説明

受容体関連タンパク質(RAP)結合体の投与による肝障害の処置

本発明は、治療化合物の肝臓への送達を向上させるための受容体関連タンパク質(RAP)およびそのフラグメントおよびその変異体の使用に関し、活性薬剤に結合体化したRAPまたはRAP変異体を投与することによって、肝癌等の肝障害および状態を処置する方法を提供する。一態様において、本発明は被験体における肝障害を処置する方法を提供し、この方法は、肝障害の処置のための活性薬剤(b)に結合した、配列番号1の受容体関連タンパク質(RAP)、RAPフラグメント、および約1〜5nMのLRP1へのRAP結合親和性を保持するRAP変異体からなる群から選択される受容体結合部分(a)を含む、有効量の結合体を上記被験体に投与することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2006年9月18日に出願された国際出願番号PCT/US06/36453号の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、治療薬または活性薬剤に結合した受容体関連タンパク質(RAP)ポリペプチドを投与することを含む、肝臓の障害または状態の処置のための方法におけるRAP、RAPフラグメントおよびRAP変異体の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
LRP1は、低密度リポタンパク質受容体「LDLR」のメンバーである。LRP1は、4525のアミノ酸(600kDa)からなる巨大タンパク質であり、フューリンによって切断されて、515−αkDaおよび85−βkDaの2つのサブユニットを生成する。これらのサブユニットは依然として非共有結合したままである。LRPは大部分の組織型で発現されるが、主として肝臓で見られる。低密度リポタンパク質(LDL)受容体ファミリーの他のメンバーとしては、LDL−R(132kDa);LRP2(メガリン、gp330);LRP/LRP1とLRP1B(600kDa);VLDL−R(130kDa);LRP5;LRP6;およびapoER−2(LRP−8、130kDa);モザイク LDL−R(LR11、250KDa);ならびに他のメンバー(例えば、LRP3、LRP6、およびLRP−7)が挙げられる。
【0004】
LRP1は多機能受容体であると考えられている。LDL受容体で見られるものに似ている結合繰り返しは、以前には無関係であると考えられていた種々のリガンドに結合する能力の分子原理である。これらのリガンドとしては、以下が挙げられる。すなわち、ラクトフェリン、受容体関連タンパク質(RAP)、リポタンパク質リパーゼ、apoE、VIII因子、β−アミロイド前駆体、α−2−マクログロブリン、トロンボスポンジン2MMP−2(マトリックスメタロプロテイナーゼ−2)、MPP−9−TIMP−1(マトリックスメタロプロテイナーゼ−1の組織阻害剤)、uPA(ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子):PAI−1(プラスミノーゲン活性化因子阻害剤−1):uPAR(uPA受容体)、およびtPA(組織プラスミノーゲン活性化因子):PAI−1:uPAR、シュードモナス外毒素A、ならびにヒトライノウイルス。Meilinger et al., FEBS Lett, 360:70−74(1995)を参照。LRP1は、GenBankアクセッション番号X13916およびSwissProtプライマリーアクセッション番号Q07954を有する。LRP1遺伝子/タンパク質の代替名としては、以下が挙げられる。すなわち、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1[前駆体]、LRP、α−2−マクログロブリン受容体、A2MR、アポリポタンパク質E受容体、ApoER、CD91、LRP1、またはA2MR。
【0005】
小胞体シャペロンタンパク質(受容体関連タンパク質(RAP))は、大体のLDLR内の補体繰り返し(CR)配列に結合する。RAPは、分泌経路内でLDLRの折り畳みを補助し、LDLRに結合する他のすべての公知のリガンドを拮抗する(Bu,(2001)lnt Rev Cytol 209,79−116)。RAPに関する詳細な構造情報の不足にもかかわらず、RAPのCR折り畳みとの関連性は、受容体結合アッセイ、熱量測定、および変異誘発の組み合わせによって広範囲にわたって特徴づけられてきた(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5)。
【0006】
RAPは、3つの弱い相同性を示す一連のドメイン(非特許文献6)を含む。これらのドメイン(d1、d2、およびd3)のそれぞれは、LDLR外部ドメイン内の直接隣接した複数対のCR配列に対して種々の親和性で結合することが示されている。LDLR上の完全長RAPへの効果のそれぞれ(他の大体のリガンド(α−2−マクログロブリンを除く)の折り畳みの促進および結合の抑制を含む)は、単独のRAPd3によって再利用される。RAPd3は、成熟したUniprot P30533の200〜323のアミノ酸および前駆体Uniprot P30533の234〜357のアミノ酸を含む。
【0007】
肝細胞は、肝臓の洞様血管の内側を覆う上皮細胞である。この細胞型は、全肝臓質量の約80%を構成し、この器官の機能に必要な広大な血液接触面をもたらす。肝細胞は大量の低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質(LRP1)を発現し、LRP1は、リポタンパク質の代謝、具体的にはカイロミクロンレムナントの排除(1、2、3)ならびに他の循環タンパク質の肝臓への取り込み(2、4、5)に関与する。その生理的役割と一貫して、LRP1は、受容体を輸送する高度に効率的なリガンドであり、急速な内部移行および再循環速度で恒常的なエンドサイトーシスを受ける(6)。内部移行に続いて、LRP1は結合したカーゴをリソソームに送達し、そこでタンパク質が急速に分解される。
【0008】
肝細胞癌(HCC)は、肝細胞またはそれらの前駆体から生じる。HCCは、世界的に5番目に最も多い癌であり、癌関連死において3番目に最も多い死因であり、米国では発生率の増加を示している(7、8、9、10、11、12)。肝細胞癌を発症する確率は、ウイルス感染症(B型およびC型肝炎)、アルコール依存症、喫煙、および肥満症によって増加する。この疾患の予後は悪く、報告されている5年間の生存率中央値は5%未満である。外科的切除、移植、および物理的切断は、処置の第1の選択であるが、わずかに5〜10%の患者がこれらのアプローチに適した腫瘍を呈している。腫瘍の大きさ、肝臓内の腫瘍の散在、転移、器官機能レベルの低下、および高レベルの再発によって、外科的処置の有効性が制限される(13)。経動脈化学塞栓療法(腫瘍への血液供給を遮断して(塞栓形成して)、化学療法剤を直接腫瘍に投与する手段)および肝内化学療法(肝組織に化学療法剤を直接導入する)は、場合によっては有用であるが低い全反応率をもたらすことが示されている(14、15)。全身的な化学療法(例えばアドリアマイシン)は、15〜20%の反応率をもたらすが、これは有効的な化学療法剤の全身毒性および該化学療法剤に対する腫瘍細胞の耐性の両理由からである(16、17)。HCC症例の大多数は、肝機能がすでに損なわれている患者に生じているので、有効的な化学療法レジメン(その大多数が多少の肝毒性をもたらす)は、不十分な肝予備能および劇症肝不全の危険性のために禁忌であることが多い。結合体化型治療薬による静脈内投与後の肝臓への標的送達(例えば90イットリウム)は、これらの薬物に付随する全身毒性を有意に減少させ、HCC処置の間、患者への危険性を少なくする。この標的送達を提供する1つの方法は、肝臓特異的分子(すなわち、高親和性で肝臓上の受容体に結合したリガンド(例えばRAP))を用いることもあり得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Andersen,et al.,(2001)Biochemistry 40,15408−15417
【非特許文献2】;Andersen, et al.,(2000)J Biol Chem 275,21017−21024
【非特許文献3】;Migliorini, et al.,(2003)J Biol Chem 278,17986−17992
【非特許文献4】;Neels, et al.,(1999)J Biol Chem 274,31305−31311
【非特許文献5】Horn, et al.,(1997)J Biol Chem 272,13608−13613)
【非特許文献6】Obermoeller, et al.,(1997)J Biol Chem 272,10761−10768
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、肝癌または他の肝疾患を処置するために、高親和性リガンドを用いる肝臓への治療薬の選択的な腫瘍標的化(例えば、化学療法剤または他の薬剤の肝細胞部位へのRAP依存型血液媒介送達)によって、さらに患者の危険性を減少させることが当該技術分野では必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の要旨)
本発明は、肝臓への輸送を向上させたRAP結合体化活性薬剤を投与することによって被験体の肝障害を処置するためのRAP、RAPフラグメント、およびRAP変異体の使用に関する。
【0012】
一態様において、本発明は被験体における肝障害を処置する方法を提供する。該方法は、
肝障害の処置のための活性薬剤(b)に結合した、配列番号1の受容体関連タンパク質(RAP)、RAPフラグメント、および約1〜5nMのLRP1へのRAP結合親和性を保持するRAP変異体からなる群から選択される受容体結合部分(a)を含む、有効量の結合体を該被験体に投与することを含む。
【0013】
RAP変異体分子は、完全長のヒトRAPの一部を構成することもある。一実施形態において、RAP変異体は、配列番号1のN末端から少なくとも200から最高243までのアミノ酸が欠損している。関連する実施形態において、RAPフラグメントまたは変異体は、配列番号1のN末端から243までのアミノ酸が欠損している。別の実施形態において、RAP変異体は、配列番号1のC末端から最高11までのアミノ酸が欠損し、および配列番号1のC末端からさらに少なくとも4のアミノ酸が欠損していることもある。さらなる実施形態において、RAP変異体は、(a)長さが少なくとも71のアミノ酸である成熟RAP(配列番号1)の連続部分を含み、かつ(b)256〜270のアミノ酸を含む。関連する実施形態において、RAP変異体は、(a)長さが少なくとも71のアミノ酸であるRAPd3(配列番号2)の連続部分を含み、かつ(b)256〜270のアミノ酸を含む。
【0014】
一実施形態において、RAP変異体は、RAPの第3のドメイン(d3)内に変異を有する。RAPd3は、成熟RAP(Uniprot P30533)(配列番号2)から200〜323のアミノ酸および前駆体RAP(Uniprot P30533)から234〜357のアミノ酸を含む。別の実施形態において、成熟RAP(P30533)から少なくとも1〜143のアミノ酸が欠如しているRAP変異体を含むポリペプチドが考えられる。さらなる実施形態において、RAP変異体は、成熟RAPから少なくとも1〜143のアミノ酸および320〜323のアミノ酸が欠如している。さらに別の実施形態において、ポリペプチドは、成熟RAP(P30533)のC末端で最高4つまでのアミノ酸か欠如している。
【0015】
関連する実施形態において、本発明は、前記受容体結合部分が、長さが約85未満のアミノ酸であり、かつ配列番号4と少なくとも70%同一である50の連続するアミノ酸を含み、LRP1に結合する環状RAPペプチドである方法が考えられる。関連する実施形態において、環状RAPペプチドは、約1×10−8M以下のKdを有するLRP1に結合する。
【0016】
別の態様において、本発明は、RAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体が変異を含む方法を提供する。一実施形態において、変異は、配列番号1の天然のRAPに関連する1つ以上の保存的置換を含む。別の実施形態において、変異は酸性アミノ酸の塩基性アミノ酸との置換である。一実施形態において、該酸性アミノ酸は、DおよびEからなる群から選択される。関連する実施形態において、該塩基性アミノ酸は、KおよびRからなる群から選択される。
【0017】
関連する態様において、RAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体における該変異は、塩基性アミノ酸の酸性アミノ酸との置換である。一実施形態において、該塩基性アミノ酸は、KおよびRからなる群から選択される。別の実施形態において、該酸性アミノ酸は、DおよびEからなる群から選択される。
【0018】
さらなる実施形態において、該変異は、A、C、D、E、G、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、およびVからなる群から選択されるアミノ酸の、F、Y、W、およびHからなる群から選択されるアミノ酸との置換である。関連する実施形態において、本発明における使用で考えられるRAPフラグメントまたはRAP変異体は、成熟RAPの251、256、257、266、270、279、280、296、または305のうちのいずれか1つの位置に変異を含む。
【0019】
RAP変異体単独に加えて、本発明は、RAPドメインまたはRAPドメインの変異体のオリゴマー組み合わせを考える。RAPコード配列は、3つの部分(前述に定義されているドメイン)に分けられる。各ドメインは、約10kDaの分子量を有するおよそ100のアミノ酸を含む。ドメイン1(またはd1)は、GenBankアクセッション番号P30533の成熟配列の1〜94のアミノ酸からなる。ドメイン2(またはd2)は、95〜198のアミノ酸からなる。ドメイン3(またはd3)は、199〜319のアミノ酸からなり、C末端4アミノ酸保留シグナル(配列番号9)が欠如している。
【0020】
従って、本発明が考えるRAPドメインの変異体は、RAPd1の2つ以上の変異体を含むポリペプチド、RAPd2の2つ以上の変異体を含むポリペプチド、RAPd3の2つ以上の変異体を含むポリペプチド、RAPd1の1つの変異体とRAPd3の1つの変異体を含むがRAPd2が欠如しているポリペプチド、種々の組み合わせ(例えば、d1−d3、d1−d3−d3、d1−d1−d3、d1−d1−d3−d3、d1−d3−d1−d3、d1−d3−d1−d3−d1、d3、d1−d2−d1、d2−d2−d3、d3−d2−d3、d2−d3−d2−d3−d2−d3等)でRAPd2もしくはRAPd3の2つ以上の変異体と共にRAPd1の2つ以上の変異体を含むポリペプチドが含まれ、種々の組み合わせでRAPd1およびd2の複数の変異体を含み、または種々の組み合わせでRAPd2およびd3の複数の変異体を含む同じ配列もしくは交互の配列の連続的繰り返しが含まれる、RAPドメインの変異体である。種々の組み合わせは、近接することもあり、またはドメインが同じCR含有タンパク質内の異なるCR対に結合することを可能にするまたは異なるCR含有タンパク質のCR対に結合することを可能にする三次元立体配置でドメインを表示するペプチドリンカーによって分離されることもある。
【0021】
従って、典型的な実施形態において、本発明は、本明細書に記述するように環状RAPペプチドであるRAPd3の変異体を2つ以上含むオリゴマー組み合わせを考える。
【0022】
本発明は、診断薬または治療薬に結合体化したポリペプチド受容体関連タンパク質(RAP)、RAP変異体、RAPフラグメント、または変異体の組み合わせを含む結合体の使用をさらに考える。一実施形態において、ポリペプチドおよび診断薬または治療薬は、リンカーを介して連結される。さらなる実施形態において、該リンカーは、ペプチドリンカーである。
【0023】
関連する態様において、本発明は、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤に診断薬または治療薬に結合体化したRAP変異体を含む医薬組成物の使用を提供する。
【0024】
別の態様において、本発明は、例えばRAP変異体およびRAP結合体を治療的に含む組成物を用いることを可能な量で、RAP変異体および結合体を生成する方法を提供する。本発明は、また、本発明の方法において有用なRAP、RAPフラグメント、およびRAP変異体を含む前述のポリペプチドのいずれかをコードする核酸を提供する。かかる核酸を含むベクター、かかる核酸またはベクターを含有する宿主細胞、およびかかるポリペプチドを生成する方法(適切な培地で宿主細胞を培養するステップと、該宿主細胞または培地からポリペプチドを単離するステップとを含む)も提供する。
【0025】
