説明

取付具

【課題】板面に形成された取付用孔の内径の寸法誤差に対応しつつ、取付可能な板厚寸法が小さくなることを抑えることができる取付具を提供する。
【解決手段】頭部20は、フランジ22と、裏面30に突出するように設けられる突出部26と、を有する。脚部40は、裏面30に設けられる。脚部40の軸部42は、裏面30に垂設される。複数の係止部44は、取付用孔の縁に係止する。係止部44は、連結部46に連結される一端44aと、自由端である頭部20側の他端44bと、径方向外側の面であって一端44aから径方向外向きに張り出すガイド面44cを有する。脚部40を取付用孔に挿入する際にガイド面44cが取付用孔の縁に接触しつつ挿入方向に押し込まれると、係止部44の他端44bが突出部26に当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付用孔に取り付けるための取付具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車体などの板面には、製造工程において用いられる種々の孔が形成され、この孔にクリップやプラグなどの取付具が挿入され車体に固定される。特許文献1には、プレートの開口に固定する開口栓が開示される。この開口栓は、開口を塞ぐ板状の本体と、本体から軸方向に立つように設けられた壁と、本体と離間して壁の側面から周方向に延びるように形成された爪部材とを有する。この構成により爪部材は撓み易くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−248541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術によると、爪部材が径方向に撓むことで取付用孔の内径の寸法誤差に対応可能となる。一方、爪部材は軸方向にも撓み易く、挿入時に爪部材が軸方向に撓む可能性がある。つまり、取付用孔に爪部材を挿入するときに爪部材が取付用孔の縁に接触して、爪部材が本体に近づく方向に撓む可能性がある。爪部材の保持リップと本体の鍔の下面との距離がプレートの板厚寸法よりも小さくなるほど、挿入時に爪部材が撓んだ際に、爪部材が取付用孔の内周に当接したまま、取付が完了しないおそれがある。そのため取付用孔が形成されるプレートの板厚寸法を比較的小さくする必要があった。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、板面に形成された取付用孔の内径の寸法誤差に対応しつつ、取付可能な板厚寸法が小さくなることを抑えることができる取付具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の取付具は、板面に形成された取付用孔に取り付けるための取付具であって、フランジと、フランジ裏面から突出するように設けられる突出部と、を有する頭部と、フランジ裏面に設けられる脚部と、を備える。脚部は、フランジ裏面に垂設される軸部と、取付用孔の縁に係止する複数の係止部と、を有する。係止部は、軸部に連結される一端と、自由端である頭部側の他端と、径方向外側の面であって一端から他端側へ径方向外向きに張り出すガイド面と、を有する。脚部を取付用孔に挿入する際にガイド面が取付用孔の縁に接触しつつ挿入方向に押し込まれると、係止部の他端が突出部に当接する。
【0007】
この態様によると、係止部の他端が突出部に当接することで係止部の頭部側への移動を制限することができる。これにより係止部が頭部に近づいて、取付具を取付可能な板厚寸法が小さくなることを抑えることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、板面に形成された取付用孔に取り付けるための取付具において、取付用孔の内径の寸法誤差に対応しつつ、取付可能な板厚寸法が小さくなることを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1(a)は、取付具の側面図であり、図1(b)は、取付具を裏面側から見た斜視図である。
【図2】図2(a)は、取付具の表面図であり、図2(b)は、取付具の裏面図である。
【図3】図3(a)は、図2(b)の取付具10の線分A−Aの断面図であり、図3(b)は、図2(b)の取付具10の線分B−Bの断面図である。
【図4】取付具の作用を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は実施形態に係る取付具10を説明するための説明図である。図1(a)は、取付具10の側面図であり、図1(b)は、取付具10を裏面側から見た斜視図である。また、図2(a)は、取付具10の表面図と、図2(b)は、取付具10の裏面図である。図3は、実施形態に係る取付具10の断面図である。図3(a)は、図2(b)の取付具10の線分A−Aの断面図であり、図3(b)は、図2(b)の取付具10の線分B−Bの断面図である。ここで各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0011】
車両の組み立て工程において車体のボディパネルに取付用孔が形成され、取付具10は取付用孔に取り付けられる。これにより取付具10は取付用孔を閉塞して、一次固定される。
【0012】
取付具10は、取付用孔を蓋する頭部20と、取付用孔に挿入される脚部40と、熱軟化性部材(不図示)とを備える。熱軟化性部材は、頭部20および脚部40より低い温度で融解する樹脂材料である。熱軟化性部材は、取付具10を取付用孔に取り付けたのち加熱され融解する。熱軟化性部材はボディパネルを塗装する際の塗装炉の熱で融解する。熱軟化性部材が融解して熱軟化性部材が車体に密着した状態を二次固定という。
