説明

受信器及び無線通信システム

【課題】無線信号の同期部を短くしつつ同期処理のタイムアウトを低減する。
【解決手段】本実施形態では、電波が受信された後に無線信号の同期が取れなかった場合、受信制御部11は、電波が受信されなかったときの第1待機時間ΔTstop1よりも短い第2待機時間ΔTstop2(<ΔTstop1)が経過するまで無線受信部10を停止させる。故に、従来例のように同期処理がタイムアウトした場合の待機時間が電波チェックで電波なしと判定された場合の待機時間ΔTstop1と同じである場合と比較して、希望波の同期部に対して無線受信部10の同期処理がタイムアウトする可能性が低くなる。その結果、無線信号の同期部を短くしつつ同期処理のタイムアウトを低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信器から送信される無線信号を受信する受信器並びにそれら送信器と受信器を含む無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
送信器及び受信器を含む無線通信システムの従来例として特許文献1に記載されているものがある。この従来例は、周囲の明るさを検出したり人体の存在を検出し、電波を媒体とする無線信号によって検出結果を送信する送信器と、無線信号を受信して取得する前記検出結果に応じて負荷(例えば、照明負荷)を制御(点滅)する受信器とを有する。受信器は、商用電源に対して照明負荷と直列に接続されたスイッチ要素を備え、検出結果に応じてスイッチ要素を開閉することで照明負荷を点滅させている。
【0003】
例えば、部屋の壁に送信器及び受信器が設置され、当該部屋に人が居るときは送信器が人の存在を検出して照明負荷を点灯させるための無線信号で送信し、無線信号を受信した受信器においてスイッチ要素がオンされて照明負荷が点灯される。そして、部屋から人が居なくなると送信器が照明負荷を消灯させるための無線信号を送信し、無線信号を受信した受信器においてスイッチ要素がオフされて照明負荷が消灯される。
【0004】
ここで、送信器は設置の自由度を高めるために電池を電源としており、電池の寿命を延ばすためには無線信号(送信信号)のフレーム長を短くすることが望ましい。無線通信のフレームは、一般的にシンボル同期を取るためのプリアンブル、フレーム同期を取るためのユニークワード、制御情報(通信相手のアドレス情報など)、データ、誤り検出用のチェックコードで構成されている。そして、フレーム長を短くする場合、通常はプリアンブル及びユニークワード(以下、同期部と呼ぶ。)の部分が短縮されることが多い。
【0005】
一方、受信器は照明負荷を介して外部電源(商用交流電源)に接続されているので、外部電源から常時電源供給を受けることができる。しかしながら、消費電力を低減して省エネ化を図るため、受信器を間欠受信させることが考えられる。つまり、一定時間毎に受信回路が起動されて電波を受信するか否かのチェック(電波チェック)が行われ、電波が受信されなければ受信回路を停止し、電波が受信されたら引き続きシンボル同期、さらにフレーム同期を取るための処理が継続される。ここで、電波チェックの終了時点の間隔を間欠受信の周期ΔT1、前回の電波チェック終了時点から次回の電波チェック開始時点までの間隔を待機時間ΔTstop1と定義する。なお、電波チェックの終了直後に無線信号が到来した場合においても次回の受信機会に確実にシンボル同期及びフレーム同期を取るためには、フレームの同期部の長さが、シンボル同期及びフレーム同期を取るために必要な処理時間と待機時間ΔTstop1の和よりも長いことが必要になる(図3(a)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−198654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、空中には様々な電波が往来しており、送信器から送信される無線信号の電波(希望波)以外の電波(妨害波)が電波チェックに引っ掛かり、受信器における受信処理が誤って継続されてしまうことがある(図3(b)参照)。しかしながら、妨害波を受信してもシンボル同期を取ることができないため、受信器では、同期処理がタイムアウトしてしまい、タイムアウトから待機時間ΔTstop1が経過するまで受信回路を停止し、待機時間ΔTstop1の経過後に再度電波チェックを行う。