説明

反射防止ポリマーフィルムに使用するための低屈折率フルオロポリマーコーティング組成物

反射防止フィルムに使用するための、または光ディスプレイにカップリングされた、経済的で光透過性、防染性および撥インク性、耐久性を有する低屈折率フッ素ポリマー組成物。本発明の一態様では、この組成物は、フルオロポリマーまたは反応性フルオロポリマー、アミノシランエステルカップリング剤またはエステル等価物、マルチオレフィン架橋剤および任意の表面改質無機粒子またはゾルゲル前駆体の反応生成物から形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フィルム、そしてより特定的には、反射防止ポリマーフィルム中で使用するための、低屈折率フルオロポリマーコーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止ポリマーフィルム(「ARフィルム」)は、ディスプレイ産業において増々重要なものとなりつつある。コンピュータ、テレビ、電気器具、携帯電話、航空宇宙および自動車産業において使用される製品の基板に適用される低屈折率フィルムのための新しい利用分野が現在開発されつつある。
【0003】
ARフィルムは標準的には、光ディスプレイ表面から反射される光の量を最小限におさえるために、高および低屈折率(「RI」)ポリマー層を交互にすることによって構築されている。光学商品上で使用するためのARフィルムにおける望ましい製品特長は、低い反射百分率(例えば1.5%以下)およびスクラッチおよび磨滅に対する耐久性である。これらの特長は、ポリマー層の間の強い接着を維持する一方で、ポリマー層間のデルタRIを最大限にすることにより、AR構造の中で得られる。
【0004】
ARフィルムに使用される低屈折率ポリマー層は、フッ素含有ポリマー(「フルオロポリマー」または「フッ素化ポリマー」)から誘導可能であるということがわかっている。フルオロポリマーは、高い化学的不活性(酸および塩基抵抗に関して)、防染および防汚性(低い表面エネルギーに起因するもの)、低い吸湿性および耐候性および太陽条件耐性に関して、従来の炭化水素ベースの材料に比べ利点を提供する。
【0005】
フッ素化ポリマーコーティング層の屈折率は、層内部に含まれるフッ素の体積百分率によって左右され得る。層内のフッ素含有量が増大すると、コーティング層の屈折率は減少する。しかしながら、フルオロポリマーコーティング層のフッ素含有量を増大させると、コーティング層の表面エネルギーが減少する可能性があり、このことが今度は、層がカップリングされているその他のポリマーまたは基板層に対する本フルオロポリマー層の界面接着の減少をもたらす可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かくして、随伴する層または基板に対する界面接着を改善させながら、増大したフッ素含有量ひいてはより低い屈折率を有する反射防止フィルム用の低屈折率層を形成することが強く望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光ディスプレイ用の反射防止フィルムにおいて低屈折率フィルム層として使用するための経済的かつ耐久性のある低屈折率フルオロポリマーを提供する。低屈折率組成物は、高屈折率層および/または基板材料に対する強い界面接着を有する層を形成する。
【0008】
本発明の一態様においては、熱または光化学プロセスのいずれかにより、反応性フルオロポリマー、アミノ置換オルガノシランエステルまたはエステル等価物およびマルチオレフィン架橋剤の反応生成物から形成される。
【0009】
「反応性フルオロポリマー」または「官能性フルオロポリマー」という用語は、ハロゲン含有硬化部位単量体またはハロゲン含有末端基などの反応性官能基および/または充分なレベルの不飽和を含む、フルオロポリマー、共ポリマー(例えば2つ以上の異なる単量体を用いたポリマー)、オリゴマーおよびそれらの組合せを含むものとして理解される。この官能基は、硬化中の網状構造形成を容易にし、硬化したコーティングの耐久性をさらに改善するようコーティング混合物のその他の構成要素の間でさらなる反応性を許容する。
【0010】
さらに、上述の低屈折率組成物のいずれかの機械的強度および耐スクラッチ性は、表面官能化ナノ粒子の添加またはフッ素ポリマー組成物内へのゾルゲル前駆体によって増強可能である。
【0011】
本発明は同様に、光学基板に対し上述の低屈折率組成物の層を有する反射防止フィルムを導入することによって形成される光ディスプレイを有する製品をも提供している。結果として得られる光学デバイスは、清浄しやすく、耐久性がありかつ低い表面エネルギーを有する外部コーティング層を有する。
【0012】
本発明のその他の目的および利点は、以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲を考慮し添付図面を参照した時点で明らかになるものと思われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に定義する用語については、特許請求の範囲または明細書中の他の箇所で異なる定義が与えられているのでない限り、これらの定義が適用されるものとする。
【0014】
「ポリマー」という用語は、ポリマー、共ポリマー(例えば2つ以上の異なる単量体を用いたポリマー)、オリゴマーおよびその組合せ、ならびに混和性配合物の形で形成可能なポリマー、オリゴマーまたは共ポリマーを含むものとして理解されることになる。
【0015】
本書で使用される「セラマー」という用語は、結合剤マトリックス内に分散したナノメートル寸法の例えばシリカなどの無機酸化物粒子を有する組成物である。「セラマー組成物」という文言は、放射エネルギーで少なくとも部分的に硬化されなかった、従って流動性のある塗布可能な液体である、本発明に従ったセラマー処方物を表わすよう意図されている。「セラマー複合材料」または「コーティング層」という語句は、放射エネルギーで少なくとも部分的に硬化され、従って実質的に非流動性の固体となっている本発明に従ったセラマー処方物を表わすように意図されている。付加的には、「遊離ラジカルにより重合可能な」という語句は、適切な硬化用エネルギー源に対する曝露時点で架橋反応に参与する単量体、オリゴマー、ポリマーなどの能力を意味する。
【0016】
本発明に関しては、「低屈折率」という用語は、基板に対し層として適用された時点で約1.5未満、より好ましくは約1.45未満そして最も好ましくは約1.42未満の屈折率をもつコーティング層を形成する材料を意味するものとする。低屈折率層の最低屈折率は、標準的に少なくとも約1.35である。本発明に関しては、「高屈折率」という用語は、基板に対し層として適用された時点で約1.5超の屈折率を有するコーティング層を形成する材料を意味するものとする。高屈折率層の最大屈折率は標準的に約1.75以下である。高屈折率層と低屈折率層の間の屈折率の差は、標準的に少なくとも0.15であり、より標準的には0.2以上である。
【0017】
終点による数値的範囲の列挙には、その範囲内に包含される全ての数字が含まれる(例えば、範囲1〜10は1、1.5、3.33および10を含む)。
【0018】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されている単数形「a」、「an」および「the」には、内容から別段の意味が指示されるのでない限り、複数の指示対象も含まれる。かくして例えば、「化合物」を含有する組成物に対する言及には、2つ以上の化合物の混合物も含まれる。本明細書および添付の特許請求の範囲に使用されている「or」という用語は、一般に、内容から別段の意味が指示されるのでない限り、「および/または」を含めたその意味合いで使用される。
【0019】
別段の指示のない限り、明細書および特許請求の範囲内で使用されている通りの成分の数量、接触角などの特性の測定値を表わす全ての数は、全てのケースにおいて「約」という用語により改質されるものと理解されるべきである。従って、相反する指示のない限り、以上の明細書および添付の特許請求の範囲において記された数値的パラメータは、本発明の教示を利用して当業者が得るよう求められている所望の特性に応じて変動可能である近似である。最低限でも、又特許請求の範囲の範囲に対する等価物の原則の応用を制限する試みとしてではなく、各々の数値的パラメータは少なくとも、報告された有効数字の数に照らしてかつ普通の丸め技術を適用することによって、解釈されるべきである。本発明の広い範囲を説明する数値的範囲およびパラメータが近似であるにも関わらず、特定の例の中で記される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながらあらゆる数値は、本質的に、そのそれぞれの試験用測定値中に見られる標準偏差の結果として必然的に幾分かの誤差を含む。
【0020】
本発明は、光ディスプレイ(「ディスプレイ」)の一部分として用いられる反射防止材料に関する。本ディスプレイには、光学的清澄度を維持しながら低表面エネルギー(例えば防汚性、防染性、撥油および/または撥水性)および耐久性(例えば摩滅耐性)の組合せが望まれるさまざまな照明および無照明ディスプレイパネルが含まれる。反射防止材料は、耐久性および光学清澄度を改善しながらグレアを減らし、透過損失を低減させるように機能する。
【0021】
かかるディスプレイには、多重文字特に多重行多重文字ディスプレイ、例えば、液晶ディスプレイ(「LCD」)、プラズマディスプレイ、前面および背面投写ディスプレイ、ブラウン管ディスプレイ(「CRT」)、サイネージ、ならびに単一文字または2進ディスプレイ例えば発光管(「LED」)、信号灯およびスイッチが含まれる。かかるディスプレイパネルの光透過性(すなわち露出表面)基板は、「レンズ」と呼ばれ得る。本発明は、損傷を受ける可能性のある画面をもつディスプレイのために特に有用である。
【0022】
本発明のコーティング組成物およびその反応性生成物ならびに保護製品は、さまざまな携帯式および非携帯式情報ディスプレイ製品の中で利用可能である。これらの製品としては、PDA、LCDTV(直接照明またはエッジ照明)、携帯電話(PDA/携帯電話の組合せを含む)、タッチセンサースクリーン、腕時計、カーナビシステム、グローバルポジショニングシステム、水深測定器、計算機、電子書籍、CDおよびDVDプレイヤー、プロジェクションテレビスクリーン、コンピュータモニター、ノート型パソコンディスプレイ、計器ゲージ、計器パネルカバー、サイネージ例えばグラフィックディスプレイなどが含まれるがこれらに制限されるわけではない。これらのデバイスは、平面画面または非平面画面例えばわずかに湾曲した面を有することができる。潜在的利用分野の以上のリストは、不当に本発明を制限するものと解釈されるべきではない。
【0023】
コーティング組成物またはコーティングされたフィルムは、例えばカメラレンズ、眼鏡レンズ、双眼鏡レンズ、鏡、再帰反射シート、自動車の窓、建物の窓、列車の窓、船の窓、航空機の窓、車両のヘッドランプおよびテールランプ、陳列ケース、眼鏡、道路の路面標識(例えば隆起式)および路面標識テープ、オーバーヘッドプロジェクタ、ステレオキャビネット扉、ステレオカバー、時計カバー、ならびに光学的および磁気光学式記録ディスクなどなどのさまざまなその他の製品上で利用可能である。
【0024】
ここで図1を参照すると、ここではコンピュータモニター10である製品の斜視図が、ハウジング14内部で結合された光ディスプレイ12を有するものとして1つの好ましい実施形態に従って例示される。光ディスプレイ12は、それを通してユーザーがテキスト、グラフィックまたはその他の表示された情報を検分することのできる光学的増強特性を有する、実質的に透明な材料である。
【0025】
図2に最も良く示されているように、光ディスプレイ12は、光学基板16に結合(コーティング)された反射防止フィルム18を含む。反射防止フィルム18は、高屈折率層22が基板16と低屈折率層20の間に位置づけされる一方で低屈折率層20が大気に曝露されるように位置づけられるような形で共にカップリングされた高屈折率層22と低屈折率層20を少なくとも一層有する。
【0026】
ディスプレイパネルの場合、基板16は光透過性を有する、すなわち光は、ディスプレイが検分できるような形で基板16を通して透過され得る。透明な(例えば光輝性)および艶消しの光透過性基板12の両方が、ディスプレイパネル内で利用される。
【0027】
光学基板16には、好ましくは、ガラスといった無機材料、またはポリマー有機材料例えばさまざまな熱可塑性および架橋ポリマー材料、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、(例えばビスフェノールA)ポリカーボナート、セルロースアセタート、ポリ(メチルメタクリラート)、ポリオレフィン例えばさまざまな光学デバイス内で一般に用いられている2軸延伸ポリプロピレンといったポリオレフィンが含まれる。基板は同様に、ポリアミド、ポリイミド、フェノール樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共ポリマー、エポキシなどを含むまたはこれらで構成されている可能性もある。さらに、基板16は、有機および無機の両方の構成要素を有するハイブリッド材料を含んでいてよい。
【0028】
標準的には、基板は、一部には意図された用途のための望ましい光学的および機械的特性に基づいて選択されることになる。かかる機械的特性には標準的に、可とう性、寸法安定性および衝撃耐性が含まれることになる。基板厚みは標準的には、意図された用途により左右される。大部分の利用分野にとって、約0.5mm未満の基板厚み、より好ましくは約0.02〜約0.2mmの厚みが好まれる。自立式ポリマーフィルムが好ましい。ポリマー材料は、押出しおよび押出されたフィルムの任意の1軸および2軸延伸などの従来のフィルム製造技術を用いてフィルムの形に形成され得る。基板は、基板とハードコート層の間の接着を改善するように、例えば化学処理、コロナ処理例えば空気または窒素コロナ、プラズマ、火炎または化学線放射などで処理することができる。望まれる場合、層間接着を増大させるべく基板および/またはハードコート層に対し任意の連結層または下塗り剤を塗布することができる。
【0029】
2004年1月29日出願の米国特許出願公開第2004−0184150号明細書に記述されているような、多層光学フィルム、微細構造フィルム例えば再帰反射シートおよび輝度増強フィルム、(例えば反射性または吸収性)偏光フィルム、拡散性フィルムならびに(例えば2軸)遅延フィルムおよび補償フィルムを含めたさまざまな光透過性光学フィルムが知られているが、これらに制限されるわけではない。
【0030】
