説明

受信方法、測位装置、及び電子機器

【課題】測位装置が受信中の屋内情報送信機以外の屋内情報送信機からの測位用信号を受信して、安定的に航法メッセージをデコードできる受信方法、測位装置、及び電子機器を提供する。
【解決手段】受信方法は、測位用信号をサーチし、受信した測位用信号が衛星からの信号か又は屋内情報送信機からの信号か(ステップS30)、及び測位装置が受信中の屋内情報送信機であるか否か(ステップS40)を判定し、受信した測位用信号が、測位装置が受信中の屋内情報送信機以外の信号であるときに、所定の時間AGC制御を制限する(ステップS50)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信方法、測位装置、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
位置情報の取得に、GPS(Global Positioning System)が利用されることが多い。GPSは、衛星を使った測位システムの一つである。GPSにおいて、受信機は、地上約2万キロメートルの軌道を周回する衛星から、時刻情報が含まれる測位信号を受信し、受信した測位信号を計算することによって、地球上における自局の位置(緯度、経度、高さ)を知ることができる。GPSは、米国で開発されたシステムである。
【0003】
衛星を利用した測位システムを、一般にGNSS(Global Navigation Satellite System、「全地球測位システム」)という。GNSSには、現在運用中であるGPS以外にも、ロシア連邦のグローナス(GLONASS)、欧州連合のガリレオ(Galileo)、日本の準天頂衛星システムといった測位システムの運用が予定されている。本明細書では、衛星測位システムを総称してGPSとする。
【0004】
GPSによる測位には、GPS衛星から送信される時刻情報を受信することが必要である。したがって、受信機が時刻情報を含む信号を必要な強度で受信することができないトンネル、地下、屋内等の環境(以下、屋内)に位置する場合には、受信機は、必要な精度の位置情報を取得することができない。
【0005】
屋内でGPSを利用する方法には、GPS衛星の測位信号を受信することができない屋内において、位置情報を提供する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、GPSの航法メッセージに準拠した信号を送信する屋内に設置された装置(以下、屋内情報送信機)が、GPS信号を受信することができる装置(以下、情報受信機という)に位置情報を送信する。情報受信機は、屋内情報送信機の位置情報を取得することによって自局の位置を特定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−278756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の情報受信機のAGC(Automatic Gain Control)制御は、GPS衛星との位置情報を受信しやすいように最適化されており、信号強度の変動が激しい屋内情報送信機の位置情報を受信することへの最適化は行われていなかった。これにより、屋内情報送信機の位置情報を受信する際、AGC制御によって航法データの受信に支障を来たす虞がある。
【0008】
屋内情報送信機から位置情報を受信する際は、GPS衛星から受信する際と違って受信機と送信機との距離が近いために、受信機が受信する信号は全般的に信号強度が高い。また、信号強度の変動も大きくなる。GPS信号の情報受信機は、微弱な衛星信号を捕捉するためにAGC回路を備えているが、上記したような特性を持つ屋内情報送信機からの位置情報を受信する際は、信号強度の変動が大きいため、AGC制御のはたらく頻度が高くなる。それによって、SNR(Signal to Noise Ratio)の急激な変動が発生しやすくなる。その結果、航法メッセージを受信している最中にビット反転などが起こり、受信エラーが発生して航法データの受信ができない、という現象が発生する虞がある。このような事態をさけるためには、AGC制御を制限することで受信時にエラーが出る確率を下げ、航法メッセージをデコードできるようにすることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0010】
[適用例1]測位装置が、測位用信号を受信する受信方法であって、前記測位用信号をサーチすることと、前記サーチに基づき受信した前記測位用信号が測位用衛星から送信された信号であるか、屋内情報送信機から送信された信号であるかを判定することと、前記受信した測位用信号が前記屋内情報送信機から送信された信号であるときに、当該屋内情報送信機が前記測位装置が受信中の前記屋内情報送信機であるか判定することと、前記受信した測位用信号が前記測位装置が受信中の前記屋内情報送信機以外の屋内情報送信機からの信号であるときに、所定の時間AGC(Automatic Gain Control)制御を制限することと、を有することを特徴とする受信方法。