このときに希望波が受信されると同期処理が行われるが、希望波が到来したタイミングによっては、同期部の長さが足らずに同期処理がタイムアウトしてしまう虞があった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、無線信号の同期部を短くしつつ同期処理のタイムアウトを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の受信器は、電波を媒体とする無線信号を受信する受信手段と、前記受信手段を制御する受信制御手段とを備え、前記無線信号は同期を取るための同期部を先頭に有し、前記受信制御手段は、前記受信手段を間欠的に起動するとともに前記電波の受信の有無をチェックさせ、前記電波が受信されなければ所定の第1待機時間が経過するまで前記受信手段を停止させ、前記電波が受信されれば前記受信手段に継続して前記電波を受信させ、前記電波が受信された後に前記無線信号の同期が取れなかった場合には、前記第1待機時間よりも短い第2待機時間が経過するまで前記受信手段を停止させることを特徴とする。
【0010】
この受信器において、前記受信制御手段は、前記電波受信の有無の結果に関わらず、前記受信手段を間欠的に起動する周期を一定とすることが好ましい。
【0011】
この受信器において、前記受信手段は、前記無線信号に対する信号処理の処理速度が可変であって、少なくとも前記第1待機時間における前記処理速度を、前記第1待機時間以外における前記処理速度よりも遅くすることが好ましい。
【0012】
この受信器において、前記受信手段は、前記第2待機時間における前記処理速度を、前記第1及び第2待機時間以外における前記処理速度と同一にすることが好ましい。
【0013】
本発明の無線通信システムは、前記何れかの受信器と、前記無線信号を送信する送信器とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の受信器及び無線通信システムは、無線信号の同期部を短くしつつ同期処理のタイムアウトを低減することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る受信器及び無線通信システムの動作説明用のタイムチャートである。
【図2】同上の受信器及び送信器のブロック図である。
【図3】従来例の動作説明用のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明に係る受信器及び無線通信システムの実施形態を詳細に説明する。ただし、本実施形態では、送信器から送信される無線信号に含まれる制御コマンドに応じて受信器が負荷(照明負荷)を制御(点滅)する負荷制御システムに本発明の技術思想を適用しているが、本発明の技術思想は、受信器及び無線通信システム全般に適用可能である。
【0017】
本実施形態の無線通信システム(負荷制御システム)は、図2に示すように送信器2と受信器1で構成される。受信器1は、無線受信部10、受信制御部11、スイッチ要素12、電流変成器13、2つの整流器14,15、電圧変換部16、一対の接続端子17,18などを備える。無線受信部10は、例えば、電波法に規定される特定小電力無線局の規格に準拠した無線通信を行う無線通信回路を有し、電波を媒体とする無線信号を受信するものである。ただし、このような無線受信部10は従来周知の無線通信技術を用いて実現可能であるから詳細な説明は省略する。
【0018】
一対の接続端子17,18には電線を介して外部電源(商用交流電源)3と照明負荷4がそれぞれ接続される。スイッチ要素12は、例えば、ラッチング式のメカニカルリレーからなり、一対の接続端子17,18を介して外部電源3から照明負荷4への給電路に挿入されて当該給電路を開閉(オン・オフ)する。電流変成器13は1次巻線が前記給電路に挿入され、2次巻線に整流器14が接続されている。整流器14は、スイッチ要素12がオンしているときに電流変成器13の2次巻線に誘起される交流電圧(交流電流)を整流して電圧変換部16に出力する。また、整流器15は、スイッチ要素12がオフしているときにスイッチ要素12の両端に印加される交流電圧を整流して電圧変換部16に出力する。ただし、整流器15で整流される電流は、照明負荷4から放射される光束が無視できる程度の微少な値に制限されている。
【0019】
電圧変換部16は、図示しない蓄電用のコンデンサ(電解コンデンサ)と電源回路を有し、整流器14で整流されて前記コンデンサで平滑された直流電圧を無線受信部10及び受信制御部11の動作電源電圧に変換している。さらに電圧変換部16は、スイッチ要素12がオフしているときは整流器15で整流されて前記コンデンサで平滑された直流電圧を無線受信部10及び受信制御部11の動作電源電圧に変換している。
