説明

収着剤パウチを使用する、水性フルオロポリマー分散体からのフルオロ界面活性剤の除去

容器にフルオロポリマー分散体を充填する工程と、前記容器内に、フルオロ界面活性剤収着剤を含有する布パウチを挿入し、その結果、前記収着剤が、前記容器内で前記フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散体と接触し、前記フルオロ界面活性剤を保持して前記フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散体のフルオロ界面活性剤含有量を低減する工程と、前記布パウチを前記容器から除去する工程とによって、水性フルオロポリマー分散体のフルオロ界面活性剤含有量を低減するための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性フルオロポリマー分散体からフルオロ界面活性剤を除去するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベリー(Berry)に対する米国特許公報(特許文献1)に記載されているように、フルオロ界面活性剤は、非テロゲン性分散剤として機能するフルオロポリマーの分散重合において重合助剤として用いられる。米国特許公報(特許文献2)(セキ(Seki)ら)および米国特許公報(特許文献3)(クールズ(Kuhls))にさらに教示されているように、これらの高価なフルオロ界面活性剤をポリマーが分散体から凝固された後に水性相からかまたは濃縮前に水性ポリマー分散体中で回収することができる。クールズおよびセキらの両方において教示されているようにフルオロ界面活性剤をフルオロポリマー分散体から回収する好ましい方法はイオン交換樹脂上への吸着による。
【0003】
付加された工程段階としてイオン交換吸着を必要とするフルオロポリマー製造方法は、いくつかの不利な点がある。例えば、典型的に樹脂ビードの形で撹拌型反応器中の分散体にイオン交換樹脂を添加する方法は、フルオロ界面活性剤の吸着を達成するために攪拌による長い接触時間を必要とする。実際的な見地から、吸着の速度は、攪拌の速度および効率、イオン交換樹脂の量、ビードサイズ、および条件、使用されている特定のイオン交換樹脂および交換されるアニオンの相対的化学ポテンシャル、および温度によって限定される。このような制限のために、先行技術に開示されているような、イオン交換樹脂を用いるフルオロポリマー分散体からのフルオロ界面活性剤の回収は多くの時間がかかり、すなわち、典型的な重合サイクルよりも長い典型的な処理時間がかかる。従って、全製造サイクル時間が長くなるのを避けるために、多数のタンクまたはいくつかの重合バッチを受容するために十分に大きいタンクのどちらかを用いなければならず、イオン交換工程を高い製造効率で実施しなければならない。
【0004】
先行技術の方法の別の不便な点は、剪断力に対応した長い攪拌時間が一次重合粒子の若干の凝集を起こして大きな粒子を形成し、粒子の沈降のために分散体の安定性がより低くなる傾向があるということである。さらに、バッチ重合サイクルに遅れないでついていくためにイオン交換吸着時間を短く保つ先行技術の方法に必要なイオン交換樹脂の量は、より長い接触時間が利用できる場合に達成可能なフルオロ界面活性剤の低減の同レベルを達成するために必要な量の約3倍を必要とすることがある。
【0005】
分散体が、攪拌された樹脂ビードを用いる代わりにイオン交換の固定床を通過される場合、交換速度も緩慢であり、十分なフルオロ界面活性剤の吸着を提供するために十分に緩慢な速度において分散体が床を通過するための必要性によって限定される。イオン交換床を緩慢に通過することによって、分散体の最初の部分はフルオロ界面活性剤の全てが除去されることになる。後の部分は、床の上部が徐々に消耗される時に除去された量が少なくなる。最終部分は、床が完全に消耗する時にフルオロ界面活性剤のほとんどが除去されない場合がある。床消耗の差の結果として最終生成物が変化しないように後のブレンディングにおいて注意しなければならない。さらに、固定床を含有する容器内のイオン交換樹脂を補充するかまたは取り替えるために多大な労力または機械設備のための資本を費やさなければならない。全速度は攪拌されたビード技術に匹敵する。
【0006】
望ましいのは、分散体製造サイクル時間を増加させずにフルオロ界面活性剤を分散体から直接に回収し、より大規模な製造設備の必要性を回避し、剪断ダメージおよび粒子の凝集を伴わずに高品質、均一な製品を提供するフルオロポリマー分散体の効率的な製造方法である。
【0007】
【特許文献1】米国特許第2,559,752号明細書
【特許文献2】米国特許第3,882,153号明細書
【特許文献3】米国特許第4,282,162号明細書
【特許文献4】米国特許第4,380,618号明細書
【特許文献5】米国特許第3,037,953号明細書
【特許文献6】米国特許第3,704,272号明細書
