説明

反芻動物用栄養補助食品組成物、その製造方法、および、その使用方法

本発明は、栄養補助食品組成物、該栄養補助食品組成物を含む食料品(例えば動物用飼料)、およびその利用方法に関する。本発明は特に、特定の窒素および/またはアミノ酸特性を有し、粒子サイズが小さい反芻動物用栄養補助食品組成物(例えば、抽出タンパク質(細菌性抽出物または酵母エキス等の粗タンパク質)を含む反芻動物用栄養補助食品組成物)および、その製造方法を提供する。さらに、本発明は(例えば、液体または乾燥体の栄養補助食品組成物として、または、反芻動物のタンパク質およびアミノ酸の吸収を増加させる食料品(例えば動物用飼料)の成分として)、該栄養補助食品組成物を含む組成物およびその使用方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2010年2月15日に出願された米国仮特許出願第61/304,739号に基づく利益を享受するものであり、その内容全体を参照することにより含むものである。
【0002】
本発明は、栄養補助食品組成物、該栄養補助食品組成物を含む食物(例えば動物用飼料)、および、その利用方法に関する。本発明は特に、特定の窒素および/またはアミノ酸特性を有し、粒子サイズが小さい反芻動物用栄養補助食品組成物(例えば、抽出タンパク質(細菌性抽出物または酵母エキス等の粗タンパク質)を含む反芻動物用栄養補助食品組成物)、およびその製造方法を提供する。さらに、本発明は(例えば、液体または乾燥体の栄養補助食品組成物として、または反芻動物のタンパク質およびアミノ酸の吸収を増加させる食料品(例えば動物用飼料)の成分として)、該栄養補助食品組成物を含む組成物およびその使用方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
維持や生産の為に、乳牛は腸から吸収されるアミノ酸(AA)の状態の窒素(N)を必要とする。腸吸収アミノ酸は、2つの供給源から反芻動物に供給される。そのひとつは、第一胃での微生物成長によって生じる微生物タンパク質である。第一胃微生物が成長するためには、発酵可能な糖質および第一胃で分解可能な飼料タンパク質(rumen−degradable feed protein;RDP)が必要となる。第一胃微生物はアミノ酸を吸収可能であり、かつ、第一胃でのアミノ酸分解によって生成されるアンモニア窒素からアミノ酸を合成できるので、飼料には、RDPを純タンパク質状態と非タンパク性窒素(NPN)状態とのどちらか、または両方の状態で供給してもよい。第一胃で合成された微生物タンパク質は消化性が高く、また、アミノ酸特性も優れているので、微生物タンパク質からは高品位な腸吸収アミノ酸が得られる。もうひとつの腸吸収アミノ酸の供給源は、第一胃非分解性飼料タンパク質(RUP)である。RUPはルーメン発酵を免れる、飼料から得られる純タンパク質からなり、第一胃を通過後に消化され、その成分アミノ酸は腸で吸収される。
【0004】
反芻動物のタンパク質栄養補充の目的は、望ましいレベルの生産性を可能にする適切な量および種類のRDPやRUPを与えつつも、食物中の窒素の総量を最小化する飼料の組み合わせを反芻動物に与えることにある。よって、反芻動物の栄養学者達は高品質な微生物タンパク質の第一胃での合成を最大化する事に焦点を当てているが、第一胃での微生物増殖には上限があり、十分な乳汁生産レベルを実現するためには、適切なアミノ酸特性をもたらす消化しやすいRUPを食事によって乳牛に与えなくてはならない。
【0005】
反芻動物の栄養学者達は、様々な飼料や、一般に第一胃内保護タンパク質(ruminally protected protein)と呼ばれる市販のRUPを用いて、乳牛に与えるRDPおよびRUPを最適化する試みを続けている。市販の第一胃内保護タンパク質としては、物理的および/または化学的処理によって第一胃での分解から保護された動物性および植物性のタンパク質や、単一アミノ酸が挙げられる。文献として、第一胃内保護タンパク質源の開発や評価に関する多数の出版物が挙げられる。飼料によって供給される窒素の総量を最低限に抑えながら、反芻動物の生産性を向上させるために、第一胃内保護タンパク質源を供給することは達成困難である。Santos et al.(1998)やIpharraguerre and Clark(2005)による研究は、乳牛の生産性を高めるために、第一胃内保護タンパク質源を供給する事が如何に困難かを示している。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、栄養補助食品組成物、該栄養補助食品組成物を含む食料品(例えば動物用飼料)、および、その利用方法に関する。本発明は特に、特定の窒素および/またはアミノ酸特性を有し、粒子サイズが小さい反芻動物用栄養補助食品組成物(例えば、抽出タンパク質(細菌性抽出物または酵母エキス等の粗タンパク質)を含む反芻動物用栄養補助食品組成物)、およびその製造方法を提供する。さらに、本発明は、(例えば、液体または乾燥体の栄養補助食品組成物として、または反芻動物のタンパク質およびアミノ酸の吸収を増加させる食料品(例えば動物用飼料)の成分として)該栄養補助食品組成物を含む組成物およびその使用方法を提供する。
【0007】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明は、タンパク質成分(例えば、全酵母および/または抽出タンパク質(例えば、(粒径が1〜2mm、0.5〜1mm、0.25〜0.5mm、125〜250μm、62.5〜125μm、3.9〜62.5μm、またはそれらより小さい)微粒子物質として生成された(特定の窒素および/またはアミノ酸特性を有する)酵母性、細菌性、および/または菌性の抽出タンパク質等の)抽出粗タンパク質))を含む栄養補助食品組成物を提供する。望ましい実施形態では、本発明の栄養補助食品組成物は、粒径が約125〜250μm前後または62.5〜125μm前後の微粒子物質として生成される。いくつかの実施形態において、上記栄養補助食品組成物は、約5〜10%の窒素および30〜60%の粗タンパク質を含む。望ましい実施形態では、上記栄養補助食品組成物は、乾燥物質換算で、6.5〜7.8%の窒素および40〜50%の粗タンパク質を含む。さらに望ましい実施形態では、上記栄養補助食品組成物は、乾燥物質換算で、約7%の窒素および約45.3%の粗タンパク質を含む。いくつかの実施形態において、上記粗タンパク質は、可溶性画分および不溶性画分の両方を含む。例えば、いくつかの実施形態において、上記粗タンパク質は、約25〜60%の可溶性タンパク質および40〜75%の不溶性タンパク質を含む。いくつかの実施形態において、上記粗タンパク質は、約36〜46%の可溶性タンパク質および約53〜63%の不溶性タンパク質を含む。いくつかの実施形態において、上記粗タンパク質は、約40〜45%の可溶性タンパク質および約55〜60%の不溶性タンパク質を含む。いくつかの実施形態において、上記粗タンパク質は、約42%の可溶性タンパク質および約58%の不溶性タンパク質を含む。いくつかの実施形態において、上記栄養補助食品組成物は、乾燥物質換算で、約0.5%から約1.5%のアンモニアを含む。いくつかの実施形態において、上記栄養補助食品組成物は、表1または表2に示すアミノ酸特性を有するタンパク質成分(例えば抽出タンパク質)を含む。本発明は、上記タンパク質成分の特定のアミノ酸特性に限定されない。いくつかの実施形態において、本発明の栄養補助食品組成物のタンパク質成分の上記アミノ酸特性は、表1または表2に示す割合で異なるアミノ酸を含み、そこから一定の割合(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10パーセントまたはそれ以上)を追加または差し引いた割合で含む。
【0008】
本発明は、上記栄養補助食品組成物の上記タンパク質成分(例えば全酵母および/または抽出タンパク質(例えば抽出粗タンパク質))の供給源に限定されない。いくつかの実施形態において、上記栄養補助食品組成物の上記タンパク質成分は、酵母細胞抽出物である。いくつかの実施形態において、上記栄養補助食品組成物の上記タンパク質成分は、全酵母である。いくつかの実施形態において、上記栄養補助食品組成物の上記タンパク質成分は、微生物細胞抽出物である。いくつかの実施形態において、上記栄養補助食品組成物の上記タンパク質成分は、藻類細胞抽出物である。細胞抽出物の生成方法は、本技術分野において公知のものである。いくつかの実施形態において、酵母細胞抽出物は、酵母を培養し、(例えば遠心分離を用いて)細胞内酵母成分から酵母細胞壁を分離し、そして酵母細胞壁物質を除去して酵母エキス(「酵母エキス」のみ)を取り出すことによって生成する。本発明は、特定種の酵母や酵母菌株に限定されない。例えば、この分野において公知の如何なる酵母および/または酵母菌株を、本発明における栄養補助食品組成物の供給源として用いることができ、サッカロミセス属、カンジダ属、クリベロミセス属、トルラスポラ属に属する酵母、および/またはそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。いくつかの実施形態において、上記酵母は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である。一旦タンパク質源(例えば全酵母および/または酵母、藻類または微生物の抽出物)が得られると、本発明の栄養補助食品組成物はそれから生成することができる。例えば、望ましい実施形態では、上記タンパク質源(例えば全酵母または抽出タンパク質(例えば酵母、藻類、または微生物の抽出物))を微粒化によって乾燥させる。望ましい実施形態では、所望の粒径(例えば0.100〜0.500mm、より好ましくは0.100〜0.250mmの粒径)の粒子を含む乾燥材料(例えば、乾燥全酵母または抽出タンパク質)が微粒化によって得られる。いくつかの実施形態において、所望の粒径の粒子を含む乾燥材料を生成するために、霧吹きノズルを選択する。本発明は、上記タンパク質源(例えば、全酵母または酵母、藻類または微生物の抽出物)を乾燥させるための方法に限定されない。実際には、凍結乾燥、噴霧乾燥、ドラム乾燥、流動床乾燥等の様々な方法を用いてもよいが、これらに限定されない。また、さらなる工程において所望のサイズ範囲の粒子を含む栄養補助食品組成物を生成してもよく、このようなさらなる工程として、上記乾燥タンパク質(例えば全酵母または酵母または微生物抽出物)に対する研削工程および/またはふるいがけ工程が挙げられるが、これらに限定されない。
