反射防止物品および表示装置
【課題】優れた反射防止機能と優れた耐擦傷性との両方を有した反射防止物品を提供する。
【解決手段】反射防止物品10は、第1面11および第2面12を備える。第1面には、可視光の最長波長を越えるピッチで配置された三個以上の突出部15が設けられている。第1面の突出部が設けられていない領域は、可視光の最長波長以下のピッチPで基準平面上に配置された凸部20を含んで構成された微細凹凸25を有した面となっている。基準平面SPからの突出部の高さhbは、基準平面からの凸部の高さhaより高い。第2面は、少なくとも低屈折率層を有した反射防止膜30の前記低屈折率層の表面、あるいは、防眩性凹凸35を有した面からなる。
【解決手段】反射防止物品10は、第1面11および第2面12を備える。第1面には、可視光の最長波長を越えるピッチで配置された三個以上の突出部15が設けられている。第1面の突出部が設けられていない領域は、可視光の最長波長以下のピッチPで基準平面上に配置された凸部20を含んで構成された微細凹凸25を有した面となっている。基準平面SPからの突出部の高さhbは、基準平面からの凸部の高さhaより高い。第2面は、少なくとも低屈折率層を有した反射防止膜30の前記低屈折率層の表面、あるいは、防眩性凹凸35を有した面からなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、携帯電話機の液晶表示部等の各種用途に用いられ得る、光の表面反射を効果的に防止し得る反射防止物品、並びに、この反射防止物品を含んだ表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示ディスプレイ(LCD)等の表示装置本体(表示部)の表示面に重ねて配置される窓材、或いは、各種光学素子等において、表面の光反射が問題になる事が多い。例えば、液晶表示ディスプレイ等の表示装置本体を表示部として利用した携帯電話機では、水、塵、外力等から表示装置本体を保護する為に、表示装置本体の表示面に、透明プラスチック板等による窓材を配置し保護している(例えば、特許文献1)。ところが、窓材を配置した事により、その表裏両面で日光、電燈光等の外光が反射し、表示装置本体の表示面に表示される映像の視認性が低下する。また、表示装置本体からの映像光も、その一部は、窓材で反射され表示装置本体の内部側に戻される為、表示装置本体の光の利用効率が低下し、その分、視認性が低下する。また、視認性の低下を防止しようとすると、余分な電力消費が必要となり、とりわけ低消費電力化が強く要望されている携帯電話機では、無視できない問題となっている。
【0003】
従来、画像表示装置の窓材表面に於ける斯かる光反射の軽減化の為に、各種の反射防止処理が検討されてきた。比較的古くから実用化された仕様は、表示装置の窓材表面に、低屈折率層からなる反射防止膜或いは光拡散反射性の防眩性凹凸を形成する仕様であった。ただし、近年、外光存在下に於ける表示装置の視認性向上の要求性能が高まってくると、これらの仕様では、要求される反射防止性に十分応じることができなくなってきた。そこで、更に高性能の反射防止処理として、表面凹凸の繰返し周期が光波長以下のサイズの光学的微細構造体、いわゆるモス−アイ(蛾の目;Moth Eye)構造体についての研究が行われてきた。モス−アイ(蛾の目)構造体によれば、表面での光の反射を効果的に防止して、低屈折率層や防眩性凹凸に比べて、極めて高い透過率を確保することができる(特許文献2)。
【0004】
但し、モス−アイ(蛾の目)構造体は、その微細な構造に起因して、極めて擦傷されやすく、また擦傷によって反射防止機能を失ってしまう。加えて、モス−アイ(蛾の目)構造体は、油脂等の付着によっても、その反射防止機能を消失してしまうという欠点が有った。そこで、此の欠点を改善する仕様として、透明基材の裏面(表示装置本体側の内面)上にモス−アイ構造体を形成することによって、外界からの擦傷や油脂付着を防止し、表面(画像観察者側の外面)上に低屈折率層又は防眩性凹凸を形成して、(モス−アイ構造体が裏面に位置することによる)反射防止性能の低下を補完する仕様が提案されるに至った(特許文献3、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−66859号公報
【特許文献2】特表平2003−518263号公報
【特許文献3】特開2003−215303号公報
【特許文献4】特開2003−215314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3或いは特許文献4に記載の仕様に於いても、実用化の為の検討を進めてゆくと、現実の製造、輸送、保管、及び使用の流の中に於いて、モスーアイ構造体に期待した通りの耐擦傷性が得られ無いことが判明した。
【0007】
即ち、特許文献3或いは特許文献4に記載の仕様の窓材を製造した後、保管、搬送する際には、通常、斯かる窓材が薄膜の形態の場合には、帯状シートの形態で製造してロールに巻取って取り扱われる。又、斯かる窓材が厚い板状の場合には、通常、多数枚積み上げられ重ねられた状態で取り扱いを受ける。何れの場合にも、該窓材の表面(反射防止膜或いは防眩性凹凸の面)と裏面(モス−アイ構造体の面)とが接触し、モス−アイ構造体の凸部には荷重がかかる。斯かる状態で搬送等の取り扱いが行われると、振動(乃至加速度)が加わることが不可避の為、微細なモス−アイ構造体が変形、損傷、欠落し、モス−アイ構造体に擦傷が発生してしまうことが判明した。
【0008】
又、該窓材を表示装置に取り付ける際にも、該窓材のモス−アイ構造体の面は、これと隣接する他の部材(表示装置本体の表面、硝子基板、光拡散板、偏光板、導光板等)と接触した上で、荷重、振動、加速度等が加えられる。その結果、モス−アイ構造体が変形、損傷、欠落し、モス−アイ構造体に擦傷が発生してしまうことが判明した。
【0009】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、優れた反射防止機能と優れた耐擦傷性との両方を有した反射防止物品、並びに、この反射防止物品を含む表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による反射防止物品は、
第1面と、第1面とは反対側の第2面と、を有し、
前記第1面には、可視光の最長波長よりも長いピッチで配置された三個以上の突出部が設けられており、
前記第1面の前記突出部が設けられていない領域は、可視光の最長波長以下のピッチで基準平面上に配置された凸部を含んで構成された微細凹凸を有した面となっており、
前記基準平面からの前記突出部の高さは、前記基準平面からの前記凸部の高さより高く、
前記第2面は、少なくとも低屈折率層を有した単層又は多層の反射防止膜の前記低屈折率層の表面、あるいは、防眩性凹凸を有した面からなる。
【0011】
本発明による反射防止物品において、前記基準平面と平行で前記凸部を横切る切断面内における前記凸部の総面積は、当該切断面の位置が、前記基準平面と直交する方向に沿って、前記凸部の頂部から離間して前記基準平面へ接近するに連れて、しだいに大きくなるようにしてもよい。
【0012】
本発明による反射防止物品において、前記基準平面と直交する方向に平行な断面において、前記突出部は、前記基準平面から最も突出した頂部において、曲線状の外輪郭を有しているようにしてもよい。
【0013】
本発明による表示装置は、
映像を表示する表示面を有した表示装置本体と、
前記表示装置本体の前記表示面上に配置される、上述した本発明による反射防止物品のいずれかと、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、優れた反射防止機能と優れた耐擦傷性との両方を反射防止物品に付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明による一実施の形態を説明するための図であって、反射防止物品の一例を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明による一実施の形態を説明するための図であって、反射防止物品の他の例を示す断面図である。
【図3】図3は、基準平面への法線方向と平行な方向に沿って第1面の側から反射防止物品を示す平面図である。
【図4】図4は、反射防止物品の微細凹凸の一例を示す斜視図である。
【図5】図5は、図4に対応する図であって、反射防止物品の微細凹凸の他の一例を示す斜視図である。
【図6】図6は、図4に対応する図であって、反射防止物品の微細凹凸のさらに他の一例を示す斜視図である。
【図7】図7は、図4に対応する図であって、反射防止物品の微細凹凸のさらに別の一例を示す斜視図である。
【図8】図8は、反射防止物品の第1面の形成方法および反射防止物品の第1面の形成装置を説明するための模式図である。
【図9】図9は、図8の形成装置に組み込まれた成型用型を模式的に示す斜視図である。
【図10】図10は、耐擦傷性の評価方法および耐擦傷性の評価に用いられる試験機を説明するための図である。
【図11】図11は、実施例A並びに比較例A1およびA2についての耐擦傷性および正面方向輝度の評価結果を示す図である。
【図12】図12は、実施例B並びに比較例B1およびB2についての耐擦傷性および正面方向輝度の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<<概要>>
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0017】
図1および図2は、それぞれ、反射防止物品10の一態様を説明するための図である。図1および図2に示された反射防止物品10は、第1面11と、第1面11とは反対側の第2面12と、を有するシート状の部材として形成されている。第1面11には、可視光の最長波長の値よりも大きなピッチで配置された三個以上の突出部15が設けられている。また、第1面11の突出部15が設けられていない領域は、可視光の最長波長以下のピッチで基準平面SP上に配置された凸部20を含んで構成されている微細凹凸25を有した面となっている。後述するように、第1面11は、微細凹凸25によって反射防止機能を発現し、且つ、突出部15は、スペーサーとして機能し、微細凹凸25を保護する。
【0018】
一方、第2面12は、鏡面反射による外部像(鏡面反射像)の映り込みを防止する機能を有している。図1に示された例において、反射防止物品10の第2面12は、防眩性凹凸35を有している。防眩性凹凸35は、可視光線の波長より大きな凹凸によって光を乱反射させることによって光を拡散させて、鏡面反射に起因した外部像の映り込みを防止することができる。
【0019】
また、図2に示された例において、反射防止物品10の第2面12の側には、少なくとも低屈折率層を有し単層又は多層から構成される反射防止膜30が設けられている。そして、第2面12は、反射防止膜30の低屈折率層の表面を最外面として構成されている。このような図2に示された反射防止物品10は、平坦な表面を有するとともに、当該表面での反射自体を防止することができる。
【0020】
なお、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「シート」はフィルムや板とも呼ばれ得るような部材も含む概念である。また、本明細書において、「シート面(フィルム面、板面)」とは、対象となるシート状の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材の平面方向と一致する面のことを指す。さらに、本明細書において、「反射防止物品の法線方向」とは、反射防止物品のシート面への法線方向のことを指す。
【0021】
このような反射防止物品10は、第1面11において、反射防止機能を発揮し、且つ、第2面12において、鏡面反射を低減して鏡面反射像の出現を防止する機能を発揮する。このような反射防止物品10は、例えば、液晶表示パネル等の表示装置本体の表示面に重ね合わせられ、表示装置本体からなる表示部の窓材として使用される。好適には、手垢、埃、汚れ等が付着しやすい外面(観察者側の面)を第2面12がなし、手垢、埃、汚れ等は付着しにくいが、隣接する他の部材との擦れ等が生じやすい内面(表示装置本体側の面)を第1面11がなすように、反射防止物品10が表示装置本体の表示面に重ねて配置され得る。この場合、映像光は、第1面11から反射防止物品に入射するため、極めて高い透過率で反射防止物品10を透過することができる。一方、照明光や太陽光等の環境光は、第2面12での鏡面反射を効果的に防止され、これにより、鏡面反射像としての外部像の表示装置への映り込みが効果的に防止される。更には、鏡面反射光による画像明暗のコントラスト(白画像輝度の黒画像輝度に対する比)が低下することが防止される。すなわち、この反射防止物品10を用いることによって、表示装置におけるエネルギー効率を改善することができるとともに、表示される映像の画質を向上させることができる。
【0022】
以下、反射防止物品10の第1面11および第2面12の構成についてさらに詳述するとともに、その後、この反射防止物品10の作用効果を説明し、さらに、反射防止物品10に対する変形の一例について説明する。
【0023】
<<第1面>>
(全体構成)
図1および図2に示すように、反射防止物品10の第1面11には、可視光の最長波長を越えるピッチで互いから離間して配置された三個以上の突出部15が設けられている。また、第1面11の突出部15が設けられていない領域は、可視光の最長波長以下のピッチで基準平面SP上に配置された凸部20を含んで構成されている微細凹凸25を有した面となっている。微細凹凸25は、モスーアイ構造体をなし、極めて優れた反射防止機能を発揮し得る。まず、微細凹凸25について説明し、その後、突出部15について説明する。
【0024】
(微細凹凸)
図4に示すように、微細凹凸25は、可視光線スペクトルの最長波長以下のピッチ(周期)Pで配列された凸部20を含んで構成されている。微細凹凸25は、モス−アイ構造体をなして、入射光の反射を防止する機能を有する。公知文献等で既に議論されているため詳細な説明は省略するが、簡単には次のようなメカニズムによって、モス−アイ構造体の反射防止機能が発現されるものと考えられている。なお、本明細書では、特別の限定が加えられている場合を除き、「波長」とは、空気中での波長の長さのことを指している。
【0025】
一般的には、光の反射は、屈折率が異なる媒質間での界面で生じる。一方、微細凹凸25を有するモス−アイ構造体をなす媒質と、これに対面する空間(通常は、空気層)と、の間では、厳密には、屈折率の空間的(三次元的)な分布が生じる。ただし、モス−アイ構造体をなす微細凹凸25において、空間(空気層)からモス−アイ構造体の微細凹凸25に入射する光のうちの微細凹凸25のピッチP以上の波長の光に対しては、微細凹凸25の凹凸方向に直交する各平面内での屈折率の分布は、もはや屈折率の分布としては作用し得えず、当該光の進行方向に直交する面における凸部20の占める面積比率に対応して平均化された屈折率を有する面として作用する。したがって、微細凹凸25の凹凸方向における各位置での平均化された屈折率の値が、当該凹凸方向に沿って、空間(空気層)の屈折率からモス−アイ構造体を形成する媒質(例えば樹脂材料)の屈折率へと、しだいに変化して行く場合、空間(空気層)からモス−アイ構造体に入射する光に対しては、もはや屈折率が急激に変化する界面が存在するようには作用せず、しだいに(図4の例では連続的にであるが、図6の例では段階的に)屈折率が変化する層が存在するかのように作用する。この結果、光は、空間(空気層)からモス−アイ構造体を形成する媒質へ、反射することなく入射することができるようになる。
【0026】
以上のような原理からして、微細凹凸25による反射防止機能は、その凸部20の配置ピッチP以上の波長を有した光に対して及ぼされる。したがって、凸部20の配置ピッチPが可視光の最長波長以下となっている場合には、人間によって観察され得る、何らかの光学作用が反射防止物品10への入射光に対して及ぼされるようになる。なお、日本工業規格におけるJISZ8120での定義によれば、可視光の最長波長は760nm〜830nmとされており、最も長くて830nmとなっている。
【0027】
例えば、反射防止物品10の第1面11へ入射する可視光の最短波長以下となっている場合には、反射防止物品10へ入射する全波長域の光の反射を効果的に防止して、反射防止物品10へ第1面11の側から入射する全波長域の光の透過率を大幅に向上させることが可能となる。したがって、日本工業規格におけるJISZ8120での定義された可視光の最短波長である360nm〜400nmのうちの最短である360nm以下に凸部20の配置ピッチPが設定されている場合には、反射防止物品10へ入射する可視光の透過率を、色調を崩すことなく、向上させることができる。
【0028】
また、昨今では、液晶表示パネルのバックライトの光源として、光の三原色である青色光、緑色光および赤色光を発光する発光体が用いられ、該三原色の加法混色によって得られる白色光によって、液晶表示パネルを背面側から照明することが行われている。このような表示パネルに重ねて使用される反射防止物品10においては、該三原色をなす光のうちで波長が最も短い青色光の波長以下のピッチ(周期)Pで凸部20を配列すればよい。一具体例として、波長488nmの青色光(Arイオンレーザのスペクトルの1つ)、波長514nmの緑色光(これもArイオンレーザのスペクトルの1つ)、および、波長633nmの赤色光(He−Neレーザのスペクトルの1つ)の三原色の加色混合による白色光で表示パネルを照明する場合には、微細凹凸25の凸部25のピッチpを488nm以下とすることによって、全映像光の透過率を大幅に上昇させることができ、これにより、映像の色調を崩すことなく当該映像を明るく表示することができる。