【特許文献7】米国特許第2,559,752号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、容器にフルオロポリマー分散体を充填する工程と、前記容器内に、フルオロ界面活性剤収着剤を含有する布パウチを挿入し、その結果、前記収着剤が、前記容器内で前記フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散体と接触し、前記フルオロ界面活性剤を保持して前記フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散体のフルオロ界面活性剤含有量を低減する工程と、前記布パウチを前記容器から除去する工程とによって、水性フルオロポリマー分散体のフルオロ界面活性剤含有量を低減するための方法に関する。
【0009】
前記方法の好ましい形において、分散体を接触させた後に布パウチ内の収着剤を処理してフルオロ界面活性剤を除去する工程と、布パウチを再利用する工程と、および/または再利用のためにフルオロ界面活性剤を回収する工程とを備える付加的な工程段階が使用される。接触の間、フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散体またはパウチのどちらかを移動させて相互間の運動を与えることもまた、好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(フルオロポリマー分散体)
本発明は、フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散体のフルオロ界面活性剤含有量を低減するために有用である。このような分散体は、分散重合(乳化重合としても公知である)によって製造される。フルオロポリマー分散体は、少なくとも1つがフッ素を含有するモノマーから製造されたポリマーの粒子からなる。前記粒子は、非イオン性界面活性剤の存在によって得られた相対的なコロイド安定性を有する。分散重合の生成物は、濃縮および/または以下に記載されるように付加された非イオン性界面活性剤によって安定化した後に水性分散体として用いられる。濃縮された分散体は、コーティングまたは含浸用組成物としておよびキャストフィルムを作製するために有用である。
【0011】
本発明において用いられる水性分散体のフルオロポリマー成分は、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、モノクロロトリフルオロエチレン、ジクロロジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルキルエチレンモノマー、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)モノマー、フッ化ビニリデン、およびフッ化ビニルのポリマーおよびコポリマーからなる群から独立に選択される。
【0012】
本発明は、分散体のフルオロポリマー成分が、溶融加工性でない改質PTFEなどのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であってもよい時に特に有用である。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、一切の有意のコモノマーが存在しない単独の重合テトラフルオロエチレンを指す。改質PTFEは、コモノマーの濃度が非常に小さく、得られたポリマーの融点がPTFEの融点よりも実質的に低減されない、TFEのコポリマーを指す。このようなコモノマーの濃度は好ましくは、1重量%より小さく、より好ましくは0.5重量%より小さい。改質PTFEは、焼成(溶融)の間、フィルム形成能力を改良する少量のコモノマー改質剤、例えばペルフルオロオレフィン、特にヘキサフルオロプロピレン(HFP)またはアルキル基が1〜5個の炭素原子を含有する、ペルフルオロ(アルキルビニル)エーテル(PAVE)を含有し、ペルフルオロ(エチルビニル)エーテル(PEVE)およびペルフルオロ(プロピルビニル)エーテル(PPVE)が好ましい。また、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ペルフルオロブチルエチレン(PFBE)、または分子に大きい側基を導入する他のモノマーを含める。PTFEは典型的に、少なくとも1×109Pa・sの溶融クリープ粘度を有する。このような高い溶融粘度は、PTFEが溶融状態において流動せず、従って溶融加工性でないことを意味する。PTFEおよび改質PTFEはしばしば、分散体の形で販売されており、容器に入れて輸送され、本発明の方法は、このような分散体のフルオロ界面活性剤含有量を低減するために容易に使用することができる。
【0013】
