説明

受信機

【課題】I信号とQ信号との間に位相誤差や振幅誤差が発生するのを極力抑制して、イメージ成分を効果的に抑制できるようにする。
【解決手段】I信号とQ信号とを切り替えて1つのA/D変換器9に出力するスイッチ部8a、8bを設け、スイッチ部8a,8bより出力されるI信号およびQ信号を順次にA/D変換器9でデジタル信号に変換してDSP10に供給することにより、I信号およびQ信号のA/D変換処理を同じA/D変換器9で行うことができるようにして、A/D変換特性のばらつきによってI信号とQ信号との間に振幅誤差や位相誤差が生じる不都合を抑止できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は受信機に関し、特に、高周波の受信信号を同相成分と直交成分とに振り分けて周波数変換する機能を有する受信機に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、情報を無線の電波信号として送信するためには、ベースバンド信号(直流近傍成分を含む低周波信号)を高周波信号に変換する、いわゆる変調処理が不可欠である。変調処理により生成された高周波信号を電波として受信する受信機では、受信アンテナにて受信した高周波信号と局部発振器から出力される局部発振信号とをミキサにて周波数混合することにより、検波(復調)処理に適した周波数に変換する。
【0003】
ベースバンド信号を高周波信号に変換する変調方式の1つに、ベースバンド信号をIチャネル(同相成分)とQチャネル(直交成分)とに振り分けて変調する直交変調(IQ変調)が存在する。IQ変調により生成された高周波信号を電波として受信する受信機では、受信した高周波信号を2つのミキサにより同相成分と直交成分とに振り分けて周波数変換し、得られた同相成分の信号(以下、I信号を称する)と直交成分の信号(以下、Q信号を称する)とを用いて復調処理を行う(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】米国特許7,272,375号明細書
【0004】
図5は、直交変調方式にて変調された高周波信号を受信する受信機の従来の構成例を示す図である。図5に示すように、従来の受信機は、受信アンテナ101、LNA(Low Noise Amplifier)102、バンドパスフィルタ(BPF)103、ミキサ104I,104Q、局部発振器105、90°移相器106、ローパスフィルタ(LPF)107I,107Q、VGA(Variable Gain Amplifier)108I,108Q、A/D変換器109I,109QおよびDSP(Digital Signal Processor)110を備えている。
【0005】
LNA102は、受信アンテナ101で受信された高周波信号を増幅してBPF103に供給する。BPF103は、LNA102より出力された高周波信号を所要の帯域にフィルタリングして希望受信周波数を含む所定の周波数帯域の信号を抽出し、抽出した信号を2つのミキサ104I,104Qに出力する。局部発振器105は、所定周波数の局部発振信号を発生して出力する。90°移相器106は、局部発振器105から出力される局部発振信号の位相を90°ずらして出力する。
【0006】
第1のミキサ104Iは、BPF103から出力される高周波信号と、局部発振器105から出力される同相の局部発振信号とを周波数混合することによって、高周波信号を中間周波信号に変換する。この第1のミキサ104Iから出力される中間周波信号は、受信信号に対して位相がずれていない同相成分のI信号である。
【0007】
第2のミキサ104Qは、BPF103から出力される高周波信号と、90°移相器106から出力される直交の(90°位相がずれた)局部発振信号とを周波数混合することによって、高周波信号を中間周波信号に変換する。この第2のミキサ104Qから出力される中間周波信号は、受信信号に対して位相が90°ずれた直交成分のQ信号である。
【0008】
LPF107I,107Qは、ミキサ104I,104Qより出力されるI信号およびQ信号をフィルタリングして高調波を除去する。VGA108I,108Qは、LPF107I,107Qにより高調波が除去されたI信号およびQ信号を増幅する。A/D変換器109I,109Qは、VGA108I,108Qにより増幅されたI信号およびQ信号をデジタル信号に変換し、デジタルI信号およびデジタルQ信号を出力する。DSP110は、A/D変換器109I,109Qより出力されるデジタルI信号およびデジタルQ信号を用いてデジタル信号処理により復調処理を行い、復調信号を出力する。
【0009】