一態様において、本発明は、肝癌、肝炎、肝硬変、真菌感染、リケッチア感染、または寄生虫感染からなる群から選択される肝障害と関連する疾患または状態;アルコール毒素、化学的毒素、および薬物毒性に起因する損傷;ならびに代謝性肝疾患、突発性自己免疫性肝疾患、胆管閉塞、脂肪肝、胆汁うっ滞、および肝切除後の状態の処置のための方法を提供する。一実施形態において、肝癌は肝細胞癌である。
【0026】
関連する実施形態において、肝癌は、肝細胞癌からなる群から選択され、および活性薬剤部分は細胞毒性化学治療薬である。
【0027】
さらなる実施形態において、障害は、肝臓腫瘍または肝臓における腫瘍転移であり、治療薬は化学治療薬である。
【0028】
一態様において、本発明は、活性薬剤が細胞傷害性薬である、処置の方法を提供する。一実施形態において、細胞傷害性薬は、塩酸メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、クロラムブシル、メルファラン、ブスルファン、チオテパ、カルムスチン、ロムスチン、ダカルバジン、およびストレプトゾシンからなる群から選択される。
【0029】
関連する態様において、細胞傷害性薬は放射性同位体である。関連する実施形態において、放射性同位体は、131I、125I、111In、90Y、67Cu、127Lu、212Bi、213Bi、255Fm、149Tb、223Rd、213Pb、212Pb、211At、89Sr、153Sm、166Ho、225Ac、186Re、67Ga、68Ga、および99mTcからなる群から選択される。
【0030】
さらなる態様において、本発明の方法は、治療すべく障害はウイルスに起因する肝炎であり、治療薬は抗ウイルス剤である。
【0031】
表2は、RAPd3変異体およびRAPv2(RAPv2A)変異体のLRP1 CR3〜5およびLRP2 CR89への結合のデータを示す。NFは、結合が測定できなかったこと、またはデータが単一結合部位の想定の下で非直線回帰を用いて確実に適合させることができなかったことを表す。最大結合のパーセントは、各リガンドで検査した最高濃度でのODの割合およびその濃度でかかるリガンドのすべてで測定した最高ODである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1A】図1A〜Bは、RAPd3、メガRAP1d3(RAPv2Ad3)および中間配列変異体のLRP2 CR89およびLRP1 CR3〜5への結合を表す。図1Aは、RAPd3突然変異体およびRAPv2Ad3復帰変異体のLRP2 CR89への結合を表す。
【図1B】図1A〜Bは、RAPd3、メガRAP1d3(RAPv2Ad3)および中間配列変異体のLRP2 CR89およびLRP1 CR3〜5への結合を表す。図1Bは、RAPd3突然変異体およびRAPv2Ad3復帰変異体のLRP1 CR3〜5への結合を表す。データは、単一結合部位の想定の下で非直線回帰によってプロットさせ、適合させた(GraphPad Prism)。標準偏差を有するKd値は、回帰分析から算出した。
【図2】LRP1受容体を発現する細胞へのRAPペプチド−毒素結合体の投与後の細胞死のパーセントを示す。
【図3】環状RAPペプチドおよび多量体形成環状RAPペプチドの構造の図示である。
【図4】in vivoで組織におけるmRAPc多量体形成ペプチドの摂取および生体内分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、肝臓受容体LRP1に結合して、肝臓内部に取り入れられるRAPタンパク質結合体を投与することを含む、化合物の肝臓への送達方法に関する。RAP結合体の内部移行は、肝疾患または状態を処置するために治療化合物または他の活性薬剤を肝臓に送達する有効的な手段である。
【0034】
A.定義
特に別の定義がなければ、本明細書で用いる専門用語および科学用語は、本発明が属する技術分野において当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。以下の参考文献は、本発明で用いる多くの用語の一般的定義を当業者に提供する。すなわち、Singleton, et al., DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY (2d ed. 1994);THE CAMBRIDGE DICTIONARY OF SCIENCE AND TECHNOLOGY (Walker ed., 1988);THE GLOSSARY OF GENETICS, 5TH ED., R. Rieger, et al. (eds.), Springer Verlag (1991);およびHale and Marham, THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY (1991)。
【0035】
本明細書で引用するそれぞれの刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献を、本開示と矛盾しない程度までその開示内容全体が参考として援用される。
【0036】
本明細書および添付する特許請求の範囲で用いるように、単数形「a」、「an」、および「the」の形態は、文脈で明確に指示しない限り、複数形も含むことをここに述べる。
【0037】
本明細書において、以下の用語は、特に明記しない限り、それらの用語が基づく意味を有する。
【0038】
本明細書で用いるように「肝腫瘍および肝臓内または肝臓周辺の他の新生組織形成」には、原発腫瘍および/または肝臓内または肝臓周辺で発症する腫瘍転移の両方が含まれる。または、それは、生体内のほかの場所に移動するが、RAP、RAPフラグメント、または化学治療薬とのRAP変異体ポリペプチド結合体に依然として応答する肝腫瘍の腫瘍転移を意味することもある。かかる腫瘍および新生組織形成の多数の型は公知である。原発性肝腫瘍としては、肝細胞癌および当該技術分野で公知の他のものが挙げられる。本明細書において、腫瘍および新生組織形成は、肝臓および肝組織と付随する可能性がある。かかる腫瘍は、ほとんどの場合固形腫瘍であるか、あるいは肝臓に局在する蓄積物を有する散在性腫瘍である。本発明によって処置する腫瘍または新生組織形成は、悪性または良性であり得、かつ以前に化学療法、放射線療法および/または他の処置によって処置されていることもあり得る。
【0039】
用語「有効量」とは、被験体の健康状態、病状、および疾患に関して所望の結果をもたらすための、または診断の目的での十分な用量を意味する。所望の結果は、その用量のレシピエントにおいて主観的または客観的な改善を含むこともある。「治療的有効量」とは、健康面で意図された良い影響をもたらすために有効的な薬剤の量をいう。
【0040】
「有機小分子」とは、通常、医薬品で用いられるそれらの有機分子と同程度の大きさの有機分子をいう。この用語は、有機生体高分子(例えば、タンパク質、核酸等)を除外する。好ましい有機小分子の大きさは、約5,000Daまで、約2,000Daまで、または約1,000Daまでに及ぶ。
【0041】
診断または処置の「被験体」は、哺乳類もしくは霊長類を含むヒトまたは非ヒト動物である。
【0042】
「処置」とは、予防処置もしくは治療処置または診断処置をいう。
【0043】
「予防」処置とは、疾患の兆候を示さない、または疾患の初期兆候だけを示す被験体に、病状が発症する危険性を減少させる目的で投与される処置である。本発明の結合体化合物は予防処置として与えられ、病状を発症する可能性を減少させ、または発症した場合、病状の重症度を最小化することもできる。
【0044】
「治療」処置とは、兆候または病状の症状を示す被験体に、それらの兆候または症状を軽減させるもしくは除去する目的で投与される処置である。兆候または症状は、生化学的、細胞性、組織学的、機能的、主観的、または客観的であり得る。本発明の結合体化合物を、治療処置としてまたは診断のために与えてもよい。
【0045】
「診断」とは、病的状態の存在または性質を同定することを意味する。診断方法は、それらの特異性および選択性において異なる。特定の診断方法は、状態の確定診断を提供しないこともあるが、その方法が診断を支援する確かな指標を提供するならば、十分である。
【0046】
「医薬組成物」とは、ヒトおよび哺乳類を含む被験体動物で医薬使用に適した組成物をいう。医薬組成物は、薬理学的に有効量の活性薬剤に結合体化したRAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体のポリペプチドを含み、かつ薬学的に許容される担体も含む。医薬組成物は、活性成分および不活性成分を含む組成物を包含する。不活性成分は、担体ならびに任意の産物(これらの成分のいずれか2つ以上の組み合わせ、複合体形成、もしくは凝集によって、またはこれら成分の1つ以上の解離によって、またはこれら成分の1つ以上の他の種類の反応もしくは相互作用によって直接的もしくは間接的に生ずる)を作り上げている。従って、本発明の医薬組成物は、本発明の結合体化合物および薬学的に許容される担体を混合することによって作られる任意の組成物も包含する。
【0047】
「薬学的に許容される担体」は、標準的医薬担体のいずれか、緩衝剤、および賦形剤(例えば、リン酸緩衝生理食塩水溶液、5%デキストロース水溶液、および乳濁液(例えば、油/水もしくは水/油乳剤))、ならびに種々の種類の湿潤剤および/またはアジュバントをいう。適切な医薬担体および剤形は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 19th Ed. (Mack Publishing Co., Easton, 1995)に記述されている。好ましい医薬担体は、活性薬剤の意図される投与モードに依存する。典型的な投与モードとしては、腸内(例えば経口)投与もしくは非経口(例えば、皮下、筋肉内、静脈内もしくは腹腔内注射、または局所、経皮、または経粘膜)投与が挙げられる。「薬学的に許容される塩」は、医薬使用のための化合物に調剤されることの可能な塩であり、例えば、金属塩(ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等)およびアンモニア塩または有機アミン塩が挙げられる。
【0048】
本明細書において、用語「単位剤形」とは、ヒトおよび動物の被験体に対する単位用量として適した、物理的に分離した単位をいい、各単位は、薬学的に許容される希釈剤、担体、媒体と結合して所望の効果を生じるのに十分な量で算出された、本発明の化合物の所定量を含有する。本発明の新規の単位剤形の規格は、使用する特定の結合体および達成されるべき効能、ならびに宿主中の各化合物と関連する薬力学に依存する。
【0049】
本明細書において「調節する」とは、増加または減少によって(例えば、アンタゴニストまたはアゴニストとして作用させるために)変化する能力をいう。
【0050】
本明細書において、「相対的な送達を増加させる」とは、意図する送達部位(例えば肝臓)において、活性薬剤に結合体化したRAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体の蓄積が活性薬剤に非結合体化したRAP変異体の蓄積と比較して増加する効果をいう。
【0051】
「治療係数」とは、最小限の治療量以上および容認不可能な毒性量以下の用量範囲(量および/または時期)をいう。
【0052】
「同等用量」とは、同じ量の活性薬剤を含有する用量をいう。
【0053】
「ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチド単位からなるポリマーをいう。ポリヌクレオチドは、天然に存在する核酸(例えばデオキシリボ核酸(「DNA」)およびリボ核酸(「RNA」)ならびに核酸類似体)が挙げられる。核酸類似体には、非天然に存在する塩基(天然に存在するリン酸ジエステル結合以外の他のヌクレオチドとの結合に関与するヌクレオチド)が含まれるもの、またはリン酸ジエステル結合以外の結合を介して付着した塩基が含まれるものが挙げられる。従って、ヌクレオチド類似体は、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロトリエステル、ホスホロアミド酸、ボラノホスフェート、メチルホスホネート、キラル−メチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)等が挙げられるがこれらに限定されない。かかるポリヌクレオチドは、例えば、自動DNA合成機を用いて合成され得る。用語「核酸」とは、通常、大きいポリヌクレオチドをいう。用語「オリゴヌクレオチド」とは、通常、短いポリヌクレオチド、一般に約50ヌクレオチドと同じくらいのものをいう。ヌクレオチド配列がDNA配列(すなわち、A、T、G、C)によって表されるとき、これはRNA配列(すなわち、A、U、G、C)(「U」が、「T」を置き換える)も含まれると理解される。タンパク質およびRNAをコードするヌクレオチド配列は、イントロンを含み得る。
【0054】
「cDNA」とは、一本鎖または二本鎖のいずれかの形態でmRNAに相補的であるまたはmRNAと同一であるDNAをいう。
【0055】
本明細書では従来の表示法を用いて、ポリヌクレオチド配列を記述する。すなわち、一本鎖ポリヌクレオチド配列の左側端が5’末端であり、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左側方向を5’方向と呼ぶ。新生RNA転写物へのヌクレオチドの5’から3’付加の方向は転写方法と呼ばれる。mRNAと同じ配列を有するDNA鎖は、「コード鎖」と呼ばれる。そのDNAから転写されるmRNAと同じ配列を有するDNA鎖上の配列で、RNA転写物の5’から5’末端に位置している配列は、「上流配列」と呼ばれる。前記RNAと同じ配列を有するDNA鎖上の配列で、コードRNA転写物の3’から3’末端に位置する配列は、「下流配列」と呼ばれる。
【0056】
「相補的」とは、形態上の適合性または2つのポリヌクレオチドの相互作用表面が一致することをいう。このように、2つの分子は相補的と記述されることができ、さらに、接触面の特徴は互いに相補的である。第1のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、第2のポリヌクレオチドのポリヌクレオチド結合パートナーのヌクレオチド配列と同一である場合、第1のポリヌクレオチドは、第2のポリヌクレオチドに相補的である。このように、5’−TATAC−3’配列のポリヌクレオチドは、5’−GTATA−3’配列のポリヌクレオチドと相補的である。
【0057】
サザンブロットまたはノーザンブロットで100を超える相補的残基を有する相補的核酸のハイブリダイゼーションをフィルター上で行うためのストリンジェントハイブリダイゼーション条件の一例として、50%ホルマリンに1mgのヘパリンを加えて、42℃でハイブリダイゼーションを一晩行う。高ストリンジェント洗浄条件の一例としては、72℃で0.15MNaClに約15分間である。ストリンジェント洗浄条件の一例は、0.2×SSC洗浄を65℃で約15分間である(SSC緩衝液の説明についてはSambrook et al.を参照)。
【0058】
「補体繰り返し」または「CR」(低密度リポタンパク質受容体クラスAドメイン(LDL−A、Pfam)としても公知である)とは、他の特徴の中で、6つのシステインおよび酸性アミノ酸の1つのクラスターによって定義されるタンパク質ドメインファミリーのメンバーである。いくつかの補体繰り返しは、LDL受容体様モジュール(Structural Classification of Proteins, SCOP)と呼ばれる定義された構造に折り畳まれることがわかっている。CRドメインは、LDLRに属する受容体を含む多数の受容体のリガンド−結合決定基を構成する。各CR内でAxcBxCxD(cは保存システインであり、xは任意のアミノ酸であり、BおよびDはアスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギンのいずれかである)のモチーフを有するアミノ酸の直線状配列は、カルシウム結合およびリガンドの結合に関与することが示されている。特定のCRドメインに直接隣接した対は、RAPに結合することが示されている。RAP結合CR対(A、C、A’、およびC’)の2つのCRドメインの両方においてAおよびCの位置のアミノ酸は、RAP結合に関与することが示されている。
【0059】
「組換えポリヌクレオチド」とは、自然には結合しない配列を有するポリヌクレオチドをいう。増幅または構築された組換えポリヌクレオチドは、適切なベクターに含まれることが可能であり、そのベクターを用いて適切な宿主細胞を形質転換することができる。組換えポリヌクレオチドを含む宿主細胞は、「組換え宿主細胞」とよばれる。遺伝子は、組換え宿主細胞内で発現され、例えば「組換えポリペプチド」を産生する。組換えポリヌクレオチドは、非コード機能(例えば、プロモーター、複製開始点、リボソーム結合部位)としても役割を果たし得る。
【0060】
