説明

収納部材および梱包セット

【課題】楽器本体と支持部材とを分解することなく梱包する場合に、これらが損傷してしまうことを効果的に防止する収納部材を提供する。
【解決手段】収納部材20は、楽器100における一組の支持部材130間に収めることとなるが、このとき、側壁部21の上端が楽器本体120の裏面に接触することになる。つまり、収納部材20は、楽器本体120と底板15上面とで挟まれた状態となり、その状態からの変位が規制されるため、この収納部材20の収納部23も同様に変位が規制される。これにより、関連品を収納した状態の収納部23が不必要に変位し、その関連品が収納部23の壁面23aを介して楽器本体120または支持部材130に接触することを防止でき、そのような接触に起因して楽器本体120または支持部材130を損傷させるといったことを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽器を梱包するための梱包箱と、その楽器に関連する関連品を収納するための収納部材と、からなる梱包セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子ピアノ,電子オルガンのように、間隔を空けて配置された一組の支持部材により楽器本体が支持された構成となっている楽器を梱包する際には、楽器本体と支持部材とを分解した状態でそれぞれ重ねて梱包することが一般的であった。
【0003】
このとき、椅子,接続ケーブル,ヘッドホンなどの付属品については、専用の収納部材に収納された状態で楽器本体,支持部材に重ねて同梱されていた。
ところで、近年では、楽器としての美的外観が損なわれないようにするために、楽器本体と支持部材とを分解することなく梱包することに対する要望が高まっている。
【0004】
なお、本願出願人は、本願発明に関連する技術文献の調査を行ったが、先行技術文献として開示すべき情報を発見するに至らなかったため、先行技術文献については、記載しないものとする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ただ、上述したように、楽器本体と支持部材とを分解しない場合、それだけでも分解した場合と比べて体積が大きくなることから、梱包した後の体積をできる限り小さくするために、収納部材を収めるスペースを制限する必要がある。具体的には、支持部材で挟まれた領域に収納部材を収めることが、梱包した後の体積を小さくするうえでは好ましい。
【0006】
しかし、このようなスペースに収納部材を収める場合、付属品が収納部材を介して楽器本体または支持部材を損傷させないようにしなければならず、収納部材としての構成に工夫が必要である。
【0007】
また、楽器本体は、支持部材に支持されているとはいえ、支持部材に比べて重量があるため、楽器本体と支持部材とを分解せずに梱包した場合、運搬時の振動などにより、支持部材に過度の負荷が加わってしまい、場合によっては損傷してしまう恐れがある。
【0008】
本発明は、上述したような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、楽器本体と支持部材とを分解することなく梱包する場合に、これらが損傷してしまうことを効果的に防止するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため請求項1に記載の収納部材は、楽器を梱包箱にて梱包するにあたり、前記楽器に関連する関連品を収納した状態で前記梱包箱に同梱する収納部材である。ここで、上述した「楽器」は、演奏者の手で操作される第1操作部を長さ方向に沿って配置してなる楽器本体が、該楽器本体の長さ方向に間隔を空けて配置された一組の支持部材により支持された構成となっているものである。
【0010】
この収納部材においては、一対の側壁部と、収納部と、を備えている。これらのうち、一対の側壁部は、それぞれ前記楽器において前記支持部材の下端から前記楽器本体の裏面にまで至る高さを有し、前記一組の支持部材が配置された間隔以下の間隔で配置されている。また、収納部は、それぞれ前記一対の側壁部を連結するように延びる複数の壁面を有し、該壁面それぞれで前記一対の側壁部間の領域を取り囲むことにより、該取り囲まれた領域を、前記関連品を収納するための収納領域として形成している。
【0011】
そして、この収納部材は、前記梱包箱内において、前記一組の支持部材間に形成される領域に収めることにより、前記梱包箱に同梱される。
