説明

反応チャンバー

【課題】反応チャンバー内の反応溶液をより効率的に混合する装置及び方法の提供。
【解決手段】1以上の開口と、1以上の物質のマイクロアレイが付着する基材の第1の面に取り付けられる平坦な底部フランジと、を含む新規な反応チャンバー。ケースと基材は1以上の穿孔を有する接着層を介して接着され、1以上のマイクロアレイ、1以上の穿孔、1以上の開口が整列して1以上の反応チャンバーを個々に形成する。かかるチャンバーの使用方法を開示する。新規なチャンバーを含むキットも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な反応チャンバー、システム及び使用方法に関する。具体的には本発明はマイクロアレイシステムに用いた新規なチャンバーに関する。かかるチャンバーの使用方法についても開示する。
【背景技術】
【0002】
マイクロアレイは過去10年間生物学の研究に革命をもたらしてきた。その結果、スポットマイクロアレイの製造、解読用機器が広く市販されている。初期のcDNAスポッティング技術は今や、低分子、オリゴヌクレオチド、酵素、抗体などのタンパク質、細胞全体及び組織試料など、他の物質のスポットに応用されている。当技術分野では標準フォーマットが広く採用されており、マイクロアレイは25mm×75mmで厚さが1mmのガラススライド上に作製される。
【0003】
伝統的に、マイクロアレイはそれらを単一試料により一度に洗浄して処理される。多種類の試料と所与の物質のマイクロアレイとの相互作用を研究することは今や日常的である。例えば、100個の異なる抗体からなるマイクロアレイで患者からの何千もの様々な血清試料を選別できる。或いは、患者における特定の薬剤化合物を代謝する能力について、一塩基多型(SNP)の100個の異なる一本鎖の対からなるマイクロアレイで、多数の患者を検査できる。これらの研究の際に、異なる試料の相互汚染を回避するため、スライド上の各マイクロアレイは互いに分離されなければならない。
【0004】
個々のマイクロアレイをスライド上で分割する様々な装置が設計された。例えば、米国特許出願第11/171128号では組み立てが非常に複雑ではあるが、1つのかかる例を開示している。別の例としてはNUNC A/S社(デンマーク)によるLab−Tek IIチャンバーが挙げられる。このチャンバーはガラススライド上での組織培養に用いるために設計された。このチャンバーでは剛性の樹脂チャンバーが問題である。スライド自体は十分な付着性を与えるために特別なコーティングが施してあり、バイオアッセイ用スライドでの使用は困難である。剛性チャンバーが非平面的であるため、接着部に応力が加わる。チャンバーを定位置に置いたまま走査する場合、チャンバーが非平面的であるためガラスが歪み、走査に悪影響を及ぼすことがある。
【0005】
反応チャンバーで行われる反応は、全部ではないにしてもほとんどが反応成分の混合を必要とする。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)による核酸の増幅ではDNA合成に必要とされる、DNA鋳型、プライマ、緩衝液、ポリメラーゼ、ヌクレオチドなどの混合が必要となる。混合においては反応チャンバー内の面にプローブアレイを接着させ、標的核酸を効率的にハイブリダイズすることも必要となる。単に反応成分を反応チャンバーに別々に添加しただけでは通常効果的に混合されない。効率的な反応速度を得る際のさらなる障害は、生体試料で得られる標的検体の量が、例えば、pmol未満のように少ないことである。したがって、反応成分が効率的に混合されない場合、検出可能な結果を得るために数十時間を必要とすることがありうる。
【0006】
近年、高い処理能力を有するロボットが生体医学研究及び薬学研究用に開発されている。この領域では、装置はマイクロタイタープレートを扱うように設計されている。これらのプレートは約85mm×約125mmである。これらのプレート内にあるウェルは標準の間隔で設けられている。96ウェルプレートには隣接するウェルの中心間が9mmの間隔で、ウェルが縦に8列、横に12列存在する。384ウェルプレートには隣接するウェルの中心間が4.5mmの間隔で、縦に16列、横に24列存在する。1536ウェルプレートには隣接するウェルの中心間が2.25mmの間隔で、縦に32列、横に48列存在する。ピペッティング用及びプレート洗浄用ロボットはこれらのフォーマットのプレートの処理用に設計されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで当技術分野では、反応の均一性と信頼性を維持し、装置構造を比較的単純に保ちながら、反応チャンバー内の反応溶液をより効率的に混合する装置及び方法に対する技術的なニーズが依然として存在する。現行のガラススライドのフォーマットに適合する装置に対するニーズが存在する。一般的なマイクロタイタープレートのフォーマットに適合する装置に対するニーズも高まっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、基材上のマイクロアレイと閉じた壁構造を有するケースとを組み合わせて反応チャンバーを個々に形成する方法及び装置を開示する。本明細書で説明する方法と装置を、様々な材料で作られた基材に配置されたマイクロアレイとともに用いるのに適合させてもよい。また、マイクロアレイの特性又は基材の形状及び寸法に関する制限は何らない。さらに、本明細書で説明する方法及び装置を、ケースの寸法、形状、及び特徴、或いはケースの準備をするために用いる材料及び方法を限定することなく、任意の数量のケースによる使用に適合させてもよい。
【0009】
広義には、本明細書に開示する発明はマイクロアレイアッセイ用の新規パッケージング方法である。そのパッケージは個々のマイクロアレイが個々のチャンバー内に存在し、互いに分離されるようにアッセイ基材に接着されている、個別の閉鎖壁構造を有するケースを備える。接着ではスプリングクリップが不要である。個々の閉鎖壁構造は成型可能な材料も想定されるが、半剛性で薄壁の構造体であるのが好ましい。半剛性壁の柔軟性により成型樹脂部品の反り特性が克服され、ガラスに付着できるようになる。内部がガラスから上方に向けて顕著に高いことにより、空気界面での混合が可能になる。上部開口から反応成分及び溶液を容易に添加できる。進行中の反応系を封止ストリップ又は封止プラグを用いて封止できる。ハイスループットスクリーニングで用いる場合、1つのウェルにある試料は、隣接するウェルへの拡散が防止される。当然のことながら、本発明ではマイクロアレイをこの態様のケースのデザインと組み合わせることにより、マイクロアレイを調製しスキャンする従来の機器を、マイクロタイタープレート内の試料を処理する従来の機器と組み合わせて使用できる。