分散体のフルオロポリマー成分は溶融加工性でありうる。溶融加工性(melt−processible)とは、ポリマーが溶融状態において加工されうる(すなわち、それらの所期の目的のために有用であるために十分な強度および靭性を示す、フィルム、繊維、および管などの造形物に溶融体から製造されうる)ことを意味する。このような溶融加工性フルオロポリマーの例には、テトラフルオロエチレン(TFE)と、コポリマーの融点をTFEホモポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の融点よりも実質的に低く、例えば、315℃以下の融解温度に低減するために十分な量においてポリマー中に存在する少なくとも1つのフッ素化共重合性モノマー(コモノマー)とのコポリマーが挙げられる。このようなフルオロポリマーには、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン(TFE)またはクロロトリフルオロエチレン(CTFE)のコポリマーがある。TFEとの好ましいコモノマーは、3〜8個の炭素原子を有するペルフルオロオレフィン、例えばヘキサフルオロプロピレン(HFP)、および/または直鎖または分岐アルキル基が1〜5個の炭素原子を含有するペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)である。好ましいPAVEモノマーは、アルキル基が1、2、3または4個の炭素原子を含有するPAVEモノマーであり、コポリマーをいくつかのPAVEモノマーを用いて製造することができる。好ましいTFEコポリマーには、FEP(TFE/HFPコポリマー)、PFA(TFE/PAVEコポリマー)、TFE/HFP/PAVE(PAVEはPEVEおよび/またはPPVEである)およびMFA(TFE/PMVE/PAVE、PAVEのアルキル基は少なくとも2個の炭素原子を有する)などがある。溶融加工性コポリマーは、特定のコポリマーについて標準である温度においてASTMD−1238によって測定された時に約1〜100g/10分の溶融流量を典型的に有するコポリマーを提供するためにコポリマー中にコモノマーの量を混入することによって製造される。典型的に、溶融粘度は、米国特許公報(特許文献4)に記載されているように改良されたASTMD−1238の方法によって372℃において測定されたとき、102Pa・s〜約106Pa・s、好ましくは103〜約105Pa・sの範囲である。さらに別の溶融加工性フルオロポリマーは、エチレンまたはプロピレンとTFEまたはCTFE、特にETFE、ECTFEおよびPCTFEとのコポリマーである。さらに有用なポリマーは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)のフィルム形成ポリマーおよびフッ化ビニリデンならびにポリフッ化ビニル(PVF)のコポリマーおよびフッ化ビニルのコポリマーである。
【0014】
好ましいポリマーPTFEの水性分散重合のための代表的な方法は、TFE蒸気が、弱酸、フルオロ界面活性剤、パラフィンワックスおよび脱イオン水を含有する加熱された反応器に供給される方法である。フリーラジカル開始剤溶液が加えられ、重合が進むとき、付加的なTFEが、圧力を維持するために加えられる。冷却水を反応器ジャケットを通して循環させることによって発熱反応熱が除去される。数時間後、供給原料を止め、反応器に逃げ口をつけ、窒素でパージし、容器内の原料分散体を冷却容器に移す。パラフィンワックスが除去され、ポリマー分散体は、微細粉末を製造する凝固操作または本発明の実施のために特に有用である分散体を製造する分散体の濃縮操作のどちらかに移される。分散体の濃縮操作において、容器内に含有された分散体は、マークス(Marks)の米国特許公報(特許文献5)およびホームズ(Holmes)に対する米国特許公報(特許文献6)に教示されているように非イオン性界面活性剤の補助によって濃縮され、固形分を公称で35重量%〜約60重量%に上げる。典型的に、次に分散体を容器に移す。
【0015】
溶融加工性TFEコポリマーの分散重合は、1つまたは複数のコモノマーがバッチに初期に添加され、および/または重合の間に導入されることを除いて似ている。さらに、炭化水素などのテロゲンを用いて分子量を制御し、所期の目的のためにポリマーの所望の溶融流を達成する。PTFE分散体のために用いられた同じ分散体の濃縮操作をTFEコポリマー分散体のために用いることができる。
【0016】
15〜70重量%、好ましくは25〜65重量%の固形分を有するフルオロ界面活性剤フルオロポリマー分散体が、本発明によって有利に処理される。
【0017】
(方法)
本発明は、容器にフルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散体を充填することによって実施される。用語「容器(container)」とは、加工前または後に一時的にまたは長期間の貯蔵または/または輸送のために、重合後にフルオロポリマー分散体を保持するように設計されたいずれかの容器(vessel)を意味する。このような容器には、貯蔵および/またはプロセスタンクおよび輸送容器、例えばトウト(totes)、貯蔵ドラム、プラスチックラインドファイバーボードボックスなどがある。
【0018】
