説明

受信装置

【課題】逆拡散処理を施した後の信号に含まれる干渉信号を低減することを可能にした受信装置を提供する。
【解決手段】アンテナ18から受信された無線信号は無線受信部20に入力される。無線受信部20は、無線信号を無線周波数帯域より低い周波数帯域を占有する信号に変換して増幅し、さらにディジタル信号に変換して受信信号RXとして不要信号低減部22−1〜22−nに出力する。逆拡散処理部10−iは(iは1〜nの整数)、1つの測位衛星が送信した源信号を、不要信号低減部22−iが出力した信号から復元し、測位用信号Pを抽出して制御部28に出力する。不要信号低減部22−iは、逆拡散処理部10−iが復元した源信号を送信した測位衛星以外の測位衛星から送信された源信号を、受信信号RXから復元し、その値を低減する処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡散符号による拡散処理が施された拡散信号を含む信号を受信する受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
測位衛星は、送信の対象とする源信号に対して拡散処理を施した拡散信号を送信する。そのため、一般に、測位装置は受信した信号から源信号を復元するための逆拡散処理を行う手段を備える。図6に測位装置に備えられ、逆拡散処理を行う逆拡散処理部10の構成を示す。逆拡散処理部10は、乗算部12、相関制御部14、コード信号生成部16を備えて構成される。
【0003】
相関制御部14は、測位に必要な情報を取得する測位衛星を指定する衛星指定番号の情報をコード信号生成部16に出力する。コード信号生成部16は、衛星指定番号によって指定される指定衛星に割り当てられた拡散符号に基づいてコード信号を生成し乗算部12に出力する。ここでコード信号とは、拡散符号の符号要素を信号の値に対応付けた信号をいい、例えば1および−1で表される拡散符号の符号要素に対して1および−1がコード信号の値として対応付けられる。
【0004】
測位装置において受信された受信信号RXは乗算部12に入力される。乗算部12は受信信号RXにコード信号を乗じて相関制御部14に出力する。相関制御部14は、乗算部12が出力する信号の時間平均値が所定の大きさ以上となるよう、コード信号生成部16が出力するコード信号のタイミングを制御する。
【0005】
相関制御部14の制御によって乗算部12が出力する信号の時間平均値が最大となっている状態では、指定衛星から送信された拡散信号に対する源信号Orgを含む信号が乗算部12から出力される。相関制御部14は測位に必要な測位用信号Pを源信号Orgから抽出して出力する。
【0006】
【特許文献1】米国特許第6236354号明細書
【特許文献2】米国特許第6282231号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
測位装置が設けられる地点の上空には複数の測位衛星が存在する。複数の測位衛星にはそれぞれ互いに異なる拡散符号が割り当てられる。複数の測位衛星はそれぞれに割り当てられた拡散符号によって生成されたコード信号を乗ずる拡散処理を施した拡散信号を送信する。したがって、測位装置の受信信号RXは、それぞれ互いに異なる拡散符号によって拡散処理が施された複数の拡散信号が重畳された信号となる。逆拡散処理部10が行う処理によれば、重畳された複数の拡散信号のうち指定衛星から送信されたものに対する源信号Orgを取得することができ、源信号Orgから測位用信号Pを抽出することができる。
【0008】
このように、源信号Orgのみを取得することが可能となるのは、ある拡散符号による拡散処理が施された拡散信号と、それとは異なる拡散符号に基づいて生成されたコード信号との間の相関が小さく、源信号Orgの値に比してこれらの積の値が無視できる程度に小さいためである。
【0009】
ところが、指定衛星から送信された拡散信号の強度よりも、その他の測位衛星から送信された拡散信号の強度が著しく大きい場合、その他の測位衛星から送信された拡散信号とコード信号との積の値を無視することができない。このような場合、乗算部12から出力される源信号Orgが当該その他の測位衛星から送信された拡散信号とコード信号との積によって生成される信号から干渉を受け、測位装置の測位誤差を増大させる。