【0009】
本発明は対象(例えば反芻動物(例えば、成体反芻動物))に栄養補助食品組成物を投与する方法に限定されない。実際には、本発明の栄養補助食品組成物は、様々な異なる方法により反芻動物に投与することができる。例えば、栄養補助食品組成物と経口摂取可能な飼料添加物とを混ぜ合わせることで、標準的な飼料に添加されるサプリメントまたはプレミックスを生成できる。いくつかの実施形態において、栄養補助食品組成物は標準的な飼料(例えば反芻動物用飼料)に直接添加される。例えば、栄養補助食品組成物は、培養液、培養液相当物、ペースト、凍結乾燥材料として標準的な飼料、または飼料添加物に添加することができる。いくつかの実施形態において、栄養補助食品組成物は、飼料に添加される(例えば、粒径が0.25〜0.5mm、0.125〜0.250mm、または0.0625〜0.125mmの、またはそれらの粒径前後の大きさの)微粒子物質として生成される。飼料に添加する前に、上記栄養補助食品組成物を担体に添加し、および/またはカプセルに入れてもよい。いくつかの実施形態において、(例えば微粒子物質として生成された)栄養補助食品組成物は(例えば当該組成を含む培養液を飼料にふりかけることによって、または乾燥粒子状の栄養補助食品組成物を飼料に添加することによって)動物用飼料に直接添加される。
【0010】
本発明は、飼料(例えばTMR(粗飼料と濃厚飼料とのバランスを考えて作られた混合飼料))に添加される栄養補助食品の量(例えば、重量/重量比率換算の量、体積/体積比率換算の量)に限定されない。いくつかの実施形態において、栄養補助食品組成物は、1日あたりの乾燥物質総摂取量の一部として、対象(例えば反芻動物(例えば乳牛))に投与される。例えば、いくつかの実施形態において、栄養補助食品組成物は、対象(例えば乳牛)の1日あたりの乾燥物質総摂取量の1.5%〜2.5%として対象に投与される。なお、投与される栄養補助食品組成物の量は、上記の量よりも例えば1.25%、1.0%、0.75%、0.5%、0.25%、またはそれ以下分少なくてもよく、2.75%、3%、3.25%、3.5%、4%、またはそれ以上分多くてもよい。望ましい実施形態では、栄養補助食品組成物は、対象(例えば乳牛)の1日あたりの乾燥物質総摂取量の1.5%〜2.5%として、対象に投与される。例えば、乳牛が1日あたり23kgの乾燥物質を消費する場合、栄養補助食品組成物の摂取量は345gから575gの間となる。
【0011】
栄養補助食品組成物は、あらゆる経口摂取可能な飼料に添加および/または混合される。そのような飼料としては、乾燥蒸留かす、ムラサキウマゴヤシ、トウモロコシの粗びき粉、柑橘類の粗びき粉、発酵残渣、カキ殻の粉末、アタパルガス粘土、小麦飼料、糖蜜可溶物、トウモロコシ穂軸の粗びき粉、食用植物質、焼いた剥き大豆の粉、大豆挽き飼料、抗生マイセリス(mycelis)、蛭石、粗びき大豆、粉砕石灰石等が挙げられるが、それらに限定されない。栄養補助食品組成物は、繊維質が少なく、可消化養分総量が多い、「濃縮物」のような標準的な飼料に添加される。この分類の飼料には、ひき割りトウモロコシ飼料、小麦ふすま、綿実粉、亜麻仁かす粉、コーングルテン飼料等の様々な穀物や高級副産物が含まれる。栄養補助食品組成物は、繊維質が多い粗飼料、または、粗飼料と濃縮飼料との混合物への添加にも有用である。
【0012】
いくつかの実施形態において、本発明は、栄養的にバランスの取れた食事によって家畜(例えば、反芻動物)を飼育する方法であって、家畜およびここに記載した栄養補助食品組成物を含む動物用飼料組成物を準備し、家畜特性(例えば、乳汁の生産および品質特性)が達成されるような(例えば、乳汁の品質および/または生産量が上記栄養補助食品組成物を与えられないコントロールよりも優れるような)条件下で、上記動物用飼料組成物を上記家畜に与える、ことを含む飼育方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明の栄養補助食品組成物を与えられた乳牛によって生産された牛乳は、本発明の栄養補助食品組成物を与えられていない乳牛によって生産された牛乳と比較して、賞味期限が長くなる。いくつかの実施形態において、本発明の栄養補助食品組成物を与えられた乳牛によって生産された牛乳は、本発明の栄養補助食品組成物を与えられていない乳牛によって生産された牛乳と比較して、乳脂肪および/またはタンパク質分泌物の量がより多い。このように、いくつかの実施形態において、本発明は、乳汁および/または乳汁成分の生産に関連するコストを低減する。いくつかの実施形態において、栄養補助食品組成物を飼料に入れることによって、反芻動物からの窒素排出を低減し、そして/または窒素効率を向上させる。
【0013】
本発明は、(例えば、タンパク質成分(例えば、全酵母細胞または抽出タンパク質(例えば、抽出粗タンパク質(例えば、特定の窒素および/またはアミノ酸特性を有する酵母、細菌性、および/または藻類抽出タンパク質))を含む)本発明の栄養補助食品組成物の微粒子物質を生成する方法に限定されない。実際には、様々な方法が利用でき、微粒化、機械研削、ふるいがけ、その他物質の粒径を小さくする本技術分野において、公知の方法等が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、材料から粒状物質(例えば、粒径が1〜2mm、0.5〜1mm、0.25〜0.5mm、100〜200μm、125〜250μm、62.5〜125μm、または3.9〜62.5μmの粒子)を生成可能な、本技術分野において公知のあらゆる方法を、(例えば、栄養補助食品組成物を生成するために)用いることができる。
【0014】
望ましい実施形態では、栄養補助食品組成物の粒径は、上記栄養補助食品組成物を含まない飼料または食料品に比べて、(例えば、反芻動物の第一胃液の流速で流れることによって)より多くの組成物がルーメン発酵を免れるような大きさである。
【0015】
いくつかの実施形態において、本発明は、家畜への給餌方法であって、以上および以下に記載のタンパク質の組成を含む動物用飼料を家畜に与えることを含む方法を提供する。他の実施形態において、上記家畜は乳牛または他の反芻動物である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明における栄養補助食品組成物の消化回避の例を示す。
【図2】本発明の実施形態の開発中に行われた研究において使用された食料の含有物および化学組成を示す。
【図3】本発明の実施形態の開発中に観察された栄養補助食品組成物(図中、“DEMP”と称す)のミルク生産物および血中代謝産物に対する効果を示す。
【図4】実施例2で使用された実験飼料の含有物を示す。
【図5】デアリランド研究所(ウィスコンシン州、アルカディア)によって行われた個々の含有物分析に基づき、実施例2で使用された実験飼料の栄養成分を示す。
【図6】デアリランド研究所(ウィスコンシン州、アルカディア)によって分析された、実施例2で使用された混合飼料(TMR)を示す。
【図7】本発明の栄養補助食品組成物を含む様々な実験飼料を利用した場合の、ミルク生産物およびミルク内容物を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔定義〕
本明細書では、「酵母」および「酵母細胞」という語は、菌類界に属する真核微生物であって、細胞壁、細胞膜、および、細胞内成分を有するものに関する。酵母は、特定の分類学的または系統発生的分類を形成しない。酵母として、現在、約1500種類が知られているが、これは全ての酵母の内およそ1%に過ぎないと見込まれている。「酵母」という語は、出芽酵母と同義語としてしばしば解釈されるが、子嚢菌類および担子菌類の両方に位置づけられることから、酵母の系統発生的多様性が伺える。出芽酵母(「真正酵母」)は、サッカロミセス目に分類される。いくつかの種の酵母は、二分裂によって増殖するが、ほとんどの種の酵母は無性生殖の出芽をもって増殖する。酵母は、単細胞である。ただし、仮性菌糸や偽菌糸として知られるように、いくつかの種の酵母は、一連の結合出芽性細胞の形成を通じて多細胞になる。酵母の大きさは種によって大きく異なり、典型的な大きさは直径が3〜4μmであるが、いくつかの酵母は40μmを超える大きさになる。
