説明

収穫機の照明構造

【課題】 近年急増する夜間の収穫作業における作業性やメンテナンス性の向上を図れるようにする。
【解決手段】 機体の前部における左右一方の位置に搭乗運転部3を形成するとともに前照灯60を配備し、機体の前部における左右他方の位置に収穫部4を昇降可能に装備してある収穫機の照明構造において、前照灯60におけるリフレクタ61の反射面61Aに、前照灯60の光源体62からの光を収穫部4に向けて照射する反射領域A2を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体の前部における左右一方の位置に搭乗運転部を形成するとともに前照灯を配備し、機体の前部における左右他方の位置に収穫部を昇降可能に装備してある収穫機の照明構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、サンデーファーマーの増加に伴って、夜間に収穫作業を行う割合も増加し、特に、麦の収穫ように収穫時期が集中する場合には、収穫作業が深夜にまで及ぶことが多くなっている。
【0003】
そこで、コンバインなどの収穫機の照明構造としては、機体の前方を照射する前照灯(ライト)を、刈取り部における運転席側のサイドカバーから横外方に向けて膨出する膨出部に形成した窓に対向するように刈取り部のフレームに配置したものや、刈取装置における操縦席側の穀稈引起装置を後方から支持する引起支持フレームの上部に前照灯ステーを介して取り付けたもの、あるいは、運転操作部の前端に立設した前面パネルの内面部に、角筒状のブラケットを介して組み付けたものなどがある(例えば特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開2004−229521号公報
【特許文献2】特開2000−209934号公報
【特許文献3】実用新案登録第2599876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成における前照灯(ライト)は、収穫部や前面パネルの前面よりも機体内方側に配備する構造上、機体前方への遠方照射を重視した走行用としての機能が高いものとなり、機体の前部に配備した収穫部に対する近傍照射を重視した作業用としての機能が不十分なものになることから、夜間の収穫作業時においては、収穫部の前下端部に配備したデバイダやその前方に位置する収穫作物などに対する照明が不足することになり、そのため、収穫作物に対してデバイダを適切な位置に位置させる条合わせなどが行い難くなって手間取ることが多くなり、又、デバイダによる収穫作物の条分けが適切に行われないことで、その後の収穫部での収穫作物に対する収穫処理に悪影響を及ぼして、収穫部において作物詰まりなどを生じ易くする虞が高くなることから、夜間での作業性の向上を図る上において改善の余地がある。
【0005】
又、夜間の収穫作業において収穫部に作物詰まりなどが生じた場合には、その詰まり箇所に対する照明が不足することで、詰まりなどに対する適切な処置が行い難くなることから、夜間でのメンテナンス性の向上を図る上においても改善の余地がある。
【0006】
本発明の目的は、近年急増する夜間の収穫作業における作業性やメンテナンス性の向上を図れるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のうちの請求項1に記載の発明では、機体の前部における左右一方の位置に搭乗運転部を形成するとともに前照灯を配備し、機体の前部における左右他方の位置に収穫部を昇降可能に装備してある収穫機の照明構造において、前記前照灯におけるリフレクタの反射面に、前記前照灯の光源体からの光を前記収穫部に向けて照射する反射領域を設けてある。
【0008】
この構成によると、前照灯は、その光源体からの光やリフレクタの反射面からの反射光の多くを、搭乗運転部が形成される機体前部の左右一方側から機体前方に向けて遠方照射することから、機体前方の走行路面などを広範囲で明るく照明する走行用としての機能を十分に備えるようになり、又、リフレクタの反射面に設けた収穫部照射用の反射領域からの反射光を機体前部の収穫部に向けて近傍照射することから、機体近傍の収穫部やその周辺などを明るく照明する作業用としての高い機能をも備えるようになる。
【0009】
つまり、夜間の移動走行時においては、前照灯による搭乗運転部側からの照射で、機体前方の走行路面などとともに機体近傍の収穫部やその周辺などが明るく照明されることになり、これによって、走行路面の状況や収穫部を含む機体全体の左右幅などを把握する際の視認性が向上し、夜間での移動走行が行い易くなる。
【0010】
又、夜間の収穫作業時においては、前照灯による搭乗運転部側からの照射で、機体前方の走行路面などとともに機体近傍の収穫部やその周辺に位置する収穫作物などが明るく照明されることになり、これによって、収穫部の前下端部に備えたデバイダと収穫作物との位置関係などを把握する際の視認性が向上して、収穫作物に対してデバイダを適切な位置に位置させる条合わせなどを容易かつ迅速に行えるようになり、又、それによって、デバイダによる収穫作物の条分けを適切に行えるようになって、その後の収穫部での収穫作物に対する収穫処理を良好に行えることから、収穫部におけるデバイダの作用不良に起因した作物詰まりなどが生じ難くなる。
【0011】
しかも、夜間の収穫作業において収穫部に作物詰まりなどが生じた場合には、前照灯における収穫部照射用の反射領域からの反射光で、その詰まり箇所やその周辺などが明るく照明されることになり、これによって、収穫作物の詰まり具合などを容易に把握することができ、収穫部の詰まりなどに対する適切な処置を迅速に行える。
【0012】
従って、前照灯による搭乗運転部側からの照射で、機体前方の走行路面などは当然のことながら、機体近傍の収穫部やその周辺の収穫作物などをも明るく照明することができ、結果、夜間の収穫作業における走行性、作業性、及びメンテナンス性の向上を図れる。
【0013】
本発明のうちの請求項2に記載の発明では、機体の前部における左右一方の位置に搭乗運転部を形成するとともに前照灯を配備し、機体の前部における左右他方の位置に収穫部を昇降可能に装備してある収穫機の照明構造において、前記前照灯におけるリフレクタの反射面に、前記前照灯の光源体からの光を下方に向けて照射する反射領域を設けてある。
【0014】