【0020】
受信制御部11は、マイクロコントローラなどで構成され、後述するように無線受信部10で受信する無線信号に含まれる制御コマンドに応じてスイッチ要素12を開閉(オン・オフ)する。
【0021】
一方、送信器2は、送信制御部20、検知部21、無線送信部22、操作部23などを備え、電池(図示せず)を電源として各部20〜23が動作する。無線送信部22は、受信器1の無線受信部10と同じく、電波法に規定される特定小電力無線局の規格に準拠した無線通信を行う無線通信回路を有し、電波を媒体とする無線信号を送信する。ただし、このような無線送信部22は従来周知の無線通信技術を用いて実現可能であるから詳細な説明は省略する。
【0022】
検知部21は、例えば、人体から放射される熱線を検出することで人の存在を検知する人体検知センサや、周囲の明るさ(周囲照度)を検出する明るさセンサなどを有する。すなわち、検知部21は、人の存在や所定値以下の周囲照度をトリガとし、当該トリガを検知したときにトリガ信号を送信制御部20に出力する。操作部23は、例えば、図示しない押釦スイッチを有し、当該押釦スイッチが押操作されたときに操作入力を受け付けて操作信号を送信制御部20に出力する。
【0023】
送信制御部20は、マイクロコントローラなどで構成され、検知部21から出力されるトリガ信号並びに操作部23から出力される操作信号に基づく制御コマンド(照明負荷4を点灯させる制御コマンド)を生成して無線送信部22に渡す。また、送信制御部20は、トリガ信号に基づく制御コマンドに点灯保持時間の情報を付加する。無線送信部22は、送信制御部20から渡された制御コマンドをデータフィールドに格納したフレームを変調して送信信号を生成し、その送信信号(無線信号)をアンテナ(図示せず)より送信する。なお、送信器2から送信される無線信号のフレームは、従来例で説明したように先頭に同期部(プリアンプル及びユニークワード)を有し、同期部の後に制御コマンドが格納されたデータフィールドを有している。
【0024】
受信器1では、無線受信部10で前記無線信号を受信すると、制御コマンドに応じて受信制御部11がスイッチ要素12をオンし、さらに制御コマンドに付加されている点灯保持時間の計時中はスイッチ要素12をオフしない。そして、受信制御部11は、点灯保持時間の計時中に点灯保持時間が付加された制御コマンドを受け取ると点灯保持時間の計時を再スタートし、点灯保持時間の計時が終了した時点でスイッチ要素12をオフして照明負荷4を消灯させる。
【0025】
ここで、送信制御部20の動作を詳細に説明する。送信制御部20は、操作部23から出力される操作信号の入力を待ち、操作信号の入力待ちの間に検知部21から出力されるトリガ信号が入力されると、照明負荷4を点灯させるための制御コマンド(負荷制御用コマンド)を生成する。そして、送信制御部20は生成した負荷制御用制御コマンドを含む無線信号を無線送信部22から送信させる。
【0026】
一方、操作部23から出力される操作信号が入力されると、送信制御部20は、無線信号の受信確認用の制御コマンドを生成し、生成した受信確認用制御コマンドを含む無線信号を無線送信部22から送信させる。
【0027】
ところで、本実施形態の受信器1においても、従来例と同様に受信器1の電力消費を削減するために、受信制御部11が無線受信部10に間欠受信を行わせている。さらに本実施形態では、スイッチ要素12のオフ時における電力消費が増えてしまうと電圧変換部16が有するコンデンサの蓄電電力(充電電荷)が不足してスイッチ要素12がオンできなくなる虞があるため、間欠受信による無線受信部10の電力消費の低減が重要となる。
【0028】
そこで受信制御部11は、間欠受信周期ΔT1毎に無線受信部10を起動して電波チェックを行わせ、電波が受信されなければ無線受信部10を停止し、電波が受信されたら引き続き無線受信部10にシンボル同期、さらにフレーム同期を取るための同期処理を継続させる。無線受信部10は、起動されると受信周波数などの設定処理を行った後、アンテナ(図示せず)で受信した電波の強度を所定のしきい値と比較することで電波チェックを行い、しきい値を超えているときに電波あり、しきい値を超えていないときに電波なしと判定する。なお、図3(a)に示すように電波チェックの終了時点の間隔を間欠受信周期ΔT1、前回の電波チェック終了時点から次回の電波チェック開始時点までの間隔を待機時間ΔTstop1と定義する。
【0029】