米国特許出願公開第2003/0217806号明細書に記述されているように、多層光学フィルムすなわち、異なる屈折率のマイクロ層の配置により少なくとも部分的に、所望の透過性および/または反射特性を提供するフィルム。マイクロ層は、隣接するマイクロ層間の界面で一部の光が反射されるように異なる屈折率特性を有する。マイクロ層は、複数の界面で反射された光が強め合うまたは弱め合う干渉を受けてフィルム本体に反射性または透過性特性を提供するように、充分薄いものである。紫外線、可視光線または近赤外線波長を反射するように設計された光学フィルムについては、各々のマイクロ層は一般に約1μm未満の光学厚み(すなわち物理的厚みに反射率を乗じたもの)を有する。しかしながら、フィルムの外側表面にある表面薄層または一群のマイクロ層を分離するフィルム内部に配置された保護境界層などのより厚い層を含み入れることもできる。多層光学フィルム本体は、同様に、積層品の形に多層光学フィルムの2枚以上のシートを接着させるための1つ以上の厚い接着剤層を含むこともできる。
【0031】
多層光学フィルム本体の反射および透過特性は、それぞれのマイクロ層の屈折率の一関数である。各々のマイクロ層は、平面内屈折率nx、nyおよびフィルムの厚み軸に結びつけられた屈折率nzにより、フィルム内の少なくとも局在化された位置で特徴づけされ得る。これらの屈折率は、互いに直交するx、yおよびz軸に沿って偏光された光についての対象材料の屈折率を表わす。実際には、屈折率は、賢明な材料選択および加工条件によって制御される。標準的に数十または数百層の2つの交替するポリマー層A、Bの同時押出し加工そしてそれに続いて任意に1つ以上の増倍ダイの中に多層押出物を通過させる作業、そして次に押出物をストレッチまたはその他の形で延伸させて最終的フィルムを形成させる作業により、フィルムを作ることができる。結果として得られたフィルムは、可視または近赤外線における場合のように、スペクトルの所望の領域(単複)内の1つ以上の反射バンドを提供するように厚みおよび屈折率が調整された標準的に数十または数百の個別のマイクロ層で構成されている。適正な数の層で高い反射率を達成するためには、隣接するマイクロ層は好ましくは、少なくとも0.05というx軸に沿って偏光された光についての屈折率差(δnx)を示す。高い反射率が2つの直交する偏光について望まれる場合には、隣接するマイクロ層は同様に好ましくは、少なくとも0.5というy軸に沿って偏光された光についての屈折率差(δny)も示す。そうでなければ、屈折率差は、1つの偏光状態の入射光を通常反射し、直交する偏光状態の入射光を通常透過させる多層スタックを生産する目的で0.05未満、そして好ましくは約0であり得る。望ましい場合、z軸に沿って偏光された光についての隣接するマイクロ層間の屈折率差(δnz)も同様に、斜入射光のp偏光成分のための望ましい反射率特性を達成するように調整可能である。
【0032】
ポリマー多層光学フィルムの製造において使用可能な材料の例は、PCT国際公開第99/36248号パンフレット(ニービン(Neavin)ら)中に見ることができる。望ましくは、材料のうちの少なくとも1つが、大きな絶対値をもつ応力光学係数を有するポリマーである。換言すると、ポリマーは好ましくは、ストレッチされた場合、大きい複屈折性(少なくとも約0.05、より好ましくは少なくとも約0.1またはさらには0.2)を発生させる。多層フィルムの利用分野に応じて、複屈折を、フィルムの平面内の2つの直交する方向の間、1つ以上の平面方向とフィルム平面に対して垂直な方向の間、またはこれらの組合せの形で発生させることができる。ストレッチされていないポリマー層の間の等方向性屈折率が広く離隔している特殊なケースでは、ポリマーの少なくとも1つにおける大きな複屈折に対する選好性を緩和することができるが、それでもなお複屈折が望ましいことが多い。このような特殊なケースは、ミラーフィルム用のポリマーおよび、平面内で直交する2つの方向にフィルムを引伸ばす2軸プロセスを用いて形成される偏光子フィルム用のポリマーの選択において発生し得る。さらに、ポリマーは望ましくは、ストレッチの後に複屈折を維持し、かくして仕上ったフィルムに対し所望の光学特性を付与する能力をもつ。第2のポリマーは、仕上ったフィルムにおいて第2のポリマーの屈折率が少なくとも一方向で同じ方向の第1のポリマーの屈折率とは著しく異なるような形で多層フィルムのその他の層について選択可能である。便宜上、フィルムは、2つの全く異なるポリマー材料を用い、交番する層A、B、A、Bなどを生産するべく押出しプロセス中にこれらの材料を交互配置して製造することができる。しかしながら2つの全く異なるポリマー材料のみを交互配置することは必要とされない。その代り、多層光学フィルムの各層をフィルム内の他の箇所では見られない唯一の材料または配合物で構成することができる。好ましくは、同時押出しされているポリマーは、同じまたは類似の融解温度を有する。
【0033】
適切な屈折率差および適切な層間接着の両方を提供する2つのポリマー組合せの例としては、以下のものが含まれる:(1)主に単軸ストレッチを伴うプロセスを用いて作られる偏光性多層光学フィルム用には、PEN/coPEN、PET/coPET、PEN/sPS、PET/sPS、PEN/Eastar(登録商標)およびPET/Eastar(登録商標)(なおここで「PEN」はポリエチレンナフタレート、「coPEN」はナフタレン重炭酸に基づく共ポリマーまたは配合物、「PET」はポリエチレンテレフタラート、「coPET」はテレフタル酸ベースの共ポリマーまたは配合物、「sPS」はシンジオタクチックポリスチレンおよびその誘導体を意味し、Eastar(登録商標)は、イーストマンケミカルコーポレーション(Eastman Chemical Co)から市販されているポリエステルまたはコポリエステル(シクロヘキサンジメチレンジオール単位およびテレフタラート単位を含むと考えられている)を意味する);(2)2軸ストレッチプロセスのプロセス条件を操作することで作られた偏光性多層光学フィルム用には、PEN/coPEN、PEN/PET、PEN/PBT、PEN/PETGおよびPEN/PETcoPBT(なおここでPBTはポリブチレンテレフタラート、「PETG」は、第2のグリコール(通常はシクロヘキサンジメタノール)を利用するPETの共ポリマーを、そして「PETcoPBT」はテレフタル酸またはそのエステルと、エチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールの混合物のコポリエステルを意味する);(3)(カラーミラーフィルムを含めた)ミラーフィルム用には、PEN/PMMA、coPEN/PMMA、PET/PMMA、PEN/Ecdel(登録商標)、PET/Ecdel(登録商標)、PEN/sPS、PES/sPS、PEN/coPET、PEN/PETGおよびPEN/THV(登録商標)(なおここで「PMMA」はポリメチルメタクリラート、Ecdel(登録商標)はイーストマンケミカルコーポレーションから市販されている熱可塑性ポリエステルまたはコポリエステル(シクロヘキサンジカルボキシラート単位、ポリテトラメチレンエーテルグリコール単位およびシクロへキサンジメタノール単位を含むと考えられている)を意味し、THV(登録商標)はスリーエム・カンパニー(3M Company)から市販されているフルオロポリマーを意味する)。
【0034】
適切な多層光学フィルムおよび関連する構造についてのさらなる詳細は、米国特許第5,882,774号明細書(ジョンザ(Jonza)ら)、およびPCT国際公開第95/17303号パンフレット(オウダーカーク(Ouderkirk)ら)および同第99/39224号パンフレット(オウダーカーク(Ouderkirk)ら)の中に見ることができる。ポリマー多層光学フィルムおよびフィルム本体は、その光学的、機械的および/または化学的特性のため選択された付加的な層およびコーティングを含むことができる。米国特許第6,368,699号明細書(ギルバート(Gilbert)ら)を参照のこと。ポリマーフィルムおよびフィルム本体は、同様に、金属または金属酸化物コーティングまたは層などの無機層を含むこともできる。
【0035】
図示されていないものの、その他の層を、その他のハードコーティング層、接着剤層など(これらに制限されるわけではない)を含む光学デバイスの中に取込むことができる。さらに、反射防止材料18を基板16に直接塗布することもでき、そうでなければ代替的には転写可能な反射防止フィルムの剥離層にこれを塗布し、その後剥離層から基板まで熱プレスまたは光線照射塗布技術を用いて移送することもできる。
【0036】
基板16の反対側の面(すなわちハードコートの面)にさまざまな任意の恒久的かつ可撤性グレードの接着剤組成物をコーティングして、製品をディスプレイ表面に対し容易に取付けることができるようにすることも可能である。標準的には、接着剤、基板およびハードコーティング層は、接着剤に付着された剥離層をもつフィルムとして予備パッケージングされる。その後、剥離層は除去され、接着剤層はディスプレイのハウジングまたはその他の部域に結合されて光ディスプレイを形成する。
【0037】
適切な接着剤組成物としては、「クレイトン(Kraton)G−1657」という商品名称でクレイトン・ポリマーズ(Kraton Polymers)、テキサス州ウエストホロー(Westhollow、TX)から市販されているもののような(例えば水素化)ブロック共ポリマーならびにその他の(例えば類似の)熱可塑性ゴムが含まれる。その他の接着剤の例としては、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系およびエポキシ系の接着剤が含まれる。好ましい接着剤は、充分な光学品質および光安定性を有し、そのため接着剤が経時的にまたは天候曝露により黄化して光ディスプレイの画面品質を劣化させることはない。接着剤は、転写コーティング、ナイフコーティング、スピンコーティング、ダイコーティングなどなどのさまざまな既知のコーティング技術を用いて塗布できる。接着剤の例は、米国特許出願公開第2003/0012936号明細書の中で記述されている。かかる接着剤のうちのいくつかは、商品名称8141、8142および8161として、スリーエム・カンパニー、ミネソタ州セントポール(St.Paul、MN)から市販されている。基板層12は、さまざまな光学デバイス内で一般に用いられている多種多様なガラスといった非ポリマー材料またはポリエチレンテレフタラート(PET)、ビスフェノールAポリカルボナート、セルローストリアセタート、ポリ(メチルメタクリラート)および2軸延伸ポリプロピレンといったポリマー材料のいずれかで構成され得る。
【0038】
高屈折率層22は、モノおよびマルチアクリレート架橋系を有する従来の炭素ベースのポリマー組成物である。
【0039】
1つの好ましいアプローチにおいて層20を形成するのに用いられる本発明の低屈折率コーティング組成物は、まず最初に反応性フルオロポリマーおよびアミノ置換オルガノシランエステルまたはエステル等価物からアミノシラン改質フルオロポリマーを形成させ、次にマルチオレフィン架橋剤でアミノシラン改質フルオロポリマーを反応性光架橋することにより形成される。コーティング組成物を形成するための反応機序は、反応機序1としてさらに以下で詳述される。
【0040】
もう1つの好ましいアプローチにおいては、無機表面官能化ナノ粒子が、低屈折率コーティングに対して機械的強度および耐スクラッチ性を提供するべく、先行する段落において記述された低屈折率組成物20に対して添加される。
【0041】
もう1つの好ましいアプローチにおいては、テトラエトキシシラン(「TEOS」)またはビニルトリエトキシシラン(「ビニルTEOS」)またはその他のテトラアルコキシシランまたはトリアルコキシシランのゾルゲル前駆体が、上述の低屈折性組成物20に対し導入される。硬化の時点で、これは、機械的強度および耐スクラッチ性を増大させる低屈折率コーティング内で無機シリカ相を形成する。
【0042】
いずれかの好ましいアプローチの中で形成される低屈折率組成物は次に、ディスプレイ12の基板16に直接的または間接的に塗布されて、製品10上に反射防止コーティング18の低屈折率部分20を形成する。この発明では、製品10は、グレアの減少および光学透過性の増大を含めた傑出した光学特性を有する。さらに、反射防止コーティング18は、傑出した耐久性を有し、防染および防汚特性を提供することができる。
【0043】
さまざまな低屈折率組成物を形成するための成分は、以下の段落で要約されており、その後に、表面機能化されたナノ粒子なくして、低屈折率コーティングを形成するための反応機序が示されている。
【0044】
フルオロポリマー
低屈折率コーティングに使用されるフルオロポリマーは、2つの基本的部類のうちの一つにそれらを広く分類することによって描写することができる。第1の部類には、フッ化ビニリデン(VDF)およびヘキサフルオロプロピレン(HFP)そして任意にはテトラフルオロエチレン(TFE)単量体から誘導されたインター重合された単位を含む非晶質フルオロポリマーが含まれる。これらの例は、スリーエム・カンパニーからダイニオン(Dyneon)(登録商標)フルオロエラストマーFC2145およびFT2430として市販されている。本発明で考慮されている付加的な非晶質フルオロポリマーは、例えばスリーエム・カンパニーより入手可能で市場ではKel−F(登録商標)3700として知られているVDF−クロロトリフルオロエチレン共ポリマーである。本書で使用されている非晶質フルオロポリマーというのは、基本的にいかなる結晶も含まず、例えば示差走査熱量測定(DSC)により決定されるような有意な融点を全く有していない材料である。本論述に関しては、共ポリマーは、2つ以上の異種の単量体の同時重合の結果としてもたらされるポリマー材料として定義され、単独ポリマーというのは、単一の単量体の重合の結果として得られるポリマー材料である。
【0045】
本発明において有用であるフルオロポリマーの第2の有意な部類は、スリーエム・カンパニーからダイニオン(登録商標)PVDF、として市販されているポリフッ化ビニリデン(PVDFなどの結晶質融点を正に含むTFEまたはVDFといったフッ素化単量体に基づく単独および共ポリマー、又より好ましくはTFE−HFP−VDFの結晶質微細構造に基づくものといったTFEの熱可塑性共ポリマーである。かかるポリマーの例は、スリーエムからダイニオン(登録商標)フッ素樹脂THV(登録商標)200といった商品名で入手可能なものである。
【0046】
これらの部類のフルオロポリマーの一般的記述および調製は、「Encyclopedia Chemical Technology、Fluorocarbon Elastomers」、カーク・オスマー(Kirk−Othmer)(1993年)、または「Modern Fluoropolymers」、J.シアーズ(Scheirs)編、(1997年)、J Wiley Science、第2、13および32章(ISBN 0−471−97055−7)中に見ることができる。
【0047】
好ましいフルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン(「TFE」)、ヘキサフルオロプロピレン(「HFP」)およびフッ化ビニリデン(「VDF」、「VF2」)として知られている構成単量体から形成された共ポリマーである。これらの構成成分についての単量体構造が以下に示されている。
【化1】