この構成によると、前照灯は、その光源体からの光やリフレクタの反射面からの反射光の多くを、搭乗運転部が形成される機体前部の左右一方側から機体前方に向けて遠方照射することから、機体前方の走行路面などを広範囲で明るく照明する走行用としての機能を十分に備えるようになり、又、リフレクタの反射面に設けた下方照射用の反射領域からの反射光を機体前下方に向けて近傍照射することから、機体の近傍に位置する収穫部の前部側やその周辺などを明るく照明する作業用としての高い機能をも備えるようになる。
【0015】
つまり、夜間の移動走行時においては、前照灯による搭乗運転部側からの照射で、機体前方の走行路面などとともに機体の近傍に位置する収穫部の前部側やその周辺などが明るく照明されることになり、これによって、走行路面の状況や収穫部を含む機体全体の左右幅などを把握する際の視認性が向上し、夜間での移動走行が行い易くなる。
【0016】
又、夜間の収穫作業時においては、前照灯による搭乗運転部側からの照射で、機体前方の走行路面などとともに機体の近傍に位置する収穫部のデバイダやその周辺に位置する収穫作物などが明るく照明されることになり、これによって、収穫部の前下端部に備えたデバイダと収穫作物との位置関係などを把握する際の視認性が向上して、収穫作物に対してデバイダを適切な位置に位置させる条合わせなどを容易かつ迅速に行えるようになり、又、それによって、デバイダによる収穫作物の条分けを適切に行えるようになって、その後の収穫部での収穫作物に対する収穫処理を良好に行えることから、収穫部におけるデバイダの作用不良に起因した作物詰まりなどが生じ難くなる。
【0017】
しかも、夜間の収穫作業において収穫部に作物詰まりなどが生じた場合には、前照灯における下方照射用の反射領域からの反射光で、その詰まり箇所やその周辺などが比較的明るく照明されることになり、これによって、収穫作物の詰まり具合などが把握し易くなり、収穫部の詰まりなどに対する適切な処置が行い易くなる。
【0018】
従って、前照灯による搭乗運転部側からの照射で、機体前方の走行路面などは当然のことながら、機体近傍の収穫部やその周辺の収穫作物などをも明るく照明することができ、結果、夜間の収穫作業における走行性、作業性、及びメンテナンス性の向上を図れる。
【0019】
本発明のうちの請求項3に記載の発明では、機体の前部における左右一方の位置に搭乗運転部を形成するとともに前照灯を配備し、機体の前部における左右他方の位置に収穫部を昇降可能に装備してある収穫機の照明構造において、前記前照灯におけるリフレクタの反射面に、前記前照灯の光源体からの光を前記収穫部に向けて照射する反射領域と下方に向けて照射する反射領域とを設けてある。
【0020】
この構成によると、前照灯は、その光源体からの光やリフレクタの反射面からの反射光の多くを、搭乗運転部が形成される機体前部の左右一方側から機体前方に向けて遠方照射することから、機体前方の走行路面などを広範囲で明るく照明する走行用としての機能を十分に備えるようになり、又、リフレクタの反射面に設けた収穫部照射用の反射領域からの反射光を機体前部の収穫部に向けて近傍照射し、更に、下方照射用の反射領域からの反射光を機体前下方に向けて近傍照射することから、機体近傍の収穫部やその周辺などを明るく照明する作業用としてのより高い機能をも備えるようになる。
【0021】
つまり、夜間の移動走行時においては、前照灯による搭乗運転部側からの照射で、機体前方の走行路面などとともに機体近傍の収穫部やその周辺などがより明るく照明されることになり、これによって、走行路面の状況や収穫部を含む機体全体の左右幅などを把握する際の視認性が効果的に向上し、夜間での移動走行が格段に行い易くなる。
【0022】
又、夜間の収穫作業時においては、前照灯による搭乗運転部側からの照射で、機体前方の走行路面などとともに機体の近傍に配備した収穫部における前下端部のデバイダやその周辺に位置する収穫作物などがより明るく照明されることになり、これによって、収穫部の前下端部に備えたデバイダと収穫作物との位置関係などを把握する際の視認性が効果的に向上して、収穫作物に対してデバイダを適切な位置に位置させる条合わせなどをより容易かつ迅速に行えるようになり、又、それによって、デバイダによる収穫作物の条分けを適切に行えるようになって、その後の収穫部での収穫作物に対する収穫処理を良好に行えることから、収穫部におけるデバイダの作用不良に起因した作物詰まりなどが生じ難くなる。
【0023】
しかも、夜間の収穫作業において収穫部に作物詰まりなどが生じた場合には、前照灯における収穫部照射用の反射領域や下方照射用の反射領域からの反射光で、その詰まり箇所やその周辺などがより明るく照明されることになり、これによって、収穫作物の詰まり具合などをより容易に把握することができ、収穫部の詰まりなどに対する適切な処置をより迅速に行える。
【0024】
従って、前照灯による搭乗運転部側からの照射で、機体前方の走行路面などは当然のことながら、機体近傍の収穫部やその周辺の収穫作物などをも明るく照明することができ、結果、夜間の収穫作業における走行性、作業性、及びメンテナンス性の向上を図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1には、水稲や麦などの収穫作物を収穫する収穫機の一例である2条収穫用のコンバインの全体側面が、又、図2にはその全体平面が示されており、このコンバインは、角パイプなどで形成した機体フレーム1の下部に左右一対のクローラ式走行装置2を配備し、機体フレーム1の前部右上側に搭乗運転部3を形成し、機体フレーム1の前部左側に、収穫部の一例である2条刈り仕様の刈取搬送部4を昇降可能に連結し、機体フレーム1の略左半部に、刈取搬送部4から刈取穀稈を受け取って、その穂先側に対して脱穀処理を施すとともに、その脱穀処理で得られた穀粒などの処理物に対して選別処理を施す脱穀装置5を搭載し、機体フレーム1の略右半部に、脱穀装置5における脱穀・選別処理で得られた穀粒を貯留するグレンタンク6を搭載し、脱穀装置5の後部に、脱穀装置5から脱穀処理後の穀稈である排ワラを受け取って、その排ワラを長ワラのまま又は細断して機外に放出する排ワラ処理装置7を連結し、グレンタンク6に、その内部に貯留した穀粒の機外への排出を可能にする穀粒排出装置8を装備して構成されている。
【0026】