【0010】
本発明は、このような課題に対してなされたものであり、逆拡散処理を施した後の信号に含まれる干渉信号を低減することを可能にした受信装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る受信装置は、拡散符号による拡散処理が元の信号に対して施された拡散信号を含む信号を受信する受信部と、前記受信部が受信した信号に基づいて前記拡散符号を決定する拡散符号決定部と、前記拡散符号決定部によって決定された決定拡散符号による逆拡散処理を前記受信部が受信した信号に対して施して出力する逆拡散部と、前記逆拡散処理によって復元された前記元の信号の成分を低減する処理を前記逆拡散部が出力する信号に対して施して出力するフィルタと、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る受信装置においては、前記受信部が受信する信号は前記決定拡散符号とは異なる拡散符号によって拡散処理が施された信号を含むことが好適である。
【0013】
また、本発明に係る受信装置においては、前記決定拡散符号による拡散処理を前記フィルタが出力する信号に対して施して出力する拡散部を備える構成とすることが好適である。
【0014】
また、本発明に係る受信装置においては、前記受信部が受信する信号は測位衛星から送信される信号であり、前記拡散部が出力する信号に基づいて測位を行う測位部、を備える構成とすることが好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、逆拡散処理を施した後の信号に含まれる干渉信号を低減することを可能にした受信装置を実現することができる。また、本発明に係る受信装置を測位装置に適用する場合にあっては、測位誤差を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1に本発明の第1の実施形態に係る測位装置100の構成を示す。測位装置100は、アンテナ18、無線受信部20、不要信号低減部22−1〜22−n(nは測位に必要な情報を取得する測位衛星の数r以上の整数)、逆拡散処理部10−1〜10−n、表示部26、制御部28を備えて構成される。
【0017】
測位装置100が設けられる地点の上空には複数の測位衛星が存在する。測位衛星は、衛星指定番号、測位衛星に割り当てられた拡散符号の種類、測位衛星の軌道、信号送信時刻等の情報を含む源信号を生成する。複数の測位衛星は、それぞれに割り当てられた拡散符号によって拡散処理を源信号に施した拡散信号を無線信号で送信する。したがって、アンテナ18では、それぞれ互いに異なる拡散符号によって拡散処理が施された複数の拡散信号が重畳された無線信号が受信される。測位装置100は、無線信号として受信された複数の拡散信号のうち、r個(好ましくはrは3以上)の拡散信号を用いて測位計算を行う。
【0018】
アンテナ18から受信された無線信号は無線受信部20に入力される。無線受信部20は、無線信号を無線周波数帯域より低い周波数帯域を占有する信号に変換して増幅し、さらにディジタル信号に変換して受信信号RXとして不要信号低減部22−1〜22−nに出力する。
【0019】
逆拡散処理部10−iは(iは1〜nの整数)、1つの測位衛星が送信した源信号OrgDiを、不要信号低減部22−iが出力した信号から復元し、測位用信号Piを抽出して制御部28に出力する。以下、逆拡散処理部10−iが復元する源信号OrgDiを送信した測位衛星を、逆拡散処理部10−iの処理対象衛星という。不要信号低減部22−iは、逆拡散処理部10−iの処理対象衛星以外の1つの測位衛星から送信された源信号を受信信号RXから復元し、その値を低減する処理を実行する。以下、不要信号低減部22−iにおいて復元され値が低減される源信号を送信した測位衛星を低減衛星という。
【0020】