「発現制御配列」とは、それに作用可能に結合したヌクレオチド配列の発現(転写および/または翻訳)を調節するポリヌクレオチド内のヌクレオチド配列をいう。「作用可能に結合した」とは、2つの部分の間の機能的関係をいい、そこでは1つの部分の活性(例えば転写を調節する能力)がもう1つの部分上での作用(例えば配列の転写)をもたらす。発現制御配列としては、例えば、プロモーター配列(例えば誘導プロモーターまたは構成プロモーター)、エンハンサー、転写ターミネーター、開始コドン(すなわちATG)、イントロンのためのスプライシングシグナル、および終止コドンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0061】
「発現ベクター」とは、発現されるべきヌクレオチド配列に作用可能に結合した発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターをいう。発現ベクターは、発現のための十分なシス作用要素を含み、発現のための他の要素は宿主細胞またはin vitro発現系によって供給され得る。発現ベクターとしては、当該技術分野で公知のすべてのもの(例えば、コスミド、プラスミド(例えばネイキッド、またはリポソームに含有された)、および組換えポリヌクレオチドに組み入れるウイルス)が挙げられる。
【0062】
「ポリペプチド」とは、アミノ酸残基、天然に存在する関連した構造変異体、およびペプチド結合を介して結合したそれらの非天然に存在する合成類似体で構成されるポリマーをいう。合成ポリペプチドは、例えば、自動ポリペプチド合成機を用いて合成され得る。用語「タンパク質」とは、通常、大きいポリペプチドをいう。用語「ペプチド」とは、通常、短いポリペプチドをいう。
【0063】
「RAP変異体」とは、α−2−マクログロブリン/低密度リポタンパク質受容体−関連タンパク質−関連タンパク質1(RAP)(UniprotアクセッションP30533、Pfamアクセッション番号PF06400およびPF06401)からのいずれか2つ以上の多形相をいう。変異体は、他のアミノ酸に対して1つ以上のアミノ酸の置換を伴う1つ以上の変異に基づくそれらのアミノ酸配列の組成において異なる。置換は、置換されるアミノ酸およびそれを置換するアミノ酸の物理化学的関連性または機能的関連性に基づき保存的または非保存的であり得る。
【0064】
2つ以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列と関連して用語「同一の」または「パーセント同一性」とは、以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いて、または目視検査によって測定する際、最大一致を比較し整列させるとき、同一である配列もしくはサブ配列、または同一であるヌクレオチドもしくはアミノ酸残基を指定した割合で有する2つ以上の配列もしくはサブ配列をいう。
【0065】
2つの核酸またはポリペプチドと関連して、語句「実質的に相同の」または「実質的に同一の」とは、以下の配列比較アルゴリズムの1つを用いて、または目視検査によって測定する際、最大一致を比較し整列させるとき、少なくとも40%、60%、80%、90%、95%、98%同一性のヌクレオチドもしくはアミノ酸残基を有する2つ以上の配列もしくはサブ配列を通常いう。好ましくは、実質的同一性は、少なくとも約50残基長である配列の領域にわたり、より好ましくは少なくとも約100残基の領域にわたり存在する。最も好ましい配列は、少なくとも約150残基にわたり実質的に同一である。最も好ましい実施形態において、配列は、どちらかのまたは両方の比較バイオポリマーの全長にわたり実質的に同一である。
【0066】
配列比較のために、通常、1つの配列は、試験配列が比較される参照配列としての機能を果たす。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列および参照配列はコンピュータに入力される。必要に応じてサブ配列座標が指定され、次いで配列アルゴリズムプログラムのパラメータが指定される。配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムのパラメータに基づいて、参照配列に対して試験配列のパーセント配列同一性を算出する。
【0067】
比較のための配列の最適アライメントは、例えば局所的相同性アルゴリズム(Smith and Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482(1981))によって、相同性アライメントアルゴリズム(Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443(1970))によって、類似性検索方法(Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444(1988))によって、これらのアルゴリズムのコンピュータ化実行(Wisconsin Genetics Software PackageのGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA(Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wl))によって、または目視検査によって行われることができる。パーセント配列同一性および配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムの別の例は、Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403−410(1990)に記述されているBLASTアルゴリズムである。
【0068】
「実質的に純粋の」または「単離された」とは、対象の種が存在する優勢種(すなわち、モルベースで、組成物中の他の個々の高分子種のいずれよりもより豊富な種)であり、実質的に精製された画分は、対象の種が存在するすべての高分子種の少なくとも約50%(モルベースで)を含む組成物であることを意味する。通常、実質的に純粋な組成物とは、組成物中に存在する高分子種の約80%〜90%以上が目的の精製された種であることを意味する。組成物が基本的に単一の高分子種からなる場合、対象の種は基本的均一性(混入種は、従来の検出方法によって組成物では検出されることができない)まで精製される。溶媒種、低分子(<500ダルトン)、安定剤(例えばBSA)、および元素イオン種は、この定義の目的上、高分子種として見なさない。一部の実施形態において、本発明の結合体は、実質的に純粋なものまたは単離されたものである。一部の実施形態において、本発明の方法で有用な結合体は、それらの合成で用いた高分子出発物質に関して実質的に純粋であるか、または単離されている。一部の実施形態において、本発明の医薬組成物は、RAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体のポリペプチドの実質的に精製された結合体または単離された結合体、および1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を混合した活性薬剤を含む。
【0069】
物体に適用されるように「天然に存在する」とは、その物体が天然において見られることができるという事実をいう。例えば、天然の発生源から分離されることが可能な生物(ウイルスを含む)中に存在し、かつ研究室で人によって意図的に修飾されてないポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は、天然に存在する。
【0070】
「リンカー」とは、2つの他の分子を、共有結合的に、またはイオン結合、ファンデルワールス結合、もしくは水素結合を介してのいずれかで結合する分子(例えば、5’末端で1つの相補的配列とハイブリダイズし、3’末端で別の相補的配列とハイブリダイズし、このようにして2つの非相補的配列を結合させる核酸分子)をいう。
【0071】
B.LDLR
「LDLR」とは、低密度リポタンパク質受容体ファミリーのメンバーをいい、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)、LDL−R(132kDa)、LRP2(メガリン、gp330)、LRP/LRP1およびLRP1B(600kDa)、VLDL−R(130kDa)、LRP5、LRP6、apoER−2(LRP−8、130kDa)、モザイクLDL−R(LR11、250KDa)、ならびに他のメンバー(例えばLRP3、LRP6、およびLRP−7)が挙げられる。
【0072】
このファミリーの特性としては、細胞表面発現、細胞外リガンド結合ドメインの繰り返し(DxSDE)、リガンド結合のためのCa++の必要性、RAPおよびapoEの結合、EGF前駆体相同ドメインの繰り返し(YWTD)、単一の膜貫通領域、細胞質ドメイン内の内部移行シグナル(FDNPXY)、および種々のリガンドの受容体媒介エンドサイトーシスが挙げられる。このファミリーのLRP1を含む一部のメンバーは、シグナル伝達経路に関与する。
【0073】
LDLRリガントとは、LDLRを結合することが知られているいくつかの分子をいう。これらの分子は、例えば、ラクトフェリン、RAP、リポタンパク質リパーゼ、apoE、Factor VIII因子、β−アミロイド前駆体、α−2−マクログロブリン、トロンボスポンジン2MMP−2(マトリックスメタロプロテイナーゼ−2)、MPP−9−TIMP−1(マトリックスメタロプロテイナーゼ−1の組織阻害剤)、uPA(ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子):PAI−1(プラスミノーゲン活性化因子阻害剤−1):uPAR(uPA受容体)、およびtPA(組織プラスミノーゲン活性化因子):PAI−1:uPARが挙げられる。
【0074】
LDLRは、各受容体のN末端細胞外ドメイン内または外部ドメイン内の保存タンパク質ドメインを介して幅広い種類の細胞外リガンドに結合する。これらのドメインには、補体型繰り返し(CR、または低密度リポタンパク質受容体ドメインクラスA、IdI−a)ドメイン、EGF様繰り返しドメイン、およびYWTDドメイン、またはβ−プロペラドメインが挙げられる。CRドメインは、同定されているほとんどのリガンドとの結合に関与する。CR配列は、LDL受容体様モジュール(SCOP用語)と呼ばれる保存折り畳みを特定する。各およそ36アミノ酸のCRは、1〜3、2〜5、4〜6の配置に3つの分子内システインを形成する6つのシステインと、二葉状ループの1つの葉内に結合したカルシウムイオンとを含有する。
【0075】
LRP1では、ヒトLRP1の第2のリガンド結合ドメインは、8つの連続するCRユニットからなる。隣接する可能性のある7つのCR対のそれぞれは、個々に発現されて、RAPd3への結合に関してアッセイされている(Andersen, et al., (2000) J Biol Chem 275, 21017−21024)。第2のCRでCR位置に好ましくない残基を含有する最後の一対(CR9およびCR10)を除外して、すべての対は類似する親和性(1〜5nM)でRAPに結合する。
【0076】
C.RAPフラグメントおよびRAP変異体
無作為でかつ部位特異的なRAPの変異原性は、CR対を有するリガンド複合体の親和性に不均衡に寄与するいくつかの残基があり得ることを示している(Migliorini, et al.,(2003) J Biol Chem 278, 17986−17992)。特に、RAPd3の256および270の位置でリジンがこのドメインがLRP1に結合するために重要であることが分っている。例えば、H249T、E251K、K256A、およびK270D(完全長RAP配列に基づく)の変異を有する、Mega RAP1と呼ばれるRAPd3変異体は、LRP1 CRドメインに結合できない(図1、表2を参照)。205および285の位置に中心を置く10アミノ酸の別々の2つの塩基性領域も、それぞれ重要である(Melman,et al.,(2001)J Biol Chem 276,29338−29346)。これらの観察は、限定された残基のセット(「ホットスポット」)が存在することと一致する。これらの残基は、RAPおよびCR対の間の結合エネルギー(他のタンパク質−タンパク質の接触面で観察される現象)の大部分に寄与する(Li,et al,(2005)Structure (Camb)13,297−307;Halperin,et al.,(2004)Structure(Camb)12,1027−1038;Gao,et al.,(2004)J MoI Model(Online)10,44−54;Dwyer,et al.,(2001)Biochemistry 40,13491−13500;DeLano,(2002)Curr Opin Struct Biol 12,14−20;Bogan,et al.,(1998)J Mol Biol 280,1−9;Clackson,et al.,(1995)Science 267,383−386)。
【0077】
RAP分子は、最初に、323のアミノ酸ペプチド(配列番号1)である成熟RAPを形成するために切断される35のアミノ酸シグナル配列を有する357のアミノ酸タンパク質(配列番号6および7)として、生成される。成熟RAPは、また、4のアミノ酸C末端の小胞体保留シグナルを保持する。
【0078】
RAPのどの部分がそのLRP結合および調節活性に重要であり、かつどの部分が結合活性を失わずに変異、変化、または欠失し得るかについて実質的なガイダンスが当該技術分野では存在する(Nielsen et al. Proc. Nat. Acad. Sci. USA 94:7521(1997);およびRall et al. J. Biol. Chem. 273(37):24152,1998を参照)。例えば、RAPのLRP結合機能は、RAPの重複ドメインを表す融合タンパク質上で直接結合の調査を行うことによりマッピングされている(Willnow et al., J. Biol. Chem. 267(36):26172−80, 1992を参照)。RAP結合モチーフも、切断型RAP突然変異体および部位特異的RAP突然変異体を用いることによって特徴付けられている(Melman et al. J. Biol. Chem. 276(31):29338−29346, 2001を参照)。本発明による使用に適した特定のRAPポリペプチドフラグメントとしては、(RAPのN末端アミノ酸からRAPのC末端アミノ酸の位置に定義される)1〜323(RAP);1〜319;1〜250;1〜110;91〜210;191〜323;221〜323;1〜190;1〜200;および1〜210のフラグメントが挙げられる。一態様において、本発明で使用するためのRAPタンパク質は、シグナルペプチド(配列番号1)が欠如している成熟RAPである。関連する態様において、RAPは、N末端でRAPシグナルペプチドおよびC末端(配列番号8)でHNEL小胞体保留シグナルの両方が欠如している。好ましいRAPポリペプチドとしては、1〜323(RAP)のフラグメント、1〜319のフラグメント、191〜323のフラグメント、および1〜210のフラグメント、ならびに256〜270のアミノ酸を含むRAPの少なくとも71の連続したアミノ酸を有するフラグメント、および256〜270のアミノ酸を含みかつRAPd3の連続部分を含むRAPの少なくとも71の連続したアミノ酸を有するRAPフラグメントが挙げられる。配列KDELによって置換されたC末端4アミノ酸配列を有する修飾されたRAPポリペプチドも適している。C末端4アミノ酸配列(HNEL)が欠失された修飾されたRAPポリペプチドも適している。201〜210のアミノ酸からのRAPの天然配列を含むRAPポリペプチドフラグメントも好ましい。
【0079】
RAP変異体も特定のアミノ酸残基の保存的置換を含み得る。「保存的」アミノ酸置換は、関与する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、および/または両親媒性の性質における類似性に基づいてなされる。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン(Ala、A)、ロイシン(Leu、L)、イソロイシン(Ile、I)、バリン(Val、V)、プロリン(Pro、P)、フェニルアラニン(Phe、F)、トリプトファン(Trp、W)、およびメチオニン(Met、M)、が挙げられ、中立極性アミノ酸としては、グリシン(Gly、G)、セリン(Ser、S)、スレオニン(Thr、T)、システイン(Cys、C)、チロシン(Tyr、Y)、アスパラギン(Asn、N)、およびグルタミン(Gln、Q)が挙げられ、正荷電(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン(Arg、R)、リジン(Lys、K)、およびヒスチジン(His、H)が挙げられ、ならびに負荷電(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸(Asp、D)およびグルタミン酸(Glu、E)が挙げられる。変異は、組換えDNA法を用いてポリペプチド分子内のアミノ酸の置換を体系的に行い、結果として生じる組換え変異体の活性に関してアッセイすることによって導入され得る。核酸変化は、異なる種と核酸が異なる部位(可変位置)でまたは高度に保存された領域(定常領域)が異なる部位で行なわれ得る。本発明で有用なポリペプチド組成物を発現させる方法は、以下でより詳細に記述される。