ところで、ミキサ104I,104Qによって高周波信号を中間周波信号に変換する場合、希望受信周波数と一定の周波数関係を持つ周波数チャネル(スプリアス・ポイント)において、本来不要なイメージ成分が発生する。従来、このイメージ成分をDSP110等のデジタル信号処理により除去する技術が提案されている。デジタル信号処理によるイメージ除去機能が有効に働くためには、ミキサ104I,104Qにより発生されA/D変換されてDSP110に入力されるI信号とQ信号の振幅が正確に一致し、かつ、I信号とQ信号の位相が正確に90°ずれていることが望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、BPF103を含むアナログ回路におけるアナログ素子のばらつき等により、DSP110に入力されるI信号とQ信号との間に位相誤差が生じる(位相差が正確に90°にならない)場合がある。この場合には、イメージ成分の除去が充分に行われなくなってしまうという問題があった。
【0011】
また、I信号をデジタル信号に変換する第1のA/D変換器109Iと、Q信号をデジタル信号に変換する第2のA/D変換器109Qとの間には、製造ばらつきや熱雑音などの影響により、変換特性にばらつきが生じる。この変換特性のばらつきも、DSP110に入力されるI信号とQ信号との間に振幅誤差が生じたり、位相差が正確に90°にならなかったりする原因となる。
【0012】
さらに、I信号に対して帯域制限を行う第1のLPF107IとQ信号に対して帯域制限を行う第2のLPF107Qとの間、I信号の増幅を行う第1のVGA108IとQ信号の増幅を行う第2のVGA108Qとの間にも、製造ばらつきなどの影響により特性にばらつきが生じる。これらの特性のばらつきも、DSP110に入力されるI信号とQ信号との間に振幅誤差が生じたり、位相差が正確に90°にならなかったりする原因となる。
【0013】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、I信号とQ信号との間に振幅誤差や位相誤差が発生するのを極力抑制して、イメージ成分を効果的に除去できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した課題を解決するために、本発明では、ミキサの前段にポリフェーズフィルタを設け、当該ポリフェーズフィルタによって高調波成分を除去するようにしている。また、アナログの同相信号および直交信号を切り替えてA/D変換器に出力する切替部を設け、切替部より出力される同相信号および直交信号を順次にA/D変換器でデジタル信号に変換して、デジタル信号処理部に供給するようにしている。さらに、切替部でのスイッチングに起因して同相信号と直交信号との間に生じる若干の振幅誤差と位相誤差をデジタル信号処理部にて補正するようにしている。
【発明の効果】
【0015】
上記のように構成した本発明によれば、ポリフェーズフィルタを用いることにより、同相信号と直交信号との直交性を向上させることができるので、アナログ素子のばらつき等に起因する同相信号と直交信号との位相誤差を抑止することができる。また、同相信号および直交信号のA/D変換処理を同じA/D変換器で行うことができるので、A/D変換特性のばらつきによって同相信号と直交信号との間に振幅誤差や位相誤差が生じる不都合を抑止することができる。さらに、切替部でのスイッチングに起因して同相信号と直交信号との間に生じる若干の振幅誤差と位相誤差も、デジタル信号処理部にて補正することができる。これにより、同相信号と直交信号との間に振幅誤差や位相誤差が発生するのを極力抑制し、イメージ成分を効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明による一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、第1の実施形態による受信機の構成例を示す図である。図1に示すように、第1の実施形態による受信機は、受信アンテナ1、LNA2、ポリフェーズフィルタ(PPF)3、ミキサ4、局部発振器5、LPF6a,6b、VGA7a,7b、前段スイッチ部8a,8b、A/D変換器9およびDSP10を備えている。なお、図1に示す各構成のうち、受信アンテナ1を除くその他の構成は全て、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)プロセスで1チップに集積化されている。
【0017】