【0018】
本明細書では、「セレン濃縮酵母」や「セレン化酵母」という語は、無機セレニウム塩を含む培地で培養されたあらゆる酵母(例えば、サッカロミセス・セレビシエ)に関する。
【0019】
本明細書では、「w/w(重量/重量)」という語は、組成物中のある物質の重量換算量に関する。例えば、本発明の飼料用栄養補助食品を0.02%w/w含む動物用飼料とは、飼料用栄養補助食品の質量が、動物用飼料の全質量の0.02%であることを意味する(つまり、907,200グラムの動物用飼料中には、本発明の飼料用栄養補助食品組成物は200グラム含まれる)。
【0020】
本明細書では、「YCW」とも称される「酵母細胞壁」という語は、酵母の形質膜および細胞内成分を囲む酵母有機体の細胞壁に関する。酵母細胞壁はその外層(主にマンナン)と内層(主にグルカンおよびキチン)との両方を含む。細胞壁は、構造体を形成し、かつ、代謝的に活性な細胞質を保護する機能を有する。酵母細胞壁内では、信号伝達経路および認識経路が生じる。酵母細胞壁の組成は、株毎、又は、酵母の増殖条件によって異なる。
【0021】
本明細書では、「酵母細胞内成分」および「細胞内成分」という語は、細胞壁を除去することによって酵母有機体から抽出された細胞含有物に関する。
【0022】
本明細書では、「精製した」や「精製する」という語は、試料からの成分の除去に関する。例えば、酵母細胞壁または酵母細胞壁抽出物は、非酵母細胞壁成分(例えば、形質膜および/または酵母細胞内成分)を除去することによって精製され、また、酵母細胞壁以外の混入物質またはその他の物質を除去することによっても精製される。非酵母細胞壁成分および/または非酵母細胞壁混入物質の除去によって、試料中の酵母細胞壁または酵母細胞壁成分の割合が増加する。
【0023】
本明細書では、「消化する」という語は、食物、飼料、またはその他の有機化合物を、吸収されやすい状態に変換することに関し、熱や湿気、または化学作用によって軟化、分解、または細かくすることに関する。
【0024】
本明細書では、「消化器系」とは、消化が起こり得るまたは消化が起こる(胃腸系を含む)器官に関する。
【0025】
本明細書では、「飼料」という語は、動物に消費され、かつ、動物の食事にエネルギーおよび/または栄養素を与える物質に関する。飼料としては、例えば、混合飼料(TMR)、かいば、固形飼料、濃縮物、プレミックス、副産物、穀物、蒸留かす、糖蜜、食物繊維、まぐさ、草、干し草、穀粒、葉、粗びき粉、可溶性物質、および、栄養補助剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
本明細書では、「栄養補助食品」、「健康補助食品」、「栄養補助食品組成物」等の語は、食事の一部として利用される補助食品または栄養補助剤として開発された食品製品に関し、例えば、動物用飼料への添加物が挙げられる。ここでは、典型的な栄養補助食品組成物を記載する。
【0027】
本明細書では、「動物」という語は、動物界のものに関する。例えば、家畜(livestock)、耕作用の動物、家畜(domestic animals)、ペット動物、海生動物、淡水動物、および野生動物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
本明細書では、「有効量」とは、有益または望ましい結果をもたらすのに十分な組成物の量に関する。有効量は、1回または複数回に分けて、投与、塗布、または調剤によって施され、さらに/または他の物質と混合される。そして、特定の処方または投与経路に限定されることを意図しない。
【0029】
本明細書では、「消化する」という語は、食物、飼料、またはその他の有機化合物を、吸収されやすい状態に変換することに関し、熱や湿気、または化学作用によって軟化、分解、または細かくすることに関する。
【0030】
本明細書では、「消化器系」とは、消化が起こり得るまたは消化が起こる(胃腸系を含む)器官に関する。
【0031】
本明細書では、「投与」という語および「投与すること」という語句は、薬、プロドラッグ、またはその他の薬剤等の物質を対象に与えること、または治療上の処置を対象に施すことに関する。
【0032】
本明細書では、「細胞」という語は、生物の機能的独立ユニット(単細胞生物のように、例えば、酵母)として、または、全体として器官を形成し、特定の機能行うことに特化した、(植物や動物のような)多細胞生物のサブユニットとして存在する、自己増殖する自立ユニットに関する。細胞には、二つの異なる種類がある。原核細胞と真核細胞である。
【0033】
本明細書では、「真核生物」という語は、その細胞が細胞膜に包まれた複雑な構造により構成されている生物に関する。「真核生物」は、「原核生物」と区別することができる。「原核生物」という語は、細胞核またはその他の細胞膜に包まれた細胞小器官を有さない生物に関する。「真核生物」は、真核生物特有の特性を発揮する細胞を有する、全ての生物に関する。上記真核生物特有の特性としては、内部に染色体を有し、核膜に包まれた真核の存在、細胞膜に包まれた細胞小器官の存在、その他真核生物に一般に見られる特性等がある。
【0034】
本明細書では、「酵母生殖」という語は、酵母の生殖サイクルに関し、無性生殖サイクルおよび有性生殖サイクルがある。ただし、最も一般的な酵母の栄養増殖形態は、「親細胞」上に形成される「娘細胞」の「発芽」または「核分裂」による無性生殖である。親細胞の核は、娘核に分裂し、娘細胞に移動する。芽は、「親細胞」から分離して新しい細胞を形成するまで成長し続ける。一般的に、高ストレスの条件下では、一倍体細胞は死滅するが、同じ条件下でも二倍体細胞は胞子形成に耐えることができ、有性生殖(減数分裂)を始め、交配(接合)し得る様々な一倍体胞子を生成し、二倍体を再編成する。
【0035】
本明細書では、「発芽」という語は、菌類(例えば、酵母)および原生動物における細胞分裂の種類に関する。原生動物では、一方の「娘細胞」が他方の「娘細胞」からのより小さな突起として発達する。通常、出芽性細胞の位置は、「親細胞」の極性によって規定される。ある原生動物において、発芽した娘は他方の娘の細胞質中に位置することがある。
【0036】
本明細書では、「酵母を培養する」および「酵母を育てること」という語句は、酵母を定植するおよび/または繁殖させることに関する。
【0037】
本明細書では、「遠心分離」という語は、回転ローターによって発生させた遠心力を利用して、固定軸に垂直な力を目標物に印加しながら、固定軸の周りを回転させることによって、分子を大きさや密度によって分離することに関する。沈殿作用原理を用いた遠心分離作業では、求心加速度を利用して、密度の異なる(より大きい/より小さい)物質を異なる密度層に均等に分類する。
【0038】
本明細書では、「収穫」という語は、生産された物質を回収または収集することに関する(例えば、酵母生産中に生産された物質の収集)。
【0039】
本明細書では、「乾燥」という語は噴霧乾燥、凍結乾燥、空気乾燥、真空乾燥、または、物質中の液体を減らすまたは除去するその他の処理に関する。
【0040】
本明細書では、「噴霧乾燥」という語は、液体を含む物質を乾燥させる一般的な方法であり、高温の気体を用いてその液体を蒸発させ、物質中の液体を減少または除去する方法に関する。換言すれば、高温で乾燥した空気の風の中に物質を噴霧または吹き付けることによって、物質を乾燥させる。
【0041】
本明細書では、「凍結乾燥(freeze drying)」、「凍結乾燥(lyophilization)」および「冷凍乾燥」という語は、昇華によって、凍結状態の物体から溶媒を除去することに関する。これは、乾燥させる物質を共融点以下で凍結させ、その後、昇華潜熱を加えることで行われる。入熱を精密に制御することで、生成物を再び溶かすことなく凍結状態から乾燥させることができる。実際には、この処理は減圧下で加速され、精密に制御される。
【0042】
本明細書では、「研削」という語は、衝撃、せん断、または磨耗によって粒子の大きさを減少させることに関する。
【0043】
本明細書では、「洗浄」という語は、調合物の不純物または可溶性不要成分の除去または浄化に関する(例えば、あらゆる種類の溶質(例えば、蒸留水、緩衝液、または溶媒)または混合物を用いて)。
【0044】
本明細書では、「タンパク質」という語は、通常、生物学的に機能的な方法で球形状または繊維状に折り畳まれた1以上のポリペプチドからなる生化学的化合物に関する。
【0045】
本明細書では、「ペプチド」および「ポリペプチド」という語は、共有「ペプチド結合」によって連結したアミノ酸の一次配列に関する。一般的に、ペプチドは、いくつかのアミノ酸からなり、タンパク質よりも短い。ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質としては、合成物質、組換体、または、天然物を使用することができる。
【0046】
本明細書では、「アミノ酸」という語は、アミン基、カルボン酸基、および別々のアミノ酸間で異なる側鎖を含む分子に関する。アミノ酸の重要な要素は、炭素、水素、酸素、および、窒素である。
【0047】
本明細書では、「プロテアーゼ」という語は、様々な酵素に関し、タンパク質のペプチドまたはアミノ酸への加水分解を触媒するエンドペプチダーゼおよびエクソペプチダーゼを含む。
【0048】
