説明

反応性芳香族スルホン酸塩及びその製造方法

【課題】
反応性芳香族スルホン酸塩、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
下記一般式(1)で示される反応性芳香族スルホン酸塩。
【化1】


(上記一般式(1)中、Rは水素原子又は下記一般式(2)で示される基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は下記一般式(2)で示される基を表し、Mはアルカリ金属原子又はアンモニウムを表し、m、n、pは各々独立して1〜20の整数を表し、xは0〜3の整数を表す。)
【化2】


(上記一般式(2)中、Mはアルカリ金属原子又はアンモニウムを表し、pは1〜20の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分子内にポリアルキレンポリアミノ基を有する反応性芳香族スルホン酸塩及びその製造方法に関する。本発明の反応性芳香族スルホン酸塩は反応性界面活性剤として特に有用である。
【背景技術】
【0002】
洗浄剤、界面活性剤をはじめとする各種用途向けの中間原料として、N−メチルタウリン、2−(2−アミノエチル)アミノエタンスルホン酸塩(例えば、特許文献1参照)、二重結合を有するアルキル系スルホン酸塩(例えば、特許文献2参照)等が知られている。一方、反応性の芳香族スルホン酸塩として、スルホフタル酸塩(例えば、特許文献3参照)、スルファミン酸塩(例えば、特許文献4参照)等が知られている。
【0003】
上記したような従来の反応性芳香族スルホン酸塩は、対象化合物との反応性が必ずしも十分はでないという問題がある。例えば、スルホフタル酸塩は反応性が低いため、高温で反応させる必要がある。また、スルファミン酸塩の芳香族アミノ基は脂肪族アミノ基に比べ反応性は劣る。
【0004】
また、これまでの反応性芳香族スルホン酸塩では反応によっては分子設計上制約を受ける場合があり、必ずしも多種多様な反応において十分に対応できないという問題がある。
【0005】
【特許文献1】カナダ国特許第928323号公報
【特許文献2】特開平11−71340号公報
【特許文献3】特開平10−110021号公報
【特許文献4】特開昭56−38316号公報(実施例5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、種々の反応への適用がが期待される新規反応性芳香族スルホン酸塩、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するため、ポリマー等への導入を容易とするべく、反応性の高い脂肪族アミノ基を分子中に複数含有する反応性芳香族スルホン酸塩について鋭意検討を重ねた結果、本発明の反応性芳香族スルホン酸塩及びその製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、以下に示すとおりの反応性芳香族スルホン酸塩及びその製造方法である。
【0009】
[1]下記一般式(1)で示される反応性芳香族スルホン酸塩。
【0010】
【化1】

(上記一般式(1)中、Rは水素原子又は下記一般式(2)で示される基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は下記一般式(2)で示される基を表し、Mはアルカリ金属原子又はアンモニウムを表し、m、n、pは各々独立して1〜20の整数を表し、xは0〜3の整数を表す。)
【0011】
【化2】

(上記一般式(2)中、Mはアルカリ金属原子又はアンモニウムを表し、pは1〜20の整数を表す。)。
【0012】
[2]下記一般式(3)で示される反応性芳香族スルホン酸塩。
【0013】
【化3】

(上記一般式(3)中、Rは水素原子又は下記一般式(2)で示される基を表し、Mはアルカリ金属原子又はアンモニウムを表し、nは1〜8の数を表す。)
【0014】
【化4】

(上記一般式(4)中、Mはアルカリ金属原子又はアンモニウムを表す。)。
【0015】
[3]下記一般式(5)で示されるハロアルキルベンゼンスルホン酸塩と、下記一般式(6)で示されるポリアルキレンポリアミンを反応させることを特徴とする上記[1]に記載の反応性芳香族スルホン酸塩の製造方法。
【0016】
【化5】

(上記一般式(5)中、Xはハロゲン原子を表し、Mはアルカリ金属原子又はアンモニウムを表し、pは1〜20の整数を表す。)
【0017】
【化6】

(上記一般式(6)中、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、m、nは各々独立して1〜20の整数を表し、xは0〜3の整数を表す。)。
【0018】
[4]下記一般式(7)で示される2−ハロアルキルベンゼンスルホン酸塩と、下記一般式(8)で示されるアルキレンジアミンを反応させることを特徴とする上記[2]に記載の反応性芳香族スルホン酸塩の製造方法。
【0019】
【化7】