【0029】
さらに、微細凹凸25をなす凸部20の配置ピッチPが、反射防止物品10の第1面11へ入射する可視光の波長域内の値、日本工業規格におけるJISZ8120での定義に従えば360nm〜830nmの間の値となっていてもよい。この場合、反射防止物品10の第1面11へ入射する可視光のうちの、凸部20の配置ピッチPの値以上の波長を有した光は、凸部20の配置ピッチPよりも小さな波長を有した光と比較して、第1面11での反射を効果的に防止され、高い透過率で反射防止物品10を透過することができる。このため、反射防止物品10へ入射する前の光と、反射防止物品10を透過した後の光と、の間では、光量のスペクトル分布が異なったものとなる。すなわち、反射防止物品10は、入射可視光のうちの短波長側の光を選択的に透過させることによって、色調を変化させる機能を発揮することができる。
【0030】
図4には、微細凹凸25の一具体例が示されている。図4に示された微細凹凸25は、シート状の部材からなる反射防止物品10のシート面と平行な基準平面SP上に、線状に延びる凸部20を、その長手方向と交差する方向に配列することによって形成されている。すなわち、リニア配列された凸部20によって微細凹凸25が形成されている。とりわけ図示する例では、基準平面SP上を直線状に延びる凸部20が、その長手方向と直交する基準平面SP上の配列方向に隙間無く並べて配列されている。尚、微細凹凸25に対する基準平面SPとは、其の上に微細凹凸25の凸部20を載置する仮想の平面のことを云う。図4に示された例に於いては、凸部20の高さは全て同一の為、微細凹凸25の谷部20bは全て基準平面SPに接する。即ち、図4の例に於いては、基準平面SPは微細凹凸の谷部20bの接平面になっている。そして、図4の例に於いては、基準平面SPを境にして、其の外側(図4では上側)と内側(図4では下側)とは同じ材料から構成され、基準平面SPは仮想的な平面である。但し、シート状の基材上に、該基材とは別材料を用いて微細凹凸25を形成する場合には、基準平面は、該基材と該微細凹凸25の異種材料間を区劃する実在の平面(界面)となる。また、図4に示された例において、凸部20は、互いに同一に構成されている。そして、凸部20の配列方向と基準平面SPへの法線方向ndとの両方向に平行な断面において、隣接配置された複数の凸部20の外輪郭は、正弦曲線を描くようになっている。
【0031】
このような図4に示された例では、基準平面SPの法線方向ndと直交する仮想的な切断面CS、すなわち、基準平面SPに平行な切断面CSにおいて、微細凹凸25(凸部20)によって占められている面積(斜線部)Sが、当該断面CSの位置が微細凹凸25をなす凸部20の頂部20aから反射防止物品10の法線方向ndに沿って離間していき、基準平面SP(図示する例では、隣り合う二つの凸部20の間に形成された谷部20b)に接近するに連れて、しだいに大きくなっていく。言い換えると、基準平面SPへの法線方向ndにおける各位置での凸部20の幅waが、当該断面の位置が微細凹凸25をなす凸部20の頂部20aから離間して基準平面SP(谷部20b)に接近するに連れて、しだいに大きくなるように変化する。この場合、凸部20によって形成される微細凹凸25は、凸部20の配置ピッチP以下の波長を有する光に対して、当該光が第1面11の微細凹凸25を介して反射防止物品10に入射する際に、基準平面SPの法線方向ndに沿ってしだいに平均屈折率が変化していくかのように作用し、反射を誘引し得る屈折率差が急激に変化する界面としては作用しない。
【0032】
なお、凸部20のピッチPは、上述したように、人間の目で感知され得る作用効果を確保する上で、可視光スペクトル中の最長波長以下、言い換えると反射を防止されるべき光の波長以下となっている必要がある。この結果、凸部20の配列方向と基準平面SPへの法線方向ndとの両方向に平行な断面における凸部20の幅waの最大値も、反射を防止されるべき光の波長以下となる。一方、基準平面SPへの法線方向ndに沿った凸部20の基準平面SPからの法線方向ndに沿った高さhaは、微細凹凸25に十分な反射防止機能を付与する観点から、150nm以上とすることが好ましい。また、凸部20からなる微細凹凸25の製造の困難性を考慮すると、凸部20のピッチP(凸部20の幅waの最大値)は、50nm以上とすることが好ましく、凸部20の高さhaは、500nm以下とすることが好ましい。
【0033】
ただし、図4に示された例は、単なる一例に過ぎず、微細凹凸25の構成を種々変化させることができる。例えば図5に示すように、凸部20の配列方向と基準平面SPへの法線方向ndとの両方向に平行な断面において、凸部20が基準平面SPから突出した三角形形状として構成されるようにしてもよい。このような第1面11の微細凹凸25によっても、上述した例と同様に、当該出第1面11の微細凹凸25を介して反射防止物品10へ入射する光の反射を防止することができる。
【0034】
また、図4に示された例では、基準平面SPへの法線方向nd(反射防止物品10の法線方向nd)と直交する切断面CSにおいて微細凹凸25(凸部20)によって占められている面積Sが、当該断面CSの位置が微細凹凸25をなす凸部20の頂部20aから基準平面SPへの法線方向ndに沿って離間して基準平面SP(谷部20b)に接近するに連れて、しだいに大きくなるように変化していく例を示したがこれに限られない。例えば、基準平面SPへの法線方向ndと直交する切断面CSにおいて微細凹凸25(凸部20)によって占められる面積Sが、当該断面CSの位置が微細凹凸25をなす凸部20の頂部20aから基準平面SPへの法線方向ndに沿って離間して基準平面SP(谷部20b)に接近するに連れ、一部分において一定であり、その他の部分においてしだいに大きくなるように変化してもよい。言い換えると、基準平面SPへの法線方向ndにおける各位置での凸部20の幅waが、当該断面の位置が微細凹凸25をなす凸部20の頂部20aから離間して基準平面SP(谷部20b)に接近するに連れて、一部において一定となり、その他においてしだいに大きくなるように変化してもよい。
【0035】
さらには、図6に示すように、凸部20の配列方向と基準平面SPへの法線方向ndとの両方向に平行な断面において、凸部20が矩形状となる、言い換えると、凸部20の幅waが、頂部20aから谷部20bに向かう間で、ほぼ一定となるようにしてもよい。本件発明者らが確認したところ、図6に示された例においても、上述した例と同様に、当該第1面11の微細凹凸25を介して反射防止物品10へ入射する光の反射を効果的に防止することができることが確認された。
【0036】
さらに、図4〜図6の例においては、凸部20が基準平面SP上に一次元配列(リニア配列)される例、すなわち、線状に延びる凸部20がその長手方向と交差する方向に延びる例を示したが、これに限られない。図7に示すように、錐体状の凸部20が、基準平面SP上に二次元配列されてもよい。
【0037】
さらに、図4〜図7の例においては、凸部20が基準平面SP上に規則的に配列されている例を示したが、これに限られず、可視光線スペクトル中の最長波長以下の特定の波長以下、言い換えると、反射を防止すべき光の波長以下のピッチPで、基準平面SP上に凸部20が不規則的に配置されるようにしてもよい。さらに、図4〜図6の例においては、基準平面SP上に設けられた多数の凸部20のみによって微細凹凸25が形成されている例を示したが、これに限られない。基準平面SP上に凸部20に加えて凹部が形成され、凸部20および凹部によって、第1面11をなす微細凹凸25が形成されてもよい。さらに、図4〜図7の例においては、微細凹凸25がすべて同一の構成を有する凸部20によって構成されている例を示したが、これに限られない。例えば、高さや断面形状等の構成が互いに異なる複数種類の凸部20によって微細凹凸25が形成されるようにしてもよい。
【0038】
(突出部)
次に、突出部15について説明する。上述したように、反射防止物品10の第1面11上には、互いから離間して配置された少なくとも三つの突出部15が突出している。図1および図2に示す例においては、後述する第1面11の形成方法に起因して、突出部15は基準平面SP上に配置されている。
【0039】
図1および図2に示すように、突出部15は、基準平面SPから測った突出高さhbが、微細凹凸25の凸部20の基準平面SPから測った高さhaよりも大となるよう構成されている。突出部15は、いわゆるスペーサーとして機能し、反射防止物品10へ第1面11の側から隣接する部材と、微細凹凸25と、の間に隙間を形成する。このため、外部との接触により損傷しやすい第1面11の微細凹凸25が、外部と接触することを防止されて保護されるようになる。この観点から、突出部15の突出高さhbは、凸部20の高さhaよりも2μm以上高くする。突出高さhbは、凸部20の高さhaよりも、好ましくは5μm以上、更に好ましくは20μm以上とする。
【0040】
第1面11の基準平面SP上における突出部15の二次元配列は、三角格子、正方格子、六方(龜甲形)格子等の如く規則的であってもよいし、不規則的であってもよい。一方、基準平面SPへの法線方向ndに沿って第1面11の側から反射防止物品10を観察した場合に、第1面11において突出部15が占めている領域の割合(以下において、単に「充填率」とも呼ぶ)は、50%以下となっていることが好ましい。充填率が大きくなると、モス−アイ構造体をなす微細凹凸25が第1面11において占めている割合が小さくなり、反射防止物品10の第1面11全体として反射率が高くなってしまうからである。より具体的には、突出部15が球面(の一部)からなる場合を例にとると、充填率自体は最大91%迄可能である。但し、此の場合は、球の平面内における六方最密重点構造になるため、反射防止を担う微細凹凸25の面積率が9%と最小になり、反射防止効果をほとんど期待することができない。少なくとも、突出部15の充填率は六方最密重点構造よりは疎にする必要が有るが、充填率が80%を超えると、反射防止物品10の第1面11での反射率が、微細凹凸25や突出部15が形成されていない平坦且つ平滑な面での反射率と同程度となってしまう。以上を勘案すると、微細凹凸25による反射防止効果を十分奏する為には、突出部15の充填率は、50%以下、より好ましくは10%以下とすべきである。
【0041】
一方、基準平面SPの全域の中に突出部15の数が3個未満であると、(この場合は、現実的には、充填率は殆ど0%に近いが、)充填率云々以前の問題として、幾何学的に、基準平面SPと隣接する他部材の表面との2平面を全面に於いて、両平面が接触して摩擦し無いよう、すなわち間隙>0、となるように支持することが不能となる。従って、基準平面SPの全域の中に突出部15の数は、最低3個以上は必要となる。但し、通常の多くの場合には、反射防止物品10及び隣接する他の光学部材共に完全剛体とはみなせない場合が多い。其の為、通常は、基準平面SPの全域の中に突出部15の数は3個よりも多い数必要となる。斯かる突出部15の数は、反射防止物品10の面積、個々の突出部15の底面積、隣接する2つの突出部15間の距離、突出高さhb、突起部15の材質、反射防止物品及び隣接部材の可撓性等にも依存するが、通常、例えば、基準平面SPの面積1cm2当たりで、5個以上形成する。
【0042】
尚、以上の理由により、基準平面SPの全域の中に突出部15の数が3個よりも十分於多数存在する場合は、突出部15を形成する程度の下限値は、個数よりも寧ろ充填率で規定する方が、多くの場合、客観的指標となり得る。即ち、突出部15の充填率の下限値は、微細凹凸25の耐殺傷性を十分得るうえでは、突出部15の充填率は、0.15%以上、好ましくは、0.5%以上とする。
【0043】
なお、実際の充填率の特定においては、例えば顕微鏡により観察された反射防止物品10の第1面11上の一区画であって、突出部15の配置ピッチや幅wb等を考慮した上で反射防止物品全体での充填率を反映し得ると期待される面積を持つ一区画(例えば、後述する寸法例で構成された反射防止物品においては、10mm×10mmの部分)についての充填率を算出し、算出された値を当該反射防止物品の充填率として取り扱うようにしてもよい。
【0044】
スペーサーとして機能する際の安定性を確保する観点から、基準平面SPへの法線方向ndと平行な断面において、突出部15は、基準平面SPから最も突出した頂部において曲線状の外輪郭を有していることが好ましい。同様に、スペーサーとして機能する際の安定性を確保する観点から、基準平面SPへの法線方向ndと平行な断面における各突出部15の断面形状は、基準平面SPへの法線方向ndを中心として、対称性を有していることが好ましい。一例として、基準平面SPへの法線方向ndと平行な断面における各突出部15の断面形状が、入光側に突出する円の一部分または入光側に突出する楕円の一部分に相当する形状を有していてもよい。また、各突出部15が、回転楕円体の一部分に相当する形状または球体の一部分に相当する形状を有していてもよい。なお、突出部15の断面形状が楕円の一部分に相当する場合、当該断面楕円形状の長軸または短軸のいずれかが基準平面SPへの法線方向ndと平行に延びていることが好ましい。図3に示された例では、各突出部15は半球状に形成されている。また、図示する例において、複数の突出部15は互いに同一に構成されている。
【0045】
なお、本件明細書における「円」及びその他の形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば、「楕円」、「回転楕円体」、「平行」、「直交」等の用語は、厳密な意味に縛られることなく、同様の光学的機能を期待し得る程度の誤差範囲を含めて解釈することとする。
【0046】
突出部15の具体例として、突出部15の幅wbを1μm以上200μm以下とすることができ、突出部15の高さhbを2μm以上100μm以下とすることができる。
【0047】
(第1面の作製方法)
次に、以上のような構成からなる反射防止物品10の第1面11の作製方法の一例について、主として図8および図9を参照して説明する。以下の例においては、シート材58の一方の側の面上に、微細凹凸25および突出部15を賦型によって形成することにより、反射防止物品10の第1面11を作製する。賦型に用いられる材料としては、成型性が良好であるとともに入手が容易であり且つ優れた光透過性を有する樹脂(一例として、硬化物の屈折率1.57の透明な多官能ウレタンアクリレートオリゴマーとジペンタエリスリトールヘキサアクリレート系モノマーとの組成物の架橋硬化物)が好適に用いられる。
【0048】
まず、成型装置60について説明する。図8に示すように、成型装置60は、略円柱状の外輪郭を有した成型用型70を有している。図9に示すように、成型用型70の円柱の外周面(側面)に該当する部分に円筒状の型面(凹凸面)72が形成されている。円柱状からなる成型用型70は、円柱の外周面の中心を通過する中心軸線CA、言い換えると、円柱の横断面の中心を通過する中心軸線CAを有している。そして、成型用型70は、中心軸線CAを回転軸線として回転しながら(図8参照)、成型品を成型するロール型として構成されている。
【0049】
図9に示すように、型面72には、反射防止物品10の第1面11の構成と相補的な構成が、凹部として形成されている。具体的には、微細凹凸25を形成する線状の凸部20に対応する溝76と、突出部15に対応する穴部74と、が型面72に形成されている。溝76は、型面72上において、その中心軸線CAを中心として円周状に、あるいは、螺旋状に延びている。いずれの場合においても、溝76は、型面72の中心軸線CAに対して概ね垂直な方向に延びている。穴部74は、例えばフォトリソグラフィ技術を利用したエッチングにより、例えば、中空の鉄芯表面に銅層を被覆して成る円柱状基材の円周面上の所望の位置に形成され得る。その後、例えば切削バイトを用いた切削加工により、穴部74が形成された円柱状基材の円周面上に、穴部74を横切るようにして延びる溝76を形成することができる。
【0050】
図8に示すように、成型装置60は、帯状に延びるシート材(成型用基材シート)58を供給する成型用基材供給装置(図示せず)と、供給されるシート材58と成型用型70の型面72との間に流動性を有した材料59を供給する材料供給装置64と、シート材58と成型用型70の凹凸面72との間の材料59を硬化させる硬化装置66と、をさらに有している。硬化装置66は、硬化対象となる材料59の硬化特性に応じて適宜構成され得る。
【0051】
次に、このような成型装置60を用いて反射防止物品10を作製する方法について説明する。まず、成型用基材供給装置から、例えば透明性を有した樹脂からなるシート材58が供給される。供給されたシート材58は、図8に示すように、成型用型70へと送り込まれ、成型用型70と一対のローラ68とによって、型70の凹凸面72と対向するようにして保持されるようになる。
【0052】
また、図8に示すように、シート材58の供給にともない、シート材58と成型用型70の型面72との間に、材料供給装置64から流動性を有する材料59が供給される。ここで、「流動性を有する」とは、成型用型70の型面72へ供給された材料59が、型面72の穴部74および溝76内に入り込み得る程度の流動性を有することを意味する。