【0011】
これによれば、受信した測位用信号が、屋内情報送信機からの信号でありかつ、測位装置が受信中の屋内情報送信機以外の屋内情報送信機からの信号であるときに、AGC制御を所定の時間制限することで、SNRの急激な変動を抑え、安定して航法データの受信ができる受信方法を提供する。
【0012】
[適用例2]上記に記載の受信方法であって、前記所定の時間は、前記測位装置が前記測位用信号の受信を開始してから前記受信した測位用信号のデコードを終了するまでの間であることを特徴とする受信方法。
【0013】
これによれば、測位装置が受信した測位用信号のデコードを終了するまでの間、SNRの急激な変動を抑え、安定して航法データの受信ができる。
【0014】
[適用例3]上記に記載の受信方法であって、前記所定の時間は、前記測位装置が前記測位用信号の受信を開始してから所定経過時間が終了するまでの間であることを特徴とする受信方法。
【0015】
これによれば、測位装置が受信した測位用信号のデコードを完了した判定を必要とすることなく、安定して航法データの受信ができる。
【0016】
[適用例4]上記に記載の受信方法であって、前記AGC制御を制限することは、前記AGC制御を停止することであることを特徴とする受信方法。
【0017】
これによれば、AGC制御を所定の時間停止するので、屋内情報送信機からの信号の信号強度が大きく変動する場合であっても、AGCのゲインの変動に伴う受信エラーの発生を抑制することができる。
【0018】
[適用例5]上記に記載の受信方法であって、前記AGC制御を制限することは、前記AGC制御を抑制することであることを特徴とする受信方法。
【0019】
これによれば、所定の時間AGC制御の制御幅をより小さくするので、AGC制御によるゲインの変動をより小さくして受信エラーの発生を抑制することができる。
【0020】
[適用例6]測位用信号を受信する測位装置であって、前記測位用信号をサーチする衛星サーチ部と、前記サーチに基づき受信した前記測位用信号をデコードする衛星デコード部と、AGC制御を制限するAGC制御部と、を備え、前記AGC制御部は、前記衛星サーチ部が受信した前記測位用信号が屋内情報送信機から送信された信号であり、かつ、当該屋内情報送信機が、前記測位装置が受信中の屋内情報機以外の屋内情報送信機であるときに、所定の時間AGC制御を制限することを特徴とする測位装置。
【0021】
これによれば、受信した測位用信号が屋内情報送信機から送信された信号であり、かつ、当該屋内情報送信機が、前記測位装置が受信中の屋内情報機以外の屋内情報送信機であるときに所定の時間AGC制御を制限することで、信号強度の変動が大きい屋内情報送信機からの測位用信号であってもSNRの急激な変動を抑え、安定して航法データの受信ができる測位装置を提供する。
【0022】
[適用例7]上記の測位装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【0023】
これによれば、電子機器に本発明の測位装置を備えることで、上記の測位装置が享受する各種効果と同様の効果を享受することができる。つまり、このため、上記した本発明の測位装置が享受する各種効果と同様の効果を享受することができる位置情報提供装置、携帯電話機、携帯型ラジオ、パーソナルコンピューター、カーナビゲーションシステム、及びその他の携帯型の情報端末などの各種電子機器を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態に係る位置情報提供システムの構成の概略を表す図。
【図2】本実施形態に係る屋内情報送信機のハードウェア構成の詳細を表すブロック図。
【図3】本実施形態に係る位置情報提供装置のハードウェア構成の概略を表す図。
【図4】本実施形態に係るシーケンスを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本実施形態の一例を説明する。尚、以下では、測位装置を備えた電子機器として位置情報提供装置を例に挙げ、位置情報提供システムとしてGPSを用いた場合について説明する。また、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0026】
図1を参照して、本実施形態に係る位置情報提供システムについて説明する。