【0010】
一態様では、本発明は1以上の反応チャンバーを含むアッセイチャンバーを提供し、この反応チャンバーは、(a)第1の面と第2の面を有し、第1の面に1以上の反応領域を含む基材と、(b)1以上の穿孔を有する接着層と、(c)1以上の閉鎖した壁構造と平坦な底部フランジとを有するケースであって、該壁構造の各々が底部開口と各底部開口に対向する上端部とを画成し、上端部の各々が上部開口を含むケースを備える。1以上の反応領域と1以上の穿孔と1以上の底部開口の各々が整列し、1以上の反応チャンバーを個別に形成するように、ケースの底部フランジを、接着層を介して基材の第1の面に接着させる。適宜、反応チャンバーは1以上の反応領域以外の領域にある基材の第2の面に、バーコードなどの識別標識を更に備える。或いは、反応チャンバーはケースの底部フランジの上面にバーコードなどの識別標識を含んでもよい。基材はセラミック、ガラス、シリコン、及び樹脂からなる群から選択される材料からなるのが好ましい。
【0011】
一実施形態では、ケースの閉鎖壁構造は空気界面での混合が可能となるように基材より上にむけて顕著な高さを有する。底部フランジの外側寸法は必ずしもガラス基材全体を覆わなくてもよい。
【0012】
別の実施形態では、ケースは閉じた半剛性薄壁構造と平坦な薄肉底部フランジとを有する。さらに、各上部開口は対応する底部開口と実質的に同じ寸法であり、半剛性薄壁と薄肉底部フランジの軟性により基材に密着させることができ、ケース又は基材の反り特性を克服できる。半剛性で薄壁のケースは樹脂で作られるのが好ましい。ケースはポリプロピレンで作られるのが最も好ましい。ケースの薄壁及び薄肉底部フランジは実質的に同じ厚さであるのが好ましい。また、ケースの開口は封止ストリップの容易かつ確実な取り付けが可能となるリムを有するのが好ましい。リムの幅は薄壁の厚さの実質的に2倍とするのがより好ましい。
【0013】
さらに別の実施形態では、ケースの上部開口は小ポートからなり、上端部の残りの部分は閉鎖される。
【0014】
別の実施形態では、ケースはゴムで作られる。ケースがゴムで作られるとき、底部フランジの外側寸法はガラス基材よりも大きくできる。これによりガラスがゴム内に埋め込まれるのを可能にし、ガラススライドの角の保護に役立つ。
【0015】
さらに別の実施形態では、基材は標準的な顕微鏡用スライドと同じ寸法である。マイクロアレイ解析において、各反応領域は解析対象の物質のマイクロアレイを備える。任意の数量のマイクロアレイを基材上に作製できる。これらのマイクロアレイは基材全体にわたって均等な間隔を有し、また対称パターンを形成するのが好ましい。ケース及び接着層は基材と同様の寸法を有する。ケース及び接着層はマイクロアレイと同様の整合パターンを有し、チャンバーを形成した後に各マイクロアレイが個々のチャンバーに分割される。通常、基材は1、2、3、4、6、8、14、16又は24個のアレイを備える。しかし、任意の数量のマイクロアレイと任意のパターンが可能である。
【0016】
或いは、基材は標準のマイクロタイタープレートと同じ寸法である。上記の実施形態の基材と同様に、任意の数量のマイクロアレイを基材上に作製できる。これらのマイクロアレイは基材全体にわたって均等な間隔を有し、対称パターンを形成するのが好ましい。ケース及び接着層は基材と同様の寸法を有する。ケース及び接着層はマイクロアレイと同様の整合パターンを有し、チャンバーを形成した後に各マイクロアレイが個々のチャンバー内に分割される。通常、基材は従来の市販のマイクロタイタープレートのパターンと同一のレイアウトで96個又は384個のアレイを備える。しかし、任意の数量のマイクロアレイと任意のパターンが可能である。
【0017】
一実施形態では、反応領域は低分子、生体分子、細胞、組織試料から選択される物質をスポットしたマイクロアレイを備える。具体的には、生体分子はタンパク質、ポリヌクレオチド及び多糖類から選択される。
【0018】
一実施形態では、接着層は両面接着剤とされる。両面接着剤は感圧性であるのが好ましい。別の態様では、本発明は1以上の反応チャンバーと上部封止ストリップを備えるアッセイシステムを提示する。
【0019】
一実施形態では、上部にある封止ストリップの内面とチャンバー内の試料液の間に切れ目のない隙間が維持され、空気界面での混合が可能となる。
【0020】
別の態様では、本発明は1以上の反応チャンバーと封止プラグを有するアッセイシステムを提供する。ここでは、反応チャンバーの上部開口が小ポートからなり、上端部の残りの部分が閉じられることに留意すべきである。
【0021】
一実施形態では、上部にある封止プラグの内面とチャンバー内の試料液の間に切れ目のない隙間が維持され、空気界面での混合が可能となる。
【0022】
別の態様では、本発明は以下の工程を含む、1以上の反応チャンバーを設ける方法を提供する。第1の面と第2の面を有し、第1の面に1以上の反応領域を含む基材を用意する工程と、1以上の穿孔を有する接着層を用意する工程と、1以上の閉鎖した壁構造と平坦な底部フランジとを有するケースであって、壁構造の各々が底部開口と各底部開口に対向する上端部とを画成し、上端部の各々が上部開口を含むケースを用意する工程と、1以上の底部開口が1以上の穿孔と整列するように、ケースを接着層の第1の面に接着させる工程と、1以上の反応領域が1以上の穿孔と整列して1以上の反応チャンバーを個別に形成するように、基材の第1の面を接着層の第2の面に接着させる工程。
【0023】
別の態様では、本発明は以下の工程を含む、物質のマイクロアレイのスクリーニング方法を提供する。マイクロアレイを含んでなる上記方法による1以上の反応チャンバーを用意する工程と、反応チャンバー内で物質のマイクロアレイを処理し、該物質のマイクロアレイの1以上の所望の特性を得る工程と、物質のマイクロアレイをスキャンしてこれらの特性を同定する工程。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図面の説明