LNA2は、受信アンテナ1にて受信された高周波信号を増幅してPPF3に供給する。PPF3は、LNA2より出力された高周波信号を入力し、互いに位相が90°ずれた4相の高周波信号RI+,RI−,RQ+,RQ−をミキサ4に出力する。ここで、Iは同相信号を示し、Qは直交信号を示す。また、+は正相を示し、−は逆相を示している。すなわち、I+の位相を基準の0°とすると、Q+が90°、I−が180°、Q−が270°の位相を有するものとなる。
【0018】
PPF3は、例えば図2のように構成されている。図2に示すように、PPF3は、抵抗とコンデンサとが並列接続されてなるフィルタ回路3−1,3−2を備え、複数のフィルタ回路3−1,3−2を縦続接続して構成されている。各フィルタ回路3−1,3−2は接続方向に沿って45°ずつ位相を回転させる。上述のように、4相の高周波信号RI+,RI−,RQ+,RQ−を複素平面上で表すと、位相が0°から270°まで時計回転するので、PPF3としては正の周波数領域でノッチが生じる。そして、高調波成分の周波数帯域でノッチが生ずるように各フィルタ回路3−1,3−2のCR積を設定することで、所望の高調波成分抑制効果を得ることができる。
【0019】
ここで、CR積は時定数を表すものであり、厳密には、角周波数は1/(CR)、周波数は1/(2πCR)となる。PPF3は構造が対称であることから、極周波数f=1/(2πCR)と略一致する周波数では、入力信号に含まれるアンバランスな成分が除去される。この働きによって、4相信号の直交性(4相信号の位相が正確に90°ずつ異なっていること)を向上させることができる。
【0020】
局部発振器5は、位相器を含み、受信周波数に対して所定周波数のオフセットを有するローカル周波数の局部発振信号を発生して出力する。ここで発生する局部発振信号は、互いに位相が90°ずつ異なる4相の局部発振信号LI+,LI−,LQ+,LQ−である。
【0021】
ミキサ4は、4つのミキサ回路を含み、PPF3から出力される4相の高周波信号RI+,RI−,RQ+,RQ−を局部発振器5から出力される4相の局部発振信号LI+,LI−,LQ+,LQ−で周波数変換し、当該4相の高周波信号から4相の中間周波信号II+,II−,IQ+,IQ−を発生する。
【0022】
ミキサ4での周波数変換により発生された中間周波信号II+,II−,IQ+,IQ−のうち、正相の中間周波信号II+,IQ+は、第1のLPF6aおよび第1のVGA7aから成る第1の信号処理系統でアナログ信号処理される。第1のLPF6aは、ミキサ4より出力される正相の中間周波信号II+,IQ+をフィルタリングして高調波を除去する。第1のVGA7aは、本発明の「第1の増幅器」に相当するものであり、第1のLPF6aより出力される正相の中間周波信号II+,IQ+を増幅する。なお、第1の信号処理系統の構成はこれに限定されない。例えば、第1のLPF6aはBPFとしても良い。また、第1のVGA7aを省略しても良い。
【0023】
一方、ミキサ4での周波数変換により発生された中間周波信号II+,II−,IQ+,IQ−のうち、逆相の中間周波信号II−,IQ−は、第2のLPF6bおよび第2のVGA7bから成る第2の信号処理系統でアナログ信号処理される。第2のLPF6bは、ミキサ4より出力される逆相の中間周波信号II−,IQ−をフィルタリングして高調波を除去する。第2のVGA7bは、本発明の「第2の増幅器」に相当するものであり、第2のLPF6bより出力される逆相の中間周波信号II−,IQ−を増幅する。なお、第2の信号処理系統の構成はこれに限定されない。例えば、第2のLPF6bもBPFとしても良い。また、第2のVGA7bを省略しても良い。
【0024】
第1の前段スイッチ部8aは、本発明の「第1のスイッチ」に相当するものであり、正相の中間周波信号に含まれる正相の同相信号I+と正相の直交信号Q+とを切り替えてA/D変換器9に出力する。第2の前段スイッチ部8bは、本発明の「第2のスイッチ」に相当するものであり、逆相の中間周波信号に含まれる逆相の同相信号I−と逆相の直交信号Q−とを切り替えてA/D変換器9に出力する。
【0025】
ここで、第1の前段スイッチ部8aが正相の同相信号I+を選択しているときは第2の前段スイッチ部8bは逆相の同相信号I−を選択する。これにより、A/D変換器9には正逆の同相信号(以下、I信号と称する)が入力される。一方、第1の前段スイッチ部8aが正相の直交信号Q+を選択しているときは第2の前段スイッチ部8bは逆相の直交信号Q−を選択する。これにより、A/D変換器9には正逆の直交信号(以下、Q信号と称する)が入力される。
【0026】
