説明

受け皿整列装置

【課題】極めて簡単な構造でありながら、受け皿11を的確に整列させることのできる受け皿整列装置80を提供する。
【解決手段】本願発明に係る受け皿整列装置80は、農産物Aが載置される平面視円形の受け皿11を搬送しながら所定の姿勢に揃えるものである。前記受け皿11を一列状に並べて搬送する搬送路85と、前記搬送路85に並設された速度減衰板93とを備える。前記受け皿11を前記搬送路85と前記速度減衰板93とに跨らせて搬送することによって、前記受け皿11を一方向に回転させ、前記受け皿11の外周下部に形成された段差部101を前記速度減衰板93における前記搬送路85寄りの角部95cに被せて嵌めるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えば桃、梨、柑橘類、リンゴ、メロンといった農産物が載置される平面視円形の受け皿を搬送しながら所定の姿勢に揃える受け皿整列装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、農産物を選別・仕分けする選別装置に用いられる受け皿としては、目的に応じた様々な形態のものが提案されている。例えばフリートレイ式の受け皿は、搬送、分岐、集積といった動作をし易いように平面視円形の形態になっている。しかし、この種の受け皿は、動作の自由度が大きい反面、例えば受け皿に載置された農産物の検査のために、受け皿を所定の姿勢に揃える(受け皿の向きを一定に揃える)のが難しい。この点を解消する装置としては、例えば特許文献1及び2の受け皿整列装置がある。
【0003】
特許文献1の受け皿整列装置では、搬送コンベヤにて搬送される受け皿を回転ベルトとガイド部材とで挟み、回転ベルトの回転力にて受け皿を水平回転させながら、受け皿の底面に形成された凹条を、搬送コンベヤの上面に設けられた凸条部に嵌め合わせ、受け皿の向きを揃えている。また、特許文献2の受け皿整列装置では、左右一対の第1搬送コンベヤの間に、両第1搬送コンベヤより一段低い第2搬送コンベヤを配置し、左右の第1搬送コンベヤの駆動に速度差を持たせることで受け皿を水平回転させる。受け皿の底部には左右一対の凹み部が形成されていて、凹み部がそれぞれ左右の第1搬送コンベヤに重なるまで受け皿を水平回転させることによって、受け皿を両第1搬送コンベヤの上面から落下させ、向きを揃えた状態で第2搬送コンベヤ上に載せて搬送するのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−165617号公報
【特許文献2】特開2008−290797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記特許文献1の受け皿整列装置では、搬送コンベヤ以外に、受け皿の姿勢変更(水平回転)のために回転ベルト及びガイド部材が必要になる。また、前記特許文献2の受け皿整列装置では、搬送コンベヤが少なくとも3本必要になる。このように前記各特許文献の構成では、受け皿の姿勢変更のための部品点数が多く、その駆動構造も複雑になるため、大型化や製造コストの上昇を招来するという問題があった。
【0006】
そこで、本願発明は、極めて簡単な構造でありながら、受け皿を的確に整列させることのできる受け皿整列装置の提供を技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、農産物が載置される平面視円形の受け皿を搬送しながら所定の姿勢に揃える受け皿整列装置であって、前記受け皿を一列状に並べて搬送する搬送路と、前記搬送路に並設された速度減衰板とを備えており、前記受け皿を前記搬送路と前記速度減衰板とに跨らせて搬送することによって、前記受け皿を一方向に回転させ、前記受け皿の外周下部に形成された段差部を前記速度減衰板における前記搬送路寄りの角部に被せて嵌めるように構成されているというものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載した受け皿整列装置において、前記段差部の上下凹み高さを、前記搬送路の上面から前記速度減衰板の上面までの高さよりも高くしているというものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載した受け皿整列装置において、前記速度減衰板の少なくとも上面側は摩擦係数の大きい素材からなっており、前記搬送路と前記速度減衰板とに前記受け皿を跨らせた状態では、前記速度減衰板との摩擦に起因して前記受け皿が一方向に回転するように構成されているというものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちいずれかに記載した受け皿整列装置において、前記搬送路の出口側には、前記搬送路を挟んで前記速度減衰板の反対側に、前記受け皿の側面に当接して前記段差部の縦平坦面を前記速度減衰板の前記角部側に寄せるガイド部材が配置されているというものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によると、農産物が載置される平面視円形の受け皿を搬送しながら所定の姿勢に揃える受け皿整列装置であって、前記受け皿を一列状に並べて搬送する搬送路と、前記搬送路に並設された速度減衰板とを備えており、前記受け皿を前記搬送路と前記速度減衰板とに跨らせて搬送することによって、前記受け皿を一方向に回転させ、前記受け皿の外周下部に形成された段差部を前記速度減衰板における前記搬送路寄りの角部に被せて嵌めるように構成されているから、前記搬送路と前記速度減衰板とに前記受け皿を跨らせて搬送するという極めて簡単な構成でありながら、前記受け皿を的確に整列させることができるという効果を奏する。換言すると、前記受け皿の外周下部に1つの前記段差部を設けるだけで、精度よく前記受け皿の搬送姿勢を揃えられ、当該揃えられた搬送姿勢も簡単に維持できるという効果を奏する。
【0012】
請求項2の発明によると、請求項1に記載した受け皿整列装置において、前記段差部の上下凹み高さを、前記搬送路の上面から前記速度減衰板の上面までの高さよりも高くしているから、前記受け皿の前記段差部が前記速度減衰板の前記角部に被さって嵌ると、前記段差部と前記速度減衰板とが接触しなくなる(離れることになる)。従って、このような状態の前記受け皿に前記速度減衰板の減衰作用が及ぶことはなく、前記搬送路から次工程に向けて、スムーズに受け継ぎ搬送できるという効果を奏する。
【0013】
請求項3の発明によると、請求項1又は2に記載した受け皿整列装置において、前記速度減衰板の少なくとも上面側は摩擦係数の大きい素材からなっており、前記搬送路と前記速度減衰板とに前記受け皿を跨らせた状態では、前記速度減衰板との摩擦に起因して前記受け皿が一方向に回転するように構成されているから、前記受け皿を一方向に回転させる構造が極めて簡単で故障し難いばかりか、部品点数も少なくて済む。前記搬送路を駆動させる機構以外の駆動源も要らない。従って、製造コストの抑制のみならず、ランニングコスト(維持管理コスト)の抑制にも寄与するという効果を奏する。
【0014】
請求項4の発明によると、請求項1〜3のうちいずれかに記載した受け皿整列装置において、前記搬送路の出口側には、前記搬送路を挟んで前記速度減衰板の反対側に、前記受け皿の側面に当接して前記段差部の縦平坦面を前記速度減衰板の前記角部側に寄せるガイド部材が配置されているから、前記ガイド部材の存在により、前記段差部の縦平坦面を前記速度減衰板の前記角部側にスムーズに寄せることができる。従って、整列させた前記受け皿の搬送姿勢をより一層的確に維持して、次工程に受け継ぎ搬送できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】受け皿の平面図である。
【図2】受け皿の底面図である。
【図3】受け皿を切り欠き部側から見た側面図である。
【図4】受け皿を側周壁側から見た側面図である。
【図5】図1のV−V視側面断面図である。
【図6】図1のVI−VI視側面断面図である。
【図7】図5において農産物を載せた状態の側面断面図である。
【図8】図6において農産物を載せた状態の側面断面図である。
【図9】中底体及び可撓性ヒレ片を省略した受け皿の平面図である。
【図10】中底体の裏面図である。
【図11】可撓性ヒレ片の裏面図である。
【図12】選別コンベヤの全体側面図である。
【図13】選別コンベヤの全体平面図である。
【図14】整列コンベヤの概略側面断面図である。
【図15】整列コンベヤの平面図である。
【図16】整列コンベヤのXVI−XVI視側面断面図である。
【図17】整列コンベヤのXVII−XVII視側面断面図である。
【図18】検査部の拡大側面断面図である。