このように構成された収納部材によれば、梱包箱に同梱するにあたり、楽器における一組の支持部材間に収められることとなるが、このとき、側壁部が楽器本体の裏面に至る高さを有しているため、その上端が楽器本体の裏面に接触することになる。
【0012】
つまり、収納部材は、少なくとも楽器本体と梱包箱の底面とで挟まれた状態となり、その状態からの変位が規制されることとなるため、この収納部材の収納部についても同様に変位が規制されることとなる。これにより、関連品を収納した状態の収納部が不必要に変位し、その関連品が収納部の壁面を介して楽器本体または支持部材に接触することを防止でき、そのような接触に起因して楽器本体または支持部材を損傷させるといったことを防止することができる。
【0013】
さらに、この収納部材は、側壁部の上端が楽器本体の裏面に接触することで、梱包箱内において楽器本体を支持するようにも機能することとなる。これにより、運搬時の振動などに起因して楽器の支持部材に加わる負荷を、収納部材側に分散させることができるため、その負荷により楽器の支持部材が損傷することを抑制できる。
【0014】
なお、上述した関連品とは、楽器に関連する品であって、例えば、楽器に付属する付属品の他、楽器の演奏に際して使用する品のことである。
また、上述した側壁部は、楽器における支持部材の下端から楽器本体の裏面にまで至る高さを有する壁状の部分であって、その上端は、楽器における楽器本体の裏面と接触することができれば、どのような形状となっていてもよい。ただ、側壁部の上端部は、楽器本体を安定して支持できるようにすることを考えると、楽器本体の裏面のうち、その上端部が接触する領域の形状に合わせた形状に加工しておくことが望ましい。
【0015】
また、上述した収納部は、複数の壁面が側壁部間の領域を取り囲むことで収納領域を形成する構成となっていればよく、具体的な構成については特に限定されない。例えば、底面,および,収納部材を楽器における一対の支持部材間に収納した場合に楽器本体が位置する側の面として、それぞれ壁面が配置された構成とすればよい。
【0016】
ところで、通常、楽器本体は、演奏のしやすさを確保するために、楽器を側面視した場合において演奏者の位置する側(以降、「演奏側」という)へ向けて突出した構造となっていることが一般的である。そのため、楽器本体と支持部材とを分離せずに梱包する場合、運搬時の振動などで楽器全体を演奏側に傾けるような力が作用することがあり、これにより支持部材に過度の負荷が加わることがある。このような負荷がかかることは、その大きさによっては支持部材を損傷させてしまう恐れがあることから、望ましいことではない。
【0017】
そのため、上述した収納部材を楽器における一組の支持部材間に収め、その側壁部上端を楽器本体の裏面に接触させるのは、楽器全体を演奏側に傾けるような力を分散させるといった観点からすると、楽器本体における演奏者側であることが望ましい。
【0018】
ただ、側壁部上端が単純に楽器本体の裏面に接触する構成では、楽器本体における演奏者側の端部からその反対側の端部への収納部材の変位を効果的に防止することができない。そのため、上記反対側の端部へ収納部材が変位してしまった状態においては、楽器全体が演奏側に傾く力を分散させることができなくなる。
【0019】
このようなことを防止するためには、例えば、請求項2に記載の収納部材のように構成することが考えられる。
この収納部材は、前記一対の側壁部の上端から上方に向けて延びる第1延出部が備えられている。そして、この第1延出部は、当該収納部材を、前記楽器において演奏者が位置する側となる演奏側から、前記一組の支持部材間に形成される領域に収めた場合に、前記楽器本体における前記演奏側の端面に接触する位置関係で設けられている。
【0020】
このように構成された収納部材であれば、楽器における一組の支持部材間に収めた場合に、第1延出部が楽器本体における演奏側の端面に接触することで、その変位が規制される。これにより、収納部材が、楽器本体における演奏者側の端部からその反対側へ変位することを防止できるため、側壁部上端により楽器本体における演奏者側の端部を支持した状態を維持することができる。
【0021】
その結果、上記反対側の端部へ収納部材が変位して、楽器本体が演奏側に傾く力を分散させることができなくなるということがなくなるため、これにより、支持部材の損傷を効果的に防止することができる。
【0022】