A/D変換器9は、前段スイッチ部8a,8bより交互に切り替えて出力されるI信号およびQ信号を順次にデジタル信号に変換する。DSP10は、本発明のデジタル信号処理部に相当するものであり、A/D変換器9よりデジタル信号として出力されるI信号およびQ信号を順次入力し、これらのI信号およびQ信号に対してデジタル信号処理を行う。DSP10は、デジタル信号処理により実現される機能構成として、後段スイッチ部10A、振幅補正部10B、位相補正部10Cおよび復調部10Dを備えている。
【0027】
後段スイッチ部10Aは、A/D変換器9より交互に出力されるデジタルのI信号とQ信号とを順次に入力し、当該入力したI信号とQ信号とを交互に振り分けて出力する。前段スイッチ部8a,8bおよび後段スイッチ部10Aは、A/D変換器9でのA/D変換速度よりも高速に切り替えを行うように設計するのが好ましい。例えば、A/D変換器9のサンプリング周波数をFsとした場合、その2倍の周波数2Fsの周期で前段スイッチ部8a,8bおよび後段スイッチ部10Aを切り替える。例えば、2Fs=15.36MHzである。
【0028】
このように、本実施形態では、I信号のA/D変換処理とQ信号のA/D変換処理とを1つの同じA/D変換器9で行うので、I信号用およびQ信号用に2つのA/D変換器を設けた場合におけるA/D変換特性のばらつきによって、各A/D変換器から出力されるI信号とQ信号との間に振幅誤差や位相誤差が生じる不都合を抑止することができる。
【0029】
振幅補正部10Bは、後段スイッチ部10Aにより振り分けられたデジタルQ信号の振幅を補正する。振幅の補正は、例えば、デジタルQ信号の振幅を表す値を増加あるいは減少させることによって行う。位相補正部10Cは、後段スイッチ部10Aにより振り分けられたデジタルQ信号の位相を補正する。位相の補正は、例えば、デジタルQ信号のディレイ量を調整することによって行う。
【0030】
位相補正部10Cは、例えば、複数の出力タップを有するFIR(Finite Impulse Response)フィルタにより構成される。このFIRフィルタは、複数セットのフィルタ係数を有しており、これらを切り替えて適用できるように成されている。複数セットのフィルタ係数は、それぞれが異なる位相補正量を提供するものである。したがって、何れかのセットを選択してフィルタ係数を適用することにより、位相補正量を可変とすることができる。
【0031】
上述のように、本実施形態によれば、A/D変換特性のばらつきに起因する振幅誤差や位相誤差を抑止することが可能である。ただし、前段スイッチ部8a,8bおよび後段スイッチ部10Aにおいて所要のスイッチング時間を要することから、このスイッチングに起因して、後段スイッチ部10Aより出力されるI信号とQ信号との間には若干の振幅誤差と位相誤差が発生する。
【0032】
このスイッチングに起因する振幅誤差や位相誤差は、スイッチング速度を速くすることによって、A/D変換特性のばらつきに起因して生じる振幅誤差や位相誤差に比べて充分に小さくすることができる。したがって、このスイッチングに起因する振幅誤差や位相誤差をそのまま許容しても、A/D変換器を2つ用いる従来の構成に比べて、誤差量は格段に小さくなる。
【0033】
しかし、このスイッチングに起因する振幅誤差や位相誤差も、できることならなくすことが好ましい。前段スイッチ部8a,8bおよび後段スイッチ部10Aのスイッチング特性からこの振幅誤差と位相誤差は既知であるから、既知の補正量に従ってDSP10によるデジタル信号処理を行うことにより、スイッチングに起因する振幅誤差や位相誤差がなくなるように補正をすることが可能である。振幅補正部10Bおよび位相補正部10Cは、そのための補正部である。スイッチングに起因する振幅誤差や位相誤差は、A/D変換器を2つ用いる場合における特性のばらつきに起因する振幅誤差や位相誤差に比べて僅かであり、デジタル信号処理による補正が容易である。
【0034】
なお、ここではデジタルQ信号の振幅および位相を補正する例について説明したが、これに限定されない。例えば、後段スイッチ部10Aにより振り分けられたデジタルI信号の振幅および位相を補正するようにしても良い。または、デジタルI信号およびデジタルQ信号の双方に対して振幅および位相の補正を行うようにしても良い。さらには、デジタルI信号に対して振幅の補正を行い、デジタルQ信号に対して位相の補正を行うようにしても良い。もちろん、その逆でも良い。
【0035】
また、ここでは既知の補正量に従ってQ信号の振幅と位相を補正する例について説明したが、これに限定されない。例えば、後段スイッチ部10Aにより振り分けられたデジタルI信号とデジタルQ信号との振幅誤差を検出し、検出した振幅誤差がなくなるように、振幅補正部10Bの補正量を設定するようにしても良い。同様に、デジタルI信号とデジタルQ信号との位相誤差を検出し、検出した位相誤差がなくなるように、位相補正部10Cの補正量を設定するようにしても良い。振幅誤差の検出や位相誤差の検出は、DSP10のデジタル信号処理によって行うことが可能である。