図1〜8に示すように、刈取搬送部4は、機体フレーム1の左前端部に備えた支持台9に、揺動フレーム10を、丸パイプからなる揺動支柱11を支点にした左右方向への揺動操作が可能となるように支持し、その揺動フレーム10に、前方に向けて延出する刈取フレーム12を、揺動フレーム10の左右に備えた軸受部材13、それらの軸受部材13に回転可能に支持された支軸兼用の左右向きの入力軸14、及び、揺動フレーム10に前後揺動可能に支持された横送り装置15などを介して、入力軸14を支点にした上下方向への揺動操作と、入力軸14に沿った左右方向へのスライド操作とが可能となるように装備し、その刈取フレーム12に、機体の走行に伴って収穫対象の植立穀稈を植え付け条ごとに分ける3つのデバイダ16、条分けした植立穀稈を所定の収穫姿勢に引き起こす左右の引起装置17、引き起こした植立穀稈の株元側を切断するバリカン型の刈取装置18、切断後の植立穀稈である刈取穀稈を後方の所定位置に向けて掻き込み搬送するベルト式の左右の補助搬送装置19と左右の回転パッカ20、及び、所定位置に掻き込み搬送された刈取穀稈を起立姿勢から所定の脱穀姿勢(横倒れ姿勢)に姿勢変更しながら脱穀装置5に向けて供給搬送する供給搬送装置21、などを備えて構成され、機体フレーム1と横送り装置15とにわたって架設した油圧式単動型の昇降シリンダ22の作動で入力軸14を支点にして昇降し、横送り装置15に備えた電動式の横送りモータ23の作動で入力軸14に沿って左右方向にスライド移動し、所定の人為操作で揺動支柱11を支点にして左右方向に開閉揺動する。
【0027】
つまり、昇降シリンダ22の作動による刈取搬送部4の昇降で、作業高さ位置と非作業高さ位置とにわたる刈取搬送部4の対地高さの変更や、植立穀稈に対する刈り高さ調節などを行うことができ、又、横送りモータ23の作動による刈取搬送部4の左右方向へのスライド移動で、機体に対する刈取搬送部4の左右方向での位置を、刈取搬送部4を左側のクローラ式走行装置2よりも左側に張り出させた回り刈り作業位置と、刈取搬送部4を機体の左右幅内に納めた中割り作業位置とにわたって変位させることができ、更に、人為操作による刈取搬送部4の左右方向への開閉揺動で、機体に対する刈取搬送部4の位置を、刈取搬送部4を機体の正面に位置させた作業位置と、刈取搬送部4を機体の左外方に位置させたメンテナンス位置とにわたって変位させることができる。
【0028】
ちなみに、図示は省略するが、圃場外での移動走行時やトラックの荷台への搭載時、あるいは納屋への格納時、などの非作業時には、刈取搬送部4を中割り作業位置に位置させることで、刈取搬送部4の他物との接触回避が行い易くなる。
【0029】
入力軸14には、ベルトテンション式の刈取クラッチ24を介して刈り取り搬送用の動力が伝達され、その動力は、伝動ケースに兼用される刈取フレーム12の後端部12Aに内装した一対のベベルギヤ(図示せず)や、その後端部12Aから延設した丸パイプなどからなる伝動ケース25に内装した伝動軸26などを介して、左右の引起装置17、刈取装置18、左右の補助搬送装置19、及び左右の回転パッカ20、などに伝達され、かつ、その入力軸14の左端部に備えたギヤケース27に内装した一対のベベルギヤ(図示せず)や、ギヤケース27から延出した伝動軸28などを介して供給搬送装置21に伝達される。
【0030】
図1〜6に示すように、供給搬送装置21は、刈取穀稈の株元側を挟持搬送する挟持搬送機構21Aと、刈取穀稈の穂先側を係止搬送する係止搬送機構21Bとを備えて構成され、その後端部がギヤケース27から延出した伝動軸28に支持され、その前部が刈取フレーム12に縦向きに備えた支持杆29に係合されることで、横送りモータ23の作動による刈取搬送部4の左右方向へのスライド移動に連動して、伝動軸28を支点にして左右方向に揺動変位するようになっており、これによって、刈取搬送部4の左右方向へのスライド移動にかかわらず、左右の補助搬送装置19と左右の回転パッカ20とで所定位置に掻き込み搬送された刈取穀稈を脱穀装置5に向けて良好に供給搬送することができる。
【0031】
刈取フレーム12には、刈取穀稈の稈長を検出する検出手段(図示せず)と、この検出手段からの検出情報に基づいて、刈取穀稈に対する挟持搬送機構21Aの挟持位置が変更されるように、入力軸14を支点にして供給搬送装置21を上下方向に揺動駆動する駆動装置(図示せず)とが装備され、これによって、刈取穀稈の稈長にかかわらず、脱穀装置5の内部に供給される穂先側の穀稈長さを一定に維持する自動扱深さ制御を行える。
【0032】
尚、支持杆29は、駆動装置の作動で入力軸14を支点にして上下方向に揺動駆動される供給搬送装置21の前端部を係合案内するように、入力軸14を中心とした円弧状に形成されている。
【0033】
図5、図6及び図8に示すように、横送り装置15は、揺動フレーム10に回転可能に支持された左右向きの支軸30に、刈取フレーム12を下方から相対摺動可能に支持する支持部31Aを備えたコの字状の支持枠31を垂下装備し、この支持枠31に、横送りモータ23、その作動で刈取フレーム12を受け止め支持するコの字状の受部材32を左右方向にネジ送りするネジ軸33、及び、刈取フレーム12の支持部31Aからの浮き上がりを阻止するロッド34、などを備えて、横送りモータ23の作動で刈取搬送部4を左右方向に所定ストロークでスライド移動させるように構成されている。又、支持部31Aに備えたブラケット31Bに、昇降シリンダ22のピストンロッド22Aが連結ピン35を介して簡易着脱可能に連結されている。
【0034】
図2〜8に示すように、揺動フレーム10は、その遊端(右端)に備えた軸受部材13が、機体フレーム1における左右中央の前端部に立設した支持台36に載置支持されるとともに着脱可能にボルト連結されている。又、揺動フレーム10の揺動支端側(左側)には、刈取フレーム12から左方に向けて延設した被支持部材37の受け止め支持が可能な作用位置p1と受け止め支持が不能な非作用位置p2とに、操作ロッド38を介して左右方向に変位操作される支持ブロック39が配備されており、この支持ブロック39を作用位置p1に設定し、かつ、刈取搬送部4を左側のストロークエンドまでスライド操作した状態で、刈取搬送部4を下降させると、被支持部材37を支持ブロック39に受け止め支持させることができ、この支持状態を現出することで、刈取搬送部4を地上から少し浮上させた開閉揺動操作用の所定の高さ位置に維持できるようになっている。
【0035】
そして、このように刈取搬送部4を開閉揺動操作用の所定の高さ位置に維持した状態で、刈取クラッチ24の伝動ベルト40を入力軸14の右端に備えた入力プーリ41から外し、連結ピン35による昇降シリンダ22のピストンロッド22Aと横送り装置15のブラケット31Bとの連結を解除し、揺動フレーム10の遊端に備えた軸受部材13と機体フレーム1の支持台36とのボルト連結を解除することで、刈取搬送部4を作業位置とメンテナンス位置とにわたって揺動変位させることができ、刈取搬送部4の搬送中に詰まった刈取穀稈の除去作業などを、それらの作業が行い易い刈取搬送部4の後方から行える。