(上記一般式(7)中、Xはハロゲン原子を表し、Mはアルカリ金属原子又はアンモニウムを表す。)
【0020】
【化8】

(上記一般式(8)中、nは1〜8の整数を表す。)。
【0021】
[5]上記一般式(5)又は一般式(7)で示される2−ハロアルキルベンゼンスルホン酸塩が、4−(2−クロロエチル)ベンゼンスルホン酸塩、4−(2−ブロモエチル)ベンゼンスルホン酸塩及び4−(2−ヨードエチル)ベンゼンスルホン酸塩からなる群より選択される化合物であることを特徴とする上記[3]又は[4]に記載の反応性芳香族スルホン酸塩の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、分子内にポリアルキレンポリアミノ基を有する反応性芳香族スルホン酸塩、及びその製造方法が提供される。
【0023】
本発明の反応性芳香族スルホン酸塩は、分子内にスルホン酸塩基及び高反応性の脂肪族アミノ基を2個以上有するため、当該反応性芳香族スルホン酸塩を用いることにより、親水性の付与、ポリマー等分子の鎖延長等が可能となる。
【0024】
また、本発明の反応性芳香族スルホン酸塩は、高反応性の脂肪族アミノ基として、分子内にポリアルキレンポリアミノ基を有するため、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、ヒドロキシル基、イソシアネート基といった官能基を利用した重付加反応又は重縮合反応においてこれら各反応性官能基の反応性を高めることができ、分子設計上極めて有用である。
【0025】
さらに、本発明の製造方法は、簡便な方法により、種々の反応性芳香族スルホン酸塩を製造できるので、工業上極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0027】
本発明の反応性芳香族スルホン酸塩は上記一般式(1)で示される化合物である。
【0028】
上記一般式(1)中、Rは水素原子又は上記一般式(2)で示される基を表す。Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又は上記一般式(2)で示される基を表す。Mはアルカリ金属原子又はアンモニウムを表す。m、n、pは各々独立して1〜20の整数を表し、好ましくは1〜8の整数である。xは0〜3の整数を表し、好ましくは0又は1である。ここで、上記一般式(2)中のMはアルカリ金属原子又はアンモニウムを表す。pは1〜20の整数を表し、好ましくは1〜8の整数である。
【0029】
本発明の反応性芳香族スルホン酸塩としては上記一般式(3)で示される化合物が好ましい。上記一般式(3)中、Rは水素原子、又は上記一般式(4)で示される基であり、Mはアルカリ金属原子又はアンモニウム、nは1〜8の整数である。ここで、上記一般式(4)中のMはアルカリ金属原子又はアンモニウムを表す。
【0030】
本発明において、上記Mのアルカリ金属原子としては、特に限定するものではないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。また、上記Mのアンモニウムとしては特に限定するものではないが、例えば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、エタノールアミン、メチルエタノールアミン、エチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等から誘導されるアンモニウムが挙げられる。
【0031】
上記一般式(1)中のm、n、p、上記一般式(2)中のp、上記一般式(3)中のnは各々独立して1〜20の整数を表すが、好ましくは1〜8の整数であり、対応するアルキレン基として、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が例示される。
【0032】
次に、本発明の反応性芳香族スルホン酸塩の製造方法について説明する。
【0033】
本発明の上記一般式(1)で示される反応性芳香族スルホン酸塩の製造方法としては、従来公知の各種方法を採ることができ、特に限定するものではないが、例えば、上記一般式(5)で示されるハロアルキルベンゼンスルホン酸塩と、上記一般式(6)で示されるポリアルキレンポリアミンを反応させることにより簡便に製造することができる(下記一般式(9)参照)。
【0034】
【化9】