不要信号低減部22−1〜22−nは同一の構成を有し、同一の処理を実行する。図1では、不要信号低減部22−1についてのみ詳細な構成を記載し、不要信号低減部22−2〜22−nについての詳細な構成の記載を省略している。以下では、不要信号低減部22−1〜22−nのうちの1つである不要信号低減部22−iの構成およびそれが実行する処理について説明する。
【0021】
不要信号低減部22−iは、コード信号選択部30、乗算部32および34、フィルタ36を備えて構成される。コード信号選択部30は、制御部28の制御に基づいて、それぞれ逆拡散処理部10−1〜10−nから出力されたコード信号Rst1〜Rstnのうちコード信号Rstiを除く1つを選択し、コード信号RstUとして乗算部32および34に出力する。
【0022】
コード信号Rstiおよびコード信号RstUは、それぞれ処理対象衛星および低減衛星から送信された拡散信号から源信号を復元するためのコード信号であり、それぞれ処理対象衛星および低減衛星に割り当てられている拡散符号の符号要素を信号の値に対応付けたものである。
【0023】
受信信号RXは乗算部32に入力される。乗算部32は、受信信号RXにコード信号RstUを乗じてフィルタ36に出力する。フィルタ36には、所定のタップ係数が入力されることによって周波数特性が定まるタップ係数フィルタを適用することが好適である。
【0024】
一般に、ある拡散符号に基づいて生成されたコード信号を源信号に乗ずることで得られた拡散信号に、当該拡散符号に基づいて生成されたコード信号を所定のタイミングで乗ずると、当該源信号が復元される。コード信号RstUは低減衛星に割り当てられている拡散符号に基づいて生成された信号であるため、乗算部32からは、低減衛星から送信された拡散信号に対する源信号OrgUを含む信号が出力される。
【0025】
フィルタ36は、乗算部32が出力する信号に含まれる源信号OrgUの値を低減して乗算部34に出力する。図2は、拡散信号Sprが占有するの周波数帯域と源信号Orgが占有する周波数帯域との一般的な関係を、横軸を周波数とし縦軸を電力として示したものである。拡散信号Sprが占有する周波数帯域の中心周波数および源信号Orgが占有する周波数帯域の中心周波数は、当該拡散信号Sprを送信した測位衛星の測位装置100への接近速度が零であるときの周波数f0から、当該測位衛星の測位装置100への接近速度に基づいて定まるドップラシフト周波数fDだけずれた周波数f0+fDとなる。また、源信号Orgが占有する周波数帯域幅は、拡散信号Sprが占有する周波数帯域幅よりも狭い。
【0026】
そこで、フィルタ36の周波数特性は、周波数f0+fDを中心周波数とした帯域減衰特性とすることが好適である。帯域減衰特性の減衰周波数帯域幅は、源信号OrgUが占有する周波数帯域幅とすればよい。
【0027】
乗算部34は、フィルタ36が出力する信号にコード信号RstUを乗じて逆拡散処理部10−1〜10−nに出力する。
【0028】
不要信号低減部22−iでは、乗算部32で復元された源信号OrgUの値がフィルタ36によって低減される。フィルタ36から出力される信号には、低減衛星以外の測位衛星から送信された拡散信号にコード信号RstUが1回乗ぜられた信号が含まれる。不要信号低減部22−iからは、そのような信号にコード信号RstUをさらに乗じた信号が出力される。
【0029】
一般に、ある拡散符号に基づいて生成されたコード信号を源信号に乗ずることで得られた拡散信号に、当該拡散符号と異なる拡散符号に基づいて生成されたコード信号が2回にわたり乗ぜられても、当該拡散信号は影響を受けない。不要信号低減部22−iでは、受信信号RXにコード信号RstUが乗ぜられた信号が占有する周波数帯域の一部の成分がフィルタ36によって低減されるものの、低減される成分の周波数帯域幅は受信信号RXが占有する周波数帯域幅に比して著しく狭い。そのため、乗算部34からは、低減衛星から送信された拡散信号の成分が低減され、低減衛星以外の測位衛星から送信された拡散信号が重畳された信号と同等の信号が出力される。
【0030】