図1は、本実施形態に係る位置情報提供システムの構成の概略を表す図である。本実施形態に係る位置情報提供システム2は、地上の上空約2万キロメートルの高度を飛行し、測位のための信号(以下、「測位信号」と表す。)を発信するGPS衛星4−1,4−2,4−3,4−4と、位置情報を提供する装置として機能する情報受信機としての位置情報提供装置6−1,6−2と、屋内情報送信機8−1,8−2,8−3,8−4とを備える。GPS衛星4−1,4−2,4−3,4−4を総称するときは、GPS衛星4という。位置情報提供装置6−1,6−2を総称するときは、位置情報提供装置6という。位置情報提供装置6は、位置情報提供装置であれば、カーナビゲーションシステムその他の移動体測位装置のように、従来の測位機能を有する端末であってもよい。屋内情報送信機8−1,8−2,8−3,8−4を総称するときは、屋内情報送信機8という。
【0027】
ここで、測位信号は、スペクトラム拡散された信号であり、例えば、いわゆるGPS信号である。しかしながら、その信号はGPS信号に限られない。尚、以下では、説明を簡単にするために、測位のシステムの例示としてGPSを用いて説明するが、本実施形態は、他の衛星測位システム(例えば、GALILEO、GLONASSなど)にも適用可能である。
【0028】
測位信号の中心周波数は、例えば1575.42MHzである。測位信号の拡散周波数は、例えば1.023MHzである。この場合、測位信号の周波数は、既存のGPSのL1帯におけるC/A(Coarse and Acquisition)信号の周波数と同一となる。したがって、既存の測位信号受信回路(例えばGPS信号受信回路)が流用できるため、位置情報提供装置6は、新たな回路を追加することなく、測位信号を受信することができる。
【0029】
測位信号は、1.023MHzの矩形波によって変調されていてもよい。この場合、例えばL1帯において新たな送信が計画される測位信号のデータチャネルと同一であれば、位置情報提供装置6の使用者は、新しいGPSの信号を受信し、処理可能な受信機を用いて当該測位信号を受信できる。尚、矩形波の周波数は、1.023MHzに限られない。変調のための周波数は、既存のC/A信号、及び/又は、他の信号との干渉を回避するためのスペクトラム分離等のトレードオフによって定められ得る。
【0030】
図1を再び参照して、GPS衛星4−1には、測位信号を発信する送信機10−1が搭載されている。GPS衛星4−2,4−3,4−4にも、同様の送信機10−2,10−3,10−4がそれぞれ搭載されている。送信機10−1,10−2,10−3,10−4を総称するときは、送信機10という。
【0031】
位置情報提供装置6−1と同様の機能を有する位置情報提供装置6−2は、例えばビル12のその他の電波が届きにくい場所でも使用可能である。当該場所は、ビル12のような建築物に限られず、地下街、あるいは大規模な屋内施設なども含み得る。
【0032】
屋内情報送信機8は、ビル12の天井に取り付けられている。屋内情報送信機8は、GPS信号のフォーマットと同一のフォーマットを有しており、そのデータ構造の一部が異なる測位信号を発信することができる。この測位信号は、屋内情報送信機8が設置されている場所を特定するための位置情報を含んでいる。したがって、位置情報提供装置6がこのような測位信号を受信すると、その位置情報に基づいて位置を出力することができる。以下、このような信号をIMES信号ともいう。
【0033】
位置情報提供装置6−2は、屋内情報送信機8から発信される測位信号を受信することができる。尚、図1には、説明を簡単にするために、ビル12の1階に屋内情報送信機8が取り付けられている態様が示されているが、2階、3階その他のフロアにも同様に取り付けられ得る。
【0034】
ここで、屋内情報送信機8の各々の時刻(以下、「地上時刻」という。)と、GPS衛星4の各々の時刻、より具体的には各送信機10の時刻(以下「衛星時刻」という。)とは、必ずしも同期している必要はなく、互いに独立していてもよい。また、各地上時刻も同期していなくてもよい。尚、各衛星時刻は、同期していることが好ましい。
【0035】
各GPS衛星4に搭載されたそれぞれの送信機10から測位信号として発信されるスペクトラム拡散信号は、擬似雑音符号(PRN(Pseudo Random Noise)コード)によって候補メッセージを変調することにより生成される。候補メッセージは、時刻データ、軌道情報、アルマナック、電離層補正データなどを含む。各送信機10は、さらに、それぞれ当該送信機10自身、あるいは送信機10が搭載されるGPS衛星4などを識別可能なデータ(PRN−ID(Identification))を有している。
【0036】
位置情報提供装置6は、各擬似雑音符号を発生するためのデータ及びコード発生器を有している。位置情報提供装置6は、測位信号を受信すると、各GPS衛星4に割り当てられた擬似雑音符号の符号パターンを用いて、復調処理を実行し、受信された信号がどのGPS衛星4から発信されたものであるかを特定することができる。また、新しいGPS信号では、データの中にPRN−IDが含まれており、受信レベルが低い場合に生じやすい誤った符号パターンでの信号の捕捉、追尾を防ぐことができる。