【0048】
好ましいフルオロポリマーは、構成成分単量体(HFPおよびVDF)のうちの少なくとも2つから、そしてより好ましくは、変動するモル量で構成成分単量体のうちの3つ全てから成る。(1)、(2)または(3)に描かれていないが本発明において同じく有用である付加的な単量体には、一般構造CF2=CF−ORfのパーフルオロビニルエーテル単量体が含まれ、ここでRfは1〜8個の炭素の有枝または線状ペルフルオロアルキルラジカルであり得、それ自体酸素などの付加的なヘテロ原子を含有し得る。特定の例としては、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、ペルフルオロ(3−メトキシ−プロピル)ビニルエーテルがある。付加的な例は、スリーエムに譲渡されたウォーム(Worm)(国際公開第00/12574号パンフレット)およびカールソン(Carlson)(米国特許第5,214,100号明細書)の中に見られる。
【0049】
本発明に関しては、3つの構成単量体全てを伴う結晶質共ポリマーは、以下THVと呼ばれるものとし、一方VDF−HFPそして任意にはTFEから成る非晶質共ポリマーは以下ASTMD1418の中に記されているようにFKMまたはFKMエラストマーと呼ばれる。THVおよびFKMエラストマーは、以下の一般構造式(4)を有する。
【化2】

なお式中、x、yおよびzはモル百分率で表わされている。
【0050】
THVなどのフッ素熱可塑性材料(結晶質)については、xはゼロより大きく、yのモル量は標準的に約15モル百分率未満である。本発明で使用するために考慮されているTHVの1つの市販の形態は、ミネソタ州St.PaulのダイニオンLLCにより製造されたポリマー、ダイニオン(登録商標)フッ素熱可塑性樹脂THV(登録商標)220である。これらの基準を満たし、例えばダイニオンLLC、ミネソタ州セントポール(St.Paul、MN)から市販されているその他の有用なフッ素熱可塑性物質は、商品名THV(登録商標)200、THV(登録商標)500、およびTHV(登録商標)800として販売されている。THV(登録商標)200は、MEKなどの共通の有機溶媒中で容易に溶解でき、これがコーティングおよび加工を容易にすることから、最も好ましいが、これは、好ましいコーティング挙動から生まれる選択であり、低屈折率コーティングで使用される材料を制限するものではない。
【0051】
さらに、前段落の基準に特定的に入るわけではないその他のフッ素樹脂材料も同様に、本発明により考慮されている。例えば、非常に低いモルレベルのHFPを有するPVDF含有フッ素樹脂材料も本発明により考慮されており、ミネソタ州St.PaulのダイニオンLLCより入手可能なダイニオン(登録商標)PVDF6010または3100;およびElfアトケム・ノースアメリカ(Atochem North America)Inc.より入手可能なKynar(登録商標)740、2800、9301の商品名で販売されている。さらに、xがゼロであり、yが約0〜18パーセントであるその他のフッ素樹脂材料も考慮されている。任意には、(4)に示されている微細構造も同様にエチレン、プロピレンまたはブチレンなどの付加的な非フッ素化単量体を含有し得る。その例は、ダイニオン(登録商標)ETFEおよびダイニオン(登録商標)HTEフッ素樹脂として市販されている。
【0052】
本発明において有用であるフルオロエラストマー組成物(非晶質)については、xは、yのモル百分率が微細構造を非晶質にするのに充分なほどに高い限り(標準的には約18モル百分率超)ゼロであり得る。このタイプの市販のエラストマー化合物の一例は、ダイニオン(登録商標)フルオロエラストマーFC2145という商品名でダイニオンLLC、ミネソタ州セントポール(St.Paul、MN)から入手可能である。
【0053】
xがゼロ超である、本発明において有用な付加的フルオロエラストマー組成物が存在する。かかる材料は、往々にしてエラストマーTFE含有三元ポリマーと呼ばれる。このタイプの市販のエラストマー化合物の一例は、ダイニオンLLC、ミネソタ州セントポール(St.Paul、MN)から入手でき、ダイニオン(登録商標)フルオロエラストマーFT243という商品名で販売されている。
【0054】
さらに、先行段落で分類されていないその他のフルオロエラストマー組成物が本発明でも同様に有用である。例えば、プロピレン含有フルオロエラストマーが、本発明で有用な部類である。塩基耐性エラストマー(「BRE」)として知られているプロピレン含有フルオロエラストマーの例は、ダイニオン(登録商標)BRE7200という商標でダイニオンから市販されており、ミネソタ州St.Paulのスリーエムカンパニーから入手可能である。同様に使用可能であるTFE−プロピレン共ポリマーのその他の例は、ノースカロライナ州シャルロット(Charlotte、North Carolina)の旭硝子カンパニー(Asahi Glass Company)から入手可能でありAflaf(登録商標)という商品名で市販されている。
【0055】
1つの好ましいアプローチにおいては、これらのポリマー組成物はさらに、既知の数多くの技術を使用してポリマー微細構造へとインター重合される、ハロゲン含有硬化部位単量体(「CSM」)および/またはハロゲン化末端基などの反応性官能基を含む。これらのハロゲン基は、コーティング混合物のその他の構成要素に向かう反応性を提供し、ポリマー網状構造の形成を促進する。有用なハロゲン含有単量体は当該技術分野において周知であり、標準的な例はアポテーカー(Apotheker)らに対する米国特許第4,214,060号明細書、ムーア(Moore)に対する欧州特許第398241号明細書、およびヴィンチェンツォ(Vincenzo)らに対する欧州特許第407937号B1明細書の中に見ることができる。
【0056】
ハロゲン含有硬化部位単量体に加えて、フルオロポリマー微細構造内にニトリル含有硬化部位単量体を取込むことも考えられる。かかるCSMは、ポリマーがペルフルオロ化されている場合、すなわちいかなるVDFもその他の水素含有単量体も含まない場合に、特に有用である。本発明が考慮している特定のニトリル含有CSMがグルータレット(Grootaret)ら、(スリーエムに譲渡された米国特許第6,720,360号明細書)の中で記述されている。
【0057】
任意には、反応性ハロゲン末端基を含有するフルオロポリマー連鎖末端を生成するハロゲン化連鎖移動剤の賢明な使用を介してポリマー微細構造中にハロゲン硬化部位を導入することができる。かかる連鎖移動剤(「CTA」)は、文献中で周知であり、標準的な例としてはBr−CF2CF2−Br、CF2Br2、CF22、CH22がある。その他の標準的な例は、ワイスバーガー(Weisgerber)に対する米国特許第4,000,356号明細書中に見られる。CSMまたはCTA剤またはその両方のいずれを用いてポリマー微細構造の中にハロゲンが取込まれるのかは、その両方共が、アクリレートなどの網状構造のその他の構成要素との同時反応およびUV架橋に向かってさらに高い反応性をもつフルオロポリマーを結果としてもたらすことから、特に関連性の無いことである。(以下で論述する)脱フッ化水素化アプローチに比べた、同時架橋された網状構造を形成する上での硬化部位単量体使用の利点は、アクリレートおよびフルオロポリマーの反応が、反応目的でポリマー主鎖内の不飽和に依存することのないものであることから、形成されたポリマー層の光学的清澄度の脅かされることがない、という点にある。かくして、例えばミネソタ州St.PaulのダイニオンLLCから入手可能なダイニオン(登録商標)E−15742、E−18905、またはE−18402などの臭素含有フルオロエラストマーを、フルオロポリマーとしてTHVまたはFKMと併用してまたはその代りに使用することができる。
【0058】
もう1つの実施形態においては、フルオロポリマー微細構造はまず最初に、フルオロポリマーおよび炭化水素基板または層の間に増大した結合強度を作り出すべくフルオロポリマーの充分な炭素−炭素不飽和を提供することになるようなあらゆる方法により脱フッ化水素化される。脱フッ化水素化プロセスは、不飽和を誘発するための周知のプロセスであり、それは、ジフェノールおよびジアミンなどの求核試薬によるフルオロエラストマーのイオン架橋のため最も一般的に使用されている。この反応は、VDF含有エラストマーまたはTHVの固有の特性である。関連する記述は、「The Chemistry of Fluoro carbon Elastomer」、A.L.ロゴテティス(Logothetis)、Prog.Polymer Science(1989年)、第14号、251頁中に見ることができる。さらに、かかる反応は、同様に、一次および二次脂肪族単官能基アミンを用いても可能であり、ペンダントアミン側基を用いてDHF−フルオロポリマーを生成することになる。しかしながら、かかるDHF反応は、かかる試薬によりHFを失なう能力が欠如していることを理由としてVDF単位を含有しないポリマーの中では不可能である。
【0059】
本発明の状況下で有用であるフルオロポリマーの主要なタイプに加えて、上述のDHF付加反応を免れているもののそれでもアミンと光化学的に反応して低屈折率フルオロポリマーコーティングを生成するペルフルオロポリマーまたはエチレン含有フルオロポリマーの使用が関与している第3の特殊なケースが存在している。その例としては、TFEとHFPまたはペルフルオロビニルエーテルまたは2,2−ビストリフルオロメチル−4,5−ジフルオロ1,3ジオキソールの共ポリマーがある。かかるペルフルオロポリマーは、ダイニオン(登録商標)過フルオロエラストマー、デユポン・カルレッツ(DuPont Kalrez)(登録商標)またはデュポン・テフロン(登録商標)(DuPont Teflon)(登録商標)AFとして市販されている。エチレン含有フルオロポリマーの例は、ダイニオン(登録商標)HTEまたはダイニオン(登録商標)、ETFE共ポリマーとして知られている。かかるポリマーは、上述のシアーズの参考文献、第15、19および22章の中で記述されている。これらのポリマーは、標準的な有機溶媒内で容易に溶解できないものの、これらはHFE7100およびHFE7200(スリーエム・カンパニー、ミネソタ州セントポール(St.Paul、MN)より入手可)などの過フッ素化溶媒の中で可溶化され得る。これらのタイプのフルオロポリマーはその他のポリマーまたは基板に対し容易に結合されない。しかしながら、米国特許第6,685,793号および6,630,047号明細書中のジン(Jing)ら、の研究作業は、かかる材料をアミンの存在下でその他の基板に光化学的にグラフト重合し結合させ得る方法を教示している。しかしながら、これらの特定の出願の中では、多機能アクリレートの存在下での溶液コーティングおよび同時架橋の概念は考慮されていない。
【0060】
当然のことながら、当業者であれば認識するように、以上で特定的に列挙されていないその他のフルオロポリマーおよびフルオロエラストマーも、本発明の中での使用のために利用可能であり得る。かくして、上述の列挙は、制限的な意味をもたず、利用可能な多様な市販の製品の一例にすぎないものであると考えるべきである。
【0061】
本発明の好ましい実施形態で利用される相容性のある有機溶媒は、メチルエチルケトン(「MEK」)である。しかしながら、フッ素化溶媒を含めたその他の有機溶媒も、相容性のある有機溶媒の混合物と同様に利用可能であり、本発明の精神および範囲内になおも入るものである。例えば、アセトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン(「MIBK」)、メチルアミルケトン(「MAK」)、テトラヒドロフラン(「THF」)、酢酸メチル、イソプロピルアルコール(「IPA」)およびそれらの混合物を含めた考慮されているその他の有機溶媒も同じく利用可能である。
【0062】
アミノ置換オルガノシランエステルまたはエステル等価物
アミノ置換オルガノシランエステルまたはエステル等価物は、ケイ素原子上に少なくとも1つのエステルまたはエステル等価物基、好ましくは2個またはより好ましくは3個の基を担持する。エステル等価物は、当業者にとっては周知のものであり、シランアミド(RNR’Si)、シランアルカノアート(RC(O)OSi)、Si−O−Si、SiN(R)−Si、SiSRおよびRCONR’Siなどの化合物を含む。これらのエステル等価物は、同様に、エチレングリコール、エタノールアミン、エチレンジアミンおよびそのアミドから誘導されたものなどの環状のものでもあり得る。RおよびR’は、要約の中の「エステル等価物」の定義において定義づけされている通りである。エステル等価物のもう1つのかかる環状の例(5)は以下のものである:
【化3】