また、上述した収納部は、複数の壁面で取り囲まれた収納領域を形成するものであれば、その下端が側壁部の下端と同じ高さになるような位置関係で構成すればよい。
ただ、楽器が、一組の支持部材間を該支持部材の下端側で連結する連結部から、楽器において演奏者が位置する側となる演奏側に向けて延びる部材を、演奏者の足で操作される第2操作部として備えている場合には、その第2操作部との干渉を避ける必要がある。具体的な構成としては、例えば、請求項3に記載の収納部材のように構成することが考えられる。
【0023】
この収納部材において、前記収納部は、その下端が、前記側壁部下端から、少なくとも前記楽器における支持部材下端から第2操作部の上端に至る高さに相当する距離よりも長い距離だけ、前記側壁部の上端側に配置されている。
【0024】
このように構成された収納部材であれば、一組の支持部材間に形成される領域に収めた場合に、収納部の下端が第2操作部の上端よりも上側に位置することとなるため、この第2操作部との干渉を避けることができる。
【0025】
また、上記課題を解決するため請求項4に記載の梱包セットは、演奏者の手で操作される第1操作部を長さ方向に沿って配置してなる楽器本体が、該楽器本体の長さ方向に間隔を空けて配置された一組の支持部材により支持された構成となっている楽器を、梱包するための梱包箱と、前記楽器に関連する関連品を収納するための収納部材と、からなる。
【0026】
これらのうち、収納部材は、一対の側壁部と、収納部と、を備えている。この側壁部は、それぞれ前記楽器において前記支持部材の下端から前記楽器本体の裏面にまで至る高さを有し、前記一組の支持部材が配置された間隔以下の間隔で配置されている。また、収納部は、それぞれ前記一対の側壁部を連結するように延びる複数の壁面を有し、該壁面それぞれで前記一対の側壁部間の領域を取り囲むことにより、該取り囲まれた領域を、前記関連品を収納するための収納領域として形成している。そして、前記梱包箱内において、前記一組の支持部材間に形成される領域に収めることにより、前記梱包箱に同梱される、ように構成されている。
【0027】
このように構成された梱包セットによれば、上述した請求項1から3のいずれかに記載の収納部材により得られるのと同様の作用,効果を得ることができる。
また、この梱包セットにおいては、請求項5に記載の梱包セットのように構成するとよい。この梱包セットの収納部材においては、前記一対の側壁部の上端から上方に向けて延びる第1延出部が備えられている。そして、該第1延出部は、当該収納部材を、前記楽器において演奏者が位置する側となる演奏側から、前記一組の支持部材間に形成される領域に収めた場合に、前記楽器本体における前記演奏側の端面に接触する位置関係で設けられている。
【0028】
このように構成された梱包セットによれば、上述した請求項2または請求項3に記載の収納部材により得られるのと同様の作用,効果を得ることができる。
また、上述した各梱包セットにおいては、前記楽器が、前記一組の支持部材間を該支持部材の下端側で連結する連結部から、前記楽器において演奏者が位置する側となる演奏側に向けて延びる部材を、演奏者の足で操作される第2操作部として備えている場合、請求項6に記載のように構成するとよい。
【0029】
この梱包セットの収納部材において、前記収納部は、その下端が、前記側壁部下端から、少なくとも前記楽器における支持部材下端から第2操作部の上端に至る高さに相当する距離よりも長い距離だけ、前記側壁部の上端側に配置されている。
【0030】
このように構成された梱包セットによれば、上述した請求項3に記載の収納部材により得られるのと同様の作用,効果を得ることができる。
また、このように、収納部材における収納部の下端が側壁部の上端側に配置された構成とした場合には、請求項7に記載の梱包セットのように構成するとよい。
【0031】
この梱包セットの梱包箱においては、その底面のうち、前記収納部材が同梱された当該梱包箱を上方から投影した面において前記収納部材の収納部が位置する領域であって、かつ、前記第2操作部が位置していない領域に、該領域から前記収納部の下端まで至る高さを有する柱状の柱状部が、備えられている。
【0032】
このように構成された梱包セットによれば、梱包箱底面に備えられた柱状部によって、収納部材の収納部が支持されることとなるため、その収納部に収納された関連品がその重量で収納部を下方向へ変位させ、第2操作部に干渉してしまう、といったことを防止することができる。