【0053】
供給される材料59としては、成型に用いれ得る種々の既知な材料(例えば、上述した、硬化物の屈折率1.57の透明な多官能ウレタンアクリレートオリゴマーとジペンタエリスリトールヘキサアクリレート系モノマーとの組成物からなる電離放射線硬化型樹脂)を用いることができる。以下に示す例においては、材料供給装置64から電離放射線硬化型樹脂が供給される例について説明する。電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、紫外線(UV)を照射されることにより硬化するUV硬化型樹脂や、電子線(EB)を照射されることによって硬化するEB硬化型樹脂を選択することができる。
【0054】
その後、成型用シート材58は、型70の型面72との間を電離放射線硬化型樹脂材料59によって満たされた状態で、硬化装置66に対向する位置を通過する。このとき、硬化装置66からは、電離放射線硬化型樹脂材料59の硬化特性に応じた電離放射線が放射されており、電離放射線はシート材58を透過して電離放射線硬化型樹脂材料59に照射される。この結果、型面72の穴部74内および溝76内に充填されていた電離放射線硬化型樹脂材料59が硬化して、電離放射線硬化型樹脂材料59の硬化物からなる微細凹凸25をなす凸部20および突出部15がシート材58上に形成されるようになる。
【0055】
その後、図8に示すように、シート材58が型70から離間し、これにともなって、型面72の穴部74内および溝76内に成型された突出部15および凸部20がシート材58とともに型70から引き離される。このようにして、上述した反射防止物品10の第1面11をなす構成が、シート材58上に形成される。
【0056】
なお、上述した方法において、シート材58の表面は型70の表面(型面72)に接触していないことが好ましい。この場合、硬化した材料59からなるシート状のランド部が一定の厚みの層としてシート材58上に形成され、当該ランド部上に、微細凹凸25をなす凸部20と突出部15とが硬化した材料59から形成されるようになる。また、ランド部によって、凸部20を支持する基準平面SPが形成されるようになる。このような方法によれば、成型された凸部20および突出部15が、離型時に、型70内に部分的に残留してしまうことを効果的に防止することができる。
【0057】
以上のようにして、ロール型として構成された成型用型70がその中心軸線CAを中心として一回転している間に、流動性を有した材料59を型70内に供給する工程と、型70内に供給された材料59を型70内で硬化させる工程と、硬化した材料59を型70から抜く工程と、が型70の型面72上において順次実施されていき、反射防止物品10の第1面11をなす構成がシート材58の一方の面上に形成される。
【0058】
なお、第1面11をなす構成を一方の側の面上に形成されたシート材58の他方の側の面上へ、以下に説明する方法によって、第2面12をなすようになる反射防止膜30または防眩性凹凸35を形成することによって、反射防止物品10を得ることができる。なお、第2面12をなす構成をシート材58の他方の側の面上へ形成する際には、既に形成された反射防止物品10の第1面11をなす構成が損傷を受けないよう、適宜、再剥離性の保護フィルムを仮接着する等の保護手段を講じておくことが好ましい。また、シート材58の一方の側の面上へ反射防止物品10の第2面12をなす構成を形成し、その後、シート材58の他方の側の面上へ反射防止物品10の第1面11をなす構成を形成することによって、反射防止物品10を作製するようにしてもよい。あるいは、反射防止物品10の第1面11をなす構成を第1のシート材に上述のようにして形成し、反射防止物品10の第2面12をなす構成を第2のシート材に後述するようにして形成し、その後、第1面11をなす構成が形成された第1のシート材と第2面12をなす構成が形成された第2のシート材とを積層することによって、反射防止物品10を作製することもできる。
【0059】
なお、反射防止物品10の一部分をなすようになるシート材58としては、透光性を有した樹脂製シートを用いることができる。樹脂製シートとしては、無色透明の2軸延伸ポリエチレンテレフタレート製シートを用いることができる。また、上述の作製方法を用いる場合、樹脂製シートの厚みを50μm以上500μm以下とすることができる。
【0060】
<<第2面>>
(全体構成)
次に、反射防止物品10の第2面12について説明する。上述したように、第2面12は、鏡面反射による外部像の映り込みを防止する機能を有した面として形成されている。図1には、反射防止物品10の第2面12が、防眩性凹凸35を有した面として構成されている例が示され、図2には、反射防止物品10の第2面12が、少なくとも低屈折率層を有し単層又は多層から構成される反射防止膜30の前記低屈折率層の表面によって形成されている例が示されている。このうち、まず、防眩性凹凸35について説明し、その後、少なくとも低屈折率層を含み単層または多層からなる反射防止膜30について説明する。
【0061】
(防眩性凹凸)
防眩性凹凸35は、入射光を散乱乃至は拡散することによって、表面の可視光線に対する鏡面反射の反射率を低減する防眩機能(Anti Glare機能:略称してAG機能)を発現する層である。したがって、上述した微細凹凸とは異なり、防眩性凹凸35における凸部の配置ピッチは、可視光の最長波長よりも長くなっている。
【0062】
一例として、JISB0601(1994)に準拠して測定された防眩性凹凸35の平均間隔Smが60μm以上250μm以下となり、JISB0601(1994)に準拠して測定された防眩性凹凸35の平均傾斜角θaが0.3度以上1.0度以下となり、JISB0601(1994)に準拠して測定された防眩性凹凸35の十点平均粗さRzが0.3μm以上1.0μm以下となるようにすることができる。なお、平均間隔Sm、平均傾斜角θaおよび十点平均粗さRzの測定は、例えば、(株)小坂研究所製のSE2555Nを用いて測定され得る。
【0063】
入射光を散乱乃至は拡散させるための防眩性凹凸35は、次の粗面化処理によって、作製され得る。
(1)サンドブラスト法やエンボス法等により基体表面に直接微細凹凸を形成して粗面化する方法。
(2)基体表面に樹脂バインダー中に、光拡散性粒子(以下、単に拡散粒子とも略稱する)として、粒径0.5〜10μm程度のシリカ粒子などの無機物粒子や、アクリル樹脂粒子などの有機物粒子を含有させた塗膜を基体表面に形成してなる粗面化層を設ける方法。
(3)基体表面に海島構造による多孔質膜を形成する方法。
【0064】
なお、防眩性凹凸は反射防止物品10の表面を形成することから、高い硬度を有した構造となっていることが好ましい。この観点から、上記(2)の粗面化方法における樹脂バインダー樹脂としては、熱硬化性アクリル樹脂や、アクリル系、エポキシ系等の電離放射線硬化性樹脂等が好適に使用され得る。また、上記(2)や(3)の方法のように、基体上に別途の層を設ける場合、当該層の厚みは、特に限定されるものではないが、1μm以上20μm以下とすることが好ましい。
【0065】
(反射防止膜)
次に、反射防止膜30について説明する。反射防止膜(Anti Reflection膜、略称してAR膜)30は、反射防止物品10の第2面12を構成することによって、反射防止物品10の第2面12での可視光線反射率(単に「反射率」とも呼ぶ)を低減する機能を発現する。
【0066】
反射防止膜30は、低屈折率層の単層として、或いは、低屈折率層が最表面に位置するようにして低屈折率層と高屈折率層とを交互に積層した多層として、一般的に構成されている。なお、ここで低屈折率層とは、該層(対象となる層)に隣接する層(部分)と比較して、相対的に低い屈折率を有する層を意味する。同様に、高屈折率層とは、該層(対象となる層)に隣接する層(部分)と比較して、相対的に高い屈折率を有する層を意味する。すなわち、図8および図9を参照しながら説明したシート材58の第1面11に関する構成が作製された側とは反対側に反射防止膜30が形成される場合には、単層構造の反射防止膜30は、当該反射防止膜30に隣接するシート材58をなす材料の屈折率よりも低い屈折率の材料から、形成される。また、多層構造の反射防止膜30は互いに重ね合わされた複数の層から形成され、この複数の層のうちの、反射防止物品10の第2面12の側から偶数番目に位置する層は、当該層に両側から隣接する一対の層をそれぞれなす材料の屈折率よりも高い屈折率の材料から形成される高屈折率層とする。
【0067】
なお、屈折率の大小を比較されるべき層が、母材と、母材中に分散された微粒子と、を有している場合には、母材と微粒子との体積比率を考慮して算出した平均屈折率を、当該層の屈折率として取り扱えばよい。すなわち、微粒子を母材に添加することによって、形成された層の屈折率を調節し、当該層の反射率を調節することができるようになる。
【0068】
一般的に、相対的に高い屈折率nHを有する基層の上に、この基層よりも相対的に低い屈折率nLを有し且つ厚みがhLの低屈折率層を積層する場合、
nL=(nH)1/2 ・・・ 式(1)
式(1)の関係を満たす際に、低屈折率層の表面での反射率が最小となることが知られている。また、この関係式(1)が満たされない場合であっても、左辺の値(nL)と右辺の値((nH)1/2)とを近付けることによって、低屈折率層の表面での反射率を低下させることができる。
【0069】
また、式(1)を満たす場合に於いても、低屈折率層の表面での反射率は光の波長λ及び低屈折率層の厚みhLによって変化する。
hL=λmin/4nL1 ・・・ 式(2)
具体的には、式(2)を満たす波長λminを有した光の反射率が最小化する。このような現象にともなって、反射防止膜30で反射した光は、この波長λminの光の捕色に着色されるようになる。したがって、低屈折率層の厚みhLを適宜設計することによって、所望の波長に於ける反射率を最小化することや、反射防止膜30の表面の色調を所望の色調に調節することも可能となる。
【0070】
低屈折率層を構成する無機系材料として、珪素酸化物や弗化物等が用いられる。具体的にはSiO2(屈折率n=1.45)、MgF2(屈折率n=1.38)、LiF(屈折率n=1.36)、NaF(屈折率n=1.33)、CaF2(屈折率n=1.44)、3NaF・AlF3(屈折率n=1.4)、AlF3(屈折率n=1.37)、Na3AlF6(屈折率n=1.33)等を用いることができる。また、低屈折率層を構成する有機系材料としては、弗素系有機化合物(弗素樹脂)、珪素系有機化合物等を挙げることができる。
【0071】
また、空隙を有する微粒子を用いて低屈折率層を形成することもできる。空隙を有する微粒子とは、微粒子の内部に気体が充填された構造及び/又は気体を含む多孔質構造体を形成し、微粒子本来の屈折率に比べて微粒子中の気体の占有率に反比例して屈折率が低下する微粒子を意味する。空隙を有する微粒子には、微粒子の形態、構造、凝集状態、塗膜内部での微粒子の分散状態により、その内部及び/又は表面の少なくとも一部に微小多孔質構造の形成が可能な微粒子も含まれる。空隙を有する微粒子は、無機物、有機物のいずれであってもよく、例えば、金属、金属酸化物、樹脂からなるものが挙げられ、好ましくは、酸化珪素(シリカ)微粒子が挙げられる。さらに、5〜30nmのシリカ超微粒子を水もしくは有機溶剤に分散したゾルと弗素系樹脂の皮膜形成剤を混合した材料を使用することも出来る。
【0072】
一方、多層構造の反射防止膜30を形成する場合、高屈折率層を構成する無機系材料として、ZnO(屈折率n=1.9)、TiO2(屈折率n=2.3〜2.7)、CeO2(屈折率n=1.95)、アンチモンがドープされたSnO2(屈折率n=1.95)又はITO(屈折率n=1.95)、Al2O3(屈折率n=1.63)、La2O3(屈折率n=1.95)、ZrO2(屈折率n=2.05)、Y2O3(屈折率n=1.87)等を用いることができる。また、高屈折率層を構成する有機系材料としては、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂等を用いることができる。
【0073】
反射防止膜30をなす低屈折率層および高屈折率層は、無機系材料を用いる場合、上記の無機系材料を用いた、真空蒸着、スパッタリング、プラズマCVD、イオンプレーティング等による気相法で、基体上或いは高屈折率層または低屈折率層上に形成され得る。他の方法として、以下のようにして、無機系材料からなる低屈折率層および高屈折率層を形成することもできる。まず、微粒子化した上記無機系材料を、適宜の樹脂バインダー中に分散させ、さらに、溶剤で希釈することによって塗料を準備する。次に、無機系材料を含んだ塗料を、スピンコーティング、ロールコーティング、ダイコーティング等による湿式塗工法により、当該層を形成すべき面上へ塗工する。その後、塗工された塗料から溶剤を乾燥除去し、さらに必要に応じて、熱や放射線(紫外線、電子線等)等により架橋乃至重合反応を起こさせて硬化(乃至固化)させる。これにより、反射防止膜30をなす低屈折率層および高屈折率層を形成することができる。
【0074】
有機系材料を用いる場合には、以下のようにして、低屈折率層および高屈折率層を形成することができる。まず、有機系材料を、適宜の溶剤中に溶解乃至は分散せしめて、塗料を作製する。次に、有機系材料を含んだ塗料を、スピンコーティング、ロールコーティング、ダイコーティング等による湿式塗工法で、基体上或いは高屈折率層または低屈折率層上に塗工する。その後、塗工された塗料から溶剤を乾燥除去し、さらに必要に応じて、熱や放射線(紫外線、電子線等)等により架橋乃至重合反応を起こさせて硬化(乃至固化)させる。これにより、反射防止膜30をなす低屈折率層および高屈折率層を形成することができる。
【0075】
<<作用効果>>
以上のような構成からなる反射防止物品10の第1面11には微細凹凸25が設けられており、この微細凹凸25は入射光の反射を極めて効果的に防止して、第1面11の側(表示装置本体の側)から入射する光(映像光)が非常に高い透過率で反射防止物品10を透過することが可能となる。これにより、反射防止物品10への第1面11の側からの入射光を極めて高い効率で利用することが可能となる。又、同時に、該微細凹凸25は、反射防止物品10の第2面12の側から反射防止膜30又は防眩性凹凸35を透過してきた外光に対しても、其の反射率を低く抑えることができる。
【0076】
なお、このような優れた反射防止機能を有した微細凹凸25は、隣接する他の部材等の外部との接触や擦れ等に起因して、容易に損傷され得る。そして、微細凹凸25が損傷してしまうと、輝点や欠点等の光学欠陥が視認されるようになる。加えて、微細凹凸25が、損傷を引き起こさない程度に外部と軽く接触または擦れた場合であっても、微細凹凸25に油脂やごみ等の付着物が付着する可能性がある。この場合、微細凹凸25付着物が付着している部分は、もはや反射防止機能を発揮することができなくなる。
【0077】
また、反射防止物品10の他の部材との接触や擦れ等は、前記の如く反射防止物品10の使用中だけでなく、反射防止物品10の搬送中等にも、生じる可能性がある。一般的に、シート状の反射防止物品10は、最終的な使用状態となる前に、多数重ね合わされた状態で或いは巻き取られた状態で、搬送等の取り扱いを受ける。そして、多数重ね合わされた状態で或いは巻き取られた状態で反射防止物品10が搬送される際、あるいは、反射防止物品10が組み込まれた装置が搬送される際、反射防止物品10の第1面11は、隣接する部材(隣接する他の反射防止物品10、ウェブ状の反射防止物品10の他の部分、隣接する他の部材等)と接触し、当該他の部材と擦り合わせられるようになる。
【0078】
その一方で、本実施の形態によれば、反射防止物品10の第1面11は、微細凹凸25だけでなく、微細凹凸25の凸部20よりも基準平面SPから突出した突出部15によっても、その一部分を形成されている。したがって、反射防止物品10に第1面11の側から隣接する部材は、突出部15を介して、反射防止物品10の第1面11に接触するようになる。つまり、通常の使用状態において、突出部15により、微細凹凸25が当該反射防止物品10に隣接する他の部材に接触することが防止される。このため、優れた反射防止機能を有した微細凹凸25に付着物が付着することや、当該微細凹凸25が隣接する部材との接触や擦れ等に起因して損傷を受けることを効果的に防止することができる。すなわち、突出部15によれば、反射防止物品10の第1面11に優れた耐擦傷性を付与することができる。結果として、反射防止物品10の第1面11が、安定して優れた反射防止機能を発揮し続けることができる。
【0079】
とりわけ本実施の形態では、突出部15は、上述したように特定の充填率で、反射防止物品10の第1面11に設けられている。したがって、反射防止物品10の第1面11が優れた反射防止機能を発現すること、且つ、当該優れた反射防止機能を安定して維持し続けることが可能となる。
【0080】