【0037】
GPS衛星4に搭載される送信機10の構成の概略は以下のとおりである。送信機10は、それぞれ原子時計と、データを格納する記憶装置と、発信回路と、測位信号を生成するための処理回路と、当該処理回路によって生成された信号をスペクトラム拡散符号化するための符号化回路と、送信アンテナなどを有する。記憶装置は、エフェメリス、各衛星のアルマナック、電離層補正データなどを有する候補メッセージと、PRN−IDとを格納している。
【0038】
処理回路は、原子時計からの時刻情報と、記憶装置に格納されている各データとを用いて送信用のメッセージを生成する。
【0039】
ここで各送信機10に、スペクトラム拡散符号化するための擬似雑音符号の符号パターンが予め規定されている。各符号パターンは、送信機10ごと(すなわちGPS衛星4ごと)に異なる。符号化回路は、そのような擬似雑音符号を用いて、上記メッセージをスペクトラム拡散符号化する。送信機10は、符号化された信号を高周波数に変換して、送信アンテナを介して宇宙空間に発信する。
【0040】
上述のように、送信機10は、他の送信機との間で有害な干渉を及ぼさないスペクトラム拡散信号を発信する。ここで「有害な干渉を起こさない」ことは、干渉が生じない程度に制限された出力レベルによって担保され得る。あるいは、スペクトラムを分離する態様によっても実現できる。この信号は、例えばL1帯と称される搬送波によって送信されている。送信機10は、例えば、同一の周波数を有する測位信号を拡散スペクトラム通信方式に従って発信する。したがって、各衛星から送信された測位信号が位置情報提供装置6によって受信される場合にも、各測位信号は、互いに混信を受けることなく受信されることになる。地上の屋内情報送信機8から発信される測位信号も、衛星から送信された信号と同様に、互いに混信を受けることなく位置情報提供装置6によって受信され得る。
【0041】
(屋内情報送信機の構成)
図2を参照して、屋内情報送信機8の構成について説明する。
図2は、本実施形態に係る屋内情報送信機8のハードウェア構成の詳細を表すブロック図である。屋内情報送信機8は、デジタル処理ブロック14と、デジタル処理ブロック14に電気的に接続されているEEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)16と、デジタル処理ブロック14に電気的に接続されているUART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)18と、デジタル処理ブロック14に電気的に接続されているデジタル入出力インターフェイス20と、デジタル処理ブロック14に電気的に接続されているクロック22と、デジタル処理ブロック14に電気的に接続されているアナログ処理ブロック24と、アナログ処理ブロック24に電気的に接続されているアンテナ26と、外部クロック34と、電源28とを備える。デジタル処理ブロック14は、CPU(Central Processing Unit)30と、RAM(Random Access Memory)32とを含む。
【0042】
EEPROM16は、CPU30が実行するプログラム、屋内情報送信機8が設置されている場所を表すデータ等を格納している。当該プログラムあるいはデータは、屋内情報送信機8が起動するときに、EEPROM16から読み出され、RAM32に転送される。EEPROM16は、また屋内情報送信機8の外部から入力されたデータをさらに格納することができる。尚、プログラムあるいはデータを格納するための記憶装置は、EEPROM16に限られない。少なくとも、データを不揮発的に保存できる記憶装置であればよい。また、外部からのデータが入力される場合には、データを書き込むことができる記憶装置であればよい。
【0043】
デジタル処理ブロック14は、測位のための信号として屋内情報送信機8によって送信される信号の源泉となるデータを生成する。デジタル処理ブロック14は、アナログ処理ブロック24に対して、生成したデータをビットストリームとして送出する。
【0044】
クロック22は、CPU30の動作を規定するクロック信号、あるいは搬送波を生成するためのクロック信号を、デジタル処理ブロック14に供給する。
【0045】
デジタル入出力インターフェイス20は、屋内情報送信機8の内部状態(例えば、「PLL Cntrl」信号)を監視することができる。あるいは、デジタル入出力インターフェイス20は、屋内情報送信機8から発信される信号を拡散変調するための擬似雑音符号の符号パターンの入力を、あるいは、送信出力を規定するデータの入力を、外部から受け付けることができる。さらに、屋内情報送信機8から発信されるべき他のデータの入力も受け付けることができる。当該他のデータは、例えば、屋内情報送信機8が設置されている場所を表すテキストデータである。あるいは、映像信号、音声信号、映像音声信号等が入力されてもよい。例えば、屋内情報送信機8がデパートその他の商業施設に設置されている場合には、宣伝広告用のデータが、当該他のデータとして屋内情報送信機8に入力可能である。