(上記一般式(9)中、Rは水素原子又は上記一般式(2)で示される基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を表し、Mはアルカリ金属原子又はアンモニウムを表し、m、n、pは各々独立して1〜20の整数を表し、xは0〜3の整数を表す。)
また、本発明の上記一般式(3)で示される反応性芳香族スルホン酸塩の製造方法としては、従来公知の各種方法を採ることができ、特に限定するものではないが、例えば、上記一般式(7)で示される2−ハロアルキルベンゼンスルホン酸塩と、上記一般式(8)で示されるアルキレンジアミンを反応させることにより簡便に製造することができる。
【0035】
上記一般式(5)又は一般式(7)中、Xはハロゲン原子であり、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。また、Mはアルカリ金属原子又はアンモニウムであり、上記一般式(1)又は一般式(3)と同様のものが例示され、これらのカチオン種は反応後に交換することも可能である。
【0036】
上記一般式(5)で示されるハロアルキルベンゼンスルホン酸塩としては、調製品又は市販品を使用することができ、特に限定するものではないが、具体的には、p=1の化合物としては、例えば、4−(2−クロロメチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4−(2−ブロモメチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4−(2−ヨードメチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、3−(2−クロロメチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、3−(2−ブロモメチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、3−(2−ヨードメチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4−(2−クロロメチル)ベンゼンスルホン酸カリウム、4−(2−ブロモメチル)ベンゼンスルホン酸カリウム、4−(2−ヨードメチル)ベンゼンスルホン酸カリウム、4−(2−クロロメチル)ベンゼンスルホン酸アンモニウム、4−(2−ブロモメチル)ベンゼンスルホン酸アンモニウム、4−(2−ヨードメチル)ベンゼンスルホン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0037】
また、p=2の化合物(すなわち、上記一般式(7)で示される2−ハロアルキルベンゼンスルホン酸塩)としては、例えば、4−(2−クロロエチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4−(2−ブロモエチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4−(2−ヨードエチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、3−(2−クロロエチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、3−(2−ブロモエチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、3−(2−ヨードエチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4−(2−クロロエチル)ベンゼンスルホン酸カリウム、4−(2−ブロモエチル)ベンゼンスルホン酸カリウム、4−(2−ヨードエチル)ベンゼンスルホン酸カリウム、4−(2−クロロエチル)ベンゼンスルホン酸アンモニウム、4−(2−ブロモエチル)ベンゼンスルホン酸アンモニウム、4−(2−ヨードエチル)ベンゼンスルホン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0038】
また、p=3の化合物としては、例えば、4−(2−クロロプロピル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4−(2−ブロモプロピル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4−(2−ヨードプロピル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、3−(2−クロロプロピル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、3−(2−ブロモプロピル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、3−(2−ヨードプロピル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4−(2−クロロプロピル)ベンゼンスルホン酸カリウム、4−(2−ブロモプロピル)ベンゼンスルホン酸カリウム、4−(2−ヨードプロピル)ベンゼンスルホン酸カリウム、4−(2−クロロプロピル)ベンゼンスルホン酸アンモニウム、4−(2−ブロモプロピル)ベンゼンスルホン酸アンモニウム、4−(2−ヨードプロピル)ベンゼンスルホン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0039】
また、p=4の化合物としては、例えば、4−(2−クロロブチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4−(2−ブロモブチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4−(2−ヨードブチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、3−(2−クロロブチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、3−(2−ブロモブチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、3−(2−ヨードブチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4−(2−クロロブチル)ベンゼンスルホン酸カリウム、4−(2−ブロモブチル)ベンゼンスルホン酸カリウム、4−(2−ヨードブチル)ベンゼンスルホン酸カリウム、4−(2−クロロブチル)ベンゼンスルホン酸アンモニウム、4−(2−ブロモブチル)ベンゼンスルホン酸アンモニウム、4−(2−ヨードブチル)ベンゼンスルホン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0040】
また、p=5の化合物としては、例えば、4−(2−クロロペンチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4−(2−ブロモペンチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4−(2−ヨードペンチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、3−(2−クロロペンチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、3−(2−ブロモペンチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、3−(2−ヨードペンチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4−(2−クロロペンチル)ベンゼンスルホン酸カリウム、4−(2−ブロモペンチル)ベンゼンスルホン酸カリウム、4−(2−ヨードペンチル)ベンゼンスルホン酸カリウム、4−(2−クロロペンチル)ベンゼンスルホン酸アンモニウム、4−(2−ブロモペンチル)ベンゼンスルホン酸アンモニウム、4−(2−ヨードペンチル)ベンゼンスルホン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0041】
