説明

収差補正器を備えた荷電粒子線装置

【課題】 収差係数の絶対値を高速に求めることができ、高精度の調整が高速にできる、
収差補正器を備えた収束荷電粒子線装置を提供する。
【解決手段】 物点に対して偏向コイル3により入射ビームを傾斜させ,1枚の画像からビ
ーム傾斜時のデフォーカス量と非点量を高速に測定し,得られた結果を最小二乗フィッテ
ィングすることで,ビーム傾斜前の収差係数の絶対値を求め、収差補正器の調整をする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は収差補正器を備えた荷電粒子線装置、特に走査電子顕微鏡(SEM)、走査透過電子顕微鏡(STEM)の自動調整方法などに関する。特に、3次や5次等、いわゆる高次の収差を補正可能な高次収差補正器を備えた走査荷電粒子線装置の自動調整に関する。
【背景技術】
【0002】
走査型電子顕微鏡(SEM)やイオンビーム加工装置(FIB)などの収束荷電粒子線(プローブビーム)を用いる装置においては、プローブを試料に照射することにより、観察画像や試料の加工を行う。これら荷電粒子線装置の分解能や加工精度は、プローブ断面の大きさ(プローブ径)によって決まり、原理的には、これが小さいほど、分解能や加工精度を高めることができる。近年、収束荷電粒子線応用装置向けの収差補正器の開発が進められ、その実用化が進んでいる。収差補正器においては、多極子レンズを用いて回転対称でない電場、磁場をビームに印加することで、プローブビームに対して逆収差を与える。これにより、光学系の対物レンズや偏向レンズなどで発生する球面収差、色収差などの各種収差をキャンセルすることができる。
【0003】
従来の収束荷電粒子線応用装置の光学系においては、軸回転対称なレンズが使用されており、原則的には、各レンズの軸、絞りの軸を合わせ、対物レンズのフォーカスと非点を調整すれば、プローブ径を極小値に調整することができた。また、フォーカス調整と非点補正を行う際には、フォーカスを変えた条件でプローブの画像を取得し、画像の先鋭度を最低限2方向で比較しながら、先鋭度の一番高いところを選ぶことで調整を行っていた。一方、収差補正器を備えた収束荷電粒子線応用装置においては多極子レンズを用いた収差補正器によって回転対称でない電場、磁場を印加する。これにより、これらの装置においては従来の回転対称光学系では影響を及ぼさない高次の収差の影響が顕著になる。装置の性能を最大限に引き出すためには、これらの収差も含めてビームに含まれる収差の種類(収差成分)と各収差成分の量を正確に計測し、収差補正器を適切に調整することで全ての収差成分を除去しなければならない。
【0004】
従来、SEMやFIBなどのプローブビームを用いた荷電粒子線装置ではプローブ断面形状を直接観察することができないため,試料画像から画像処理によって収差を含んだ状態におけるプローブ形状の情報を抽出し、無収差状態におけるプローブ形状からの大きさや輪郭、輝度などの差異を判断することで収差の量と種類を判断するという方法が知られている。
【0005】
例えば、特表2003-521801号公報(特許文献1)には、プローブ形状を抽出する方法として、フーリエ空間においてアンダーフォーカス(試料の後方でビームが収束する状態)或いはオーバーフォーカス(試料の前方でビームが収束する状態)における試料画像をジャストフォーカス(試料上にビームが収束した状態)における試料画像で除算することで試料構造情報を消去し,プローブ形状を得る方法が述べられている。この方法では,フォーカスをずらすことによってプローブに含まれる収差成分の情報を増幅しながら,プローブの可視化を行っている。また,特開2005-183086号公報(特許文献2)には、上記手法によって得られたプローブ形状から収差の種類と量の決定方法についてはにその詳細が記述されている。これによれば,上記の手法によってアンダーフォーカス,及びオーバーフォーカスにおけるプローブ形状を求め,得られたプローブ形状の重心から等角間隔に複数本のラインを引き,ラインプロファイル情報を抽出する。そしてそれぞれのラインプロファイルの幅,左右非対称性,中心付近凹凸を表す特徴量を求める。次に,収差が存在するときにこれらの特徴量が,ラインの角度及びアンダーフォーカス,オーバーフォーカスといったフォーカスの状態によって変化することから,上記特徴量を変数とする3次までの幾何収差及び寄生収差(デフォーカス,1〜3次非点,コマ,球面,スター)を表すパラメータを定義し,各収差を表す目安の量としている。
【0006】
一方,透過電子顕微鏡(TEM)においては、入射角を対物レンズ光軸から傾斜させた電子ビームを用いてアモルファス試料画像のフーリエ変換を行うことでディフラクトグラムと呼ばれる画像を取得することができる。ディフラクトグラムの形状は収差の影響を反映しているため,ディフラクトグラムの画像を相互相関などを利用して処理することにより収差係数を求める試みが古くから行われている。
【0007】
たとえば,非特許文献1には、傾斜ビームのディフラクトグラムからデフォーカスと非点の大きさを測定し,逆問題を解くことで収差係数を求める手法が開示されている。また,非特許文献2には、異なるビーム傾斜条件で撮影した2枚の画像の相互相関を計算することで、ビーム傾斜による画像の移動量を算出し,逆問題を解いて収差係数を求める手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2003−521801号公報
【特許文献2】特開2005−183086号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Ultramicroscopy 81 (2000) pp.149-161
【非特許文献2】Optik 99 (1995) pp.155-166