逆拡散処理部10−1〜10−nは同一の構成を有し、同一の処理を実行する。図1では、逆拡散処理部10−1についてのみ詳細な構成を記載し、逆拡散処理部10−2〜10−nについての詳細な構成の記載を省略している。逆拡散処理部10−1〜10−nは、乗算部12、相関制御部14、コード信号生成部16、ドップラシフト補償部24を備えて構成される。図6の逆拡散処理部10と同一の構成部については同一の符号を付してその説明を省略する。以下では、逆拡散処理部10−1〜10−nのうちの1つである逆拡散処理部10−iの構成およびそれが実行する処理について説明する。
【0031】
相関制御部14は、処理対象衛星を指定する衛星指定番号の情報を、制御部28が出力する制御信号Ciから取得し、コード信号生成部16に出力する。コード信号生成部16は、衛星指定番号によって指定される処理対象衛星に割り当てられた拡散符号に基づいてコード信号Rstiを生成し乗算部12および不要信号低減部22−iを除く不要信号低減部に出力する。また、相関制御部14は、乗算部12が出力する信号の周波数のドップラ効果によるずれを検出し、当該ずれを示すドップラシフト周波数の値をドップラシフト補償部24に出力する。
【0032】
ドップラシフト補償部24は、相関制御部14が出力するドップラシフト周波数の値に基づいて、不要信号低減部22−iから出力された信号に対してドップラシフト周波数を補償する処理を施し乗算部12に出力する。乗算部12は入力された信号にコード信号Rstiを乗じて相関制御部14に出力する。相関制御部14は、乗算部12が出力する信号の時間平均値が所定の大きさ以上となるよう、コード信号生成部16が出力するコード信号Rstiのタイミングを制御する。
【0033】
ドップラシフト補償部24が行う処理によって乗算部12が出力する信号に対するドップラシフト周波数が補償され、相関制御部14の制御によって乗算部12が出力する信号の時間平均値が最大となっている状態では、処理対象衛星から送信された拡散信号に対する源信号OrgDiを含む信号が乗算部12から出力される。相関制御部14は測位に必要な測位用信号Piを源信号OrgDiから抽出して制御部28に出力する。
【0034】
一般に、ある拡散符号に基づいて生成されたコード信号を源信号に乗ずることで得られた拡散信号に、当該拡散符号とは異なる拡散符号に基づいて生成されたコード信号を乗じた信号の時間平均値は零となる。したがって、処理対象衛星以外の測位衛星から送信された拡散信号に、処理対象衛星に割り当てられた拡散符号に基づいて生成されたコード信号Rstiを乗じたとしてもその時間平均値は零となるため、乗算部12が出力する信号の時間平均値は源信号OrgDiの時間平均値に等しくなる。相関制御部14は、乗算部12が出力する信号の時間平均値を源信号OrgDiの時間平均値Aiとして制御部28に出力する。
【0035】
制御部28は、測位用信号P1〜Pnのうち少なくともr個の測位用信号に基づいて測位計算を行い、測位装置100が設置されている位置の座標を算出する。制御部28は、算出された座標に関する情報を装置位置情報として表示部26に出力する。表示部26は、ディスプレイ装置等によって構成され装置位置情報を表示する。
【0036】
制御部28は、装置位置情報、現在時刻等を与えることによって、測位装置100の上空の見通し内に存在する見通し内衛星の衛星指定番号およびこれらの見通し内衛星が存在する位置の座標を取得する衛星推定手段(図示せず)を備える。制御部28は、衛星推定手段によって、見通し内衛星の衛星指定番号およびこれらの見通し内衛星が存在する位置の座標を所定の時間間隔で推定する。そして、装置位置情報と見通し内衛星が存在する位置の座標に基づいて、測位装置100が設置されている位置から見通し内衛星が存在する方向を見た仰角(以下、単に仰角という。)を算出する。
【0037】
なお、測位装置100の稼働を開始する場合、電磁波の伝搬状況が良好でない場合等、装置位置情報を取得することが不可能である場合に仮の装置位置情報を取得するため、上記衛星推定手段によって取得した装置位置情報を制御部28が備える記憶手段(図示せず)に随時記憶し、記憶された情報を必要に応じて読み出して利用する構成とすることが好適である。