本発明は、フルオロ界面活性剤含有フルオロポリマー分散体を、容器内に挿入されたパウチ内の収着剤と接触させることによってフルオロ界面活性剤含有量の低減を達成する。用語「収着剤」とは、吸収または吸着もしくは他の機構によってかにかかわらず、フルオロ界面活性剤をフルオロポリマー分散体から除去する材料を意味する。前記方法は有利には、分散体が加工前または後にもしくは輸送中またはより長期間の貯蔵の間に容器内に一時的に収容される間、分散体のフルオロ界面活性剤含有量を低減するために使用される。好ましくは、前記方法は、水性フルオロポリマー分散体の製造の間、実施される。本特許出願の目的のために、「水性フルオロポリマー分散体の製造」は、輸送容器に充填する前の分散体の製造工程段階を含める。より好ましくは、前記方法は、分散体の濃縮操作の一部としてまたは輸送容器に充填する前の一時貯蔵の間に実施される。固定容器は有利には、本発明のこの好ましい形を実施するために用いられる。例えば、本発明の方法は有利には、収着剤パウチを容器内に挿入することによって分散体を濃縮するために用いられた容器内で使用されてもよい。前記方法は有利には、非イオン性界面活性剤を添加した後に使用され、いずれにしても濃縮プロセスの一部として、および濃縮が行われる前または後のどちらかに行われる。したがって、全製造のサイクル時間に影響を与えるフルオロ界面活性剤の除去に特に当てられた製造プロセスに操作または設備を付加する必要はない。
【0019】
容器内で収着を達成する接触時間は必要ならば短くてもよく、例えば、2時間、もしくはゆったりと、貯蔵または輸送容器が用いられる場合6ヶ月以上にもわたってもよい。好ましくは接触時間は約1週間から約6カ月、より好ましくは約1週間から約3カ月である。好ましくは、特定の工程段階、機器および収着剤量は、一時または長期間の貯蔵の間、フルオロ界面活性剤の低減の所望のレベルを達成するように選択される。最も好ましくは、前記方法は、濃度操作の間または輸送容器に充填する前の一時貯蔵の間に実施される。これらの期間の間に利用可能な時間は典型的に、フルオロ界面活性剤含有量を低減するために十分な時間を提供し、その結果、通常より長く製品を在庫に抱えることに伴う付加的なサイクル時間在庫費用がない。本発明のこの形のために、接触時間が約2〜約8時間であるように収着剤の量および操作条件が選択されるのが好ましい。典型的に、収着剤の高い使用を可能にする十分な時間が利用可能であり、使用された収着剤の量は最小にされ、フルオロ界面活性剤の除去のために必要とされる理論量に近づくことができる。
【0020】
収着剤は、本発明によって使用された布パウチ内で使用するための適したサイズのペレットまたはビードの形であってもよい。収着剤を含有する布パウチは、化学的に安定であり分散体中の収着剤を含有するために十分に耐久性である布から作製される。また、パウチは、多孔性であり分散体を透過させて収着剤上へのフルオロ界面活性剤の収着を可能にする十分な開放構造を有し、それによって分散体のフルオロ界面活性剤含有量を低減し、さらに同時に、使用された収着剤が分散体中に逃散および混合するのを防ぐ。より好ましくは、布パウチは、ポリプロピレンなどの織または不織フィルタークロスから作製される。多数の布パウチを用いて、フルオロ界面活性剤を所望のレベルに低減するために収着剤の必要な量を提供することができるので、取扱いやすいように布パウチのサイズを定めることができる。好ましくは、パウチは、約0.5〜約25キログラムの収着剤を含有するようにサイズを定められる。
【0021】
布パウチは、フルオロ界面活性剤含有分散体を充填する前または後のどちらかに、容器中に挿入することによって使用される。収着剤は典型的に分散体中に浮く傾向があるので、布パウチが表面より下にあるようにそれらを容器中に支持することが好ましい。これは、重りを使用することによって、パウチを表面より下の容器内の場所に結びつけることによって、または布パウチを表面より下に保持するロッドなどの構造物を使用することなどの適した手段によって達成することができる。
【0022】
本発明の好ましい実施態様において、方法は、容器内での接触の間、フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散体または収着剤パウチのどちらかを移動させて、相互間の運動を与える工程を有する。輸送容器に充填する前に分散体が一時貯蔵タンクに保持される方法の好ましい実施態様において、相互間の運動は好ましくは、収着剤パウチをタンク内の固定位置に置き、循環をもたらすためにポンプまたはインペラを用いて分散体をタンク内で循環させることによって達成される。あるいは、収着剤パウチを分散体に対して移動させる機構を用いることができる。
【0023】
前記方法を実施することができる輸送容器の1つのタイプはしばしばトウトと称される。このような容器は、容器に付加的な完全性を与える鋼線筺体内に収容された、成形プラスチック容器、好ましくは成形ポリプロピレンである。容器は、容器の持ち上げ、輸送および積み重ねを助ける金属または木製スキッド上に置かれている。容器の壁は、厚さ約3/16インチであり、容器の容量は約275ガロンである。分散体をトウト内の布パウチに対して移動させるために、スクリューポンプが使用されるのが好ましく、トウトのための充填開口部に挿入されるのが好ましい。
【0024】
貯蔵の間、分散体を布パウチに対して移動させるさらに別の利点は、分散体の移動が、沈降による短い貯蔵寿命の長く存続している問題を改善することができるということである。フルオロポリマーの比重が水に対して大きい時に多くのフルオロポリマー分散体は沈降しない。わずか3ヶ月で、分散体の2〜20%が、収量損失および廃棄物処理問題を代表する再分散可能でない沈降層を形成することがある。さらに、このような機構は、大きなサイズおよび/または高いアスペクト比の粒子を有する分散体の取扱を可能にし、この分散体は、強化された臨界亀裂厚さ(CCT)を有する無傷のフィルムの形成のために望ましい。パッケージ内の分散体の連続したゆるやかな運動は、大きな粒度の分散体によって大きくなっている沈降の欠陥を克服することができ、ならびにイオン交換などによる収着が必要とする物質移動を提供することができる。