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
アンダーフォーカス及びオーバーフォーカスのプローブ形状から収差を計算するという特表2003-521801号や特開2005-183086号公報等に開示された方法においては,求められる値は収差の相対的な大きさを表す目安の量であり,幾何光学及び波動光学において定義される収差係数そのものではない。そのため,収差係数の理論値や,文献,他の装置等との比較検証が困難であり、精度の絶対評価ができないので、補正器の精密調整に限界がある。また収差補正後の収差係数の値を知るためには別手法を用いて換算しなければならない等の課題がある。
【0011】
また、走査荷電粒子線装置の場合は透過電子顕微鏡と異なりディフラクトグラムが取得できないため、収差の情報を試料画像のみから判断しなければならない。しかし,走査荷電粒子線装置では荷電粒子線を集束して試料上に照射するため,画像が含む収差情報も集束されており,ディフラクトグラムのように1枚の画像から収差の大きさを判断することができない。従って従来TEMで行われていた傾斜ビームを用いる手法を走査荷電粒子線装置に単純に適用することはできない。
【0012】
そこで本発明では,収差係数の絶対値を求めることが可能で、得られた収差係数を用いて収差補正器の調整を高精度に実行可能な収束荷電粒子線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明では、計測試料あるいは被検査試料表面に対して傾斜した荷電粒子線を前記試料上に走査して二次荷電粒子信号を取得し、当該得られた二次荷電粒子信号の二次元強度分布情報から傾斜によるデフォーカス量と非点量を決定し、得られたデフォーカス量と非点量から収差係数を求める。得られた収差係数は、収差補正器の調整に用いられる。
上に述べた収差係数の計算手法は、
(1)ビーム傾斜による光路差の変化が収差を増大させる、(2)ビーム傾斜による収差の変化量は、ビームの傾斜条件とビーム照射系が元々持っている収差の量に依存する、という2つの基本原理を利用している。つまり、本発明の収差係数の計算手法は、デフォーカス量と非点量の傾斜条件依存性を計測し、計測した依存性から傾斜が無い状態での収差係数を逆算する点に特徴を有する。傾斜条件依存性の"傾斜条件"とは、所定の光軸(例えば、荷電粒子カラムの中心軸や対物レンズ光軸など)に対する荷電粒子線の方位角や傾斜角などで表現される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば,荷電粒子線応用装置において光学系の収差係数の絶対値を得ることができるため,高速に収差補正器の調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】収差係数を求めるためのC1(τ)測定値と最小二乗フィッティングを表す。
【図2】実施例1における装置の構成図を表す。
【図3】階段型標準試料の模式図を示す。
【図4】実施例1の装置の全体動作フローを表す。
【図5】階段型試料台を用いて焦点合わせを行った場合の試料画像の例を表す。
【図6】図4に示すフロー図における収差係数測定フローの詳細図を表す。
【図7】ビームを傾斜させた場合の試料画像の変化と,デフォーカス量及び非点量の対応を表す。
【図8】実施例2における装置の構成図を表す。
【図9】実施例3における装置の構成図を表す。
【図10】実施例3の装置におけるインターフェース画面を表す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
個々の実施形態の説明の前に、本実施例の収差係数の測定手法に共通する計測原理について説明する。
【0017】
本実施例に記載の収差係数の測定手法では,入射荷電粒子ビームの軸をZ軸方向から傾斜させて試料上に走査して二次荷電粒子の二次元画素情報を取得する。この画素の二次元分布情報を走査偏向器の偏向周波数に同期して配列させた画素列がいわゆる「画像」である。上記の二次元画素情報の取得動作を入射ビームの傾斜方位角を変化させて複数回実行し、方位角の違う状態で一次荷電粒子線が走査された二次元分布情報を複数取得する。傾斜ビームを用いて二次元分布情報を取得することは、物理的には、元々のプローブビームに含まれている収差を強調することに相当する。光軸に沿って入射するビームは光学系に含まれる全ての収差が重ね合わさった状態であり,ここから特定の収差量を取り出すのは困難である。しかし,ビームを傾斜させると傾斜方位角に応じて各収差成分が異なる周期性を持って顕在化する。従って,様々な方位角の傾斜ビーム画像を撮影し,画像の変化を追跡することで,容易に複数の収差成分を区別して収差量を求めることができる。
【0018】
次に,得られた二次元分布情報を用いて各二次元分布情報に含まれるデフォーカス量と非点隔差とを求める。ここで、「デフォーカス量」とは、インフォーカス状態とデフォーカス状態でのフォーカス位置の差を意味し、「非点隔差」とは、荷電粒子線光軸上の直交する2方向における焦点距離の差を意味する。
【0019】
方位角を変化させながら,各方位角におけるデフォーカス量と非点量を測定すると,得られたデフォーカス量と非点量のデータ列が得られる。この得られたデータ列をビーム傾斜時のデフォーカスと非点を表す式に代入して最小二乗フィッティングを行うことにより,傾斜前の収差係数の絶対値を計算する。
【0020】
物点に対してビームをある一定の傾斜角を持った状態で照射させると,ビームの傾斜により電子線に光路差が発生し,試料画像にはビーム傾斜による収差が加わる。一般に,収差による光路差を表す関数をχ(ω)とすると,χ(ω)は、複数の次数の収差係数を用いて解析的に表現することができる。ここで、χ(ω)を3次までの収差係数について書き下すと,(式1)で表される。