また、本実施の形態では、突出部15は、球体の一部または回転楕円体の一部に相当する形状となっている。すなわち、この突出部15は、形状的に、高い剛性を有するようになっている。また、突出部15の頂部は、反射防止物品10の法線方向ndに沿った断面において、曲線状の外輪郭を有するようになっている。このため、反射防止物品10と反射防止物品10に第1面11の側から隣接する部材との摩擦係数が低減され、当該反射防止物品10に第1面11の側から隣接する部材は、反射防止物品10に対して、滑り易くなる。このため、反射防止物品10に第1面11の側から隣接する部材から集中的に外力を受けるようになる突出部15に、擦れや削れ等の損傷が生じることも効果的に抑制されるようになる。そもそも、突出部15が球体の一部または回転楕円体の一部として構成されている場合には、反射防止物品10および隣接する他の部材の少なくとも一方に曲がりや反り等が生じたとしても、反射防止物品10と他の部材との相対位置が滑らかに変化し得る。すなわち、反射防止物品10と他の部材との間での摩擦力を低減することができる。これらのことから、本実施の形態での突出部15の構成によれば、反射防止物品10に極めて優れた耐擦傷性を付与することができる。
【0081】
なお、以上のような耐擦傷性の向上は、反射防止物品10の第1面11に三個以上の突出部15が設けられている場合に、確保され得るようになる。三つの突出部15の頂部によって、唯一の仮想的な面が、反射防止物品10の第1面11の一部をなす微細凹凸25から離間した位置に幾何学的に画成される。そして、この画成された面の位置に、反射防止物品10に隣接する他の部材の面が、支持され得るようになる。ただし、本件発明者らが鋭意研究を重ねたところ、表示装置に組み込まれて使用される反射防止物品10においては、突出部15の充填率が0.01%以上となる場合に安定して、さらには、突出部15の充填率が0.1%以上となる場合により安定して、反射防止物品10の第1面11の一部をなす微細凹凸25を隣接する他の部材から離間させて反射防止物品10の耐擦傷性を向上させることができた。
【0082】
また、反射防止物品10の第2面12は、少なくとも低屈折率層を有し単層又は多層から構成される反射防止膜30の前記低屈折率層の表面、あるいは、防眩性凹凸35を有した面からなっている。このため、第1面11の側から入射して反射防止物品10を透過する可視光を第2面12の側から観察する場合、観察者が透過光を極めて高い透過率で観察することを可能にし、且つ、第1面11に入射する外光の反射も抑えられる為、反射防止物品10への外部像の映り込みを極めて効果的に防止することができる。
【0083】
すなわち、手垢、埃、汚れ等が付着しやすい外面(観察者側の面)を第2面12がなし、手垢、埃、汚れ等は付着しにくいが、隣接する他の部材との擦れ等が生じやすい内面(表示パネル側の面)を第1面11がなすようにして、液晶表示パネル等の表示装置本体の表示面に重ねて配置することにより、シート状の反射防止物品10を好適に使用することができる。この場合、液晶表示本体からの映像光は、第1面11から反射防止物品10に入射するため、極めて高い透過率で反射防止物品10を透過することができる。一方、照明光や太陽光等の環境光は、第2面12、更には第1面11での鏡面反射を効果的に防止され、表示装置への映り込みが効果的に防止される。すなわち、この反射防止物品10を用いることによって、表示装置におけるエネルギー効率を改善することができるとともに、表示される映像の画質を向上させることができる。
【0084】
反射防止物品10が組み込まれ得る表示装置を有した製品の一例としては、テレビジョン受像装置が代表的なものではあるが、其の他、携帯電話等の各種通信機器、パーソナルコンピュータ、電子卓上計算機、電子手帳、各種PDAまたは携帯情報端末等の各種電子計算機乃至は情報処理機器、CDプレーヤー、DVDプレーヤー、MDプレーヤー、半導体メモリ方式音楽プレーヤー等の各種携帯型音楽プレーヤー、ビデオテープレコーダ、ICレコーダ、ビデオカメラ、デシタルカメラ、ラベルプリンタ等の各種映像電子機器、電気炊飯器、電気ポット、洗濯機等の各種家庭電気製品、オシロスコープ、電圧計、自動車の速度計等の各種計測機器、CT(コンピュータ斷層撮影装置)、心電図等の医療用電子機器、各種ゲーム機器、或は電子看板等が例示される。
【0085】
ただし、反射防止物品10は、映像を表示する表示装置本体に重ねて配置される表示装置の窓材としての用途だけでなく、その他の種々の用途で使用され得る。例えば、反射防止物品10が、時計に代表される機械式アナログメータ等の機器の表示部の窓材としても使用され得る。また、反射防止物品10は、平板状(シート状)の窓材に限られず、組み付けやデザイン上の観点から種々の形態、例えば周囲に突起等を有する形態で使用され得る。
【0086】
<<変形例>>
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、変形の一例について説明する。
【0087】
既に説明したように、上述した実施の形態において反射防止物品10の第1面11をなす微細凹凸25の構成を例示したが、微細凹凸25をなす凸部20の断面形状や微細凹凸25をなす凸部20の配列等を適宜変更することができる。
【0088】
また、上述した実施の形態において、突出部15が、球体の一部分または回転楕円体の一部分に相当する形状を有している例を示したが、これに限られない。例えば、突出部が、基準平面SPから突出する円錐台と、この円錐台上に配置された半球と、を組み合わせてなる形状を有するようにしてもよい。また、上述した実施の形態において、反射防止物品10の法線方向nd(基準平面SPへの法線方向)に沿った断面において、突出部15が、円形状の一部分または楕円形状の一部分に相当する形状を有する例を示したが、これに限られない。例えば、突出部が、反射防止物品10の法線方向nd(基準平面SPへの法線方向)に沿った断面において、基準平面SPから突出する台形と、この台形上に配置された半球と、を組み合わせてなる形状を有するようにしてもよい。さらに、上述した実施の形態において、突出部15の底面(基準平面SPに接続する面)が円形状からなる例(図3参照)を示したが、これに限られない。例えば、突出部の底面が、楕円となる形状、或は三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等の多角形形状として形成されてもよい。さらに、上述した実施の形態において、反射防止物品10の突出部15がすべて同一の構成を有する例を示したが、これに限られない。例えば、高さ、断面形状および底面形状等の少なくとも一つが互いに異なる複数種類の突出部15が、反射防止物品10に含まれていてもよい。
【0089】
さらに、反射防止物品10が光を拡散させる拡散機能を有するようにしてもよい。例えば、第1面11と第2面12との間に光拡散層(中間マット層)を有するようにしてもよい。このような光拡散層(中間マット層)は、基部と、基部中に分散された光拡散剤と、を有する層として構成され得る。光拡散剤を含む光拡散層は、例えば、光拡散剤が光反射機能を有することにより、あるいは、光拡散剤が基部とは異なる屈折率を有することにより、光拡散機能を付与され得る。
【0090】
さらに、反射防止物品10が帯電防止層を含むようにしてもよい。この変形例によれば、埃等の異物付着を低減することができ、光学特性に与える悪影響を抑制することができる。また、上述した光拡散層が帯電防止機能を有するようにしてもよい。
【0091】
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
【実施例】
【0092】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0093】
実施例AおよびBに係る反射防止物品並びに比較例A1,A2,B1およびB2に係る反射防止物品を作製した。得られた反射防止物品について、耐擦傷性を評価した。また、得られた反射防止物品について、透過率および反射率を評価した。
【0094】
〔反射防止物品〕
(実施例A)
まず、実施例Aに係る反射防止物品10として、図1に示された反射防止物品を上述してきた方法で作製した。すなわち、実施例Aに係る反射防止物品は、第1面11および第2面12を有し、第1面には可視光の最長波長より大きいピッチで配置された三個以上の突出部15が設けられ、第1面の前記突出部が設けられていない領域が可視光の最長波長以下のピッチで基準平面上に配置された凸部20を含んで構成されている微細凹凸25を有した面からなるようにした。また、実施例Aに係る反射防止物品の第2面12は、防眩性凹凸面35として構成した。
【0095】
実施例Aに係る反射防止物品の第1面11は、厚さ250μmの無色透明の2軸延伸ポリエチレンテレフタレートA4300(東洋紡績株式会社製造)からなるシート材の一方の面上に、微細凹凸25をなす多数の凸部20および突出部15を形成することによって、作製した。また、実施例Aに係る反射防止物品の第2面12は、シート材の他方の面上に、バインダー樹脂および拡散粒子からなる粗面化層を形成して防眩性凹凸35とすることによって、作製した。凸部、突出部およびバインダー樹脂として、ウレタンアクリレートプレポリマからなる電離放射線硬化型樹脂を用いた。拡散粒子として、平均粒径3μmのシリカ粒子を用いた。拡散粒子は、粗面化層に10重量%含まれるようにした。
【0096】
反射防止物品の総厚みが、略300μmとなるようにした。第1面の微細凹凸は、図6に示された微細凹凸25と同様に構成した。すなわち、微細凹凸25を構成する凸部20は、凸部の配列方向と反射防止物品の法線方向との両方向に平行な断面において、一辺が85nmの正方形状となるように設計した。また、凸部の配列ピッチは、一般的な可視光波長域の最短波長よりも大幅に短い190nmに設計した。ただし、作製された凸部を顕微鏡で観察したところ、厳密には凸部の幅は一定ではなく、基準平面SPから離間するに連れて先細りし、下底辺が85nmで上底辺が70μmの台形形状となっていた。配列ピッチは設計通り190nmとなっていた。突出部15は、半径15μmの半球状とし、充填率5%で第1面11上にランダムに配置した。
【0097】
(比較例A1)
比較例A1に係る反射防止物品は、突出部が設けられていない点において実施例Aに係る反射防止物品と異なり、その他(構成、製造方法、材料)において実施例Aに係る反射防止物品と同一となるようにした。すなわち、比較例A1に係る反射防止物品は、可視光の最長波長以下のピッチで基準平面上に配置された凸部を含んで構成されている微細凹凸としての第1面と、防眩性凹凸面としての第2面と、を有するようにした。比較例A1に係る反射防止物品の第1面は、シート材の一方の面上に微細凹凸25をなす多数の凸部を、実施例Aの凸部と同様に形成することによって、作製した。比較例A1に係る反射防止物品の第2面は、シート材の他方の面上にバインダー樹脂および拡散粒子からなる粗面化層を実施例Aの粗面化層と同様に形成することによって、作製した。
【0098】
(比較例A2)
比較例A2に係る反射防止物品は、第1面が平坦且つ平滑である点において実施例Aに係る反射防止物品と異なり、その他(構成、製造方法、材料)において実施例Aに係る反射防止物品と同一となるようにした。すなわち、比較例A2に係る反射防止物品は、平坦且つ平滑な第1面と、防眩性凹凸面としての第2面と、を有するようにした。比較例A2に係る反射防止物品の第1面は、シート材の一方の面そのものとした。比較例A2に係る反射防止物品の第2面は、シート材の他方の面上にバインダー樹脂および拡散粒子からなる粗面化層を実施例Aの粗面化層と同様に形成することによって、作製した。
【0099】
(実施例B)
実施例Bに係る反射防止物品10として、図2に示された反射防止物品を上述してきた方法で作製した。実施例Bに係る反射防止物品は、第2面12が、微細凹凸面としてではなく誘電体多層膜からなる反射防止膜30として形成されている点において実施例Aに係る反射防止物品と異なり、その他(構成、製造方法、材料)において実施例Aに係る反射防止物品と同一となるようにした。すなわち、実施例Bに係る反射防止物品10は、実施例Aの第1面と同様の第1面11と、誘電体多層膜の低屈折率層からなる反射防止膜30を形成してなる第2面12と、を有し、第1面には可視光の最長波長よりも長いピッチで配置された三個以上の突出部15が設けられ、第1面の前記突出部が設けられていない領域が可視光の最長波長以下のピッチで基準平面上に配置された凸部20を含んで構成されている微細凹凸25を有した面からなるようにした。実施例Bに係る反射防止物品の第2面12は、最表面側から順に、酸化ケイ素膜(厚さ100nm)/ITO膜(厚さ40nm)/酸化ケイ素膜(厚さ80nm)の3層構成の膜をスパッタリング法で製膜することによって、反射防止膜30作製した。
【0100】
(比較例B1)
比較例B1に係る反射防止物品は、突出部が設けられていない点において実施例Bに係る反射防止物品と異なり、その他(構成、製造方法、材料)において実施例Bに係る反射防止物品と同一となるようにした。すなわち、比較例B1に係る反射防止物品は、可視光の最長波長以下のピッチで基準平面上に配置された凸部を含んで構成されている微細凹凸としての第1面(比較例A1と同様の第1面)と、誘電体多層膜からなる反射防止膜としての第2面(実施例Bと同様の第2面)と、を有するようにした。
【0101】
(比較例B2)
比較例B2に係る反射防止物品は、第1面が平坦且つ平滑である点において実施例Bに係る反射防止物品と異なり、その他(構成、製造方法、材料)において実施例Bに係る反射防止物品と同一となるようにした。すなわち、比較例B2に係る反射防止物品は、平坦且つ平滑な第1面(比較例A2と同様の第1面)と、誘電体多層膜からなる反射防止膜としての第2面(実施例Bと同様の第2面)と、を有するようにした。
【0102】
〔評価方法〕
(評価方法1)
実施例A,Bおよび比較例A1,A2,B1,B2に係る反射防止物品を長さ150mm×幅40mmに切断して試験片95を作製した。図10に示された、荷重部91と、荷重部91に対向して配置された可動盤92と、を有する耐摩耗試験機(商品名:AB−301、テスター(株)製)を用いて、各試験片について、耐擦傷性を評価した。可動盤92に対向して配置された荷重部91の端面に、面積12cm2の下偏光フィルム93(商品名:H25、大日本印刷(株)製)を、固定した。この際、下偏光フィルム93のマット面が可動盤92の側を向くようにして、荷重部91に対して当該下偏光フィルム93を巻き込むように固定した。次に、可動盤92の上に、上記試験片95をなす反射防止物品を両面粘着テープで固着させて載置した。この際、反射防止物品の第1面に相当する側の試験片95の面が、荷重部91の側を向くようにした。試験片95をなす反射防止物品の第1面に、下偏光フィルム93のマット層が擦り付けられるように荷重部91に250gの荷重をかけ、可動盤92を、試験片95をなす反射防止物品の微細凹凸25をなす凸部の配列方向と平行な方向に20秒間で移動距離100mmを速度5mm/sの条件で移動させた後、各試験片95をなす反射防止物品の微細凹凸25をなす凸部の状態を目視及び顕微鏡観察(デジタルマイクロスコープ VHX−200N、(株)キーエンス社製)により観察した。観察結果から、以下の5段階の基準にしたがって、実施例A,B並びに比較例A1,A2,B1,B2に係る反射防止物品について、第1面11(微細凹凸形成面25)耐擦傷性を評価した。
【0103】
以下の5段階の評価では、「評価5」の場合に耐擦傷性が最も優れている(高い)と評価され、「評価5」から「評価1」に向けて耐擦傷性がしだいに低下(劣化)していくものとして評価される。評価結果を図11および図12に示す。なお、耐擦傷性に用いられる評価テーブルは、天板となる曇りガラス下に40W蛍光灯が6本内蔵されている同人光機製の「スチールライトテーブルKLT−L406LC−F」とした。耐摩耗性試試験機から取り外した試験後の各反射防止物品を該評価テーブル上に載置して耐擦傷性を評価した。
【0104】
[耐擦傷性評価]の基準
・評価5:顕微鏡観察(倍率500)で傷が確認されなかった。
・評価4:顕微鏡観察(倍率500)で傷が確認されたが、評価テーブル上で目視では傷が確認されなかった。
・評価3:評価テーブル上で目視により傷が2〜3本確認された。
・評価2:評価テーブル上で目視により傷(スジ)が多数確認された。
・評価1:評価テーブル上で目視により第1面全面に削れた後が確認された。
【0105】
(評価方法2)
基準平面への法線方向(反射防止物品の法線方向)に沿って第1面の側から反射防止物品に可視光を投射し、この状態で透過率(視感透過率)を測定した。また、基準平面への法線方向(反射防止物品の法線方向)に沿って第2面の側から反射防止物品に可視光を投射し、この状態で反射率(視感反射率)を測定した。
【符号の説明】
【0106】
10 反射防止物品
11 第1面
12 第2面
15 突出部
20 凸部
20a 頂部
20b 谷部
25 微細凹凸
30 反射防止膜
35 防眩性凹凸
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、携帯電話機の液晶表示部等の各種用途に用いられ得る、光の表面反射を効果的に防止し得る反射防止物品、並びに、この反射防止物品を含んだ表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示ディスプレイ(LCD)等の表示装置本体(表示部)の表示面に重ねて配置される窓材、或いは、各種光学素子等において、表面の光反射が問題になる事が多い。例えば、液晶表示ディスプレイ等の表示装置本体を表示部として利用した携帯電話機では、水、塵、外力等から表示装置本体を保護する為に、表示装置本体の表示面に、透明プラスチック板等による窓材を配置し保護している(例えば、特許文献1)。ところが、窓材を配置した事により、その表裏両面で日光、電燈光等の外光が反射し、表示装置本体の表示面に表示される映像の視認性が低下する。また、表示装置本体からの映像光も、その一部は、窓材で反射され表示装置本体の内部側に戻される為、表示装置本体の光の利用効率が低下し、その分、視認性が低下する。また、視認性の低下を防止しようとすると、余分な電力消費が必要となり、とりわけ低消費電力化が強く要望されている携帯電話機では、無視できない問題となっている。