【0080】
他の好ましい実施形態は、ポリペプチドが、282〜289、201〜210、および311〜319の位置上にRAPの天然アミノ酸配列を含むヒトまたは哺乳類のRAPポリペプチドを含む。LRP受容体に結合するRAPの突然変異型およびN末端またはC末端の切断型の変異体は、Melman et al. (J. Biol. Chem. 276(31):29338−46, 2001)に開示されている。その開示内容全体およびこれらのRAP突然変異型および切断型の変異体を詳細に参考として本明細書で援用される。他の好ましいRAPポリペプチドは、アミノ酸85〜148および178〜248の間にRAPの天然配列を含む(Farquhar et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA 91:3161−3162 (1994)を参照)。
【0081】
このように、多くの参考文献は、RAPおよびRAPフラグメントのLRP受容体への結合のための結合部位および構造活性の関係を開示している。当業者は、LRP結合部位を含有しかつ本発明によってRAPポリペプチドとしての使用に適したRAPポリペプチドを得るために、当該技術分野で周知の種々の技法を容易に適応させることができる。RAPの好ましいフラグメントは、生理的条件下で可溶性である。これらのポリペプチドのN末端またはC末端は、LRP粒子の結合能力が損なわれてなければ、所望のように短縮させることができる。
【0082】
D.環状RAPペプチド
RAPは、LDLR内の補体型繰り返し(CR)の特定のタンデム対に低ナノモル親和性で結合する第1のドメインおよび第3のドメイン(d1およびd3)の両方を有し、機能的に二座である(27)。約110のアミノ酸からなるドメイン3は、関連するCR対に対して最も高い親和性を有することが示されている。免疫原性を最小化し、生成効率を最大化し、かつ有効性を向上させるために、受容体結合に直接関与するそれらの配列にRAPを最小化することは有用である。しかし、d3の安定な折り畳みのためには、受容体接触面の形成において直接的に関与しないRAP内に配列が必要であることが示されている(28)。d3のN末端領域およびd2のC末端領域内に見られるこれらの付加的な配列は、従って、安定な折り畳みおよび高親和性の受容体結合を確実にするために必要である。単離したd3は、完全長RAPの中でd3がなすようには受容体にしっかりと結合しない。折り畳みを安定させる配列が欠如しているd3の切断型も受容体にあまり結合しない。RAPd3とLDLR CR34(29)との間の複合体に由来する構造データは、RAPd3の受容体結合配列が柔軟なループによって結合されたほぼ同じ長さの2つの逆平行αヘリックス内に見られることを示している。対のらせん状アンサンブルは、明白な左回りのねじれを有し、ねじれて延伸した「U」字に似ている。
【0083】
非天然のジスルフィド結合は、RAPd3の受容体結合ユニットを構成する2つの逆平行ヘリックスの終端を連結することで操作された(共有米国特許出願第60/919,238号、出願日2007年3月21日(代理人整理番号31075/42620)を参照)。その開示内容全体が参考として本明細書で援用される。この環化ペプチドは、ほぼ75のアミノ酸長であるが、非環化ペプチドと比べて優れた結合親和性を有し、110のアミノ酸RAPd3と同程度の親和性を有する。かかる最小化RAPd3ペプチドの1つの可能な適用は、本発明の方法によって治療薬を送達するための標的薬剤としてである。
【0084】
本発明によって考えられる環状RAPペプチドは、成熟RAPのアミノ酸配列(好ましくはドメイン3)に基づき、好ましくは長さが123未満のアミノ酸であり、かつ2つの非連続したアミノ酸の間に共有結合を含有する。一部の実施形態において、共有結合は、RAPペプチドの三次元構造を安定させる。一部の実施形態において、共有結合は、環状RAPペプチドが約1×10−8M以下(以下とは、親和性の向上を意味する)のKdを有するCR含有タンパク質に結合するように、結合親和性に改善をもたらす。かかる結合親和性は、当該技術分野で公知の任意の方法(例えば、放射性免疫法、ELISA、表面プラズモン共鳴法(SPR)に基づく技法(例えばBiacore)解析、または結合平衡除外法(例えばKinExA))によって測定されることができる。親和性データは、例えば、Scatchard et al., Ann N.Y. Acad. Sci., 51:660(1949)の方法によって解析され得る。典型的な実施形態において、CRタンパク質(例えばLRP1)の結合親和性は、約1×10−9、10−10、10−11、10−12、10−13、10−14M以下である。本発明は種々の大きさ(約103、約99、約95、約90、約85、約82、約80、約78、約76、75、74、73、72、71、70、69、68、67、66、65、64、63、62、61、60、59、58、57、または56以下のアミノ酸長)の環状RAPペプチドを提供する。一部の実施形態において、共有結合は、約76、75、74、73、72、71、70、69、68、67、66、65、64、63、62、61、60、59、58、57、または56のアミノ酸によって分離されるアミノ酸の間で形成される。
【0085】
一実施形態において、本発明の方法において有用なRAPペプチド(環状RAPペプチドを含む)のアミノ酸配列は、成熟RAPのN末端から少なくとも200、および最高243までのアミノ酸が欠損している。このように、RAPペプチドは、成熟RAPから1〜200、1〜220、1〜225、1〜230、1〜235、1〜240、1〜241、1〜242、1〜243、あるいは、1〜244、1〜245、1〜246、1〜247、または1〜248のアミノ酸が欠損していることもある。関連する実施形態において、RAPペプチドアミノ酸配列は、成熟RAPのC末端から少なくとも4、および最高11までのアミノ酸がさらに欠損している。このように、RAPペプチドは、成熟RAPから314〜323もしくは313〜323、あるいは304〜323、305〜323、306〜323、307〜323、308〜323、309〜323、310〜323、311〜323、または312〜323のアミノ酸が欠損していることもある。別の実施形態において、RAPペプチドアミノ酸配列は、(a)長さが少なくとも71のアミノ酸であり、かつ(b)256〜270のアミノ酸を含む成熟RAPの連続する部分を含む。関連する実施形態において、RAPペプチドアミノ酸配列は、(a)長さが少なくとも71のアミノ酸であり、かつ(b)256〜270のアミノ酸を含む成熟RAPドメイン3の連続する部分を含む。RAPペプチド(環状RAPペプチドを含む)の基礎を形成し得るRAPの典型的な部分には、成熟RAP(配列番号1)から200〜323、221〜323、200〜319、221〜319、243〜319、244〜319、249〜319、200〜313、221〜313、243〜313、244〜313、249〜313、200〜303、221〜303、243〜303、244〜303、または249〜303のアミノ酸が含まれる。
【0086】
本明細書で記述するように、天然のRAPのそれと類似している(例えば、天然のRAPと比較して約5倍以下の相違)CR含有タンパク質に対して親和性および選択性を示す環状RAPペプチドを調製することができる。天然のRAPと比較してLRP1に対して向上した親和性を示す環状RAPペプチドも、調製することができる。一実施形態において、環状RAPペプチドは、LRP1(P98157)に対して少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、4倍、5倍、7倍、10倍、または20倍向上した親和性(天然のRAPと比較して)を示す。
【0087】
本発明によって考えられる環状RAPペプチドは、天然RAP配列からなることもあり、または天然配列への変異が含まれることもある。典型的な実施形態において、本発明の環状RAPペプチドは、配列番号3に記述する243〜313のアミノ酸からなるRAPまたは配列番号4に記述する249〜303のアミノ酸からなるRAPのいずれかと少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、環状RAPペプチドは、長さが約85未満のアミノ酸であり、50の連続するアミノ酸を含む。これらのアミノ酸は、配列番号4と少なくとも70%同一であり、約1×10−8M未満の結合親和性Kdを有するCR含有タンパク質に結合する。
【0088】
環状RAPペプチドは、天然RAP配列と比較して保存的置換(例えば、5まで、10また、15まで、20まで、または25まで)を含有するが、LRP1に対して依然として結合親和性を保持するように作ら得る。非保存的置換を含有するRAPペプチドも、LRP1に対する結合親和性を保持することもある。例えば、成熟RAPの217、249、または251のいずれか1つの位置での非保存的突然変異は、結合親和性に影響を及ぼさないことが示されている。
【0089】
前述の実施形態のいずれかにおいて、RAPペプチドは、前記ペプチドのN末端もしくはその近接にシステインを、および前記ペプチドのC末端もしくはその近接にシステインを含有することもあり、これら2つのシステイン間でジスルフィド結合を形成することによって該ペプチドを環化し、かつαヘリックスを安定させる。場合により、グリシンまたはプロリンは、これらのシステインおよびαヘリックス間(例えば、N末端のCys−GlyおよびC末端のGly−Cys)に挿入され得る。グリシンを導入することにより、隣接する非天然のヘリックス間ジスルフィド結合のためにαヘリックスで切断可能である。
【0090】
環状ペプチド(Hep1)は、非天然の内部ジスルフィド結合によって安定する。これは、ペプチドとLRP1との間に複合体が形成されるとおそらくエントロピー損失を軽減させることによって結合熱力学が向上する(Kd>50nMからKd<1nMに)。LRP1に結合し、かつ肝疾患の処置に有用な付加的なRAP変異体は、共有国際特許出願第PCT/US2006/36453に記述されており、その開示内容全体が参考として本明細書で援用される。
【0091】
Hep1配列は、N末端で3つの位置(LEA/XCG)およびC末端で2つの位置(RI/GC)(配列番号9)でヒトRAPとは異なる。患者は、RAPに由来するペプチドに免疫学的に耐えなければならない。RAPのドメイン1および2内のエピトープは、ラットにおけるHeymann腎炎の実験的な発症に役割を果たし、一方Hep1ペプチドは、全体的にドメイン3に由来する。ヒトRAPは、げっ歯類およびイヌの両RAP配列に対して配列相違があるので、これらの種は、静脈内投与から数週間内に著しい抗薬物抗体力価を発現させることが期待される。
【0092】
本明細書の環状RAPペプチドのいずれも、本明細書に記述するようにオリゴマー組み合わせに多量体形成されることがさらに考えられる。本明細書において「多量体形成環状RAPペプチド」は、本明細書で記述するように、環状RAPペプチドであるRAPd3の変異体を2つ以上含むポリペプチドをいう。用語「多量体」および「オリゴマー」は、本明細書で同じ意味で使われる。一実施形態において、オリゴマーまたは多量体は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、または少なくとも8つの環状RAPペプチドを含む。1つの典型的な実施形態において、環状RAPペプチドは、多量体化またはオリゴマー化を促進させるためにビオチン分子に結合体化される。ビオチン結合体化環状ペプチドは、次いで、ストレプトアビジンに結合することによって、または抗ビオチン抗体に結合することによって多量体形成され得る(図3)。環状RAPペプチドのオリゴマーまたは多量体は、また、以下に記述する当該技術分野で周知の他の技法によって作製されることもできる。
【0093】
ペプチドの多量体またはオリゴマーを作製するためのいくつかの技法は、当該技術分野で公知である。例えば、ペプチドは、本明細書で記述するようにリンカーによって、またはポリエチレングリコールを介して結合されることができる。Zhang et al., Bioconjug Chem. 14:86−92, 2003(ポリ(エチレングリコール)(PEG)スペーサーまたはわずか2つのアミノ酸のいずれかによって結合したアミロイド線維結合ペプチドは、原線維に対して100倍高い親和性を表示し、一方分岐したPEG上にペプチドの6つのコピーを配置することによって結果として10000倍高い親和性が生じた)を参照。その参考文献全体が参考として本明細書で援用される。ペプチドは、ストレプトアビジンへの共役を介してのビオチン化の後に、容易に多量体形成されることができる。例えば、Guillaume et al., J. Biol. Chem., 278(7):4500−4509, 2003(ペプチド多量体は、アビジンまたはアビジン誘導体を介する結合によって調製されることができ、かつ四量体および八量体の均質調製も可能である)を参照。その参考文献全体が参考として本明細書で援用される。受容体結合能力を有するペプチドは、抗体または免疫グロブリン骨格の異なるCDR領域に移植され得る。Frederickson et al., Proc Natl Acad Sci USA. 103(39):14307−12, 2006.Epub Sep 14, 2006(2つの移植されたmpl受容体結合ペプチドを含有する抗体およびフラグメントは、天然リガンドと等効力であると推定される方法でmpl受容体を刺激した)を参照。その参考文献全体が参考として本明細書で援用される。ペプチドは、リンカーの有無にかかわらず、タンデムな様式または分岐した様式で抗体Fcドメインに付着され得る。国際公開第WO 00/24782、公開日2000年5月4日(その開示内容全体が参考として本明細書で援用される)を参照。ペプチドおよび他のタンパク質は、多酵素複合体に由来する高分子の骨格上に示され得る。Domingo et al., J Mol Biol. 305(2):259−67, 2001(その開示内容全体が参考として本明細書で援用される)を参照。ペプチドを示すのに適したタンパク質の骨格の概説については、Hosse et al., Protein Science 15:14−27, 2006(フィブロネクチンIII型ドメイン、リポカリン、ノッチング、チトクロム、b562、クニッツ型プロテアーゼ阻害剤、Z−ドメイン、および糖結合タンパク質CBM4−2等の骨格を概説する)を参照。その参考文献全体が参考として本明細書で援用される。
【0094】
従って、典型的な実施形態において、二価のオリゴマー組み合わせは、環状RAPペプチドおよび抗体Fc領域を含むポリペプチドのホモ二量体化によってなされる。四価のオリゴマー組み合わせは、環状RAPペプチドを含む四量体免疫グロブリン(2本の重鎖および2本の軽鎖を含有する)の抗体可変領域を置換することによってなされる。さらに他の実施形態において、二価、三価、四価、または他のオリゴマー組み合わせは、PEG分子に環状RAPペプチドを結合体化させることによってなされる。他のオリゴマー組み合わせは、当該技術分野において当業者によって想定されることができる。
【0095】
E.RAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体と活性薬剤との結合体
「RAP結合体」、「リガンド−ポリペプチド結合体」、「活性薬剤に結合体化したRAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体を含むキメラ分子」は、それぞれ活性薬剤に付着したRAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体を含む化合物をいう。本明細書において、用語「結合体化した」とは、1つ以上の治療薬およびRAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体のポリペプチドが、例えば、共有化学結合によって、物理的力(例えば、ファンデルワールス力もしくは疎水性相互作用、カプセル化、埋め込み、またはそれらの組み合わせ)によって物理的に結合されることを意味する。好ましい実施形態において、1つ以上の治療薬およびRAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体のポリペプチドは、共有化学結合によって物理的結合される。そのようなものとして、好ましい化学療法薬は、RAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体もしくはそれらのフラグメントへの結合体化で用いられるアルコール基、酸性基、カルボニル基、チオール基、またはアミン基等の官能基を含有する。アドリアマイシンはアミンクラスに属し、しかもカルボニルクラスを介して結合する可能性もある。パクリタキセルは、アルコールクラスに属する。適切な結合体化基をもたない化学療法薬は、さらに修飾されてかかる基を付加することもある。これらの化合物のすべては、本発明で考えられる。複数の治療薬の場合、種々の結合体の組み合わせが用いられることができる。