【0036】
図1、図2、図9及び図10に示すように、搭乗運転部3は、単一の操縦レバー42や表示パネル43などを備えたフロントパネル44、主変速レバー45や副変速レバー46などを備えたサイドパネル47、フロントパネル44とその後方に配備されたエンジンボンネット48との間に敷設したフロアパネル49、及び、エンジンボンネット48の上部に配備した運転座席50、などによって、操縦者が運転座席50に着座している状態であっても、刈り取り高さ位置まで下降させた刈取搬送部4の各デバイダ16の先端を目視できるように形成されており、これによって、植立穀稈に対する各デバイダ16の位置を容易に把握することができて、刈り取り作業の開始時や旋回後などの刈り取り作業の再開時において、各デバイダ16の先端を植立穀稈に対する適切な位置に位置させる条合わせ作業などが行い易くなっている。
【0037】
フロントパネル44は、機体フレーム1の右側前端部に上部が把持部51Aに兼用される正面視逆U字状に立設されたハンドルフレーム51に、その前面を形成するフロントカバー52、その背面を形成するリヤカバー53、及び、その上面を形成するトップカバー54などを備えて、その前面が側面視において略円弧形状となる中空に形成されており、トップカバー54における刈取搬送部4に隣接する左側部位に表示パネル43が配備され、トップカバー54における刈取搬送部4から離れる右側部位に操縦レバー42が配備されている。
【0038】
表示パネル43には、オイル潤滑系統の異常や充電系統の異常などを点灯表示する複数のインジケータ55、及び、エンジン回転計56などが装備されている。
【0039】
操縦レバー42は、十字揺動式の中立復帰型に構成され、その左右方向への揺動操作によって、その操作方向に対応する方向に、その揺動操作量に応じた旋回半径で機体が旋回するように、ミッションケース(図示せず)に内装した左右の操向クラッチ(図示せず)及び操向ブレーキ(図示せず)に操向用の連係機構57を介して操作連係され、又、その前後方向への揺動操作によって、刈取搬送部4が所定の上限位置又は下限位置に向けて昇降するように、昇降シリンダ22の作動を制御する昇降用制御弁(図示せず)に昇降用の連係機構58を介して操作連係されている。
【0040】
フロントパネル44は、フロントカバー52及びトップカバー54における操縦レバー42の下方部位となる右側部位が前方に向けて膨出形成されることで、刈取搬送部4から離れる右側部位に、その部位の内部空間を拡張する膨出部44Aを有するようになっており、この拡張した右側部位の内部空間を有効利用して、その内部空間を通るように操向用の連係機構57と昇降用の連係機構58とが配備されている。
【0041】
つまり、フロントパネル44の前面における右側部位に前方向きの膨出部44Aを形成したことで、フロントパネル44の内部における操縦レバー42の下方位置に、十字揺動式の操縦レバー42に操向用の連係機構57と昇降用の連係機構58とを操作連係する上で必要な比較的広い空間を確保することができ、これによって、操縦レバー42に対する操向用の連係機構57及び昇降用の連係機構58の連係を容易に行える。又、その膨出部44Aの形成位置をフロントパネル44の右側部位に設定することで、その右側部位の内部空間を拡張しながらも、操縦者が着座姿勢で各デバイダ16の先端を目視する上において膨出部44Aが邪魔になる虞を未然に回避してある。
【0042】
フロントカバー52は、ノブ付きボルト59によってハンドルフレーム51に簡易着脱可能に連結され、その右側部位の前端に、正面視縦長の楕円形に形成された前照灯60を、その下部側が上部側よりも刈取搬送部4に近づく右倒れ姿勢で、かつ、その上部側が下部側よりも機体前方側に位置する前傾姿勢で取り付けるための前照灯取付部52Aが凹入形成されている。
【0043】
図1、図2及び図9〜11に示すように、前照灯60は、正面視縦長の楕円形に形成されるとともにアルミ蒸着によって表面に反射面61Aが形成されたリフレクタ61、そのリフレクタ61の上下両部に形成した取付孔61Bに後方からの簡易着脱が可能となるように取り付けられた上下のハロゲンバルブ(光源体の一例)62、リフレクタ61の前面と上下のハロゲンバルブ62とを前方から覆う空間を有するように略縦長のお椀形状に膨出形成されたレンズ63、及び、リフレクタ61の外周とレンズ63の内周との間に密着状態で介装されたリング状のシール64、などによって2灯式に構成され、フロントカバー52の右側前端に形成した前照灯取付部52Aに、その下部側が上部側よりも刈取搬送部4に近づく右倒れ姿勢で、かつ、その上部側が下部側よりも機体前方側に位置する前傾姿勢で、光軸aが水平になるように突出装備されている。
【0044】
つまり、前照灯60は、2つのハロゲンバルブ62を上下に備える縦長の2灯式に構成された状態で、フロントパネル44の前面に前方向きに膨出形成した膨出部44Aの前端に、その前端から更に前方に向けて突出する状態に配備されて、フロントパネル44や刈取搬送部4の引起装置17よりも機体前方側に位置するようになっており、これによって、夜間の移動走行時や作業走行時などにおいては、フロントパネル44を備える搭乗運転部3の前方(搭乗運転部3の右斜め前方から左斜め前方にわたる所定範囲)は当然のことながら、機体左側前下方に位置する刈取搬送部4の前端部やその周辺を、フロントパネル44や引起装置17などによって遮られることなく明るく照明することができる。
【0045】
更に、前照灯60を、機体フレーム1の右側前端部に立設したフロントパネル44の右側部位に、その下部側ほど機体左側の刈取搬送部4に近づく右倒れ姿勢で配備したことで、上下の両部が刈取搬送部4から離れる垂直姿勢で配備する場合に比較して、下側のハロゲンバルブ62からの光で、機体左側前下方に位置する刈取搬送部4の前端部やその周辺をより明るく照明することができ、又、前照灯60の下部側を刈取搬送部4に近づけることで、上記のようにフロントパネル44の膨出部44Aの前端から更に前方に向けて突出する状態に配備しても、前照灯60をその上部側ほど機体左側の刈取搬送部4に近づく左倒れ姿勢で装備した場合に生じる、操縦者の目の高さ位置に近い前照灯60の上部側が刈取搬送部4に近いフロントパネル44の左側部位に位置することで、着座姿勢の操縦者が各デバイダ16の先端を目視する際に前照灯60の上部側が邪魔になる、といった不具合を未然に回避できる。
【0046】