【0025】
先行技術とは対照的に、本発明は、70%もの固形分を有する高濃縮された分散体を処理することが容易にできることによって特に有用である。利用可能な時間の間にフルオロ界面活性剤含有量の十分な低減を達成するために高攪拌または流量が必要である撹拌型反応器または抽出カラムにおいて、これらの組成物の高密度および減少された流量は問題が多いけれども、容器内の濃縮された分散体と接触されるとき、このような問題点は小さな問題である。製造中の保持期間の間もしくは貯蔵または輸送の間に容器内でフルオロ界面活性剤の低減を行うことによって、より粘性の液体についても、収着剤と分散体との間の十分な接触時間が利用可能であり、高攪拌または流量は必要とされない。
【0026】
本発明は、フルオロ界面活性剤含有分散体のフルオロ界面活性剤含有量を予め決められたレベルに、好ましくは約300ppm以下のレベル、より好ましくは約100ppm以下の予め決められたレベル、特に約50ppm以下の予め決められたレベルに低減することを可能にする。製造時の保持期間の間または貯蔵および輸送の間の予想接触時間に基づいて、収着剤の量は、フルオロ界面活性剤含有量を所望の予め決められたレベル以下に低減するように選択される。
【0027】
(フルオロ界面活性剤)
この方法において低減されるフルオロ界面活性剤含有分散体中のフルオロ界面活性剤は、水に可溶性であってイオン性親水性基と疎水性部分とを含む非テロゲン性イオン化分散剤である。好ましくは、疎水性部分は、少なくとも6個の炭素原子を含有する脂肪族フルオロアルキル基であり、可溶化基に最も近い、それらの多くても1個を除いて全てが、少なくとも2個のフッ素原子を有し、末端炭素原子が水素またはフッ素からなる原子をさらに有する。これらのフルオロ界面活性剤は、分散させるための重合助剤として用いられ、それらは、連鎖移動反応しないので、望ましくない短鎖長を有するポリマーの形成を防ぐ。適したフルオロ界面活性剤の詳細なリストは、ベリーに対する米国特許公報(特許文献7)に開示されている。好ましくは、フルオロ界面活性剤は、6〜10個の炭素原子を有する過フッ素化カルボン酸であり、典型的に塩の形で用いられる。適したフルオロ界面活性剤は、ペルフルオロカルボン酸アンモニウム、例えば、ペルフルオロカプリル酸アンモニウムまたはペルフルオロオクタン酸アンモニウムである。フルオロ界面活性剤は通常、形成されたポリマーの量に対して0.02〜1重量%の量において存在する。
【0028】
(収着剤)
可能な収着剤の例には、炭素粒子およびイオン交換樹脂がある。本発明の実施のために、収着剤は好ましくはイオン交換樹脂、より好ましくはアニオンであり、弱塩基性または強塩基性のどちらであってもよい。適した弱塩基性アニオン交換樹脂は、第一、第二アミン、第三アミン、またはヒドロキシアミノ基をアンモニウム塩の形で含有する。適した強塩基性アニオン交換樹脂は、第四アンモニウム基を含有する。強塩基イオン交換樹脂は、媒体のpHに対してそれほど過敏性でないという利点がある。ヒドロキシル対イオンの形のイオン交換樹脂が好ましい。また、塩化物、硫酸塩および硝酸塩を有するイオン交換樹脂がフルオロ界面活性剤の除去のために用いられている。適した市販のイオン交換樹脂の例には、ドウェクス(Dowex)550A、USフィルター(US Filter)A464−OH、USフィルターA244−OH、シブロン(Sybron)M−500−OH、シブロンASB1−OH、プロライト(Purolite)A−500−OH、イトーチュウ(Itochu)TSA1200、アンバーライト(Amberlite)IR402などがある。
【0029】
フルオロ界面活性剤を除去するための布パウチ内の収着剤の処理を溶離によって行うことができる。アニオン交換樹脂に吸着された過フッ素化カルボン酸などのフルオロ界面活性剤の溶離は、米国特許公報(特許文献2)においてセキ(Seki)によって示されるようにアンモニア溶液の使用によって、米国特許公報(特許文献3)においてクールズ(Kuhls)によって示されるように希釈鉱酸と有機溶剤(例えば、HCl/エタノール)との混合物によって、または硫酸および硝酸などの強鉱酸によって、吸着されたフッ素化カルボン酸を溶離剤に移すことによって容易に達成される。高い濃度の溶離剤中のフルオロ界面活性剤は、酸析出、塩析、濃縮などの一般的な方法によって高純度酸の形でまたは塩の形で容易に回収されうる。
【0030】