【図19】選果部の拡大側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本願において「農産物」とは、本願発明に係る受け皿に載置可能なあらゆる果実及び野菜を含む概念であり、例えばミカンといった小型のもの、桃、梨、リンゴといった中型のもの、メロン、スイカといった大型のもの等が挙げられる。
【0017】
(1).受け皿の構造
まず、図1〜図11を参照しながら、農産物Aを選別・仕分けする選別装置に用いられる受け皿11の構造について説明する。図1〜図8に示すように、実施形態の受け皿11は、側周壁21と底壁22とを有して上向きに開口した平面視円形の受け皿本体12と、受け皿本体12の内部側を上下に仕切る中底体13と、受け皿本体12における側周壁21の上縁部に取り付けられた一対の可撓性ヒレ片14とを備えている。
【0018】
受け皿本体12は比較的硬質な合成樹脂材製の射出成形品であり、上向きに開口した円筒状に形成されている。受け皿本体12における底壁22の中央部には、受け皿本体12内に収容される農産物Aの外径より小さい穴径で且つ上下方向に貫通する貫通穴23が形成されている。底壁22の上面側のうち貫通穴23の周囲には、貫通穴23を囲う角筒状の支えリブ25が立設されている。支えリブ25における4つのコーナ部と側周壁21の内面側とは、底壁22の中央部(実施形態では貫通穴23)を基準に放射方向に延びる補強リブ26にて連接されている。
【0019】
支えリブ25の上端面と、各補強リブ26における上端面の中央寄り部分とは、各補強リブ26における上端面の外寄り部分よりも一段下がった階段状の凹み天井部27になっている。当該一段下がった凹み天井部27に、中底体13において下向きに突出した環状段部31(詳細は後述する)が嵌め込まれるように構成されている。
【0020】
受け皿本体12の側周壁21には、貫通穴23の中心線を挟んだ両側に、相対向する一対の切り欠き部24が形成されている。各切り欠き部24の下端側は、受け皿本体12の内部側に配置された状態の中底体13よりも高い位置にあり、これら両切り欠き部24が直列に並ぶ側面視方向から見ても、中底体13が露出しないように設定されている。
【0021】
中底体13も、受け皿本体12と同様に、比較的硬質な合成樹脂材製の射出成形品であり、その直径は受け皿本体12の内径とほぼ同程度に設定されている。中底体13の中央部には、受け皿本体12の凹み天井部27に上方から嵌る環状段部31が下向きに突出形成されている。環状段部31における下面側の中央部分には、受け皿本体12における支えリブ25の内面側に密接して貫通穴23に連通した状態で上下に貫通する角筒ボス部32が一体形成されている。環状段部31の下面側のうち角筒ボス部32より半径外寄りの部分には、支えリブ25の上部外面側に密接する外側リブ33が一体形成されている。角筒ボス部32及び外側リブ33にて支えリブ25を挟むようにして、凹み天井部27に環状段部31を上方から嵌め込むことによって、中底体13が受け皿本体12内に配置される。
【0022】
受け皿本体12の内部側に中底体13を配置した状態では、受け皿本体12の側周壁21と中底体13と支えリブ25と各補強リブ26とによって、受け皿本体12の内部側が平面視扇形の4つの領域に仕切られることになる。これらの領域には、受け皿11の重量バランスをとるためのカウンタウェイト(図示省略)を収容することが可能である。なお、中底体13における環状段部31の上面側には、角筒ボス部32のボス穴34を囲う環状のクッション体35が配置される。クッション体35は、受け皿11に載置された農産物Aの下部側に傷が付くのを防止するためのものであり、軟質ゴムやスポンジといった弾性を有する素材からなっている。
【0023】
一対の可撓性ヒレ片14は、農産物Aを収まりよく受けるためのものであり、可撓性を有する弾性材(例えばゴムのような軟質な合成樹脂)製で平面視扇形に形成されたものである。各可撓性ヒレ片14の基端側は、受け皿本体12における側周壁21の上縁部に着脱可能に取り付けられている。このため、各可撓性ヒレ片14は、受け皿本体12の中央に向けて延びる片持梁の姿勢で固定される。
【0024】