【0063】
この環状の例において、R’は、それがアリールであり得ないという点を除いて、先行する文中で定義されている通りである。3−アミノプロピルアルコキシシランは、加熱時点で環化するものとして周知であり、これらのRNHSi化合物は、本発明において有用なものであると思われる。好ましくは、アミノ置換オルガノシランエステルまたはエステル等価物は、結合と干渉し得る界面にある離脱残基を回避するべくメタノールとして容易に揮発させられるメトキシなどのエステル基を有する。アミノ置換オルガノシランは少なくとも1つのエステル等価物を有していなくてはならず、例えばそれはトリアルコキシシランであり得る。例えば、アミノ置換オルガノシランは、構造式(Z2N−L−SiX’X’’X’’’)を有することができ、ここでZは水素、アルキル、またはアミノ置換アルキルを含めた置換アリールまたはアルキルであり;ここでLは2価の直鎖C1−12アルキレンであるかまたはC3−8シクロアルキレン、3−8員環ヘテロシクロアルキレン、C2−12アルケニレン、C4−8シクロアルケニレン、3−8員環ヘテロシクロアルケニレンまたはヘテロアリーレン単位を含み得る。Lは2価の芳香族であり得、そうでなければ、1つ以上の2価の芳香族基またはヘテロ芳香族基により中断され得る。芳香族基は、ヘテロ芳香族を内含し得る。ヘテロ原子は好ましくは窒素、イオウまたは酸素である。Lは任意には、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニル、C1−4アルコキシ、アミノ、C3−6シクロアルキル、3−6員ヘテロシクロアルキル、単環アリール、5−6員環ヘテロアリール、C1−4アルキルカルボニルオキシ、C1−4アルキルオキシカルボニル、C1−4アルキルカルボニル、ホルミル、C1−4アルキルカルボニルアミノ、またはC1−4アミノカルボニルで置換される。Lはさらに、任意には、−O−、−S−、−N(Rc)−、−N(Rc)−C(O)−、−N(Rc)−C(O)−O−、−0−C(O)− N(Rc)−、−N(Rc)−C(O)−N(Rd)−、−O−C(O)−、−C(O)−O−、またはO−C(O)−O−により中断される。RcおよびRdの各々は、独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシアルキル、アミノアルキル(一級、二級または三級)またはハロアルキルであり;X’、X’’およびX’’’の各々は、X’、X’’およびX’’’のうちの少なくとも1つが不安定基であることを条件として、C1−18アルキル、ハロゲン、C1−8アルコキシ、C1−8アルキルカルボニルオキシまたはアミノ基である。さらに、X’、X’’およびX’’’のうちのいずれか2つまたは全てが、共有結合を通して接合され得る。アミノ基はアルキルアミノ基であり得る。
【0064】
アミノ置換オルガノシランの例としては3−アミノプロピルトリメトキシシラン(SILQUEST A−1110);3−アミノプロピルトリエトキシシラン(SILQUEST A−1100);3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(SILQUEST A−1120);SILQUEST A−1130、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン;(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリエトキシシラン;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(SILQUEST A−2120)、ビス−(γ−トリエトキシシリルプロピル)アミン(SILQUEST A−1170);N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリブトキシシラン;6−(アミノヘキシルアミノプロピル)トリメトキシシラン;4−アミノブチルトリメトキシシラン;4−アミノブチルトリエトキシシラン;p−(2−アミノエチル)フェニルトリメトキシシラン;3−アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン;3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン;オリゴマーミノシラン、例えばDYNASYLAN 1146、3−(N−メチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン;3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン;3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン;3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン;3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン;4−アミノフェニルトリメトキシシラン;3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン;2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン−1−エタンアミン(6);2,2−ジエトキシ−l−アザ−2−シラシクロペンタン−1−エタンアミン(7);2,2−ジトキシ−l−アザ−2−シラシクロペンタン(8);および2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン(9)が含まれる。
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【0065】
付加的な「前駆体」化合物、例えばビス−シリル尿素[RO)3Si(CH2)NR]2C=0も又、まず最初に熱により解離させることによってアミンを遊離させるアミノ置換オルガノシランエステルまたはエステル等価物の例である。
【0066】
アミノ置換オルガノシランエステルまたはエステル等価物は好ましくは、酢酸エチルまたは酢酸メタノールまたはメチルなどの有機溶媒の中に希釈された状態で導入される。1つの好ましいアミノ置換オルガノシランエステルまたはエステル等価物は、3−アミノプロピルメトキシシラン(H2N−(CH23−Si(OMe)3)またはそのオリゴマーである。
【0067】
1つのかかるオリゴマーは、フランス、パリ(Paris)のOsiスペシャリティーズ(Specialties)(GE Silicones)により製造されたSILQUEST A−1106である。アミノ置換オルガノシランエステルまたはエステル等価物は、層間の界面接着を改善するべくその他の反射防止層とシロキサン結合を形成するために利用可能なペンダントシロキシ基を提供するように以下でさらに詳述するプロセスにおいてフルオロポリマーと反応する。かくしてカップリング剤は、層間の接着促進剤として作用する。
【0068】
マルチオレフィン架橋剤
本発明の架橋剤はマルチオレフィン架橋剤に基づくものである。より好ましくは、本マルチオレフィン架橋剤は、単独重合可能なものである。より好ましくは、マルチオレフィン架橋剤はマルチアクリレート架橋剤である。
【0069】
有用な架橋アクリレート剤としては、例えば(a)ジ(メト)アクリル含有化合物、例えば1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレートモノメタクリラ−ト、エチレングリコールジアクリレート、アルコキシル化脂肪族ジアクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン改質ネオペンチルグリコールヒドロキシピバラートジアクリレート、カプロラクトン改質ネオペンチルグリコールヒドロキシピバラートジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシル化(10)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(3)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(30)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(4)ビスフェノールAジアクリレート、ヒドロキシビバルアルデヒド改質トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート;(b)トリ(メト)アクリル含有化合物、例えばグリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリアクリレート(例えば、エトキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート)、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシル化トリアクリレート(例えば、プロポキシル化(3)グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化(5.5)グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート)、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートトリアクリレート;(c)高官能性(メト)アクリル含有化合物、例えばジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エトキシル化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、カプロラクトン改質ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;(d)オリゴマー(メト)アクリル化合物、例えばウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート;前述のもののポリアクリルアミド類似体およびそれらの組合せからなる群から選択されたポリ(メト)アクリル単量体が含まれる。かかる化合物は、例えばペンシルバニア州エクストン(Exton、Pennsylvania)のサルトマーカンパニー(Sartomer Company);ジョージア州SmyrnaのUCBケミカルズコーポレーション(Chemicals Corporation);およびウィスコンシン州Milwaukeeのアルドリッチ・ケミカル・カンパニー(Aldrich Chemical Company)などの供給メーカーから広く入手可能である。さらに有用な(メト)アクリレート材料には、例えば米国特許第4,262,072号明細書(ウェンドリング(Wendling)ら)の中で記述されているようなヒダントイン部分含有ポリ(メト)アクリレートが含まれる。
【0070】
好ましい架橋剤には少なくとも3つの(メト)アクリレート官能基が含まれる。好ましい市販の架橋剤としては、ペンシルバニア州エクストン(Exton、Pennsylvania)のサルトマー・カンパニーから、例えば「SR351」の商品名で入手可能なトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、「SR444」または「SR494」の商品名で入手可能なペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート(PETA)、および「SR399」の商品名で入手可能なジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとして入手可能なものが含まれる。さらに、TMPTAおよびMMA(メチルメタクリラート)の混合物などの多官能および低官能アクリレート(単官能アクリレート)の混合物も又利用可能である。
【0071】
本発明で利用可能なその他の好ましい架橋剤としては、ペルフルオロポリエーテルアクリレートにより例示されるフッ素化アクリレートが含まれる。これらのペルフルオロポリエーテルアクリレートは、ヘキサフルオロプロピレンオキシド(「HFPO」)の単官能アクリレートおよび/またはマルチアクリレート誘導体に基づいており、単独の架橋剤としてか又好ましくはTMPTAまたはPETAと併用して使用可能である。
【0072】
ジビニルベンゼンまたは1,7−コタジエンおよびその他の類似のものなどの数多くのタイプのオレフィン化合物が、当該条件下で架橋剤として挙動するものと予想できると思われる。
【0073】
表面特性をさらに改善し、屈折率を低下させるため、フルオロポリマー特に臭素含有フルオロポリマーと相互作用するようにペルフルオロポリエーテルモノまたはマルチアクリレートも使用された。かかるアクリレートは、光学特性に影響を及ぼすことなく、広範囲の基板のための防汚性、離型および潤滑処理を提供するべく、フルオロケミカル表面に典型的な疎水および疎油特性を提供する。
【0074】
実施例で使用されている「HFPO−」というのは、「a」が、1,211g/モルの平均分子量で約6.3を平均としており、分別蒸留による精製を伴って米国特許第3250808号明細書(ムーアら)の中で報告されている方法に従って調製可能な末端基F{CF(CF3)CF2O}aCF(CF3)−を意味する。
【0075】
表面改質ナノ粒子
結果として得られる低屈折率層20の機械的耐久性は、表面改質された無機粒子を導入することによって増強可能である。
【0076】
これらの無機粒子は、2つ以上の実質的に単分散分布を配合することによって得られる実質的に単分散のサイズ分布または多モード分布を有することができる。凝集が無機酸化物粒子の沈殿またはハードコートのゲル化を結果としてもたらし得ることから、無機酸化物粒子は、標準的には非凝集(実質的に離散的)状態にある。無機酸化物粒子は標準的に5ナノメートルから100ナノメートルの平均粒子直径をもち、サイズ的にコロイド状である。これらのサイズ範囲は、結合剤樹脂内への無機酸化物粒子の分散を容易にし、望ましい表面特性および光学清澄度をもつセラマーを提供する。無機酸化物粒子の平均粒度は、一定の与えられた直径の無機酸化物粒子の数を計数するため、透過型電子顕微鏡を用いることで測定可能である。無機酸化物粒子としては、コロイド状シリカ、コロイド状チタニア、コロイド状アルミナ、コロイド状ジルコニア、コロイド状バナジア、コロイド状クロミア、コロイド状酸化鉄、コロイド状酸化アンチモン、コロイド状酸化錫およびそれらの混合物が含まれる。最も好ましくは、粒子は二酸化ケイ素(SiO2)で形成されている。
【0077】
表面粒子は、フルオロポリマーに向かう反応性官能基をもつアルキルまたはフッ素化アルキル基およびそれらの混合物を有するように設計されたポリマーコーティングで改質される。かかる官能基には、無機粒子と低屈折率フルオロポリマー特にクロロ、ブロモ、ヨードまたはアルコキシシラン硬化部位単量体を含有するものの間の相互作用を増強すると考えられているメルカプタン、ビニル、アクリレートその他が含まれる。本発明により考慮されている特異的表面改質剤には、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランA174 OSIスペシャルィテーズ・ケミカル(Specialties Chemical))、ビニルトリアルコキシシラン、例えばトリメトキシおよびトリエトキシシランおよびヘキサメチルジシリザン(アルドリッチ・カンパニーから入手可能)が含まれるがこれらに制限されるわけではない。
【0078】
フルオロポリマーを含有するこれらのフッ化ビニリデンは、脱フッ化水素化およびミヒャエル付加プロセスを介して−NH2、−SHおよびOHなどの求核基を有する化学種とのグラフト化を可能にするものとして知られている。
【0079】
ゾルゲル前駆体
TEOSまたはビニルTEOSなどの試薬は、安定した3次元シリカ網状構造(すなわちシロキサン網状構造)を形成することが充分に知られている。従ってTEOSまたはビニルTEOSを低屈折率層20の組成に導入すると、硬化したコーティング層内部で上述の網状構造を形成することによりこのコーティング層の機械的耐久性および耐スクラッチ性が増強されることになる。
【0080】
TEOSおよびビニルTEOSが本発明においては好まれるものの、ゾルゲル前駆体としてその他のテトラアルコキシシランおよびトリアルコキシシラン材料を利用することが可能である。例えば、その他のトリアルコキシシラン材料としては、メチルトリアルコキシシラン、エチルトリアルコキシシランおよび高級アルキルトリアルコキシシランが含まれる。
光開始剤および添加剤
【0081】
硬化を促進するため、本発明に従った重合性組成物にはさらに、少なくとも1つの遊離ラジカル光開始剤が含まれていてよい。標準的には、かかる開始剤光開始剤が存在する場合、それには、重合性組成物の合計重量に基づいて約10重量パーセント未満、より標準的には約5重量パーセント未満の重合性組成物が含まれている。
【0082】
遊離ラジカル硬化技術は、当該技術分野において周知であり、例えば熱硬化方法ならびに電子ビームまたは紫外線放射などの放射線硬化方法を含む。遊離ラジカル熱および光重合技術に関するさらなる詳細は、例えば米国特許第4,654,233号明細書(グラント(Grant)ら);第4,855,184号明細書(クラン(Klun)ら);および第6,224,949号明細書(ライト(Wright)ら)に見ることができる。
【0083】
有用な遊離ラジカル光開始剤には、例えば、アクリレートポリマーのUV硬化において有用なものとして知られているものが含まれる。かかる開始剤には、ベンゾフェノンおよびその誘導体;ベンゾイン、アルファ−メチルベンゾイン、アルファ−フェニルベンゾイン、アルファ−アリルベンゾイン、アルファ−ベンジルベンゾイン;ベンゾインエーテル、例えばベンジルジメチルケタール(ニューヨーク州Tarrytownのチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から「イルガキュア(IRGACURE)651」という商品名で市販されている)、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル;アセトフェノンおよびその誘導体、例えば2−ヒドロキシ−2−メチル−l−フェニル−1−プロパン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーションから「ダロキュア(DAROCUR)1173」という商品名で市販されている)および1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(同じくチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーションから「イルガキュア184」という商品名で市販されている);2−メチル−l−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパン、同じくチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーションから「イルガキュア907」という商品名で市販されている);2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−l−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−l−ブタノン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーションから「イルガキュア369」という商品名で市販されている);芳香族ケトン、例えばベンゾフェノンおよびその誘導体並びにアントラキノンおよびその誘導体;ジアゾニウム塩、イオジニウム塩、スルホニウム塩といったオニウム塩;チタン錯体、例えば同じくチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーションから「CGI784DC」という商品名で市販されているもの);ハロメチルニトロベンゼン;およびモノ−およびビス−アシルホスフィン、例えば「イルガキュア1700」、「イルガキュア1800」、「イルガキュア1850」、「イルガキュア819」、「イルガキュア2005」、「イルガキュア2010」、「イルガキュア2020」および「ダロキュア4265」という商品名でチバ・スペシャルティ・ケミカルズ・コーポレーションから入手可能なものが含まれる。2つ以上の光開始剤の組合せを使用することができる。さらに、「イルガキュア369」などの光開始剤(単複)と併用して、ミシシッピ州パスカグーラ(Pascagoula、MS)のファースト・ケミカル・コーポレーシン(First Chemical Corporation)から市販されている2−イソプロピルチオキサントンなどの増感剤を使用することもできる。
【0084】
より好ましくは、本発明で用いられる開始剤は、スペインガララーテ(Gallarate)のランベルティ(Lamberti)S.p.Aから入手可能なベンジルジメチルケタール光開始剤である「ダロキュア1173」または「エサキュア(ESACURE)(登録商標)KB−1」のいずれかである。
【0085】
代替的に、または併用する形で、熱開始剤の使用を反応混合物に組込むことが可能である。有用な遊離ラジカル開始剤には、例えばアゾ、過酸化物、過硫酸塩およびレドックス開始剤およびそれらの組合せが含まれる。
【0086】
当業者であれば、コーティング組成物がその他の任意のアシュバント、例えば界面活性剤、帯電防止剤(例えば導電性ポリマー)、均染剤、光線感作物質、紫外線(「UV」)吸収剤、安定剤、酸化防止剤、湿潤剤、顔料、染料、可塑化剤、懸濁剤などを含有しうるということを認識する。
【0087】
以下では、低屈折率組成物を形成するための反応機序(反応機序1)がさらに詳細に記述されている。
【0088】
反応機序1
1つの好ましいアプローチにおいて層20を形成するのに用いられる本発明の低屈折率コーティング組成物は、まず第1にアミノ−シラン改質フルオロポリマーを形成させ、次にマルチオレフィン(ここではアクリレート)架橋剤(フッ素化アクリレートを含む)でアミノシラン改質フルオロポリマーを反応性光架橋させることによって形成される。コーティング組成物を形成するための機序には、以下に記述されるような3つの全く異なるステップが関与している。
【0089】
ステップ1:アミノシラン改質フルオロポリマーの形成
反応機序1においては、上述の通りのフルオロポリマーをまず第1に、相容性のある有機溶媒中に溶解させる。好ましくは、溶液は約10重量%のフルオロポリマーと90重量%の有機溶媒である。任意には、上述の通りの表面改質ナノ粒子を、低屈折率組成物全体の約5〜10重量%を超えない量でフルオロポリマー溶液に添加することが可能である。
【0090】
本発明の好ましい実施形態において利用される相容性のある有機溶媒は、メチルエチルケトン(「MEK」である。しかしながら、有機フッ素化溶媒を含むその他の有機溶媒、ならびに相容性のある有機溶媒の混合物も同様に利用可能であり、なおも本発明の精神および範囲内に入る。例えば、考慮されているその他の有機溶媒には、アセトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン(「MIBK」)、メチルアミルケトン(「MAK」)、テトラヒドロフラン(「THF」)、イソプロピルアルコール(「IPA」)が含まれ、又それらの混合物も同様に利用可能である。
【0091】
次に、フルオロポリマー溶液に対し、アミノ置換オルガノシランエステルまたはエステル等価物(3−アミノプロピルメトキシシランまたはそのオリゴマー(A1106)のいずれか)の溶液が添加される。
【0092】
混合物を充分に反応させ、アミノシラン改質フルオロポリマーを形成させるよう充分な時限(例えば約数時間から数日の間)だけ、混合物を放置する。
【0093】
アミノシラン改質フルオロポリマーを形成するための反応機序は、好ましくは、実質的に、THVまたはFKM分子内でHFP基の隣りに位置設定されているフッ化ビニリデン基において発生する。反応機序(10)は、VDF基の脱フッ化水素化反応とそれに続くHF除去反応であり、以下で化学的に描写されている(例示を目的として、アミノ置換オルガノシランエステルまたはエステル等価物として3−アミノプロピルメトキシシランが利用されている)。
【化8】