しかも、フロントパネル44の前端から更に前方に向けて突出する状態に前照灯60を配備したことで、前照灯60からの光が、前照灯60の近傍に位置するフロントパネル44の上部に配備した操縦レバー42や表示パネル43などにまで及ぶようになり、これによって、夜間の移動走行時や作業走行時などにおける操縦レバー42の操作やエンジン回転計56の視認などが行い易くなり、殊に、前照灯60からの光で表示パネル43の周りを比較的緩く照明することで、夜間にインジケータ55が急に点灯した際に操縦者が眩しく感じる虞を効果的に抑制できる。
【0047】
又、レンズ63を略縦長のお椀形状に膨出形成したことで、レンズ自体に高い剛性を備えさせることができる。
【0048】
図1、図2及び図9〜13に示すように、リフレクタ61は、その背面の上下両端側に、フロントカバー52の前照灯取付部52Aに形成した上下の取付孔52Bに対応して係入される係合突起61Cが形成され、又、その反射面61Aとなる前面の上下に、複数の反射素子61aを備える多面形の凹入形状に形成されたマルチリフレクタ部61Dが備えられ、それらの各マルチリフレクタ部61Dの後端部(凹入底部)に、バルブ取り付け用の取付孔61Bが形成されている。
【0049】
上下のマルチリフレクタ部61Dは、同じ形状で、取り付け姿勢において、上側のマルチリフレクタ部61Dが下側のマルチリフレクタ部61Dよりも機体前方側に位置するとともに、それらに備えた複数の反射素子61aによって、その左下側部位と上端部位とが、ハロゲンバルブ62からの光を上下方向において光軸aに沿うように機体前方の所定範囲に向けて拡散反射させる前方配光用の反射領域A1となり、又、その右下側部位が、ハロゲンバルブ62からの光を光軸aの左側である機体左前側の所定範囲に位置する刈取搬送部4に向けて拡散反射させる左方配光用の反射領域A2となり、更に、その上側部位に、ハロゲンバルブ62からの光を光軸aの下側である機体前下方の所定範囲に向けて拡散反射させる下方配光用の反射領域A3を有するように形成されている。
【0050】
つまり、上下の各マルチリフレクタ部61Dは、前方配光用の反射領域A1からの反射光で、機体前方の所定範囲を搭乗運転部3側から重点的に遠方照射しながら、左方配光用の反射領域A2からの反射光で、刈取搬送部4が配備された機体左前側の所定範囲を近傍照射し、かつ、下方配光用の反射領域A3からの反射光で、刈取搬送部4の各デバイダ16や直前の走行路面などが位置する機体前下方の所定範囲を近傍照射するように構成されており、これによって、機体前方への照射量を確保しながら、照射範囲を機体の左方や前下方に拡張させた広角照明を良好に行える。
【0051】
又、上記の配光により、機体の前方に向かうハロゲンバルブ62からの光や前方配光用の反射領域A1からの反射光に対して、機体左前側の刈取搬送部4に向かう左方配光用の反射領域A2からの反射光を交差させる左右方向のクロスライティング(図12参照)と、機体の前下方に向かう左方配光用の反射領域A2からの反射光を交差させる上下方向のクロスライティング(図11参照)とを、搭乗運転部3の前方において行えることになり、これによって、ハロゲンバルブ62として電力消費を抑制できる低出力のものを採用しながらも、搭乗運転部3の前方を集中的に適切な光量で明るく照明することができ、これによって、機体の前方を全体的に均一に照明する場合に比較して、より明るく感じさせることができる。
【0052】
しかも、前照灯60の姿勢を、その下部側が上部側よりも刈取搬送部4に近づく右倒れ姿勢に設定したことで、下側のハロゲンバルブ62及びマルチリフレクタ部61Dが上側のハロゲンバルブ62及びマルチリフレクタ部61Dよりも刈取搬送部4に近づくとともに、上下のハロゲンバルブ62及びマルチリフレクタ部61Dによる上下の各クロスライティング箇所が、下側のクロスライティング箇所が上側のクロスライティング箇所よりも刈取搬送部4に近づく状態で左右方向に位置ズレすることになり、これによって、刈取搬送部4の前端部やその周辺をより効果的に照明できるとともに、上下のクロスライティング箇所が左右方向で重なることに起因した過度の照明を回避できる。
【0053】
その結果、夜間の移動走行時や作業走行時などにおいては、前照灯60における上下のマルチリフレクタ部61Dの作用で、搭乗運転部3の前方をより明るく広範囲に照明して前方の視界性を確保しながらも、機体左側の前下方に位置する刈取搬送部4の前端部やその周辺などに対する照明をより効果的に行えるようになって、刈取搬送部4の前端に配備されたデバイダ16やその周辺に位置する植立穀稈などに対する視認性を向上させることができる。
【0054】
図11〜13に示すように、マルチリフレクタ部61Dに備えた複数の反射素子61aは、各反射領域A1〜A3による所定の照射範囲への拡散反射で所定の配光パターンが得られるように、それぞれが独自の最適な3次元曲面を有するように形成され、又、その多数が、左右方向での配光の細分化を図り易くする縦長に形成されている。一方、各ハロゲンバルブ62は、そのフィラメント62Aが反射素子61aの長手方向に沿って上下向きになる状態で、対応する取付孔61Bに取り付けられている。
【0055】
つまり、多数の縦長の反射素子61aを備えて左右方向への配光の細分化を図り易くしたことで、マルチリフレクタ部61Dによる左右方向での過不足のない適切な配光調節が容易になり、又、ハロゲンバルブ62を、そのフィラメント62Aが反射素子61aの長手方向に沿う上下向きになるように取り付けることで、フィラメント62Aが発する光を多数の反射素子61aによって効率良く左右方向に拡散反射させることができ、結果、機体フレーム1の前部右側に位置する搭乗運転部3の前方から機体フレーム1の前部左側に位置する刈取搬送部4にわたる所定の広範囲での遠近照射を、左右方向での配光調節を重視した状態で、目的に応じて適切に配光調節した状態で適正かつ良好に行える。
【0056】
又、各反射素子61aを最適な3次元曲面を有するように形成したことで、上下に位置する反射素子61aの前後方向でのギャップ61bが横方向に大きくなり(図13参照)、これによって、昼間においては、各反射素子61aの凹凸が激しく見えるようになって豪華な雰囲気を漂わせることができ、結果、外観の向上を図れるようになる。
【0057】
ちなみに、図14に示すように、マルチリフレクタ部61Dを、多数の横長の反射素子61aを備えるように形成して、上下方向での配光の細分化を図り易くすることで、マルチリフレクタ部61Dによる上下方向での過不足のない適切な配光調節を容易に行えるようにし、又、ハロゲンバルブ62を、そのフィラメント62Aが反射素子61aの長手方向に沿う左右向きになるように取り付けることで、フィラメント62Aが発する光を多数の反射素子61aによって効率良く上下方向に拡散反射させるようにして、機体フレーム1の前部右側に位置する搭乗運転部3の前方から機体フレーム1の前部左側に位置する刈取搬送部4にわたる所定の広範囲での遠近照射を、上下方向での配光調節を重視した状態で、目的に応じて適正かつ良好に行わせるようにしてもよい。