また、p=6の化合物としては、例えば、4−(2−クロロヘキシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4−(2−ブロモヘキシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4−(2−ヨードヘキシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、3−(2−クロロヘキシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、3−(2−ブロモヘキシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、3−(2−ヨードヘキシル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、4−(2−クロロヘキシル)ベンゼンスルホン酸カリウム、4−(2−ブロモヘキシル)ベンゼンスルホン酸カリウム、4−(2−ヨードヘキシル)ベンゼンスルホン酸カリウム、4−(2−クロロヘキシル)ベンゼンスルホン酸アンモニウム、4−(2−ブロモヘキシル)ベンゼンスルホン酸アンモニウム、4−(2−ヨードヘキシル)ベンゼンスルホン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0042】
上記一般式(6)中のnは、上記一般式(1)と同様、1〜20の整数、好ましくは1〜8の整数であり、xは0〜3の整数、好ましくは0又は1である。また、上記一般式(8)中のnは、上記一般式(3)と同様、1〜20の整数、好ましくは1〜8の整数である。
【0043】
上記一般式(6)で示されるポリアルキレンポリアミンとしては、調製品又は市販品を使用することができ、特に限定するものではないが、例えば、上記一般式(8)で示されるアルキレンジアミン類、ジアルキレントリアミン類等が好適なものとして挙げられる。このようなポリアルキレンポリアミンとして、具体的には、メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン類、ジメチレントリアミン、ジエチレントリアミン、ビス(3−アミノプロピル)アミン、ビス(4−アミノブチル)アミン、ビス(5−アミノヘプチル)アミン、ビス(6−アミノヘキシル)アミン等のジアルキレントリアミン等が例示される。
【0044】
ここで、上記一般式(5)で示されるハロアルキルベンゼンスルホン酸塩と、上記一般式(6)で示されるポリアルキレンポリアミンによる上記一般式(1)で示される反応性芳香族スルホン酸塩の具体的な製造方法について以下に説明する。
【0045】
反応溶媒としては、特に限定するものではないが、例えば、水、又はメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール等のアルコール類が好適なものとして挙げられる。これらは各々単独で用いても、二種以上組み合わせても良い。また、基質濃度に関しても特に限定するものではないが、通常5〜70重量%、好ましくは10〜50重量%の範囲である。
【0046】
反応温度は、通常20〜200℃、好ましくは50〜150℃の範囲であり、大気圧下で反応させても良いし、オートクレーブを用いて加圧条件で反応させても良い。反応時間は反応温度、基質濃度、上記一般式(5)で示されるハロゲン化アルキルベンゼンスルホン酸塩のハロゲン種等の条件により異なるが、通常5分〜24時間である。
【0047】
本反応においてはハロゲン化水素が副生し、これが反応部位のアミノ基に配位する。これを除去するために、通常、アルカリ金属水酸化物、3級アミン化合物等で中和してハロゲン塩として分離する方法が採られる。アルカリ金属水酸化物としては特に限定はないが、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、得ようとする反応性芳香族スルホン酸塩と同種の金属種を用いることが好ましい。また、3級アミン化合物としては特に限定はないが、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等が挙げられる。
【0048】
ここで、生成した反応性芳香族スルホン酸塩と副生するハロゲン塩を分離する方法については、特に制限はなく種々の方法が採られる。例えば、2−ハロエチルベンゼンスルホン酸ナトリウムとアルキレンジアミンを反応させる場合、水溶媒中で反応させ、アルキレンジアミノ−2,2’−ビス(4−エチルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を製造する場合、副生するHBrと等モルのNaOHを添加しNaBrとし、その後水を除去し、メタノールで洗浄することによりNaBrが溶解除去され、目的物を結晶で取得できる。
【実施例】
【0049】
以下、調製例、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0050】
調製例1:4−(2−ブロモエチル)ベンゼンスルホン酸塩の調製
撹拌機、温度計、滴下ロート、冷却管を備えた500mlフラスコにおいて、2−ブロモエチルベンゼン100.0g(0.54モル)、エチレンジクロライド220.0g、酢酸2.5g(0.042モル)を仕込んだ。次に、40〜45℃に保ちながら滴下ロートより無水硫酸49.7g(0.62モル)を90分かけて滴下した。滴下終了後、45℃にて60分熟成を行った。反応終了後、水を反応液中に滴下し、分液、エチレンジクロライド相と水相に分離し、水相をエバポレーターで70℃、30分し揮発分を除去し、濃度70%の4−(2−ブロモエチル)ベンゼンスルホン酸194gを得た。
【0051】
次に、撹拌機、温度計、滴下ロート、冷却管を備えた500mlフラスコに、上記4−(2−ブロモエチル)ベンゼンスルホン酸の70%溶液170.4g(0.45モル)と水を仕込み、氷冷(10℃)しながら、48%−NaOH43.1g(0.52モル)を60分かけて供給し、滴下終了後、さらに60分熟成を行った。反応終了後、ろ過により結晶を回収、80℃で乾燥させて、4−(2−ブロモエチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム105.9gを得た。
【0052】
実施例1:エチレンジアミノ−2,2’−ビス(4−エチルベンゼンスルホン酸ナトリウム)の調製
撹拌機、温度計、冷却管を備えた500mlフラスコにおいて、4−(2−ブロモエチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム88.1g(0.30モル)を水300gに溶解させ、これにエチレンジアミン9.0g(0.15モル)を添加してから、90℃に昇温、5時間反応を行った。反応の進行により、エチレンジアミノ−2,2’−ビス(エチルベンゼンスルホン酸ナトリウム)のHBr付加塩が析出した。反応後室温付近に冷却し、48%−NaOH水溶液29.0g(0.30モル)を10分で添加し、30分間撹拌した。ここで、NaOHの添加により反応液は均一に溶解した。その後、反応液より水をエバポレーター(50℃)で除去し、これにメタノール300mlを加え10分間撹拌した。さらに、この混合液を吸引ろ過し、結晶を分離、80℃で乾燥を行い、下記式(10)で示されるエチレンジアミノ−2,2’−ビス(エチルベンゼンスルホン酸ナトリウム)58.1g(収率82.1%)を得た。なお、生成物の確認はH−NMRにより行った。
【0053】
【化10】