【0094】
本反応は、フルオロポリマー中に含有されているHFP基にカップリングされたVDF基の数により制限される。その結果、溶液中の余剰のアミノシランカップリング剤は、あったとしてもわずかな付加的な化学的効果しか示さない。アミノ置換オルガノシランエステルまたはエステル等価物は、合計混合物の約5〜10重量%の範囲内で添加される。
【0095】
ステップ2:アミノシラン改質フルオロポリマーに対するマルチオレフィン架橋剤の導入および基板材料に対するその後の塗布
フッ素化アクリレートを含む多官能(メト)アクリレートなどのC=C2重結合含有オレフィン架橋剤を次に、ステップ1で形成されたアミノシラン改質フルオロポリマーの入った容器内に導入する。
【0096】
結果として得た組成物を次に、湿潤層として(1)光学基板16またはハードコートされた光学基板に直接、または(2)高屈折率層に、または(3)転写可能なフィルムの剥離層のいずれかに塗布する。光学基板16はガラスまたはポリマー材料、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)であり得ると考えられる。
【0097】
次に、摂氏約100〜120度の間で湿潤層を約10分間空気乾燥器内で乾燥させて乾燥層(すなわちコーティングされた対象)を形成させる。
【0098】
ステップ3:架橋反応
次に、コーティングされた対象を、UV処理機由来の紫外線光源で照射して、マルチアクリレート改質されたアミノシラン改質フルオロポリマーと共重合する多官能(メタ)アクリエレートのラジカル開始架橋を誘発する。好ましくは、コーティングされた対象は、コンベヤベルトに沿った1つ以上のパスにおいてHバルブまたは254−ナノメートル(nm)ランプによる紫外線照射に付される。好んで使用されるUV処理機は、メリーランド州ゲイサーズバーグ(Gaithersburg、Maryland)のフュージョンUVシステムズ(Fusion UV Systems、Inc)により製作されたフュージョン(Fusion)UV、H−バルブ付きMC−6RQNモデルである。
【0099】
代替的には、コーティングされた対象を、熱および過酸物化合物などの適切なラジカル開始剤を適用することにより、熱架橋させることができる。
【実施例】
【0100】
以下の段落では、特定的な1組の反応例および実験的方法論を介して、本発明の低屈折率組成物を形成するためのコンポーネントステップの各々の改良が例示されている。これらの段落は、試験方法、成分および各々のコンポーネントステップの改良を確認するために行なわれる実験的試験について詳述している。
【0101】
A.試験方法
1.剥離強度
界面接着を判定するために剥離強度を用いた。T−剥離試験を介した層間接着の試験を容易にするため、THV220またはFC2145の厚いフィルム(20ミル(0.51mm))を、剥離測定に充分な厚みを得るべくフルオロポリマーコーティングを伴うフィルムの側に積層させた。一部のケースでは、優れた表面接触を保つため、積層シートに対しわずかな力を加えた。剥離試験用つまみとして作用させるための未結合領域を提供するため、基板表面とフルオロポリマーフィルムの間で2インチ×3インチ(5.08cm×7.62cm)積層シートの短かい縁部に沿って約0.25インチ(0.64mm)、PTFE繊維シートのストリップを挿入した。積層シートを次に、ウォバッシュ油圧プレス(ウォバッシュ・メタルプロダクツ・カンパニー(Wabash Metal Products Company)、Inc.、油圧部門、インディアナ州ウォバシュ(Wabash、)の加熱したプラテンの間で2分間200℃でプレスし、直ちにコールドプレスまで移送した。コールドプレスにより室温まで冷却した後、結果として得た試料をT−剥離測定に付した。
【0102】
積層試料の剥離強度は、より一般的には「T−剥離」試験として知られている「接着剤の剥離強度についての標準試験方法」という題のASTMD−1876に記述されている試験手順に従って判定した。シンテック(Sintech)テスター20(MTSシステムズ・コーポレーション(MTS Systems Corporation)、Eden Prairie、ミネソタ州から入手可能)を備えたインストロン(INS(登録商標)TRON)モデル1125テスター(インストロン(Instron)Corp.、Canton、マサチューセッツ州から入手可能)を用いて、剥離データを生成した。インストロンテスターは、4インチ/分(10.2cm/分)のクロスヘッド速度で作動させた。剥離試験中に測定された平均負荷として剥離強度を計算し、少なくとも2つの試料の平均として、幅1インチあたりのポンド数(ポンド/インチ)単位(およびN/cm)で報告した。
【0103】
2.熱湯試験
熱湯試験においては、コーティングされた試料を2時間、熱湯の中に置いた。試料を取り出し、試料を綿密に検査して、基板から低屈折率層が層間剥離を起こしたか否かを調べた。
【0104】
3.チーズクロス耐久性試験
本発明の硬化済みフィルムの耐摩耗性を、フィルムの表面を横断してゴム製ガスケットを用いてスタイラスに締結されたチーズクロスを揺動させる能力をもつ機械的装置により、コーティング方向に対しクロスウェブ(垂直方向)でテストした。スタイラスは、3.5ワイプ/秒の速度で幅10cmの掃引幅にわたり揺動した。なおここで「ワイプ」というのは10cmの単一行程として定義づけされる。スタイラスのは、直径1.25インチ(3.2cm)の平坦な円同形幾何形状を有していた。フィルムの表面に対して垂直にスタイラスが及ぼす力を増大させるためにおもりを置く台が本装置に具備されていた。チーズクロスは、「Mil Spec CCC−c−440製品番号S12905」という商品名で、EMSアキジション(Acquisition)Corp.、ペンシルバニア州ハッツフィールド(Hatsfield、Pennsylvania)の一部門であるサマーズ・オプティカル(Summers Optical)、EMSパッケージング(Packaging)から入手した。チーズクロスを12層に折り畳んだ。ワイプ数およびフィルム表面を傷つけるのに必要とされるグラム単位のおもりとしてデータを報告する。
【0105】
4.線形スクラッチ試験
コーティングされたフィルムの耐スクラッチ性は、フィルムの表面を横断してダイヤモンド−黒鉛スタイラスを加速できる機械的器具を用いて達成された。別段の指摘のない限り、スタイラスは直径750umで160°の頂点円錐角を有している。線形スクラッチ器具4138型は、アノラド・プロダクツ(Anorad Products)、ニューヨーク州ハウポージェ(Hauppauge、NY)から入手可能である。ダイヤモンドチップ付きスタイラスは、グラフ・ダイアモンド・プロダクツ・リミテッド(Graff Diamond Products Limited)、カナダオンタリオ州ブランプトン(Brampton、Ontario)から入手可能である。スタイラスは、4インチ(10.2cm)にわたり20フィート/分(6.7m/分)でフィルムの表面を横断して加速される。ホルダーには、フィルムの表面に垂直に適用される既知のおもりが備わっている。フィルムは破損するまでテストされる。ひっかきが表面上に指摘された場合、それをビデオインタフェース(カリフォルニア州アナハイム(Anaheim、California)のオプトロニクス・テラ・ユニバーサル(Optronics−Terra Universal)から入手可能な)を備えた光学顕微鏡(ドイツゲッティング(Goetting)のツァイス(Zeiss)から入手可能な、アクシオ・イメージャ(Axio−Imager)(登録商標)付きアクシオトロン(Axiotron)(登録商標)顕微鏡)を用いてさらに評価した。光学倍率は10倍にセットされ、損傷内容は次のように指摘された;1)スクラッチ無し(「NS」);2)わずかなスクラッチ(「SS」);3)部分的層間剥離(「PD」);および4)完全な層間剥離(「FD」)。かくして、例えば「FD−50g」をテストする試料は、50グラムのおもりを用いて完全な層間剥離を達成した。
【0106】
5.砂試験
この摩耗試験では、揺動する実験室用振とう機(ペンシルバニア州、W.チェスター(W.Chester)のVWRから入手可能なDS500E型軌道振とう機)を用いて円形フィルム片を砂摩耗に付す。反射の百分率変化(「△%R」)は、ARコーティングの全体的損失を決定するために用いられる。従って、より低い△%Rで報告された値は、砂摩耗耐性の改善を示した。砂試験を実施するための手順は、まず最初にコーティングされたフィルムを直径90mmまでダイカットすることにより達成される。フィルムの中央は、前後の%R測定が行なわれることになる「光学ゾーン」を識別するように、直径25mmの円でフィルムの未コーティング側にマーキングされる。この「光学ゾーン」の%Rは、パーキン−エルマー(Perkin−Elmer)製Lamda900UV−Vis−NIR分光器を反射モードを用いて550nmにて測定される。フィルムを、16oz入りガラス製広口瓶のフタの中に、コーティングした側を上にして置いた。(瓶は、バリュ・バルク(Valu−Bulk)(登録商標)ウィートン・ガラス・ボットルズ(Wheaton Glass Bottles)ニュージャージ州ミルヴィル(Millville、New Jersey)から入手可能な側面が直線である透明ガラス瓶、モデルWS−216922)。砂はオタワ砂規格20〜30メッシュであり、ASTM規格C−190T−132に適合し、ペンシルバニア州、W.チェスター(W.Chester)のVWRから入手した。広口瓶を、上下逆転させて振とう機の中に置き、砂がフィルムのコーティングした側と接触状態になるような形で、揺動する振とう機の中にしっかり固定する。テストアセンブリを250rpmで15分25秒間揺動させる(註;このうち25秒間は、振とう機を250rpmの最大値まで上昇させる)。この試験時間の後、フィルムをフタから除去する。コーティングされた表面を、2−プロパノールで湿らせた柔かい布で拭い、反射率を以前と同じ光学ゾーン内で550nmで測定する。以下の関係式(11)により反射の変化(△%R)を判定する。
Δ%R=(Rf−Ri)/(Rh−Ri)×100 (11)
なお式中、%Rfは、摩耗後の測定上の反射であり、Riは初期反射であり、RhはPET上の未処理ハードコートの反射である。報告された値は、各々の例について3つの異なるフィルムの平均である。
【0107】
B.成分
本発明のさまざまなコーティングを形成するために用いられる成分は、以下の段落でまとめられている。
【0108】
ダイニオン(登録商標)THV(登録商標)220フッ素樹脂(20MFI、ASTM D1238)は、ダイニオン(登録商標)THV(登録商標)220Dフッ素樹脂分散という商品名で固形分30%のラテックス等級としてかまたはダイニオン(登録商標)THV(登録商標)220Gの商品名でペレット等級として入手可能である。両方共、ミネソタ州、St.PaulのダイニオンLLCから入手可能である。ダイニオン(登録商標)THV(登録商標)220Dの場合、固体樹脂としてポリマーを単離するために、凝集ステップが必要である。このためのプロセスは以下で記述されている。
【0109】
ダイニオン(登録商標)FT2430およびダイニオン(登録商標)FC2145フルオロエラストマーは、それぞれ約70重量パーセントのフッ素3元ポリマーおよび約66重量パーセントのフッ素共ポリマーであり、両方共ミネソタ州、St.PaulのダイニオンLLCから入手でき、納入されたままの状態で使用された。
【0110】
トリメチロールプロパントリアクリレートSR351(「TMPTA」)およびジ−ペンタエリスリトールトリアクリレート(SR399LV)は、ペンシルバニア州エクストン(Exton、Pennsylvania)のサートマー・カンパニー(Sartomer Company)から入手され、納入されたままの状態で使用された。
【0111】
塩化アクリロイルは、シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich)社から入手され、さらなる精製無く使用された。
【0112】
Al74OSIスペシャルティーズ・ケミカルとして入手可能な3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランは、納入されたままの状態で使用された。
【0113】
3−アミノプロピルトリエトキシシラン(3−APS)は、アルドリッチ・ケミカル(Aldrich Chemical)ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee、Wiconsin)から入手可能であり、納入されたままの状態で使用された。
【0114】
フランス、パリ(Paris)のOsiスペシャルティーズ(GEシリコーンズ)製のA1106−Silquest。
【0115】
「ダロキュア1173」2−ヒドロキシ2−メチル1−フェニルプロパンUV光開始剤、およびイルガキュア(登録商標)819は、ニューヨーク州タリータウン(Terrytown、NY)のチバ・スペシャルティー・プロダクツ(Ciba Specialty Products)から得られ、納入されたままの状態で使用された。
【0116】