本明細書では、「溶解」という語は、酵母細胞膜や酵母細胞壁が崩壊または破裂し、細胞内成分が放出されることに関する。本明細書では、「溶解」は、物理的、機械的、酵素的(自己溶解および加水分解含む)、または、浸透圧的機構によって起こる。
【0049】
本明細書では、「自己溶解」という語は、細胞または組織の一部または全体が自己生成酵素により分解されることに関する。
【0050】
本明細書では、「加水分解」という語は、水を加えることで化合物を分解して断片化する処理に関する(例えば、重合体をより単純なユニットに(例えば、でんぷんをブドウ糖に)分解するのに利用される)。
【0051】
本明細書では、「反芻動物」という語は、偶蹄目の哺乳動物に関し、植物由来の食物を、最初はその第一胃でやわらかくし、それから半ば消化された塊(現在はカット(cut)として知られている)を逆流させ、それを再び咀嚼する。食い戻しを再び咀嚼して植物をさらに分解し、消化を促進させる行為は、「反芻」と呼ばれる。家畜および野生種を含めておよそ150種の反芻動物がいる。反芻哺乳動物としては、牛、ヤギ、羊、キリン、バイソン、ヘラジカ、エルク、ヤク、水牛、シカ、アルパカ、ラクダ、ラマ、ヌー、アンテロープ、プロングホーン、およびニルガイが挙げられる。
【0052】
本明細書では、「第一胃」(瘤胃としても知られる)という語は、反芻胃のより大きい部分を占め、反芻動物の消化管中の第一室に当たる。第一胃は、摂取した食物の微生物発酵のための最初の場所となる。反芻胃のより小さい部分は第ニ胃であり、第一胃と完全に連続しているが、内側のテクスチャが第一胃とは異なっている。第一胃は数個の筋肉嚢、前嚢、腹嚢、腹盲嚢、および、細網から構成される。
【0053】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、栄養補助食品組成物、該栄養補助食品組成物を含む食物(例えば動物用飼料)、およびその利用方法に関する。本発明は特に、特定の窒素および/またはアミノ酸特性を有する小粒子の(例えば、抽出タンパク質(細菌性抽出物または酵母エキス等の粗タンパク質)を含む)反芻動物用栄養補助食品組成物およびその製造方法を提供する。さらに、本発明は(例えば、液体または乾燥体の栄養補助食品組成物として、または反芻動物のタンパク質およびアミノ酸の吸収を増加させる食物(例えば動物用飼料)の成分)として、該栄養補助食品組成物を含む合成品およびその使用方法を提供する。
【0054】
ある実施形態において、本発明はルーメン発酵から実質的に免れる物理的特性および第一胃微生物タンパク質に類似するアミノ酸(AA)特性を有する(例えば、酵母またはその他に由来する)、タンパク質豊富な栄養補助食品組成物を提供する。いくつかの実施形態において、例えば表2に示すように、タンパク質豊富な栄養補助食品組成物を回避微生物タンパク質(EMP)または消化回避微生物タンパク質(DEMP)と称する。
【0055】
いくつかの実施形態において、(酵母または微生物源に由来する)タンパク質豊富な栄養補助食品組成物を、微粒子の大きさに加工する。本発明を実施するためにその機構を理解する必要はなく、また本発明は特定の作用機構に限定されないが、いくつかの実施形態において、栄養補助食品組成物を微粒子の大きさにすることで、栄養補助食品組成物は液体画分と共に第一胃を通過し、アミノ酸が腸において吸収される。本発明は特定の機構に限定されず、また本発明を理解または実施するためにその機構を理解する必要はないが、いくつかの実施形態において、栄養補助食品組成物の有用性は下記の一つ以上を活用して発揮される:(1)材料の組成(例えば、特定の窒素および/またはアミノ酸特性を有する);(2)材料の微粒子サイズ(例えば、本明細書に記載のサイズ)(例えば、第一胃液体画分中に分配されるような大きさ);(3)比較的緩やかな分解速度での材料の分解(例えば、0.175h−1);および/または(4)比較的高い画分率での第一胃からの液体流出(例えば、0.12h−1)。
【0056】
本発明のタンパク質豊富な栄養補助食品組成物の大きな利点は、(例えば、物理的または化学的処理(例えばカプセル化)によって)第一胃での分解から保護される必要が無いということである。例えば、いくつかの実施形態において、本発明のタンパク質豊富な栄養補助食品組成物は、防護壁を備える必要がない。その替わりに、本発明の(例えば酵母に由来する)タンパク質豊富な栄養補助食品組成物においては、(例えば液体の流速で流れることによって)ルーメン発酵を免れるような物理的および/または化学的特性(例えば、窒素および/若しくはアミノ酸含有量または特性、微粒子サイズ、組成物の低分解率等)を有し、第一胃で分解されず、所望のアミノ酸特性を有し、大いに消化されやすい飼料タンパク質を大量に腸に送ることができる。
【0057】
本発明は、栄養補助食品組成物のタンパク質成分(例えば抽出タンパク質(例えば抽出粗タンパク質))の供給源によって限定されない。いくつかの実施形態において、上記栄養補助食品組成物は、酵母細胞抽出物である。本発明の組成物に使用される酵母有機体として、あらゆる多数の酵母を使用してもよく、サッカロミセス種、カンジダ種、クリベロミセス種、トルラスポラ種、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。望ましい実施形態では、サッカロミセス・セレビシエを酵母として用いる。望ましい実施形態では、系統1026のサッカロミセス・セレビシエを酵母として用いる。酵母エキスは、本技術分野において公知の方法で得ることができる(例えば、Peppler,H.J.(1979)Production of yeasts and yeast products.Microbial Technology & Microbial Processes,Vol.1(第2版)Academic Press参照)。酵母有機体は、食品の発酵や飲料産業において使用される公知の技術によって培養することができる。酵母バイオマスを、遠心分離によって分離・洗浄することによって、酵母クリームが得られる。分離後、当該有機体を溶解する。酵母有機体の溶解には、本技術分野において公知の多数の方法のいずれかを利用することができ、加水分解や自己溶解が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の望ましい実施形態によれば、酵母有機体は、室温および室内圧下において、12〜24時間で自己分解することができる。酵母タンパク質の可溶化を促進し、細胞内成分の凝集を防止するために、パパインや多数のアルカリ性または中性プロテアーゼなどのプロテアーゼを溶解段階中に加えてもよい。溶解後、酵母有機体の細胞内成分を、酵母細胞壁から分離および除去する。望ましい実施形態では、遠心分離によって数回洗浄することによって、酵母細胞壁物質から細胞内成分を除去する。得られた酵母エキスは、噴霧乾燥、ドラム乾燥、および流動床乾燥等の本技術分野における多数の公知な方法のいずれかによって乾燥させ、粉末にする。望ましい実施形態では、乾燥させた酵母エキスの粉末を(例えば研削、ふるいがけ、またはその他の摩耗手段によって)微粉にする。望ましい実施形態では、得られた酵母エキスを微粒化によって乾燥させる。例えば、酵母エキスを噴霧器(例えば、ノズル式または遠心分離式噴霧器)に注ぎ込み、酵母エキス粒子の細かい霧を生成する。酵母エキス粒子の細かい霧は、250〜450℃にまで熱した空気にさらして乾燥させる。そして、乾燥させた酵母エキス粒子を収集する。いくつかの実施形態において、噴霧器は所望の大きさの乾燥酵母粒子を生成するように構成されている。その他の実施形態においては、噴霧器から噴き出した乾燥酵母エキスの粒子をさらに細かく砕き、ふるいにかけ、またはその他の方法でより小さな粒子にする。
【0058】
本技術分野においては、分解による分解率が高いとされているために、可溶性タンパク質は第一胃で完全に分解されると一般的に考えられている。第一胃で分解可能な飼料タンパク質(RDP)と、第一胃で分解不可能な飼料タンパク質(RUP)とが、飼料により供給されるかを調べる実験の手法としては、in situ培養(In situ incubation)が最も広く行われている。この手法では、第一胃にカニューレを挿入した動物において、第一胃内に浮遊させた多孔袋内の飼料からタンパク質がどれくらい消失したかを測定する。袋から流出した可溶性粒子および極小の不溶性粒子は第一胃微生物にすぐに供され、完全に利用されると考えられており、その結果生じる重さの違いからタンパク質の消失を測定する。Raab et al.(Raab et al.(1983)参照)に記載の方法を用いて、本発明の栄養補助食品組成物におけるタンパク質分解の分解速度を判断する実験を行った。表1に示す通り、Raab et al.の方法を用いた場合の栄養補助食品組成物におけるタンパク質分解の分解速度は0.175h‐1(SD=0.052)であった。
【0059】
【表1】

【0060】