(式1)
(式1)において, A0,C1,A1,B2,A2,C3,S3,A3はそれぞれ像移動,デフォーカス,2回対称非点収差,軸上コマ収差,3回対称非点収差,3次の球面収差,スター収差,4回対称非点収差をそれぞれ表す。また,ωは物面上の複素座標を表す。ここで,入射電子ビームを傾斜角でτ傾けると,χ(ω)は以下のように書くことができる。ここで、傾斜角τは複素数で表現されるものとする。

(式2)
(式2)において,A0(τ),C1(τ),A1(τ)…はそれぞれ電子ビームを傾斜させたときの収差係数を表す。
【0021】
ビーム傾斜時の各収差係数は,電子線の傾斜角度τと,ビーム傾斜をしないときの収差係数の和によって表される。たとえば3次までの収差係数を考慮した場合、傾斜によって現れるデフォーカス(C1(τ))は

(式3)

となる。
同様に,傾斜によって現れる2回対称非点(A1(τ))は

(式4)
となる。
(式3)と(式4)から明らかなように,C1(τ)とA1(τ)には傾斜前の3次までの収差係数が全て含まれている。ここで、より高次の収差係数を式(1)に含めれば、χ(ω)は、ωに関する任意次数の多項式として展開することが可能である。

【0022】
次に,入射ビームの照射方向を複素表示すると,τはレンズ光軸に対する傾斜角tとレンズ面上の方位角φから

と表すことができる。これを(式3)に代入して整理すると最終的に(式3)及び(式4)は

(式5)

の形で書くことができる。
ここでmk(t)は,ビーム傾斜前の各収差とtの線形結合から成る式で表される係数である。

図1に、C1(τ)と,その最小二乗フィッティングの例を示す。(式3)に

を代入して整理すると,

(式6)

となる。

を代入すると,(式3)は最終的には

(式7)
となる。従って,ある定数値tについて,φを変化させてC1(t,φ)の値を測定し,得られた値を使って(式7)のφについて最小二乗フィッティングすると,各項の係数から(C1+2C3t2),ReB2,ImB2,ReS3,ImS3の値を求めることができる。また,ビーム非傾斜時のC1の値を事前に測っておくことで,(C1+2C3t2)の値からC3の値を求めることができる。以上のようにして,ビーム傾斜時のC1(t,φ)の測定値から傾斜前の収差係数を求めることができる。
【0023】
A1(t,φ)についても同様の計算を行うことができる。A1(t,φ)にはC1(t,φ)の式にはあらわれなかったA2,A3に関する項が含まれているため,A2,A3に関しては、A1(t,φ)を調べることで初めて求めることができる。以上のようにしてA1(t,φ)とC1(t,φ)の値を測定することで,ビーム傾斜前の全ての収差係数を計算することができる。
【0024】
そして,得られた