【0096】
一部の実施形態において、直接的(介在する原子のない)または間接的(原子に共有結合した鎖等のリンカーを介して)のいずれかであり得る共有化学結合は、RAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体および活性薬剤を結合する。好ましい実施形態において、結合体のRAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体および活性薬剤部分は、RAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体の原子と、活性薬剤の原子との間の共有結合によって直接的に結合される。一部の好ましい実施形態において、受容体結合部分は、本発明によって、リンカーによって化合物の活性薬剤の部分に結合される。リンカーは、RAP、RAPフラグメント、もしくはRAP変異体を活性薬剤に結合することの可能な共有結合、または実質的に任意のアミノ酸配列のペプチド、または任意の分子もしくは原子を含む。
【0097】
一部の実施形態において、リンカーは、1〜約60の原子、または1〜30以上の原子、2〜5の原子、2〜10の原子、5〜10の原子、または10〜20の原子の長さの鎖を含む。一部の実施形態において、鎖の原子は、すべて炭素原子である。一部の実施形態において、鎖の原子は、C、O、N、およびSからなる群から選択される。鎖の原子およびリンカーは、より可溶な結合体をもたらすために、それらの予想される溶解度(親水性)によって選択され得る。一部の実施形態において、リンカーは、酵素攻撃の対象である官能基をリソソームに備えている。一部の実施形態において、リンカーは、標的組織または器官に見られる酵素によって攻撃される対象であり、かつ攻撃もしくは加水分解時に活性薬剤と、RAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体との結合として役立つ官能基を備える。一部の実施形態において、リンカーは、標的部位で見られる条件下(例えば低pHのリソソーム)で加水分解にさらされる官能基を備える。リンカーは、かかる官能基を1つ以上含有する。一部の実施形態において、リンカーの長さは、(活性薬剤が大きいとき)RAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体の結合部位および活性薬剤の活性結合部位のうちの1つまたは両方との間の立体障害の可能性を減少させるのに十分な長さである。
【0098】
リンカーが共有結合またはペプチドであり、かつ活性薬剤がポリペプチドである場合、結合体全体は、融合タンパク質であり得る。かかるペプチジルリンカーは、任意の長さでよい。典型的なリンカーは、長さが約1〜50のアミノ酸、5〜50、または10〜30のアミノ酸である。かかる融合タンパク質は、当業者に公知の組換え遺伝子操作方法によって生成され得る。一部の実施形態において、結合体のRAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体は、迅速に分解して活性化合物を放出するように製剤化される。他の実施形態において、リンカーは、細胞内環境条件下で、またはより好ましくはリソソーム環境条件下で切断を受けやすく、RAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体のポリペプチド部分から活性薬剤の部分を放出または分離する。
【0099】
結合体は、同一のRAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体に結合された1つ以上の活性薬剤を含むことができる。例えば、結合体化反応は、活性薬剤の1〜5、約5、約1〜10、約5〜10、約10〜20、約20〜30、または30以上の分子を、RAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体のポリペプチドに結合体化させることもある。これらの製剤は、混合物として利用されることもでき、または特定の化学量論的製剤に精製されることもできる。当業者は、どの形式、どの化学量論比が好ましいかを決定することができる。さらに、標的部位または区画に2つ以上の型の薬剤を送達することが望ましい場合、2つ以上の型の活性薬剤は、RAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体ポリペプチドに結合され得る。複数の活性薬剤種は、同一のRAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体のポリペプチド(例えばアドリアマイシン−シスプラチンRAP、(または他のRAP変異体)結合体)に付着され得る。従って、結合体は様々な化学量論比からなり得、2種類以上の活性薬剤を取り込むこともできる。これらは、精製混合物に分離されることも可能であり、または全体として利用されることもできる。
【0100】
本明細書に記述するように、当該技術分野で公知の方法を用いて結合体化されたRAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体またはそれらのフラグメントは、所望通りに修飾され、その安定性または薬物動態特性(例えばPEG付加)を増強させることができる。RAP変異体ポリペプチドおよび活性薬剤を結合体化させるために適切なリンカーおよびそれらの官能基、ならびにそれらを調製するために容易に順応できる合成化学方法は、米国特許出願第2003253890号に記述されており、その開示内容全体が参考として本明細書で援用される。
【0101】
これらの結合体の合成は、効率的かつ簡便であり、増強された水溶解度を有する薬物を高収率で生成する。
【0102】
F.活性薬剤
本発明による活性薬剤は、生物学的過程に影響することができる薬剤を含む。本発明の化合物、組成物、および方法での使用に特に好ましい活性薬剤は、薬物および診断薬を含む治療薬である。用語「薬物」または「治療薬」とは、治療的有効量で投与されるとき、薬理活性を有するまたは健康に良い活性薬剤をいう。特に好ましい薬剤は、天然に存在する生物学的作用物質(例えば、酵素、タンパク質、ポリヌクレオチド、抗体、ポリペプチド、ナノ粒子、複合糖質)である。一部の実施形態において、RAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体に結合体化した活性薬剤は、生体宿主において生物学的過程を調節することの可能な分子、ならびに任意の結合部分またはそのフラグメントである。薬物または治療薬の例としては、疾患もしくは状態の予防、診断、軽減、処置、または治療で用いられる物質が挙げられる。前記薬剤は、疾患の原因となる薬剤ではないことが特に考えられる。
【0103】
i.タンパク質活性薬剤
活性薬剤は、非タンパク質またはタンパク質であり得る。活性薬剤は、タンパク質もしくは酵素、またはタンパク質もしくは酵素の治療活性または生物活性をいくらか、実質的にすべて、もしくはすべてを依然として保持している任意のフラグメントであり得る。一部の実施形態において、発現されないもしくは生じない場合、または発現もしくは生成において実質的に減少する場合、タンパク質もしくは酵素は疾患を発症させるものである。好ましくは、タンパク質または酵素は、ヒトもしくはマウスに由来するまたはそれらから得られる。
【0104】
本発明の好ましい実施形態において、RAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体のポリペプチドに結合体化した活性薬剤がタンパク質もしくは酵素、またはタンパク質もしくは酵素の生物活性を有するそれらのフラグメントである場合、前記活性薬剤は、ヒトもしくは哺乳類のタンパク質もしくは酵素の対応する部分のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有する。他の実施形態において、結合体の活性薬剤部分は、ヒトまたは哺乳類の種を原産とするタンパク質または酵素である。他の実施形態において、タンパク質もしくは酵素、またはそれらのフラグメントは、対応するヒトもしくは哺乳類のタンパク質または酵素の天然配列と実質的に相同(すなわち、少なくとも10、25、50、100,150、または200のアミノ酸の長さにわたるアミノ酸配列において、または活性薬剤の全長において少なくとも80%、85%、90%、95%、より好ましくは98%、または最も好ましくは99%同一)である。
【0105】
RAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体−活性薬剤の結合体は、RAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体、またはそれらのLRP1−結合フラグメントに結合した1つ以上の活性薬剤部分(例えば、1〜10もしくは1〜4もしくは2〜3の部分)を含むことができる。例えば、結合体化反応は、1から4以上の分子を単一のRAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体に結合体化することができる。これらの製剤は、混合物として利用されことが可能であり、または特定のRAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体のポリペプチド−薬剤の化学量論的製剤に精製されることもできる。当業者は、どの形式およびどの化学量論比が好ましいかを決定することができる。
【0106】
薬剤に結合体化したこれらのRAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体は、様々な化学量論比からなり得る。これらは、精製混合物に分離されることも可能であり、または全体として利用されることもできる。融合においてLRP1に結合するLRP1結合部分の能力に重要であるのは、RAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体および活性薬剤の順序であり得る。従って、好ましい実施形態において、RAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体は、タンパク質活性薬剤コード配列へのN末端に位置している。
【0107】
ii.薬物活性薬剤
通常、薬物活性薬剤は、任意の大きさでもよい。好ましい薬物は、目的の標的に結合することの可能な有機小分子である。小分子の場合、結合体の薬物部分は、通常、少なくとも約50Da、普通は少なくとも約100Daの分子量を有する。この場合分子量は500Da以上の高い程度であり得るが、普通は約2000Daを超えることはない。
【0108】
薬物部分は、主題の方法を行う間に、結合体が投与される宿主内の標的と相互作用することができる。
【0109】
一部の実施形態において、活性薬剤または薬物は、イソシアネート試薬と反応するヒドロキシル基もしくはアミノ基を有し、あるいは活性薬剤は、イソシアネート試薬と反応するためのヒドロキシル基もしくはアミノ基を導入するように化学的に修飾される。
【0110】
一部の実施形態において、活性薬剤または薬物は、共有結合(好ましくは活性薬剤の所望の生物活性を失わずに)で修飾されることもおよび/または関与することもできる領域を含む。薬物部分は、上述の官能基から1つ以上と置換された環状炭素構造もしくは複素環構造および/または芳香族構造もしくは多環芳香属構造を含むことが多い。また、目的の薬物部分としての構造は、生体分子、タンパク質、酵素、多糖類、ならびにポリ核酸(ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、それらの誘導体、構造類似体、または組み合わせを含む)に見られる。
【0111】
適切な活性薬剤としては、精神薬理剤、例えば(1)中枢神経系抑制剤、例えば全身麻酔薬(バルビツレート、ベンゾジアゼピン、ステロイド、シクロヘキサノン誘導体、および様々な薬剤)、催眠鎮静薬(ベンゾジアゼピン、バルビツレート、ピペリジンジオンおよびトリオン、キナゾリン誘導体、カルバメート、アルデヒドおよび誘導体、アミド、環状ウレイド、ベンゾアゼピンおよび関連薬物、フェノチアジン等)、中枢随意筋緊張修飾性薬(ヒダントイン、バルビツレート、オキサゾリジンジオン、スクシンイミド、アシルウレイド、グルタルイミド、ベンゾジアゼピン、第2級および第3級アルコール、ジベンゾアゼピン誘導体、バルプロ酸および誘導体、GABA類似体等の抗痙攣薬)、鎮痛薬(モルヒネおよび誘導体、オリパビン誘導体、モルフィナン誘導体、フェニルピペリジン、2,6−メタン−3−ベンゾカイン誘導体、ジフェニルプロピルアミンおよびアイソスター、サリチル酸、p−アミノフェノール誘導体、5−ピラゾロン誘導体、アリール酢酸誘導体、フェナム酸およびアイソスター等)、ならびに制吐薬(抗コリン薬、抗ヒスタミン薬、抗ドパミン薬等)、(2)中枢神経系刺激薬、例えば興奮薬(呼吸刺激薬、痙攣刺激薬、精神運動刺激薬)、麻薬拮抗薬(モルヒネ誘導体、オリパビン誘導体、2,6−メタン−3−ベンゾキサシン誘導体、モルフィナン誘導体)、向知性薬、(3)神経薬理物質、例えば抗不安鎮静薬(ベンゾジアゼピン、プロパンジオールカルバメート)、統合失調症治療薬(フェノチアジン誘導体、チオキサンチン誘導体、他の三環系 化合物、ブチロフェノン誘導体およびアイソスター、ジフェニルブチルアミン誘導体、置換ベンズアミド、アリールピペラジン誘導体、インドール誘導体等.)、抗うつ薬(三環系化合物、MAO阻害剤等.)、(4)呼吸器薬、例えば中枢性鎮咳薬(アヘンアルカロイドおよびそれらの誘導体);薬力学的作用薬、例えば(1)末梢神経系薬物、例えば局所麻酔薬(エステル誘導体、アミド誘導体)、(2)シナプス接合部位または神経効果器接合部位で作用する薬物(例えば、コリン作用薬、コリン遮断薬、神経筋遮断薬、アドレナリン作用薬、抗アドレナリン薬)、(3)平滑筋活性薬物、例えば鎮痙薬(抗コリン薬、筋向性鎮痙薬)、血管拡張剤、平滑筋刺激薬、(4)ヒスタミンならびに抗ヒスタミン薬、例えばヒスタミンおよびその誘導体(ベタゾール)、抗ヒスタミン薬(H1拮抗剤、H2拮抗剤)、ヒスタミン代謝薬物、(5)心血管治療薬、例えば強心剤(植物抽出物、ブテノライド、ペンタジエンオリド、エリスロフレウム種由来のアルカロイド、イオノフォア、アドレナリン受容体刺激薬等)、抗不整脈薬、血圧降下薬、抗高脂血薬(クロフィブリン酸誘導体、ニコチン酸誘導体、ホルモン、および類似体、抗生物質、サリチル酸および誘導体)、抗静脈瘤薬、止血薬、(6)血液および造血系薬物、例えば貧血治療薬、血液凝固薬(止血剤、抗凝固薬、抗血栓薬、血栓溶解薬、血液タンパク質およびそれらの画分)、(7)消化管薬物、例えば消化薬(健胃薬、利胆薬)、抗潰瘍薬、止痢薬、(8)局所作用薬;化学療法薬、例えば(1)抗感染症薬、例えば外部寄生虫駆除剤(塩素化炭化水素、ピレトリン、硫化化合物)、駆虫薬、抗原虫薬、抗マラリア剤、抗アメーバ薬、抗リーシュマニア薬、抗トリコモナス剤、抗トリパノソーマ剤、スルホンアミド、抗ミコバクテリア薬、抗ウイルス化学療法薬、(2)細胞増殖抑制剤、すなわち抗腫瘍薬または細胞傷害性薬(例えば、アルキル化剤(例えば、メクロレタミンハイドロクロライド(ナイトロジェンマスタード、Mustargen、HN2)、シクロホスファミド(Cytoxan、Endoxana)、イホスファミド(IFEX)、クロラムブシル(Leukeran)、メルファラン(フェニルアラニンマスタード、L−サルコリシン、Alkeran、L−PAM)、ブスルファン(Myleran)、チオテパ(トリエチレンチオホスホルアミド)、カルムスチン(BiCNU、BCNU)、ロムスチン(CeeNU、CCNU)、ストレプトゾシン(Zanosar)、ダカルバジン等)、植物アルカロイド(例えば、ビンクリスチン(Oncovin)、ビンブラスチン(Velban、Velbe)、パクリタキセル(Taxol)等)、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート(MTX)、メルカプトプリン(Purinethol、6−MP)、チオグアニン(6−TG)、フルオロウラシル(5−FU)、シタラビン(Cytosar−U、Ara−C)、アザシチジン(Mylosar、5−AZA)等)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD、Cosmegen)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダウノルビシン(ダウノマイシン、Cerubidine)、イダルビシン(Idamycin)、ブレオマイシン(Blenoxane)、ピカマイシン(ミトラマイシン,、Mithracin)、マイトマイシン(Mutamycin)等)、ならびに他の抗細胞増殖剤(例えば、ヒドロキシ尿素(Hydrea)、プロカルバジン(Mutalane)、ダカルバジン(DTIC−Dome)、シスプラチン(Platinol)、カルボプラチン(Paraplatin)、アスパラギナーゼ(Elspar)、エトポシド(VePesid、VP−16−213)、アムサクリン(AMSA、m−AMSA)、ミトタン(Lysodren)、ミトキサントロン(Novatrone)、(3)以下のキナーゼを抑制し得る受容体チロシンキナーゼ阻害剤(FGFR、PDGFR、VEGFR2、VEGFR、HER2、Ebr−B2)および他(SU6668(FGFR、PDGFR、VEGFR、VEGFR2)、スニチニブ(PDGFR)、ベバシズマブ(VEGFR)、ゲフィチニブ、エルロチニブ、セツキシマブ(EGFR)、ラパチニブ(Erb−B2)、トラスツズマブ(HER2)、およびアレムツズマブ(抗CD52)、ダサチニブ、イマチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ等を含むがこれらに限定されない。)、(4)抗腫瘍薬(SU6668、ベバシズマブ、スニチニブ、バンデタニブ(VEGFR2)、BMS−275291、COL−3、ネオバスタット(MMP)、ビタキシン等を含むがこれらに限定されない。)。好ましい化学療法薬は、遊離型で、所望の用量で許容されない全身毒性を示すものである。かかる薬剤の治療レベルと付随した通常の全身毒性は、それらをRAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体のポリペプチドに結合させることで減少させることができる。有用な治療薬であるが、用量が心毒性によって制限される心毒性化合物は特に好ましい。典型的な例は、アドリアマイシン(ドキソルビシンとしても公知である)およびその類似体(例えばダウノルビシン)である。RAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体のポリペプチドをかかる薬物に結合することによって、心臓での活性薬物の蓄積および付随する心毒性を阻止することができる。