実施形態では、受け皿本体12における側周壁21の上縁部は、一対の切り欠き部24によって2つに分断されている。図10等に示すように、それぞれの上縁部には、上向きに突出する挿入ピン28が周方向に沿った飛び飛びの間隔で立設されている。一方、図11に示すように、各可撓性ヒレ片14の基端側の下面には、各挿入ピン28にそれぞれ対応して嵌る嵌合穴41が形成されている。側周壁21における上縁部の各挿入ピン28に各可撓性ヒレ片14の嵌合穴41を上方から嵌め合わせることによって、各可撓性ヒレ片14が受け皿本体12に対して着脱可能に取り付けられている。
【0025】
図1及び図5に示すように、各可撓性ヒレ片14の先端は、貫通穴23の内面(実施形態では角筒ボス部32におけるボス穴34の内面)より受け皿本体12中央側に位置している。また、各可撓性ヒレ片14は、受け皿本体12の中央を基準に放射方向に延びるスリット43にて複数の切片部42に分割されている。更に、図11に示すように、各可撓性ヒレ片14(切片部42)の下面側には、農産物Aを載置したときに下向きに撓み変形し易くするための割り溝44が適宜形成されている。実施形態の割り溝44は、受け皿本体12の中央を基準にした同心円の波紋状に形成されている。
【0026】
さて、受け皿11に農産物Aを載置した状態では、受け皿本体12の各切り欠き部24から農産物Aの一部が露出することになるが、農産物Aの形状・重量・大きさ等によっては、農産物Aが両切り欠き部24を塞ぎ切れず、一方の切り欠き部24から他方の切り欠き部24に抜ける隙間が空く場合がある。これに対して実施形態では、中底体13の上面側のうち環状段部31よりも半径外側の部分に、両切り欠き部24が直列に並ぶ側面視方向から見て、農産物Aが載置されたときの可撓性ヒレ片14と切り欠き部24とで囲まれる隙間を塞ぐ遮光部材100が設けられている。
【0027】
遮光部材100は、軟質ゴムやスポンジといった弾性を有する素材からなっていて、1つの可撓性ヒレ片14の下方側に対して一方の切り欠き部24の近傍と他方の切り欠き部24の近傍とに2つずつ、合計4つ設けられている。なお、遮光部材100は例えば各可撓性ヒレ片14の下方側を覆うブロック状の形態であってもよい(1つの可撓性ヒレ片14に対して1つの遮光部材100を配置するようにしてもよい)。
【0028】
また、受け皿本体12の外周下部には、円筒の外周角部を切り落として断面逆L字状に凹ませたような形態の段差部101が形成されている。詳細は後述するが、受け皿本体12の段差部101は、速度減衰板93における整列コンベヤベルト85寄りの角部93cに被せて嵌ることによって搬送姿勢を決めるためのものである。段差部101は、受け皿本体12におけるいずれか一方の切り欠き部24の下方に位置している。これは、選別コンベヤベルト55にて搬送される受け皿11上の農産物Aを糖度計測する際に、両切り欠き部24が直列に並ぶ向きと、ライト73と透過光センサ74とが対峙し合う向きとを一致させるためである(詳細は後述する)。
【0029】
受け皿11に農産物Aを載置すると、農産物Aの外形形状に倣って一対の可撓性ヒレ片14が下向きに撓み変形し、図7及び図8に示す変形状態で農産物Aを側方から支持することになる。農産物Aの下部側はクッション体35にて支持される。従って、搬送による農産物Aの横揺れを両可撓性ヒレ片14の弾性復原力にて抑制でき、受け皿11に載置された農産物Aを安定した搬送姿勢に保持できる。特に実施形態では、各可撓性ヒレ片14がスリット43にて複数の切片部42に分割されているから、個々の切片部42を農産物Aの外周に密着させ易い。このため、各可撓性ヒレ片14(各切片部42)との接触面積が広く取れ、受け皿11に載置された農産物Aの姿勢安定性がよいのである。
【0030】
(2).選別装置の構造
次に、図12〜図19を参照しながら、農産物Aを選別・仕分けする選別装置の構造及びその選別態様の一例について説明する。選別装置の一例である選別コンベヤ50は、4本の脚51にて支持される2本の略平行なコンベヤフレーム52を備えている。各コンベヤフレーム52の両端部の間に、軸53を介して遊転ローラ54が回転自在に設けられている。各コンベヤフレーム52の間には、遊転ローラ54を介して2本の略平行なコンベヤベルト55が張設されている。コンベヤベルト55は、2つのテンションローラ56と駆動ローラ57とに掛け回されている。駆動ローラ57の軸58に、プーリ59,60及びベルト61を介して電動モータ62を連結させ、電動モータ62にて2本の略平行なコンベヤベルト55を同期させて同一方向に回動させるように構成されている。なお、2本の略平行なコンベヤベルト55の設置間隔は、受け皿11の貫通穴23より若干大きく設定されている。