図1Aは、半剛性薄壁ケース110、周縁部の接着層130、基材150によって画成される二つのアッセイチャンバーを有する二つのアッセイ反応チャンバーシステム100の一実施形態を示す。薄壁ケースは薄壁112による二つの開口と、平面上の薄肉底部フランジ114と、薄壁の開口の上端にあるリム116を有する。図1Bは図1Aの展開図である。
【0025】
図2は、半剛性薄壁ケース210、周縁部の接着層230、アレイ261及び262を有する基材250によって画成される2つのアッセイチャンバーを有する2つのアッセイ反応システム200の別の実施形態を示す。薄壁のケースは薄壁212で囲まれた2つの開口、平坦な薄肉底部フランジ214、及び薄壁で囲まれた開口の上端にあるリム216を有する。上部封止ストリップ280は薄壁ケースの開口を覆って反応内容物の蒸発を防止する。また、ケースの底部フランジの上面にオプションのシート290が示され、該シートは識別標識もしくはバーコードを有してもよい。図2Aはシステムの展開図であり、図2Bはシステムの平面図であり、図2C及び図2Dはシステムの断面図である。
【0026】
図3は、本発明の実施形態に係る、4、8、16個のアッセイ反応チャンバーの例を示す。
【0027】
図4は、本発明の代替的な実施形態の例を示す。2つのアッセイ反応チャンバーシステムを示す。チャンバーは閉じた上部を有し、2つの開口が各々プラグで封止される。
【0028】
好ましい実施形態
本願は米国特許出願公開第2003/0064507号を始めとする様々な特許、科学論文、及び他の出版物に言及する。かかる各文献の内容は援用により本明細書の内容の一部をなす。
【0029】
本発明では基材上のマイクロアレイと開口を備えたケースとを備える反応チャンバー及び反応システムについて説明する。広義には、防水封止により各々が互いに分離された開口によって形成される異なるチャンバーの底部に、個々のマイクロアレイが最終的に位置するように、マイクロアレイを有する基材とケースを、接着剤を介して結合する。ハイスループットスクリーニングで用いる場合、防水封止により1つのウェルに存在する試料の隣接するウェルへの拡散が防止される。このような態様でマイクロアレイとケースを組み合わせることにより、本発明はマイクロアレイ反応システムの柔軟性を改良する。これらのチャンバー及びシステムは様々な寸法と形態をとることができる。個々の閉じた壁構造は他の成型可能な材料が想定されるが、半剛性で薄壁の構造体とするのが好ましい。このシステムは空気界面での混合によりチャンバー内の溶液の混合を改良し、その結果対象となる検体の処理と検出を改良する。
【0030】
反応チャンバーの製造方法
一態様では、以下の工程を含む、1以上の反応チャンバーの製造方法が提供される。第1の面と第2の面を備え、1以上の物質マイクロアレイが第1の面に付着した基材を用意する工程と、1以上の穿孔を有する接着層を用意する工程と、1以上の開口と平坦な薄肉底部フランジを備えたケースを用意する工程と、1以上の開口が1以上の穿孔と整列するように、接着層の第1の面にケースを接着させる工程と、1以上のマイクロアレイが1以上の穿孔と整列するように、基材の第1の面を接着層の第2の面に接着させする工程。形成した反応チャンバーは上部封止ストリップで封止できる。或いは、チャンバーの上部開口が小ポートからなる場合には、その小ポートはプラグによって同様に封止できる。好ましくは、ケースは半剛性で薄壁のケースとし、半剛性薄壁と薄肉底部フランジの柔軟性により、基材に密着して付着できるようになり、ケース又は基材の反り特性を克服できる。
【0031】
本明細書で説明する方法と装置を、様々な材料で作られる基材に配置されたマイクロアレイとともに用いるのに適合させてもよい。また、マイクロアレイの特性又は基材の形状及び寸法に関する制限はない。特定の実施形態では、基材は標準のガラススライドの寸法、すなわち25mm×75mmで厚さが1mmであってよい。他の実施形態では、基材は標準のマイクロタイタープレートの寸法、すなわち85mm×125mmで厚さが1mmであってよい。しかし、本発明は、決してこれらの寸法の長方形基材に限定するものではない。好ましい実施形態では、基材はその基材が硬くて容易に曲がらない、すなわち可撓性ではないという意味で剛性を有する。したがって、剛性の基材はマイクロアレイが使用される条件下で、特にハイスループットの条件下で、その上に存在する材料に対する物理構造を与えるのに十分である。限定するものではないが、材料としては樹脂及びガラスが好ましい。マイクロアレイ自体は限定されないが、例えば複合ライブラリからの低分子、例えばタンパク質、ポリニクレオチド及び/又は炭水化物などの生体分子、細胞全体、ならびに組織試料等の各種物質を含んでもよい。
【0032】
さらに、本明細書で説明する方法と装置を、ケースの寸法、形状、及び特徴、開口の大きさ、形状、及び数量、又はケースを設けるのに用いる材料及び方法を限定することなく、任意のタイプのケースでの使用に適合させてもよい。ケースは通常、1つもしくは複数の樹脂を射出成型、一体成型、機械加工、レーザーカット又は真空シート成形して作製される。ケースは透明もしくは不透明な材料で作製できる。ケースを樹脂で作製し、半剛性で薄壁のケースを形成することもできる。或いは薄壁構造を用いず、適合性を有するようにゴムやシリコンなどの軟性の成型材料により作製してもよい。
【0033】
アクリル及びシリコン接着剤などの各種の両面接着剤が市販されている。これら及び他の接着剤の特性に関しては様々な市販のマニュアル、例えば3M社(米国ミネソタ州セントポール)の“3M Designer’s Reference Guide to Adhesive Technology”及び“3 M Manual of Double Coated Tapes, Adhesive Transfer Tapes and Reclosable Fasteners”に記載されている。また、“Adhesion and Bonding”, Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, Vol.1, pp.476−546, Interscience Publishers, 1985に記載された接着剤も参照されたい。
