説明

受信装置

【課題】本発明の一実施例では、信号の受信状況に応じて電力消費を抑える受信装置を提供することができる。
【解決手段】上記課題を解決するため、変調されたシンボル信号を受信する受信装置は、該シンボル信号の開始位置を所定の同期捕捉処理時間で検出する同期捕捉部と、該同期補足部で検出された該シンボル信号を復調するとともに該シンボル信号の変調エラー率を算出する復調部と、該復調部により算出された該変調エラー率に応じて該同期捕捉処理時間を設定する制御部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号を受信する受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
信号の送受信方法の一つに時分割多重(Time Division Multiplexing:TDM)方式がある。TDM方式とは複数のチャネル信号をそれぞれ時分割し、時分割したチャネル信号を時間的にずらして配列し、配列した信号を一定の周波数帯で伝送する多重化の一方式である。TDM方式は携帯端末向け地上波デジタル放送規格であるDVB−H(Digital Video Broadcasting−Handheld)やMediaFLO(Media Forward Link Only)に利用されている。
【0003】
信号を受信する受信装置は送信装置から送信された複数のチャネルからなる時分割多重信号のうち1つのチャネルの信号を選択する。受信装置は選択していない他のチャネルの信号を受信している間その信号を処理する必要が無いが、受信信号を処理していなくても、電源が投入されたアイドリング状態において受信装置は電力を消費する。携帯端末に用いられる受信装置は、待ち受け時間を延ばすために消費電力を抑えることが求められる。受信装置での電力消費を抑えて待ち受け時間を延ばすため、待機状態では受信装置は電源オフの状態になる。そして選択したチャネルの次の時分割信号を受信する時間が来ると、受信装置は電源オンの状態となる。
【0004】
受信装置が電源オフの状態から次の時分割信号を受信するまでの間に、受信装置は受信信号を復調する復調部や受信信号の誤りを訂正する誤り訂正部などをセットアップしておく必要がある。復調部や誤り訂正部の起動のタイミングには放送規格などによりセットアップに必要な時間として推奨される固定値があり、受信装置はその固定値に応じて受信処理前に復調部や誤り訂正部の起動を開始する。
【0005】
信号の受信条件が変化する場合、受信装置に設定した固定値では長すぎる場合がある。例えば携帯端末が静止した状態で信号を受信する場合や、送信装置と受信装置との距離が近いために受信する信号の品質が高い場合、放送規格により推奨された固定値よりも短い時間で受信処理前の起動処理を終了できる場合がある。このような場合にまで一律に固定値で起動することは、携帯端末の消費電力を大きくする一因となる。以下の特許文献には時分割多重信号を受信する受信装置に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−229671号公報
【特許文献2】特願2005−516321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一実施例では、信号の受信状況に応じて電力消費を抑える受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、変調されたシンボル信号を受信する受信装置は、該シンボル信号の開始位置を所定の同期捕捉処理時間で検出する同期捕捉部と、該同期補足部で検出された該シンボル信号を復調するとともに該シンボル信号の変調エラー率を算出する復調部と、該復調部により算出された該変調エラー率に応じて該同期捕捉処理時間を設定する制御部とを有する。
【発明の効果】
【0009】
実施形態によれば、信号の受信状況に応じて電力消費を抑える受信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】受信装置のブロック図である。
【図2】MERの値から同期捕捉処理時間を算出するためのテーブルである。
【図3】受信装置の動作を表すフローチャート図である。
【図4】受信装置の起動タイミングを表すタイミングチャート図である。
【図5】受信装置のブロック図である。
【図6】BERの値から同期捕捉処理時間を算出するためのテーブルである。
【図7】受信装置の動作を表すフローチャート図である。
【図8】受信装置のブロック図である。
【図9】受信装置の動作を表すフローチャート図である。
【図10】受信装置のブロック図である。
【図11】処理時間算出部の詳細ブロック図である。
【図12】CNRの値からBER予測値を算出するためのテーブルである。
【図13】エラー量比率から補正量を算出するためのテーブルである。
【図14】処理時間算出部の動作フローチャート図である。
【図15】受信装置のブロック図である。
【図16】利得調整部の詳細ブロック図である。
【図17】移動速度から増幅度調整時間を算出するためのテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施の形態について説明する。なお、以下の実施例はプロセッサによるプログラムの処理でも実現可能である。また、各実施形態における構成の組み合わせも本発明の実施形態に含まれる。
【0012】
図1は本実施の形態に係る受信装置1の構成の一例を示すブロック図である。受信装置1は時分割された多重データのうち選択したデータを受信する場合に起動する。受信装置1は受信アンテナ5、増幅部10、同期捕捉部11、利得調整部12、復調部13、誤り訂正部15、アクセス制御部16、制御部2を有する。
【0013】
受信アンテナ5は受信した受信信号のうち選択したチャネル信号を増幅する。チャネル信号はデジタル情報を位相変化等によりGHz帯の変調波に重畳させた信号である。増幅部10は受信したチャネル信号の周波数をGHz帯からMHz帯に変換する。
【0014】
チャネル信号の信号強度は送信装置からの距離や受信装置1の受信環境の変化により変動する。チャネル信号の信号強度の時間的な変動を防ぎ安定した復調処理を行うため、増幅部10は同期捕捉部11へ出力する信号の信号強度が一定になるように周波数変換後のチャネル信号を増幅処理する。
【0015】
1つのチャネル信号は同一周期の複数のOFDMシンボル信号を有する。ここでOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)は複数の情報を同時に送るため、互いに干渉しない複数の異なる周波数を有する変調波を用いてデータを送信する方式である。OFDMシンボル信号は直交波周波数分割多重化されたシンボル信号である。OFDMシンボル信号はQAM(Quadrature Amplitude Modulation)変調方式等で変調されている。