【0013】
頭部20は、フランジ22、閉塞部24、突出部26、規制部28、環状壁部36とを有する。閉塞部24は、円盤形状に形成され、取り付けた後に取付用孔を閉塞するよう機能する。閉塞部24の径方向外側にフランジ22が設けられる。フランジ22は、閉塞部24に対して傾斜し、傘状のテーパ面を形成する。またフランジ22は取付用孔より大きくなるように形成される。なお、頭部20の中心軸に平行な方向を軸方向という。
【0014】
突出部26は、頭部20の裏面30に突出するように設けられ、外径側から内径側に向かって突出高さが高くなるように形成される。すなわち突出部26中央に近づくにつれ高くなる山状に形成される。突出部26の中央には突出部26から軸方向にさらに張り出した規制部28が設けられる。突出部26は中心を通るように延在する。規制部28を突出部26の中央に設けることで、係止部44の回転規制手段を突出部26と合わせて容易に加工することができる。
【0015】
図1(b)に示すように、脚部40および突出部26を囲むように環状壁部36が設けられる。環状壁部36の径方向外側からフランジ22の外周端までの間に熱軟化性部材が配される。環状壁部36の上端から径方向外向きに張り出す張出部32は、熱軟化性部材を支持する。
【0016】
脚部40は、頭部20の裏面30に垂設される軸部42と、軸部42に固定される連結部46と、連結部46に固定される係止部44と、を有し、裏面30に設けられる。
【0017】
軸部42は、複数の柱状体であり、裏面30に垂設される。軸部42の先端には連結部46が固定される。連結部46は、軸部42および係止部44を連結する。連結部46は弾性を有し、環状に形成される。連結部46には係止部44が固定され、軸部42は連結部46を介して係止部44を支持する。連結部46を環状に配し、係止部44を周方向側面の両側から固定することで、係止部44を安定して支持することができる。
【0018】
一対の係止部44は、連結部46を介して軸部42に連結され、取付用孔に取り付けた際に取付用孔の裏側の縁に係止する。係止部44は、連結部46に連結される一端44aと、自由端である頭部20側の他端44bと、径方向外側の面であって一端44aから最大膨出部44eに向かうにつれて径方向外向きに張り出すガイド面44cと、取付用孔の裏側の縁に係止する係止面44dと、ガイド面44cと係止面44dとの境界に設けられた最大膨出部44eとを有する片持ち片として構成される。なお、実施形態では最大膨出部44eが、段状に形成されている。
【0019】
図1(a)に示すように他端44bは、頭部20側の平面である。最大膨出部44eは係止部44の最も径方向外側に位置する。頭部20と最大膨出部44eとの間隔は、取付具10が取付可能なパネル12の板厚寸法に対応する。
【0020】
図3(a)および(b)に示すように、係止部44の他端44bは、頭部20から離間している。これにより係止部44は撓み易くなる。図3(a)に示すように、連結部46の軸方向断面は、軸方向長さが径方向長さより長い略長方形である。これにより、連結部46の軸方向の剛性は高まる一方、径方向に撓み易くできる。
【0021】
図4は、取付具10の作用を説明するための説明図である。図4(a)は、取付用孔14に取付具10を挿入し始めた状態を示し、図4(b)は、取付用孔14に取付具10を途中まで挿入した状態を示し、図4(c)は、取付用孔14に取付具10を取り付けた状態を示す。車体のパネル12に取付用孔14が形成されている。
【0022】
取付具10は、ユーザが指で頭部20を押しながら取付用孔14に脚部40から挿入される。一対の軸部42の外径は、取付用孔14の内径より小さい一方、一対の係止部44の外径は取付用孔14の内径より大きい。そのため図4(a)に示すように係止部44のガイド面44cが取付用孔14の縁に接触する。
【0023】
係止部44が固定される連結部46は弾性を有しているため、係止部44は径方向に撓み易くなっており、軸方向にも変位可能となっている。これにより、取付用孔14の内径の寸法誤差に対応することができ、突出部26の突出高さに合わせて軸方向位置を変位させて比較的厚い板厚寸法にも取り付けることができる。さらに、図1(b)および図2(b)に示すように連結部46は軸方向に沿って折れ、径方向内向きに屈曲した屈曲部46aを有する。これにより、連結部46の径方向への弾性が増し、係止部44がいっそう撓み易くなり、取付用孔14の内径のより大きい寸法誤差に対応できる。
【0024】
ガイド面44cは一端44aから最大膨出部44eに向かうにつれて径方向外向きに張り出すテーパ面であるため、取付具10を押し込むと、頭部20側へ移動する方向および、径方向内向きに移動する方向に力を受ける。したがってガイド面44cが取付用孔14の縁に接触しつつ挿入方向に押し込まれると、係止部44の他端44bが突出部26の接触面26aに当接する。これにより、係止部44の頭部20側への移動を制限することができる。頭部20と最大膨出部44eとの間隔が小さくなって取付具10を取付可能な板厚寸法が小さくなることを抑えることができる。
【0025】