【0034】
接着工程に先行し、基材をケース及び接着層に整列させる工程を行うことが好ましい。整列工程は手動で又はより好ましくは整列装置を用いて行ってもよい。基材を整列装置に整列させる手段には、基材を収容する形状及び寸法を整えられた1以上のケーシングとともに剛性材料を含めてもよい。かかる実施形態では、最初に1以上のケーシング内に基材を置く。次いで、ケース及び接着層を基材上に置いてそれらを接着する。
【0035】
反応チャンバー
一態様では、本発明は1以上の反応チャンバーを含むアッセイチャンバーを提供し、この反応チャンバーは以下を備える。(a)第1の面と第2の面を有し、第1の面に1以上の反応領域を取り付けた基材と、(b)1以上の穿孔を有する接着層と、(c)1以上の閉鎖壁構造と平坦な底部フランジとを有するケースであって、壁構造の各々が底部開口と各底部開口に対向する上端部を画成し、上端部の各々が上部開口を備えるケース。ケースの底部フランジは接着層を介して基材の第1の面に取り付けられ、1以上の反応領域と1以上の穿孔と1以上の底部開口の各々が整列し、1以上の反応チャンバーを個別に形成する。適宜、反応チャンバーは1以上の反応領域以外の領域にある基材の第2の面に、シリアル番号やバーコードなどの識別標識をさらに有する。或いは、反応チャンバーはケースの底部フランジの上面にシリアル番号やバーコードなどの識別標識を含んでもよい。適宜、アッセイチャンバーを封止するために上部封止ストリップが設けられる。基材はセラミック、ガラス、シリコン及び樹脂で構成される群から選択された材料から構成されるのが好ましい。さらに、ケースの閉鎖壁構造は空気界面での混合が可能となるために、基材より上方に顕著な高さを有することが望ましい。図1〜4はそのようなアッセイチャンバーアセンブリの例を提示している。
【0036】
図1に示すように、上記のケースの一実施例は、閉じた半剛性薄壁構造と平坦な薄肉底部フランジとを有する。さらに、各上部開口は、対応する底部開口と実質的に同じ寸法である。半剛性薄壁と薄肉底部フランジの軟性により、基材に密着して接着することができ、ケース又は基材の反り特性を克服できる。半剛性で薄壁のケースは樹脂で作られるのが好ましい。ケースはポリプロピレンで作られるのが最も好ましい。ケースの薄壁及び薄肉底部フランジは実質的に同じ厚さであるのが好ましい。また、ケースの開口は封止ストリップの容易かつ確実な取り付けが可能となるリムを有するのが好ましい。リムの幅は薄壁の厚さの実質的に2倍であるのがより好ましい。
【0037】
上記のケースの代替実施例を図4に示す。この場合、ケースの上部開口は小ポートで構成され、上端部の残りの部分は閉じられている。
【0038】
ケースはまたゴムやシリコンなどの柔軟性の成型材料で作製できる。これらの材料により薄壁構造に依存しないで適合性が得られる。
【0039】
マイクロアレイ
基材上の各反応領域には、限定されないが例えば、複合ライブラリなどの低分子、例えばタンパク質、ポリヌクレオチド及び/又は炭水化物などの生体分子、細胞全体、ならびに組織試料を含む各種物質を有するマイクロアレイを含めてもよい。物質は基材表面に安定して結合させるのが好ましい。安定した結合とは、使用条件下で、例えばハイスループットスクリーニング条件下で物質の基材に対するそれらの位置が維持されることを意味する。したがって、物質を非共有結合もしくは共有結合で基材表面に結合することができる。好ましい非共有結合の例としては、非特異性吸着、基材表面に共有結合で取り付けられた特定の結合対部材を介した特異性結合、及び、例えば水和した又は乾燥した分離媒体などのマトリクス材料への取り込みなどが挙げられる。好ましい共有結合の例としては、低分子もしくは生体分子と基材表面に存在する官能基との間に形成された共有結合が挙げられ、以下にさらに詳細に説明するように、基材表面には、官能基が自然に発生するか又は多数の導入された連結基として存在することができる。
【0040】
対象となるマイクロアレイの基材は様々な材料から作製してもよい。好ましい実施形態では、基材はその基材が硬くて容易に曲がらない、すなわち可撓性ではないという意味で剛性を有する。したがって、剛性の基材はマイクロアレイが使用される環境下で、特にハイスループットの条件下で、その上に存在する材料に対する物理構造を与えるのに十分である。基材が作製される材料はアッセイ環境下で対象試料に対して低い非特異性結合レベルを示すのが好ましい。多くの場合、可視光及び/又は紫外線を透過する材料を用いるのもまた好ましい。対象となる具体的な材料にはガラス、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、及びそれらの混合物などの樹脂、例えば金、プラチナなどの金属が挙げられる。
【0041】
対象となるマイクロアレイの基材は物質のマイクロアレイが存在する1以上の面を含んでなり、その面は平滑であるか又は実質的に平面であってよいし、或いは窪みや隆起などの凹凸があってもよい。物質のマイクロアレイが付与される面を、その面の特性を所望の態様に変化させる合成物からなる1以上の異なる層で改質してもよい。かかる改質層は、存在する場合、厚さは一般的には単分子分厚から約1mmまでの範囲であり、通常は単分子分厚から約0.1mmまでの範囲であり、さらには単分子分厚から約0.001mmまでの範囲である。対象となる改質層としては、金属、金属酸化物、ポリマー、有機低分子などの無機層及び有機層が挙げられる。対象となるポリマー層にはタンパク質、例えば、ペプチド核酸などのポリヌクレオチド又はそれの擬態物、多糖類、リン脂質、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ尿素、ポリアミド、ポリエチレンアミン、硫化ポリアリーレン、ポリシロキサン、ポリイミド、ポリアセテートなどの各層が含まれ、該ポリマーはヘテロポリマー又はホモポリマーとすることができ、例えばコンジュゲートのような、そこに結合させた他の官能基を有してもよく、有しなくてもよい。
【0042】
特定の実施形態では、所与のマイクロアレイ内の各地点には同じ物質が含まれる。他の実施形態では、各地点には異なる物質が含まれる。さらに、当然のことながら、特定の基材上の別のマイクロアレイは、同じでも異なっていてもよい。通常、所与の基材に、基材上に配置された任意の数量の各マイクロアレイを含めてもよい。マイクロアレイの各中心はケースの各開口の配置に応じた間隔を有して配置される。当然なことながら、基材は穿孔及びウェルと一致する基材上のすべての場所にマイクロアレイを含む必要はない。