【0036】
復調部10Dは、後段スイッチ部10Aより供給されるデジタルI信号と、後段スイッチ部10Aにより振り分けられた後、振幅補正部10Bおよび位相補正部10Cを介して供給されるデジタルQ信号とを用いて復調処理を行う。この復調部10Dは、例えば複素周波数変換を行う方法にてイメージ成分を除去する機能を有している。
【0037】
以上詳しく説明したように、第1の実施形態では、ミキサ4の前段において従来のBPFの代わりにPPF3を設け、当該PPF3によって高調波成分を除去するようにしている。PPF3を用いることにより、同相信号と直交信号との直交性を向上させることができる。これにより、アナログ素子のばらつき等に起因する同相信号と直交信号との位相誤差を抑止することができる。
【0038】
また、第1の実施形態では、I信号とQ信号とを切り替えて1つのA/D変換器9に出力するスイッチ部8a,8bを設け、スイッチ部8a,8bより出力されるI信号およびQ信号を順次にA/D変換器9でデジタル信号に変換してDSP10に供給するようにしている。これにより、I信号およびQ信号のA/D変換処理を同じA/D変換器9で行うことができるので、A/D変換特性のばらつきによってI信号とQ信号との間に振幅誤差や位相誤差が生じる不都合を抑止することができる。
【0039】
さらに、第1の実施形態では、前段スイッチ部8a,8bおよび後段スイッチ部10Aでのスイッチングに起因してI信号とQ信号との間に生じる若干の振幅誤差と位相誤差をDSP10にて補正するようにしている。
【0040】
以上により、第1の実施形態によれば、I信号とQ信号との間に振幅誤差や位相誤差が発生するのを極力抑制して、DSP10においてイメージ成分の発生を効果的に抑制することができる。また、第1の実施形態では、A/D変換器9が1つだけあれば良いので、回路面積を小さくすることができるというメリットも有する。
【0041】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図面に基づいて説明する。図3は、第2の実施形態による受信機の構成例を示す図である。この図3において、図1に示した符号と同一の符号を付したものは同一の機能を有するものであるので、ここでは重複する説明を省略する。
【0042】
図3に示すように、第2の実施形態による受信機は、受信アンテナ1、LNA2、PPF3、ミキサ4、局部発振器5、LPF6a,6b、前段スイッチ部18a,18b、VGA7、A/D変換器9およびDSP10を備えている。なお、図3に示す各構成のうち、受信アンテナ1を除くその他の構成は全て、例えばCMOSプロセスで1チップに集積化されている。
【0043】
第1の前段スイッチ部18aは、第1のLPF6aより出力される正相の中間周波信号に含まれる正相の同相信号I+と正相の直交信号Q+とを切り替えてVGA7に出力する。第2の前段スイッチ部18bは、第2のLPF6bより出力される逆相の中間周波信号に含まれる逆相の同相信号I−と逆相の直交信号Q−とを切り替えてVGA7に出力する。
【0044】
ここで、第1の前段スイッチ部18aが正相の同相信号I+を選択しているときは第2の前段スイッチ部18bは逆相の同相信号I−を選択する。これにより、VGA7には正逆の同相信号(I信号)が入力される。一方、第1の前段スイッチ部18aが正相の直交信号Q+を選択しているときは第2の前段スイッチ部18bは逆相の直交信号Q−を選択する。これにより、VGA7には正逆の直交信号(Q信号)が入力される。
【0045】
VGA7は、本発明の「増幅器」に相当するものであり、前段スイッチ部18a,18bより交互に切り替えて出力されるI信号およびQ信号を順次に増幅する。そして、増幅したI信号およびQ信号をA/D変換器9に出力する。なお、第2の実施形態において、第1の信号処理系統は第1のLPF6aにより構成され、第2の信号処理系統は第2のLPF6bにより構成される。ここで、第1のLPF6a,6bはBPFとしても良い。また、VGA7は省略しても良い。
【0046】
以上詳しく説明したように、第2の実施形態では、前段スイッチ部18a,18bをVGA7の前段に設け、LPF6a,6bから出力されるI信号とQ信号とを切り替えて1つのVGA7に出力するようにしている。そして、当該1つのVGA7で順次増幅されたI信号とQ信号とを1つのA/D変換器9に順次出力するようにしている。
【0047】