【0033】
なお、この柱状部については、収納部材の収納部を支持することができれば、その形状や数については特に限定されない。
また、この構成においては、請求項8に記載の梱包セットのように構成するとよい。
【0034】
この梱包セットのうち、前記収納部材においては、一方の前記側壁部のうち、少なくとも前記収納部の下端に対応する位置よりも下端側となる位置から、他方の前記側壁部に向けて延びる第2延出部が備えられている。そして、前記梱包箱において、前記柱状部は、前記収納部材を、前記一組の支持部材間に形成される領域に収めた場合に、前記第2延出部と接触する位置関係で設けられている。
【0035】
このように構成された梱包セットであれば、収納部材を楽器における一組の支持部材間に収めた場合に、第2延出部が梱包箱底面に設けられた柱状部に接触することで、その変位が規制される。これにより、収納部材が、楽器本体における演奏者側の端部からその反対側へ変位することを防止できるため、側壁部上端により楽器本体における演奏者側の端部を支持した状態を維持することができる。
【0036】
その結果、上記反対側の端部へ収納部材が変位して、楽器本体が演奏側に傾く力を分散させることができなくなるということがなくなるため、これにより、支持部材の損傷を効果的に防止することができる。
【0037】
なお、この第2延出部を備えた構成を、上述のように収納部材に第1延出部を設けた構成に採用した場合であれば、この第1延出部によっても収納部材の変位が規制されるため、側壁部上端により楽器本体における演奏者側の端部を支持した状態を、より確実に維持することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
(1)全体構成
梱包セット1は、図1に示すように、楽器を梱包するための梱包箱10と、楽器に関連する関連品(例えば、楽器に付属する付属品の他、楽器の演奏に際して使用する品)を収納した状態で梱包箱10に同梱される収納部材20と、で構成され、楽器を分解することなくそのままの状態で梱包するためのものである。
【0039】
この梱包セット1により梱包される楽器100は、図2に示すように、鍵盤110を長さ(幅)方向に沿って配置してなる楽器本体120が、この楽器本体120の長さ方向に間隔を空けて配置された一組の支持部材130により支持された電子オルガンである。また、この楽器100においては、演奏者の足で操作される足鍵盤142,ペダル144が、一組の支持部材130間を連結する連結部150の下端側から、楽器100において演奏者が位置する側に向けて延びるように設けられている。また、この楽器100においては、演奏のしやすさを確保するために、楽器本体120が、楽器100を側面視した場合(図2における側面図参照)において演奏者の位置する側へ向けて突出した構造となっている。ここで、上述した鍵盤110は、本願発明における第1操作部であり、足鍵盤142,ペダル144は、本発明における第2操作部である。
【0040】
なお、以降、楽器100において、鍵盤110が配置された方向を「幅方向」といい、幅方向と直交する方向を「前後方向」といい、幅方向と平行な端部のうち演奏者が位置することとなる側の端部を「演奏側」の端部という。そして、梱包セット1の梱包箱10,収納部材20に対しても、楽器100を梱包した状態におけるその楽器100と同一方向などを示す用語として、「幅方向」,「前後方向」,「演奏側」を用いることとする。
【0041】
梱包セット1における梱包箱10は、四角形の筒状部材11,この筒状部材11の底面をなす底トレイ13,底トレイ13の底面に敷かれる底板15,筒状部材11の天井面をなす天トレイ17,筒状部材11の四隅それぞれに立てられる断面L字状の支柱19などからなる。
【0042】
この梱包箱10における底板15は、この底板15に楽器100が載せられた場合において楽器100の底面が接触しない領域(前後方向における演奏側の領域)上に、それぞれ楽器100の支持部材130における内側の面(支持部材130それぞれにおいて対向する面)に沿って延びるように設けられた直方体のブロック32,34と、各ブロック32,34から幅方向に間隔を空けた領域から上方向に延びる柱状の柱状部36と、が設けられている。
【0043】