ある実施形態において、本発明の栄養補助食品組成物における乾燥物質の割合は、約5〜10%の窒素および30〜60%の粗タンパク質である。望ましい実施形態では、上記栄養補助食品組成物は、乾燥物質換算で、約6.5〜7.8%の窒素および40〜50%の粗タンパク質を含む。より望ましい実施形態では、上記栄養補助食品組成物は、乾燥物質換算で約7%の窒素および約45.3%の粗タンパク質を含む。いくつかの実施形態において、上記粗タンパク質は可溶性および不溶性の両方の画分を含む。例えば、いくつかの実施形態において、上記粗タンパク質は、約25〜60%の可溶性タンパク質および40〜75%の不溶性タンパク質を含む。いくつかの実施形態において、上記粗タンパク質は、約36〜46%の可溶性タンパク質および約53〜63%の不溶性タンパク質を含む。いくつかの実施形態において、上記粗タンパク質は、約40〜45%の可溶性タンパク質および約55〜60%の不溶性タンパク質を含む。いくつかの実施形態において、上記粗タンパク質は、約42%の可溶性タンパク質および約58%の不溶性タンパク質を含む。いくつかの実施形態において、上記栄養補助食品組成物は、乾燥物質換算で、約0.5%から約1.5%のアンモニアを含む。いくつかの実施形態において、上記栄養補助食品組成物は、表1または表2に示すアミノ酸特性を有するタンパク質成分(例えば、抽出タンパク質)を含む。本発明は、上記タンパク質成分の特定のアミノ酸特性に限定されない。いくつかの実施形態において、本発明の栄養補助食品組成物のタンパク質成分の上記アミノ酸特性は、表1または表2に示す割合で異なるアミノ酸を含み、そこから一定の割合(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10パーセントまたはそれ以上)を追加または差し引いた割合で含む。
【0061】
以下、本発明の栄養補助食品組成物のアミノ酸特性と、第一胃細菌のアミノ酸特性とを比較する(表2参照)。
【0062】
【表2】

【0063】
ある実施形態において、栄養補助食品組成物は、酵母エキスを用いて生成される。例えば、本技術分野において公知の処理のいずれかを用いて乾燥(例えば、凍結乾燥)酵母エキスを得る。本発明は、本発明の栄養補助食品組成物の供給源として使用される酵母の種類に限定されない。例えば、公知のあらゆる酵母を使用することができる。さらに、酵母は(例えば、遺伝子的に、または他の方法で)改変してもよい。例えば、酵母は、一つ以上の栄養素を豊富に(例えば、(無機セレニウム塩を含む培地で培養することにより)セレンを多く)含んでもよい。乾燥酵母エキス(例えば、他の物質(例えばビタミン、ミネラル、食料品、または他の物質)と混ぜ合わされた、または、混ぜ合わされていない乾燥酵母エキス)を、それから微粒子の大きさにする(例えば、細かく砕かれる)。本発明は、栄養補助食品組成物(例えば、乾燥酵母または微生物抽出物)を所望の粒子サイズにする方法に限定されない。例えば、物質(乾燥材料)をより小さな粒径の物質にする公知の方法の何れかを使用すればよく、微粒化、研削、ふるい掛け、および/またはその他の物質を磨耗させる方法が挙げられるが、これらに限定されない。望ましい実施形態では、栄養補助食品組成物(例えば乾燥酵母または微生物抽出物)は、粒径が0.25〜0.5mm、0.125〜0.250mm、または0.0625〜0.125mmの微粒子になるように細かく砕かれるが、それらの粒径前後の大きさであってもよい。例えば、栄養補助食品組成物の粒径は表3に示す範囲の何れかの範囲内であればよい。
【0064】
【表3】

【0065】
本発明の栄養補助食品組成物は、経口摂取可能なあらゆる飼料に添加および/または混合される。本発明では、本技術分野において公知のあらゆる動物用飼料混合物を用いる(例えば、栄養補助食品組成物に混合または組み合わせる)ことができ、菜種の粗びき粉、綿実の粗びき粉、大豆の粗びき粉、およびトウモロコシの粗びき粉などが挙げられるが、大豆の粗びき粉およびトウモロコシの粗びき粉が特に好ましい。上記動物用飼料混合物は本発明の栄養補助食品組成物によって補完されるが、他の含有物も上記動物用飼料混合物に任意に添加することができる。動物用飼料混合物の任意の含有物としては、水溶性や不水溶性の単糖類、二糖類、および多糖類等の糖類や複合糖質が挙げられる。飼料混合物に添加し得る任意のアミノ酸含有物としては、アルギニン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、バリン、チロシンエチルHCl、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸ナトリウム、グリシン、プロリン、セリン、システインエチルHCl、およびアナログ、およびそれらの塩が挙げられる。任意に添加できるビタミンとしては、チアミンHCl、リボフラビン、ピリドキシンHCl、ナイアシン、ナイアシンアミド、イノシトール、塩化コリン、パントテン酸カルシウム、ビオチン、葉酸、およびビタミンA、B、K、D、E等が挙げられる。肉粉や魚粉から得られるタンパク質、液状または粉末状の卵、魚性の可溶性物質、乳清タンパク質濃縮物、油(例えば大豆油)、コーンスターチ、カルシウム、無機リン酸塩、硫酸銅、塩、および石灰石等のミネラルやタンパク質含有物も添加することができる。上記動物用飼料混合物には、抗生物質等の、本技術分野において公知のあらゆる薬剤含有物を添加することができる。
【0066】
いくつかの実施形態において、動物用飼料は下記の内の少なくとも一つを含む:アルファルファ(ムラサキウマゴヤシ)、オオムギ、ミヤコグサ、アブラナ属(例えば、チャウ・モエリア(Chau moellier)、ケール、アブラナ(キャノーラ)、ルタバガ(カブハボタン)、カブ)、クローバー(例えば、アルサイククローバー、アカツメクサ、サブタレニアンクローバー、シロツメクサ)、草(例えば、トールオートグラス、ウシノケグサ、バミューダグラス、スズメノチャヒキ、ヒース、(天然の混合草原の草地からの)牧草、カモガヤ、ライグラス、オオアワガエリ)、トウモロコシ(メイズ)、キビ、オートムギ、モロコシ、ダイズ、樹木(「木の干し草」用の枝を刈り込んだ木の苗条)、およびコムギ。
【0067】
本発明の組成は、(例えば、栄養補助食品によって食事に加算されるカロリー量を制限したい場合には)動物に供給する際に一つ以上の不活性成分を含めばよい。例えば、栄養補助食品組成物および/または本発明の栄養補助食品組成物を添加する動物用飼料または食物は、任意の含有物をさらに含んでもよい。任意の含有物としては、例えば、ハーブ、 ビタミン、ミネラル、エンハンサー、着色料、甘味料、香味料、不活性成分、デヒドロエピアンドステロン(dehydroepiandosterone)(DHEA)、フォ・ティまたはホ・ショウ・ウ(アジアで従来一般的に扱われているハーブ)、ウングイスカティ(古来のハーブ含有物)、緑茶(ポリフェノール)、イノシトール、ケルプ, ダルス, バイオフラビノイド(bioflavinoid)、マルトデキストリン、イラクサ、ナイアシン、ナイアシンアミド、ローズマリー、セレン、シリカ(二酸化ケイ素、シリカゲル、トクサ(horsetail)、トクサ(shavegrass)等)、ラセン藻、亜鉛、等が挙げられる。そのような任意の含有物は、天然のものであっても、濃縮されたものであってもよい。
【0068】
いくつかの実施形態において、本発明の栄養補助食品組成物を、(例えば、動物用飼料を生成するために)他の食料品と混ぜ合わせ、さらに/または組み合わせる。他の食料品としては、三塩基のリン酸または酢酸カルシウム;二塩基のリン酸カリウム;硫酸または酸化マグネシウム;塩(塩化ナトリウム);塩化または酢酸カリウム;オルトリン酸鉄;ナイアシンアミド;硫酸または酸化亜鉛;パントテン酸カルシウム;グルコン酸銅;リボフラビン;β‐カロチン;塩酸ピリドキシン;硝酸チアミン;葉酸;ビオチン;塩化クロムまたはクロムピコロネート(picolonate);ヨウ化カリウム;セレン酸ナトリウム;モリブデン酸ナトリウム;フィロキノン;ビタミンD3;シアノコバラミン;亜セレン酸ナトリウム;硫酸銅;ビタミンA;イノシトール;ヨウ化カリウムが挙げられるが、これらに限定されない。ビタミンやミネラルの適切な用量は、例えば、米国推奨1日許容量ガイドラインを参照して求めればよい。
【0069】
更なる実施形態としては、本発明の栄養補助食品組成物および/または(例えば、動物用飼料を生成するために)栄養補助食品組成物が添加され、さらに/またはそれと組み合わされる他の食料品は、一つ以上の食品調味料を含んでもよい。食品調味料としては、以下が挙げられる:アセトアルデヒド(エタナール)、アセトイン(アセチルメチルカルビノール)、アネトール(パラプロペニルアニソール)、ベンズアルデヒド(桂皮アルデヒド)、N−酪酸(ブタン酸)、dまたはlカルボン(カルボール)、シンナムアルデヒド(桂皮アルデヒド)、シトラール(2,6ジメチルオクタジエン2,6al8、ゲラニアール、ネラール)、デカナール(N−デシルアルデヒド、デカナール(capraldchydc)、カプリンアルデヒド、デカナール(caprinaldchydc)、アルデヒドC10)、酢酸エチル、酪酸エチル、3メチル3フェニルグリシド酸エチルエステル(エチルメチルフェニルグリシド酸、ストロベリーアルデヒド、アルデヒドC16)、エチルバニリン、ゲラニオール(3,7ジメチル2,6および3,6オクタジエン1オール)、酢酸ゲラニル(ゲラニオールアセテート)、リモネン(d、l、およびdl)、リナロール(リナロール、3,7ジメチル1,6オクタジエン3オールol)、酢酸リナリル(ベルガモール)、アントラニル酸メチル(メチル2アミノ安息香酸塩)、ピペロナール(3,4メチレンジオキシベンズアルデヒド、ヘリオトロピン)、バニリン、アルファルファ(ムラサキウマゴヤシL.)