【0112】
適切な活性薬剤としては、抗生物質、例えばアミノグリコシド(例えば、アミカシン、アプラマイシン、アルベカシン、バンベルマイシン、ブチロシン、ジベカシン、ジヒドロストレプトマイシン、フォーチミシン、ゲンタマイシン、イセパミシン、カナマイシン、ミクロノマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、パロモマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トプラマイシン、トロスペクトマイシン)、アンフェニコール(例えば、アジダムフェニコール、クロラムフェニコール、フロルフェニコール、およびチアンフェニコール)、アンサマイシン(例えば、リファミド、リファンピン、リファマイシン、リファペンチン、リファキシミン)、β−ラクタム(例えば、カルバセフェム、カルバペネム、セファロスポリン、セファマイシン、モノバクタム、オキサフェム、ペニシリン)、リンコサミド(例えば、クリンダマイシン、リンコマイシン)、マクロライド(例えば、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン等)、ポリペプチド(例えば、アンホマイシン、バシトラシン、カプレオマイシン等)、テトラサイクリン(例えば、アピサイクリン、クロルテトラサイクリン、クロモサイクリン等)、合成抗菌剤(例えば、2,4−ジアミノピリミジン、ニトロフラン、キノロンおよびその類似体、スルホンアミド、スルホン)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0113】
適切な活性薬剤としては、抗真菌剤、例えばポリエン(例えば、アンホテリシンB、カンジシジン、デルモスタチン、フィリピン、フンギクロミン、ハチマイシン、ハマイシン、ルセンソマイシン、メパルトリシン、ナタマイシン、ニスタチン、ペチロシン、ペリマイシン);合成抗真菌薬、例えばアリルアミン(例えば、ブテナフィン、ナフチフィン、テルビナフィン)、イミダゾール(例えば、ビホナゾール、ブトコナゾール、クロダントイン、クロルミダゾール等)、チオカルバメート(例えばトルシクラート)、トリアゾール(例えば、フルコナゾール、イトラコナゾール、テルコナゾール)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0114】
適切な活性薬剤としては、駆虫薬(例えば、アレコリン、アスピジン、アスピジノール、ジクロロフェン、エンベリン、コシン、ナフタレン、ニクロサミド、ペレチエリン、キナクリン、アラントラクトン、アモカルジン、アモスカナート、アスカリドール、ベフェニウム、ビトスカナート、四塩化炭素、カルバクロール、シクロベンダゾール、ジエチルカルバマジン等)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0115】
適切な活性薬剤としては、抗マラリア薬(例えば、アセダプソン、アモジアキン、アルテテル、アルテメテル、アルテミシニン、アルテスナート、アトバコン、ベベエリン、ベルベリン、チラータ、クロログアニド、クロロキン、クロルプログアニル、キナ、シンコニジン、シンコニン、シクログアニル、ゲンチオピクリン、ハロファントリン、ヒドロキシクロロキン、塩酸メフロキン、3−メチルアルサセチン、パマキン、プラスモシド、プリマキン、ピリメタミン、キナクリン、キニジン、キニーネ、キノシド、キノリン、ヒ酸二ナトリウムが挙げられるがこれらに限定されない。
【0116】
適切な活性薬剤としては、抗原虫剤(例えば、アクラニル、チニダゾール、イプロニダゾール、エチルスチバミン、ペンタミジン、アセタルソン、アミニトロゾール、アニソマイシン、ニフラテル、チニダゾール、ベンズイダゾール、スラミン等)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0117】
活性薬剤としての使用に適した薬物も以下に一覧される。すなわち、Goodman and Gilman’s, The Pharmacological Basis of Therapeutics (9th Ed)(Goodman et al. eds)(McGraw−Hill)(1996);および1999 Physician’s Desk Reference(1998)。
【0118】
適切な活性薬剤としては、米国特許第5,880,161号、第5,877,206号、第5,786,344号、第5,760,041号、第5,753,668号、第5,698,529号、第5,684,004号、第5,665,715号、第5,654,484号、第5,624,924号、第5,618,813号、第5,610,292号、第5,597,831号、第5,530,026号、第5,525,633号、第5,525,606号、第5,512,678号、第5,508,277号、第5,463,181号、第5,409,893号、第5,358,952号、第5,318,965号、第5,223,503号、第5,214,068号、第5,196,424号、第5,109,024号、第5,106,996号、第5,101,072号、第5,077,404号、第5,071,848号、第5,066,493号、第5,019,390号、第4,996,229号、第4,996,206号、第4,970,318号、第4,968,800号、第4,962,114号、第4,927,828号、第4,892,887号、第4,889,859号、第4,886,790号、第4,882,334号、第4,882,333号、第4,871,746号、第4,863,955号、第4,849,563号、第4,845,216号、第4,833,145号、第4,824,955号、第4,785,085号、第4,684,747号、第4,618,685号、第4,611,066号、第4,550,187号、第4,550,186号、第4,544,501号、第4,541,956号、第4,532,327号、第4,490,540号、第4,399,283号、第4,391,982号、第4,383,994号、第4,294,763号、第4,283,394号、第4,246,411号、第4,214,089号、第4,150,231号、第4,147,798号、第4,056,673号、第4,029,661号、第4,012,448号に開示される抗腫瘍薬が挙げられるがこれらに限定されない。
【0119】
米国特許第5,192,799号、第5,036,070号、第4,778,800号、第4,753,951号、第4,590,180号、第4,690,930号、第4,645,773号、第4,427,694号、第4,424,202号、第4,440,781号、第5,686,482号、第5,478,828号、第5,461,062号、第5,387,593号、第5,387,586号、第5,256,664号、第5,192,799号、第5,120,733号、第5,036,070号、第4,977,167号、第4,904,663号、第4,788,188号、第4,778,800号、第4,753,951号、第4,690,930号、第4,645,773号、第4,631,285号、第4,617,314号、第4,613,600号、第4,590,180号、第4,560,684号、第4,548,938号、第4,529,727号、第4,459,306号、第4,443,451号、第4,440,781号、第4,427,694号、第4,424,202号、第4,397,853号、第4,358,451号、第4,324,787号、第4,314,081号、第4,313,896号、第4,294,828号、第4,277,476号、第4,267,328号、第4,264,499号、第4,231,930号、第4,194,009号、第4,188,388号、第4,148,796号、第4,128,717号、第4,062,858号、第4,031,226号、第4,020,072号、第4,018,895号、第4,018,779号、第4,013,672号、第3,994,898号、第3,968,125号、第3,939,152号、第3,928,356号、第3,880,834号、第3,668,210号に開示される神経薬理物質/向精神薬。
【0120】
米国特許第4,966,967号、第5,661,129号、第5,552,411号、第5,332,737号、第5,389,675号、第5,198,449号、第5,079,247号、第4,966,967号、第4,874,760号、第4,954,526号、第5,051,423号、第4,888,335号、第4,853,391号、第4,906,634号、第4,775,757号、第4,727,072号、第4,542,160号、第4,522,949号、第4,524,151号、第4,525,479号、第4,474,804号、第4,520,026号、第4,520,026号、第5,869,478号、第5,859,239号、第5,837,702号、第5,807,889号、第5,731,322号、第5,726,171号、第5,723,457号、第5,705,523号、第5,696,111号、第5,691,332号、第5,679,672号、第5,661,129号、第5,654,294号、第5,646,276号、第5,637,586号、第5,631,251号、第5,612,370号、第5,612,323号、第5,574,037号、第5,563,170号、第5,552,411号、第5,552,397号、第5,547,966号、第5,482,925号、第5,457,118号、第5,414,017号、第5,414,013号、第5,401,758号、第5,393,771号、第5,362,902号、第5,332,737号、第5,310,731号、第5,260,444号、第5,223,516号、第5,217,958号、第5,208,245号、第5,202,330号、第5,198,449号、第5,189,036号、第5,185,362号、第5,140,031号、第5,128,349号、第5,116,861号、第5,079,247号、第5,070,099号、第5,061,813号、第5,055,466号、第5,051,423号、第5,036,065号、第5,026,712号、第5,011,931号、第5,006,542号、第4,981,843号、第4,977,144号、第4,971,984号、第4,966,967号、第4,959,383号、第4,954,526号、第4,952,692号、第4,939,137号、第4,906,634号、第4,889,866号、第4,888,335号、第4,883,872号、第4,883,811号、第4,847,379号、第4,835,157号、第4,824,831号、第4,780,538号、第4,775,757号、第4,774,239号、第4,771,047号、第4,769,371号、第4,767,756号、第4,762,837号、第4,753,946号、第4,752,616号、第4,749,715号、第4,738,978号、第4,735,962号、第4,734,426号、第4,734,425号、第4,734,424号、第4,730,052号、第4,727,072号、第4,721,796号、第4,707,550号、第4,704,382号、第4,703,120号、第4,681,970号、第4,681,882号、第4,670,560号、第4,670,453号、第4,668,787号、第4,663,337号、第4,663,336号、第4,661,506号、第4,656,267号、第4,656,185号、第4,654,357号、第4,654,356号、第4,654,355号、第4,654,335号、第4,652,578号、第4,652,576号、第4,650,874号、第4,650,797号、第4,649,139号、第4,647,585号、第4,647,573号、第4,647,565号、第4,647,561号、第4,645,836号、第4,639,461号、第4,638,012号、第4,638,011号、第4,632,931号、第4,631,283号、第4,628,095号、第4,626,548号、第4,614,825号、第4,611,007号、第4,611,006号、第4,611,005号、第4,609,671号、第4,608,386号、第4,607,049号、第4,607,048号、第4,595,692号、第4,593,042号、第4,593,029号、第4,591,603号、第4,588,743号、第4,588,742号、第4,588,741号、第4,582,854号、第4,575,512号、第4,568,762号、第4,560,698号、第4,556,739号、第4,556,675号、第4,555,571号、第4,555,570号、第4,555,523号、第4,550,120号、第4,542,160号、第4,542,157号、第4,542,156号、第4,542,155号、第4,542,151号、第4,537,981号、第4,537,904号、第4,536,514号、第4,536,513号、第4,533,673号、第4,526,901号、第4,526,900号、第4,525,479号、第4,524,151号、第4,522,949号、第4,521,539号、第4,520,026号、第4,517,188号、第4,482,562号、第4,474,804号、第4,474,803号、第4,472,411号、第4,466,979号、第4,463,015号、第4,456,617号、第4,456,616号、第4,456,615号、第4,418,076号、第4,416,896号、第4,252,815号、第4,220,594号、第4,190,587号、第4,177,280号、第4,164,586号、第4,151,297号、第4,145,443号、第4,143,054号、第4,123,550号、第4,083,968号、第4,076,834号、第4,064,259号、第4,064,258号、第4,064,257号、第4,058,620号、第4,001,421号、第3,993,639号、第3,991,057号、第3,982,010号、第3,980,652号、第3,968,117号、第3,959,296号、第3,951,950号、第3,933,834号、第3,925,369号、第3,923,818号、第3,898,210号、第3,897,442号、第3,897,441号、第3,886,157号、第3,883,540号、第3,873,715号、第3,867,383号、第3,873,715号、第3,867,383号、第3,691,216号、第3,624,126号に開示される心血管治療薬。
【0121】
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【0123】