【0038】
制御部28は、時間平均値が所定の第1の閾値以上である源信号が取得された見通し内衛星のうち、仰角が大きいものを優先的に測位計算に寄与させる制御を行う。時間平均値が第1の閾値以上である源信号が取得された見通し内衛星の数Mが測位に好適なr個に満たない場合には、時間平均値が所定の第2の閾値以上かつ第1の閾値未満である源信号が取得された見通し内衛星のうち、仰角の大きい順位における上位r−M個以上の見通し内衛星を、先のM個の見通し内衛星と共に測位計算に寄与させる制御を行う。ここで、第2の閾値は、第1の閾値より小さい測位計算を行うのに十分な値として予め決定しておくものとする。制御部28は、当該M個の見通し内衛星のうち時間平均値が最大である源信号が取得されたものを低減衛星とする制御を行う。具体的には、図3Aおよび3Bに示すフローチャートに従う処理を実行する。
【0039】
制御部28は、衛星推定手段によって見通し内衛星の衛星指定番号および見通し内衛星が存在する位置の座標を推定し、これと装置位置情報に基づいて見通し内衛星の仰角を算出する(S1)。
【0040】
制御部28は、すべての見通し内衛星のうち仰角が大きい順位における上位n個のものの衛星識別番号D1〜Dnの情報をそれぞれ含む制御信号C1〜Cnを、それぞれ逆拡散処理部10−1〜10−nに出力する(S2)。
【0041】
制御部28は、コード信号Rstiを除く任意のコード信号(例えば、Rsti+1またはRsti−1)を選択するよう不要信号低減部22−iのコード信号選択部30を制御する(S3)。
【0042】
制御部28は、ドップラシフト補償部24が行う処理によってドップラシフト周波数が補償され、相関制御部14の制御によって乗算部12が出力する信号の時間平均値が最大となった後、それぞれ逆拡散処理部10−1〜10−nから出力された時間平均値A1〜Anを読み込む(S4)。
【0043】
制御部28は時間平均値A1〜Anを第1の閾値と比較する(S5)。そして、時間平均値A1〜Anのうち第1の閾値以上のものがr個以上ある場合には、時間平均値が第1の閾値以上の源信号が取得された、少なくともr個の見通し内衛星から取得された測位用信号に基づいて測位計算を開始する(S13)。その後、制御部28が実行する処理は再びステップS1へと移行する。
【0044】
一方、時間平均値A1〜Anのうち第1の閾値以上のものがr個未満である場合には、制御部28は、すべての見通し内衛星のうち時間平均値が第1の閾値以上である源信号が取得されたものを除外した中から、仰角が大きい順位における上位m個の見通し内衛星を選択する(S6)。ここで、mは正の整数であり、時間平均値が第1の閾値以上である源信号が取得された見通し内衛星の数がM個である場合m=n−Mの関係がある。
【0045】
制御部28は、さらに、ステップS4で読み込まれた時間平均値A1〜Anのうち最大のものを出力した逆拡散処理部10−k(kは1〜nの整数)が出力するコード信号Rstkがコード信号RstUとして出力されるよう、不要信号低減部22−kを除く不要信号低減部のコード信号選択部30を制御する(S7)。また、制御部28は、コード信号Rstkを除く任意のコード信号(例えば、Rstk+1またはRstk−1)を選択するよう不要信号低減部22−kのコード信号選択部30を制御する(S8)。
【0046】
制御部28は、当該上位m個の見通し内衛星の衛星識別番号E1〜Emの情報をそれぞれ含む制御信号Cj(1)〜Cj(m)を、それぞれ第1の閾値未満である時間平均値を出力した逆拡散処理部10−j(1)〜10−j(m)に出力する。また、逆拡散処理部10−j(1)〜10−j(m)以外の逆拡散処理部には、ステップS2で出力した制御信号と同一の制御信号を出力する(S9)。ここで、j(1)〜j(m)は、第1の閾値未満である時間平均値を出力した逆拡散処理部を区別するための整数であり、それぞれ互いに異なる1〜nの整数である。
【0047】
制御部28は、ドップラシフト補償部24が行う処理によってドップラシフト周波数が補償され、相関制御部14の制御によって乗算部12が出力する信号の時間平均値が最大となった後、それぞれ逆拡散処理部10−j(1)〜10−j(m)から出力された時間平均値Aj(1)〜Aj(m)を読み込む(S10)。