「KB−1」ベンジルジメチルケタールUV光開始剤は、ペンシルバニア州エクストン(Exton、Pennsylvania)のサートマー・カンパニーから得られ、納入されたままの状態で使用された。
【0117】
Dowanol(登録商標)、1−メトキシ−2−プロパノールはウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee、Wisconsin)のシグマ・アルドリッチ(Sigma−Aldrich)から得られ、納入されたままの状態で使用された。
【0118】
SR295、ペンタエリスリトールトリおよびテトラアクリレートの混合物、CN120Z、アクリレート化ビスフェノールA、SR339、フェノキシエチルアクリレートは、ペンシルバニア州エクストン(Exton、Pennsylvania)のサルトマー・ケミカル・カンパニーから得られ、納入されたままの状態で使用された。
【0119】
(3−アクリルオキシプロピル)トリメトキシシランは、ペンシルバニア州モリスヴィル(Morrisville、Pennsylvania)のゲレスト(Gelest)から得られ、納入されたままの状態で使用された。
【0120】
A1230、ポリエーテルシランは、OSIスペシャルティーズから得られ、納入されたままの状態で使用された。
【0121】
ビューラー(Buhler)ジルコニア(ZrO2)、等級Z−WOおよびZ−WOSをスイス、UzweilのBuhlerから得、以下に記述される(S3)および(S4)の調製の中で記述されている通りに改質した。
【0122】
米国特許第3,250,808号明細書(ムーア(Moore)ら)の中で報告されている方法に従って、オリゴマーヘキサフルオロプロピレンオキシドメチルエステル(HFPO−C(O)OCH3)を調製することができる。この調製から得られたオリゴマーの広い製品分布を、2002年12月30日出願の米国特許出願第10/331816号明細書中に記述されている方法に従って、細分化することができる。このステップにより、数平均重合度が約6.3であり、平均分子量が1,211g/モルである、本明細書中で使用されているオリゴマーのより高い分子量分布が得られる。
【0123】
1.ダイニオン(登録商標)THV(登録商標)220Dラテックスの凝集
凍結凝集により、THV220Dラテックスから誘導された固体THV220樹脂を得ることができる。標準的な手順では、プラスチック容器内にラテックス1−Lを置き、16時間−18℃で凍結させた。固体を解凍させ、単純なろ過により水相から凝集したポリマーを分離させた。次に固体ポリマーをさらにより小さな部分片へと分割し、攪拌しながら温水約2リットルで3回洗浄した。ポリマーを収集し、16時間70〜80℃で乾燥させた。THV220溶液の調製物源としてTHV220DまたはTHV220Gのいずれが用いられようと、それらが、この出願においては等価物とみなされるという点に留意されたい。
【0124】
2.ヘキサフルオロプロピレンオキシドN−メチル−l,3−プロパンジアミン付加物の調製
1リットル入りの丸底フラスコに、共に室温の291.24g(0.2405モル)のFC−1および21.2g(0.2405モル)N−メチル−1.3−プロパンジアミンを投入し、結果として濁った溶液を得た。フラスコを旋回させ、混合物の温度は45℃まで上昇し、水−白色液体を得、これを55℃で一晩加熱した。その後、生成物を、75℃で28インチHg真空にて回転蒸発器上に置いてメタノールを除去し、301.88gの粘性でわずかに黄色い液体のヘキサフルオロプロピレンオキシドN−メチル−l,3−プロパンジアミンアダクツを得た。
【0125】
3.HFPO−アクリレート3の調製
250mlの丸底フラスコに対して、4.48g(294という公称MWに基づき、15.2ミリモル)のトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA、Sartomer SR351)、4.45gのテトラヒドロフラン(THF)および1.6mgのフェノチアジンを投入し、55℃で油浴に置いた。次に100ml入りの広口瓶の中で32gのTHF中に20g(15.78mmole、網状構造1267.15)のヘキサフルオロプロピレンオキシドN−メチル−l,3−プロパンジアミンアダクツを溶解させた。この溶液を、均圧サイドアームをもつ60ml入りの滴下漏斗の中に入れ、広口瓶を約3mlのTHFで洗い流し、これも又滴下漏斗に加えた。漏斗の中味を38分間にわたり空気雰囲気下でTMPTA/THF/フェノチアジン混合物に添加した。反応は、最初は濁っていたが、約30分後には清澄になった。添加完了から20分後に、反応フラスコを28インチの真空下で45〜55rpmで回転蒸発器上に置き、24.38gの清澄で粘性の黄色液体を得、これをNMRおよびHPLC/質量分析によって特徴づけした。
【0126】
4.改質された20−nmコロイド二酸化ケイ素粒子の調製
200ml入りガラス製広口瓶の中に、15gの2327(20nmのアンモニウム安定化コロイドシリカゾル、固形分41%;ナルコ(Nalco)、Naperville、イリノイ州)を入れた。0.57gのビニルトリメトキシシラン(ゲレスト(Gelest)Inc.、ペンシルバニア州タリータウン(Tullytown、Pennsylvania))を含有する10gの1−メトキシ−2−プロパノール(アルドリッチ)溶液を、別のフラスコの中で調製した。シリカゾルを攪拌しながらガラス製広口瓶にビニルトリメトキシシラン溶液を添加した。その後、フラスコをさらに5mlの溶媒で洗い流し、攪拌した溶液に添加した。完全に添加した後、広口瓶にキャップをし、約20時間、摂氏90度のオーブン内に入れた。その後、室温で穏やかな空気流に曝露することによってゾルを乾燥させた。粉末状の白色固体を収集し、50mlのTHF溶媒中に分散させた。THFシリカゾルに2.05gのHMDS(余剰)をゆっくりと添加し、添加の後、広口瓶にキャップをし、これを約10時間超音波浴の中に置いた。その後、有機溶媒をロトバップ(rotovap)によって除去し、残った白色固体を一晩摂氏100度で加熱し、さらに反応させ揮発性種を除去した。結果として得た粒子は、以下でビニル改質/HMDS粒子として記されている。
【0127】
200ml入りガラス製広口瓶の中に、15gの2327(20nmのアンモニウム安定化コロイドシリカゾル、固形分41%;ナルコ、Naperville、イリノイ州)を入れた。0.47gの3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリラート(ゲルストInc.、ペンシルバニア州タリータウン(Tullytown、Pennsylvania))を含有する10gの1−メトキシ−2−プロパノール(アルドリッチ)溶液を、別のフラスコの中で調製した。シリカゾルを攪拌しながらガラス製広口瓶に3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリラート溶液を添加した。その後、フラスコをさらに5mlの溶媒で洗い流し、攪拌した溶液に添加した。完全に添加した後、広口瓶にキャップをし、約20時間、摂氏90度のオーブン内に入れた。その後、室温で穏やかな空気流に曝露することによってゾルを乾燥させた。粉末状の白色固体を収集し、50mlのTHF溶媒中に分散させた。THFシリカゾルに2.05gのHMDS(余剰)をゆっくりと添加し、添加の後、広口瓶にキャップをし、これを約10時間超音波浴の中に置いた。その後、有機溶媒をロトバップによって除去し、残った白色固体を一晩摂氏100度で加熱し、さらに反応させ揮発性種を除去した。結果として得た粒子は、以下でA−174/HMDS粒子として記されている。
【0128】
5.改質されたヒュームドシリカの調製
まず最初に2gのSiO2(380m2/g)および100mlの1−メトキシ−2−プロパノール(アルドリッチ)のゾルをガラス製広口瓶の中で作ることによって、部分的にアクリル改質されたヒュームドSiO2の合成を準備した。その後、4gの水酸化アンモニウム(30%の水溶液)および20gの精製水を、攪拌と同時に溶液中にゆっくりと添加した。混合物はゲルになった。別のフラスコ内で、0.2gの3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリラート(アルドリッチ)を含有する20gの1−メトキシ−2−プロパノール(アルドリッチ)の溶液を調製した。
【0129】
攪拌しながらガラス製容器に、(トリメトキシシリル)プロピルメタクリラート溶液を添加した。次に、フラスコを付加的な5〜10mlの溶媒で洗い流し、その後攪拌溶液に添加した。完全に添加した後、広口瓶にキャップをし、これを6〜8時間摂氏80度で超音波浴中に置いた。その後溶液を、室温でフロースルーオーブン内で乾燥させた。粉末状の白色固体を収集し、50mlのTHF溶媒中に分散させた。THF粉末溶液に2.05gのHMDS(余剰)をゆっくりと添加し、添加の後、広口瓶にキャップをし、これを約10時間超音波浴の中に置いた。その後、有機溶媒をロトバップによって除去し、白色固体を一晩摂氏100度で加熱し、さらに反応させ揮発性種を除去した。結果として得た粒子は、以下でA−174/F−SiO2粒子として記されている。
【0130】
6.ビニルトリエトキシシランおよびHMDSにより改質された粒子の調製
超音波により、ガラス製広口瓶の中で、2gのヒュームドSiO2(380m2/g)および100mlの1−メトキシ−2−プロパノール(アルドリッチ)を含有するゾルを調製した。4gの水酸化アンモニウム(30%水溶液)および20gの精製水を次に攪拌しながらゆっくりと溶液に添加した。混合物はゲルになった。0.2gのビニルトリエトキシシラン(ゲレストInc.、ペンシルバニア州タリータウン(Tullytown、Pennsylvania))を含有する20gの1−メトキシ−2−プロパノール(アルドリッチ)溶液を、別のフラスコの中で調製した。攪拌しながらガラス製広口瓶に溶液を添加した。その後、フラスコをさらに5〜10mlの溶媒で洗い流し、攪拌した溶液に添加した。完全に添加した後、広口瓶にキャップをし、6〜8時間、摂氏80度で超音波浴中に入れた。その後、室温で穏やかな空気流の中で溶液を乾燥させた。粉末状の白色固体を収集し、50mlのTHF溶媒中に分散させた。分散したTHFゾルに対して、2.05gのHMDS(余剰)をゆっくりと添加した。添加の後、広口瓶にキャップをし、これを約10時間超音波浴中に置いた。その後、有機溶媒をロトバップによって除去し、残った白色固体を一晩摂氏100度で加熱し、さらに反応させ揮発性種を除去した。結果として得た粒子は、以下でV/F−SiO2粒子として記されている。
【0131】
7.PET基板(S1)の説明:
1つの好ましい基板材料は、「Melinex 618」という商品名称でe.i.デュポン・ド・ヌムール・アンド・カンパニー(DuPont de Nemours and Company)、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington、Delaware)から得られ5.0ミルの厚みと下塗り済み表面を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである。本書の実施例では基板S1と呼ばれている。
【0132】
8.ハードコート基板(S2)の説明:
標準的には、ハードコートは、この場合下塗り済みのPET基板(S1)である基板上に硬化可能な液体セラマー組成物をコーティングし、かつ組成物をインサイチュで硬化させて固まったフィルム(つまりハードコート基板(S2)を形成させることにより形成される。適切なコーティング方法としては、フルオロケミカル表面層の塗布について前述したものが含まれる。さらに、ハードコートに関する詳細は、カン(Kang)ら、に対する米国特許第6,132,861号明細書;フレイグ(Craig)ら、に対する第6,238,798号明細書;カンら、に対する6,245,833号明細書;およびカン(Kang)ら、に対する6,299,799号明細書の中に見ることができる。米国特許第6,299,799号明細書の実施例3と実質的に同じであったハードコート組成物が、(S1)の下塗り済み表面上にコーティングされ、50ppm未満の酸素を有するUVチャンバ内で硬化された。UVチャンバには、フルパワーで作動するメリーランド州ゲイサーズバーグ(Gaithersburg、Maryland)のフュージョンUVシステムズ製の600ワットのH型バルブが備わっていた。ハードコートは、表1に記述されている通りのパラメータを用いて定量ダイコーティングプロセスを用いて(S1)に塗布された。ハードコートは、IPA中で固形分30重量パーセントまで希釈され、5ミルのPET下地上にコーティングされ、5ミクロンの乾燥厚みを達成した。加圧コンテナからの材料の流速を監視し設定するために、流量計が使用された。流速は、管、フィルター、流量計そしてダイを通して液体を強制的に排出させる密封コンテナの内部で空気圧を変化させることにより調整された。乾燥され硬化したフィルム(S2)は、巻取りロール上に巻き取られ、以下で記述されるコーティング溶液のための投入下地として使用された。
【0133】
【表1】