実施例2:2−(2’−アミノエチル)−(4−アミノエチルベンゼンスルホン酸ナトリウム)の調製
エチレンジアミンを36.0g(0.60モル)用いた以外は実施例1と同様の反応を行った。なお、実施例1とは異なりHBr付加塩の析出は見られなかった。反応後、48%NaOH水溶液29.0g(0.30モル)を添加、撹拌後、水を留去した。次に、メタノール/エタノールの1/1(体積比)混合液400mlを加え10分間撹拌した。その後、吸引ろ過し、結晶を分離、80℃で乾燥を行い、下記式(11)で示される2−(2’−アミノエチル)−(4−アミノエチルベンゼンスルホン酸ナトリウム)40.7g(収率51.0%)を得た。なお、生成物の確認はH−NMRにより行った。
【0054】
【化11】

実施例3:エチレンジアミノ−2,2’−ビス(4−エチルベンゼンスルホン酸カリウム)の調製
4−(2−ブロモエチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウムの代わりに4−(2−ヨードエチル)ベンゼンスルホン酸カリウム117.3g(0.30モル)を用いた以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。反応後、48%KOH水溶液35.1g(0.30モル)を添加、撹拌後、水を留去した。その後、反応液を反応器より取り出し、水をエバポレーター(50℃)で除去し、これにメタノール300mlを加えしばらく撹拌した。さらに、この混合液を吸引ろ過し、結晶を分離、80℃で乾燥を行い、下記式(12)で示されるエチレンジアミノ−2,2’−ビス(4−エチルベンゼンスルホン酸カリウム)53.9g(収率71.3%)を得た。
【0055】
【化12】

実施例4:ヘキサメチレンジアミノ−2,2’−ビス(4−エチルベンゼンスルホン酸ナトリウム)の調製
エチレンジアミンの代わりにヘキサメチレンジアミン17.4g(0.15モル)を用いた以外は実施例1と同様の方法ですべての操作を行い、下記式(13)で示されるヘキサメチレンジアミノ−2,2’−ビス(4−エチルベンゼンスルホン酸ナトリウム)67.6g(収率85.4%)を得た。
【0056】
【化13】

実施例5:下記式(14)で示される化合物の調製
撹拌機、温度計、冷却管を備えた500mlフラスコにおいて、4−(2−ブロモエチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム88.1g(0.30モル)を水300gに溶解させ、これにジエチレントリアミン10.3g(0.10モル)を添加してから、90℃に昇温、5時間反応を行った。反応の進行により、下記式(14)で示される化合物のHBr(3モル)付加塩が析出した。反応後室温付近に冷却し、48%−NaOH水溶液29.0g(0.30モル)を10分で添加し、30分間撹拌した。ここで、NaOHの添加により反応液は均一に溶解した。その後、反応液より水をエバポレーター(50℃)で除去し、これにメタノール300mlを加え10分間撹拌した。さらに、この混合液を吸引ろ過し、結晶を分離、80℃で乾燥を行い、下記式(14)で示される化合物62.5g(収率86.7%)を得た。なお、生成物の確認はH−NMRにより行った。
【0057】
【化14】