【0048】
制御部28は時間平均値Aj(1)〜Aj(m)を予め定められた第2の閾値と比較する(S11)。そして、時間平均値Aj(1)〜Aj(m)のうち第2の閾値以上のものがr−M個以上ある場合には、時間平均値が第2の閾値以上の源信号が取得された、少なくともr個の見通し内衛星(時間平均値が第1の閾値以上である源信号が取得された見通し内衛星を含む)から取得された測位用信号に基づいて測位計算を開始する(S14)。その後、制御部28が実行する処理は再びステップS1へと移行する。
【0049】
一方、時間平均値Aj(1)〜Aj(m)が第2の閾値未満である場合には、制御部28は、表示部26に測位が不可能である旨の表示を行い(S12)、ステップS1の処理へと移行する。
【0050】
本実施形態に係る測位装置100は、時間平均値A1〜Anに第1の閾値以上のものと、第2の閾値以上かつ第1の閾値未満のものとが混在する場合には、ステップS7の処理において時間平均値が最大である源信号が取得された見通し内衛星を低減衛星とする。このような構成では、当該低減衛星を処理対象衛星としない逆拡散処理部10−iに前置される不要信号低減部22−iにおいて、低減衛星が送信する拡散信号から復元された源信号OrgUの値が低減される。これによって、逆拡散処理部10−iにおいて復元される源信号OrgDiが、低減衛星から送信された拡散信号による干渉を回避し、測位装置の測位誤差が増大するという問題を回避することができる。
【0051】
一般に、測位衛星の仰角が大きい程その測位衛星までの距離が短いため、仰角が大きい測位衛星程、源信号から取得することができる情報の信頼性が高くなる。本実施形態に係る測位装置100では、時間平均値が所定の第1の閾値以上である源信号が取得された見通し内衛星、および時間平均値が所定の第2の閾値以上かつ第1の閾値未満である源信号が取得された見通し内衛星のそれぞれについて、仰角が大きいものを優先的に測位計算に寄与させるため、測位精度を高めることができる。
【0052】
本実施形態に係る測位装置は、上方が遮られ壁面に窓等を備える建造物の内部での使用における測位精度の向上に対して効果的である。このような場合、上方に存在する測位衛星から送信された拡散信号は減衰を受けるため、測位衛星が存在する方向の仰角が大きい程、測位装置で受信される拡散信号の強度が小さいという傾向が強くなる。また、窓等の存在により、測位衛星が存在する方向の仰角が小さい程、測位装置で受信される拡散信号の強度が大きいという傾向が強くなる。この場合、複数の拡散信号の相互間における強度の差異が大きくなり、逆拡散処理部において復元される源信号が、当該逆拡散処理部の処理対象衛星とは異なる測位衛星から送信された拡散信号による干渉を受け易くなる。
【0053】
本実施形態に係る測位装置100によれば、測位装置100が建造物の内部に存在する場合において、複数の拡散信号の相互間における強度の差異が大きいことによる干渉の問題を回避することができる。
【0054】
また、測位装置100によれば、不要信号低減部22−iが出力する信号に対してドップラシフト周波数を補償する処理が施される。このため、コード信号生成部16が出力するコード信号Rstiに予め設定されている所定の周波数と、処理対象衛星から送信された拡散信号の周波数とのずれを補償することができる。これによって、コード信号Rst1〜Rstnのタイミングを高精度で制御することができるため、源信号OrgD1〜OrgDnを高い精度で復元し、高精度で測位を行うことができる。
【0055】
なお、測位装置100においては、不要信号低減部22−iの入出力のそれぞれに、当該入出力の間を短絡するバイパス経路BPを接続するスイッチS1およびS2を設けた構成とすることができる。図4にそのような構成を適用した不要信号低減部22S−iの構成を示す。
【0056】