【0031】
コンベヤベルト55の上面の送り始端側には、受け皿11を搬送しながら所定の姿勢に揃える受け皿整列装置としての整列コンベヤ80が配置されている。整列コンベヤ80は、前述の選別コンベヤ50と類似した構造になっていて、4本の脚81にて支持される2本の略平行なコンベヤフレーム82を備えている。各コンベヤフレーム82の両端部の間に、軸83を介して整列遊転ローラ84が回転自在に設けられている。各コンベヤフレーム82の間には、整列遊転ローラ84を介して搬送路としての1本の整列コンベヤベルト85が張設されている。整列コンベヤベルト85は、2つのテンションローラ86と整列駆動ローラ87とに掛け回されている。整列駆動ローラ87の軸88に、プーリ89,90及びベルト91を介して整列電動モータ92を連結させ、整列電動モータ92にて1本の整列コンベヤベルト85を回動させるように構成されている。選別コンベヤ50側の電動モータ62と整列コンベヤ80側の整列電動モータ92とは互いに同期して駆動する構成になっている。
【0032】
整列コンベヤベルト85の幅方向一側(整列コンベヤベルト85を挟んで一側方)には、受け皿11の一側部分を他側部分よりも減速させるための速度減衰板93が配置されている。実施形態の速度減衰板93は、摩擦係数の大きいゴム等の素材からなる板状のものであり、整列コンベヤベルト85に沿って長く延びている。なお、速度減衰板93のうち摩擦係数の大きい部分は、少なくとも受け皿11が乗り上げる上面側であればよく、全体の摩擦係数を大きくしておく必要はない。
【0033】
速度整列板93の上面のうち後述する供給台63寄りの送り始端側は、搬送下流側に行くに従って高くなる傾斜案内面93aになっている。また、傾斜案内面93aより搬送下流側は摩擦平坦面93bになっている。図16及び図17に示すように、実施形態では、整列コンベヤベルト85の上面から速度減衰板93の摩擦平坦面93bまでの高さHよりも、各受け皿11における段差部101の上下凹み高さHtを高くしている。このため、図17に示すように、受け皿11の段差部101を、速度減衰板93(特に摩擦平坦面93b)における整列コンベヤベルト85寄りの角部93cに被せて嵌め合わせた状態では、段差部101の横平坦面101bと速度減衰板93の摩擦平坦面93bとは接触しないことになる。
【0034】
整列コンベヤベルト85を挟んで速度減衰板93の反対側(他側方)には、各受け皿11(受け皿本体12)の側面に当接して段差部101の縦平坦面101aを速度減衰板93の角部93c側に寄せるためのガイド部材94(ガイドレール)が配置されている。実施形態のガイド部材は、整列コンベヤベルト85に沿って長く延びた形態になっているが、少なくとも整列コンベヤベルト85の送り終端側にあればよい。但し、整列コンベヤベルト85の出口において、速度減衰板93の角部93cからガイド部材94の当接面までの距離Wは、各受け皿11における段差部101の縦平坦面から中心を通って反対側の外周面までの幅寸法Wtとほぼ同程度にしておく必要がある。なお、受け皿11が整列コンベヤベルト85と速度減衰板93とに跨らせて搬送されるように、後述する供給台63における供給口の幅寸法及び開口位置が、整列コンベヤベルト85及び速度減衰板93に対して規定されている。
【0035】
整列コンベヤベルト85の上面の送り始端側には供給台63が設けられている。1個の農産物Aを入れた受け皿11を供給台63に載せ、供給台63上の受け皿11を整列コンベヤベルト85の送り始端側の上面に1列状に作業者が載せるように構成されている。なお、図示は省略するが、各受け皿11には識別用のIDチップが取り付けられている。
【0036】
さて、選別コンベヤ50のうち2本のコンベヤベルト55の送り始端側の近くに検査部64が設けられている。検査部64は、農産物Aの大きさを計測するサイズ計測手段と、農産物Aの糖度を計測する糖度計測手段と、各受け皿11のIDチップを認識する認識センサ72とを備える。農産物Aの大きさを計測するサイズ計測手段として、先端にレンズを有する複数本の光ファイバ70付きの撮像カメラ71を備える。農産物Aの糖度を計測する糖度計測手段として、農産物Aに測定光を照射するライト73と、該ライト73から農産物Aに照射した測定光のうち農産物Aを透過した透過光を検出する透過光センサ74とを備える。そして、撮像カメラ71の撮像データと、透過光センサ74の透過光の検出データとに基づき、各農産物Aの糖度を判別するように構成されている。実施形態の糖度計測手段は、両コンベヤベルト55の幅方向一側に配置されたライト73と、両コンベヤベルト55の幅方向他側に配置された透過光センサ74とからなる側部照射・側部受光タイプのものである。