従来技術で説明したように、妨害波を受信してもシンボル同期を取ることができないために同期処理がタイムアウトしてしまい、タイムアウトから待機時間ΔTstop1が経過するまで無線受信部10が停止する。このとき、再度無線受信部10が起動されるまでの待機時間が電波チェックで電波なしと判定された場合の待機時間ΔTstop1と同じであると、希望波が到来するタイミングによって、同期部の長さが足らずに同期処理がタイムアウトしてしまう虞がある。
【0030】
そこで本実施形態では、電波が受信された後に無線信号の同期が取れなかった場合、受信制御部11は、電波が受信されなかったときの第1待機時間ΔTstop1よりも短い第2待機時間ΔTstop2(<ΔTstop1)が経過するまで無線受信部10を停止させている(図1参照)。故に、従来例のように同期処理がタイムアウトした場合の待機時間が電波チェックで電波なしと判定された場合の待機時間ΔTstop1と同じである場合と比較して、希望波の同期部に対して無線受信部10の同期処理がタイムアウトする可能性が低くなる。その結果、無線信号の同期部を短くしつつ同期処理のタイムアウトを低減することができる。なお、受信制御部11が、電波受信の有無の結果に関わらず、無線受信部10を間欠的に起動する周期(間欠受信周期ΔT1)を一定としても構わない。ただし、同期処理に要する時間が第1待機時間ΔTstop1と等しい場合、第2待機時間ΔTstop2をゼロにすれば間欠受信周期ΔT1を一定にできる。
【0031】
ところで、無線受信部10の無線通信回路と受信制御部11のマイクロコントローラとを1つの集積回路で構成し、受信制御部11を受信制御手段と受信手段に兼用することも可能である。この場合、前記集積回路(受信手段)の処理速度(動作周波数)が可変であれば、少なくとも第1待機時間ΔTstop1における処理速度(動作周波数)を、第1待機時間ΔTstop1以外における処理速度(動作周波数)よりも遅く(低く)することが好ましい。このようにすれば、同期処理などの無線信号に対する信号処理の処理速度を低下させずに受信器1の消費電力の低減を図ることができる。ただし、同期処理がタイムアウトした場合の第2待機時間ΔTstop2においては、第1及び第2待機時間ΔTstop1,ΔTstop2以外における処理速度と同一の処理速度とすることが好ましい。これにより、受信制御部11が第2待機時間ΔTstop2を正確に管理することができ、その結果、第2待機時間ΔTstop2が経過した後の同期処理をスムーズに実行することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 受信器
2 送信器
10 無線受信部(受信手段)
11 受信制御部(受信制御手段)
ΔTstop1 第1待機時間
ΔTstop2 第2待機時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を媒体とする無線信号を受信する受信手段と、前記受信手段を制御する受信制御手段とを備え、前記無線信号は同期を取るための同期部を先頭に有し、前記受信制御手段は、前記受信手段を間欠的に起動するとともに前記電波の受信の有無をチェックさせ、前記電波が受信されなければ所定の第1待機時間が経過するまで前記受信手段を停止させ、前記電波が受信されれば前記受信手段に継続して前記電波を受信させ、前記電波が受信された後に前記無線信号の同期が取れなかった場合には、前記第1待機時間よりも短い第2待機時間が経過するまで前記受信手段を停止させることを特徴とする受信器。
【請求項2】
前記受信制御手段は、前記電波受信の有無の結果に関わらず、前記受信手段を間欠的に起動する周期を一定とすることを特徴とする請求項1記載の受信器。
【請求項3】
前記受信手段は、前記無線信号に対する信号処理の処理速度が可変であって、少なくとも前記第1待機時間における前記処理速度を、前記第1待機時間以外における前記処理速度よりも遅くすることを特徴とする請求項1又は2記載の受信器。
【請求項4】
前記受信手段は、前記第2待機時間における前記処理速度を、前記第1及び第2待機時間以外における前記処理速度と同一にすることを特徴とする請求項3記載の受信器。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかの受信器と、前記無線信号を送信する送信器とを有することを特徴とする無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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