【0046】
擬似雑音符号の符号パターンは、屋内情報送信機8に入力されると、EEPROM16において予め規定された領域に書き込まれる。その後は、その書き込まれたPRN−IDが、測位のための信号に含められる。その他のデータも、EEPROM16において、そのデータの種類に応じて予め確保された領域に書き込まれる。
【0047】
UART18は、屋内情報送信機8を調整するために用いられる。外部クロック34は、UART18と同様に、屋内情報送信機8を調整するために使用される。例えば、外部クロック34は、電力線(図示しない)から周波数の入力を受付、測位のための信号の送信周波数を較正するためにも使用される。
【0048】
アナログ処理ブロック24は、デジタル処理ブロック14から出力されたビットストリームを用いて、1.57542GHzの搬送波を変調して送信信号を生成し、アンテナ26に送出する。その信号は、アンテナ26より発信される。このようにして、測位のための信号と同様の構成を有する信号が、屋内情報送信機8から発信される。この場合、信号の内容は、衛星から発信された測位信号に含まれる内容とは、全く同一ではない。
【0049】
電源28は、屋内情報送信機8を構成する各部に電力を供給する。尚、電源28は、図2に示されるように、屋内情報送信機8に内蔵されてもよいし、外部からの電力の供給を受け付ける態様であってもよい。
【0050】
以上の説明においては、デジタル処理ブロック14における処理を実現するための演算処理装置としてCPU30が用いられたが、その他の演算処理装置が使用されてもよい。また、屋内情報送信機8が実現する動作は複雑ではないため、デジタル処理ブロック14は、CPU30に代えて、例えば、各処理を実現するように構成された電気回路によっても実現できる。
【0051】
また、図2においては、クロック信号(Clk)がデジタル処理ブロック14からアナログ処理ブロック24に供給されているが、クロック22からアナログ処理ブロック24に直接に供給されてもよい。
【0052】
さらに、説明を明確にするために、本実施形態においては、デジタル処理ブロック14とアナログ処理ブロック24とが別個に示されているが、物理的には、1つのチップに混載されてもよい。
【0053】
(位置情報提供装置の構成)
図3を参照して、本実施形態に係る位置情報提供装置6の構成について説明する。
図3は、本実施形態に係る位置情報提供装置6のハードウェア構成の概略を表す図である。位置情報提供装置6は、ある局面において携帯電話機として実現されるが、その他の携帯型の情報端末として実現されてもよい。例えば、携帯型ラジオ、パーソナルコンピューター等であってもよい。
【0054】
位置情報提供装置6は、携帯電話アンテナ36と、無線送受信LSI38と、ベースバンド/プロトコル処理LSI40と、ワンセグアンテナ42と、ワンセグ無線受信用LSI44と、ワンセグOFDM復調LSI46と、ワンセグビデオ復号用LSI48と、受信部としてのGPSアンテナ50と、受信部としてのGPS受信LSI52と、CPU54と、メモリー56とを備える。CPU54は、ワンセグ受信用アプリケーション部58と、GPSアプリケーション部60と、IMES受信部62と、ワンセグチャネル番号抽出部64とを含む。
【0055】
携帯電話アンテナ36によって受信された信号は、無線送受信LSI38に送られる。無線送受信LSI38は、その信号をフロントエンド処理し、処理後の信号をベースバンド/プロトコル処理LSI40に送信する。ベースバンド/プロトコル処理LSI40は、その信号を復調しデジタル処理後のデータをCPU54に送出する。
【0056】
ワンセグアンテナ42は、ワンセグ放送を受信する。受信された信号は、ワンセグ無線受信用LSI44に送られる。ワンセグ無線受信用LSI44は、その信号をフロントエンド処理し、処理後の信号をワンセグOFDM復調LSI46に送信する。ワンセグOFDM復調LSI46は、その信号を復調し、復調によって得られた信号をワンセグビデオ復号用LSI48に送出する。ワンセグビデオ復号用LSI48は、復調された信号からビデオ用の信号を抽出し、抽出した信号をCPU54に送出する。この信号は、画像の表示に用いられる。一方、ワンセグ無線受信用LSI44からフロントエンド処理された音声信号は、CPU54に送られる。
【0057】
GPSアンテナ50は、GPS衛星4によって発信された測位信号又は屋内情報送信機8によって発信された測位信号を受信する。例えば屋外では、GPS衛星4が発信するGPS信号を受信し、屋内では、屋内情報送信機8が発信するIMES信号を受信する。受信されたGPS信号又はIMES信号は、GPS受信LSI52に送られる。GPS受信LSI52は、その信号をフロントエンド処理し、復調する。GPS受信LSI52は、信号判定部としての衛星サーチ部66及びゲインレベル制御部としての衛星デコード部68を備える。