ガイド面44cが取付用孔14の縁に接触しつつ挿入方向に押し込まれると、図4(b)に示すように係止部44の他端44bは内径側に向かって突出部26上を接触を維持しつつ摺動する。係止部44は連結部46に固定された箇所を軸に回転し、連結部46は縮径する。実施形態の突出部26は外径側から内径側に向かって突出高さが高くなるように形成されており、かつ、係止部44は弾性を有する連結部46に連結されているため、係止部44の他端44bが突出部26の内径側に移動すると、係止部44が頭部20側から離間するように移動し、頭部20と最大膨出部44eとの間隔を大きくすることができる。
【0026】
なお、ともに平面である他端44bと接触面26aとが面接触をし、面接触を保ちながら摺動してよい。これにより係止部44の摺動を安定できる。通常、平面である他端44bが回転すると、接触面26aとの面接触は維持されないが、連結部46が撓むため面接触を保ちながら摺動できる。
【0027】
さらに係止部44の他端44bが内径側に移動すると規制部28に当接し、係止部44の他端44bの径方向内側への移動が規制される。これにより連結部46が過度に撓むことを抑えることができる。
【0028】
頭部20が押し込まれ、図4(c)に示すように係止部44の最大膨出部44eが取付用孔14の下側の縁を超えると、頭部20の裏面30に設けられた熱軟化性部材60と、係止面44dとにより取付用孔14の上下の縁を挟持して、取付具10の一次固定が完了する。 一次固定完了後、取付具10を加熱して熱軟化性部材60を溶融させ、取付具10を取付用孔14に固着して二次固定をすることができる。
【0029】
本発明は上述の各実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施例に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施例も本発明の範囲に含まれうる。
【0030】
実施形態の取付具10は、取付用孔を閉塞する閉塞栓の態様であるがそれに限られない。たとえば取付具の頭部の表面にフックや、ケーブルを固定するための固定具が設けられてもよい。
【0031】
軸部42および係止部44がそれぞれ一対である態様を示したが、それに限られない。軸部42および係止部44がそれぞれ3つあり、交互に配されてよい。また軸部42は一対であるが、係止部44は4つであってもよい。この場合、突出部26は、頭部20の裏面30の環状壁部36に囲まれた中央部分の全体が軸方向に突出するように形成されてよい。
【0032】
実施形態では係止部44の他端44bが平面である態様を示したがそれに限られない。たとえば係止部44の他端44bは曲面であってよい。また他端44bが摺動する突出部26の接触面26aも、他端44bの形状に応じて曲面であってよい。
【符号の説明】
【0033】
10 取付具、 12 パネル、 14 取付用孔、 20 頭部、 22 フランジ、 24 閉塞部、 26 突出部、 28 規制部、 30 裏面、 32 張出部、 34 表面、 36 環状壁部、 40 脚部、 42 軸部、 44 係止部、 44e 最大膨出部、 44c ガイド面、 44b 他端、 44a 一端、 44d 係止面、 46 連結部、 46a 屈曲部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板面に形成された取付用孔に取り付けるための取付具であって、
フランジと、フランジ裏面から突出するように設けられる突出部と、を有する頭部と、
前記フランジ裏面に設けられる脚部と、を備え、
前記脚部は、
前記フランジ裏面に垂設される軸部と、
取付用孔の縁に係止する複数の係止部と、を有し、
前記係止部は、前記軸部に連結される一端と、自由端である前記頭部側の他端と、径方向外側の面であって前記一端から前記他端側へ径方向外向きに張り出すガイド面と、を有し、
前記脚部を取付用孔に挿入する際に前記ガイド面が取付用孔の縁に接触しつつ挿入方向に押し込まれると、前記係止部の前記他端が前記突出部に当接することを特徴とする取付具。
【請求項2】
前記脚部は、弾性を有する連結部をさらに有し、
前記係止部は、前記連結部を介して前記軸部に連結され、
前記突出部は、外径側から内径側に向かって突出高さが高くなるように形成され、
前記ガイド面が取付用孔の縁に接触しつつ挿入方向に押し込まれると、前記係止部の前記他端が内径側に向かって前記突出部上を摺動することを特徴とする請求項1に記載の取付具。
【請求項3】
前記軸部は少なくとも一対の柱状体であり、
前記連結部は、環状に形成されて、前記少なくとも一対の柱状体の間を連結することを特徴とする請求項2に記載の取付具。
【請求項4】
前記連結部の軸方向断面は、軸方向長さが径方向長さより長い略長方形であることを特徴とする請求項3に記載の取付具。
【請求項5】
前記連結部は、前記軸部と前記係止部との間に径方向に屈曲する屈曲部を有することを特徴とする請求項4に記載の取付具。
【請求項6】
前記頭部は、前記フランジ裏面に前記係止部の径方向内側の移動を規制する規制手段を有することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の取付具。
【請求項7】
前記規制手段は前記突出部に形成されることを特徴とする請求項6に記載の取付具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−79709(P2013−79709A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221215(P2011−221215)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【Fターム(参考)】