【0016】
OFDMシンボル信号間にはガードインターバルと呼ばれる一定時間長の信号が挿入されている。ガードインターバルはその後に続くOFDMシンボル信号の最後の部分と同一の信号である。
【0017】
同期捕捉部11は増幅部10により増幅されたチャネル信号に対し、OFDMシンボル信号に含まれるガードインターバルに基づいてOFDMシンボル信号のシンボルタイミング同期捕捉処理を行う。同期捕捉部11はOFDMシンボル信号の先頭位置を検出する同期捕捉処理を一定時間実行する。同期捕捉部11による同期捕捉処理の詳細を以下に記載する。
【0018】
同期捕捉部11はあるOFDMシンボル信号とそのOFDMシンボル信号に対応するガードインターバルとの間で自己相関の算出処理を行う。同期捕捉部11はある一定区間の信号を信号Aとして選択する。また同期捕捉部11はその区間からOFDMシンボル信号の1周期分の時間遅れた時間から一定区間の信号を信号Bとして選択する。同期捕捉部11は信号Aと信号Bとの自己相関を計算する。
【0019】
自己相関を計算するため、同期捕捉部11は信号Aおよび信号Bをそれぞれ一定間隔でサンプリングする。同期捕捉部11はサンプリングした信号Aと信号Bの振幅同士を積算し、サンプリング範囲の積算値の総和を自己相関として算出する。OFDMシンボル信号は正または負に均等にばらつく白色雑音に近い。よってガードインターバルとOFDMシンボル信号の後半部分以外との積算値は正または負の値が混在したものとなるため、その総和である自己相関は小さくなる。一方信号Aがガードインターバルであり、信号Bがガードインターバルに対応するFDMシンボル信号の後半部分である場合、信号Aと信号Bとの積算は正の値同士または負の値同士となり積算結果は必ず正になる。よって積算値の総和である自己相関は大きくなる。同期捕捉部11は信号Aとしての選択区間を時間的に少しずつずらしながら横軸をずれ時間、縦軸を自己相関値とする移動平均特性を算出する。この結果ずれ時間に対してある1点に自己相関値のピークを有する移動平均特性を得ることが出来る。
【0020】
同期捕捉部11は自己相関値がピークを有する場合のずれ時間からOFDMシンボル信号の位相ずれ量を特定することが出来る。OFDMシンボル信号の位相ずれ量を特定することにより、同期捕捉部11はOFDMシンボル信号の先頭位置を検出し、同期捕捉処理をすることが出来る。OFDMシンボル信号を同期捕捉処理することにより、精度の高い復調処理を行うことが出来る。同期捕捉部11は同期捕捉処理後のOFDMシンボル信号を復調部13に送信する。
【0021】
信号の受信条件が良い場合、上述の通り同期捕捉部11は1つのOFDMシンボル信号を用いて正確に同期捕捉処理することが出来る。しかし、信号の受信条件が悪く、ノイズが受信信号に重畳している場合、ガードインターバルとガードインターバルに対応するOFDMシンボル信号の後半部分の波形形状が同一ではなくなるため、自己相関の算出値は小さくなる。この結果、時間方向に対する移動平均特性のピーク値が検出できないほど小さくなる。ピーク値の検出精度を上げるにはピーク値のSN比を上げればよい。上述の処理を複数のOFDMシンボル信号に対して行うことにより、ピーク値のSN比を上げることが出来る。
【0022】
OFDMシンボル信号に対する自己相関の算出処理回数が増えるほど、同期捕捉部11での同期捕捉処理に必要な時間は長くなる。よって信号の受信条件が悪化すると、それに応じて同期捕捉部11の処理時間を長く確保する必要が生じる。
【0023】
利得調整部12は同期捕捉部11に入力されるチャネル信号の電圧振幅に基づいて、増幅部10から出力されるチャネル信号の電圧振幅が一定になるように増幅部10の電圧増幅利得を調整する。同期捕捉部11は利得調整部12に電圧振幅値の情報を出力する。受信装置1の移動等により受信信号の電圧振幅の変動が大きい場合、同期捕捉部11に入力されるチャネル信号の強度を一定に保つための増幅処理時間が必要になる。また、急激な利得調整により増幅部10が発振するのを防ぐため、利得調整部12は一定の時定数で増幅部10の利得を変化させる。よって信号の受信条件の変化が大きい場合には、それに応じて利得調整部12および増幅部10の処理時間を長く確保する必要が生じる。
【0024】
復調部13は同期捕捉部により同期補正されたチャネル信号を復調する。復調部13はMER算出部14を有する。MER算出部14は受信信号の復調時において変調エラー率(Modulation Error Ratio:MER)の平均値であるMER20を算出し、処理時間算出部17へ送信する。MERとはOFDMシンボル信号を復調して得られたデータのコンスタレーションと送信側の理想的なコンスタレーションとの間のずれ量の平均値であり、受信データのばらつきの大きさを表す。コンスタレーションとは復調データの同相成分をX軸、直行成分をY軸としてX−Y座標上に各周波数成分の信号をプロットしたものをいう。MERの算出についての詳細は後述する。ばらつきが大きいことは信号の受信条件が悪いことを意味する。受信条件が悪くなると、前述の通り同期捕捉するのに要する時間が長くなる。この結果同期捕捉部11における受信信号の処理時間は長くなる。
【0025】
制御部2はMER算出部14の算出したMER20に応じて同期捕捉部11による同期捕捉処理を実行する時間を設定する。制御部2は起動制御部18、処理時間算出部17を有する。処理時間算出部17はテーブル50を有する。処理時間算出部17は受信したMER20に基づいてテーブル50を参照し、同期捕捉部11がチャネル信号を処理するのに最適な同期捕捉処理時間26を算出する。処理時間算出部17は算出した同期捕捉処理時間26を起動制御部18に送信する。
【0026】
アクセス制御部16はデジタル信号を処理する図示しない処理装置へエラー訂正処理後のデジタル信号を送信する。アクセス制御部16はまた、処理中のチャネル信号から次のチャネル信号の受信予定時間である受信時間情報19を読み取り、起動制御部18に送信する。
【0027】
起動制御部18は受信した受信時間情報19および同期捕捉処理時間26に基づいて増幅部10、同期捕捉部11、利得調整部12、復調部13、誤り訂正部15に起動制御信号21、22、23、24、25を送信する。起動制御信号を送信するタイミングは起動制御部18が受信した同期捕捉処理時間26によって異なる。同期捕捉部11の起動開始時間をMER20に基づいて変化させることにより同期捕捉部11の起動開始時間を最適化することが出来る。