を連立して解くことでビーム傾斜前の全ての収差係数を計算することができる。
【0025】
以上の要領で計算された収差係数をもとに収差補正器の調整量が計算され、これにより収差補正器の調整が実行される。
【0026】
本実施例で説明した手法を、荷電粒子線を対象物上に走査して画像情報を取得する走査荷電粒子線型の装置に適用することにより、従来よりも高精度に収差係数の値を計算することが可能となる。また、これにより、収差補正器の調整を従来よりも高精度に実現することが可能となる。なお、本実施例で説明した手法は、走査電子顕微鏡(SEM),走査透過型電子顕微鏡(STEM)の他、集束イオンビーム装置(FIB)にも適用可能である。
【実施例1】
【0027】
本実施例では、4極子−8極子系の電磁界重畳型収差補正器を備えた走査型電子顕微鏡(SEM)での実施形態について詳細を説明する。本実施例で説明する収差補正器は、多極子レンズを複数段備えており、高次の収差補正が可能である。また、本実施例の走査電子顕微鏡は、段差のついた標準試料を用いてSEM像を取得し、当該標準試料のSEM像を用いて収差係数を算出する点にも特徴を有する。
【0028】
図2に、本実施例のSEMのシステム構成の概略を表す。図2に示すSEMは、試料31を保持する試料ステージ30を備えた試料室22と、試料31に対して電子線を照射し、発生する二次電子ないし反射電子を検出し検出結果を信号出力する機能を備えた電子光学カラム21、電子光学カラムの各構成部品に対して、供給電流や供給電圧などの制御を行う制御電源24、出力された信号を処理して各種の演算を行う情報処理装置23、情報処理装置23により処理された画像データを表示する画像処理装置12などにより構成される。装置の動作中は、電子光学カラム21および試料室22内は高真空状態に維持される。カラム部電子源1から出射された電子は、第1コンデンサレンズ2,偏向コイル3を通過し,収差補正器4に入射する。本実施例のSEMにおいて、第1コンデンサレンズ2,収差補正器4,偏向コイル3,第2コンデンサレンズ5は収差補光学系20を形成している。
【0029】
収差補正光学系20は電子線を平行軌道にして収差補正器4に導く第1コンデンサレンズ2と,収差測定用に入射ビームを光軸に対して傾斜させる働きを持つ偏向コイル3と,実際に収差を補正する収差補正器4と,収差補正器4を出た電子が対物レンズ7上方の適切な位置でクロスオーバーを作るように導く第2コンデンサレンズ5から成る。
【0030】
次に、収差補正器内4を構成する多極子の動作と、当該多極子内を通過する電子線の軌道について説明する。収差補正器20は、光軸に沿って配置された4段の多極子レンズによって構成され,1段目と4段目の多極子レンズには静電型4極子場と8極子場が重畳される。また,2段目と3段目には、静電型4極子場と磁界4極子場が重畳される。各段の電場及び磁場の調整によって光軸上を通過する電子線の軌道をx方向,y方向独立に変化させることができる。これを用いて,1段目の静電多極子場によって入射電子線をx軌道とy軌道に分離し,2段目と3段目でx軌道とy軌道の収差を独立に消去し(正確には、対物レンズ7など電子光学カラム21の構成要素により発生する収差の逆収差を与える),4段目で分離された軌道を再び元に戻す,という操作を行うことで,電子線が補正器内を通過する間に収差を補正することができる。
【0031】
本実施例のSEMは、対物レンズの物点へのビーム入射を対物レンズの光軸に対し傾斜できる機構を備えている。例えば、本実施例のSEMは、収差補正器上部に2段偏向器3を有しており、これによって電子ビームの中心軸が対物レンズ7の光軸に対してある傾斜角と方位角を持ったビームを作り出すことができる。ビームの傾斜角と方位角に関する情報はメモリ9内に格納され、収差係数の算出時や画像データの取得時などに参照される。
【0032】
収差補正器4を通過した電子線は第2コンデンサレンズ5 を通過し,縮小される。第2コンデンサレンズ5 を通過した電子ビームは走査コイル6によって走査され,対物レンズ7によって試料ステージ30上に設置されたステージ31上の試料32を照射する。試料32から放出された2次電子や反射電子などの二次荷電粒子は検出器8により二次荷電粒子信号として検出され、輝度分布形式の画像データとして電子光学カラム21から情報処理装置23へと出力され、最終的にメモリ9に記憶される。
【0033】
情報処理装置23では、演算器10が、受け取った画像データを用いて光学系に残存する各収差の収差係数を計算する。収差係数が計算されると、収差に応じた補正器制御のための電流量が算出され,現時点で収差補正器4の多極子レンズに印加されている電流値ないし電圧値との差分計算により補正信号が計算される。補正信号は、出力器11を通じて制御電源24に転送され、結果的にはSEM側の収差補正器4にフィードバックされる。また,算出された収差係数の情報や試料の画像データは画像出力装置12に出力される。
【0034】
本実施例のSEMでは、デフォーカス量と非点量を決定するための画像を一括して取得するため、図3に示すような段差のついた標準試料を用いる。図3に示す標準試料は、段差がLz1〜Lz5である階段型の試料台上に、長さLx1〜Lx5、幅Lyの平坦面が形成された構造を有する。この平坦面が、電子ビームが照射されるビーム照射面をなし、ホールパターンや金蒸着粒子などの球状の試料が設置されている。ビーム照射面の長さLx1〜Lx5、幅Ly、更には段差Lz1〜Lz5の情報はメモリ9内に格納されており、収差係数の算出処理や各種の画像演算処理の際に参照される。
【0035】
次に、図4、図7を用いて、本実施例のSEMにおいて収差補正を行う手順について説明する。図4には、本実施例における処理の全体フローチャートを示す。
【0036】
