説明

受信処理装置

【課題】受信信号の損失の低減及び部品の削減によって信頼性を向上させるようにする。
【解決手段】空中線装置1から出力されたハイ信号、ロー信号、ウェザ信号は、周波数変換回路21,22,23によりIF周波数に変換された後、AD回路31,32,33によりそれぞれデジタル信号に変換される。デジタル変換後にロー信号は分配回路4により分配され、ハイ/ロー切換回路51とウェザ/ロー切換回路52とにそれぞれ入力される。ハイ/ロー切換回路51は、ハイ/ロー切換制御回路61からの制御信号に従い、ハイ信号とロー信号のいずれかを選択してハイ/ロー信号処理回路71に出力する。ウェザ/ロー切換回路52は、ウェザ/ロー切換制御回路62からの制御信号に従い、ウェザ信号とロー信号のいずれかを選択してウェザ/ロー信号処理回路72に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、航空管制用の一次レーダ装置に用いられ、空中線装置により受信される受信信号を処理する受信処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
航空管制用の一次レーダに設けられる空中線装置は、2つのビーム(ハイビームおよびロービーム)を持っており、高仰角に形成されるハイビームにより受信されるハイ信号と、低仰角に形成されるロービームにより受信されるロー信号を出力する。また、雨や雪からの反射波を抑圧して、航空機の反射信号のみを見やすくするために、雨天の際には直線偏波を円偏波に切り換え、ロー信号から雨や雪からの反射波を分離し、分離された信号をウェザ信号として出力する(例えば、非特許文献1を参照。)。
【非特許文献1】改訂 レーダ技術、社団法人 電子情報通信学会
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、従来では、上記受信された信号をアナログ信号の状態で分配したり、アナログスイッチを用いて切り換えを行っていたため、信号の電力損失や故障の要因となっていた。
【0004】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、受信信号の損失の低減および部品の削減によって信頼性を向上させる受信処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためにこの発明に係る受信処理装置は、ハイビーム、ロービーム、を形成し、直線偏波と円偏波を切り換えて目標信号を受信するレーダ装置に用いられ、ハイビームにより受信されたハイ信号と、ロービームにより受信されたロー信号と、円偏波使用時にロー信号から分離されるウェザ信号とを出力する空中線装置と、前記出力されたハイ信号、ロー信号、及びウェザ信号それぞれをデジタル信号に変換する変換回路と、前記デジタル変換されたロー信号を分配する分配回路と、前記デジタル変換されたハイ信号と前記分配回路により分配されたデジタル変換されたロー信号とを切り換えていずれかの信号を出力するハイ/ロー切換回路と、前記デジタル変換されたウェザ信号と前記分配回路により分配されたデジタル変換されたロー信号とを切り換えていずれかの信号を出力するウェザ/ロー切換回路と、前記ハイ/ロー切換回路により出力されるハイ信号又はロー信号に対して信号処理を行うハイ/ロー信号処理回路と、前記ウェザ/ロー切換回路により出力されるウェザ信号又はロー信号に対して信号処理を行うウェザ/ロー信号処理回路とを具備することを特徴とする。
【0006】
上記構成による受信処理装置では、空中線装置から出力されるハイ信号、ロー信号、ウェザ信号は平行してデジタル信号にそれぞれ変換される。デジタル変換後にロー信号は分配されるが、デジタル処理上での分配のため信号の電力を損失させることなく分配できる。分配後のロー信号は、ハイ/ロー切換回路,ウェザ/ロー切換回路へそれぞれ入力されるが、デジタル上の処理であるため、使用時間により劣化する部品を使用する必要がなく安定した動作を行うことが可能である。
【発明の効果】
【0007】
したがってこの発明によれば、受信信号の損失の低減および部品の削減によって信頼性を向上させる受信処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、この発明に係る受信処理装置を用いたレーダ装置の一実施形態を示す構成図である。
このレーダ装置は、ハイ(HIGH)、ロー(LOW)、ウェザ(WX)の3系統の信号が出力する空中線装置1と、周波数変換回路21,22,23と、AD回路31,32,33と、分配回路4と、ハイ/ロー切換回路51と、ウェザ/ロー切換回路52と、ハイ/ロー切換制御回路61と、ウェザ/ロー切換制御回路62と、ハイ/ロー信号処理回路71と、ウェザ/ロー信号処理回路72とを備える。
【0009】
空中線装置1から出力されたハイ信号、ロー信号、ウェザ信号はそれぞれ周波数変換回路21,22,23に入力され、RF周波数からIF周波数に変換される。ハイ信号、ロー信号、ウェザ信号はIF周波数に変換された後、AD回路31,32,33によりそれぞれデジタル信号に変換される。デジタル変換後にロー信号は分配回路4により分配され、ハイ/ロー切換回路51とウェザ/ロー切換回路52とにそれぞれ入力される。