【0028】
図2はMER20の値から同期捕捉処理時間26を算出するためのテーブル50である。列55は処理時間算出部17に入力されたMER20の値をキャリアノイズ率(Carrier Noise Rasio:CNR)に変換した値である。変調方式が決まるとMERとCNRとは1対1の対応関係を有する。MERとCNRとの変換率はあらかじめ算出され、処理時間算出部17に記憶されている。処理時間算出部17は入力されたMER20の値をCNRに変換する。ここでCNRは信号の搬送波の電力とノイズの電力との比であり、CNRが大きいほど信号品質は良い。
【0029】
信号を正確に受信するために必要な所要CNRの値は信号の規格および信号の復号方法により一意的に決まる。例えばビタビ復号およびリード・ソロモン復号で構成されているDVB−H規格での所要CNRは、16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)で約14dBである。ここで16QAMとはデジタル変調方式の一つであり、位相と振幅をそれぞれ4種類ずつ利用し、それらの組み合わせによりデータを送受信するものである。ノイズ量が非常に多い場合として所要CNRに0.5dBを足した値である14.5dBを設定し、0.5dB刻みでCNRの判定値を大きくしていく。
【0030】
列56は変換したCNRに対応する同期捕捉処理時間である。同期捕捉処理時間の最大値はそれぞれの通信規格のガイドラインで定められている。行52において、CNRが14.5dBよりも小さい場合、同期捕捉処理時間は50msとなっている。ここで50msはDVB−H規格の実装ガイドラインに定められている同期捕捉部11の同期捕捉処理時間の最大値である。また行54においてCNRが15dB以上の場合、ノイズ量は非常に小さいと判定し、DVB−H規格の2OFDMシンボル長時間である2msを設定する。さらに行53においてCNRが14.5dB以上でありかつ15dBよりも小さい場合、同期捕捉処理時間には最大値50msと最小値2msとの中間値である25msを設定する。
【0031】
以上、MER20の値に基づいて同期捕捉処理時間を設定することにより同期捕捉部11の起動開始時間を最適化することが出来る。起動開始時間の最適化により、同期捕捉処理時間を受信条件によっては規格で定められた50msから最小値の2msまで短縮することが出来る。同期捕捉処理時間を短縮することにより増幅部10、利得調整部12、および同期捕捉部11の起動開始時間を遅らせ、増幅処理、利得調整処理、および同期捕捉処理により発生する電力消費を抑えることが出来る。
【0032】
なお、本実施例ではMERから変換したCNRを指標として同期捕捉処理時間を設定したが、MERをそのまま用いても良いし、他の指標を用いて同期捕捉処理時間を設定しても良い。
【0033】
図3は受信装置1の動作を表すフローチャート図である。起動制御部18は受信装置1の増幅部10、同期捕捉部11、利得調整部12、復調部13、誤り訂正部15の動作をオン状態にする(S10)。受信アンテナ5はチャネル信号を受信する(S11)。増幅部10は受信アンテナ5が受信したチャネル信号の周波数帯をMHz帯に変換すると共に、所定の振幅に増幅する(S12)。同期捕捉部11は増幅されたチャネル信号を同期捕捉処理する(S13)。復調部13は同期捕捉処理後のチャネル信号を復調処理する(S14)。復調部13は復調したチャネル信号の各周波数成分についてコンスタレーションを取得する(S15)。図1の復調部13はMER算出部14を有する。MER算出部14は取得した各周波数成分のコンスタレーションとその理想値とのX−Y座標上の差分を計算する(S16)。伝送品質が良いほど各周波数成分のコンスタレーションは理想値に近づくので、MERを評価することで伝送品質を評価することが出来る。
【0034】
MER算出部14は取得した各周波数成分のコンスタレーションとその理想値とのX−Y座標上の差分値の累積値を算出する(S17)。MER算出部14は算出した累積値の平均値を算出する(S18)。この算出した累積値の平均値に基づいて算出される受信信号のエラー発生率をMER20とする。
【0035】
起動制御部18がオフ制御しない場合(S19、NO)、受信装置1はステップS10からの処理を繰り返す。起動制御部18がオフ制御する場合(S19、YES)、起動制御部18は増幅部10、同期捕捉部11、利得調整部12、復調部13、誤り訂正部15の動作をオフ状態にする(S20)。
【0036】
アクセス制御部16は選択したチャンネルの時分割信号がいつ受信されるのかを示す受信時間情報19を現在受信している信号から取得する(S21)。処理時間算出部17はMERの平均値であるMER20をMER算出部14から取得する(S22)。処理時間算出部17は取得したMER20に対応する同期捕捉処理時間26をテーブル50から参照し決定する(S23)。起動制御部18はアクセス制御部16から送信された受信時間情報19と処理時間算出部17から送信された同期捕捉処理時間26に基づいて、同期捕捉部11の起動タイミングである受信開始時間を算出し設定する(S24)。起動制御部18はタイマ等によりオフ制御後の経過時間を計測開始する(S25)。計測した経過時間が起動制御部18に設定した受信開始時間よりも小さい場合(S26、NO)、起動制御部18は経過時間を計測し続ける。計測した経過時間が受信開始時間以上になると(S26、YES)、起動制御部18は増幅部10、同期捕捉部11、利得調整部12、復調部13、誤り訂正部15の動作をオン状態にし(S10)、再びステップS11からの処理を実行する。
【0037】
以上のステップを実行し、MER20の値に基づいて同期捕捉処理時間を設定することにより同期捕捉部11の起動開始時間を最適化し、消費電力を抑えることが出来る。
【0038】
図4は次の信号を受信するまでの受信装置の起動タイミングを表すタイミングチャートである。受信装置1のそれぞれの構成要素は、増幅部10、利得調整部12、同期捕捉部11、復調部13、誤り訂正部15の順にオンする。増幅部10がオンしてから信号増幅処理が完了するまでの時間を信号増幅処理時間60とする。利得調整部12がオンしてから利得調整処理が完了するまでの時間を利得調整処理時間61とする。復調部13がオンしてから復調処理が完了するまでの時間を復調処理時間63とする。誤り訂正部15がオンしてから誤り訂正処理が完了するまでの時間を誤り訂正処理時間64とする。
【0039】