本発明を使用するさらに好ましい態様において、フルオロ界面活性剤の溶離は、布パウチ内に含有された収着剤によって行われる。布パウチは容易に流動を可能にし、回収および/または再生の間および後続の取扱および貯蔵の間、収着剤の取扱を助けるので、収着剤の再生および/または布パウチ内に含有された収着剤によるフルオロ界面活性剤の回収を実施することは有利である。本発明のこの形を使用して、次にフルオロポリマー分散体のフルオロ界面活性剤含有量を低減するために布パウチを再利用することができ、溶離剤中のフルオロ界面活性剤を再利用のために回収することができる。必要ならば、回収されたフルオロ界面活性剤を、付加的なフルオロポリマーの製造において使用するために再利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散体のフルオロ界面活性剤含有量を低減するための方法であって、
容器に前記フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散体を充填する工程と、
前記容器内に、フルオロ界面活性剤収着剤を含有する布パウチを挿入し、その結果、前記収着剤が、前記容器内で前記フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散体と接触し、前記フルオロ界面活性剤を保持して前記フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散体のフルオロ界面活性剤含有量を低減する工程と、
前記布パウチを前記容器から除去する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記布パウチ内の前記収着剤を処理して前記フルオロ界面活性剤を除去する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記布パウチを、請求項1に記載の方法において再利用する工程をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記フルオロ界面活性剤を再利用するために回収する工程をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記収着剤がイオン交換樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記イオン交換樹脂がアニオン交換樹脂であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散体と接触する前記収着剤の量が、前記フルオロ界面活性剤含有量を予め決められたレベル以下に低減するように選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記予め決められたレベルが約300ppm以下であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記予め決められたレベルが約100ppm以下であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記予め決められたレベルが約50ppm以下であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記接触の間、前記フルオロ界面活性剤含有水性フルオロポリマー分散体または前記パウチのどちらかを移動させて、相互間の運動を与える工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記接触の間、前記パウチを前記分散体に対して移動させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記接触の間、前記分散体を前記パウチに対して移動させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記フルオロポリマー分散体が、非イオン性界面活性剤を含有する濃縮フルオロポリマー分散体であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記分散体が、約15〜約70重量パーセントのフルオロポリマー固形分濃度を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記分散体が、約25〜約65重量パーセントのフルオロポリマー固形分濃度を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記水性フルオロポリマー分散体の製造の間に実施されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
分散体の濃縮操作の一部としてまたは輸送容器に充填する前の一時貯蔵の間に実施されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記容器が固定容器であることを特徴とする請求項17に記載の方法。

【公表番号】特表2008−510037(P2008−510037A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525770(P2007−525770)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/028444
【国際公開番号】WO2006/020721
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】