【0058】
又、図15に示すように、マルチリフレクタ部61Dを、多数の縦横同じ長さの反射素子61aを備えるように形成して、上下左右の各方向への配光の均等化を図り易くすることで、マルチリフレクタ部61Dによる上下左右の各方向へのバランスの良い適切な配光調節を容易に行えるようにし、又、ハロゲンバルブ62を、そのフィラメント62Aが反射素子61aの対角線に沿って左右傾斜する状態に取り付けることで、フィラメント62Aが発する光を多数の反射素子61aによって効率良く上下左右の各方向に均等に拡散反射させるようにして、機体フレーム1の前部右側に位置する搭乗運転部3の前方から機体フレーム1の前部左側に位置する刈取搬送部4にわたる所定の広範囲での遠近照射を、上下左右の各方向への配光の均等化を重視した状態で、目的に応じて適正かつ良好に行わせるようにしてもよい。
【0059】
図1、図2及び図9〜11に示すように、レンズ63には、配光用のレンズ素子を形成するためのレンズカット加工が施されていないクリアレンズが採用されており、これによって、ハロゲンバルブ62からの光とともにリフレクタ61からの反射光を、マルチリフレクタ部61Dによる配光に支障を来すことなく良好に透過させることができる。又、その端縁部が、リフレクタ61の外周縁に対してシール64を介して適切に外嵌し、かつ、フロントカバー52の前照灯取付部52Aに対して適切に内嵌する縦長の楕円形に形成され、更に、その端縁部に、フロントカバー52の前照灯取付部52Aに形成した複数の係止孔52Cに対応して適切に挿通係止される係止爪63Aが形成されており、これによって、フロントカバー52の前照灯取付部52Aに対して、リフレクタ61などとともに適正な姿勢で容易に取り付けることができるとともに、その内部への泥水や雨水あるいは洗浄水などの浸入を回避できる。
【0060】
要するに、以上のように前照灯60を構成したことで、前照灯60は、上方に位置することで広角の遠方照射を重視した走行用としての機能が高くなる上側のハロゲンバルブ62及びマルチリフレクタ部61Dと、下方に位置することで近傍照射を重視した作業用としての機能が高くなる下側のハロゲンバルブ62及びマルチリフレクタ部61Dとを備える2灯式で、かつ、上下の各マルチリフレクタ部61Dによって、左方及び前下方への配光の拡張が図られた作業用としての機能が高められたものとなり、これによって、前照灯60を、着座姿勢の操縦者が各デバイダ16の先端を目視する際の妨げにならない機体右端側の位置(フロントパネル44の右側部位)に配備しながらも、夜間においては、その前照灯60が配備される搭乗運転部3の前方となる機体の右外側前方(搭乗運転部3の右斜め前方)から中央前方(搭乗運転部3の左斜め前方)にわたる所定範囲や、その搭乗運転部3の左方に位置する刈取搬送部4の前方となる機体の左側前方に対する遠方照射は当然のことながら、機体の右前部に位置する搭乗運転部3の前下方である機体の右前下方、及び、機体の左前部に位置する刈取搬送部4やその周辺に対する近傍照射、並びに、搭乗運転部3の前上部に配備した操縦レバー42や表示パネル43に対する照明などを、刈取搬送部4の左右方向へのスライド移動や開閉揺動に対応する状態で適切かつ良好に行える。
【0061】
そのため、夜間の移動走行時には、機体前方の走行路面や刈取搬送部4の前端に配備した各デバイダ16などに対する視認性が向上して、走行路面の状況や刈取搬送部4を含む機体全体の左右幅などが把握し易くなることから、操縦者に不安感を覚えさせ難くなるとともに機体の他物との接触を回避し易くなる。
【0062】
又、夜間の作業走行時には、刈取搬送部4の左右スライドに関係なく、機体前方の走行路面や刈取搬送部4の各デバイダ16などに加えて、各デバイダ16の周辺の植立穀稈などに対する視認性が向上して、圃場の状況や各デバイダ16と植立穀稈との位置関係などが把握し易くなることから、各デバイダ16を収穫対象の植立穀稈に対する適切な位置に位置させる条合わせなどが行い易くなって、各デバイダ16による植立穀稈の条分けを良好に行えるとともに、クローラ式走行装置2による植立穀稈の踏み倒しなどが回避し易くなる。
【0063】
更に、夜間の刈取搬送部4に対するメンテナンス時には、刈取搬送部4をメンテナンス用の高さ位置まで上昇させると、刈取搬送部4の刈取装置18や各種搬送装置19,21などに対する下方からの視界性が向上し、又、揺動支柱11を支点にして刈取搬送部4を左方のメンテナンス位置まで開放揺動させると、刈取搬送部4の刈取装置18や各種搬送装置19,21などに対する後方からの視界性が向上して、刈取装置18や各種搬送装置19,21などの状態が把握し易くなることから、夜間の収穫作業中に発生した刈取搬送部4での穀稈詰まりなどに対する適切な処置が行い易くなる。
【0064】
その結果、夜間の収穫作業などにおける走行性や作業性、並びにメンテナンス性の向上を効果的に図ることができる。
【0065】
殊に、搭乗運転部3に最も近い最右端のデバイダ16の全体と、右から2番目に位置するデバイダ16の先端とに対する照明を効果的に行えることで、搭乗運転部3を圃場の既刈り側に位置させた状態で、未刈り穀稈における外周部側の植立穀稈から順に収穫していく回り刈り作業などを行う上において重要な、最右端のデバイダ16や右から2番目のデバイダ16と、未刈り穀稈の最外方に位置する植立穀稈との位置合わせが行い易くなることから、回り刈り作業などでの作業性の向上をより効果的に図れるようになる。
【0066】
〔別実施形態〕
以下、本発明の別実施形態を列記する。
〔1〕収穫機としては、機体の前部における左右他方の位置に、人参や大根あるいは玉葱などの葉茎を挟持して、人参や大根あるいは玉葱などを圃場から引き抜きながら搬送する引抜搬送装置を収穫部4の一例として装備した根菜収穫用又は玉葱収穫用などの収穫機であってもよい。
【0067】
〔2〕収穫機としては、機体の前部左側に搭乗運転部3を形成するとともに前照灯60を配備し、かつ、機体の前部右側に収穫部4を装備したものであってもよい。
【0068】
〔3〕収穫機としては、3条刈り仕様の刈取搬送部4、4条刈り仕様の刈取搬送部4、又は5条刈り仕様の刈取搬送部4などを収穫部の一例として装備したものであってもよい。