本実施形態において、同期捕捉処理時間26の値が復調部13のMER算出部14から出力されるMER20の値によって最適化される。同期捕捉処理時間26を最適化することにより信号の受信開始前の受信装置1の起動時間を最適化し、電力消費を抑えることができる。
【0040】
図5は他の実施形態に係る受信装置1aのブロック図である。受信装置1aは受信アンテナ5、増幅部10、同期捕捉部11、利得調整部12、復調部13、誤り訂正部15、アクセス制御部16、制御部2aを有する。受信装置1と同一部材には同一番号を付し、その説明を省略する。
【0041】
復調後のOFDMシンボル信号はエラーを検出するためのCRC(Cyclic Redundancy Check)データ、およびエラーを訂正するためのECC(Error Correcting Code)データを有する。CRCとはデータをブロック単位で特定の数式で割って、それが割り切れるように冗長ビットであるCRCデータを付加し、検査のときには、特定の数式で割ってチェックする検査方式である。誤り訂正部15はCRCにより、ブロック単位でビットエラーが発生したかどうかを検出することが出来る。ECCとはデータにビットごとのエラーを訂正するためのECCデータを付加し、ビットエラーが検出された場合にそのビットエラーを訂正するエラー訂正処理である。エラー訂正の方法には畳み込み符号、リード・ソロモン符号、ターボ符号などがある。誤り訂正部15はECCにより、ビット単位でエラー検出およびエラー訂正することが出来る。
【0042】
誤り訂正部15は検出したビットエラーの数をカウントするためのエラーカウンタ71を有する。CRCまたはECCによりエラーが検出された場合、エラーカウンタ71は復調部13により復調されたOFDMシンボル信号に含まれる一定ビット数または一定パケット数当りのエラーの数をカウントする。一定ビット数または一定パケット数などの一定データ長当りのエラー発生数をカウント後、誤り訂正部15はエラーカウンタ71によりカウントしたエラーの数を一定データ長であるビット数またはパケット数で割ることにより、ビットエラー率(Bit Error Ratio:BER)やパケットエラー率(Packet Error Ratio:PER)等のエラー率を算出する。ここで、BERとはOFDMシンボル信号の全ビット数に対するエラービット数の比であり、PERとはOFDMシンボル信号の全パケット数に対するエラーパケット数の比である。また、復調処理により発生するビットエラー数に基づいて算出されるエラー率を復調エラー率と呼ぶ。
【0043】
BERやPERの値は受信装置1aの受信条件により前述のMERと同様に変化する。MERの値はOFDMシンボル信号における変調波の位相及び振幅が理想値からずれるほど大きくなるが、このずれ量が大きくなるほど正しく復調できなくなる可能性が高くなる。正しく復調できないということはエラー率であるBERやPERが大きくなることを意味する。つまり、MERが大きくなると、BERやPERも同様に大きくなる。よってBERやPERが大きくなるほどOFDMシンボル信号における変調波の位相及び振幅が理想値からずれているといえる。
【0044】
OFDMシンボル信号における変調波の位相及び振幅が理想値からずれている場合、前述の通り同期捕捉処理におけるガードインターバルとOFDMシンボル信号の後半部分との自己相関は小さくなる。よってMERを用いて同期捕捉部11の同期捕捉処理時間26を最適化したのと同様の手法により、BERやPERを用いて同期捕捉部11の同期捕捉処理時間26を最適化することが出来る。
BERやPERの算出は、誤り訂正部15の外部に設けられた演算装置により行っても良い。誤り訂正部15は算出したBER、PER等のエラー率情報70を制御部2aに送信する。
【0045】
制御部2aは処理時間算出部17a、起動制御部18を有する。処理時間算出部17aは受信したエラー率情報70から同期捕捉部11の同期捕捉処理時間26を算出し起動制御部18に送信する。同期捕捉処理時間26の算出方法の詳細は後述する。
【0046】
起動制御部18は受信した受信時間情報19および同期捕捉処理時間26に基づいて増幅部10、同期捕捉部11、利得調整部12、復調部13、誤り訂正部15に起動制御信号を送信する。起動制御信号を送信するタイミングは受信した同期捕捉処理時間26によって異なる。同期捕捉部11の起動開始時間をエラー率情報70に基づいて変化させることにより同期捕捉部11の起動開始時間を最適化し、受信装置1aの電力消費を最適化することが出来る。
【0047】
図6はBERの値から同期捕捉処理時間26を算出するためのテーブル80である。テーブル80は処理時間算出部17aに記憶されている。列85は入力されたBERの値である。誤り訂正部15によりエラー訂正される前の受信信号の評価値は、誤り訂正部15に採用されているエラー訂正方式の訂正能力によって決まる。例えばDVB−H規格においては、誤り訂正部15はビタビ復号法とリード・ソロモン復号法との連結で信号を復号する。ビタビ復号後のBERが2×10E―4より小さければ、リード・ソロモン復号後の信号はエラーなしと判断する。誤り訂正部15はビタビ復号後の信号のエラー量をエラーカウンタ71でカウントし、算出したBER70を出力する構成とする。
【0048】
テーブル80において、行82の通り2×10E−4から0.5×10E−4を引いた1.5×10E−4をノイズ量が非常に多い場合の判定値とする。判定値は1.0×10E−4刻みで小さくなるように設定する。
【0049】
列86は列85のBERの値に対応する同期捕捉処理時間である。同期捕捉処理時間の最大値は規格ごとにガイドラインで定められている。行82において、BERが1.5×10E−4よりも大きい場合、同期捕捉処理時間は50msとなっている。ここで50msはDVB−H規格の実装ガイドラインに定められている同期捕捉部11の同期捕捉処理時間の最大値である。また行84においてBERが0.5×10E−4以下の場合、ノイズ量は非常に小さいと判定し、DVB−H規格の2OFDMシンボル長時間である2msを設定する。さらに行83においてBERが0.5×10E−4よりも大きくかつ1.5×10E−4以下の場合、同期捕捉処理時間には最大値50msと最小値2msとの中間値25msを設定する。
【0050】
以上BERの値に基づいて同期捕捉処理時間を設定することにより、同期捕捉部11の起動開始時間を最適化することが出来る。
【0051】
図7は受信装置1aの動作を表すフローチャート図である。ステップS30からステップS34までの処理はステップS10からステップS14までの処理と同じなので、その説明を省略する。
【0052】