、オールスパイス(ピメンタ)、アンブレット種子(トロロアオイモドキ)、アンゲリック(angelic)(アンゲリカ)、アンゴスツラ(ガリピエ)、アニス(アニス(Pimpinella anisum))、スターアニス(ダイウイキョウ)、芳香性樹脂(コウスイハッカ)、バジル(メボウキ)、ベイ(ゲッケイジュ)、キンセンカ(トウキンセンカ)、(ローマカミツレ)、トウガラシ(キダチトウガラシ)、キャラウェー(ヒメウイキョウ)、ショウズク(エレタリアカルダモムム)、カッシア(ニッケイ)、タカノツメ(キダチトウガラシ)、セロリ種子(オランダミツバ)、チャービル(チャービル(Anthriscus carefolium))、エゾアサツキ(アサツキ)、コエンドロ(コリアンダー)、クミン(クミン(Cuminum cyminum))、ニワトコ(アメリカニワトコ)、フェンネル(ウイキョウ)、フェネグリーク(コロハ)、カンショウキョウ(ショウガ)、ニガハッカ(マルバハッカ)、ホースラディッシュ(セイヨウワサビ)、ヒソップ(ヤナギハッカ)、ラベンダー(ラベンダー(Lavandula officinalis))、メース(ニクズク)、マジョラム(マジョラナ)、カラシ(クロガラシ、カラシナ、シロガラシ)、ナツメグ(ニクズク)、パプリカ(トウガラシ)、黒コショウ(コショウ)、ペパーミント(セイヨウハッカ)、ケシの実(Papayer somniferum)、ローズマリー(マンネンロウ)、サフラン(サフラン(Crocus sativus))、セージ(サルビア)、セイボリー(夏セイボリー、冬セイボリー)、ゴマ(ゴマ(Sesamum indicum))、スペアミント(ミドリハッカ)、タラゴン(エストラゴン)、タイム(タチジャコウソウ、イブキジャコウソウ)、ターメリック(ウコン)、バニラ(バニラ(Vanilla planifolia))、ガジュツ(ガジュツ(Curcuma zedoaria))、スクロース、グルコース、サッカリン、ソルビトール、マンニトール、およびアスパルテーム。他の適切な調味料は、以下のような当業者にとって公知の文献に開示されている:Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、マック出版、第1288〜1300頁(1990);およびFuria and Pellanca、Fenaroli’s Handbook of Flavor Ingredients、ケミカルラバーカンパニー、オハイオ州、クリーブランド(1971)等。
【0070】
他の実施形態においては、上記組成物は、少なくとも一つの合成または自然食品着色料を含む(例えば、ベニノキ抽出物、アスタキサンチン、ビートパウダー、群青、カンタキサンチン、カラメル、カロテナール、β‐カロチン、カルミン、焼き綿実粉、グルコン酸第一鉄、乳酸第一鉄、ブドウ色抽出物、ブドウ皮抽出物、酸化鉄、果実汁、野菜汁、マンジュギクの乾燥粉末、ニンジン油、トウモロコシ内乳油、パプリカ、パプリカ含油樹脂、リボフラビン、サフラン、ターメリック、ターメリック、および含油樹脂)。
【0071】
さらに他の実施形態では、上記組成は、少なくとも一つの植物栄養素を含む(例えば、大豆イソフラボノイド、オリゴマープロアンソシアニジン(Oligomeric proanthcyanidin)、インドール3カルビノール、スルフォラフォン(sulforaphone)、繊維リガンド、植物ステロール、フェルラ酸、アントシアノサイド、トリテルペン、オメガ3/6脂肪酸、共役リノール酸および共役リノレン酸等の共役脂肪酸、ポリアセチレン、キノン、テルペン、カテキン、没食子酸およびクエルセチン)。植物栄養素の供給源としては、ダイズレシチン、大豆イソフラボン、玄米胚、ローヤルゼリー、ハチプロポリス、アセロラベリージュース粉末、日本緑茶、ブドウ種子抽出物、ブドウ皮抽出物、ニンジンジュース、コケモモ、アマニ粉末、蜂の集めた花粉、イチョウ、サクラソウ(マツヨイグサ油)、アカツメクサ、ゴボウ根、タンポポ、パセリ、バラの実、マリアアザミ、ショウガ、シベリアニンジン、ローズマリー、クルクミン、ニンニク、リコピン、グレープフルーツ種子抽出物、ほうれん草、およびブロッコリが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
さらに他の実施形態では、上記組成は、少なくとも一つのビタミンを含む(例えば、ビタミンA、チアミン(B1)、リボフラビン(B2)、ピリドキシン(B6)、シアノコバラミン(B12)、ビオチン、レチノイン酸(ビタミンD)、ビタミンE、葉酸および他の葉酸、ビタミンK、ナイアシン、およびパントテン酸)。いくつかの実施形態において、(例えば栄養補助食品組成物を含む)飼料は、少なくとも一つのミネラルを含む(例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、リン、塩素、鉄、亜鉛、マンガン、フラウリン(flourine)、銅、モリブデン、クロム、およびヨウ素)。特に望ましい実施形態では、(例えば栄養補助食品組成物を含む)飼料は、米国農務省が一日あたりの推奨摂取量(RDA)として定める範囲のビタミンやミネラルを含む。さらに他の実施形態では、上記粒子は、少なくとも一つのアミノ酸(例えば、L−カルニチンまたはトリプトファン)が含まれるアミノ酸補充配合物を含む。
【0073】
いくつかの実施形態において、上記飼料用組成物は補助酵素を含む。そのような酵素としては、例えば、プロテアーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、フィターゼ、および酸性ホスファターゼが挙げられる。酵素は、精製した形態、部分的に精製した形態、または未精製の形態で用いればよい。酵素源は、天然の(例えば菌性の)もの、合成のもの、または人工の(例えば遺伝子組み換えの)ものでよい。いくつかの実施形態において、プロテアーゼ(例えばペプシン)を添加する。
【0074】
いくつかの実施形態において、酸化防止剤も動物用飼料組成物等の食物に添加することができる。β‐カロチンやビタミンC等の天然の酸化防止剤および/またはブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、三級ブチルヒドロキノン、没食子酸プロピル、もしくはエトキシキン等の合成酸化防止剤を食物に導入することによって、酸化を防ぐことができる。アスコルビン酸、クエン酸、およびリン酸等の酸化防止剤と相乗的に作用する化合物も加えることができる。このように組み入れた酸化防止剤の量は、製品の調合法、輸送条件、包装方法、および所望の賞味期限等の要件によって決まる。
【0075】
上記生成した栄養補助食品組成物(例えば、(ビタミン、ミネラル等の他の成分と任意に混合した)酵母または微生物抽出物の微粒を含む)は、(例えば、乳汁の生産を向上させるおよび/または乳汁の成分を変化させる(例えば乳脂肪を増やす)ために)動物(例えば、反芻動物)に供給する。
【0076】
いくつかの実施形態において、本発明は、栄養的にバランスの取れた食事によって家畜(例えば、反芻動物)を飼育する方法であって、家畜およびここに記載した栄養補助食品組成物を含む動物用飼料組成物を準備し、家畜特性(例えば、乳汁の生産および品質特性)が達成されるような(例えば、乳汁の品質および/または生産量が上記栄養補助食品組成物を与えられない対照よりも優れるような)条件下で、上記動物用飼料組成物を上記家畜に与える、ことを含む飼育方法を提供する。
【実施例】
【0077】
以下の例では、本発明のある実施形態および態様を説明するが、これらは、本発明の範囲を限定するものと解釈されものではない。
【0078】
〔実施例1:栄養補助食品組成物の乳牛への投与、ならびに、ミルクの生産、食物摂取量、および血中代謝産物へのその効果(カナダの酪農場にて)〕
カナダ東部のオンタリオ州およびケベック州に位置する三箇所の酪農場を利用して、栄養補助食品組成物を乳牛に与えることによる効果を判定した。噴霧乾燥機(噴霧器)を用いて、サッカロミセス・セレビシエから抽出した酵母エキスを乾燥させ、栄養補助食品組成物を生成した。上記乾燥抽出物は、乾燥物質換算で47%のタンパク質(40%が可溶性)を含む。表1に上記栄養補助食品組成物の特性を示す。栄養補助食品組成物の粒径は0.100〜0.250mmとし、以下に記載の通り乳牛に投与した。乳牛を観察し、ミルクの生産、ミルクの成分、および血中代謝産物に応じて特徴付けをした。
【0079】