【0043】
対象物質が好ましいパターンで付与された基材は様々な形態をとってもよい。したがって、基材は長方形や円板形などの全体的にスライド形態又はプレート形態とすることができ、標準のマイクロアレイ用及び顕微鏡用スライドに見られるような全体的に長方形とするのが好ましい。例えば、基材の長さは少なくとも約10mmとすることができ、400mm程度か又はそれ以上としてもよいが、通常は約300mmを超えることはなく、150mmを超えないことが多くてもよい。基材の幅は、少なくとも約10mmとしてもよく、300mm程度としてもよいが、通常は200mmを超えることはなく、100mmを超えないことも多い。基材の厚さは通常、基材が作製される材料と、必要な剛性を与えるのに必要とされる材料の厚さとに少なくとも部分的に基づき、0.01mm〜10mmの範囲である。ある好ましい実施形態では、基材は25mm×75mmで厚さが約1mmのガラススライドとする。他の実施形態では、基材は標準のマイクロタイタープレートの寸法、すなわち、85mm×125mmで厚さが1mmとしてもよい。しかし、本発明は決してこれらの寸法の長方形基材に限定されるものではない。
【0044】
様々な物質のマイクロアレイを配置した基材が市販されている。さらに、低分子、生体分子、細胞全体及び組織試料からなるマイクロアレイを設ける各種の方法が当技術分野で公知である。特に、ポリヌクレオチドからなるマイクロアレイを用意する公知の技術に加えて、低分子、タンパク質、炭水化物、細胞全体及び組織試料をガラス及び樹脂スライドなどの基材面にマイクロアレイを形成できるようにする各種技術が近年開発されてきた。
【0045】
接着層
本明細書において、「付着層」、「接着層」、及び文法上の等価物とはケースと反応システムの基材をともに接着して反応チャンバーを与え、かつチャンバーの中身が漏れるのを実質的に防止する封止を与える物質又は合成物を意味する。当業者に自明のように、様々な異なる形態をとってもよい。一実施形態では、ケースを基材に取り付ける際に接着剤を使用する。接着剤の例としては、両面シート、ゴム接着剤、シリコン、アクリル及びそれらの組み合わせなどの液体接着剤が含まれる。接着剤の望ましい特性とは、接着剤が層間に十分な接着強度を与えることであり、適宜接着剤を基材からきれいに除去できることである。例えば、一実施形態では、接着剤は、紫外線非存在下では高い接着性を有するが、紫外線に曝露した後接着性が低下する紫外線硬化接着剤を含む。アレイを紫外線照射中にマスクするのが好ましい。基材を紫外線照射の後で他のチャンバー部品から簡便に取り外してもよく、それによりアレイを容易にスキャンに供することができる。
【0046】
ケース
一態様では、本発明は1以上の開口を備えた壁構造と平坦な薄肉底部フランジとを有する反応チャンバーを形成するケースを提供する。ケースの底部フランジは接着層により基材の第1の面に接着し、1以上の反応チャンバーを個別に形成できる。適宜、ケースはバーコードなどの識別標識を、ケースの底部フランジの上面に有してもよい。ケースは基材に密着して接着することができるように、半剛性薄壁構造と薄肉底部フランジからなるのが好ましく、それによりケース又は基材の反り特性を克服できる。
【0047】
好ましくは、半剛性で薄壁のケースは樹脂で作られる。最も好ましくは、半剛性で薄壁のケースはポリプロピレンで作られる。或いは、ケースは薄壁構造を用いる代わりに、ゴムやシリコンなどの軟性の成型材料で作製して適合性を得てもよい。ケースの上端部は適宜小ポートを含んでなり、残りの部分は密封される。この口部を封止ストリップ又はプラグ(図4)によって封止してもよい。小ポートを有するケースは検体の充填中に、飛び散りや異なるチャンバー間での相互汚染を低減することで、場合によって利点がある。本発明による装置はプレートの寸法、形状、及び特徴、又は開口の寸法、形状、及び数量、又はプレートを設けるのに用いる材料及び方法に限定されず、任意のタイプのケースを含んでもよい。ケースは通常1以上の樹脂を射出成型、一体成型、機械加工、レーザーカット又は真空シート成形によって作製される。ケースを透明又は不透明の材料から作製してもよい。
【0048】
ケース及び接着層は基材上のマイクロアレイと同様の整合パターンを有し、チャンバーを形成した後で各マイクロアレイが個々のチャンバー内に分割される。基材上には任意の数量のマイクロアレイを製造できる。これらのマイクロアレイは基材にわたって均等に間隔が空いており、対称パターンを形成しているのが好ましい。基材が標準的な顕微鏡用スライドと同じ寸法である場合、基材は通常1、2、3、4、6、8、12、14、16又は24個のアレイを備える。基材が標準のマイクロタイタープレートと同じ寸法とされる場合、通常基材は従来の市販のマイクロタイタープレートのパターンと同一のレイアウトで96又は384個のアレイを備える。しかし、任意の数量のマイクロアレイと任意のパターンが可能である。
【0049】
樹脂及びガラス部品は製造工程中に平面を保つのが困難である。本発明の設計では、組立中にケースを基材面に合わせるのを可能にする「薄壁」又は軟性材料で設計されたチャンバーを与えることによりこの課題を解決する。この部品の最初の具現化での壁厚においては1mmより小さい壁厚を採用する。ポリプロピレン製ケースに関する1つの設計では、厚さ約0.9mmの薄壁を有し、この厚さ0.9mmは薄壁の厚さをガラスの厚さより若干小さくする。これにより所望の「半剛性」特性をがケースに付与される。コードリンク(登録商標)バイオアレイに用いるソーダ石灰ガラスは弾性係数がEs=70〜73GPaである。ポリプロピレンではEc=1.1〜1.4GPaである(チャンバーケースの弾性係数)。基材及びチャンバーケースのフランジなどの平板形状に対して、この場合に、剛性比は(tf/ts)3x(Ec/Es)で表され、ここでts=基材厚、tf=フランジ厚である。示された厚さと弾性係数に対して、剛性比はSf/Ss=0.013になる。したがって、フランジは基材よりも剛性がかなり小さい。さらに薄いチャンバーケースがPETG(非結晶性PETコポリマー)から調製された材料を用いて作製された。チャンバーの作製に低コストの熱成形法が使用できるという利点が加わった。