【0037】
更に、コンベヤベルト55のうち検査部64よりも送り下流側に、選果部65を備えている。図13に示すように、選果部65は、所定範囲の糖度の農産物Aを認識して取り出す認識センサ72及び選果シリンダ75及び選果コンベヤ76及び選果台77の組合せを複数組備えている。選別コンベヤ50の送り終端部には、糖度の選別範囲のいずれにも属さない不適切な検出が行われた農産物Aの受け皿11を投入するエラー回収ボックス79が設けられている。
【0038】
(3).選別装置の作動態様
以上の構成において、測定対象の農産物Aは、受け皿11に載置された状態で供給台63から整列コンベヤベルト85に送られる。受け皿11に農産物Aを載せた場合は、一対の可撓性ヒレ片14が農産物Aの形態に倣って撓み変形して接触面を多く形成するため、農産物Aを安定的に保持する。両可撓性ヒレ片14は、農産物Aの重量に加えて搬送中の振動及び受け皿11同士の接触といった衝撃が加わると、自身の弾性復原力によりお互いを適度に撓ませてその衝撃を吸収し、農産物Aに衝撃を付与することなく確実に保持できる。
【0039】
供給台63から整列コンベヤベルト85に受け皿11を送る際は、整列コンベヤベルト85と速度減衰板93(傾斜案内面93a)とに受け皿11を跨らせる。そうすると、受け皿11と速度減衰板93との接触部分間には、整列コンベヤベルト85による受け皿11の搬送方向と逆向きの摩擦力が作用するので、受け皿11の接触部分側が急激に減速する。このため、受け皿11は、前記接触部分側を支点にして図15の反時計方向に回転しながら、整列コンベヤベルト85にて搬送されることになる。
【0040】
そして、受け皿11がガイド部材94にて速度減衰板93寄りに案内されながら、図15の反時計方向への回転を進ませていくと、速度減衰板93に乗り上げていた受け皿11のうち段差部101を除く平底面29が底度減衰板93から落ちて、整列コンベヤベルト85の上面に密着する。この状態では、受け皿11の段差部101と、速度減衰板93(特に摩擦平坦面93b)の角部93cとが上下方向でほぼ重なり合うため、受け皿11の段差部101が速度減衰板93の角部93cに被さって嵌ることになる。その結果、受け皿11が段差部101を速度減衰板93の角部93cに被せて嵌めた姿勢に揃えられ、選別コンベヤベルト55に受け継がれる。この場合、選別コンベヤベルト55に受け継ぎ搬送される各受け皿11において、両切り欠き部24が直列に並ぶ向きと、ライト73と透過光センサ74とが対峙し合う向きとはほぼ同じ方向に向くことになる。従って、整列コンベヤベルト85とこれに並設された速度減衰板93とに受け皿11を跨らせて搬送するという極めて簡単な構成でありながら、受け皿11を的確に整列させることができるのである。
【0041】
特に実施形態では、受け皿11の段差部101が速度減衰板93の角部93cに被さって嵌ると、段差部101の横平坦面101bと速度減衰板93の摩擦平坦面93bとが接触しないから、このような状態の受け皿11に速度減衰板に起因する摩擦力が作用することはなく、整列コンベヤベルト85から次工程の選別コンベヤベルト55に、スムーズに受け継ぎ搬送できる。しかも、整列コンベヤベルト85の出口において、速度減衰板93の角部93cからガイド部材94の当接面までの距離Wが、各受け皿11における段差部101の縦平坦面101aから中心を通って反対側の外周面までの幅寸法Wtとほぼ同程度に設定されているから、ガイド部材94の存在により、段差部101の縦平坦面101aを速度減衰板93の角部93c側に寄せ、選別コンベヤベルト55に受け継ぎ搬送される各受け皿11において、両切り欠き部24が直列に並ぶ向きと、ライト73と透過光センサ74とが対峙し合う向きとを確実に一致させることができる。
【0042】