上記実験は、交差法を用いて、1期を21日間として、2期行った。実験での配給量は、(1)コントロール:0g/dの栄養補助食品組成物および(2)600g/dの栄養補助食品組成物とした。食事は、含有する窒素およびエネルギーが等しく、栄養補助食品組成物が600g/hd/d(つまり、2.1%の乾燥物質配給量)となるように調合した。図2に配給量を示す。植物性タンパク質の一部を、栄養補助食品組成物に置き換えた。二つの処理順序の内の一つ(つまり、コントロールの後に栄養補助食品組成物、または栄養補助食品組成物の後にコントロール)を、それぞれの農場に割り当てた。各期の最後の2日間は、ミルクの生産および飼料摂取量を記録した。また、各期の最終週中は、各農場において無作為に選出した15頭の乳牛から血液サンプルを採取した。ミルク中の脂肪およびタンパク質について分析し、血液中の非エステル型脂肪酸(NEFA)、β‐ヒドロキシ酪酸(BHBA)、および血中尿素窒素(BUN)について分析した(図3参照)。エネルギー補正乳は、栄養補助食品組成物を与えたものの方がコントロールよりも多かった(P=0.09)(36.1対33.3±0.8kg/d)が、乾燥物質摂取量は異ならなかった(平均24.0±0.5kg/d)。乳脂肪分(3.96対3.86±0.05%、P=0.03)および脂肪収量(1.34対1.22±0.03kg/d、P=0.09)は、栄養補助食品組成物を与えたものの方がコントロールよりも多かった。乳タンパク質成分は、両者において違いはなく、平均して3.34±0.06%であったが、タンパク質収量は、栄養補助食品組成物を与えられた動物の方がコントロールの動物よりも多かった(P=0.04)(1.13対1.05±0.02kg/d)。BHBAおよびNEFAは、両者において違いはなく、BHBAの平均が、0.68±0.03mmol/Lであり、NEFAの平均が、0.17±0.04mmol/Lであったが、BUNは、栄養補助食品組成物を与えたものの方がコントロールよりも多かった(P=0.02)(4.95対4.53±0.04mmol/L)。
【0080】
このように、いくつかの実施形態において、本発明は、600g/dの栄養補助食品組成物を食事に含ませることにより、乾燥物質の摂取量に影響を与えずに、エネルギー補正乳を増加させ(例えば、2.8kg/d増加)、乳脂肪およびタンパク質分泌物の両方を増加させる(例えば、0.12kg/d増加)。血中代謝産物、BHBA、およびNEFAは、上記栄養補助食品組成物の影響を受けておらず、生産量および成分の増加が体内貯蔵物の動員によるものではないことが分かった。
【0081】
〔実施例2:栄養補助食品組成物の乳牛への投与、ならびに、ミルクの生産、食物摂取量、および、血中代謝産物へのその効果(南ダコタ州大学にて)〕
食物摂取量、ミルクの生産、およびミルクの成分に対する、栄養補助食品組成物の効果を判定する実験を行った。表1に、上記栄養補助食品組成物の特性を示す。栄養補助食品組成物の粒径は0.100〜0.250mmとした。実験は、南ダコタ州大学(ブルッキングズ)の酪農研究研修施設で行い、全ての手順は南ダコタ州の動物実験委員会によって承認された。93±37DIMのホルスタイン泌乳牛16頭(8頭は経産牛であり、4頭は初産牛)を用いて、4×4のラテン方格法による実験を、1期を28日間として、4期行った。乳牛は出産経歴および生産量によってブロック分けし、管を装着した動物がひとつの区画に4頭含まれるようにした。基礎食には、コーンサイレージを40%、アルファルファの干し草を20%、および濃縮物の混合物を40%含ませ(図4参照)、泌乳の粗タンパク質が16.1%、正味エネルギーが1.58Mcal/kgになるように処方した。
【0082】
デアリランド研究所(ウィスコンシン州、アルカディア)が個々の含有物について行った、使用実験飼料の栄養成分の分析結果を図5に示す。図6は、同研究所が行った混合飼料(TMR)の分析結果を示す。各期間中、乳牛には下記4種の内の一つを与えた:コントロール(0g/hd/dの栄養補助食品組成物)、300(300g/hd/dの栄養補助食品組成物)、600(600g/hd/dの栄養補助食品組成物)、および、900(900g/hd/dの栄養補助食品組成物)。特性の大豆の粗びき粉(44%の粗タンパク質(CP))を栄養補助食品組成物に置き換え、窒素量およびエネルギー量が同じ食物を得た。
【0083】
垂直ミキサーで飼料を予め混合し、カランデータレンジャー(Calan Data Ranger)(米国カラン社、ニューハンプシャー州、ノースウッド)内において、濃縮物と混合した。カランブロードベント(Calan Broadbent)個別給餌機(米国カラン社、ニューハンプシャー州、ノースウッド)を用いて、個々の乳牛に1日1回(9時に)摂取量無制限で餌を与えた。食べ残しを1日1回計量し、与える食事を調節して10%の飼料を拒否するようにした。各期の第1および第2週は食事の調節に費やし、第3および第4週にデータを収集した。
【0084】
日中、乳牛は搾乳時を除いて自由に水および飼料を摂取できるようにした。通常の農場の手順に従って、14日毎にrbST shot(Posilac;モンサント社、ミズーリ州、セントルイス)を全ての乳牛に与えた。
【0085】
(計測およびサンプリング)
個々の乳牛毎の飼料摂取量および食べ残しを、カランデータレンジャー(米国カラン社)を用いて毎日記録した。コーンサイレージおよびアルファルファの干し草の乾燥物質(DM)比率を毎週測定し、実験中、飼料の濃縮物に対する割合が一定になるように、食事を調節した。各処置におけるアルファルファの干し草、コーンサイレージ、濃縮物混合物、栄養補助食品組成物(DEMP)、大豆の粗びき粉、および混合飼料(TMR)のサンプルを、各期の第4週中に連続3日間収集してそれらを冷凍し、分析を行うまで−20℃で保存した。粒子分離機(ペンシルベニア州立大学の粒子分離手順)を用いた分析用に、第4週に追加でTMRのサンプルを収集した。
【0086】
各期の第4週中、9回の時点(食前、および食後2、4、6、8、10、12、16、および24時間目)において、管を装着した乳牛から第一胃液をサンプリングした。上記サンプルの採取後、pH値を直ちに測定し、10ml分の第一胃液を、一方は50%(vol/vol)の硫酸を含み、他方は25%(wt/vol)のメタリン酸を含んだシンチレーション小瓶に入れた。アンモニアおよびVFAのさらなる分析用に、サンプルを凍らせて−20℃で保存した。
【0087】
各期の第4週中の連続2日間、給餌の約3時間後に尾静脈の静脈穿刺によって血液を採取した。血液は、K‐EDTA抗凝血剤(ベクトンディキンソン社、ニュージャージー州、ラザフォード)が入った10mlの真空管に入れた。
【0088】
自動乳牛識別装置、個別生産記録装置、および自動離脱搾乳器を備え、8×2列に並んだ搾乳室において、1日に3度(6時、14時、21時)乳牛から搾乳した。乳組成の分析用に、第3、第4週中の連続2日間、搾乳毎に個々の乳牛の牛乳をサンプリングした。また、第3、第4週中の1日、脂肪酸の分析用にサンプルをさらに採取した。
【0089】
実験開始時の連続3日間および各期の最後の連続3日間、体重(BW)を記録した。実験開始時および各期の最後に、1から5の尺度で個別の3頭の身体状態を採点した(BSC)(例えば、Wildman et al.(1982)参照)。
【0090】
(実験室解析)
飼料およびTMRの全てのサンプルを期別の混合物にし、デスパッチオーブン(Despatch oven)(V‐23型;デスパッチオーブン社、ミネソタ州、ミネアポリス)内、55℃で48時間乾燥させ、4mm網目のウィリーミル(3型;アーサーH.トーマス社、ペンシルベニア州、フィラデルフィア)に通して細かくし、さらに1mm網目(ブリンクマン超遠心ミル、ブリンクマン工業社、ニューヨーク州、ウェストベリー)に通して細かくした。DM測定(Shreve、2006)のため、飼料混合物の副次試料を、105℃で3時間乾燥させた。55℃で乾燥させたコーンサイレージ、アルファルファの干し草、DEMP、濃縮物混合物、特注の大豆の粗びき粉、およびTMRの混合物を、湿式化学による組成分析のために、デアリランド研究所(ウィスコンシン州、アルカディア)に送付した。食物の粒径分布は、4−スクリーン・ペンステイト粒径分離機(PSPS;例えば、Kononoff et al.(2003)参照)によって測定した。
【0091】
ミルクサンプルは乳組成分析のためにハートオブアメリカDHIA研究所(マンハッタン、カンザス州)に送付した。中赤外分光法(ベントレー2000赤外線牛乳分析器、ベントレー・インストロメンツ、ミネソタ州、チャスカ)によって、バター脂肪、乳タンパク質、乳糖、および無脂固形分(SNF)を分析し、レーザー技術(ソウマカウント500、ベントレー・インストロメンツ、ミネソタ州、チャスカ)によって体細胞の数をカウントし、変形ベルトロー反応(ケムスペック150分析器、ベントレー・インストロメンツ)に基づく化学的手法を用いて乳汁中尿素窒素(MUN)を判定した。牛乳合成物は冷凍し、脂肪酸組成について分析した。
【0092】
血液サンプルを5℃で20分間、2000rpmで遠心分離(CR412遠心分離機、ジュアン社、バージニア州、ウィンチェスター)した後、血漿を採取し、分析するまで冷凍した。ブドウ糖キット(ブドウ糖キット、コード439‐90901、ワコー化学USA社、バージニア州、リッチモンド)を用いて、ブドウ糖酸化酵素反応(例えば、Trinder(1969)参照)によって血漿ブドウ糖を判定した。血漿中のβ−ハイドロキシブチレート(β―hydroxybutirate)(BHBA)濃縮物を、BHBAキット(BHBAキット、カタログ番号2440‐058、スタンビオ研究所、テキサス州、ボルネ)を用いて文献に記載された方法(例えば、Williamson(1962)参照)で判定した。全てのケトン体(アセトン、アセトアセテート、およびBHBA)は、血漿から測定可能であるが、アセトンは高揮発性の化合物であり、アセトアセテートは自発的にアセトンを形成する不安定な化合物であるので、BHBAが最も強固で適切な指標と考えられる(例えば、Nielsen et al.(2005)参照)。NEFAキット(NEFAキット、コード434‐91795、ワコー化学USA社、バージニア州、リッチモンド)を用いて、Johnson and Petersの仕様書(例えば、Johnson and Peters(1993)参照)に従って、非エステル型脂肪酸(NEFA)について血漿を分析した。血糖、NEFA、およびBHBAの各キットのプレパラートを、マイクロプレートリーダー(Cary50MPR、バリアン社、カリフォルニア州、レークフォレスト)で読み込んだ。