この柱状部36は、底板15に楽器100が載せられた場合において、楽器100の足鍵盤142およびペダル144が位置しない領域に、収納部材20の前後方向に沿った長さよりも長い領域にわたる前後方向の長さを有している。また、その領域における足鍵盤142およびペダル144それぞれよりも高い位置にまで到達する高さを有している。
【0044】
また、収納部材20は、図3に示すように、一対の側壁部21間に、関連品を収納する収納部23が配置された箱状の部材であり、梱包箱10内において、楽器100における一組の支持部材130間に形成される領域に収めることで梱包箱10に同梱される。
【0045】
この収納部材20における側壁部21は、それぞれ楽器100において支持部材130の下端から楽器本体120の裏面にまで至る高さを有している。また、側壁部21それぞれは、幅方向に一定の間隔を空けて配置されているが、この間隔は、楽器100において一組の支持部材130が配置された間隔以下の間隔となっている。なお、この側壁部21は、楽器本体120の裏面のうち、その上端が接触する領域の形状に合わせた形状(本実施形態においては直線状)に加工されている。
【0046】
また、収納部23は、それぞれ一対の側壁部21を連結するように延びる複数の壁面(本実施形態においては、上下前後4つの壁面)23aで構成され、これら壁面23aそれぞれで取り囲んだ領域を、関連品を収納する収納領域として形成している。また、この収納部23は、上記底板15に設けられた柱状部36の高さに相当する距離dだけ、側壁部21下端から上端側へ離れた位置に設けられており、これにより、収納部23の下端が、側壁部21から柱状部36と同じ高さだけ上方に配置されている(図1参照)。そして、この収納部23は、その上端を収納部材20の上端から所定の距離だけ離すことができ、かつ、関連品が収納できる収納領域が確保できるように、その高さhが定められている。
【0047】
また、収納部材20には、側壁部12それぞれの上端から上方向に延びる第1延出部25が設けられている。この第1延出部25は、収納部材20を演奏側から一組の支持部材130間に形成される領域に収めた場合に、楽器本体120における演奏側の端面に接触する位置,具体的にいうと、側壁部21上端における演奏側の端部から上方へ延びる位置関係となるように設けられている。
【0048】
また、収納部材20には、側壁部21における演奏側の端部それぞれから、側壁部21および第1延出部25からなる端部全域と同じ高さを有する板状の部分として、他方の側壁部21へ向けて延びる第2延出部27,29が設けられている。これら第2延出部27,29のうち、一方の第2延出部29は、収納部材20を演奏側から一組の支持部材130間に形成される領域に収めた場合に、その下端側が上記底板15に設けられた柱状部36における演奏側の端部に接触する。
【0049】
なお、この収納部材20は、図4に示すように、各部分を展開した状態の板状部材を折り曲げることにより形成されるものである。その形成に際しては、まず、同一方向(図4における上下方向)に配置された壁面23aを折り曲げて筒状に形成する。その後、この筒状部分の両端(図4における左右の端部)を塞ぐように側壁部21を折り曲げた後、第2延出部27,29それぞれを端部(図4における左右の端部)それぞれが重なるように折り曲げる。こうして、収納部材20が形成される。なお、この収納部材20においては、第2延出部27,29がフタとしても機能しており、壁面23aで形成される領域に関連品をセットし、上記のとおりに第2延出部27,29を折り曲げることで、関連品が収納されることとなる。
【0050】
ここで、上記梱包セット1によって、実際に楽器100を梱包する手順の一例について説明する。
まず、底トレイ13の底面に底板15を敷く。なお、このとき、底トレイ13の底面に四角形の板状部材を敷いたうえで、底板15を敷くようにしてもよい。
【0051】
次に、底板15上に、楽器100をセットする。ここでは、楽器100における支持部材130の内側それぞれが、底板15に設けられたブロック32,34の外側に位置する(または接触する)ようにセットする。なお、楽器100の楽器本体120,支持部材130それぞれは、この時点で、緩衝材からなるシートなどで覆っておくことが望ましい。
【0052】
次に、収納部材20に関連品を収納した後で、楽器100における支持部材130間に形成される領域に、その収納部材20を演奏側から収める。このとき、収納部材20において、一方の側壁部21下端は、足鍵盤142の隙間を通して底板15に接触させ、他方の側壁部21の下端は、ブロック34と柱状部36との間の領域において底板15に接触させる。そして、一方の第2延出部29が、底板15に設けられた柱状部36における演奏側の端部に接触するまで、収納部材20を上記領域の奥に向けてスライドさせる。