米国特許第4,450,159号、第4,450,159号、第5,905,085号、第5,883,119号、第5,880,280号、第5,877,184号、第5,874,594号、第5,843,452号、第5,817,672号、第5,817,661号、第5,817,660号、第5,801,193号、第5,776,974号、第5,763,478号、第5,739,169号、第5,723,466号、第5,719,176号、第5,696,156号、第5,695,753号、第5,693,648号、第5,693,645号、第5,691,346号、第5,686,469号、第5,686,424号、第5,679,705号、第5,679,640号、第5,670,504号、第5,665,774号、第5,665,772号、第5,648,376号、第5,639,455号、第5,633,277号、第5,624,930号、第5,622,970号、第5,605,903号、第5,604,229号、第5,574,041号、第5,565,560号、第5,550,233号、第5,545,734号、第5,540,931号、第5,532,248号、第5,527,820号、第5,516,797号、第5,514,688号、第5,512,687号、第5,506,233号、第5,506,228号、第5,494,895号、第5,484,788号、第5,470,857号、第5,464,615号、第5,432,183号、第5,431,896号、第5,385,918号、第5,349,061号、第5,344,925号、第5,330,993号、第5,308,837号、第5,290,783号、第5,290,772号、第5,284,877号、第5,284,840号、第5,273,979号、第5,262,533号、第5,260,300号、第5,252,732号、第5,250,678号、第5,247,076号、第5,244,896号、第5,238,689号、第5,219,884号、第5,208,241号、第5,208,228号、第5,202,332号、第5,192,773号、第5,189,042号、第5,169,851号、第5,162,334号、第5,151,413号、第5,149,701号、第5,147,877号、第5,143,918号、第5,138,051号、第5,093,338号、第5,091,389号、第5,068,323号、第5,068,247号、第5,064,835号、第5,061,728号、第5,055,290号、第4,981,792号、第4,810,692号、第4,410,696号、第4,346,096号、第4,342,769号、第4,317,825号、第4,256,766号、第4,180,588号、第4,000,275号、第3,759,921号に開示される免疫抑制薬。
【0124】
米国特許第4,446,128号、第4,524,147号、第4,720,484号、第4,722,899号、第4,748,018号、第4,877,619号、第4,998,931号、第5,049,387号、第5,118,509号、第5,152,980号、第5,256,416号、第5,468,729号、第5,583,139号、第5,604,234号、第5,612,060号、第5,612,350号、第5,658,564号、第5,672,605号、第5,681,571号、第5,708,002号、第5,723,718号、第5,736,143号、第5,744,495号、第5,753,687号、第5,770,201号、第5,869,057号、第5,891,653号、第5,939,455号、第5,948,407号、第6,006,752号、第6,024,957号、第6,030,624号、第6,037,372号、第6,037,373号、第6,043,247号、第6,060,049号、第6,087,096号、第6,096,315号、第6,099,838号、第6,103,235号、第6,124,495号、第6,153,203号、第6,169,087号、第6,255,278号、第6,262,044号、第6,290,950号、第6,306,651号、第6,322,796号、第6,329,153号、第6,344,476号、第6,352,698号、第6,365,163号、第6,379,668号、第6,391,303号、第6,395,767号、第6,403,555号、第6,410,556号、第6,412,492号、第6,468,537号、第6,489,330号、第6,521,232号、第6,525,035号、第6,525,242号、第6,558,663号、第6,572,860号に開示される免疫調節薬。
【0125】
米国特許第5,292,736号、第5,688,825号、第5,554,789号、第5,455,230号、第5,292,736号、第5,298,522号、第5,216,165号、第5,438,064号、第5,204,365号、第5,017,578号、第4,906,655号、第4,906,655号、第4,994,450号、第4,749,792号、第4,980,365号、第4,794,110号、第4,670,541号、第4,737,493号、第4,622,326号、第4,536,512号、第4,719,231号、第4,533,671号、第4,552,866号、第4,539,312号、第4,569,942号、第4,681,879号、第4,511,724号、第4,556,672号、第4,721,712号、第4,474,806号、第4,595,686号、第4,440,779号、第4,434,175号、第4,608,374号、第4,395,402号、第4,400,534号、第4,374,139号、第4,361,583号、第4,252,816号、第4,251,530号、第5,874,459号、第5,688,825号、第5,554,789号、第5,455,230号、第5,438,064号、第5,298,522号、第5,216,165号、第5,204,365号、第5,030,639号、第5,017,578号、第5,008,264号、第4,994,450号、第4,980,365号、第4,906,655号、第4,847,290号、第4,844,907号、第4,794,110号、第4,791,129号、第4,774,256号、第4,749,792号、第4,737,493号、第4,721,712号、第4,719,231号、第4,681,879号、第4,670,541号、第4,667,039号、第4,658,037号、第4,634,708号、第4,623,648号、第4,622,326号、第4,608,374号、第4,595,686号、第4,594,188号、第4,569,942号、第4,556,672号、第4,552,866号、第4,539,312号、第4,536,512号、第4,533,671号、第4,511,724号、第4,440,779号、第4,434,175号、第4,400,534号、第4,395,402号、第4,391,827号、第4,374,139号、第4,361,583号、第4,322,420号、第4,306,097号、第4,252,816号、第4,251,530号、第4,244,955号、第4,232,018号、第4,209,520号、第4,164,514号、第4,147,872号、第4,133,819号、第4,124,713号、第4,117,012号、第4,064,272号、第4,022,836号、第3,966,944号に開示される鎮痛薬。
【0126】
米国特許第5,219,872号、第5,219,873号、第5,073,560号、第5,073,560号、第5,346,911号、第5,424,301号、第5,073,560号、第5,219,872号、第4,900,748号、第4,786,648号、第4,798,841号、第4,782,071号、第4,710,508号、第5,482,938号、第5,464,842号、第5,378,723号、第5,346,911号、第5,318,978号、第5,219,873号、第5,219,872号、第5,084,281号、第5,073,560号、第5,002,955号、第4,988,710号、第4,900,748号、第4,798,841号、第4,786,648号、第4,782,071号、第4,745,123号、第4,710,508号に開示されるコリン作用薬。
【0127】
米国特許第5,091,528号、第5,091,528号、第4,835,157号、第5,708,015号、第5,594,027号、第5,580,892号、第5,576,332号、第5,510,376号、第5,482,961号、第5,334,601号、第5,202,347号、第5,135,926号、第5,116,867号、第5,091,528号、第5,017,618号、第4,835,157号、第4,829,086号、第4,579,867号、第4,568,679号、第4,469,690号、第4,395,559号、第4,381,309号、第4,363,808号、第4,343,800号、第4,329,289号、第4,314,943号、第4,311,708号、第4,304,721号、第4,296,117号、第4,285,873号、第4,281,189号、第4,278,608号、第4,247,710号、第4,145,550号、第4,145,425号、第4,139,535号、第4,082,843号、第4,011,321号、第4,001,421号、第3,982,010号、第3,940,407号、第3,852,468号、第3,832,470号に開示されるアドレナリン作用薬。
【0128】
米国特許第5,874,479号、第5,863,938号、第5,856,364号、第5,770,612号、第5,702,688号、第5,674,912号、第5,663,208号、第5,658,957号、第5,652,274号、第5,648,380号、第5,646,190号、第5,641,814号、第5,633,285号、第5,614,561号、第5,602,183号、第4,923,892号、第4,782,058号、第4,393,210号、第4,180,583号、第3,965,257号、第3,946,022号、第3,931,197号に開示される抗ヒスタミン薬。
【0129】
米国特許第5,863,538号、第5,855,907号、第5,855,866号、第5,780,592号、第5,776,427号、第5,651,987号、第5,346,887号、第5,256,408号、第5,252,319号、第5,209,926号、第4,996,335号、第4,927,807号、第4,910,192号、第4,710,495号、第4,049,805号、第4,004,005号、第3,670,079号、第3,608,076号、第5,892,028号、第5,888,995号、第5,883,087号、第5,880,115号、第5,869,475号、第5,866,558号、第5,861,390号、第5,861,388号、第5,854,235号、第5,837,698号、第5,834,452号、第5,830,886号、第5,792,758号、第5,792,757号、第5,763,361号、第5,744,462号、第5,741,787号、第5,741,786号、第5,733,899号、第5,731,345号、第5,723,638号、第5,721,226号、第5,712,264号、第5,712,263号、第5,710,144号、第5,707,984号、第5,705,494号、第5,700,793号、第5,698,720号、第5,698,545号、第5,696,106号、第5,677,293号、第5,674,861号、第5,661,141号、第5,656,621号、第5,646,136号、第5,637,691号、第5,616,574号、第5,614,514号、第5,604,215号、第5,604,213号、第5,599,807号、第5,585,482号、第5,565,588号、第5,563,259号、第5,563,131号、第5,561,124号、第5,556,845号、第5,547,949号、第5,536,714号、第5,527,806号、第5,506,354号、第5,506,221号、第5,494,907号、第5,491,136号、第5,478,956号、第5,426,179号、第5,422,262号、第5,391,776号、第5,382,661号、第5,380,841号、第5,380,840号、第5,380,839号、第5,373,095号、第5,371,078号、第5,352,809号、第5,344,827号、第5,344,826号、第5,338,837号、第5,336,686号、第5,292,906号、第5,292,878号、第5,281,587号、第5,272,140号、第5,244,886号、第5,236,912号、第5,232,915号、第5,219,879号、第5,218,109号、第5,215,972号、第5,212,166号、第5,206,415号、第5,194,602号、第5,166,201号、第5,166,055号、第5,126,488号、第5,116,829号、第5,108,996号、第5,099,037号、第5,096,892号、第5,093,502号、第5,086,047号、第5,084,450号、第5,082,835号、第5,081,114号、第5,053,404号、第5,041,433号、第5,041,432号、第5,034,548号、第5,032,586号、第5,026,882号、第4,996,335号、第4,975,537号、第4,970,205号、第4,954,446号、第4,950,428号、第4,946,834号、第4,937,237号、第4,921,846号、第4,920,099号、第4,910,226号、第4,900,725号、第4,892,867号、第4,888,336号、第4,885,280号、第4,882,322号、第4,882,319号、第4,882,315号、第4,874,855号、第4,868,167号、第4,865,767号、第4,861,875号、第4,861,765号、第4,861,763号、第4,847,014号、第4,774,236号、第4,753,932号、第4,711,856号、第4,710,495号、第4,701,450号、第4,701,449号、第4,689,410号、第4,680,290号、第4,670,551号、第4,664,850号、第4,659,516号、第4,647,410号、第4,634,695号、第4,634,693号、第4,588,530号、第4,567,000号、第4,560,557号、第4,558,041号、第4,552,871号、第4,552,868号、第4,541,956号、第4,519,946号、第4,515,787号、第4,512,986号、第4,502,989号、第4,495,102号に開示されるステロイド薬。
上述すべての開示内容が参考として本明細書で援用される。
【0130】
結合体の薬物部分は、目的の標的に対してその親和性および特異性を保持する薬物全体もしくは結合フラグメントまたはその部分であり得ると同時に、ベクタータンパク質リガンドまたはリンカーに共有結合する結合部位を有する。かかる薬物の結合体は、その薬物自体と同じ障害、疾患、および効能のために使用され得る。
【0131】
G.癌化学療法活性薬剤
本発明の方法において有用な結合体に基づいてRAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体で使用される好ましい癌化学療法薬には、肝臓腫瘍または肝臓内もしくは肝臓周辺で他の新生組織形成の処置に有用であり得る(遊離型で有用である、または遊離型ではかかる腫瘍にあまり有用でない場合、RAP、RAPフラグメントもしくはRAP変異体、またはそのLRP1結合フラグメントに結合するときに有用である)すべての薬物が含まれる。かかる化学療法薬は、好ましくは細胞傷害性化学療法薬であり、アドリアマイシン(ドキソルビシンとしても公知である)、シスプラチン、パクリタキセル、それらの類似体、およびex vivoおよびin vivoで腫瘍に対して活性を示す他の化学療法薬を含むがこれらに限定されない。かかる化学療法薬には、また、アルキル化剤、代謝拮抗剤、天然物(ビンカアルカロイド、エピドフィロトキシン、抗生物質、酵素、および生物学的応答調節物質)、トポイソメラーゼ阻害剤、微小管阻害剤、紡錐体毒、ホルモンおよび拮抗剤、ならびに種々の薬剤(例えば、白金配位複合体、アントラセンジオン、置換尿素等)が含まれる。他の化学療法薬は当業者に既知であろう。
【0132】
癌または新生組織形成を処置する際に有用である細胞傷害性化学療法薬は、例えば、131I(ヨード)、125I、111In(インジウム)、90Y(イットリウム)、67Cu(銅)、127Lu(ルテチウム)、212Bi(ビスマス)、213Bi、255Fm(フェルミウム)、149Tb(テルビウム)、223Rd(ラジウム)、213Pb(鉛)、212Pb、211At(アスタチン)、89Sr(ストロンチウム)、153Sm(サマリウム)、166Ho(ホルミウム)、225Ac(アクチニウム)、186Re(レニウム)、67Ga(ガリウム)、68Ga、および99mTc(テクネチウム)の放射性同位体を含むがこれらに限定されず、かつ本発明で有用なRAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体に結合体化され得る。放射性同位体は、当該技術分野で一般的な金属キレート剤を用いてポリペプチドに結合されることが可能であり、かかる目的の金属キレート剤としては、1,4,7,10−テトラアザシクロ−11ドデカン−N,N’,N’’、N’’’−四酢酸(DOTA)、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカンN,N’,N’’,N’’’−四酢酸(TETA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ジメルカプトコハク酸(DMSA)、テトラアザシクロトリデカン−N,N’,N’’,N’’’−四酢酸(TRITA)、および1,5,9,13−テトラアザシクロヘキサデカン−N,N’,N’’,N’’’−四酢酸(HETA)、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸(HEDP)、HEXA、ならびにエチレンジアミン四酢酸(EDTA)が挙げられるがこれらに限定されない。これらは、ポリペプチド上への放射性同位体の「添加」を可能にする。