検査部64にて糖度計測する場合は、両コンベヤベルト55の幅方向一側に配置されたライト73から、受け皿における一方の切り欠き部24を介して農産物Aの一側面部に測定光を照射する。農産物Aの一側面部に照射された測定光は農産物Aの内部で散乱し、農産物Aの露出した部分から出た透過光が、受け皿11における他方の切り欠き部24を介して、両コンベヤベルト55の幅方向他側に配置された透過光センサ74にて検出されることになる。
【0043】
ここで、実施形態の受け皿11では、中底体13の上面側のうち環状段部31よりも半径外側の部分に、両切り欠き部24が直列に並ぶ側面視方向から見て、農産物Aが載置されたときの可撓性ヒレ片14と切り欠き部24とで囲まれる隙間を塞ぐ遮光部材100が設けられているから、ライト73からの測定光のうち可撓性ヒレ片14と切り欠き部24とで囲まれる隙間に向かうものは、遮光部材100にて遮断されることになる。従って、ライト73からの測定光の一部が農産物Aを透過せずに透過光センサ74に受光されるおそれを格段に少なくでき、透過光による精度よい糖度計測が可能になる。農産物Aの検査精度の低下を抑制できるのである。
【0044】
なお、受け皿11上から農産物Aを取り出す際は、受け皿本体12の切り欠き部24に指を入れて農産物Aを引き上げればよいから、農産物Aの大きさに影響されることなく、受け皿11内から農産物Aを簡単に取り出せる。
【0045】
(4).まとめ
上記の記載並びに図1、図3及び図5〜図8から明らかなように、本願発明に係る農産物A載置用の受け皿11は、側周壁21と底壁22とを有して上向きに開口した平面視円形の受け皿本体12を備えており、前記受け皿本体12の前記側周壁21には、相対向する一対の切り欠き部24が形成されており、前記側周壁24の上縁部には、一対の可撓性ヒレ片14が前記受け皿本体12の中央に向けて片持梁状に取り付けられており、前記両切り欠き部24が直列に並ぶ方向から見て、農産物Aが載置されたときの前記可撓性ヒレ片14と前記切り欠き部24とで囲まれる隙間を塞ぐ遮光部材100を有しているから、前記両切り欠き部24が直列に並ぶ方向に沿って光を照射し透過光を受光する側部照射・側部受光式の非破壊検査をする際に、前記遮光部材100の存在によって、農産物Aを透過していない光を透過光として計測するおそれを格段に少なくできる(漏光に起因した計測誤差をなくせる)。従って、透過光による精度よい非破壊検査が可能になり、農産物Aの検査精度の低下を抑制できるという効果を奏する。
【0046】
上記の記載並びに図1、図7、図8及び図11から明らかなように、前記各可撓性ヒレ片14は、前記受け皿本体12の中央を基準に放射方向に延びるスリット43にて複数の切片部42に分割されているから、搬送による農産物Aの横揺れを前記両可撓性ヒレ片14の弾性復原力にて抑制でき、前記受け皿11に載置された農産物Aを安定した搬送姿勢に保持できる。前記個々の切片部42を農産物Aの外周に密着させ易いから、前記各可撓性ヒレ片14(前記各切片部42)との接触面積が広く取れ、前記受け皿11に載置された農産物Aの姿勢安定性がよいという効果を奏する。
【0047】
上記の記載並びに図1及び図5から明らかなように、前記受け皿本体12における前記底壁22の中央部には、上下に貫通する貫通穴23が形成されており、前記各可撓性ヒレ片14の先端は、前記貫通穴23の内面より前記受け皿本体12中央側に位置しているから、この場合も、農産物Aと前記各可撓性ヒレ片14との接触面積を広く取れることになる。従って、農産物Aの安定保持に寄与するという効果を奏する。
【0048】
上記の記載並びに図15〜図17から明らかなように、農産物Aが載置される平面視円形の受け皿11を搬送しながら所定の姿勢に揃える受け皿整列装置80であって、前記受け皿11を一列状に並べて搬送する搬送路85と、前記搬送路85に並設された速度減衰板93とを備えており、前記受け皿11を前記搬送路85と前記速度減衰板93とに跨らせて搬送することによって、前記受け皿11を一方向に回転させ、前記受け皿11の外周下部に形成された段差部101を前記速度減衰板93における前記搬送路85寄りの角部95cに被せて嵌めるように構成されているから、前記搬送路85と前記速度減衰板93とに前記受け皿11を跨らせて搬送するという極めて簡単な構成でありながら、前記受け皿11を的確に整列させることができるという効果を奏する。換言すると、前記受け皿11の外周下部に1つの前記段差部101を設けるだけで、精度よく前記受け皿11の搬送姿勢を揃えられ、当該揃えられた搬送姿勢も簡単に維持できるのである。
【0049】