まず,前準備としてステージを移動してフォーカス合わせ及び非点調整に用いる標準試料を走査して,通常の光軸合わせ(STEP1),フォーカス合わせ及び非点調整(STEP2)を行う。STEP2でのフォーカス合わせ及び非点調整の際には、図3に示す標準試料の階段の中央付近を基準段とし,基準段上の試料に対してフォーカスが合い,非点が補正された状態に装置を調整する。これらのフォーカス合わせや非点調整は、メモリ9に格納された段差情報Lzと、図2では図示していない試料高さ計測手段からの試料高さ情報を元に、制御電源24により実行される。この状態で、標準試料の画像を取得する(STEP3)。参照画像用の画像を取得する際には、電子ビームの走査範囲を長さLx、幅Lyに設定し、標準試料のビーム照射面の画像を一括して取得し、格段の長さ情報Lx1〜Lx5、幅情報Lyを用いて、一括取得画像から格段のビーム照射領域に相当する面積の画像データ(画素の分布データ)を切り出す。切り出された画像データは、ビーム照射面の段数に対応する参照情報と対応させてメモリ9内に格納される。STEP3の動作は以上で完了である。
【0037】
STEP3で取得される試料画像の一例(標準試料の基準段へのフォーカス合わせが終了した状態での試料画像)を図5に示す。分かりやすさを考慮し、階段試料の各段には段を示す参照番号1〜5を付した。基準段(段番号3)に合わせてフォーカス調整をした場合,基準段の試料に対してはフォーカスが合う(ジャストフォーカス状態)が,基準段より上側の試料(段番号4,5)に対してはアンダーフォーカス状態になり,同様に基準段より下側の試料(段番号1,2)に対してはオーバーフォーカス状態になる。この状態で,偏向コイル3を操作することで傾斜ビームを作り出し,C1(τ),A1(τ)を測定する。ここまでが収差測定の前準備で、STEP4が実際の収差係数測定の実行ステップである。
【0038】
図6に、図4に示すフローチャートのSTEP4をより詳細に示したフローチャートを示す。上述のフォーカス状態から偏向コイル3を調整し,物点に対してある傾斜角τと方位角φをもって電子ビームを入射させる(STEP11,12)。傾斜角τおよび方位角φの範囲と傾斜角、方位角変化の刻み幅は予め設定され、メモリ9内に格納されている。情報処理装置23はメモリに格納されたτ、φの設定情報を読み出して制御電源24に転送する。制御電源は、情報処理装置23の指示に基づいて偏向コイル3を制御し、電子ビームが所定の傾斜角、方位角で試料に照射されるようにする。この状態で標準試料のビーム照射面の画像を一括取得し(STEP13),各段のビーム照射領域に対応する画像データを取得した一括画像から抽出する(STEP14)。次に、各段のビーム照射領域の画像データを画像演算することにより、ビーム傾斜角がτの状態におけるジャストフォーカス位置とインフォーカス位置を推定する(STEP15)。ジャストフォーカス位置の推定の際には、各パターンのエッジについてx方向、y方向の長さを計算し、各パターンのx方向の長さの総和が最も小さい段番号の位置をx方向のジャストフォーカス状態位置、y方向の長さの総和が最も小さい段番号の位置をy方向のジャストフォーカス状態位置とする。インフォーカス位置推定の際には、例えば、各パターンのエッジについてx方向、y方向の長さの差が最も小さい段番号の位置をインフォーカス位置と推定する。以上の説明において、各種の画像演算処理は、全て図2の演算器10により実行される。また、ジャストフォーカス、インフォーカスの各状態の判定には、上で説明した以外にも各種のアルゴリズムを使用可能である。
【0039】
次に、得られた位置情報(例えば段番号で表現可能)とメモリ9に格納されたビーム照射面長さ情報Lx1〜Lx5および段差情報Lz1〜Lz5を用いてC1(τ)及びA1(τ)を測定する(STEP16)。
【0040】
ここで、図7を用いて、STEP14〜16の処理ステップで実行される方法について詳細に説明する。また、図4のフローと同様、各種の画像処理、演算処理は、メモリ9内に格納されたソフトウェアを演算器10が実行することにより、実行されているものとする。
【0041】
図7は、ビーム傾斜前と傾斜後の試料画像の変化とデフォーカス及び非点の関係を示す模式図である。ビーム傾斜後の試料画像はビーム傾斜前とフォーカス状態が変化しており,また傾斜による非点収差が加わっているため,インフォーカス位置(互いに90°異なった方向に現れる2つの非点収差がバランスする位置)が傾斜前と異なる。図7に示す例では、ビーム傾斜後のインフォーカス位置はビーム傾斜前に比べて、段番号3から4へ1段分上側に移動している。また、段番号1〜3の位置では、ビーム傾斜後にy方向の非点収差が現れ、段番号5の位置では、x方向の非点収差が現れている。デフォーカス量はインフォーカス状態とデフォーカス状態でのフォーカス位置の差で定義されるから、図7の場合には、デフォーカス量は、インフォーカス状態である段番号4の高さと(ビーム傾斜した状態での)ジャストフォーカス状態である段番号3の高さの差がデフォーカス量になる。よって、段番号3と4の各位置情報と各位置間の高さの差の情報(段差情報Lz3)から、傾斜角がτの場合におけるデフォーカス量C1(τ)が求まる。
【0042】
また,非点隔差は荷電粒子線光軸上の直交する2方向における焦点距離の差として定義されるから、x方向に最もフォーカスの合っている段とy方向に最もフォーカスの合っている段の距離の差を非点隔差とみなすことができ、これをA1(τ)と定義する。図7に示す場合においては、x方向に最もフォーカスの合っている段は段番号3の位置、y方向に最もフォーカスの合っている段は段番号5の位置であるから、従って、非点量A1(τ)は、段番号3と5の高さの差として求まる。
【0043】
45°方向の非点についても同様に決定する。具体的には,参照画像と取得画像の両方について0°方向及び45°方向のラインプロファイルをとり,ライン上でのフォーカスの変化を測定すればよい。0°、45°とは、取得画像上で適当な直交座標系を定義し、x軸を基準として0°、45°を定めればよい。以上説明したステップ13〜16の処理を測定の1ステップとしC1(τ)、 A1(τ)を測定し、φ、C1(τ)、 A1(τ)の各データをメモリ9に保存する。
【0044】