誤り訂正部15は受信した誤り訂正前のデータを誤り訂正部15に設けたメモリ等に保持する(S35)。誤り訂正部15は保持したデータに対しエラー訂正処理を実行する(S36)。誤り訂正部15に設けられたエラーカウンタ71はエラー訂正前のデータとエラー訂正後のデータとの差分を取得する(S37)。エラーカウンタ71は差分値の累積値を算出する(S38)。誤り訂正部15は算出した累積値に基づいてBER、PER等のエラー率情報70を算出する(S39)。
【0053】
起動制御部18がオフ制御しない場合(S40、NO)、受信装置1aはステップS30からの処理を繰り返す。起動制御部18がオフ制御する場合(S40、YES)、起動制御部18は増幅部10、同期捕捉部11、利得調整部12、復調部13、誤り訂正部15の動作をオフ状態にする(S41)。
【0054】
アクセス制御部16は選択したチャンネルの時分割信号がいつ受信されるのかを示す受信時間情報19を現在受信している信号から取得する(S42)。処理時間算出部17aはエラー率情報70を誤り訂正部15から取得する(S43)。処理時間算出部17aは取得したエラー率情報70に対応する同期捕捉処理時間26をテーブル80から参照し決定する(S44)。起動制御部18はアクセス制御部16から送信された受信時間情報19と処理時間算出部17aから送信された同期捕捉処理時間26に基づいて、同期捕捉部11の起動タイミングである受信開始時間を算出し設定する(S45)。起動制御部18はタイマ等によりオフ制御後の経過時間を計測開始する(S46)。計測した経過時間が起動制御部18に設定した受信開始時間よりも小さい場合(S47、NO)、起動制御部18は経過時間を計測し続ける。計測した経過時間が受信開始時間以上になると(S47、YES)、起動制御部18は増幅部10、同期捕捉部11、利得調整部12、復調部13、誤り訂正部15の動作をオン状態にし(S30)、再びステップS31からの処理を実行する。
【0055】
以上のステップを実行し、BERの値に基づいて同期捕捉処理時間を設定することにより、同期捕捉部11の起動開始時間を最適化することが出来る。
【0056】
図8は他の実施の形態に係る受信装置1bのブロック図である。受信装置1bは受信アンテナ5、増幅部10、同期捕捉部11、利得調整部12、復調部13、誤り訂正部15、アクセス制御部16、制御部2bを有する。受信装置1と同一部材には同一番号を付し、その説明を省略する。
【0057】
アクセス制御部16はエラーカウンタ91を有する。エラーカウンタ91は受信信号のうち誤り訂正部15で誤り訂正できなかったビット単位またはパケット単位のエラーの数をカウントする。アクセス制御部16はエラーカウンタ91によりカウントしたエラーの数に基づいてビットエラー率(Bit Error Ratio:BER)やパケットエラー率(Packet Error Ratio:PER)を算出する。BERはデータにおける所定のビット数当りのエラー率を表す。PERはデータにおける所定のパケット量当りのエラー率を表す。アクセス制御部16は算出したBER、PER等のエラー率情報90を処理時間算出部17aに送信する。
【0058】
制御部2bは処理時間算出部17b、起動制御部18を有する。処理時間算出部17bはテーブル80aを有する。処理時間算出部17bは受信したエラー率情報90に基づいてテーブル80aを参照し、同期捕捉部11の同期捕捉処理時間26を算出し、起動制御部18に送信する。
【0059】
テーブル80aはテーブル80と同様にBERの範囲とその範囲に対応する同期捕捉処理時間情報とを有する。受信信号のエラーはエラー訂正部15によりエラー訂正されるため、基本的にアクセス制御部16に入力される受信信号のBERは誤り訂正部15に入力される受信信号のBERに比べて非常に小さな値となる。よって、テーブル80aにおいてBERの大きさを判定する判定基準値も、テーブル80におけるBERの判定基準値よりも小さくなる。
【0060】
例えばDVB−H規格において、誤り訂正部15により誤り訂正された信号のBERが1.0×10E−10以下であれば、エラーは無いと判定する。そこで、テーブル80aはテーブル80の列85を以下の通り書き換える。まず行82においてBERが1×10E−10から0.25×10E−11を引いた9.75×10E−11より大きい場合に、同期捕捉処理時間が50msとなるように書き換える。判定値は0.25×10E−11刻みで小さくなるように設定する。また行84においてBERが9.5×10E−11以下の場合、同期捕捉処理時間が2msとなるように書き換える。さらに行83においてBERが9.5×10E−11以上でありかつ9.75×10E−11よりも小さい場合、同期捕捉処理時間が最大値50msと最小値2msとの中間値25msとなるように書き換える。
【0061】
起動制御部18は受信した受信時間情報19および同期捕捉処理時間26に基づいて増幅部10、同期捕捉部11、利得調整部12、復調部13、誤り訂正部15に起動制御信号を送信する。起動制御信号を送信するタイミングは受信した同期捕捉処理時間26によって異なる。同期捕捉部11の起動開始時間をエラー率情報90に基づいて変化させることにより同期捕捉部11の起動開始時間を最適化し、受信装置1bの電力消費を最適化することが出来る。
【0062】
図9は受信装置1bの動作を表すフローチャート図である。ステップS50からステップS54までの処理はステップS10からステップS14までの処理と同じなので、その説明を省略する。
【0063】
誤り訂正部15は復調されたデータのエラー訂正処理を実行する(S55)。アクセス制御部16はアクセス制御部16によるエラー訂正前のデータをアクセス制御部16に設けたメモリ等に保持する(S56)。アクセス制御部16はエラー訂正処理を実行する(S57)。アクセス制御部16に設けられたエラーカウンタ91はエラー訂正前のデータとエラー訂正後のデータとの差分を取得する(S58)。エラーカウンタ91は差分値の累積値を算出する(S59)。アクセス制御部16は算出した累積値に基づいてBER、PER等のエラー率情報90を算出する(S60)。
【0064】
起動制御部18がオフ制御しない場合(S61、NO)、受信装置1bはステップS50からの処理を繰り返す。起動制御部18がオフ制御する場合(S61、YES)、起動制御部18は増幅部10、同期捕捉部11、利得調整部12、復調部13、誤り訂正部15の動作をオフ状態にする(S62)。ステップS63からステップS68までの処理はステップS41からステップS47までの処理と同じなので、その説明を省略する。
【0065】