これにより、I信号およびQ信号の増幅処理を同じVGA7で行うことができるとともに、I信号およびQ信号のA/D変換処理を同じA/D変換器9で行うことができる。このため、VGAの増幅特性やA/D変換器の変換特性のばらつきによってI信号とQ信号との間に振幅誤差や位相誤差が生じる不都合を、第1の実施形態に比べてより効果的に抑止することができる。
【0048】
以上により、第2の実施形態によれば、I信号とQ信号との間に振幅誤差や位相誤差が発生するのをより効果的に抑制して、DSP10においてイメージ成分の発生をより効果的に抑制することができる。また、第2の実施形態では、VGA7もA/D変換器9も1つずつあれば良いので、回路面積をより小さくすることができるというメリットも有する。
【0049】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を図面に基づいて説明する。図4は、第3の実施形態による受信機の構成例を示す図である。この図4において、図2に示した符号と同一の符号を付したものは同一の機能を有するものであるので、ここでは重複する説明を省略する。
【0050】
図4に示すように、第3の実施形態による受信機は、受信アンテナ1、LNA2、PPF3、ミキサ4、局部発振器5、前段スイッチ部28a,28b、LPF6、VGA7、A/D変換器9およびDSP10を備えている。なお、図4に示す各構成のうち、受信アンテナ1を除くその他の構成は全て、例えばCMOSプロセスで1チップに集積化されている。
【0051】
第1の前段スイッチ部28aは、ミキサ4より出力される正相の中間周波信号に含まれる正相の同相信号II+と正相の直交信号IQ+とを切り替えてLPF6に出力する。第2の前段スイッチ部28bは、ミキサ4より出力される逆相の中間周波信号に含まれる逆相の同相信号II−と逆相の直交信号IQ−とを切り替えてLPF6に出力する。
【0052】
ここで、第1の前段スイッチ部28aが正相の同相信号II+を選択しているときは第2の前段スイッチ部28bは逆相の同相信号II−を選択する。これにより、LPF6には正逆の同相信号(I信号)が入力される。一方、第1の前段スイッチ部28aが正相の直交信号IQ+を選択しているときは第2の前段スイッチ部28bは逆相の直交信号IQ−を選択する。これにより、LPF6には正逆の直交信号(Q信号)が入力される。
【0053】
LPF6は、本発明の「フィルタ部」に相当するものであり、前段スイッチ部28a,28bより交互に切り替えて出力されるI信号およびQ信号に対して順次に帯域制限を行うことにより高調波を除去する。そして、帯域制限したI信号およびQ信号をVGA7に出力する。VGA7は、LPF6より順次出力されるI信号およびQ信号を増幅し、増幅したI信号およびQ信号をA/D変換器9に出力する。なお、第3の実施形態では、第1の信号処理系統と第2の信号処理系統との区別はない。ここで、LPF6はBPFとしても良い。また、VGA7は省略しても良い。
【0054】
ところで、前段スイッチ部28a,28bは15.36MHzの周期でスイッチングするので、前段スイッチ部28a,28bより出力されるI信号およびQ信号は、15.36MHzの周期でサンプリングされた信号となる。この場合に、前段スイッチ部28a,28bの後段にLPF6を設けると、サンプリングされたI信号およびQ信号の波形が歪んで(鈍って)しまう。
【0055】
そこで、前段スイッチ部28a,28bの出力段にサンプルホールド回路(図示せず)を設け、前段スイッチ部28a,28bでサンプリングされたI信号およびQ信号の波形を当該サンプルホールド回路で保持することにより、波形の鈍りを抑制することが可能である。または、サンプルホールド回路を設けるのではなく、LPF6の代わりに通過域が広帯域のフィルタを用いるようにしても良い。
【0056】
以上詳しく説明したように、第3の実施形態では、前段スイッチ部28a,28bをLPF6の前段に設け、ミキサ4から出力されるI信号とQ信号とを切り替えて1つのLPF6に出力するようにしている。そして、当該1つのLPF6で順次帯域制限されたI信号とQ信号とを1つのVGA7および1つのA/D変換器9に順次出力するようにしている。
【0057】
これにより、I信号およびQ信号の増幅処理を同じVGA7で行うとともに、I信号およびQ信号のA/D変換処理を同じA/D変換器9で行うことに加えて、I信号およびQ信号の帯域制限を同じLPF6で行うことができる。このため、LPFの周波数特性やVGAの増幅特性、A/D変換器の変換特性のばらつきによってI信号とQ信号との間に振幅誤差や位相誤差が生じる不都合を、第1および第2の実施形態に比べてより効果的に抑止することができる。