上記の記載並びに図16及び図17から明らかなように、前記段差部101の上下凹み高さHtを、前記搬送路85の上面から前記速度減衰板93の上面までの高さHよりも高くしているから、前記受け皿11の前記段差部101が前記速度減衰板93の前記角部93cに被さって嵌ると、前記段差部101と前記速度減衰板93とが接触しなくなる(離れることになる)。従って、このような状態の前記受け皿11に前記速度減衰板93の減衰作用が及ぶことはなく、前記搬送路85から次工程に向けて、スムーズに受け継ぎ搬送できるという効果を奏する。
【0050】
上記の記載並びに図15〜図17から明らかなように、前記速度減衰板93の少なくとも上面側は摩擦係数の大きい素材からなっており、前記搬送路85と前記速度減衰板93とに前記受け皿11を跨らせた状態では、前記速度減衰板93との摩擦に起因して前記受け皿11が一方向に回転するように構成されているから、前記受け皿11を一方向に回転させる構造が極めて簡単で故障し難いばかりか、部品点数も少なくて済む。前記搬送路85を駆動させる機構以外の駆動源も要らない。従って、製造コストの抑制のみならず、ランニングコスト(維持管理コスト)の抑制にも寄与するという効果を奏する。
【0051】
上記の記載並びに図15〜図17から明らかなように、前記搬送路85の出口側には、前記搬送路85を挟んで前記速度減衰板93の反対側に、前記受け皿11の側面に当接して前記段差部101の縦平坦面101aを前記速度減衰板93の前記角部93c側に寄せるガイド部材94が配置されているから、前記ガイド部材94の存在により、前記段差部101の前記縦平坦面101aを前記速度減衰板93の前記角部93c側にスムーズに寄せることができる。従って、整列させた前記受け皿11の搬送姿勢をより一層的確に維持して、次工程に受け継ぎ搬送できるという効果を奏する。
【0052】
本願発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、様々な態様に具体化できる。また、本願発明における各部の構成は図示の実施形態に限られるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
11 受け皿
12 受け皿本体
14 可撓性ヒレ片
23 貫通穴
24 切り欠き部
42 切片部
43 スリット
44 割り溝
73 ライト
74 透過光センサ
80 整列コンベヤ(受け皿整列装置)
85 整列コンベヤベルト(搬送路)
93 速度減衰板
93c 角部
100 遮光部材
101 段差部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農産物が載置される平面視円形の受け皿を搬送しながら所定の姿勢に揃える受け皿整列装置であって、
前記受け皿を一列状に並べて搬送する搬送路と、前記搬送路に並設された速度減衰板とを備えており、前記受け皿を前記搬送路と前記速度減衰板とに跨らせて搬送することによって、前記受け皿を一方向に回転させ、前記受け皿の外周下部に形成された段差部を前記速度減衰板における前記搬送路寄りの角部に被せて嵌めるように構成されている、
受け皿整列装置。
【請求項2】
前記段差部の上下凹み高さを、前記搬送路の上面から前記速度減衰板の上面までの高さよりも高くしている、
請求項1に記載した受け皿整列装置。
【請求項3】
前記速度減衰板の少なくとも上面側は摩擦係数の大きい素材からなっており、
前記搬送路と前記速度減衰板とに前記受け皿を跨らせた状態では、前記速度減衰板との摩擦に起因して前記受け皿が一方向に回転するように構成されている、
請求項1又は2に記載した受け皿整列装置。
【請求項4】
前記搬送路の出口側には、前記搬送路を挟んで前記速度減衰板の反対側に、前記受け皿の側面に当接して前記段差部の縦平坦面を前記速度減衰板の前記角部側に寄せるガイド部材が配置されている、
請求項1〜3のうちいずれかに記載した受け皿整列装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−184182(P2011−184182A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54124(P2010−54124)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】