【0058】
復調後、GPS受信LSI52は、復調された信号と位置情報提供装置6が予め有している符号パターンとの相関処理を行い、当該GPS信号又はIMES信号の符号パターンを特定する。この時点で、AGCは受信した信号のゲインが一定の範囲内に入るよう、受信した信号の強弱に基づいてゲインコントロールを行っている。
【0059】
衛星サーチ部66が当該GPS信号又はIMES信号の符号パターンを特定できると、当該信号がGPS信号かIMES信号か、また、どの衛星からの信号かを特定することができる。具体的には、GPS信号は1〜32のPRN番号、IMES信号は173〜182のPRN番号が割り当てられており、復調された信号のPRN番号によってGPS信号かIMES信号かを判別することができる。そして当該GPS信号又はIMES信号がIMES信号であって、位置情報提供装置6が電源スタートしてから初めて受信する屋内情報送信機8からの信号であると判断すると、衛星サーチ部66はAGC制御部70にAGC制御停止命令を送出する。AGC制御部70は、衛星サーチ部66からAGC制御停止命令を受信すると、AGC制御を停止し、衛星サーチ部66に対してAGC制御結果を送出する。
【0060】
衛星サーチ部66は、AGC制御部70からAGC制御結果を受信すると、航法データをデコードする準備が整ったと判断し、衛星デコード部68に対して復調したIMES信号を送出する。衛星デコード部68は、衛星サーチ部66から受信したIMES信号をデコードして、位置情報提供装置6の現在位置を特定するために必要なデータを取り出す。そして、必要なデータのデコードが完了すると、衛星サーチ部66に対してデコード完了通知を送出する。衛星サーチ部66は、衛星デコード部68からデコード完了通知を受信すると、AGC制御部70に対してAGC制御開始命令を送出する。AGC制御部70は、衛星サーチ部66からAGC制御開始命令を受信すると、AGC制御を開始し、衛星サーチ部66に対してAGC制御結果を送出する。
【0061】
IMES信号による測位方式は通常の衛星測位による方式とは全く異なり、航法メッセージを復調、解読するだけで位置を特定できる簡便な方式となっている。IMESのメッセージはいくつかのタイプが存在し、タイプによってメッセージのフレーム長は異なる。例えば、メッセージタイプIDが“000”のメッセージのフレーム長は3ワードであり、メッセージ中には建物の階数、緯度、経度が含まれている。したがって、1つの航法メッセージを復調、解読することで、GPSアプリケーション部60は、その信号に含まれている位置情報(例えば当該屋内情報送信機8が設置されている場所の座標値、当該設置場所の名称(例えば住所、ビルの名称、フロアなど))を表示する。
【0062】
尚、この処理は、GPSアプリケーション部60とIMES受信部62との協働によって実現される。尚、図3の例では、GPSアプリケーション部60とIMES受信部62とは別個の構成として示されているが、これらの機能は、CPU54によって実現される。そして、GPS衛星4から発信された信号に基づく測位処理と、IMESとも称される屋内情報送信機8から送信された信号に基づく位置情報の特定処理とは、必ずしもシリアルに実行されるわけではなく、並列して実行可能である。例えば、GPS受信LSI52が、複数の並列コリレーターを含む場合には、ロック処理を同時並行的に実行できる。したがって、CPU54は、GPSアンテナ50によって受信された信号に基づいて、GPS衛星4によって発信された信号に基づく測位処理と屋内情報送信機8によって発信されたIMES信号に基づく位置情報の特定処理とを並列して実行することができる。
【0063】
CPU54において、ワンセグチャネル番号抽出部64は、IMES信号からワンセグ放送のチャネル番号情報を抽出する。CPU54は、チャネル番号情報を用いてワンセグ無線受信用LSI44に選局させる。これにより、位置情報提供装置6の自動選局が実現される。
【0064】
CPU54に含まれる各機能は、CPU54が、当該機能を実現するように予め構成されたプログラムを実行することにより実現される。したがって、位置情報提供装置6の最も本質的な部分は、CPU54によって実行されるソフトウェアであるともいえる。
【0065】
当該ソフトウェアは、例えばメモリー56に実行可能な形式で格納されている。メモリー56は、例えばフラッシュROM、フラッシュメモリーその他の記録媒体、あるいはメモリーカードその他の着脱可能なデータ記録媒体であり得る。
【0066】
(動作)
図4は、本実施形態に係るシーケンスを示す図である。先ずステップS10に示すように、位置情報提供装置6は屋内情報送信機8が発信するIMES信号及び、GPS衛星4が発信するGPS信号の捕捉(衛星サーチ)を行う。