【0058】
以上により、第3の実施形態によれば、I信号とQ信号との間に振幅誤差や位相誤差が発生するのをより効果的に抑制して、DSP10においてイメージ成分の発生をより効果的に抑制することができる。また、第3の実施形態では、LPF6もVGA7もA/D変換器9も1つずつあれば良いので、回路面積をより小さくすることができるというメリットも有する。
【0059】
なお、上記第1〜第3の実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、高周波の受信信号を同相成分と直交成分とに振り分けて周波数変換し、得られた同相信号と直交信号とを用いて直交復調を行う受信機に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】第1の実施形態による受信機の構成例を示す図である。
【図2】本実施形態によるPPFの構成例を示す図である。
【図3】第2の実施形態による受信機の構成例を示す図である。
【図4】第3の実施形態による受信機の構成例を示す図である。
【図5】従来の受信機の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
3 PPF
4 ミキサ
5 局部発振器
6,6a,6b LPF
7,7a,7b VGA
8a,8b 前段スイッチ部
9 A/D変換器
10 DSP
10A 後段スイッチ部
10B 振幅補正部
10C 位相補正部
10D 復調部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した高周波信号を入力し、互いに位相が90°ずれた4相の高周波信号を出力するポリフェーズフィルタと、
上記ポリフェーズフィルタより出力される4相の高周波信号をローカル周波数の局部発振信号で周波数変換し、上記4相の高周波信号から4相の中間周波信号を発生するミキサと、
上記ミキサでの周波数変換により発生された上記4相の中間周波信号のうち、正相の中間周波信号に含まれる正相の同相信号と正相の直交信号とを切り替えて出力するとともに、逆相の中間周波信号に含まれる逆相の同相信号と逆相の直交信号とを切り替えて出力する切替部と、
上記切替部より順次切り替えて出力される同相信号および直交信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、
上記A/D変換器よりデジタル信号として出力される同相信号および直交信号に対して復調を含むデジタル信号処理を行うデジタル信号処理部とを備え、
上記デジタル信号処理部は、上記A/D変換器よりデジタル信号として出力される同相信号および直交信号の少なくとも一方に対して振幅の補正を行う振幅補正部と、
上記A/D変換器よりデジタル信号として出力される同相信号および直交信号の少なくとも一方に対して位相の補正を行う位相補正部とを備えたことを特徴とする受信機。
【請求項2】
上記切替部は、上記正相の中間周波信号に含まれる上記正相の同相信号と上記正相の直交信号とを切り替えて出力する第1のスイッチと、
上記逆相の中間周波信号に含まれる上記逆相の同相信号と上記逆相の直交信号とを切り替えて出力する第2のスイッチとを備えたことを特徴とする請求項1に記載の受信機。
【請求項3】
上記正相の中間周波信号を増幅する第1の増幅器を上記第1のスイッチの前段に更に備え、
上記逆相の中間周波信号を増幅する第2の増幅器を上記第2のスイッチの前段に更に備えたことを特徴とする請求項2に記載の受信機。
【請求項4】
上記切替部より順次切り替えて出力される同相信号および直交信号を増幅する増幅器を更に備え、上記増幅器により増幅された信号を上記A/D変換器に出力するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の受信機。
【請求項5】
上記切替部より順次切り替えて出力される同相信号および直交信号に対して帯域制限を行うフィルタ部を更に備え、上記フィルタ部により帯域制限された信号を上記A/D変換器に出力するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の受信機。
【請求項6】
上記フィルタ部により帯域制限された信号を増幅する増幅器を更に備え、上記フィルタ部により帯域制限された信号に代えて、上記増幅器により増幅された信号を上記A/D変換器に出力するようにしたことを特徴とする請求項5に記載の受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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