【0069】
〔4〕搭乗運転部3としては、フロントパネル44の前面に膨出部44Aを形成しないものであってもよい。
【0070】
〔5〕刈取搬送部(収穫部)4としては、左右方向へのスライド移動が不能に構成されたものであってもよく、又、左右方向への開閉揺動が不能に構成されたものであってもよい。
【0071】
〔6〕図16に示すように、前照灯60としては、刈取搬送部4の引起装置17よりも後方に位置し、刈取搬送部4における搭乗運転部3から離れる側に位置するデバイダ16に対する照射を、引起装置17の間を通して適正かつ良好に行うように配置設定されたものであってもよい。
【0072】
この構成によると、刈取搬送部4における引起装置17の背部側をより効果的に照明することができ、引起装置17の背部側に位置する刈取装置18や各種搬送装置19,21などの状態が把握し易くなることから、夜間の収穫作業中に発生した刈取搬送部4での穀稈詰まりなどに対する適切な処置が行い易くなり、結果、夜間の収穫作業などにおけるメンテナンス性の向上を更に図れるようになる。
【0073】
尚、図16においては、3条刈り仕様の刈取搬送部4を装備したコンバインの前部を例示してある。
【0074】
〔7〕前照灯60の形状としては種々の変更が可能であり、例えば、前照灯60を正面視縦長の小判形や正面視円形に形成してもよい。又、前照灯60を縦長に形成する場合には、前照灯60を、その上下両部の収穫部4からの距離が同じになる垂直姿勢や、その上部側が収穫部4に近づく傾斜姿勢で配備するようにしてもよい。
【0075】
〔8〕前照灯60としては、正面視縦長の楕円形に形成されたリフレクタ61に単一のマルチリフレクタ部61Dを形成するとともに、そのマルチリフレクタ部61Dの後端部に単一のハロゲンバルブ62を取り付けて1灯式に構成したものであってもよく、又、リフレクタ61に、3つ以上のマルチリフレクタ部61Dを上下方向に並べて形成するとともに、それらの各マルチリフレクタ部61Dの後端部にハロゲンバルブ62を取り付けて多灯式に構成したものであってもよい。
【0076】
〔9〕図17に示すように、機体の前部における左右一方の位置となるフロントパネル44の前面などに、2つの前照灯60を上下方向に並べて設けるようにしてもよく、又、図示は省略するが、3つ以上の前照灯60を上下方向に並べて設けるようにしてもよい。又、複数の前照灯60を上下方向に並べて設ける場合には、それらの前照灯60を、収穫部4からの距離が同じになるように上下方向に一列状に整列させるようにしてもよく、又、上方側に位置するものほど収穫部4に近づくように上下方向に並べるようにしてもよく、更に、千鳥状に上下方向に並べるようにしてもよい。
【0077】
尚、図17においては、前照灯60として1灯式で正面視円形に形成したものを例示してある。
【0078】
〔10〕前照灯60としては、放電管を備えた高輝度放電灯(HID)又は発光ダイオード(LED)などを光源体62として採用したものであってもよい。
【0079】
〔11〕リフレクタ61としては、その反射面61Aに、ハロゲンバルブ62からの光を機体前方の所定範囲に向けて拡散反射させる前方配光用の反射領域A1と、ハロゲンバルブ62からの光を左方の刈取搬送部4に向けて拡散反射させる左方配光用の反射領域A2とを備えるように形成したものであってもよく、又、その前方配光用の反射領域A1と、ハロゲンバルブ62からの光を機体前下方の所定範囲に向けて拡散反射させる下方配光用の反射領域A3とを備えるように形成したものであってもよい。
【0080】
〔12〕図18に示すように、リフレクタ61に2つ以上のマルチリフレクタ部61Dを備える場合には、リフレクタ61を、機体に装備した状態において、下側のマルチリフレクタ部61Dが上側のマルチリフレクタ部61Dよりも機体前方側に位置するように形成してもよい。
【0081】
この構成によると、下側のマルチリフレクタ部61Dによる近傍照射を、フロントパネル44や引起装置17などによって遮られることなく、より効果的に広角に行えるようになり、これによって、刈取搬送部4の前下端部に配備した各デバイダ16や、その周辺に位置する植立穀稈などに対する照明を、刈取搬送部4の左右方向へのスライド移動や開閉揺動に対してより好適に対応させた状態で、より適切かつ良好に行えるようになることから、各デバイダ16を収穫対象の植立穀稈に対する適切な位置に位置させる条合わせなどが更に行い易くなり、結果、夜間の収穫作業での作業性の向上をより効果的に図れることになる。
【0082】
尚、図18においては、2つのマルチリフレクタ部61Dを備えたリフレクタ61を例示してある。
【0083】
又、図示は省略するが、2つ以上の前照灯60を装備する場合には、下側の前照灯60が上側の前照灯60よりも機体前方側に位置するように配備して、上記と同様の作用効果を得られるようにしてもよい。
【0084】
〔13〕図19に示すように、リフレクタ61に2つ以上のマルチリフレクタ部61Dを備える場合には、リフレクタ61を、機体に装備した状態において、下側のマルチリフレクタ部61Dを上側のマルチリフレクタ部61Dよりも少し下向き(例えば2.5度下向き)になるように形成してもよい。
【0085】
この構成によると、下側のマルチリフレクタ部61Dによる近傍照射をより効果的に行えるようになり、これによって、刈取搬送部4の前下端部に配備した各デバイダ16や、その周辺に位置する植立穀稈などに対する照明をより効果的に行えることから、各デバイダ16を収穫対象の植立穀稈に対する適切な位置に位置させる条合わせなどが更に行い易くなり、結果、夜間の収穫作業での作業性の向上をより効果的に図れることになる。
【0086】
尚、図19においては、2つのマルチリフレクタ部61Dを備えたリフレクタ61を例示してある。
【0087】
又、図示は省略するが、2つ以上の前照灯60を装備する場合には、下側の前照灯60が上側の前照灯60よりも少し下向き(例えば2.5度下向き)になるように装備して、上記と同様の作用効果を得られるようにしてもよい。
【0088】
〔14〕リフレクタ61に2つ以上のマルチリフレクタ部61Dを備える場合には、リフレクタ61を、機体に装備した状態において、上下のマルチリフレクタ部61Dが、前後方向における同じ位置に同じ姿勢で位置するように形成してもよく、又、2つ以上の前照灯60を装備する場合には、上下の前照灯60を、前後方向における同じ位置に同じ姿勢で配備するようにしてもよい。
【0089】