【0067】
次に、ステップS20に示すように、GPS衛星4あるいは屋内情報送信機8の捕捉(衛星受信)ができたか判断する。捕捉ができていなければ、ステップS10に戻り捕捉を行う。捕捉ができていれば、ステップS30へ進む。
【0068】
次に、ステップS30に示すように、受信した信号がIMES信号とGPS信号とのうちいずれであるかを判断する。受信した信号がIMES信号の場合はステップS40へ進み、受信した信号がGPS信号の場合は航法データデコード(ステップS70)へ進む。
【0069】
次に、ステップS40に示すように、受信したIMES信号が、位置情報提供装置6が受信中の屋内情報送信機の信号であるか判断する。受信中の屋内情報送信機以外の屋内情報送信機からの信号である場合は、AGC制御を停止し(ステップS50)、AGC−flgをoffにする(ステップS60)。受信中の屋内情報送信機からの信号である場合は航法データデコード(ステップS70)へ進む。
【0070】
次に、位置情報提供装置6は受信した航法データのデコードを行う(ステップS70)。そしてステップS80に示すように、IMES信号のデコードが完了したかどうか判断する。もしデコードが完了していれば、ステップS90へ進み、もしデコードが完了していなければステップS10の衛星サーチに戻る。
【0071】
次に、ステップS90に示すように、AGC−flgがonかoffか判断する。もしAGC−flgがoffであれば、AGC制御を開始し(ステップS100)、AGC−flgをonにして(ステップS110)、処理を終了する。もしAGC−flgがonであれば、ステップS100、ステップS110をスキップして処理を終了する。
【0072】
本実施形態によれば、受信した信号が位置情報提供装置6が受信中の屋内情報送信機以外の屋内情報送信機からの信号である場合に、航法データの受信中はAGC制御を停止することで、AGC制御によるSNRの急激な変動を抑制するため、航法データの受信の安定化が図れる。
【0073】
(変形例1)
実施形態では、受信した信号がIMES信号であり、かつ、位置情報提供装置6が受信中の屋内情報送信機以外の屋内情報送信機の信号である場合に、位置情報提供装置6はAGC制御を停止した。本変形例では、AGC制御を停止するのでなく、AGC制御を制限する制御を行う。位置情報提供装置6が、ステップS40で受信中の屋内情報送信機以外の屋内情報送信機からの信号であると判断すると、ステップS50でAGC制御を停止する代わりに、AGC制御を抑制する。
【0074】
AGCは通常、受信信号のレベルが一定の範囲内に収まるようにゲインをコントロールしており、信号レベルが変動しないときはAGC制御は行わない。しかしながら、屋内情報送信機からのIMES信号を受信する場合は、GPS衛星からのGPS信号を受信する場合と比較して、通信距離が短いため信号レベルの変動が大きく起こりやすくなる。そのため、大きなAGC制御が頻繁に動作するようになり、受信が安定しないという問題が生じる。
【0075】
そこでAGC制御を抑制することによって、通常のAGC制御を行った場合よりもIMES信号の航法データ受信をより安定して行うことができる。尚、AGC制御を抑制する具体的な方法としては、例えばAGCゲインの最大値を引き下げてゲインが一定値以下になるようにする方法や、ゲインコントロールを通常時の60%にしてゲインコントロールを全般的に弱くする方法などがある。
【0076】
(変形例2)
また、もう一つの変形例として、AGC制御を停止するのでなく、AGCの制御回数を少なくする制御を行うこともできる。具体的には、位置情報提供装置6が、ステップS40で受信中の屋内情報送信機以外の屋内情報送信機からの信号であると判断すると、AGCの制御頻度を通常よりも少なくする制御を行う。例えば、通常は20ms間隔で動作するAGCを200ms間隔で動作するように変更する。AGCの制御回数を通常よりも少なくすることによって、本来のAGC制御を行った場合よりも受信信号のレベルが変動する回数が少なくなり、これによってIMES信号の航法データ受信をより安定して行うことができる。
【0077】
(変形例3)
実施形態では、ステップS80でデコードが完了したと判断するとAGC制御を開始させている。この制御を、ステップS50でAGC制御を停止させると同時にタイマーをスタートさせ、タイマーが一定時間を経過したときにAGC制御を開始させるようにしてもよい。IMES信号の航法データ受信には、例えば「位置情報2」の航法データのフレーム長は4ワード(120ビット)であり、50bpsでは受信に2.4秒を必要とする。フレームの先頭ビットの受信ができなかった場合には最長239ビットを受信する必要があるから、安全を見て5秒間経過したところでAGC制御を開始するようにしてもよい。これによってステップS80のデコード完了判定が不要となる。