以上のステップを実行し、同期捕捉部11の起動開始時間をエラー率情報90に基づいて変化させることにより同期捕捉部11の起動開始時間を最適化し、受信装置1bの電力消費を最適化することが出来る。
【0066】
図10は他の実施の形態に係る受信装置1cのブロック図である。受信装置1cは受信アンテナ5、増幅部10、同期捕捉部11、利得調整部12、復調部13、誤り訂正部15、アクセス制御部16、制御部2cを有する。復調部13はMER算出部14を有し、MER20を算出し出力する。誤り訂正部15はエラーカウンタ71を有し、エラー率情報の一つであるBER70を算出し出力する。受信装置1cにおいて、受信装置1と同一部材には同一番号を付し、その説明を省略する。
【0067】
受信した信号にエラーが発生する原因として、受信装置の受信環境に依存するガウシアンノイズや、受信装置の移動により発生するフェージングがある。ガウシアンノイズとは、宇宙からの電磁放射や電波を散乱させる大気中の水分のような要因や、都市生活における電気製品のスイッチングにより発せられるさまざまな人工雑音を平均化したものを表す。フェージングとは、放送局から発せられた電波が建物や山などで反射し、受信装置はそれら反射による経路長の異なる複数の電波を受信する時、経路長の異なる受信波の間の干渉により受信レベルが変化する現象の事であり、受信装置が移動するときには反射波の経路長の時間変化が生じるため、干渉による受信レベルの変化も時間変化を伴う。従って、ガウシアンノイズは時間経過に対する変化量が小さく、フェージングは時間経過に対する変化量が大きいという特徴がある。本実施例において制御部2cは、MER算出部14から出力されたMER20に基づいてエラーカウンタ71により算出されるBERの値を予測し、予測値と実測値との比較結果に基づいて同期捕捉処理時間26を補正する。これにより受信装置1cは受信信号に時間的な変化の大きいノイズが発生した場合であっても、ノイズ量に応じた最適な受信装置の起動開始時間を設定することが出来る。MERおよびBERの値から受信装置の移動状態を予測する方法の詳細は後述する。
【0068】
制御部2cは復調部13の算出した特定のデータ長当りのエラー率と誤り訂正部15の算出した特定のデータ長当りのエラー率に応じて同期捕捉部11の起動タイミングを制御する。制御部2cは処理時間算出部17c、起動制御部18を有する。処理時間算出部17cは復調部13から出力されたMER20を受信する。また処理時間算出部17cは誤り訂正部15から出力されたBER70を受信する。処理時間算出部17cは受信したMER20に基づいてBERの予測値を算出する。処理時間算出部17cは算出したBERの予測値と、受信したBER70の値とを比較する。処理時間算出部17cは比較結果に応じてMER20から算出されるCNR値を補正する。処理時間算出部17cは補正されたCNR値とテーブル50に基づいて同期捕捉処理時間26を算出し、起動制御部18に送信する。
【0069】
以上の動作により受信信号に時間的な変化の大きいノイズが発生した場合であっても、ノイズ量に応じた最適な受信装置の起動開始時間を設定することが出来る。
【0070】
図11は処理時間算出部17cのブロック図である。処理時間算出部17cはエラー量予測部100、エラー量比較部101、エラー量補正部102、処理時間変換部103を有する。エラー量予測部100はテーブル104を有する。エラー量予測部100はテーブル104を参照し、MER算出部14から送信されたMER20の値をBERの予測値に変換しエラー量比較部101にBER予測値106を出力する。BERの予測は受信信号のノイズがガウシアンノイズであることを前提に行われる。MER20の値からBERの予測値に変換する方法の詳細は後述する。
【0071】
エラー量比較部101はBER予測値106および誤り訂正部15から送信されるBER70を入力とする。エラー量比較部101はBER70をBER予測値106で割った結果をエラー量比率107としてエラー量補正部102に送信する。前述の通りBER予測値106の算出は、受信信号のノイズがガウシアンノイズであることを前提に行われる。受信信号のノイズがガウシアンノイズのみである場合、BER70とBER予測値106の値はほぼ等しくなる。一方、受信信号にガウシアンノイズ以外のノイズであるフェージング等がさらに重畳している場合、BER70はBER予測値106よりも大きくなる。この結果、エラー量比率107の値は大きくなる。よってエラー量比率107に応じてCNR値を補正することにより、同期捕捉処理時間26をより正確に最適化することが出来る。
【0072】
エラー量補正部102はエラー量比率107を入力とする。エラー量補正部102はテーブル105を有する。エラー量補正部102はエラー量比率107に基づいてテーブル105を参照し、MER20から算出されるCNR値の補正量を決定する。エラー量補正部102は決定した補正量108を処理時間変換部103へ送信する。エラー量比率107が大きいほどCNR値をより小さくするように補正量108は設定される。エラー量比率107からCNRの補正値108を設定する方法の詳細は後述する。
【0073】
処理時間変換部103は補正量108およびMER20を入力とする。処理時間変換部103はテーブル50を有する。処理時間変換部103は入力されたMER20からCNR値を算出すると共に、補正量108に基づいて算出したCNR値を補正する。処理時間変換部103は補正したCNR値に基づいてテーブル50を参照し、同期捕捉処理時間26を決定する。同期捕捉処理時間26はCNR値が小さいほど大きくなる。よってCNR値をBER予測値に応じて補正し、その補正値によって同期捕捉処理時間26を決定することにより、受信信号のノイズの種類に応じた同期捕捉処理時間を設定することが出来る。
【0074】
処理時間変換部103はMER20の代わりにエラー量予測部100においてテーブル104を参照するためにMER20から算出されるCNR値を入力としても良い。これによりテーブル50の参照のためのMER20からCNR値の計算処理を省略し、処理を高速化することが出来る。
【0075】
以上の動作により受信信号に時間的な変化の大きいノイズが発生した場合であっても、MER20から算出するCNR値を適切に補正することにより、ノイズ量に応じた最適な受信装置の起動開始時間を設定することが出来る。
【0076】