【0045】
以上の行程によって現在の光学系に含まれる収差係数を測定したら,得られた収差係数を収差補正器に渡す補正信号の大きさを決定し(STEP5),補正信号を収差補正器にフィードバックし,補正信号に従って収差補正器の場の強さを変化させることで収差を補正する(STEP6)。その後,補正後の試料画像を撮影し(STEP7),図7に示した手法と同じ手法を用いて補正後の収差係数を測定する(STEP8)。補正後の係数が得られたら実際の補正量に応じて補正を再度行うか,処理完了とするか判断する(STEP9)。
【0046】
以上説明したように,本実施例の階段型試料台を用いることで,1枚の画像からデフォーカス量と非点量の測定を行うことができ,少ない画像で高速に収差係数を算出することが可能となる。なお、本実施例では、4極子−8極子系の収差補正器を用いて説明を行ったが、他の構成の多極子レンズを用いた収差補正器にも適用できることは言うまでもない。
【実施例2】
【0047】
本実施例の荷電粒子線装置は、試料ステージ上にピエゾアクチュエータを搭載することにより、階段状標準試料のデフォーカス量と非点隔差量を高速に決定することを目的としたSEMである。
【0048】
図8には、実施例2の装置構成を示す。図2と同じ機能・動作の部分については説明は省略するが、図8においては、試料ステージ30上にピエゾアクチュエータを用いた高さ方向駆動ステージ31が搭載されている。収差によるフォーカス変化の範囲は,収差補正の進度に応じて変化するため,階段状試料台を用いる場合には,収差補正中に階段状試料台のいずれの段においてもフォーカスが合わなくなることがないように高さの異なる試料台を複数用意するなどの必要がある。しかし,ピエゾアクチュエータを用いた高さ方向駆動ステージを用いることによって,階段状試料台の高さを変化させることができるようになるため,階段状試料台の中心が常にインフォーカス状態になるように調整することができる。これによって,階段状試料台単独で用いるより正確に焦点ずれと非点量を測定することができる。
【実施例3】
【0049】
実施例3として,測長SEMに本発明を適した場合について示す。
【0050】
図9には本実施例の測長SEMのシステム構成図を示す。測長SEMは、画素計算を行うことにより、測定した画像データ上の2点間の距離を計測する装置である。本実施例の測長SEMは,試料を装置内に導入するための試料準備室23、図2に示すSEMは、試料31を保持する試料ステージ30を備えた試料室、試料31に対して電子線を照射し、発生する二次電子ないし反射電子を検出し検出結果を信号出力する機能を備えた電子光学カラム21、電子光学カラムを制御するカラム制御装置38、出力された信号を処理して各種の演算を行う情報処理装置22、情報処理装置22により処理された画像データを表示する画像処理装置12などにより構成されるが、各構成要素の機能・動作は、実施例1で説明した内容とほぼ同様であるので、説明は繰り返さない。
【0051】
試料準備室22と装置本体の試料室はゲートバルブ25で区切られている。試料を装置内に導入する際はゲートバルブが開き,試料搬送機構39により試料が装置本体の試料室内に導入される。また,装置の調整は試料台30に設置された標準試料33を用いて実施される。
【0052】
本実施例の測長SEMは、磁界型対物レンズ5の上方にブースティング電極34を備える。ブースティング電極に電場を印加することで静電レンズが形成され、当該静電レンズの強さを変えることによりフォーカスを微調整することができる。ブースティング電極34に印加する電圧は、ブースティング電源35を制御することで変動させる(ブースティングフォーカス)。また、試料台30には、リターディング電源36により入射電子ビームに対する減速電界を形成するための電圧(リターディング電圧)が印加されているが、このリターディング電圧を制御することによってもフォーカスを調整することができる(リターディングフォーカス)。通常、磁界型対物レンズの励磁電流に対する応答は磁気余効のために遅れるので、対物レンズの励磁電流ではなく、ブースティング電圧やリターディング電圧を調整することにより高速にフォーカス変更を行うことができる。
【0053】
実施例1,2が試料に高さ変化をつけることで複数のフォーカス情報を1枚の画像に持たせるのに対して,本実施例では電子線自体のフォーカス位置を変更してデフォーカス量を測定するため,図3のような階段型試料は不要である。
【0054】
得られた画像からはC1(τ),A1(τ)を求めるためには、たとえば以下の方法を用いることができる。
【0055】
まず、ブースティング電圧もしくはリターディング電圧を変化させることで電子線のフォーカスを振りながら各フォーカス点で試料画像を撮影する。次に,得られた各画像について方向性鮮鋭度(0°,45°,90°,135°の方向微分の二乗和)を計算する。方向性鮮鋭度は方向ごとにフォーカス値の関数となる。
【0056】
各方向鮮鋭度がピークとなるフォーカス値をそれぞれp0,p45,p90,p135とすると,非点収差A1(τ)の大きさδと方向αおよびC1(τ)の大きさはは以下の式で表すことができる。