【0003】
従来、画像表示装置の窓材表面に於ける斯かる光反射の軽減化の為に、各種の反射防止処理が検討されてきた。比較的古くから実用化された仕様は、表示装置の窓材表面に、低屈折率層からなる反射防止膜或いは光拡散反射性の防眩性凹凸を形成する仕様であった。ただし、近年、外光存在下に於ける表示装置の視認性向上の要求性能が高まってくると、これらの仕様では、要求される反射防止性に十分応じることができなくなってきた。そこで、更に高性能の反射防止処理として、表面凹凸の繰返し周期が光波長以下のサイズの光学的微細構造体、いわゆるモス−アイ(蛾の目;Moth Eye)構造体についての研究が行われてきた。モス−アイ(蛾の目)構造体によれば、表面での光の反射を効果的に防止して、低屈折率層や防眩性凹凸に比べて、極めて高い透過率を確保することができる(特許文献2)。
【0004】
但し、モス−アイ(蛾の目)構造体は、その微細な構造に起因して、極めて擦傷されやすく、また擦傷によって反射防止機能を失ってしまう。加えて、モス−アイ(蛾の目)構造体は、油脂等の付着によっても、その反射防止機能を消失してしまうという欠点が有った。そこで、此の欠点を改善する仕様として、透明基材の裏面(表示装置本体側の内面)上にモス−アイ構造体を形成することによって、外界からの擦傷や油脂付着を防止し、表面(画像観察者側の外面)上に低屈折率層又は防眩性凹凸を形成して、(モス−アイ構造体が裏面に位置することによる)反射防止性能の低下を補完する仕様が提案されるに至った(特許文献3、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−66859号公報
【特許文献2】特表平2003−518263号公報
【特許文献3】特開2003−215303号公報
【特許文献4】特開2003−215314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3或いは特許文献4に記載の仕様に於いても、実用化の為の検討を進めてゆくと、現実の製造、輸送、保管、及び使用の流の中に於いて、モスーアイ構造体に期待した通りの耐擦傷性が得られ無いことが判明した。
【0007】
即ち、特許文献3或いは特許文献4に記載の仕様の窓材を製造した後、保管、搬送する際には、通常、斯かる窓材が薄膜の形態の場合には、帯状シートの形態で製造してロールに巻取って取り扱われる。又、斯かる窓材が厚い板状の場合には、通常、多数枚積み上げられ重ねられた状態で取り扱いを受ける。何れの場合にも、該窓材の表面(反射防止膜或いは防眩性凹凸の面)と裏面(モス−アイ構造体の面)とが接触し、モス−アイ構造体の凸部には荷重がかかる。斯かる状態で搬送等の取り扱いが行われると、振動(乃至加速度)が加わることが不可避の為、微細なモス−アイ構造体が変形、損傷、欠落し、モス−アイ構造体に擦傷が発生してしまうことが判明した。
【0008】
又、該窓材を表示装置に取り付ける際にも、該窓材のモス−アイ構造体の面は、これと隣接する他の部材(表示装置本体の表面、硝子基板、光拡散板、偏光板、導光板等)と接触した上で、荷重、振動、加速度等が加えられる。その結果、モス−アイ構造体が変形、損傷、欠落し、モス−アイ構造体に擦傷が発生してしまうことが判明した。
【0009】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、優れた反射防止機能と優れた耐擦傷性との両方を有した反射防止物品、並びに、この反射防止物品を含む表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による反射防止物品は、
第1面と、第1面とは反対側の第2面と、を有し、
前記第1面には、可視光の最長波長よりも長いピッチで配置された三個以上の突出部が設けられており、
前記第1面の前記突出部が設けられていない領域は、可視光の最長波長以下のピッチで基準平面上に配置された凸部を含んで構成された微細凹凸を有した面となっており、
前記基準平面からの前記突出部の高さは、前記基準平面からの前記凸部の高さより高く、
前記第2面は、少なくとも低屈折率層を有した単層又は多層の反射防止膜の前記低屈折率層の表面、あるいは、防眩性凹凸を有した面からなる。
【0011】
本発明による反射防止物品において、前記基準平面と平行で前記凸部を横切る切断面内における前記凸部の総面積は、当該切断面の位置が、前記基準平面と直交する方向に沿って、前記凸部の頂部から離間して前記基準平面へ接近するに連れて、しだいに大きくなるようにしてもよい。
【0012】
本発明による反射防止物品において、前記基準平面と直交する方向に平行な断面において、前記突出部は、前記基準平面から最も突出した頂部において、曲線状の外輪郭を有しているようにしてもよい。
【0013】
本発明による表示装置は、
映像を表示する表示面を有した表示装置本体と、
前記表示装置本体の前記表示面上に配置される、上述した本発明による反射防止物品のいずれかと、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、優れた反射防止機能と優れた耐擦傷性との両方を反射防止物品に付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明による一実施の形態を説明するための図であって、反射防止物品の一例を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明による一実施の形態を説明するための図であって、反射防止物品の他の例を示す断面図である。
【図3】図3は、基準平面への法線方向と平行な方向に沿って第1面の側から反射防止物品を示す平面図である。
【図4】図4は、反射防止物品の微細凹凸の一例を示す斜視図である。
【図5】図5は、図4に対応する図であって、反射防止物品の微細凹凸の他の一例を示す斜視図である。
【図6】図6は、図4に対応する図であって、反射防止物品の微細凹凸のさらに他の一例を示す斜視図である。
【図7】図7は、図4に対応する図であって、反射防止物品の微細凹凸のさらに別の一例を示す斜視図である。
【図8】図8は、反射防止物品の第1面の形成方法および反射防止物品の第1面の形成装置を説明するための模式図である。
【図9】図9は、図8の形成装置に組み込まれた成型用型を模式的に示す斜視図である。
【図10】図10は、耐擦傷性の評価方法および耐擦傷性の評価に用いられる試験機を説明するための図である。
【図11】図11は、実施例A並びに比較例A1およびA2についての耐擦傷性および正面方向輝度の評価結果を示す図である。
【図12】図12は、実施例B並びに比較例B1およびB2についての耐擦傷性および正面方向輝度の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<<概要>>
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0017】
図1および図2は、それぞれ、反射防止物品10の一態様を説明するための図である。図1および図2に示された反射防止物品10は、第1面11と、第1面11とは反対側の第2面12と、を有するシート状の部材として形成されている。第1面11には、可視光の最長波長の値よりも大きなピッチで配置された三個以上の突出部15が設けられている。また、第1面11の突出部15が設けられていない領域は、可視光の最長波長以下のピッチで基準平面SP上に配置された凸部20を含んで構成されている微細凹凸25を有した面となっている。後述するように、第1面11は、微細凹凸25によって反射防止機能を発現し、且つ、突出部15は、スペーサーとして機能し、微細凹凸25を保護する。
【0018】
一方、第2面12は、鏡面反射による外部像(鏡面反射像)の映り込みを防止する機能を有している。図1に示された例において、反射防止物品10の第2面12は、防眩性凹凸35を有している。防眩性凹凸35は、可視光線の波長より大きな凹凸によって光を乱反射させることによって光を拡散させて、鏡面反射に起因した外部像の映り込みを防止することができる。
【0019】
また、図2に示された例において、反射防止物品10の第2面12の側には、少なくとも低屈折率層を有し単層又は多層から構成される反射防止膜30が設けられている。そして、第2面12は、反射防止膜30の低屈折率層の表面を最外面として構成されている。このような図2に示された反射防止物品10は、平坦な表面を有するとともに、当該表面での反射自体を防止することができる。
【0020】
なお、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「シート」はフィルムや板とも呼ばれ得るような部材も含む概念である。また、本明細書において、「シート面(フィルム面、板面)」とは、対象となるシート状の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材の平面方向と一致する面のことを指す。さらに、本明細書において、「反射防止物品の法線方向」とは、反射防止物品のシート面への法線方向のことを指す。
【0021】
このような反射防止物品10は、第1面11において、反射防止機能を発揮し、且つ、第2面12において、鏡面反射を低減して鏡面反射像の出現を防止する機能を発揮する。このような反射防止物品10は、例えば、液晶表示パネル等の表示装置本体の表示面に重ね合わせられ、表示装置本体からなる表示部の窓材として使用される。好適には、手垢、埃、汚れ等が付着しやすい外面(観察者側の面)を第2面12がなし、手垢、埃、汚れ等は付着しにくいが、隣接する他の部材との擦れ等が生じやすい内面(表示装置本体側の面)を第1面11がなすように、反射防止物品10が表示装置本体の表示面に重ねて配置され得る。この場合、映像光は、第1面11から反射防止物品に入射するため、極めて高い透過率で反射防止物品10を透過することができる。一方、照明光や太陽光等の環境光は、第2面12での鏡面反射を効果的に防止され、これにより、鏡面反射像としての外部像の表示装置への映り込みが効果的に防止される。更には、鏡面反射光による画像明暗のコントラスト(白画像輝度の黒画像輝度に対する比)が低下することが防止される。すなわち、この反射防止物品10を用いることによって、表示装置におけるエネルギー効率を改善することができるとともに、表示される映像の画質を向上させることができる。
【0022】
以下、反射防止物品10の第1面11および第2面12の構成についてさらに詳述するとともに、その後、この反射防止物品10の作用効果を説明し、さらに、反射防止物品10に対する変形の一例について説明する。
【0023】
<<第1面>>
(全体構成)
図1および図2に示すように、反射防止物品10の第1面11には、可視光の最長波長を越えるピッチで互いから離間して配置された三個以上の突出部15が設けられている。また、第1面11の突出部15が設けられていない領域は、可視光の最長波長以下のピッチで基準平面SP上に配置された凸部20を含んで構成されている微細凹凸25を有した面となっている。微細凹凸25は、モスーアイ構造体をなし、極めて優れた反射防止機能を発揮し得る。まず、微細凹凸25について説明し、その後、突出部15について説明する。
【0024】
(微細凹凸)
図4に示すように、微細凹凸25は、可視光線スペクトルの最長波長以下のピッチ(周期)Pで配列された凸部20を含んで構成されている。微細凹凸25は、モス−アイ構造体をなして、入射光の反射を防止する機能を有する。公知文献等で既に議論されているため詳細な説明は省略するが、簡単には次のようなメカニズムによって、モス−アイ構造体の反射防止機能が発現されるものと考えられている。なお、本明細書では、特別の限定が加えられている場合を除き、「波長」とは、空気中での波長の長さのことを指している。
【0025】
一般的には、光の反射は、屈折率が異なる媒質間での界面で生じる。一方、微細凹凸25を有するモス−アイ構造体をなす媒質と、これに対面する空間(通常は、空気層)と、の間では、厳密には、屈折率の空間的(三次元的)な分布が生じる。ただし、モス−アイ構造体をなす微細凹凸25において、空間(空気層)からモス−アイ構造体の微細凹凸25に入射する光のうちの微細凹凸25のピッチP以上の波長の光に対しては、微細凹凸25の凹凸方向に直交する各平面内での屈折率の分布は、もはや屈折率の分布としては作用し得えず、当該光の進行方向に直交する面における凸部20の占める面積比率に対応して平均化された屈折率を有する面として作用する。したがって、微細凹凸25の凹凸方向における各位置での平均化された屈折率の値が、当該凹凸方向に沿って、空間(空気層)の屈折率からモス−アイ構造体を形成する媒質(例えば樹脂材料)の屈折率へと、しだいに変化して行く場合、空間(空気層)からモス−アイ構造体に入射する光に対しては、もはや屈折率が急激に変化する界面が存在するようには作用せず、しだいに(図4の例では連続的にであるが、図6の例では段階的に)屈折率が変化する層が存在するかのように作用する。この結果、光は、空間(空気層)からモス−アイ構造体を形成する媒質へ、反射することなく入射することができるようになる。
【0026】
以上のような原理からして、微細凹凸25による反射防止機能は、その凸部20の配置ピッチP以上の波長を有した光に対して及ぼされる。したがって、凸部20の配置ピッチPが可視光の最長波長以下となっている場合には、人間によって観察され得る、何らかの光学作用が反射防止物品10への入射光に対して及ぼされるようになる。なお、日本工業規格におけるJISZ8120での定義によれば、可視光の最長波長は760nm〜830nmとされており、最も長くて830nmとなっている。
【0027】
例えば、反射防止物品10の第1面11へ入射する可視光の最短波長以下となっている場合には、反射防止物品10へ入射する全波長域の光の反射を効果的に防止して、反射防止物品10へ第1面11の側から入射する全波長域の光の透過率を大幅に向上させることが可能となる。したがって、日本工業規格におけるJISZ8120での定義された可視光の最短波長である360nm〜400nmのうちの最短である360nm以下に凸部20の配置ピッチPが設定されている場合には、反射防止物品10へ入射する可視光の透過率を、色調を崩すことなく、向上させることができる。
【0028】
また、昨今では、液晶表示パネルのバックライトの光源として、光の三原色である青色光、緑色光および赤色光を発光する発光体が用いられ、該三原色の加法混色によって得られる白色光によって、液晶表示パネルを背面側から照明することが行われている。このような表示パネルに重ねて使用される反射防止物品10においては、該三原色をなす光のうちで波長が最も短い青色光の波長以下のピッチ(周期)Pで凸部20を配列すればよい。一具体例として、波長488nmの青色光(Arイオンレーザのスペクトルの1つ)、波長514nmの緑色光(これもArイオンレーザのスペクトルの1つ)、および、波長633nmの赤色光(He−Neレーザのスペクトルの1つ)の三原色の加色混合による白色光で表示パネルを照明する場合には、微細凹凸25の凸部25のピッチpを488nm以下とすることによって、全映像光の透過率を大幅に上昇させることができ、これにより、映像の色調を崩すことなく当該映像を明るく表示することができる。
【0029】
さらに、微細凹凸25をなす凸部20の配置ピッチPが、反射防止物品10の第1面11へ入射する可視光の波長域内の値、日本工業規格におけるJISZ8120での定義に従えば360nm〜830nmの間の値となっていてもよい。この場合、反射防止物品10の第1面11へ入射する可視光のうちの、凸部20の配置ピッチPの値以上の波長を有した光は、凸部20の配置ピッチPよりも小さな波長を有した光と比較して、第1面11での反射を効果的に防止され、高い透過率で反射防止物品10を透過することができる。このため、反射防止物品10へ入射する前の光と、反射防止物品10を透過した後の光と、の間では、光量のスペクトル分布が異なったものとなる。すなわち、反射防止物品10は、入射可視光のうちの短波長側の光を選択的に透過させることによって、色調を変化させる機能を発揮することができる。
【0030】
図4には、微細凹凸25の一具体例が示されている。図4に示された微細凹凸25は、シート状の部材からなる反射防止物品10のシート面と平行な基準平面SP上に、線状に延びる凸部20を、その長手方向と交差する方向に配列することによって形成されている。すなわち、リニア配列された凸部20によって微細凹凸25が形成されている。とりわけ図示する例では、基準平面SP上を直線状に延びる凸部20が、その長手方向と直交する基準平面SP上の配列方向に隙間無く並べて配列されている。尚、微細凹凸25に対する基準平面SPとは、其の上に微細凹凸25の凸部20を載置する仮想の平面のことを云う。図4に示された例に於いては、凸部20の高さは全て同一の為、微細凹凸25の谷部20bは全て基準平面SPに接する。即ち、図4の例に於いては、基準平面SPは微細凹凸の谷部20bの接平面になっている。そして、図4の例に於いては、基準平面SPを境にして、其の外側(図4では上側)と内側(図4では下側)とは同じ材料から構成され、基準平面SPは仮想的な平面である。但し、シート状の基材上に、該基材とは別材料を用いて微細凹凸25を形成する場合には、基準平面は、該基材と該微細凹凸25の異種材料間を区劃する実在の平面(界面)となる。また、図4に示された例において、凸部20は、互いに同一に構成されている。そして、凸部20の配列方向と基準平面SPへの法線方向ndとの両方向に平行な断面において、隣接配置された複数の凸部20の外輪郭は、正弦曲線を描くようになっている。