【0078】
(変形例4)
また、屋内環境で連続してIMES信号を受信できるような環境の場合には、AGC制御停止時間をさらに長くすることが好適である。屋内情報送信機が整備された屋内環境では、屋内情報送信機は半径10m程度の距離に電波を出し、位置情報提供装置はその電波をデコードしてナビゲーションを行う、というように使われることが想定される。通常の歩行では10〜20秒毎に1衛星が見つかる程度だと考えられるが、例えば3秒毎に新しい衛星が見つかるような状態であれば、連続してIMES信号を受信できる環境だと判断できる。その場合、AGC制御を停止してからタイマーが例えば30秒間経過するまでAGCを停止状態にする。これによって航法データを連続して安定的に受信することができる。
【0079】
本実施形態は、測位装置を備えた電子機器であればいずれの電子機器にも適用可能である。例えば、携帯電話機、携帯型ラジオ、パーソナルコンピューター、カーナビゲーションシステム、及びその他の携帯型の情報端末などの各種電子機器に適用可能である。
【符号の説明】
【0080】
2…位置情報提供システム 4,4−1,4−2,4−3,4−4…GPS衛星 6,6−1,6−2…位置情報提供装置 8,8−1,8−2,8−3,8−4…屋内情報送信機 10,10−1,10−2,10−3,10−4…送信機 12…ビル 14…デジタル処理ブロック 16…EEPROM 18…UART 20…デジタル入出力インターフェイス 22…クロック 24…アナログ処理ブロック 26…アンテナ 28…電源 30…CPU 32…RAM 34…外部クロック 36…携帯電話アンテナ 38…無線送受信LSI 40…ベースバンド/プロトコル処理LSI 42…ワンセグアンテナ 44…ワンセグ無線受信用LSI 46…ワンセグOFDM復調LSI 48…ワンセグビデオ復号用LSI 50…GPSアンテナ 52…GPS受信LSI 54…CPU 56…メモリー 58…ワンセグ受信用アプリケーション部 60…GPSアプリケーション部 62…IMES受信部 64…ワンセグチャネル番号抽出部 66…衛星サーチ部 68…衛星デコード部 70…AGC制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位装置が、測位用信号を受信する受信方法であって、
前記測位用信号をサーチすることと、
前記サーチに基づき受信した前記測位用信号が測位用衛星から送信された信号であるか、屋内情報送信機から送信された信号であるかを判定することと、
前記受信した測位用信号が前記屋内情報送信機から送信された信号であるときに、当該屋内情報送信機が前記測位装置が受信中の前記屋内情報送信機であるか判定することと、
前記受信した測位用信号が前記測位装置が受信中の前記屋内情報送信機以外の屋内情報送信機からの信号であるときに、所定の時間AGC(Automatic Gain Control)制御を制限することと、
を有することを特徴とする受信方法。
【請求項2】
前記所定の時間は、前記測位装置が前記測位用信号の受信を開始してから前記受信した測位用信号のデコードを終了するまでの間であることを特徴とする請求項1に記載の受信方法。
【請求項3】
前記所定の時間は、前記測位装置が前記測位用信号の受信を開始してから所定経過時間が終了するまでの間であることを特徴とする請求項1に記載の受信方法。
【請求項4】
前記AGC制御を制限することは、前記AGC制御を停止することであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の受信方法。
【請求項5】
前記AGC制御を制限することは、前記AGC制御を抑制することであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の受信方法。
【請求項6】
測位用信号を受信する測位装置であって、
前記測位用信号をサーチする衛星サーチ部と、
前記サーチに基づき受信した前記測位用信号をデコードする衛星デコード部と、
AGC制御を制限するAGC制御部と、
を備え、
前記AGC制御部は、前記衛星サーチ部が受信した前記測位用信号が屋内情報送信機から送信された信号であり、かつ、当該屋内情報送信機が、前記測位装置が受信中の屋内情報機以外の屋内情報送信機であるときに、所定の時間AGC制御を制限することを特徴とする測位装置。
【請求項7】
請求項6に記載の測位装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−233793(P2012−233793A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102751(P2011−102751)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】