実施例6:下記式(15)で示される化合物の調製
ジエチレントリアミンを15.5g(0.15モル)用いた以外は実施例5と同様の反応を行った。反応後、48%NaOH水溶液29.0g(0.30モル)を添加、撹拌後、水を留去した。次に、メタノール300mlを加え10分間撹拌した。その後、吸引ろ過し、結晶を分離、80℃で乾燥を行い、下記式(15)で示される化合物62.3g(収率80.6%)を得た。なお、生成物の確認はH−NMRにより行った。
【0058】
【化15】

実施例7:下記式(16)で示される化合物の調製
4−(2−ブロモエチル)ベンゼンスルホン酸ナトリウムの代わりに4−(2−ヨードエチル)ベンゼンスルホン酸カリウム117.3g(0.30モル)を用いた以外は実施例5と同様の方法で反応を行った。反応後、48%KOH水溶液35.1g(0.30モル)を添加、撹拌後、水を留去した。その後、反応液を反応器より取り出し、水をエバポレーター(50℃)で除去し、これにメタノール300mlを加えしばらく撹拌した。さらに、この混合液を吸引ろ過し、結晶を分離、80℃で乾燥を行い、下記式(16)で示される化合物53.9g(収率80.6%)を得た。
【0059】
【化16】

実施例8:下記一般式(17)で示される化合物の調製
ジエチレントリアミンの代わりにビス(3−アミノプロピル)アミン13.1g(0.10モル)を用いた以外は実施例5と同様の方法ですべての操作を行い、下記式(17)で示される化合物55.5g(収率74.1%)を得た。
【0060】
【化17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される反応性芳香族スルホン酸塩。
【化1】

(上記一般式(1)中、Rは水素原子又は下記一般式(2)で示される基を表し、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は下記一般式(2)で示される基を表し、Mはアルカリ金属原子又はアンモニウムを表し、m、n、pは各々独立して1〜20の整数を表し、xは0〜3の整数を表す。)
【化2】

(上記一般式(2)中、Mはアルカリ金属原子又はアンモニウムを表し、pは1〜20の整数を表す。)
【請求項2】
下記一般式(3)で示される反応性芳香族スルホン酸塩。
【化3】

(上記一般式(3)中、Rは水素原子又は下記一般式(2)で示される基を表し、Mはアルカリ金属原子又はアンモニウムを表し、nは1〜20の数を表す。)
【化4】

(上記一般式(4)中、Mはアルカリ金属原子又はアンモニウムを表す。)
【請求項3】
下記一般式(5)で示されるハロアルキルベンゼンスルホン酸塩と、下記一般式(6)で示されるポリアルキレンポリアミンを反応させることを特徴とする請求項1に記載の反応性芳香族スルホン酸塩の製造方法。
【化5】

(上記一般式(5)中、Xはハロゲン原子を表し、Mはアルカリ金属原子又はアンモニウムを表し、pは1〜20の整数を表す。)
【化6】

(上記一般式(6)中、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、m、nは各々独立して1〜20の整数を表し、xは0〜3の整数を表す。)
【請求項4】
下記一般式(7)で示される2−ハロアルキルベンゼンスルホン酸塩と、下記一般式(8)で示されるアルキレンジアミンを反応させることを特徴とする請求項2に記載の反応性芳香族スルホン酸塩の製造方法。
【化7】

(上記一般式(7)中、Xはハロゲン原子を表し、Mはアルカリ金属原子又はアンモニウムを表す。)
【化8】

(上記一般式(8)中、nは1〜8の整数を表す。)
【請求項5】
一般式(5)又は一般式(7)で示される2−ハロアルキルベンゼンスルホン酸塩が、4−(2−クロロエチル)ベンゼンスルホン酸塩、4−(2−ブロモエチル)ベンゼンスルホン酸塩及び4−(2−ヨードエチル)ベンゼンスルホン酸塩からなる群より選択される化合物であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の反応性芳香族スルホン酸塩の製造方法。

【公開番号】特開2008−13524(P2008−13524A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−188685(P2006−188685)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】