【0053】
次に、底トレイ13における四隅それぞれに支柱19をセットする。このとき、各支柱19は、L字状の形状を底トレイ13における隅の形状に沿うようにしてセットする(図1参照)。
【0054】
次に、筒状部材11を支柱19それぞれの上端を頂点とする四角形の領域に被せる。
そして、天トレイ17を筒状部材11の上端で形成される四角形の領域に被せる。なお、このとき、支柱19それぞれの上端に四角形の板状部材を載せたうえで、天トレイ17を被せるようにしてもよい。
【0055】
こうして、梱包セット1により、楽器100および収納部材20が梱包された状態を図5に示す。
(2)作用,効果
このように構成された梱包セット1においては、収納部材20を梱包箱10に同梱するにあたり、楽器100における一組の支持部材130間に収められることとなるが、このとき、側壁部21が楽器本体120の裏面に至る高さを有しているため、その上端が楽器本体120の裏面に接触することになる。
【0056】
つまり、収納部材20は、少なくとも楽器本体120と梱包箱10の底面(底板15上面)とで挟まれた状態となり、その状態からの変位が規制されることとなるため、この収納部材20の収納部23についても同様に変位が規制されることとなる。これにより、関連品を収納した状態の収納部23が不必要に変位し、その関連品が収納部23の壁面23aを介して楽器本体120または支持部材130に接触することを防止でき、そのような接触に起因して楽器本体120または支持部材130を損傷させるといったことを防止することができる。
【0057】
さらに、この収納部材20は、側壁部21の上端が楽器本体120の裏面に接触することで、梱包箱10内において楽器本体120を支持するようにも機能することとなる。これにより、運搬時の振動などに起因して楽器100の支持部材130に加わる負荷を、収納部材20側に分散させることができるため、その負荷により楽器100の支持部材130が損傷することを抑制できる。
【0058】
また、上記収納部材20において、側壁部21は、その上端が楽器本体120における裏面の形状に合わせた形状に加工されているため、その上端全域にわたり楽器本体120の裏面にピッタリと接触できる結果、楽器本体120を安定して支持することができる。
【0059】
また、上述した収納部材20であれば、楽器100における一組の支持部材130間に収めた場合に、第1延出部25が楽器本体120における演奏側の端面に接触することで、その変位が規制される。
【0060】
上述した楽器100のように、楽器本体120が、演奏のしやすさを確保するために、楽器100を側面視した場合において演奏側へ向けて突出した構造となっている場合、運搬時の振動などで楽器100全体を演奏側に傾けるような力が作用することがあり、これにより支持部材130に過度の負荷がかかることがある。このような負荷がかかることは、その大きさによっては支持部材130を損傷させてしまう恐れがあることから、望ましいものではない。
【0061】
ところが、上述したように、第1延出部25が楽器本体120における演奏側の端面に接触し、その変位が規制される収納部材20であれば、楽器本体120における演奏者側の端部からその反対側へ変位することが防止される。そのため、側壁部上端により楽器本体における演奏者側の端部を支持した状態を維持することができる。
【0062】
その結果、上記反対側の端部へ収納部材20が変位して、楽器本体120が演奏側に傾く力を分散させることができなくなるということがなくなるため、これにより、支持部材130の損傷を効果的に防止することができる。
【0063】
また、上記実施形態においては、収納部材20の収納部23が、底板15に設けられた柱状部36と同じ高さとなる位置に設けられている。そのため、この収納部材20を、楽器100における一組の支持部材130間に形成される領域に収めた場合に、収納部23の下端が、足鍵盤142,ペダル144よりも上側に位置することとなるため、これら足鍵盤142,ペダル144との干渉を避けることができる。
【0064】