【0010】
また、ハイ信号はハイ/ロー切換回路51へ、ウェザ信号はウェザ/ロー切換回路52にそれぞれ入力される。ハイ/ロー切換回路51は、ハイ/ロー切換制御回路61からの制御信号に従い、ハイ信号とロー信号のいずれかを選択して出力する。ウェザ/ロー切換回路52は、ウェザ/ロー切換制御回路62からの制御信号に従い、ウェザ信号とロー信号のいずれかを選択して出力する。ハイ/ロー切換回路51の出力信号は、ハイ/ロー信号処理回路71において検出処理される。また、ウェザ/ロー切換回路52の出力信号はウェザ/ロー信号処理回路72において検出処理を行う。
【0011】
図2に、従来の受信処理装置の構成の一例を示す。
空中線装置210から出力されたロー信号はアナログ信号のままで分配回路220により分配され、ハイ/ロー切換回路231とウェザ/ロー切換回路232に入力される。また、ハイ信号はハイ/ロー切換回路231へ、ウェザ信号はウェザ/ロー切換回路232へ入力される。
【0012】
ハイ/ロー切換回路231では、ハイ/ロー切換制御回路241からの制御信号に従い、ハイ信号とロー信号のいずれかを選択して出力する。ウェザ/ロー切換回路232では、ウェザ/ロー切換制御回路242からの制御信号に従い、ウェザ信号とロー信号のいずれかを選択して出力する。ハイ/ロー切換回路231およびウェザ/ロー切換回路232の出力信号はそれぞれ周波数変換回路251,252に入力され、RF周波数からIF周波数に変換される。その後、それぞれAD回路261,262でデジタル変換後、ハイ/ロー信号処理回路271およびウェザ/ロー信号処理回路272において検出処理を行う。
【0013】
ここで、上記受信処理装置では、分配回路220によりロー信号の分配をデジタル変換前に行うため、ハイ信号、ウェザ信号と比較してロー信号のみ損失が発生していた。また、ハイ/ロー切換回路231およびウェザ/ロー切換回路232においてスイッチを用いて切り換えるため、故障要因となる部品が使われていた。
【0014】
これに対し上記実施形態では、空中線装置1から出力されるハイ信号、ロー信号、ウェザ信号は平行して周波数変換回路21,22,23およびAD回路31,32,33を経由してデジタル信号にそれぞれ変換される。デジタル変換後にロー信号は分配されるが、デジタル処理上での分配のため信号電力を損失させることなく分配できる。分配後のロー信号は、ハイ/ロー切換回路51,ウェザ/ロー切換回路52へそれぞれ入力されるが、デジタル上の処理であるため、使用時間により劣化する部品を使用する必要がなく安定した動作を行うことが可能である。
【0015】
したがって、上記実施形態によれば、受信信号の損失の低減および部品の削減によって信頼性を向上させることが可能となる。
【0016】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明に係る受信処理装置の一実施形態を示す構成図。
【図2】従来の受信処理装置の構成の一例を示す図。
【符号の説明】
【0018】
1…空中線装置、21,22,23…周波数変換装置、31,32,33…AD回路、4…分配回路、51…ハイ/ロー切換回路、52…ウェザ/ロー切換回路、61…ハイ/ロー切換制御回路、62…ウェザ/ロー切換制御回路、71…ハイ/ロー信号処理回路、72…ウェザ/ロー信号処理回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイビーム、ロービームを形成し、直線偏波と円偏波を切り換えて目標信号を受信するレーダ装置に用いられ、
ハイビームにより受信されたハイ信号と、ロービームにより受信されたロー信号と、円偏波使用時にロー信号から分離されるウェザ信号とを出力する空中線装置と、
前記出力されたハイ信号、ロー信号、及びウェザ信号それぞれをデジタル信号に変換する変換回路と、
前記デジタル変換されたロー信号を分配する分配回路と、
前記デジタル変換されたハイ信号と前記分配回路により分配されたデジタル変換されたロー信号とを切り換えていずれかの信号を出力するハイ/ロー切換回路と、
前記デジタル変換されたウェザウェザ信号と前記分配回路により分配されたデジタル変換されたロー信号とを切り換えていずれかの信号を出力するウェザ/ロー切換回路と、
前記ハイ/ロー切換回路により出力されるハイ信号又はロー信号に対して信号処理を行うハイ/ロー信号処理回路と、
前記ウェザ/ロー切換回路により出力されるウェザ信号又はロー信号に対して信号処理を行うウェザ/ロー信号処理回路と
を具備することを特徴とする受信処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−14567(P2009−14567A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177635(P2007−177635)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】