図12はMER20から算出したCNRの値からBER予測値を参照するためのテーブル104である。テーブル104はエラー量予測部100に記憶されている。列117はMER20から算出したCNRの値である。MER20とCNRとの変換率はあらかじめ算出され、エラー量予測部100に記憶されている。列118は算出したCNR値に基づいて予測される、誤り訂正部15から出力されるBERの値である。またBER予測値は受信信号をガウシアンノイズ環境下で受信していることを前提に予測する。なお、本実施例においてMERをCNRに変換しているのは、DVB−H等の通信規格においてノイズ量がCNRで規定されており、規格との対応付けが容易になるためであり、CNRを算出せずにMERとBERを直接対応させても良い。
【0077】
行110から行116は算出したCNR値に対応するBER予測値をそれぞれ示している。DVB−H規格において要求される16QAMでのCNRの値は13.9dBであるため、行112においてCNR=13.9dBに対応するBER予測値を2.0×10E−4とし、その前後の値を行110から行116の通り定義している。
【0078】
エラー量予測部100は以上の通り定義されたテーブル104を参照することにより、入力されたMER20に基づいてBER予測値106を出力することが出来る。例えばMER20から算出したCNRが13dBの場合、エラー量予測部100の出力するBER予測値は、テーブル104の行110より3.0×10E−4となる。なお本実施例では変調方式が16QAMであるとして説明しているが、複数の変調方式に対応した複数のテーブルを用意し、受信信号の変調方式に応じてテーブルを切り替えても良い。
【0079】
図13はエラー量補正部102の有するテーブル105である。列130のエラー量比率Rは誤り訂正部から出力されるBER70をエラー量予測部100から出力されるBER予測値106で除算した値である。エラー量比率Rが大きいほど実際のエラー量は大きいということになる。つまり、ガウシアンノイズ以外の影響によりOFDMシンボル信号にエラーの原因となるノイズが重畳していると推測できる。エラー量比率Rはエラー量比較部101により算出され、エラー量比率107として出力される。
【0080】
列131はMER20から算出されるCNRの値を補正する補正量である。エラー量比率Rが大きいほどCNR値がより小さくなるように補正量を設定する。列130のエラー量比率Rのステップおよび列131の補正量は各規格における受信装置の回路構成やLSIの設計条件等により異なる値となる。
【0081】
本実施例では行120に示す通り、エラー量比率Rが1.5よりも小さい場合にはBER予測値と実測値が同等であるとして補正値を0とする。また行120から行129に示す通り、エラー量比率Rが1.5から1増えるごとに補正量の絶対値を0.1ずつ増やすようにする。エラー量補正部102はテーブル105を参照することにより、エラー量比率Rが大きいほどCNR値を小さくするように補正量108を出力する。これにより処理時間変換部103はエラー量補正部に入力されるエラー量比率107が大きいほど出力する同期捕捉処理時間を長く設定することが出来る。
【0082】
図14は処理時間算出部17bの処理フローである。処理時間算出部17cは復調部13から送信されたMER20を取得する(S70)。また処理時間算出部17cは誤り訂正部15から送信されたBER70を取得する(S71)。処理時間算出部17cは取得したMER20に基づいてBER予測値を算出する(S72)。処理時間算出部17cは取得したBER70を算出したBER予測値で割ることによりエラー量比率を算出する(S73)。処理時間算出部17cは算出したエラー量比率に基づいてCNRの補正量を算出する(S74)。処理時間算出部17cはMER20から算出したCNR値にエラー量比率から算出したCNRの補正量を足してCNR値を補正し、補正後のCNR値から同期捕捉処理時間を決定する(S75)。
【0083】
以上のステップを実行することにより処理時間算出部17cを有する受信装置1cはMERおよびBERに基づいてエラーの種類を予測し、予測したエラーの種類に応じて同期捕捉処理時間を最適化することが出来る。なお、エラーの種類の予測は2つの異なるエラー率から予測することが出来る。よって復調部13から出力されるMERとアクセス制御部16から出力されるBERとを用いることによっても、本実施例と同様にエラーの種類を予測することが出来る。また誤り訂正部から出力されるBERとアクセス制御部16から出力されるBERとを用いることによっても、本実施例と同様にエラーの種類を予測することも出来る。
【0084】
図15は他の実施の形態に係る受信装置1dのブロック図である。受信装置1dは受信アンテナ5、増幅部10、同期捕捉部11、利得調整部12a、復調部13a、誤り訂正部15、アクセス制御部16、制御部2cを有する。受信装置1と同一部材には同一番号を付し、その説明を省略する。
【0085】
復調部13aはMER算出部14および移動速度算出部140を有する。前述の実施例においてMER算出部14から出力されるMERや、エラーカウンタ71から出力されるBERまたはPERの値から同期捕捉部11の起動開始時間を最適化する方法について説明した。本実施例ではさらに移動速度算出部140により算出した移動速度に基づいて利得調整部12aの起動時間を最適化する方法について説明する。
【0086】
MER算出部14は処理時間算出部17にMER20を送信する。移動速度算出部140は受信したOFDMシンボル信号を復調して得たデータのコンスタレーションが時間経過と共にX−Y座標の原点を中心として回転する位相変化量に基づいて受信装置1dの移動速度を算出する。移動速度算出部140は処理時間算出部142に算出した移動速度141を出力する。本実施形態において移動速度算出部140は復調部13aに実装されているが、復調部13a以外の部分に実装しても良い。
【0087】
制御部2cは前述の実施例の通り、復調部13aの算出した特定のデータ長当りのエラー率に応じて同期捕捉部11の同期捕捉処理時間を設定するとともに、移動速度141に応じて利得調整部12aにおける電圧利得を調整する時間を設定する。制御部2cは処理時間算出部17、142、起動制御部18を有する。処理時間算出部17はテーブル50を有する。処理時間算出部17は受信したMER20に基づいてテーブル50を参照し、同期捕捉処理時間26を起動制御部18に送信する。また、処理時間算出部142はテーブル143を有する。処理時間算出部142は受信した移動速度141に基づいてテーブル143を参照し、増幅度調整時間144を起動制御部18に送信する。
【0088】
起動制御部18は受信した受信時間情報19、同期捕捉処理時間26、および増幅度調整時間144に基づいて増幅部10、同期捕捉部11、利得調整部12a、復調部13a、誤り訂正部15に起動制御信号21、22、23、24、25を送信する。利得調整部12aは受信したOFDMシンボル信号の電圧利得が一定になるようにOFDMシンボル信号の増幅度を調整する。より具体的には、利得調整部12aは同期捕捉部11から送信された設定信号145に基づいて増幅部10に設定する利得を決定し、利得調整信号146を増幅部10に送信する。