【0134】
9.高屈折率光学層(S3)の調製:
16oz入り広口瓶に対しZrO2のゾル(ビューラーZ−WO)(100.24g、18.01%、ZrO2)を投入した。攪拌しながら500ml入りビーカーにメトキシプロパノール(101g)、アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(3.65g)およびA1230(2.47g)を投入した。次に攪拌しながらメトキシプロパノール混合物をZrO2ゾルに投入した。広口瓶を密封し、4時間摂氏90度まで加熱した。加熱後に、混合物を、回転蒸発を介して52gまで揮散させた。
【0135】
脱イオン水(175g)および濃縮NH3(3.4g、29重量%)を、500ミリリットル入りビーカーに投入した。上述の濃縮ゾルを、攪拌を最小限にしながらこれに添加した。白色沈殿物を得、真空ろ過を介して、湿ったろ過ケークとしてこれを単離させた。アセトン(57g)中に、湿った固体(43g)を分散させた。その後、縦溝付きろ紙とそれに続いて1ミクロンフィルタを用いて混合物をろ過した。表2に記述された形成された高屈折率処方物の組成物を固形分15.8%で単離した。
【0136】
【表2】

【0137】
本処方物は、溶媒中の固体分%で、上表に示された樹脂および光開始剤を用いて、広口瓶内への表面改質されたナノ粒子の添加とそれに続く利用可能な樹脂、開始剤および溶媒の添加、およびそれに続く均等な分散を生み出すための旋回によって調製された。(S3)は、同じ方法およびコーティング手順を用いて、ただし以下のパラメータで、基板(S2)上にコーティングされた。
【0138】
【表3】

【0139】
10.高屈折率光学層基板(S4)の調製:
a.ナノ粒子調製物:ビューラーZrO2−75/25アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン−A1230
1qt入り広口瓶に対しZrO2ゾル(ビューラーZ−WOS)(400.7gの23.03%ZrO2)を投入した。攪拌しながら、1リットル入りビーカーにメトキシプロパノール(400g)、アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(18.82g)およびA1230(12.66g)を投入した。メトキシプロパノール混合物をその後、攪拌しながらZrO2ゾルに投入した。広口瓶を密封し、5.5時間、摂氏90度まで加熱した。加熱後、混合物(759g)を回転蒸発を介して230.7gまで揮散させた。
【0140】
脱イオン水(700g)および濃縮NH3(17.15g、29重量%)を、4リットル入りビーカーに投入した。上述の濃縮ゾルを、攪拌を最小限にしながらこれに添加した。白色沈殿物を得、真空ろ過を介して、湿ったろ過ケークとしてこれを単離させた。メトキシプロパノール(853g)中に湿った固体(215g)を分散させた。その後、混合物を回転蒸発を介して濃縮した(226g)。メトキシプロパノール(200g)を添加し、回転蒸発を介して混合物を濃縮した(188.78g)。メトキシプロパノールを投入し(195g)、混合物を回転蒸発を介して濃縮した(251.2g)。メトキシプロパノール(130g)を投入し、回転蒸発を介して混合物を濃縮した。最終生成物(244.28)を固形分39.9%で単離した。混合物を1ミクロンフィルタを通してろ過した。高屈折率コーティング溶液は、表4に列挙される通りの組成を有している。
【0141】
【表4】

【0142】
本処方物は、溶媒中の固体分%で、上表に示された樹脂および光開始剤を用いて、広口瓶内への表面改質されたナノ粒子の添加とそれに続く利用可能な樹脂、開始剤および溶媒の添加、およびそれに続く均等な分散を生み出すための旋回によって調製された。高屈折率コーティング溶液を、上述のものと同じ方法およびコーティング手順を用いて、ただし以下のパラメータで、基板(S2)上にコーティングした。
【0143】
【表5】