【0050】
ケースの薄壁と薄肉底部フランジは、実質的に同じ厚さとするのが好ましい。また、ケースの開口は封止ストリップを容易かつ確実に取り付けことができるリムを有するのが好ましい。リムの幅は薄壁の厚さの実質的に2倍とするのが最も好ましい。
【0051】
空気界面での混合
本明細書において、「混合」という用語及びその文法的な活用形は、液体中の1以上の物質を、必須ではないがなるべく領域又は空間内で一様に分散されるように流体を循環させるか、又は撹拌することをいう。したがって、混合には例えば、微粒子が流体中に溶解されるにせよ浮遊されるにせよ、1以上の物質をより一様に分散させる流体の循環又は撹拌が含まれる。混合の定義内にはまた、たとえ混合を続けても流体内の物質をさらに分散させることはないにしても、流体の連続循環又は連続撹拌が企図される。したがって、好ましい実施形態では、混合により流体は空間的に均質もしくは一様になる。混合の度合い、時間調整、及び混合を行うのに加えられる力は、当技術分野で公知のように、標的の検体、試料、アッセイ方法などに応じて実施者の裁量で選択される。
【0052】
ケースの壁は基材より上にかなり高くなっている。アッセイ中に、切れ目のない隙間が上側の封止ストリップ内面とチャンバー内の試料液の間で維持され、空気界面混合が可能となる。混合はチャンバー内に空気が存在する場合に生じる。例えば、混合するために切れ目のない隙間を用いてもよい。理論に拘束されるわけではないが、切れ目のない隙間はチャンバー内の流体の移動を可能にして、その結果、混合が行われる。
【0053】
本発明の装置を用いたマイクロアレイのスクリーニング方法
本発明は本明細書で説明した装置を使用したマイクロアレイのスクリーニング方法も提供する。その方法は、上記のように1以上のマイクロアレイを備えた基材、1以上の穿孔を備えた接着層、及び1以上の開口を備えたケースを用意する工程と、少なくとの1つの開口が1以上の穿孔と整列するようにケースを接着層の第1の面に接着する工程と、1以上のマイクロアレイが1以上の穿孔と整列するように基材の第1の面を接着層の第2の面に接着することにより、1以上のマイクロアレイ、1以上の穿孔、及び1以上の開口が1以上の反応チャンバーを個別に形成するように接着する工程と、1以上のマイクロアレイ、1以上の穿孔、及び1以上の開口が1以上の反応チャンバーを個別に形成し、物質の1以上の所望の特性を確定するために反応チャンバー内で物質のマイクロアレイを処理する工程と、特性を特定するために物質のマイクロアレイをスキャンする工程と、を含む。
【0054】
特定の実施形態では、基材は物質マイクロアレイをスキャンする前に装置から除去される。他の実施形態では、基材は物質マイクロアレイをスキャンする前に装置から除去されることはない。
【0055】
本発明の装置は標的となる検体を検出するために用いられる。本明細書において「標的検体」及び文法上の等価物は検出もしくは定量化されるべき検体を称するのに用いられる。本明細書において「夾雑検体」及び文法上の等価物とは、検出されるべきでない試料内の検体を称するのに用いられる。これらの「夾雑検体」は「標的検体」の効率的な検出を頻繁に妨害する。標的検体は以下により完全に説明するように、結合リガンドに結合されるのが好ましい。
【0056】
標的検体は限定されないが、血液、リンパ、唾液、膣及び肛門分泌液、尿、便、汗及び涙などの体液と、肝臓、脾臓、骨髄、肺、筋肉、脳などをの固形の組織と、土、水、空気、植物などの環境試料と、工業製品とを含む任意の数量の様々な試料タイプでもよい。
【0057】
当業者に自明のように、多数の標的検体が処理され、次に本方法を用いて検出されてもよい。基本的には、本明細書で説明した結合リガンドをそれ用に作ることができる標的検体は本発明の方法を用いて検出してもよい。
【0058】
好ましい標的検体には生体分子を含む有機及び無機分子が含まれる。好ましい実施形態では、標的検体は環境汚染物質(農薬、殺虫剤、毒素などを含む)、化学物質(溶剤、ポリマー、有機物などを含む)、治療物質(治療用及び弊害薬物、抗生物質などを含む)、生体分子(ホルモン、シトキン、タンパク質、脂質、炭水化物、細胞膜抗原、及び受容体(神経、ホルモン、栄養素、及びセル表面にある各受容体)又はそれらのリガンドなどを含む)、細胞全体((病原細菌などの)原核生物細胞及びほ乳類腫瘍細胞を始めとする真核生物細胞を含む)、ウイルス(レトロウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、レンチウイルスなどを含む)及び胞子でもよい。特に好ましい標的検体は環境汚染物、核酸、タンパク質(酵素、抗体、抗原、増殖因子、シトキンなどを含む)、治療用及び弊害薬物、細胞、及びウイルスである。
【0059】
好ましい実施形態では、標的検体は核酸である。
【0060】
好ましい実施形態では、本発明は対象核酸を処理し、検出する方法を提供する。本明細書において「対象核酸」又は「標的配列」又は文法的等価物とは一本鎖の核酸に関する核酸配列を意味する。標的配列は遺伝子、調節配列、遺伝子DNA、cDNA、mRNA及びrRNAを始めとするRNAなどの一部であってよい。長い方の配列がより特異的であるという条件で、標的配列は任意の長さとしてもよい。幾つかの実施形態では、試料核酸を100〜10000の塩基対断片に分解するか又は切り離すのが望ましく、実施形態によっては、およそ500の塩基対断片が好ましい。当業者に自明のように、相補的標的配列も多くの形態をとってもよい。例えば、相補的標的配列はとりわけ遺伝子又はmRNAのすべて又は一部、プラスミド又は遺伝子DNAの制限断片などのより大きい核酸配列に含めてもよい。
【0061】
プローブ(プライマを含む)は標的配列にハイブリダイズして試料中の標的配列の有無を判定するために作製される。一般的にはこの事項は当業者に理解可能であろう。
【0062】
好ましい実施形態では、標的検体はタンパク質である。当業者に自明のように、本発明を用いて検出し得る蛋白性の標的検体は多数存在する。
【0063】
さらに、抗体を検出できるあらゆる分子を同様に直接検出してもよく、すなわち、ウイルス又は細菌性細胞、治療用及び弊害薬物などの検出を直接おこなってもよい。
【0064】