この構成では、図3Aおよび3Bに示したフローチャートのステップS3またはS8の処理の代わりに、スイッチS1およびS2をバイパス経路BP側を選択するよう制御する処理を実行する。このような構成によれば、フィルタ36による処理を必ずしも施す必要がない逆拡散処理部10−iに、フィルタ処理が施されない信号が入力されるため、源信号OrgDiの復元の高精度化を図ることができる。
【0057】
また、逆拡散処理部10−iに複数の不要信号低減部を縦続に接続したものを前置する構成も可能である。例えば、2つの不要信号低減部を縦続接続する場合には、時間平均値が最大である源信号が取得された見通し内衛星を第1の低減衛星とし、時間平均値がその次に大きい源信号が取得された見通し内衛星を第2の低減衛星とする。時間平均値が最大である源信号を出力した逆拡散処理部が逆拡散処理部10−k1(k1は1〜nの整数)であり、時間平均値がその次に大きい源信号を出力した逆拡散処理部が逆拡散処理部10−k2(k2は1〜nの整数)であるとした場合、逆拡散処理部10−k1が出力するコード信号Rstk1および逆拡散処理部10−k2が出力するコード信号Rstk2が、それぞれ縦続接続された2つの不要信号低減部においてコード信号RstUとして選択されるようにすればよい。このような構成によれば、逆拡散処理部10−iにおいて復元される源信号が、当該逆拡散処理部10−iの処理対象衛星とは異なる複数の低減衛星から送信された拡散信号による干渉を回避することができる。
【0058】
図5に第2の実施形態に係る測位装置102の構成を示す。測位装置102は、測位装置100において、不要信号低減部22−1〜22−nを不要信号低減部22A−1〜22A−nへと置き換えたものである。
【0059】
不要信号低減部22A−1〜22A−nは不要信号低減部22−1〜22−nに対し、ドップラシフト選択部38およびタップ係数生成部40をさらに備える。不要信号低減部22A−1〜22A−nにはフィルタとしてタップ係数フィルタ42が適用される。図1の測位装置100と同一の構成部については同一の符号を付してその説明を省略する。以下では、不要信号低減部22A−iおよび逆拡散処理部10−iが実行する処理について説明する。
【0060】
逆拡散処理部10−iの相関制御部14は、乗算部12が出力する信号の周波数のドップラ効果によるずれを検出し、当該ずれを示すドップラシフト周波数の値をドップラシフト補償部24に出力する。ドップラシフト補償部24は、不要信号低減部22A−iから出力された信号に対しドップラシフト周波数を補償する処理を施し乗算部12に出力する。また、ドップラシフト補償部24は、ドップラシフト周波数の補償値fDiを不要信号低減部22A−iを除く不要信号低減部のドップラシフト選択部38に出力する。
【0061】
ドップラシフト選択部38は、制御部28の制御に基づいて、それぞれ逆拡散処理部10−1〜10−nから出力されたドップラシフト周波数の補償値fD1〜fDnのうちドップラシフト周波数の補償値fDiを除く1つを選択してタップ係数生成部40に出力する。
【0062】
タップ係数生成部40は、タップ係数フィルタ42の周波数特性を、源信号OrgUが占有する周波数帯域幅を減衰周波数帯域幅とし、ドップラシフト選択部38が選択したドップラシフト周波数の補償値fDだけ周波数f0からずれた周波数f0+fDを減衰周波数帯域の中心周波数とする帯域減衰特性とするためのタップ係数を算出する。そして、当該タップ係数をタップ係数フィルタ42に出力する。ここで、周波数f0とは、低減衛星の測位装置102への接近速度が零であるときの源信号OrgUの周波数をいう。タップ係数フィルタ42は、タップ係数に従う周波数特性を以て、乗算部32から出力された信号に対するフィルタ処理を行う。
【0063】
本実施形態に係る測位装置102では、制御部28は、図3AのフローチャートのステップS7において、さらに、逆拡散処理部10−kが出力するドップラシフト周波数の補償値fDkがタップ係数生成部40に出力されるよう、不要信号低減部22A−kを除く不要信号低減部のドップラシフト選択部38を制御する処理を実行する。
【0064】