【0031】
このような図4に示された例では、基準平面SPの法線方向ndと直交する仮想的な切断面CS、すなわち、基準平面SPに平行な切断面CSにおいて、微細凹凸25(凸部20)によって占められている面積(斜線部)Sが、当該断面CSの位置が微細凹凸25をなす凸部20の頂部20aから反射防止物品10の法線方向ndに沿って離間していき、基準平面SP(図示する例では、隣り合う二つの凸部20の間に形成された谷部20b)に接近するに連れて、しだいに大きくなっていく。言い換えると、基準平面SPへの法線方向ndにおける各位置での凸部20の幅waが、当該断面の位置が微細凹凸25をなす凸部20の頂部20aから離間して基準平面SP(谷部20b)に接近するに連れて、しだいに大きくなるように変化する。この場合、凸部20によって形成される微細凹凸25は、凸部20の配置ピッチP以下の波長を有する光に対して、当該光が第1面11の微細凹凸25を介して反射防止物品10に入射する際に、基準平面SPの法線方向ndに沿ってしだいに平均屈折率が変化していくかのように作用し、反射を誘引し得る屈折率差が急激に変化する界面としては作用しない。
【0032】
なお、凸部20のピッチPは、上述したように、人間の目で感知され得る作用効果を確保する上で、可視光スペクトル中の最長波長以下、言い換えると反射を防止されるべき光の波長以下となっている必要がある。この結果、凸部20の配列方向と基準平面SPへの法線方向ndとの両方向に平行な断面における凸部20の幅waの最大値も、反射を防止されるべき光の波長以下となる。一方、基準平面SPへの法線方向ndに沿った凸部20の基準平面SPからの法線方向ndに沿った高さhaは、微細凹凸25に十分な反射防止機能を付与する観点から、150nm以上とすることが好ましい。また、凸部20からなる微細凹凸25の製造の困難性を考慮すると、凸部20のピッチP(凸部20の幅waの最大値)は、50nm以上とすることが好ましく、凸部20の高さhaは、500nm以下とすることが好ましい。
【0033】
ただし、図4に示された例は、単なる一例に過ぎず、微細凹凸25の構成を種々変化させることができる。例えば図5に示すように、凸部20の配列方向と基準平面SPへの法線方向ndとの両方向に平行な断面において、凸部20が基準平面SPから突出した三角形形状として構成されるようにしてもよい。このような第1面11の微細凹凸25によっても、上述した例と同様に、当該出第1面11の微細凹凸25を介して反射防止物品10へ入射する光の反射を防止することができる。
【0034】
また、図4に示された例では、基準平面SPへの法線方向nd(反射防止物品10の法線方向nd)と直交する切断面CSにおいて微細凹凸25(凸部20)によって占められている面積Sが、当該断面CSの位置が微細凹凸25をなす凸部20の頂部20aから基準平面SPへの法線方向ndに沿って離間して基準平面SP(谷部20b)に接近するに連れて、しだいに大きくなるように変化していく例を示したがこれに限られない。例えば、基準平面SPへの法線方向ndと直交する切断面CSにおいて微細凹凸25(凸部20)によって占められる面積Sが、当該断面CSの位置が微細凹凸25をなす凸部20の頂部20aから基準平面SPへの法線方向ndに沿って離間して基準平面SP(谷部20b)に接近するに連れ、一部分において一定であり、その他の部分においてしだいに大きくなるように変化してもよい。言い換えると、基準平面SPへの法線方向ndにおける各位置での凸部20の幅waが、当該断面の位置が微細凹凸25をなす凸部20の頂部20aから離間して基準平面SP(谷部20b)に接近するに連れて、一部において一定となり、その他においてしだいに大きくなるように変化してもよい。
【0035】
さらには、図6に示すように、凸部20の配列方向と基準平面SPへの法線方向ndとの両方向に平行な断面において、凸部20が矩形状となる、言い換えると、凸部20の幅waが、頂部20aから谷部20bに向かう間で、ほぼ一定となるようにしてもよい。本件発明者らが確認したところ、図6に示された例においても、上述した例と同様に、当該第1面11の微細凹凸25を介して反射防止物品10へ入射する光の反射を効果的に防止することができることが確認された。
【0036】
さらに、図4〜図6の例においては、凸部20が基準平面SP上に一次元配列(リニア配列)される例、すなわち、線状に延びる凸部20がその長手方向と交差する方向に延びる例を示したが、これに限られない。図7に示すように、錐体状の凸部20が、基準平面SP上に二次元配列されてもよい。
【0037】
さらに、図4〜図7の例においては、凸部20が基準平面SP上に規則的に配列されている例を示したが、これに限られず、可視光線スペクトル中の最長波長以下の特定の波長以下、言い換えると、反射を防止すべき光の波長以下のピッチPで、基準平面SP上に凸部20が不規則的に配置されるようにしてもよい。さらに、図4〜図6の例においては、基準平面SP上に設けられた多数の凸部20のみによって微細凹凸25が形成されている例を示したが、これに限られない。基準平面SP上に凸部20に加えて凹部が形成され、凸部20および凹部によって、第1面11をなす微細凹凸25が形成されてもよい。さらに、図4〜図7の例においては、微細凹凸25がすべて同一の構成を有する凸部20によって構成されている例を示したが、これに限られない。例えば、高さや断面形状等の構成が互いに異なる複数種類の凸部20によって微細凹凸25が形成されるようにしてもよい。
【0038】
(突出部)
次に、突出部15について説明する。上述したように、反射防止物品10の第1面11上には、互いから離間して配置された少なくとも三つの突出部15が突出している。図1および図2に示す例においては、後述する第1面11の形成方法に起因して、突出部15は基準平面SP上に配置されている。
【0039】
図1および図2に示すように、突出部15は、基準平面SPから測った突出高さhbが、微細凹凸25の凸部20の基準平面SPから測った高さhaよりも大となるよう構成されている。突出部15は、いわゆるスペーサーとして機能し、反射防止物品10へ第1面11の側から隣接する部材と、微細凹凸25と、の間に隙間を形成する。このため、外部との接触により損傷しやすい第1面11の微細凹凸25が、外部と接触することを防止されて保護されるようになる。この観点から、突出部15の突出高さhbは、凸部20の高さhaよりも2μm以上高くする。突出高さhbは、凸部20の高さhaよりも、好ましくは5μm以上、更に好ましくは20μm以上とする。
【0040】
第1面11の基準平面SP上における突出部15の二次元配列は、三角格子、正方格子、六方(龜甲形)格子等の如く規則的であってもよいし、不規則的であってもよい。一方、基準平面SPへの法線方向ndに沿って第1面11の側から反射防止物品10を観察した場合に、第1面11において突出部15が占めている領域の割合(以下において、単に「充填率」とも呼ぶ)は、50%以下となっていることが好ましい。充填率が大きくなると、モス−アイ構造体をなす微細凹凸25が第1面11において占めている割合が小さくなり、反射防止物品10の第1面11全体として反射率が高くなってしまうからである。より具体的には、突出部15が球面(の一部)からなる場合を例にとると、充填率自体は最大91%迄可能である。但し、此の場合は、球の平面内における六方最密重点構造になるため、反射防止を担う微細凹凸25の面積率が9%と最小になり、反射防止効果をほとんど期待することができない。少なくとも、突出部15の充填率は六方最密重点構造よりは疎にする必要が有るが、充填率が80%を超えると、反射防止物品10の第1面11での反射率が、微細凹凸25や突出部15が形成されていない平坦且つ平滑な面での反射率と同程度となってしまう。以上を勘案すると、微細凹凸25による反射防止効果を十分奏する為には、突出部15の充填率は、50%以下、より好ましくは10%以下とすべきである。
【0041】
一方、基準平面SPの全域の中に突出部15の数が3個未満であると、(この場合は、現実的には、充填率は殆ど0%に近いが、)充填率云々以前の問題として、幾何学的に、基準平面SPと隣接する他部材の表面との2平面を全面に於いて、両平面が接触して摩擦し無いよう、すなわち間隙>0、となるように支持することが不能となる。従って、基準平面SPの全域の中に突出部15の数は、最低3個以上は必要となる。但し、通常の多くの場合には、反射防止物品10及び隣接する他の光学部材共に完全剛体とはみなせない場合が多い。其の為、通常は、基準平面SPの全域の中に突出部15の数は3個よりも多い数必要となる。斯かる突出部15の数は、反射防止物品10の面積、個々の突出部15の底面積、隣接する2つの突出部15間の距離、突出高さhb、突起部15の材質、反射防止物品及び隣接部材の可撓性等にも依存するが、通常、例えば、基準平面SPの面積1cm2当たりで、5個以上形成する。
【0042】
尚、以上の理由により、基準平面SPの全域の中に突出部15の数が3個よりも十分於多数存在する場合は、突出部15を形成する程度の下限値は、個数よりも寧ろ充填率で規定する方が、多くの場合、客観的指標となり得る。即ち、突出部15の充填率の下限値は、微細凹凸25の耐殺傷性を十分得るうえでは、突出部15の充填率は、0.15%以上、好ましくは、0.5%以上とする。
【0043】
なお、実際の充填率の特定においては、例えば顕微鏡により観察された反射防止物品10の第1面11上の一区画であって、突出部15の配置ピッチや幅wb等を考慮した上で反射防止物品全体での充填率を反映し得ると期待される面積を持つ一区画(例えば、後述する寸法例で構成された反射防止物品においては、10mm×10mmの部分)についての充填率を算出し、算出された値を当該反射防止物品の充填率として取り扱うようにしてもよい。
【0044】
スペーサーとして機能する際の安定性を確保する観点から、基準平面SPへの法線方向ndと平行な断面において、突出部15は、基準平面SPから最も突出した頂部において曲線状の外輪郭を有していることが好ましい。同様に、スペーサーとして機能する際の安定性を確保する観点から、基準平面SPへの法線方向ndと平行な断面における各突出部15の断面形状は、基準平面SPへの法線方向ndを中心として、対称性を有していることが好ましい。一例として、基準平面SPへの法線方向ndと平行な断面における各突出部15の断面形状が、入光側に突出する円の一部分または入光側に突出する楕円の一部分に相当する形状を有していてもよい。また、各突出部15が、回転楕円体の一部分に相当する形状または球体の一部分に相当する形状を有していてもよい。なお、突出部15の断面形状が楕円の一部分に相当する場合、当該断面楕円形状の長軸または短軸のいずれかが基準平面SPへの法線方向ndと平行に延びていることが好ましい。図3に示された例では、各突出部15は半球状に形成されている。また、図示する例において、複数の突出部15は互いに同一に構成されている。
【0045】
なお、本件明細書における「円」及びその他の形状や幾何学的条件を特定する用語、例えば、「楕円」、「回転楕円体」、「平行」、「直交」等の用語は、厳密な意味に縛られることなく、同様の光学的機能を期待し得る程度の誤差範囲を含めて解釈することとする。
【0046】
突出部15の具体例として、突出部15の幅wbを1μm以上200μm以下とすることができ、突出部15の高さhbを2μm以上100μm以下とすることができる。
【0047】
(第1面の作製方法)
次に、以上のような構成からなる反射防止物品10の第1面11の作製方法の一例について、主として図8および図9を参照して説明する。以下の例においては、シート材58の一方の側の面上に、微細凹凸25および突出部15を賦型によって形成することにより、反射防止物品10の第1面11を作製する。賦型に用いられる材料としては、成型性が良好であるとともに入手が容易であり且つ優れた光透過性を有する樹脂(一例として、硬化物の屈折率1.57の透明な多官能ウレタンアクリレートオリゴマーとジペンタエリスリトールヘキサアクリレート系モノマーとの組成物の架橋硬化物)が好適に用いられる。
【0048】
まず、成型装置60について説明する。図8に示すように、成型装置60は、略円柱状の外輪郭を有した成型用型70を有している。図9に示すように、成型用型70の円柱の外周面(側面)に該当する部分に円筒状の型面(凹凸面)72が形成されている。円柱状からなる成型用型70は、円柱の外周面の中心を通過する中心軸線CA、言い換えると、円柱の横断面の中心を通過する中心軸線CAを有している。そして、成型用型70は、中心軸線CAを回転軸線として回転しながら(図8参照)、成型品を成型するロール型として構成されている。
【0049】
図9に示すように、型面72には、反射防止物品10の第1面11の構成と相補的な構成が、凹部として形成されている。具体的には、微細凹凸25を形成する線状の凸部20に対応する溝76と、突出部15に対応する穴部74と、が型面72に形成されている。溝76は、型面72上において、その中心軸線CAを中心として円周状に、あるいは、螺旋状に延びている。いずれの場合においても、溝76は、型面72の中心軸線CAに対して概ね垂直な方向に延びている。穴部74は、例えばフォトリソグラフィ技術を利用したエッチングにより、例えば、中空の鉄芯表面に銅層を被覆して成る円柱状基材の円周面上の所望の位置に形成され得る。その後、例えば切削バイトを用いた切削加工により、穴部74が形成された円柱状基材の円周面上に、穴部74を横切るようにして延びる溝76を形成することができる。
【0050】
図8に示すように、成型装置60は、帯状に延びるシート材(成型用基材シート)58を供給する成型用基材供給装置(図示せず)と、供給されるシート材58と成型用型70の型面72との間に流動性を有した材料59を供給する材料供給装置64と、シート材58と成型用型70の凹凸面72との間の材料59を硬化させる硬化装置66と、をさらに有している。硬化装置66は、硬化対象となる材料59の硬化特性に応じて適宜構成され得る。
【0051】
次に、このような成型装置60を用いて反射防止物品10を作製する方法について説明する。まず、成型用基材供給装置から、例えば透明性を有した樹脂からなるシート材58が供給される。供給されたシート材58は、図8に示すように、成型用型70へと送り込まれ、成型用型70と一対のローラ68とによって、型70の凹凸面72と対向するようにして保持されるようになる。
【0052】
また、図8に示すように、シート材58の供給にともない、シート材58と成型用型70の型面72との間に、材料供給装置64から流動性を有する材料59が供給される。ここで、「流動性を有する」とは、成型用型70の型面72へ供給された材料59が、型面72の穴部74および溝76内に入り込み得る程度の流動性を有することを意味する。
【0053】
供給される材料59としては、成型に用いれ得る種々の既知な材料(例えば、上述した、硬化物の屈折率1.57の透明な多官能ウレタンアクリレートオリゴマーとジペンタエリスリトールヘキサアクリレート系モノマーとの組成物からなる電離放射線硬化型樹脂)を用いることができる。以下に示す例においては、材料供給装置64から電離放射線硬化型樹脂が供給される例について説明する。電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、紫外線(UV)を照射されることにより硬化するUV硬化型樹脂や、電子線(EB)を照射されることによって硬化するEB硬化型樹脂を選択することができる。
【0054】
その後、成型用シート材58は、型70の型面72との間を電離放射線硬化型樹脂材料59によって満たされた状態で、硬化装置66に対向する位置を通過する。このとき、硬化装置66からは、電離放射線硬化型樹脂材料59の硬化特性に応じた電離放射線が放射されており、電離放射線はシート材58を透過して電離放射線硬化型樹脂材料59に照射される。この結果、型面72の穴部74内および溝76内に充填されていた電離放射線硬化型樹脂材料59が硬化して、電離放射線硬化型樹脂材料59の硬化物からなる微細凹凸25をなす凸部20および突出部15がシート材58上に形成されるようになる。
【0055】
その後、図8に示すように、シート材58が型70から離間し、これにともなって、型面72の穴部74内および溝76内に成型された突出部15および凸部20がシート材58とともに型70から引き離される。このようにして、上述した反射防止物品10の第1面11をなす構成が、シート材58上に形成される。
【0056】
なお、上述した方法において、シート材58の表面は型70の表面(型面72)に接触していないことが好ましい。この場合、硬化した材料59からなるシート状のランド部が一定の厚みの層としてシート材58上に形成され、当該ランド部上に、微細凹凸25をなす凸部20と突出部15とが硬化した材料59から形成されるようになる。また、ランド部によって、凸部20を支持する基準平面SPが形成されるようになる。このような方法によれば、成型された凸部20および突出部15が、離型時に、型70内に部分的に残留してしまうことを効果的に防止することができる。