〔15〕リフレクタ61に2つ以上のマルチリフレクタ部61Dを備える場合には、リフレクタ61を、機体に装備した状態において、上側のマルチリフレクタ部61Dが下向きの近傍照射用となり、下側のマルチリフレクタ部61Dが水平向き又は上向きの遠方照射用となるように形成してもよく、又、2つ以上の前照灯60を装備する場合には、上側の前照灯60が下向きの近傍照射用となり、下側の前照灯60が水平向き又は上向きの遠方照射用となるように配備してもよい。
【0090】
〔16〕図20に示すように、レンズ63としては、その上下に、対応するハロゲンバルブ62からの光やマルチリフレクタ部61Dからの反射光を機体の左前下方に向けて配光する線状の配光部63Bを膨出形成したものであってもよい。
【0091】
この構成によると、ハロゲンバルブ62からの光とともにマルチリフレクタ部61Dからの反射光を、マルチリフレクタ部61Dによる配光に悪影響を及ぼすことなく、機体左側に位置する刈取搬送部4の前下端部やその周辺に対する配光を多くしながら良好に透過させることができ、これによって、刈取搬送部4の前下端部に配備した各デバイダ16や、その周辺に位置する植立穀稈などに対する照明をより効果的に行えるようになって、各デバイダ16を収穫対象の植立穀稈に対する適切な位置に位置させる条合わせなどが行い易くなることから、夜間の収穫作業での作業性の向上をより効果的に図れるようになる。
【0092】
〔17〕レンズ63としては、ハロゲンバルブ62からの光やリフレクタ61からの反射光を機体前方の所定範囲に向けて配光する前方配光用のレンズ素子に加えて、ハロゲンバルブ62からの光やリフレクタ61からの反射光を、機体左側の刈取搬送部4に向けて配光する左方配光用のレンズ素子や、機体前下方の所定範囲に向けて配光する下方配光用のレンズ素子などを備えるように、レンズカット加工が施されたものであってもよい。
【0093】
〔18〕図21に示すように、デバイダ16の先端に、ゴム製の弾性体に蛍光塗料などを塗布して構成された発光体65を簡易着脱可能に嵌合装備して、夜間のデバイダ16に対する視認性の向上を更に図るようにしてもよい。
【0094】
又、この構成によると、デバイダ16の先端に装備する発光体65に弾性体を採用することから、デバイダ16の先端を畦などの他物に接触させた際の衝撃を和らげることができ、他物との接触に起因したデバイダ16の損傷を効果的に抑制できる。しかも、その他物との接触で発光体65が損傷しても、発光体65は簡単に交換することができるので、デバイダ16が損傷する場合に比較して、交換作業に要する手間を大幅に削減できる。
【0095】
尚、デバイダ16の先端に蛍光塗料などを塗布して、夜間のデバイダ16に対する視認性の向上を更に図るようにしてもよい。
【0096】
〔19〕図22に示すように、前照灯60を、機体の前部における左右一方の位置として、刈取搬送部4における最右端に位置する引起装置17の上部〔図22の(イ)参照〕又は上部右側〔図22の(ロ)参照〕に配備するようにしてもよい。又、図示は省略するが、前照灯60を、機体の前部における左右一方の位置として、フロントパネル44の左右中央部位や左側部位に配備するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】コンバインの全体平面図
【図3】刈取搬送部の左右方向での移動状態を示す要部の平面図
【図4】刈取搬送部の支持構造を示す要部の側面図
【図5】刈取搬送部の開閉不能状態を示す要部の正面図
【図6】刈取搬送部の開閉可能状態を示す要部の正面図
【図7】刈取搬送部の支持構造を示す要部の横断平面図
【図8】刈取搬送部の左右スライド構造及び昇降構造を示す要部の縦断側面図
【図9】フロントパネルの構成を示す要部の正面図
【図10】フロントパネルの構成を示す要部の側面図
【図11】前照灯の構成を示す要部の縦断側面図
【図12】前照灯の構成を示す要部の横断平面図
【図13】マルチリフレクタ部の構成を示す要部の斜視図
【図14】マルチリフレクタ部に横長の反射素子を備えた構成を示す要部の斜視図
【図15】マルチリフレクタ部に縦横同じ長さの反射素子を備えた構成を示す要部の斜視図
【図16】引起装置の間からデバイダに照射する別実施形態を示す要部の平面図
【図17】複数の前照灯を備えた別実施形態を示す要部の正面図
【図18】下側のマルチリフレクタ部を上側のマルチリフレクタ部よりも機体前方側に位置させた別実施形態を示す要部の縦断側面図
【図19】下側のマルチリフレクタ部を下向きにした別実施形態を示す要部の縦断側面図
【図20】レンズに配光部を備えた別実施形態を示す要部の正面図及び縦断側面図
【図21】デバイダの先端に発光体を装備した別実施形態を示す要部の平面図及び側面図
【図22】前照灯を最右端の引起装置に配備した別実施形態を示す要部の正面図
【符号の説明】
【0098】
3 搭乗運転部
4 収穫部
60 前照灯
61 リフレクタ
61A 反射面
62 光源体
A2 反射領域(収穫部配光用)
A3 反射領域(下方配光用)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の前部における左右一方の位置に搭乗運転部を形成するとともに前照灯を配備し、機体の前部における左右他方の位置に収穫部を昇降可能に装備してある収穫機の照明構造であって、
前記前照灯におけるリフレクタの反射面に、前記前照灯の光源体からの光を前記収穫部に向けて照射する反射領域を設けてある収穫機の照明構造。
【請求項2】
機体の前部における左右一方の位置に搭乗運転部を形成するとともに前照灯を配備し、機体の前部における左右他方の位置に収穫部を昇降可能に装備してある収穫機の照明構造であって、
前記前照灯におけるリフレクタの反射面に、前記前照灯の光源体からの光を下方に向けて照射する反射領域を設けてある収穫機の照明構造。
【請求項3】
機体の前部における左右一方の位置に搭乗運転部を形成するとともに前照灯を配備し、機体の前部における左右他方の位置に収穫部を昇降可能に装備してある収穫機の照明構造であって、
前記前照灯におけるリフレクタの反射面に、前記前照灯の光源体からの光を前記収穫部に向けて照射する反射領域と下方に向けて照射する反射領域とを設けてある収穫機の照明構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2007−72(P2007−72A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−183565(P2005−183565)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】