【0089】
起動制御信号を送信するタイミングは受信した同期捕捉処理時間26および増幅度調整時間144によって異なる。同期捕捉部11および利得調整部12aの起動開始時間をMER20および移動速度141に基づいて変化させることにより同期捕捉部11および利得調整部12aの起動開始時間を最適化し、受信装置1dの電力消費を最適化することが出来る。
【0090】
図16は利得調整部12aの詳細ブロック図である。利得調整部12aは受信したOFDMシンボル信号の電圧利得が一定になるように増幅度を調整する。利得調整部12aは利得処理部150、記憶部151を有する。利得処理部150は受信した設定信号145に基づいて増幅部10に設定する増幅度を決定する。利得処理部150は利得調整信号146を増幅部10に送信すると共に増幅度を決定するための設定値152を記憶部に送信する。
【0091】
記憶部151はOFDMシンボル信号受信時に設定した増幅度の設定値152を記憶する。記憶部151は利得調整部12aをオンする起動制御信号23を受信すると、先のOFDMシンボル信号受信時において記憶した増幅度の設定値を設定値153として利得処理部150に送信する。利得処理部150は記憶部151から読み出した設定値153を初期値として増幅度の調整を開始する。
【0092】
受信装置1dが信号を受信する条件が大きく変化しない場合、利得処理条件が大きく変化することは無い。そこで記憶部151に利得の設定条件を記憶させ、次の増幅度設定の際にその設定条件を読み出すことにより増幅度を調整するのに要する処理時間を短縮することが出来る。なお、本実施例における利得設定技術は他の実施例に対しても適応可能である。
【0093】
図17は処理時間算出部142の有するテーブル143である。列170の移動速度は復調部13aから出力される移動速度141である。列171は利得調整部12aが増幅部10に設定する増幅度を設定するのに必要な時間である。移動速度が大きいほど増幅度調整時間が長くなるように設定する。
【0094】
行160は受信装置1dが停止状態すなわち移動速度が0km/hである場合の増幅度時間を示す。受信装置1dが停止状態の場合、移動による受信条件の変化は無い。よって利得調整部12aは先の信号受信のときに設定し記憶部151に記憶した設定値をそのまま用いることが出来るため、増幅度調整時間は短くてよい。
【0095】
行162は受信装置1dが高速移動している状態すなわち移動速度が30km/hである場合の増幅度調整時間を示す。受信装置1dが高速移動している場合、信号の受信条件は大きく変化すると予測される。よって利得調整部12aは先の信号受信のときに設定し記憶部151に記憶した設定値をもちいても、増幅度調整時間として通信規格のガイドラインで定められている最大値を割り当てる。本実施例においてガイドラインで定められている最大値は20msであるとする。移動速度が30km/h以上の場合も同様に最大値を割り当てる。
【0096】
行161は受信装置1dが歩行程度の速度で移動している状態すなわち移動速度が3km/hである場合の増幅度調整時間を示す。受信装置1dが歩行速度で移動している場合、利得の設定時間として通信規格のガイドラインで定められている最大値ほどの時間は必要ないと予測される。よって歩行速度で移動している場合の増幅度調整時間はガイドラインで定められている最大値の半分である10msとする。
【0097】
以上の通り移動速度に応じて増幅度調整時間を割り当てることにより、信号の受信条件に応じて増幅度調整時間を最適化することが出来る。
【符号の説明】
【0098】
1、1a、1b、1c、1d 受信装置
2、2a、2b、2c 制御部
5 受信アンテナ
10 増幅部
11 同期捕捉部
12、12a 利得調整部
13、13a 復調部
14 MER算出部
15 誤り訂正部
16 アクセス制御部
17、17a、17b、17c 処理時間算出部
18 起動制御部
50、80、 テーブル
71、91 エラーカウンタ
100 エラー量予測部
101 エラー量比較部
102 エラー量補正部
103 処理時間変換部
104、105 テーブル
140 移動速度算出部
142 処理時間算出部
150 利得処理部
151 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調されたシンボル信号を受信する受信装置であって、
該シンボル信号の開始位置を所定の同期捕捉処理時間で検出する同期捕捉部と、
該同期補足部で検出された該シンボル信号を復調するとともに該シンボル信号の変調エラー率を算出する復調部と、
該復調部により算出された該変調エラー率に応じて該同期捕捉処理時間を設定する制御部と
を有する受信装置。
【請求項2】
該復調部により所定時間中に復調された複数の該シンボル信号における復調エラー率を算出しエラー訂正する誤り訂正部をさらに有し、
該制御部は該復調部の算出した該変調エラー率と該誤り訂正部の算出した該復調エラー率に応じて該同期捕捉処理時間を設定することを特徴とする、請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
該制御部は算出した該変調エラー率から該復調エラー率を推測し、推測した該復調エラー率と算出した該復調エラー率とを比較した結果に応じて該同期捕捉処理時間を設定することを特徴とする、請求項2に記載の受信装置。
【請求項4】
受信した該シンボル信号の振幅が一定になるように該シンボル信号の増幅度を調整する利得調整部と、該シンボル信号の位相変化量に基づいて該受信装置の移動速度を算出する移動速度算出部とをさらに有し、
該制御部は該移動速度に応じて該増幅度を調整する時間を設定することを特徴とする、請求項1に記載の受信装置。
【請求項5】
該利得調整部は先の信号受信時に設定した該増幅度の設定値を記憶する記憶部と、記憶した該設定値を起動の際に該記憶部から読み出す利得処理部とを有することを特徴とする、請求項4に記載の受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−268136(P2010−268136A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116738(P2009−116738)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】