【0057】
以上のようにして、ロール型として構成された成型用型70がその中心軸線CAを中心として一回転している間に、流動性を有した材料59を型70内に供給する工程と、型70内に供給された材料59を型70内で硬化させる工程と、硬化した材料59を型70から抜く工程と、が型70の型面72上において順次実施されていき、反射防止物品10の第1面11をなす構成がシート材58の一方の面上に形成される。
【0058】
なお、第1面11をなす構成を一方の側の面上に形成されたシート材58の他方の側の面上へ、以下に説明する方法によって、第2面12をなすようになる反射防止膜30または防眩性凹凸35を形成することによって、反射防止物品10を得ることができる。なお、第2面12をなす構成をシート材58の他方の側の面上へ形成する際には、既に形成された反射防止物品10の第1面11をなす構成が損傷を受けないよう、適宜、再剥離性の保護フィルムを仮接着する等の保護手段を講じておくことが好ましい。また、シート材58の一方の側の面上へ反射防止物品10の第2面12をなす構成を形成し、その後、シート材58の他方の側の面上へ反射防止物品10の第1面11をなす構成を形成することによって、反射防止物品10を作製するようにしてもよい。あるいは、反射防止物品10の第1面11をなす構成を第1のシート材に上述のようにして形成し、反射防止物品10の第2面12をなす構成を第2のシート材に後述するようにして形成し、その後、第1面11をなす構成が形成された第1のシート材と第2面12をなす構成が形成された第2のシート材とを積層することによって、反射防止物品10を作製することもできる。
【0059】
なお、反射防止物品10の一部分をなすようになるシート材58としては、透光性を有した樹脂製シートを用いることができる。樹脂製シートとしては、無色透明の2軸延伸ポリエチレンテレフタレート製シートを用いることができる。また、上述の作製方法を用いる場合、樹脂製シートの厚みを50μm以上500μm以下とすることができる。
【0060】
<<第2面>>
(全体構成)
次に、反射防止物品10の第2面12について説明する。上述したように、第2面12は、鏡面反射による外部像の映り込みを防止する機能を有した面として形成されている。図1には、反射防止物品10の第2面12が、防眩性凹凸35を有した面として構成されている例が示され、図2には、反射防止物品10の第2面12が、少なくとも低屈折率層を有し単層又は多層から構成される反射防止膜30の前記低屈折率層の表面によって形成されている例が示されている。このうち、まず、防眩性凹凸35について説明し、その後、少なくとも低屈折率層を含み単層または多層からなる反射防止膜30について説明する。
【0061】
(防眩性凹凸)
防眩性凹凸35は、入射光を散乱乃至は拡散することによって、表面の可視光線に対する鏡面反射の反射率を低減する防眩機能(Anti Glare機能:略称してAG機能)を発現する層である。したがって、上述した微細凹凸とは異なり、防眩性凹凸35における凸部の配置ピッチは、可視光の最長波長よりも長くなっている。
【0062】
一例として、JISB0601(1994)に準拠して測定された防眩性凹凸35の平均間隔Smが60μm以上250μm以下となり、JISB0601(1994)に準拠して測定された防眩性凹凸35の平均傾斜角θaが0.3度以上1.0度以下となり、JISB0601(1994)に準拠して測定された防眩性凹凸35の十点平均粗さRzが0.3μm以上1.0μm以下となるようにすることができる。なお、平均間隔Sm、平均傾斜角θaおよび十点平均粗さRzの測定は、例えば、(株)小坂研究所製のSE2555Nを用いて測定され得る。
【0063】
入射光を散乱乃至は拡散させるための防眩性凹凸35は、次の粗面化処理によって、作製され得る。
(1)サンドブラスト法やエンボス法等により基体表面に直接微細凹凸を形成して粗面化する方法。
(2)基体表面に樹脂バインダー中に、光拡散性粒子(以下、単に拡散粒子とも略稱する)として、粒径0.5〜10μm程度のシリカ粒子などの無機物粒子や、アクリル樹脂粒子などの有機物粒子を含有させた塗膜を基体表面に形成してなる粗面化層を設ける方法。
(3)基体表面に海島構造による多孔質膜を形成する方法。
【0064】
なお、防眩性凹凸は反射防止物品10の表面を形成することから、高い硬度を有した構造となっていることが好ましい。この観点から、上記(2)の粗面化方法における樹脂バインダー樹脂としては、熱硬化性アクリル樹脂や、アクリル系、エポキシ系等の電離放射線硬化性樹脂等が好適に使用され得る。また、上記(2)や(3)の方法のように、基体上に別途の層を設ける場合、当該層の厚みは、特に限定されるものではないが、1μm以上20μm以下とすることが好ましい。
【0065】
(反射防止膜)
次に、反射防止膜30について説明する。反射防止膜(Anti Reflection膜、略称してAR膜)30は、反射防止物品10の第2面12を構成することによって、反射防止物品10の第2面12での可視光線反射率(単に「反射率」とも呼ぶ)を低減する機能を発現する。
【0066】
反射防止膜30は、低屈折率層の単層として、或いは、低屈折率層が最表面に位置するようにして低屈折率層と高屈折率層とを交互に積層した多層として、一般的に構成されている。なお、ここで低屈折率層とは、該層(対象となる層)に隣接する層(部分)と比較して、相対的に低い屈折率を有する層を意味する。同様に、高屈折率層とは、該層(対象となる層)に隣接する層(部分)と比較して、相対的に高い屈折率を有する層を意味する。すなわち、図8および図9を参照しながら説明したシート材58の第1面11に関する構成が作製された側とは反対側に反射防止膜30が形成される場合には、単層構造の反射防止膜30は、当該反射防止膜30に隣接するシート材58をなす材料の屈折率よりも低い屈折率の材料から、形成される。また、多層構造の反射防止膜30は互いに重ね合わされた複数の層から形成され、この複数の層のうちの、反射防止物品10の第2面12の側から偶数番目に位置する層は、当該層に両側から隣接する一対の層をそれぞれなす材料の屈折率よりも高い屈折率の材料から形成される高屈折率層とする。
【0067】
なお、屈折率の大小を比較されるべき層が、母材と、母材中に分散された微粒子と、を有している場合には、母材と微粒子との体積比率を考慮して算出した平均屈折率を、当該層の屈折率として取り扱えばよい。すなわち、微粒子を母材に添加することによって、形成された層の屈折率を調節し、当該層の反射率を調節することができるようになる。
【0068】
一般的に、相対的に高い屈折率nHを有する基層の上に、この基層よりも相対的に低い屈折率nLを有し且つ厚みがhLの低屈折率層を積層する場合、
nL=(nH)1/2 ・・・ 式(1)
式(1)の関係を満たす際に、低屈折率層の表面での反射率が最小となることが知られている。また、この関係式(1)が満たされない場合であっても、左辺の値(nL)と右辺の値((nH)1/2)とを近付けることによって、低屈折率層の表面での反射率を低下させることができる。
【0069】
また、式(1)を満たす場合に於いても、低屈折率層の表面での反射率は光の波長λ及び低屈折率層の厚みhLによって変化する。
hL=λmin/4nL1 ・・・ 式(2)
具体的には、式(2)を満たす波長λminを有した光の反射率が最小化する。このような現象にともなって、反射防止膜30で反射した光は、この波長λminの光の捕色に着色されるようになる。したがって、低屈折率層の厚みhLを適宜設計することによって、所望の波長に於ける反射率を最小化することや、反射防止膜30の表面の色調を所望の色調に調節することも可能となる。
【0070】
低屈折率層を構成する無機系材料として、珪素酸化物や弗化物等が用いられる。具体的にはSiO2(屈折率n=1.45)、MgF2(屈折率n=1.38)、LiF(屈折率n=1.36)、NaF(屈折率n=1.33)、CaF2(屈折率n=1.44)、3NaF・AlF3(屈折率n=1.4)、AlF3(屈折率n=1.37)、Na3AlF6(屈折率n=1.33)等を用いることができる。また、低屈折率層を構成する有機系材料としては、弗素系有機化合物(弗素樹脂)、珪素系有機化合物等を挙げることができる。
【0071】
また、空隙を有する微粒子を用いて低屈折率層を形成することもできる。空隙を有する微粒子とは、微粒子の内部に気体が充填された構造及び/又は気体を含む多孔質構造体を形成し、微粒子本来の屈折率に比べて微粒子中の気体の占有率に反比例して屈折率が低下する微粒子を意味する。空隙を有する微粒子には、微粒子の形態、構造、凝集状態、塗膜内部での微粒子の分散状態により、その内部及び/又は表面の少なくとも一部に微小多孔質構造の形成が可能な微粒子も含まれる。空隙を有する微粒子は、無機物、有機物のいずれであってもよく、例えば、金属、金属酸化物、樹脂からなるものが挙げられ、好ましくは、酸化珪素(シリカ)微粒子が挙げられる。さらに、5〜30nmのシリカ超微粒子を水もしくは有機溶剤に分散したゾルと弗素系樹脂の皮膜形成剤を混合した材料を使用することも出来る。
【0072】
一方、多層構造の反射防止膜30を形成する場合、高屈折率層を構成する無機系材料として、ZnO(屈折率n=1.9)、TiO2(屈折率n=2.3〜2.7)、CeO2(屈折率n=1.95)、アンチモンがドープされたSnO2(屈折率n=1.95)又はITO(屈折率n=1.95)、Al2O3(屈折率n=1.63)、La2O3(屈折率n=1.95)、ZrO2(屈折率n=2.05)、Y2O3(屈折率n=1.87)等を用いることができる。また、高屈折率層を構成する有機系材料としては、ポリエステル樹脂、スチレン系樹脂等を用いることができる。
【0073】
反射防止膜30をなす低屈折率層および高屈折率層は、無機系材料を用いる場合、上記の無機系材料を用いた、真空蒸着、スパッタリング、プラズマCVD、イオンプレーティング等による気相法で、基体上或いは高屈折率層または低屈折率層上に形成され得る。他の方法として、以下のようにして、無機系材料からなる低屈折率層および高屈折率層を形成することもできる。まず、微粒子化した上記無機系材料を、適宜の樹脂バインダー中に分散させ、さらに、溶剤で希釈することによって塗料を準備する。次に、無機系材料を含んだ塗料を、スピンコーティング、ロールコーティング、ダイコーティング等による湿式塗工法により、当該層を形成すべき面上へ塗工する。その後、塗工された塗料から溶剤を乾燥除去し、さらに必要に応じて、熱や放射線(紫外線、電子線等)等により架橋乃至重合反応を起こさせて硬化(乃至固化)させる。これにより、反射防止膜30をなす低屈折率層および高屈折率層を形成することができる。
【0074】
有機系材料を用いる場合には、以下のようにして、低屈折率層および高屈折率層を形成することができる。まず、有機系材料を、適宜の溶剤中に溶解乃至は分散せしめて、塗料を作製する。次に、有機系材料を含んだ塗料を、スピンコーティング、ロールコーティング、ダイコーティング等による湿式塗工法で、基体上或いは高屈折率層または低屈折率層上に塗工する。その後、塗工された塗料から溶剤を乾燥除去し、さらに必要に応じて、熱や放射線(紫外線、電子線等)等により架橋乃至重合反応を起こさせて硬化(乃至固化)させる。これにより、反射防止膜30をなす低屈折率層および高屈折率層を形成することができる。
【0075】
<<作用効果>>
以上のような構成からなる反射防止物品10の第1面11には微細凹凸25が設けられており、この微細凹凸25は入射光の反射を極めて効果的に防止して、第1面11の側(表示装置本体の側)から入射する光(映像光)が非常に高い透過率で反射防止物品10を透過することが可能となる。これにより、反射防止物品10への第1面11の側からの入射光を極めて高い効率で利用することが可能となる。又、同時に、該微細凹凸25は、反射防止物品10の第2面12の側から反射防止膜30又は防眩性凹凸35を透過してきた外光に対しても、其の反射率を低く抑えることができる。
【0076】
なお、このような優れた反射防止機能を有した微細凹凸25は、隣接する他の部材等の外部との接触や擦れ等に起因して、容易に損傷され得る。そして、微細凹凸25が損傷してしまうと、輝点や欠点等の光学欠陥が視認されるようになる。加えて、微細凹凸25が、損傷を引き起こさない程度に外部と軽く接触または擦れた場合であっても、微細凹凸25に油脂やごみ等の付着物が付着する可能性がある。この場合、微細凹凸25付着物が付着している部分は、もはや反射防止機能を発揮することができなくなる。
【0077】
また、反射防止物品10の他の部材との接触や擦れ等は、前記の如く反射防止物品10の使用中だけでなく、反射防止物品10の搬送中等にも、生じる可能性がある。一般的に、シート状の反射防止物品10は、最終的な使用状態となる前に、多数重ね合わされた状態で或いは巻き取られた状態で、搬送等の取り扱いを受ける。そして、多数重ね合わされた状態で或いは巻き取られた状態で反射防止物品10が搬送される際、あるいは、反射防止物品10が組み込まれた装置が搬送される際、反射防止物品10の第1面11は、隣接する部材(隣接する他の反射防止物品10、ウェブ状の反射防止物品10の他の部分、隣接する他の部材等)と接触し、当該他の部材と擦り合わせられるようになる。
【0078】
その一方で、本実施の形態によれば、反射防止物品10の第1面11は、微細凹凸25だけでなく、微細凹凸25の凸部20よりも基準平面SPから突出した突出部15によっても、その一部分を形成されている。したがって、反射防止物品10に第1面11の側から隣接する部材は、突出部15を介して、反射防止物品10の第1面11に接触するようになる。つまり、通常の使用状態において、突出部15により、微細凹凸25が当該反射防止物品10に隣接する他の部材に接触することが防止される。このため、優れた反射防止機能を有した微細凹凸25に付着物が付着することや、当該微細凹凸25が隣接する部材との接触や擦れ等に起因して損傷を受けることを効果的に防止することができる。すなわち、突出部15によれば、反射防止物品10の第1面11に優れた耐擦傷性を付与することができる。結果として、反射防止物品10の第1面11が、安定して優れた反射防止機能を発揮し続けることができる。
【0079】
とりわけ本実施の形態では、突出部15は、上述したように特定の充填率で、反射防止物品10の第1面11に設けられている。したがって、反射防止物品10の第1面11が優れた反射防止機能を発現すること、且つ、当該優れた反射防止機能を安定して維持し続けることが可能となる。
【0080】
また、本実施の形態では、突出部15は、球体の一部または回転楕円体の一部に相当する形状となっている。すなわち、この突出部15は、形状的に、高い剛性を有するようになっている。また、突出部15の頂部は、反射防止物品10の法線方向ndに沿った断面において、曲線状の外輪郭を有するようになっている。このため、反射防止物品10と反射防止物品10に第1面11の側から隣接する部材との摩擦係数が低減され、当該反射防止物品10に第1面11の側から隣接する部材は、反射防止物品10に対して、滑り易くなる。このため、反射防止物品10に第1面11の側から隣接する部材から集中的に外力を受けるようになる突出部15に、擦れや削れ等の損傷が生じることも効果的に抑制されるようになる。そもそも、突出部15が球体の一部または回転楕円体の一部として構成されている場合には、反射防止物品10および隣接する他の部材の少なくとも一方に曲がりや反り等が生じたとしても、反射防止物品10と他の部材との相対位置が滑らかに変化し得る。すなわち、反射防止物品10と他の部材との間での摩擦力を低減することができる。これらのことから、本実施の形態での突出部15の構成によれば、反射防止物品10に極めて優れた耐擦傷性を付与することができる。
【0081】
なお、以上のような耐擦傷性の向上は、反射防止物品10の第1面11に三個以上の突出部15が設けられている場合に、確保され得るようになる。三つの突出部15の頂部によって、唯一の仮想的な面が、反射防止物品10の第1面11の一部をなす微細凹凸25から離間した位置に幾何学的に画成される。そして、この画成された面の位置に、反射防止物品10に隣接する他の部材の面が、支持され得るようになる。ただし、本件発明者らが鋭意研究を重ねたところ、表示装置に組み込まれて使用される反射防止物品10においては、突出部15の充填率が0.01%以上となる場合に安定して、さらには、突出部15の充填率が0.1%以上となる場合により安定して、反射防止物品10の第1面11の一部をなす微細凹凸25を隣接する他の部材から離間させて反射防止物品10の耐擦傷性を向上させることができた。
【0082】
また、反射防止物品10の第2面12は、少なくとも低屈折率層を有し単層又は多層から構成される反射防止膜30の前記低屈折率層の表面、あるいは、防眩性凹凸35を有した面からなっている。このため、第1面11の側から入射して反射防止物品10を透過する可視光を第2面12の側から観察する場合、観察者が透過光を極めて高い透過率で観察することを可能にし、且つ、第1面11に入射する外光の反射も抑えられる為、反射防止物品10への外部像の映り込みを極めて効果的に防止することができる。
【0083】