【0093】
メタリン酸と共に保存した第一胃サンプルを、12500xgで15分、4℃で遠心分離し(Accuspin Micro 17R、フィッシャー・サイエンティフィック社、コロラド州、デンバー)、遠心分離した第一胃液の副次試料を、揮発性脂肪酸(VFA)分析のためにオールテック研究所(オールテック、ケンタッキー州、ニコラスビル)に送付した。ガスクロマトグラフィー(HP Agilent 6890 GC、ヒューレット・パッカード社、カリフォルニア州、パロアルト)および6ft×4mmのガラスカラムに入れたChromosorb WAW(スペルコ社、ペンシルベニア州、ベルフォンテ)を用いて、VFAを分析した(例えば、Erwin et al.(1961)に記載されているように)。硫酸と共に保存した第一胃サンプル内の窒素アンモニア濃度および窒素画分を判定した。第一胃副次試料を遠心分離し、窒素アンモニア濃度について分析した(例えば、Weatherburn(1967)参照)。第一胃の窒素画分を文献記載の手順に従って判定した(例えば、Reynal et al.(2007)参照)。
【0094】
(データ解析)
4×4のラテン方格法による実験を、各期を28日間として行った。全てのデータを、SAS(SAS(2001)参照)記載のMIXED手順によって分析した。統計分析には、各期の最後の2週中のDMIおよびミルク生産量の週平均値を用いた。第18、19、25、26日目の乳組成、第25、26日目の血液サンプル、第25、26、28日目のBCSおよびBWについて、収集したデータの平均値も算出した。これらのデータは、以下の当てはめモデルを用いて分析した。
【0095】
【数1】

【0096】
窒素画分の計算平均値を、第27日目の9回の時点で採取したサンプルから算出し、以下の当てはめモデルを用いて分析した。
【0097】
【数2】

【0098】
反復測定モデル用いて第一胃のパラメーターを評価した(pH、NH3、VFA)。
【0099】
【数3】

【0100】
食物内のDEMP含有量の増加による一次、二次、三次効果を、多項式直交対比を用いて検証した。重要ではないと思われる相互作用はモデルから除いた。P≦0.05は優位性を示し、0.05≦P≦0.10では傾向を考察した。
【0101】
(結果)
乳牛に実験飼料を与えた結果を図7に示す。図7に示すとおり、エネルギー補正および脂肪補正されたミルクは、栄養補助食品組成物を含む処置を行ったものの方が、栄養補助食品組成物を含まない処置を行ったコントロールよりも多かった。栄養補助食品組成物が300および600gの場合、コントロールに比べてFCMはそれぞれ2.1および2.5kg増加した。
【0102】
乳脂肪の濃度および生成量も、栄養補助食品組成物を含む処置を行ったものの方がコントロールよりも高かった。栄養補助食品組成物が300および600gの場合、コントロールと比較して、乳脂肪生成量はそれぞれ0.10および0.14kg増加した。最良の生産反応は、栄養補助食品組成物が300および600gの処置と関連性があった。
【0103】
本願において言及した全ての出版物および特許は、参照することによりここに組み込まれる。本発明において記載した方法および組成の様々な変形例および変更は、本発明の範囲および精神に含まれることは当業者にとって明らかである。本発明は特定の望ましい実施形態について記載したが、特許請求の範囲に記載した発明はそのような特定の実施形態に過度に制限されることはないと解釈されるべきである。実際は、本発明を実施するために記載した本分野の当業者にとっては明らかな様式も、特許請求の範囲に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥物質換算で、約5〜10%の窒素、約30〜60%の粗タンパク質、および、約0.5%から約1.5%のアンモニアを含む栄養補助食品組成物であって、粒径が0.100〜0.500mmの乾燥粒子から構成される栄養補助食品組成物。
【請求項2】
乾燥物質換算で、約6.5〜7.8%の窒素および約40〜50%の粗タンパク質を含む、請求項1に記載の栄養補助食品組成物。
【請求項3】
乾燥物質換算で、約7%の窒素および約45%の粗タンパク質を含む、請求項1に記載の栄養補助食品組成物。
【請求項4】
粒径が0.100〜0.250mmの乾燥粒子から成る、請求項1に記載の栄養補助食品組成物。
【請求項5】
上記粗タンパク質は、可溶性および不溶性の画分を含む、請求項1に記載の栄養補助食品組成物。
【請求項6】
上記粗タンパク質は、約40〜45%の可溶性タンパク質および約55〜60%の不溶性タンパク質を有する、請求項5に記載の栄養補助食品組成物。
【請求項7】
上記粗タンパク質は、表1または表2に示すアミノ酸特性を有する、請求項1に記載の栄養補助食品組成物。
【請求項8】
上記粗タンパク質は、全酵母由来である、請求項1に記載の栄養補助食品組成物。
【請求項9】
上記粗タンパク質は、酵母エキス由来である、請求項1に記載の栄養補助食品組成物。
【請求項10】
上記粗タンパク質は、サッカロミセス属由来である、請求項1に記載の栄養補助食品組成物。
【請求項11】
上記粗タンパク質は、藻類および細菌からなる群より選択される供給源に由来する、請求項1に記載の栄養補助食品組成物。
【請求項12】
上記粗タンパク質は、乾燥させた後に、細かく砕かれているか、または、ふるいにかけられている、請求項1に記載の栄養補助食品組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の栄養補助食品組成物を生成する方法であって、噴霧器を用いて上記粗タンパク質を乾燥させる工程を包含する、方法。
【請求項14】
反芻動物の腸内に吸収されるタンパク質を増加させる方法であって、
乾燥物質換算で、約6.5〜7.8%の窒素、約40〜50%の粗タンパク質、および約0.5%から約1.5%のアンモニアを含み、粒径が0.100〜0.500mmの乾燥粒子からなる栄養補助食品組成物を反芻動物に供給し、上記栄養補助食品組成物の成分を腸内において利用可能な状態で、上記栄養補助食品組成物を上記反芻動物に与える工程を包含する、方法。
【請求項15】
反芻動物の乳汁の生産を増加させる方法であって、
乾燥物質換算で、約6.5〜7.8%の窒素、約40〜50%の粗タンパク質、および、約0.5%から約1.5%のアンモニアを含み、粒径が0.100〜0.500mmの乾燥粒子から構成される栄養補助食品組成物を反芻動物に供給し、乳汁の生産が増加するような状態で、上記栄養補助食品組成物を上記反芻動物に与える工程を包含する、方法。
【請求項16】
乳汁の生産の増加は、本発明の栄養補助食品組成物が与えられていない反芻動物から生産された乳汁よりも乳脂肪分を多く含む乳汁を生産することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
乳汁の生産の増加は、本発明の栄養補助食品組成物が与えられていない反芻動物から生産された乳汁よりもタンパク質分泌物を多く含む乳汁を生産することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
上記反芻動物の一日の乾燥物質総摂取量の1.5%〜2.5%になるように、上記栄養補助食品組成物を上記反芻動物に与える、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
上記栄養補助食品組成物を標準的な反芻動物用飼料に添加する、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
上記栄養補助食品組成物によって、第一胃でのルーメン発酵を免れるアミノ酸および/またはタンパク質の量が、上記栄養補助食品組成物を与えられていない反芻動物の第一胃でのルーメン発酵を免れるアミノ酸および/またはタンパク質の量よりも多くなる、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
反芻動物用飼料の製造方法であって、乾燥物質換算で、6.5〜7.8%の窒素、40〜50%の粗タンパク質、および約0.5%から約1.5%のアンモニアを含み、粒径が0.100〜0.500mmの乾燥粒子から構成される栄養補助食品組成物と標準的な反芻動物用飼料とを混合する工程を包含する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−519381(P2013−519381A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553098(P2012−553098)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【国際出願番号】PCT/US2011/024940
【国際公開番号】WO2011/100763
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(505404655)オルテック インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】