フィルタの周波数特性を帯域減衰特性とした場合、その減衰周波数帯域幅が狭い程、源信号OrgDiを高精度で復元することができる。ところが、低減衛星から送信される拡散信号のドップラシフト周波数は当該低減衛星の位置によって異なる。そのため、周波数特性が固定されたフィルタを用いた場合、その減衰周波数帯域幅をドップラシフト周波数の変動を見込んだ広めの値とする必要が生じ、源信号OrgDiの復元の高精度化のために好ましくない。本実施形態に係る測位装置102によれば、タップ係数フィルタ42の周波数特性を、低減衛星から送信された拡散信号のドップラシフト周波数に基づいて適応的に変化させることができる。そのため、減衰周波数帯域幅を源信号OrgUが占有する周波数帯域幅の程度まで狭く設定することができる。
【0065】
なお、第1および第2の実施形態においては、すべての逆拡散処理部に不要信号低減部を前置した構成としている。しかし、すべての逆拡散処理部において低減衛星から送信された拡散信号による干渉の問題が生じるわけではないため、逆拡散処理部の数nより少ない不要信号低減部を設け、不要信号低減部を設ける必要のある逆拡散処理部にスイッチにより不要信号低減部を選択して前置する構成とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第1の実施形態に係る測位装置の構成を示す図である。
【図2】拡散信号が占有する周波数帯域と源信号が占有する周波数帯域との関係を示す図である。
【図3A】制御部が実行する処理のフローチャートである。
【図3B】制御部が実行する処理のフローチャートである。
【図4】バイパス経路を設けた不要信号低減部の構成を示す図である。
【図5】第2の実施形態に係る測位装置の構成を示す図である。
【図6】逆拡散処理部の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
10,10−1〜10−n 逆拡散処理部、12,30,32,34 乗算部、14 相関制御部、16 コード信号生成部、18 アンテナ、20 無線受信部、22−1〜22−n,22S−i,22A−1〜22A−n 不要信号低減部、24 ドップラシフト補償部、26 表示部、28 制御部、30 コード信号選択部、36 フィルタ、38 ドップラシフト選択部、40 タップ係数生成部、42 タップ係数フィルタ、100,102 測位装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡散符号による拡散処理が元の信号に対して施された拡散信号を含む信号を受信する受信部と、
前記受信部が受信した信号に基づいて前記拡散符号を決定する拡散符号決定部と、
前記拡散符号決定部によって決定された決定拡散符号による逆拡散処理を前記受信部が受信した信号に対して施して出力する逆拡散部と、
前記逆拡散処理によって復元された前記元の信号の成分を低減する処理を前記逆拡散部が出力する信号に対して施して出力するフィルタと、
を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の受信装置であって、
前記受信部が受信する信号は前記決定拡散符号とは異なる拡散符号によって拡散処理が施された信号を含むことを特徴とする受信装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の受信装置であって、
前記決定拡散符号による拡散処理を前記フィルタが出力する信号に対して施して出力する拡散部を備えることを特徴とする受信装置。
【請求項4】
請求項3に記載の受信装置であって、
前記受信部が受信する信号は測位衛星から送信される信号であり、
前記拡散部が出力する信号に基づいて測位を行う測位部、
を備えることを特徴とする受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−215100(P2007−215100A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35193(P2006−35193)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】