好ましい検体としては、限定されないが乳癌マーカ(CA15−3、CA549、CA27.29)、ムチン様癌関連抗原(MCA)、卵巣癌マーカ(CA125)、膵臓癌用マーカ(DE−PAN−2)、前立腺癌マーカ(PSA)、CEA、ならびに結腸直腸癌及び膵臓癌マーカ(CA19、CA50、CA242)などの炭水化物が挙げられる。
【0065】
別の態様では、本発明は、第1の面と第2の面を有し、第1の面に1以上の物質マイクロアレイが取り付けられた基材と、1以上の穿孔を備えた接着封止材と、1以上の開口と平坦な底部フランジを備えたケースと、を有するキットを提供する。
【0066】
さらに別の態様では、本発明は少なくとの1つの穿孔を備えた接着封止材と、1以上の開口と平坦な底部フランジを備えたケースと、を含んでなり、底部フランジの寸法が基材の寸法と実質的に等しいキットを提供する。
【実施例】
【0067】
以下の実施例は例示を目的で提示され、限定するものではない。
【0068】
実施例1
1つの実施例を図1Aに、図1Bの斜視図とともに示している。2つのアッセイ反応チャンバーシステム100は半剛性で薄壁のケース110、周縁接着層130、及び基材150によって画成された2つのアッセイチャンバーを有する。薄壁のケースは薄壁112で囲まれた2つの開口、平坦な薄肉底部フランジ114、及び薄壁で囲まれた開口の上端部にあるリム116を有する。
【0069】
別の実施例を図2に、図2Aから図2Dに表示した幾つかの図とともに示す。2つのアッセイ反応システム200は半剛性で薄壁のケース210、周縁接着層230、及びアレイ261及び262を有する基材250によって画成された2つのアッセイチャンバーを有する。薄壁ケースは薄壁212に囲まれた2つの開口、平坦な薄肉底部フランジ214、及び薄壁で囲まれた開口の上端部にあるリム216を有する。上部封止ストリップ280は薄壁ケースの開口を覆って反応内容物の蒸発を防止する。また、ケースの底部フランジの上面にはバーコードを担持するシート290を示す。基材の底面にある整合バーコードは示さない。
【0070】
チャンバーを薄壁に設計すること及びポリプロピレン材料を用いる(図1及び図2)ことで、チャンバーはガラス及び先行技術のチャンバーよりも剛性が大幅に小さくなる。また、所与の非平面に対して剛性が小さいと、接着接合部に作用する応力が小さくなる。この設計ではガラスに合わせたケースの幅の大部分にフランジを組み込んでいる(1.5mm〜3.5mmのフランジ対1mm以下の壁)。このフランジの側高は単にフランジの厚さであり、約0.9mmである。それに対してチャンバーの側高は約8mmである。側高が大きいために、チャンバーはフランジよりも剛性が大幅に高くなるが、それでも先行技術のチャンバーよりも剛性がかなり低い。たとえチャンバーがフランジよりも大幅に剛性が高いとしても、フランジだけからなるチャンバー間の途切れ部があるために、接着やスキャンに関する問題を引き起こすことなく、2アップチャンバーをガラスに合わせることができる。また、上部が開いた設計はチャンバーの剛性を低める。そこを通って流体が添加され、除去される上部の開口は、幅が2mmのフランジを有しており、高い信頼性で封止ストリップを封止できる。混合するのにエアギャップ及びオービタルシェーカを用いることにより、説明したアセンブリ内でアッセイを行うことができる。
【0071】
この例示のチャンバー設計は米国特許出願第10/171128号に示したものなど、先行技術のクリップを備えたチャンバーよりも単純である。樹脂成型具はより単純になり、費用がかからず、材料の使用量が少ない。ポリプロピレンは低価格の樹脂であり、医療用途に容易に使用できるグレードとする。例示のチャンバー設計は樹脂に対する厳しい精度管理を要求しない。例示のチャンバー設計により、クリップ及びその厳しい精度管理が不要になる。
【0072】
このチャンバーは自動化及び半自動化に容易に適合する。この設計はチャンバーを所定の位置においたまま、ガラスの背面からのスキャンが可能となる。好ましい実施形態では、接着シールをテープとリールの形態で製造する。組み立てにおいて、チャンバーを同時にテープ上でもある接着剤上に置かれる。次いで、接着剤付のチャンバーを、チャンバーをガラスに合わせるためにテープとリールの配置装置に設置してもよい。
【0073】
2アップチャンバー設計を示しているが、本発明は2アップ構成に限定するものではない。本発明は既に説明したチャンバー間の途切れ部にフランジを配置し、1アップ、3アップ、4アップ設計に容易に拡張できる。
【0074】
他の実施形態
本発明の他の実施形態は明細書の検討又は本明細書に開示した発明の実施形態から当業者には自明である。明細書及び実施例は例示としてのみ考慮され、本発明の真の範囲は添付の請求項によって示される。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1A】半剛性薄壁ケース110、周縁部の接着層130、基材150によって画成される二つのアッセイチャンバーを有する二つのアッセイ反応チャンバーシステム100の一実施形態を示す図。薄壁ケースは薄壁112による二つの開口と、平面上の薄肉底部フランジ114と、薄壁の開口の上端にあるリム116を有する。
【図1B】図1Aの展開図。
【図2A】半剛性薄壁ケース210、周縁部の接着層230、アレイ261及び262を有する基材250によって画成される2つのアッセイチャンバーを有する2つのアッセイ反応システム200の展開図。
【図2B】半剛性薄壁ケース210、周縁部の接着層230、アレイ261及び262を有する基材250によって画成される2つのアッセイチャンバーを有する2つのアッセイ反応システム200の平面図。
【図2C】半剛性薄壁ケース210、周縁部の接着層230、アレイ261及び262を有する基材250によって画成される2つのアッセイチャンバーを有する2つのアッセイ反応システム200の断面図。
【図2D】半剛性薄壁ケース210、周縁部の接着層230、アレイ261及び262を有する基材250によって画成される2つのアッセイチャンバーを有する2つのアッセイ反応システム200の断面図。
【図3】本発明の実施形態に係る、4、8、16個のアッセイ反応チャンバーの例を示す図。