【0144】
C.実験と確認
以下の段落では、特定的な一組の反応および実験方法論実施例を介して、本発明の低屈折率組成物を形成するためのコンポーネントステップの各々の改良が例示されている。
【0145】
実施例セット1:フルオロポリマーと基板の間の界面接着の改善
ダイニオン(登録商標)フッ素樹脂THV(登録商標)220、ダイニオン(登録商標)フルオロエラストマーFC−2145または臭素化フルオロエラストマーE−15742を各々、室温で振とうすることにより5重量パーセントでMEKまたは酢酸エチルのいずれかを用いてコンテナ内にて個別に溶解させた。その後、調製されたフルオロポリマー溶液をアミノシラン/メタノール溶液、例えばさまざまな比率の3−アミノプロピルトリメトキシシラン(またはメタノール中のA1106)と組合わせた。固形分、メチルエチルケトン中で固形分3%まで希釈し、#3のMeyer Rodを用いて基板上にこれをコーティングした。混合させたフルオロポリマー/アミノシラン溶液をS1またはS2に塗布した。こうして、約100nmの計算上の乾燥コーティング厚みが得られた。コーティングされたフィルムを簡単に乾燥させ、その後10分間100〜120℃での加熱に付した。
【0146】
その後、裏付け用の表に示されているように、フィルムをHバルブまたは254ナノメートル(nm)ランプによるUV放射にさらに付すかまたは、単に熱、または熱とUVの組合せに付した。表6および表7が例示する通り、結果として得られたフィルムは、優れた界面接着を示し、これは、これらのフィルムを熱湯中に1〜3時間浸漬することによってさらに評価され、結果は表6に示されている。
【0147】
【表6】

【0148】
これらの接着結果は、この光化学プロセスにおいて接着促進剤としてアミノシランを使用することの利点を表わしている。
【0149】
実施例セット2:接着促進剤、多官能性架橋剤により改善される耐スクラッチ性
類似の要領で、本発明の低屈折率コーティング溶液を表7に記述されている通りに調製した。表7に示されているさまざまな比率で、フルオロポリマー溶液をさらにTMPTA、MMA、アミノシランおよび光開始剤と組合わせた。コーティング溶液を気密なコンテナ内に放置し、その後(S1)または(S2)に対して実施例セット1において記述された要領での湿式コーティングとして塗布した。コーティングされたフィルムをオーブン内で100−120℃で10分間乾燥させた。
【0150】
その後、フィルムを、分速35フィートでの3回のパスによりUV(H−バルブ)照射に付した。代替的には、フィルムを類似のアプローチを用いて254nmバルブからのUV照射に付した。ペーパータオルでこすることでフィルムの耐スクラッチ性がテストされ、これは、フィルムと基板の間の優れた界面接着を標示するものである。
【0151】
表7に示されているように、結果として得られたフィルムは、特に(S1)または(S2)に対するアミノシランまたはA1106接着促進剤を利用した試料において、優れた界面接着を示した。さらに、さまざまな試料の照射は、表8中のUV曝露を受けていない類似の層と表7中のUV曝露を受けた層を比較した場合に見られるように、改善された界面接着を結果としてもたらした。
【0152】
【表7】

【0153】
【表8】

【0154】
表8中の類似の試料と比べて改善された耐スクラッチ性を示した表7中の試料については、測定上の屈折率が1.4未満である低屈折率層としての結果として得られたコーティングの有用性を確認するために、屈折率測定が実施された。表9が示す通り、耐スクラッチ性試料の各々が1.4未満の屈折率を有していた。
【0155】
【表9】

【0156】
基板(S3)および(S4)上で本発明のコーティング組成物のために使用されるコーティングプロセスの説明
以下の表に記されている低屈折率溶液を、精密定量ダイコーターを用いてPET基板(S3)および(S4)上にコーティングした。このステップについては、ダイ内への溶液を計量するのにシリンジポンプを用いた。表10に記されているように、固形分3%〜5%の濃度まで溶液を希釈し、100nmの乾燥厚みを達成するべくS3またはS4上にコーティングした。材料を従来の空気浮遊オーブンの中で乾燥させ、その後、50ppm未満の酸素を有するUVチャンバを通して送った。UVチャンバには、フルパワーで作動するメリーランド州ゲイサーズバーグ(Gaithersburg、Maryland)のフュージョンUVシステムズ製の600ワットのH型バルブが備わっていた。低屈折率コーティング溶液のためのコーティングおよび乾燥パラメータは表10中で以下の通り示されている。
【0157】
【表10】

【0158】
実施例セット4:基板(S2)、(S3)および(S4)上の本発明の反射防止コーティングの調製
表11Aおよび11Bのコーティングされたフィルムを、表10のコーティング方法に従って調製した。低屈折率組成物は、溶液に添加された構成要素の重量パーセント別に列挙されている。コーティング溶液は、固形分に基づいて付加的な1重量パーセントのKB1またはダロキュア1173光開始剤を含有していた。粒子の調製は以上で記述されており、表面改質のタイプおよび比率は、表11Aに記されている。A1106について以外、全ての試薬をコーティング溶液に添加し、MEK−MIBKの50/50重量パーセント溶液で約5重量パーセント固形分まで希釈した。A1106は、基板上へのそのコーティングよりも前4時間以下にコーティング溶液に添加した。低屈折率コーティング溶液を表10の方法に従ってコーティングし、硬化させた。結果は表11Aおよび11Bにまとめられている。
【0159】
【表11】

【0160】
【表12】

【0161】
表11Bが示しているように、接着促進剤、シリカ粒子およびオルガノシランを使用することにより、これらの試薬を利用しなかった低屈折率コーティング溶液に比べ耐久性性能が改善された。これらの低屈折率組成物は、最も荒いチーズクロス試験(1.25インチピンで2キログラムの重量)を用いた場合でさえ、適切な機械的耐久性を示した。
【0162】
実施例セット5:
剥離試験では、低屈折率層を下にある基板から除去しようとしてコーティング済み表面を横断して剥離装置が引きずられた。以下の結果は、コーティング層を剥取るのに必要な力の量(インチあたりのポンド単位)を示している。数が大きくなればなるほど、界面接着は大きくなる。剥取られた試料は、基板が表12Aおよび12Bに示された力で譲歩した試料であり、試験の失敗を表わすものではない。
【0163】
表12Aおよび12Bでは、高屈折率層(S1)または(S3)と低屈折率層の間の界面接着が評価された。この表については、フルオロポリマーとしての変動する量のテトラエトキシシラン(「TEOS」)で改質されたTHV200フッ素樹脂またはFC2145フルオロエラストマー、表面改質二酸化ケイ素ナノ粒子そしてアミノ置換シランエステルまたはエステル等価物としてのA−1106または3−アミノプロピルトリエトキシシラン(「3−APS」)のいずれかを用いて、変動する量で低屈折率コーティングが形成された。
【0164】
【表13】

【0165】
【表14】

【0166】
表12Bが示す通り、全ての試料は熱湯試験を受け、各試料は適切な剥離試験接着力を示し、かくして、TEOSタイプの試薬の存在下での高屈折層と低屈折率層の間の適切な界面接着を確認した。
【0167】
提供された実施例中に示されている通りの結果は、本発明の低屈折率コーティングの実行可能性を表わす。本コーティングは、反射防止フィルムの低屈折率コーティング層として適用され得、改善された光透過率、低減されたグレア、耐久性および一部のケースでは防染および防汚性を有する表面を必要とする光学デバイス上での使用に適している。
【0168】
本発明は、好ましい実施形態に関して記述されてきたが、当然のことながら、特に以上の教示に照らして当業者により修正が加えられる可能性があるため、これらに制限されるものではないということが理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】光ディスプレイを有する製品の斜視図である。
【図2】本発明の1つの好ましい実施形態に従って形成された低屈折率層を有する反射防止フィルムを例示するライン2−2に沿って切り取られた図1の製品の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスプレーコンポーネントの反射防止コーティング中で使用するための塗布可能な低屈折率組成物において、
− 反応性フルオロポリマー;
− 少なくとも1つのアミノオルガノシランエステルカップリング剤またはそのエステル等価物;および
− マルチオレフィン架橋剤、
の反応生成物を含む、組成物。
【請求項2】
前記マルチオレフィン架橋剤がマルチアクリレート架橋剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記反応性フルオロポリマーが結晶質反応性フルオロポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記反応性フルオロポリマーが非晶質反応性フルオロポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記非晶質反応性フルオロポリマーが、Cl含有フルオロエラストマー、Br含有フルオロエラストマー、I含有フルオロエラストマー、ニトリル含有フルオロエラストマー、カルボニル含有フルオロエラストマー、エステル含有フルオロエラストマーおよびC=C含有フルオロエラストマーからなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記1つのアミノオルガノシランエステルカップリング剤またはそのエステル等価物が、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリメトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン−1−エタンアミン、2,2−ジエトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン−1−エタンアミン、2,2−ジエトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン、2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン、4−アミノフェニルトリメトキシシラン、および3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記マルチアクリレート架橋剤がフッ素化マルチアクリレート架橋剤を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
前記フッ素化マルチアクリレート架橋剤がペルフルオロポリエーテルマルチアクリレート架橋剤を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記ペルフルオロポリエーテルマルチアクリレート架橋剤がHFPO−マルチアクリレート架橋剤を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記マルチアクリレート架橋剤がPETAおよびTMPTAからなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項11】
モノアクリレートをさらに含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項12】
前記モノアクリレートがフッ素化モノアクリレートを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記フッ素化モノアクリレートがペルフルオロポリエーテルモノアクリレートを含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記ペルフルオロポリエーテルモノアクリレートがHFPO−モノアクリレートである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
複数の表面改質無機ナノ粒子をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
表面改質粒子が、アクリル、メタクリルおよび/またはビニル基などの反応性官能基とトリメチルシリルおよび高アルキルおよびフルオロアルキルシリル基などの非反応性官能基の混合物を含んで成る、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物が、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、およびそれらの混合物からなる群から選択されるゾルゲル前駆体をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記テトラアルコキシシランが、テトラエトキシシランおよびビニルトリエトキシシランからなる群から選択されている、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の前記低屈折率材料の層を有する反射防止フィルムにおいて、前記低屈折率材料の前記層にカップリングされた高屈折率層をさらに含む反射防止フィルム。
【請求項20】
請求項1に記載の前記低屈折率組成物の層を有する反射防止フィルムにおいて、前記低屈折率組成物の前記層にカップリングされたジルコニウム含有高屈折率層をさらに含む反射防止フィルム。
【請求項21】
前記高屈折率層に対しカップリングされたハードコート層をさらに含む、請求項19に記載の反射防止材料。
【請求項22】
前記ハードコート層にカップリングされた接着剤層をさらに含む、請求項19に記載の反射防止材料。
【請求項23】
請求項1に従って形成された前記低屈折率組成物の層を含む、光学デバイス。
【請求項24】
物品に使用するための光透過性および防染性および撥インク性のある耐久光ディスプレイを形成するための方法において、
− 光学基板を有する光ディスプレイを提供するステップ;
− 反応性フルオロポリマー、アミノシランエステルカップリング剤またはエステル等価物、およびマルチオレフィン架橋剤の反応生成物を含む、低屈折率ポリマー組成物を形成するステップ;
− 前記光学基板に対して前記低屈折率ポリマー組成物の層を適用するステップ、および
− 前記層を硬化させて硬化済みフィルムを形成させるステップ、
を含む、方法。
【請求項25】
光ディスプレイを提供するステップには、光学基板に適用されたハードコート層を有する光ディスプレイを提供するステップが含まれる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
低屈折率ポリマー組成物を形成するステップには、
− フルオロポリマーおよび少なくとも1つのアミノオルガノシランエステルカップリング剤またはそのエステル等価物を反応性カップリングさせてアミノシラン改質フルオロポリマーを形成するステップ;および
− 前記アミノシラン改質フルオロポリマーに対しマルチオレフィン架橋剤を導入するステップ、
が含まれる、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
光ディスプレーコンポーネントの反射防止コーティング中で使用するための塗布可能な低屈折率組成物において、
− フルオロポリマー;
− 少なくとも1つのアミノオルガノシランエステルカップリング剤またはそのエステル等価物;
− マルチオレフィン架橋剤;および
− 複数の表面改質ナノ粒子、
の反応生成物を含む、組成物。
【請求項28】
請求項27に記載の前記低屈折率組成物の層を有する反射防止フィルムにおいて、前記低屈折率組成物の前記層にカップリングされたジルコニウム含有高屈折率層をさらに含む反射防止フィルム。
【請求項29】
光ディスプレーコンポーネントの反射防止コーティング中で使用するための塗布可能な低屈折率組成物において、
− フルオロポリマー;
− 少なくとも1つのアミノオルガノシランエステルカップリング剤またはそのエステル等価物;
− マルチオレフィン架橋剤;および
− テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシランおよびそれらの混合物からなる群から選択されるゾルゲル前駆体、
の反応生成物を含む、組成物。
【請求項30】
請求項29に記載の前記低屈折率組成物の層を有する反射防止フィルムにおいて、前記低屈折率組成物の前記層にカップリングされたジルコニウム含有高屈折率層をさらに含む反射防止フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−527083(P2008−527083A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549499(P2007−549499)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/046594
【国際公開番号】WO2006/073867
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】