また、上記実施形態においては、収納部材20の収納部23が、底板15に設けられた柱状部36と同じ高さに配置されている。そのため、この収納部23は、収納部材20を上記領域に収めた場合に、底板15に設けられた柱状部36によって支持されることとなる。これにより、収納部23に収納された関連品がその重量で収納部23を下方向へ変位させ、足鍵盤142,ペダル144に干渉してしまう、といったことを防止することができる。
【0065】
また、上記実施形態においては、収納部材20を上記領域に収めた場合に、収納部材20の第2延出部29が、底板15に設けられた柱状部36と接触するように構成されているため、収納部材20の変位はその接触により規制される。これにより、収納部材20が、楽器本体120における演奏者側の端部からその反対側へ変位することを防止できるため、側壁部21上端により楽器本体120における演奏者側の端部を支持した状態を、より確実に維持することができる。
【0066】
その結果、上記反対側の端部へ収納部材20が変位して、楽器本体120が演奏側に傾く力を分散させることができなくなるということがなくなるため、これにより、支持部材130の損傷を効果的に防止することができる。
(3)変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0067】
例えば、上記実施形態においては、楽器100として電子オルガンを梱包する梱包セットに対して、本願発明を適用した場合を説明した。しかし、本願発明は、楽器本体120が一組の支持部材130により支持された構成の楽器であれば、電子オルガン以外(例えば、電子ピアノ)の楽器を梱包する梱包セットに対して適用することも可能である。
【0068】
また、上記実施形態においては、収納部材20の収納部23が、4つ(4種類)の壁面23aが上下前後方向に配置された構成を例示した。しかし、収納部23については、少なくとも底面,および,楽器100側の面それぞれを有していれば、具体的な壁面の数やその配置については、特に限定されない。
【0069】
また、上記実施形態においては、底板15に1の柱状部36のみが設けられた構成を例示したが、複数の柱状部36を設け、これらにより収納部材20の収納部23を支持する構成としてもよい。
【0070】
また、上記実施形態においては、底板15に設けられたブロック32,34を、収納部材20を上記領域に収めた場合における側壁部21付近まで到達する程度に、大きな幅を有するものとすることで、収納部材20の幅方向への変位を規制する構成としてもよい。
【0071】
また、上記実施形態においては、収納部材20を上記領域に収めた場合における側壁部21の前後方向に沿った長さを有するブロックを設け、これにより、収納部材20の幅方向への変位を規制する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】梱包セットの構成を示す三面図(上面図,正面図,側面図;以下同様)
【図2】楽器の構成を示す三面図
【図3】収納部材の構成を示す三面図
【図4】収納部材の展開図
【図5】梱包セットに楽器および収納部材が収納された状態を示す三面図
【符号の説明】
【0073】
1…梱包セット、10…梱包箱、11…筒状部材、12…側壁部、13…底トレイ、15…底板、17…天トレイ、19…支柱、20…収納部材、21…側壁部、23…収納部、23a…壁面、25…第1延出部、27…第2延出部、29…第2延出部、32…ブロック、34…ブロック、36…柱状部、100…楽器、110…鍵盤、120…楽器本体、130…支持部材、142…足鍵盤、144…ペダル、150…連結部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
演奏者の手で操作される第1操作部を長さ方向に沿って配置してなる楽器本体が、該楽器本体の長さ方向に間隔を空けて配置された一組の支持部材により支持された構成となっている楽器を、梱包箱にて梱包するにあたり、前記楽器に関連する関連品を収納した状態で前記梱包箱に同梱する収納部材であって、
それぞれ前記楽器において前記支持部材の下端から前記楽器本体の裏面にまで至る高さを有し、前記一組の支持部材が配置された間隔以下の間隔で配置された一対の側壁部と、
それぞれ前記一対の側壁部を連結するように延びる複数の壁面を有し、該壁面それぞれで前記一対の側壁部間の領域を取り囲むことにより、該取り囲まれた領域を、前記関連品を収納するための収納領域として形成している収納部と、を備えており、