【図4】本発明の代替的な実施形態の例を示す図。2つのアッセイ反応チャンバーシステムを示す。チャンバーは閉じた上部を有し、2つの開口が各々プラグで封止される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1の面と第2の面を有し、第1の面に1以上の反応領域を含む基材、
(b)1以上の穿孔を有する接着層、及び
(c)1以上の閉じた壁構造と平坦な底部フランジとを有するケースであって、壁構造の各々が底部開口と各底部開口に対向する上端部とを画成し、上端部の各々が上部開口を有するケース
を備える1以上の反応チャンバーであって、
ケースの底部フランジが接着層を介して基材の第1の面に接着し、1以上の反応領域と1以上の穿孔と1以上の底部開口が各々整列して1以上の反応チャンバーを個々に形成する、1以上の反応チャンバー。
【請求項2】
上部開口が小ポートからなり、上端部の残りの部分が閉鎖されている、請求項1記載の1以上の反応チャンバー。
【請求項3】
閉じた壁構造が、反応溶液の空気界面での混合ができるように基材から十分な高さを有する、請求項1記載の1以上の反応チャンバー。
【請求項4】
前記ケースがゴムで作られている、請求項1記載の1以上の反応チャンバー。
【請求項5】
前記ケースが閉じた半剛性薄壁構造と平坦な薄肉底部フランジとを有し、上部開口の各々が対応する底部開口と実質的に同じ寸法であり、半剛性薄壁及び薄肉底部フランジの柔軟性によって基材に密着してケース又は基材の反り特性を克服できる、請求項1記載の1以上の反応チャンバー。
【請求項6】
前記ケースの薄壁構造及び薄肉底部フランジが実質的に同じ厚さである、請求項5記載の1以上の反応チャンバー。
【請求項7】
前記ケースが樹脂で作られている、請求項5記載の1以上の反応チャンバー。
【請求項8】
前記ケースがポリプロピレンで作られている、請求項5記載の1以上の反応チャンバー。
【請求項9】
上部開口の各々が封止ストリップを容易かつ確実に取り付けことができるリムを含む、請求項5記載の1以上の反応チャンバー。
【請求項10】
前記リムの幅が薄壁の厚さの実質的に2倍である、請求項9記載の1以上の反応チャンバー。
【請求項11】
基材が標準的な顕微鏡用スライドと同じ寸法である、請求項1記載の1以上の反応チャンバー。
【請求項12】
基材が2個の反応領域を有していて、各々2個の反応領域の一方を含む独立した2つの反応チャンバーを形成する、請求項11記載の1以上の反応チャンバー。
【請求項13】
基材が4個の反応領域を有していて、各々4個の反応領域の1つを含む独立した4つの反応チャンバーを形成する、請求項11記載の1以上の反応チャンバー。
【請求項14】
基材が8個の反応領域を有していて、各々8個の反応領域の1つを含む独立した8つの反応チャンバーを形成する、請求項11記載の1以上の反応チャンバー。
【請求項15】
基材が16個の反応領域を有していて、各々16個の反応領域の1つを含む独立した16個の反応チャンバーを形成する、請求項11記載の1以上の反応チャンバー。
【請求項16】
基材が標準的なマイクロタイタープレートと同じ寸法である、請求項1記載の1以上の反応チャンバー。
【請求項17】
基材が96個の反応領域を有していて、各々96個の反応領域の1つを含む独立した96個の反応チャンバーを96ウェルプレートのパターン及び寸法で形成する、請求項11記載の1以上の反応チャンバー。
【請求項18】
1以上の反応領域の各々が、低分子、生体分子、細胞及び組織試料から選択される物質のマイクロアレイを含む、請求項1記載の1以上の反応チャンバー。
【請求項19】
前記生体分子がタンパク質、核酸及び多糖類から選択される、請求項18記載の1以上の反応チャンバー。
【請求項20】
接着層が両面接着剤である、請求項1記載の1以上の反応チャンバー。
【請求項21】
前記両面接着剤が感圧性である、請求項20記載の1以上の反応チャンバー。
【請求項22】
前記ケースの底部フランジの上面又は基材の第2の面の前記1以上の物質のマイクロアレイ以外の領域に識別標識をさらに含む、請求項1記載の1以上の反応チャンバー。
【請求項23】
前記識別標識がバーコードである、請求項22記載の1以上の反応チャンバー。
【請求項24】
(a)請求項1記載の反応チャンバーと(b)上部封止ストリップとを備える反応システム。
【請求項25】
(a)請求項2記載の反応チャンバーと(b)小ポート用の封止プラグとを備える反応システム。
【請求項26】
1以上の反応チャンバーを製造する方法であって、
(a)第1の面と第2の面を有し、第1の面に1以上の反応領域を含む基材を用意する工程と、
(b)1以上の穿孔を有する接着層を用意する工程と、
(c)1以上の閉じた壁構造と平坦な底部フランジとを有するケースであって、壁構造の各々が底部開口と各底部開口に対向する上端部とを画成し、上端部の各々が上部開口を有するケースを用意する工程と、
(d)1以上の底部開口が1以上の穿孔と整列するように、ケースを接着層の第1の面に接着する工程と、
(e)1以上の反応領域が1以上の穿孔と整列して1以上の反応チャンバーを個々に形成するように、基材の第1の面を接着層の第2の面に接着させる工程
を含んでなる方法。
【請求項27】
物質のマイクロアレイのスクリーニング方法であって、
(a)反応領域の各々がマイクロアレイを含む請求項26記載の1以上の反応チャンバーを用意する工程と、
(b)反応チャンバー内で物質のマイクロアレイを処理し、物質のマイクロアレイの1以上の所望の特性を得る工程と、
(c)物質のマイクロアレイをスキャンし、特性を同定する工程
を含んでなる方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2008−525805(P2008−525805A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548524(P2007−548524)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/046798
【国際公開番号】WO2006/069314
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(597064713)ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・アクチボラグ (109)
【Fターム(参考)】