(式8)

(式9)

(式10)
すなわち、4方向の方向微分二乗和の最大値の平均をとった値がデフォーカス値に相当する。非点隔差量は、各非点方向において方向微分の二乗和が最大となるフォーカス位置を三角関数でフィッティングし、得られたフィッティングカーブの極大値と極小値の差を計算することにより求めることができる(極大値と極小値の差を非点隔差と定義した場合)。この方法を用いれば,1回の操作でデフォーカス量と非点量を同時に求めることが可能である。
【0057】
本実施例の測長SEMにおいては、傾斜角τの設定値と方位角φの範囲およびその刻み幅δφは、画像表示装置12上に表示されるGUIインターフェースを用いて設定することができる。また、収差補正をマニュアル調整する場合,使用者はこの画面を通じてビーム傾斜の設定,結果の確認を行う。例えば、傾斜角τは傾斜角設定部50に所定の値を入力することにより設定される。またδφは,方位角分割数設定部51で傾斜ビーム画像1周当たりの画像取得枚数を指定することにより設定される。更にまた、補正指定部52に表示された各種の収差を選択することにより、補正を行いたい収差の種類を指定することができる。演算器10は、式5に示されるC1(τ),A1(τ)の形を、指定された種類の収差係数を含む形式で生成し、図6のステップ19に示される最小自乗フィッティングの際に使用する。これにより、装置ユーザの選択した任意の収差係数が計算される。算出された収差係数は結果表示部52に表示される。補正開始及び終了のプロセスは補正プロセス選択部54で決定できる。また,画像表示部55には収差補正前と収差補正後の試料画像が表示され,補正の効果を確認することができる。
【0058】
以上、本実施例で説明した静電レンズフォーカスを使用することで,フォーカス移動を高速に行うことができ,短時間にデフォーカス量と非点量を測定することができ,よって高速に収差係数を求めることが可能となる。
【符号の説明】
【0059】
1:カラム部電子源、2:第1コンデンサレンズ,3:偏向コイル、4:収差補正器、5:第2コンデンサレンズ、6:走査コイル,7:対物レンズ,8:検出器,9:メモリ,10:演算器,11:出力器,12:画像表示装置,20:収差補正光学系、21:電子光学カラム。22:試料室、23:情報処理装置、24:制御電源、25:ゲートバルブ、30:試料ステージ、31:試料、33:標準試料、34:ブースティング電極、35:ブースティング電源、36:リターディング電源、37:収差補正装置用制御電源、38:カラム制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次荷電粒子線を試料上に走査し、当該走査により発生する二次荷電粒子を検出して検出結果を二次荷電粒子信号として出力する荷電粒子光学系と、
当該荷電粒子光学系の制御手段と、
前記出力された二次荷電粒子信号を処理し、前記一次荷電粒子線の走査領域に対応する画素の二次元分布情報を取得する情報処理装置とを有し、
前記荷電粒子光学系は、
当該荷電粒子光学系で発生する収差を低減する収差補正器と,
前記荷電粒子線を該荷電粒子線の光軸から傾斜させた状態で前記試料上に導く手段とを有し、
前記情報処理装置は、
前記一次荷電粒子を前記傾斜した状態でかつフォーカスの度合いを変えて前記試料上に走査することにより得られる複数の二次元分布情報の方向鮮鋭度から前記荷電粒子光学系に含まれる焦点ずれ量と非点隔差を計算し、
前記一次荷電粒子線を前記傾斜が無い状態で前記試料上に走査して得られる二次元分布情報と、前記計算された焦点ずれ量および非点隔差とを用いて、前記荷電粒子光学系に発生する任意の次数の収差係数を計算することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記複数の二次元分布情報の方向鮮鋭度がピークとなるフォーカス値に基づいて、焦点ずれ量および非点隔差を計算することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記荷電粒子光学系は、磁界型対物レンズを備え、
前記荷電粒子光学系の制御手段は、前記フォーカスの度合いを前記磁界型対物レンズの調整により変更することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項4】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記情報処理装置は、
前記複数の二次元分布情報の方向鮮鋭度から前記荷電粒子光学系に含まれる焦点ずれ量、非点隔差及び非点方向を計算し、
前記傾斜が無い状態で前記試料上に走査して得られる二次元分布情報と、前記計算された焦点ずれ量、非点隔差及び非点方向とを用いて、前記収差係数を計算することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項5】
一次荷電粒子線を試料上に走査し、当該走査により発生する二次荷電粒子を検出して検出結果を二次荷電粒子信号として出力する荷電粒子光学系と、
当該荷電粒子光学系の制御手段と、
前記出力された二次荷電粒子信号を処理し、前記一次荷電粒子線の走査領域に対応する画素の二次元分布情報を取得する情報処理装置とを有し、
