最小値の測定方法
あらかじめ、ポリエステルフィルムの測定裏面に黒テープ(ニチバン株式会社製ビニールテープVT―50)を貼り、分光光度計(日本分光株式会社製 紫外可視分光光度計 V−570 および自動絶対反射率測定装置 AM−500N)を使用して同期モード、入射角5°、N偏光、レスポンス Fast、データ取区間隔1.0nm、バンド幅10nm、走査速度1000m/minで塗布層面を波長範囲400〜800nm、の絶対反射率を測定し、その最小値を評価した。
【0090】
(4)波長380nmの透過率の測定
分光光度計(株式会社島津製作所社製UV−3100PC型)により、スキャン速度を低速、サンプリングピッチを2nm、波長300〜700nm領域で連続的に光線透過率を測定し、380nm波長での光線透過率を検出した。
【0091】
(5)反射防止能の評価方法
ポリエステルフィルム(塗布層を積層した場合は塗布層側)に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート70質量部、1,6−ビス(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)ヘキサン30質量部、光重合開始剤(商品名:「IRGACURE184」、チバスペシャルティケミカル製)4質量部、イソプロパノール100質量部の混合塗液を乾燥膜厚が3μm程度になるように塗布し、400mJ/cmの紫外線により硬化した。次に、その上に1,10−ジアクリロイルオキシ−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ヘキサデカフルオロデカン40質量部、中空シリカゾル(固形分濃度20質量%、平均粒径60nm、触媒化成工業株式会社製)120質量部、光重合開始剤(商品名:「KAYACURE BMS」、日本化薬株式会社製)5質量部を混合した液を光学膜厚が0.1μmになるように塗布し、乾燥後、窒素雰囲気下で400mJ/cmの紫外線により硬化した。得られたフィルムを3波長光域型蛍光灯下で目視にて、干渉ムラを観察し、視認性が良好ならば○、視認性の悪化が確認できれば×とした。
【0092】
(6)密着性の評価方法
ポリエステルフィルム(塗布層を積層した場合は塗布層側)に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート70質量部、1,6−ビス(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)ヘキサン30質量部、光重合開始剤(商品名:「IRGACURE184」、チバスペシャルティケミカル製)4質量部、イソプロパノール100質量部の混合塗液を乾燥膜厚が3μm程度になるように塗布し、400mJ/cmの紫外線により硬化した。その上に18mm幅のテープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標)CT−18)を貼り付け、180度の剥離角度で急激にはがした後、剥離面を観察し、剥離面積が10%未満ならば○、10%以上20%未満なら△、20%以上ならば×とした。
【0093】
(7)ポリエステル層の厚み測定
フィルム小片をエポキシ樹脂にて固定成形した後、ミクロトームで切断し、フィルムの断面を透過型電子顕微鏡写真にて観察した。その断面のうちフィルム表面とほぼ平行に2本、明暗によって界面が観察される。その2本の界面とフィルム表面までの距離を10枚の写真から測定し、平均値を層厚さとした。
【0094】
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
<ポリエステル(A)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04部を添加した後、三酸化アンチモン0.04部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル(A)の極限粘度は0.63であった。
【0095】
<ポリエステル(B)の製造方法>
ポリエステル(A)を、あらかじめ160℃で予備結晶化させた後、温度220℃の窒素雰囲気下で固相重合し、極限粘度0.75ポリエステル(B)を得た。
【0096】
<ポリエステル(C)の製造方法>
ポリエステル(A)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04部を添加後、平均粒子径1.6μmのエチレングリコールに分散させたシリカ粒子を0.2部、三酸化アンチモン0.04部を加えて、極限粘度0.65に相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(C)を得た。得られたポリエステル(C)は、極限粘度0.65であった。
【0097】
<ポリエステル(D)の製造方法>
ポリエステル(A)をベント付き二軸押出機に供して、紫外線吸収剤として2,2−(1,4−フェニレン)ビス[4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン](CYTEC社製 CYASORB UV−3638 分子量369 ベンゾオキサジノン系)を10重量%濃度となるように供給して溶融混練りしてチップ化を行い、紫外線吸収剤マスターバッチポリエステル(D)を作成した。得られたポリエステル(D)の極限粘度は、0.59であった。
【0098】
塗布層を構成する化合物例は以下のとおりである。
(化合物例)
ヘキサメトキシメチルメラミン(I)
ウレタン樹脂(II)
下記の方法で得られたウレタン樹脂水性塗料を使用した。すなわち、先ず、テレフタル酸664部、イソフタル酸631部、1,4−ブタンジオール472部、ネオペンチルグリコール447部から成るポリエステルポリオールを得た。次いで、得られたポリエステルポリオールに、アジピン酸321部、ジメチロールプロピオン酸268部を加え、ペンダントカルボキシル基含有ポリエステルポリオールAを得た。更に、上記のポリエステルポリオールA1880部にヘキサメチレンジイソシアネート160部を加えてウレタン樹脂水性塗料を得た。
バインダーポリマー:(III1)
下記組成で共重合したポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)2,6−ナフタレンジカルボン酸/イソフタル酸/5−ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/ジエチレングリコール=84/13/3//80/20(mol%)
バインダーポリマー:(III2)
メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリロニトリル/N−メチロールメタアクリルアミド=45/45/5/5(モル比)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)
粒子:(IV) 平均粒径65nmのシリカゾル
【0099】
実施例1:
ポリエステル(B)、(C)をそれぞれ90%、10%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)、(D)をそれぞれ90%、10%の割合で混合した混合原料を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、この縦延伸フィルムの両面に、下記表1に示す塗布液1を塗布し、テンターに導き、横方向に120℃で3.8倍延伸し、225℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、塗工量(乾燥後)が0.1g/mの塗布層を有する厚さ100μm(表層5μm、中間層90μm)のポリエステルフィルムを得た。
【0100】
得られたポリエステルフィルムの絶対反射率を波長範囲400〜800nmで測定したところ、最小値で5.2%であった。波長380nmにおける透過率は0.4%であった。表面機能層を積層後の反射防止能を評価したところ、視認性は良好であった。このフィルムの特性を下記表2に示す。
【0101】
実施例2〜4:
実施例1において、塗布剤組成を表1に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がったポリエステルフィルムは表2に示すとおり、高い反射率を有し、表面機能層を積層後の反射防止能を評価したところ、視認性は良好であった。
【0102】
比較例1、2:
実施例1において、塗布剤組成を表1に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がった積層ポリエステルフィルムを評価したところ、表2に示すとおり、反射防止能の悪化が見られた。
【0103】
比較例3:
実施例1において、塗布層を設けなかった以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。でき上がった積層ポリエステルフィルムを評価したところ、表2に示すとおり、反射防止能の悪化が見られた。
【0104】
【表1】

なお、上記塗布液の濃度はいずれも10重量%とした。
【0105】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明のフィルムは、例えば、LCD、PDP、有機EL等、表示部材製造用等の光学用途のほか、視認性を重視する用途に好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、メラミン化合物およびウレタン樹脂を含有する塗布層を有し、当該塗布層側の絶対反射率が波長400〜800nmのすべての波長範囲に対して4.0%以上であることを特徴とする反射防止フィルム用積層ポリエステルフィルム。
【請求項2】
塗布層中にナフタレン環を有する化合物を含有することを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルム用積層ポリエステルフィルム。
【請求項3】
フィルムの光線透過率が波長380nmにおいて5.0%以下であることを特徴とする請求項1または2記載の反射防止フィルム用積層ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2008−209681(P2008−209681A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−46474(P2007−46474)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】