すなわち、手垢、埃、汚れ等が付着しやすい外面(観察者側の面)を第2面12がなし、手垢、埃、汚れ等は付着しにくいが、隣接する他の部材との擦れ等が生じやすい内面(表示パネル側の面)を第1面11がなすようにして、液晶表示パネル等の表示装置本体の表示面に重ねて配置することにより、シート状の反射防止物品10を好適に使用することができる。この場合、液晶表示本体からの映像光は、第1面11から反射防止物品10に入射するため、極めて高い透過率で反射防止物品10を透過することができる。一方、照明光や太陽光等の環境光は、第2面12、更には第1面11での鏡面反射を効果的に防止され、表示装置への映り込みが効果的に防止される。すなわち、この反射防止物品10を用いることによって、表示装置におけるエネルギー効率を改善することができるとともに、表示される映像の画質を向上させることができる。
【0084】
反射防止物品10が組み込まれ得る表示装置を有した製品の一例としては、テレビジョン受像装置が代表的なものではあるが、其の他、携帯電話等の各種通信機器、パーソナルコンピュータ、電子卓上計算機、電子手帳、各種PDAまたは携帯情報端末等の各種電子計算機乃至は情報処理機器、CDプレーヤー、DVDプレーヤー、MDプレーヤー、半導体メモリ方式音楽プレーヤー等の各種携帯型音楽プレーヤー、ビデオテープレコーダ、ICレコーダ、ビデオカメラ、デシタルカメラ、ラベルプリンタ等の各種映像電子機器、電気炊飯器、電気ポット、洗濯機等の各種家庭電気製品、オシロスコープ、電圧計、自動車の速度計等の各種計測機器、CT(コンピュータ斷層撮影装置)、心電図等の医療用電子機器、各種ゲーム機器、或は電子看板等が例示される。
【0085】
ただし、反射防止物品10は、映像を表示する表示装置本体に重ねて配置される表示装置の窓材としての用途だけでなく、その他の種々の用途で使用され得る。例えば、反射防止物品10が、時計に代表される機械式アナログメータ等の機器の表示部の窓材としても使用され得る。また、反射防止物品10は、平板状(シート状)の窓材に限られず、組み付けやデザイン上の観点から種々の形態、例えば周囲に突起等を有する形態で使用され得る。
【0086】
<<変形例>>
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、変形の一例について説明する。
【0087】
既に説明したように、上述した実施の形態において反射防止物品10の第1面11をなす微細凹凸25の構成を例示したが、微細凹凸25をなす凸部20の断面形状や微細凹凸25をなす凸部20の配列等を適宜変更することができる。
【0088】
また、上述した実施の形態において、突出部15が、球体の一部分または回転楕円体の一部分に相当する形状を有している例を示したが、これに限られない。例えば、突出部が、基準平面SPから突出する円錐台と、この円錐台上に配置された半球と、を組み合わせてなる形状を有するようにしてもよい。また、上述した実施の形態において、反射防止物品10の法線方向nd(基準平面SPへの法線方向)に沿った断面において、突出部15が、円形状の一部分または楕円形状の一部分に相当する形状を有する例を示したが、これに限られない。例えば、突出部が、反射防止物品10の法線方向nd(基準平面SPへの法線方向)に沿った断面において、基準平面SPから突出する台形と、この台形上に配置された半球と、を組み合わせてなる形状を有するようにしてもよい。さらに、上述した実施の形態において、突出部15の底面(基準平面SPに接続する面)が円形状からなる例(図3参照)を示したが、これに限られない。例えば、突出部の底面が、楕円となる形状、或は三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等の多角形形状として形成されてもよい。さらに、上述した実施の形態において、反射防止物品10の突出部15がすべて同一の構成を有する例を示したが、これに限られない。例えば、高さ、断面形状および底面形状等の少なくとも一つが互いに異なる複数種類の突出部15が、反射防止物品10に含まれていてもよい。
【0089】
さらに、反射防止物品10が光を拡散させる拡散機能を有するようにしてもよい。例えば、第1面11と第2面12との間に光拡散層(中間マット層)を有するようにしてもよい。このような光拡散層(中間マット層)は、基部と、基部中に分散された光拡散剤と、を有する層として構成され得る。光拡散剤を含む光拡散層は、例えば、光拡散剤が光反射機能を有することにより、あるいは、光拡散剤が基部とは異なる屈折率を有することにより、光拡散機能を付与され得る。
【0090】
さらに、反射防止物品10が帯電防止層を含むようにしてもよい。この変形例によれば、埃等の異物付着を低減することができ、光学特性に与える悪影響を抑制することができる。また、上述した光拡散層が帯電防止機能を有するようにしてもよい。
【0091】
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
【実施例】
【0092】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0093】
実施例AおよびBに係る反射防止物品並びに比較例A1,A2,B1およびB2に係る反射防止物品を作製した。得られた反射防止物品について、耐擦傷性を評価した。また、得られた反射防止物品について、透過率および反射率を評価した。
【0094】
〔反射防止物品〕
(実施例A)
まず、実施例Aに係る反射防止物品10として、図1に示された反射防止物品を上述してきた方法で作製した。すなわち、実施例Aに係る反射防止物品は、第1面11および第2面12を有し、第1面には可視光の最長波長より大きいピッチで配置された三個以上の突出部15が設けられ、第1面の前記突出部が設けられていない領域が可視光の最長波長以下のピッチで基準平面上に配置された凸部20を含んで構成されている微細凹凸25を有した面からなるようにした。また、実施例Aに係る反射防止物品の第2面12は、防眩性凹凸面35として構成した。
【0095】
実施例Aに係る反射防止物品の第1面11は、厚さ250μmの無色透明の2軸延伸ポリエチレンテレフタレートA4300(東洋紡績株式会社製造)からなるシート材の一方の面上に、微細凹凸25をなす多数の凸部20および突出部15を形成することによって、作製した。また、実施例Aに係る反射防止物品の第2面12は、シート材の他方の面上に、バインダー樹脂および拡散粒子からなる粗面化層を形成して防眩性凹凸35とすることによって、作製した。凸部、突出部およびバインダー樹脂として、ウレタンアクリレートプレポリマからなる電離放射線硬化型樹脂を用いた。拡散粒子として、平均粒径3μmのシリカ粒子を用いた。拡散粒子は、粗面化層に10重量%含まれるようにした。
【0096】
反射防止物品の総厚みが、略300μmとなるようにした。第1面の微細凹凸は、図6に示された微細凹凸25と同様に構成した。すなわち、微細凹凸25を構成する凸部20は、凸部の配列方向と反射防止物品の法線方向との両方向に平行な断面において、一辺が85nmの正方形状となるように設計した。また、凸部の配列ピッチは、一般的な可視光波長域の最短波長よりも大幅に短い190nmに設計した。ただし、作製された凸部を顕微鏡で観察したところ、厳密には凸部の幅は一定ではなく、基準平面SPから離間するに連れて先細りし、下底辺が85nmで上底辺が70μmの台形形状となっていた。配列ピッチは設計通り190nmとなっていた。突出部15は、半径15μmの半球状とし、充填率5%で第1面11上にランダムに配置した。
【0097】
(比較例A1)
比較例A1に係る反射防止物品は、突出部が設けられていない点において実施例Aに係る反射防止物品と異なり、その他(構成、製造方法、材料)において実施例Aに係る反射防止物品と同一となるようにした。すなわち、比較例A1に係る反射防止物品は、可視光の最長波長以下のピッチで基準平面上に配置された凸部を含んで構成されている微細凹凸としての第1面と、防眩性凹凸面としての第2面と、を有するようにした。比較例A1に係る反射防止物品の第1面は、シート材の一方の面上に微細凹凸25をなす多数の凸部を、実施例Aの凸部と同様に形成することによって、作製した。比較例A1に係る反射防止物品の第2面は、シート材の他方の面上にバインダー樹脂および拡散粒子からなる粗面化層を実施例Aの粗面化層と同様に形成することによって、作製した。
【0098】
(比較例A2)
比較例A2に係る反射防止物品は、第1面が平坦且つ平滑である点において実施例Aに係る反射防止物品と異なり、その他(構成、製造方法、材料)において実施例Aに係る反射防止物品と同一となるようにした。すなわち、比較例A2に係る反射防止物品は、平坦且つ平滑な第1面と、防眩性凹凸面としての第2面と、を有するようにした。比較例A2に係る反射防止物品の第1面は、シート材の一方の面そのものとした。比較例A2に係る反射防止物品の第2面は、シート材の他方の面上にバインダー樹脂および拡散粒子からなる粗面化層を実施例Aの粗面化層と同様に形成することによって、作製した。
【0099】
(実施例B)
実施例Bに係る反射防止物品10として、図2に示された反射防止物品を上述してきた方法で作製した。実施例Bに係る反射防止物品は、第2面12が、微細凹凸面としてではなく誘電体多層膜からなる反射防止膜30として形成されている点において実施例Aに係る反射防止物品と異なり、その他(構成、製造方法、材料)において実施例Aに係る反射防止物品と同一となるようにした。すなわち、実施例Bに係る反射防止物品10は、実施例Aの第1面と同様の第1面11と、誘電体多層膜の低屈折率層からなる反射防止膜30を形成してなる第2面12と、を有し、第1面には可視光の最長波長よりも長いピッチで配置された三個以上の突出部15が設けられ、第1面の前記突出部が設けられていない領域が可視光の最長波長以下のピッチで基準平面上に配置された凸部20を含んで構成されている微細凹凸25を有した面からなるようにした。実施例Bに係る反射防止物品の第2面12は、最表面側から順に、酸化ケイ素膜(厚さ100nm)/ITO膜(厚さ40nm)/酸化ケイ素膜(厚さ80nm)の3層構成の膜をスパッタリング法で製膜することによって、反射防止膜30作製した。
【0100】
(比較例B1)
比較例B1に係る反射防止物品は、突出部が設けられていない点において実施例Bに係る反射防止物品と異なり、その他(構成、製造方法、材料)において実施例Bに係る反射防止物品と同一となるようにした。すなわち、比較例B1に係る反射防止物品は、可視光の最長波長以下のピッチで基準平面上に配置された凸部を含んで構成されている微細凹凸としての第1面(比較例A1と同様の第1面)と、誘電体多層膜からなる反射防止膜としての第2面(実施例Bと同様の第2面)と、を有するようにした。
【0101】
(比較例B2)
比較例B2に係る反射防止物品は、第1面が平坦且つ平滑である点において実施例Bに係る反射防止物品と異なり、その他(構成、製造方法、材料)において実施例Bに係る反射防止物品と同一となるようにした。すなわち、比較例B2に係る反射防止物品は、平坦且つ平滑な第1面(比較例A2と同様の第1面)と、誘電体多層膜からなる反射防止膜としての第2面(実施例Bと同様の第2面)と、を有するようにした。
【0102】
〔評価方法〕
(評価方法1)
実施例A,Bおよび比較例A1,A2,B1,B2に係る反射防止物品を長さ150mm×幅40mmに切断して試験片95を作製した。図10に示された、荷重部91と、荷重部91に対向して配置された可動盤92と、を有する耐摩耗試験機(商品名:AB−301、テスター(株)製)を用いて、各試験片について、耐擦傷性を評価した。可動盤92に対向して配置された荷重部91の端面に、面積12cm2の下偏光フィルム93(商品名:H25、大日本印刷(株)製)を、固定した。この際、下偏光フィルム93のマット面が可動盤92の側を向くようにして、荷重部91に対して当該下偏光フィルム93を巻き込むように固定した。次に、可動盤92の上に、上記試験片95をなす反射防止物品を両面粘着テープで固着させて載置した。この際、反射防止物品の第1面に相当する側の試験片95の面が、荷重部91の側を向くようにした。試験片95をなす反射防止物品の第1面に、下偏光フィルム93のマット層が擦り付けられるように荷重部91に250gの荷重をかけ、可動盤92を、試験片95をなす反射防止物品の微細凹凸25をなす凸部の配列方向と平行な方向に20秒間で移動距離100mmを速度5mm/sの条件で移動させた後、各試験片95をなす反射防止物品の微細凹凸25をなす凸部の状態を目視及び顕微鏡観察(デジタルマイクロスコープ VHX−200N、(株)キーエンス社製)により観察した。観察結果から、以下の5段階の基準にしたがって、実施例A,B並びに比較例A1,A2,B1,B2に係る反射防止物品について、第1面11(微細凹凸形成面25)耐擦傷性を評価した。
【0103】
以下の5段階の評価では、「評価5」の場合に耐擦傷性が最も優れている(高い)と評価され、「評価5」から「評価1」に向けて耐擦傷性がしだいに低下(劣化)していくものとして評価される。評価結果を図11および図12に示す。なお、耐擦傷性に用いられる評価テーブルは、天板となる曇りガラス下に40W蛍光灯が6本内蔵されている同人光機製の「スチールライトテーブルKLT−L406LC−F」とした。耐摩耗性試試験機から取り外した試験後の各反射防止物品を該評価テーブル上に載置して耐擦傷性を評価した。
【0104】
[耐擦傷性評価]の基準
・評価5:顕微鏡観察(倍率500)で傷が確認されなかった。
・評価4:顕微鏡観察(倍率500)で傷が確認されたが、評価テーブル上で目視では傷が確認されなかった。
・評価3:評価テーブル上で目視により傷が2〜3本確認された。
・評価2:評価テーブル上で目視により傷(スジ)が多数確認された。
・評価1:評価テーブル上で目視により第1面全面に削れた後が確認された。
【0105】
(評価方法2)
基準平面への法線方向(反射防止物品の法線方向)に沿って第1面の側から反射防止物品に可視光を投射し、この状態で透過率(視感透過率)を測定した。また、基準平面への法線方向(反射防止物品の法線方向)に沿って第2面の側から反射防止物品に可視光を投射し、この状態で反射率(視感反射率)を測定した。
【符号の説明】
【0106】
10 反射防止物品
11 第1面
12 第2面
15 突出部
20 凸部
20a 頂部
20b 谷部
25 微細凹凸
30 反射防止膜
35 防眩性凹凸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、第1面とは反対側の第2面と、を有する反射防止物品であって、
前記第1面には、可視光の最長波長よりも長いピッチで配置された三個以上の突出部が設けられており、
前記第1面の前記突出部が設けられていない領域は、可視光の最長波長以下のピッチで基準平面上に配置された凸部を含んで構成された微細凹凸を有した面となっており、
前記基準平面からの前記突出部の高さは、前記基準平面からの前記凸部の高さより高く、
前記第2面は、少なくとも低屈折率層を有した単層又は多層の反射防止膜の前記低屈折率層の表面、あるいは、防眩性凹凸を有した面からなる、反射防止物品。
【請求項2】
前記基準平面と平行で前記凸部を横切る切断面内における前記凸部の総面積は、当該切断面の位置が、前記基準平面と直交する方向に沿って、前記凸部の頂部から離間して前記基準平面へ接近するに連れて、しだいに大きくなる、請求項1に反射防止物品。
【請求項3】
前記基準平面と直交する方向に平行な断面において、前記突出部は、前記基準平面から最も突出した頂部において、曲線状の外輪郭を有している、請求項1または2に記載の反射防止物品。
【請求項4】
映像を表示部に表示する表示装置本体と、
前記表示装置本体の表示部上に配置される請求項1〜3のいずれか一項に記載の反射防止物品と、を備える表示装置。
【請求項1】
第1面と、第1面とは反対側の第2面と、を有する反射防止物品であって、
前記第1面には、可視光の最長波長よりも長いピッチで配置された三個以上の突出部が設けられており、
前記第1面の前記突出部が設けられていない領域は、可視光の最長波長以下のピッチで基準平面上に配置された凸部を含んで構成された微細凹凸を有した面となっており、
前記基準平面からの前記突出部の高さは、前記基準平面からの前記凸部の高さより高く、
前記第2面は、少なくとも低屈折率層を有した単層又は多層の反射防止膜の前記低屈折率層の表面、あるいは、防眩性凹凸を有した面からなる、反射防止物品。
【請求項2】
前記基準平面と平行で前記凸部を横切る切断面内における前記凸部の総面積は、当該切断面の位置が、前記基準平面と直交する方向に沿って、前記凸部の頂部から離間して前記基準平面へ接近するに連れて、しだいに大きくなる、請求項1に反射防止物品。
【請求項3】
前記基準平面と直交する方向に平行な断面において、前記突出部は、前記基準平面から最も突出した頂部において、曲線状の外輪郭を有している、請求項1または2に記載の反射防止物品。
【請求項4】
映像を表示部に表示する表示装置本体と、
前記表示装置本体の表示部上に配置される請求項1〜3のいずれか一項に記載の反射防止物品と、を備える表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−73487(P2012−73487A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219180(P2010−219180)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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