前記梱包箱内において、前記一組の支持部材間に形成される領域に収めることにより、前記梱包箱に同梱される、ように構成されている
ことを特徴とする収納部材。
【請求項2】
前記一対の側壁部の上端から上方に向けて延びる第1延出部が備えられており、
該第1延出部は、当該収納部材を、前記楽器において演奏者が位置する側となる演奏側から、前記一組の支持部材間に形成される領域に収めた場合に、前記楽器本体における前記演奏側の端面に接触する位置関係で設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の収納部材。
【請求項3】
前記楽器が、前記一組の支持部材間を該支持部材の下端側で連結する連結部から、前記楽器において演奏者が位置する側となる演奏側に向けて延びる部材を、演奏者の足で操作される第2操作部として備えている場合に、
前記収納部は、その下端が、前記側壁部下端から、少なくとも前記楽器における支持部材下端から第2操作部の上端に至る高さに相当する距離よりも長い距離だけ、前記側壁部の上端側に配置されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の収納部材。
【請求項4】
演奏者の手で操作される第1操作部を長さ方向に沿って配置してなる楽器本体が、該楽器本体の長さ方向に間隔を空けて配置された一組の支持部材により支持された構成となっている楽器を、梱包するための梱包箱と、前記楽器に関連する関連品を収納するための収納部材と、からなる梱包セットであって、
前記収納部材は、
それぞれ前記楽器において前記支持部材の下端から前記楽器本体の裏面にまで至る高さを有し、前記一組の支持部材が配置された間隔以下の間隔で配置された一対の側壁部と、
それぞれ前記一対の側壁部を連結するように延びる複数の壁面を有し、該壁面それぞれで前記一対の側壁部間の領域を取り囲むことにより、該取り囲まれた領域を、前記関連品を収納するための収納領域として形成している収納部と、を備え、
前記梱包箱内において、前記一組の支持部材間に形成される領域に収めることにより、前記梱包箱に同梱される、ように構成されている
ことを特徴とする梱包セット。
【請求項5】
前記収納部材においては、
前記一対の側壁部の上端から上方に向けて延びる第1延出部が備えられ、
該第1延出部は、当該収納部材を、前記楽器において演奏者が位置する側となる演奏側から、前記一組の支持部材間に形成される領域に収めた場合に、前記楽器本体における前記演奏側の端面に接触する位置関係で設けられている
ことを特徴とする請求項4に記載の梱包セット。
【請求項6】
前記楽器が、前記一組の支持部材間を該支持部材の下端側で連結する連結部から、前記楽器において演奏者が位置する側となる演奏側に向けて延びる部材を、演奏者の足で操作される第2操作部として備えている場合に、
前記収納部材において、
前記収納部は、その下端が、前記側壁部下端から、少なくとも前記楽器における支持部材下端から第2操作部の上端に至る高さに相当する距離よりも長い距離だけ、前記側壁部の上端側に配置されている
ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の梱包セット。
【請求項7】
前記梱包箱においては、
その底面のうち、前記収納部材が同梱された当該梱包箱を上方から投影した面において前記収納部材の収納部が位置する領域であって、かつ、前記第2操作部が位置していない領域に、該領域から前記収納部の下端まで至る高さを有する柱状の柱状部が、備えられている
ことを特徴とする請求項6に記載の梱包セット。
【請求項8】
前記収納部材においては、
一方の前記側壁部のうち、少なくとも前記収納部の下端に対応する位置よりも下端側となる位置から、他方の前記側壁部に向けて延びる第2延出部が備えられ、
前記梱包箱において、
前記柱状部は、前記収納部材を、前記一組の支持部材間に形成される領域に収めた場合に、前記第2延出部と接触する位置関係で設けられている
ことを特徴とする請求項7に記載の梱包セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−230634(P2007−230634A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−56797(P2006−56797)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
【Fターム(参考)】