前記荷電粒子光学系は、
磁界型対物レンズと、
当該荷電粒子光学系で発生する収差を低減する収差補正器と,
前記荷電粒子線を該荷電粒子線の光軸から傾斜させた状態で前記試料上に導く手段とを有し、
前記情報処理装置は、
前記一次荷電粒子を前記傾斜した状態でかつフォーカスの度合いを変えて前記試料上に走査することにより得られる複数の二次元分布情報から前記荷電粒子光学系に含まれる焦点ずれ量と非点隔差を計算し、
前記一次荷電粒子線を前記傾斜が無い状態で前記試料上に走査して得られる二次元分布情報と、前記計算された焦点ずれ量および非点隔差とを用いて、前記荷電粒子光学系に発生する任意の次数の収差係数を計算し、
前記フォーカスの度合いは前記磁界型対物レンズの調整により変更することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項6】
請求項5に記載の荷電粒子線装置において、
前記情報処理装置は、
前記複数の二次元分布情報から前記荷電粒子光学系に含まれる焦点ずれ量、非点隔差及び非点方向を計算し、
前記傾斜が無い状態で前記試料上に走査して得られる二次元分布情報と、前記計算された焦点ずれ量、非点隔差及び非点方向とを用いて、前記収差係数を計算することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項7】
荷電粒子線を試料上に走査し、当該走査により試料を透過した荷電粒子を検出して検出結果を透過荷電粒子信号として出力する荷電粒子光学系と、
当該荷電粒子光学系の制御手段と、
前記出力された透過荷電粒子信号を処理し、前記荷電粒子線の走査領域に対応する画素の二次元分布情報を取得する情報処理装置とを有し、
前記荷電粒子光学系は、
当該荷電粒子光学系で発生する収差を低減する収差補正器と,
前記荷電粒子線を該荷電粒子線の光軸から傾斜させた状態で前記試料上に導く手段とを有し、
前記情報処理装置は、
前記一次荷電粒子を前記傾斜した状態でかつフォーカスの度合いを変えて前記試料上に走査することにより得られる複数の二次元分布情報から前記荷電粒子光学系に含まれる焦点ずれ量と非点隔差を計算し、
前記荷電粒子線を前記傾斜が無い状態で前記試料上に走査して得られる二次元分布情報と、前記計算された焦点ずれ量および非点隔差とを用いて、前記荷電粒子光学系に発生する任意の次数の収差係数を計算することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項8】
請求項7に記載の荷電粒子線装置において、
前記情報処理装置は、前記計算された収差係数を用いて前記収差補正器の調整量を計算
することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項9】
請求項7に記載の荷電粒子線装置において、
前記荷電粒子光学系は、静電レンズを備えた磁界型対物レンズを備え、
前記荷電粒子光学系の制御手段は、前記フォーカスの度合いを当該静電レンズの調整により変更することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項10】
請求項9に記載の荷電粒子線装置において、
前記フォーカス調整の範囲幅に関する情報が格納された記憶手段を備えることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項11】
請求項7に記載の荷電粒子線装置において、
前記情報処理装置は、前記二次元分布情報から焦点ずれ量と二回対称非点量を計算し、当該計算された焦点ずれ量と二回対称非点量を用いて収差係数を計算することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項12】
請求項7に記載の荷電粒子線装置において、
前記荷電粒子光学系は、磁界型対物レンズを備え、
前記荷電粒子光学系の制御手段は、前記フォーカスの度合いを前記磁界型対物レンズの調整により変更することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項13】
請求項7に記載の荷電粒子線装置において、
前記情報処理装置は、
前記複数の二次元分布情報から前記荷電粒子光学系に含まれる焦点ずれ量、非点隔差及び非点方向を計算し、
前記傾斜が無い状態で前記試料上に走査して得られる二次元分布情報と、前記計算された焦点ずれ量、非点隔差及び非点方向とを用いて、前記収差係数を計算することを特徴とする荷電粒子線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−178374(P2012−178374A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−140353(P2012−140353)
【出願日】平成24年6月22日(2012.6.22)
【分割の表示】特願2008−40815(P2008−40815)の分割
【原出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】