【0133】
好ましい化学療法薬は、遊離型で、所望の用量で許容されない全身毒性を示すものである。かかる薬剤の治療レベルと付随した通常の全身毒性は、かかる薬剤をRAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体に結合させることで減少させることができる。特に好ましいのは、有用な治療薬であるが、用量が心毒性によって制限される心毒性化合物である。典型的な例は、アドリアマイシン(ドキソルビシンとしても公知である)およびその類似体(例えばダウノルビシン)である。RAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体をかかる薬物に結合することによって、心臓で蓄積および付随する心毒性を阻止することができる。
【0134】
H.ナノ粒子
ナノ粒子は、生分解性および非生分解性ポリマーから、または脂質等の他の物質から構築された高分子集合体である。かかる集合体は、ナノ粒子内の空洞に治療用分子を含有させるように操作され得る。この方法によって、ナノ粒子は、薬物の生体内分布、薬物動態、免疫原性、および効力を変化させる方法を提供する。同様に、適切なRAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体を付着させることによって、これらの分子の組織分布の特異性を増加させる方法を提供する。
【0135】
I.RAP結合体生成方法
i.宿主細胞
キメラタンパク質を生成するために用いる宿主細胞は、バクテリア細胞、酵母細胞、昆虫細胞、非哺乳類脊椎動物細胞、または哺乳類細胞である。哺乳類細胞は、ハムスター、サル、チンパンジー、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、およびヒトの細胞を含むがこれらに限定されない。宿主細胞は、不死化細胞(細胞系)または非不死化細胞(一次細胞または二次細胞)であり得、線維芽細胞、角化細胞、上皮細胞(例えば、乳腺上皮細胞、腸管上皮細胞)、卵巣細胞(例えばチャイニーズハムスター卵巣、すなわちCHO細胞)、内皮細胞、グリア細胞、神経系細胞、血液有形成分(例えばリンパ細胞、骨髄細胞)、筋細胞、肝細胞、およびこれらの体細胞型の前駆体など多種多様な細胞型のいずれかであり得るがこれらに限定されない。宿主細胞には、LRP(例えばCHO13−5−1)を発現しないCHO細胞の突然変異体が含まれ得る(FitzGerald et al.,J. Biol. Chem.,129(6):1533−41,1995)。
【0136】
キメラタンパク質をコードするDNAまたはRNAを含有し発現する細胞を、本明細書では遺伝子改変細胞と呼ぶ。キメラタンパク質をコードするDNAまたはRNAを含有し発現する哺乳類細胞を、本明細書では遺伝子改変哺乳類細胞と呼ぶ。DNAまたはRNAの細胞への導入は、公知のトランスフェクション方法(例えば、電気穿孔法、マイクロインジェクション法、微粒子銃法、リン酸カルシウム沈澱法、リン酸カルシウム沈澱法変法、陽イオン性脂質処置法、光穿孔法、融合方法、受容体媒介転移法、またはポリブレン沈澱法)による。あるいは、DNAまたはRNAは、ウイルスベクターによる感染によって導入され得る。キメラタンパク質をコードするDNAまたはRNAを発現する、哺乳類細胞を含む細胞を生成する方法は、米国特許第6,048,729,号、第5,994,129号、および第6,063,630号に記載されている。これらの出願の各々の教示は、その開示内容全体が参考として本明細書で明示的に援用される。
【0137】
ii.核酸コンストラクト
キメラタンパク質を発現させるために用いる核酸コンストラクトは、トランスフェクトした哺乳類細胞内で、染色体外で(エピソームで)発現されるものであり得、または相同的組換えを介してレシピエント細胞のゲノムに無作為的にまたは事前に選択した標的部位に組み込むものであり得る。染色体外で発現される核酸コンストラクトは、キメラタンパク質コード配列に加えて、細胞内でタンパク質を発現するために、および場合によりコンストラクトを複製させるために十分な配列を含む。通常、核酸コンストラクトには、プロモーター、キメラタンパク質コードDNA、およびポリアデニル化部位が含まれる。キメラタンパク質コードDNA配列は、その発現がプロモーターの制御下にあるような様式で核酸コンストラクトに位置している。場合により、核酸コンストラクトは、例えば以下の成分から1つ以上を付加的に含有することも可能である。すなわち、スプライス部位、エンハンサー配列、適切なプロモーターの制御下で選択可能なマーカー遺伝子、および適切なプロモーターの制御下で増殖可能なマーカー遺伝子。
【0138】
DNAコンストラクトを細胞ゲノムに組み込む実施形態において、核酸コンストラクトは、キメラタンパク質コード核酸配列だけを含む必要がある。場合により、核酸コンストラクトは、プロモーター、エンハンサー配列、1つのポリアデニル化部位もしくは複数の部位、1つのスプライス部位もしくは複数の部位、1つの選択可能なマーカーもしくは複数のマーカーをコードする核酸配列、増殖可能なマーカーをコードする核酸配列、および/またはゲノム内の選択部位へのDNAの組込みを標的にするためにレシピエント細胞内のゲノムDNAと相同であるDNA(標的DNAもしくはDNA配列)を含むことが可能である。
【0139】
iii.細胞培養方法
キメラタンパク質をコードするDNAまたはRNAを含有する哺乳類細胞は、細胞の増殖およびDNAまたはRNAの発現に適した条件下で培養される。キメラタンパク質を発現するこれらの細胞は、公知の方法および本明細書に記述する方法を用いて同定され得、ならびにキメラタンパク質産生の増幅の有無にかかわらず、公知の方法および本明細書に記述する方法を用いてキメラタンパク質は単離および精製され得る。同定は、例えば、キメラタンパク質をコードするDNAまたはRNAの存在を示す表現型を示している遺伝子改変型哺乳類細胞のスクリーニング(例えば、PCRスクリーニング、サザンブロット解析によるスクリーニング、またはキメラタンパク質発現のスクリーニング)を介して行なわれ得る。キメラタンパク質コードDNAを組み入れた細胞の選択は、選択可能なマーカーをDNAコンストラクトに入れることと、選択可能なマーカー遺伝子を含有する、トランスフェクトした細胞または感染した細胞を、その選択可能なマーカー遺伝子を発現する細胞だけが生存するのに適した条件下で培養することとによって達成され得る。さらに導入したDNAコンストラクトの増幅は、増幅に適した条件下で遺伝子改変型哺乳類細胞を培養すること(例えば、増殖可能なマーカー遺伝子の複数のコピーを含有する細胞だけが生存し得る薬物濃度の存在下で、増殖可能なマーカー遺伝子を含有する遺伝子改変型哺乳類細胞を培養すること)によって影響され得る。
【0140】
キメラタンパク質を発現する遺伝子改変型哺乳類細胞は、本明細書に記述するように、発現産物の検出によって同定され得る。例えば、担体がRAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体であるキメラタンパク質を発現する哺乳類細胞は、サンドイッチ酵素免疫測定法によって同定され得る。抗体は、結合体のLRP1結合部分または活性薬剤部分に向けられ得る。
【0141】
iv.RAPフラグメントポリペプチドまたはRAP変異体のポリペプチドの生成
本発明による使用のためのRAPフラグメントまたはRAP変異体のポリペプチドは、米国特許第5,474,766号および国際特許出願PCT/US2006/36453号に開示されているものを含む。これらは、本発明の化合物および組成物において使用するためにかかるペプチドおよびそれらの生成を開示する目的でその開示内容全体が参考として本明細書で援用される。RAPフラグメントおよびRAP変異体のポリペプチドは、当業者に公知のいずれかのタンパク質調製法および精製法を用いて生成される。
【0142】
リガンドは、天然のタンパク質源から精製され、リガンドを発現する組換え宿主から単離されるか、またはタンパク質合成で周知の技法を用いて合成され得る。受容体結合部位を含有するRAPフラグメントまたはRAP変異体を得るために、当業者は、かかる種々の技法を容易に適応させる(Melman et al., J. Biol. Chem. 276(31):29338−29346 (2001); Savonen et al., J Biol Chem. 274(36):25877−25882 (1999); Nielsen et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:7521−7525 (1997); Medved et al., J. Biol. Chem. 274(2):717−727 (1999); Rall et al., J. Biol. Chem. 273(37):24152−24157 (1998); Orlando et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 3161−3163 (1994))。
【0143】
天然のRAPタンパク質の単離は、すでに記述されている(Ashcom et al., J. Cell. Biol. 110:1041−1048 (1990)およびJensen et al., FEBS Lett. 255:275−280 (1989))。RAP変異体およびフラグメントは、単離した天然のタンパク質から生成され、酵素的切断および/または化学分解によって変換され、そのタンパク質全体のフラグメントを生成する。RAP変異体ポリペプチドを得るためのかかる方法に関して、特に米国特許第6,447,775号が参考として本明細書で援用される。さらに、RAPフラグメントまたはRAP変異体は、組換え菌内で発現する(Williams et al., J. Biol. Chem. 267:9035−9040 (1992); Wurshawsky et al., J. Biol. Chem. 269:3325−3330 (1994))。組換え大腸菌株由来の39kDaのRAPタンパク質を精製する手順は、すでに記述されている(Herz et al., J. Biol. Chem. 266, 21232−21238 (1991)、米国特許第5,474,766号)。
【0144】
発現プラスミドpGEX−39kDaを有する大腸菌株DH5αの培養物は、37℃にて、100μg/mlアンピシリンを有するLB培地で対数期の中間部まで増殖させる。培養物を30℃まで冷却し、0.01%イソプロピルチオ−β−ガラクトシドを追加して、グルタチオン−S−転移酵素−39kDa融合タンパク質の発現を誘導する。30℃で4〜6時間、誘導した後に、培養物を氷で冷却し、遠心分離によって回収する。さらに、4℃でステップを続ける。細胞ペレットを、1%Triton X−100、1μMペプスタチン、2.5μg/mlロイペプチン、0.2mMフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)、および1μMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を有するPBS中で溶解させる。溶解物をBranson Model450 Sonifierで超音波処理し、結果として生じる膜および他の細胞残屑を、15分間、15,000gで遠心分離によって分離する。回収した上清を、PBSおよび0.1%アジ化ナトリウム中で、固定化アガロースグルタチオンビーズ(Sigma Chemical Co)を用いて一晩インキュベートする。ビーズを洗浄して、融合タンパク質を、5mM還元グルタチオン(Sigma Chemical Co)との競合によって溶出させる。透析に続いて、融合タンパク質を、融合タンパク質50μgあたり100ngの活性化ヒトトロンビンを用いて一晩インキュベートすることによって切断させる。続いて、グルタチオン−S−転移酵素エピトープを、固定化アガロースグルタチオンビーズを用いてさらにインキュベートすることによって除去する。
【0145】
上記の方法を、上述のようにRAPの生成および精製の目的で記述するが、他のRAPフラグメントまたはRAP変異体も、同様の技法を用いて生成し得る。かかるリガンドの概説は、Christensen and Birn, (Am. J. Physiol. Renal Physiol., 280:F562−F573, 2001、特に、表2およびそれに引用される参考文献を参照)に見られる。かかるリガンドを作製し精製する技法は、当業者に周知である。
【0146】
J.RAP結合体の特徴づけ
i.ラベル
一部の実施形態において、RAP、RAPフラグメント、およびRAP変異体に基づく活性薬剤の結合体を標識し、その検出を容易にする。「標識」または「検出可能な部分」は、分光的方法、光化学的方法、生化学的方法、免疫化学的方法、化学的方法、または他の物理的方法によって検出可能な組成物である。例えば、本発明における使用に適した標識としては、例えば、放射性標識(例えば32P)、フルオロフォア(例えば フルオレセイン)、高電子密度試薬、酵素(例えばELISAで一般に使用される)、ビオチン、ジゴキシゲニン、またはハプテン、および例えば、ハプテンもしくはペプチドに放射標識を組み込むことによって検出可能となり得るタンパク質、またはハプテンもしくはペプチドに特異的に反応する抗体を検出するために用いられるタンパク質が挙げられる。
【0147】
上述のように、用いるスクリーニングアッセイに応じて、活性薬剤、リンカー、または結合体のRAP、RAPフラグメント、もしくはRAP変異体のポリペプチド部分を標識してもよい。使用する特定の標識または検出可能な基は、結合体の生物活性を著しく妨げない限りは、本発明の重要な態様ではない。検出可能な基は、検出可能な物理的または化学的特性を有する任意の物質でもよい。従って、標識は、分光的方法、光化学的方法、生化学的方法、免疫化学的方法、電気的方法、光学的方法、または化学的方法によって検出可能な任意の組成物である。
【0148】
本発明における使用に適した標識の例としては、蛍光染料(例えば、フルオレセインイソシオシアネート、Texas red、ローダミン等)、放射標識(例えば、H、125I、35S、14C、または32P)、酵素(セイヨウワサビペルオキシダ−ゼ、アルカリホスファターゼ、およびELISAで一般に使用される他の酵素)、および比色標識(例えば、コロイド金もしくは着色ガラスもしくはプラスチックビーズ(例えばポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックス等))が挙げられるがこれらに限定されない。
【0149】
標識は、当該技術分野で周知の方法によって、アッセイの所望の成分に直接的または間接的に結合され得る。好ましくは、一実施形態における標識は、本発明によって活性薬剤を結合体化するためイソシアネート試薬を用いて、生体高分子に共有結合される。本発明の一態様において、本発明の二機能性イソシアネート試薬を用いて、生体高分子に標識を結合体化し、それに付着した活性薬剤なしで標識生体高分子の結合体を形成することができる。標識生体高分子結合体は、本発明によって標識結合体を合成するための中間体として使用され得る、または生体高分子結合体を検出するために使用され得る。上述のように、多種多様な標識は、所要の感度に応じた標識の選択、アッセイの所望の成分との結合体化の容易さ、利用可能な器具の安定性要件、および廃棄条件で使用され得る。非放射性標識は、間接的な方法によって付着されることが多い。通常、リガンド分子(例えばビオチン)は、分子に共有結合される。リガンドは、別の分子(例えばストレプトアビジン)分子、すなわち、シグナル系(例えば、検出可能な酵素、蛍光化合物、または化学発光化合物)に本質的に検出可能に結合されるか、または共有結合される分子に結合する。
【0150】
結合体は、例えば、酵素またはフルオロフォアと結合体化することによって化合物を生成するシグナルに直接的に結合体化され得る。標識としての使用に適した酵素としては、例えば、ヒドロラーゼ(特に、ホスファターゼ、エステラーゼ、およびグリコシダーゼ)、またはオキシダーゼ(特にペルオキシダ−ゼ)が挙げられるがこれらに限定されない。標的としての使用に適した蛍光化合物(すなわちフルオロフォア)としては、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン等が挙げられるがこれらに限定されない。さらに、適したフルオロフォアの例には、エオシン、TRITC−アミン、キニーネ、フルオレセインW、アクリジンイエロー、リサミンローダミン、Bスルホニルクロリドエリスロセイン、ルテニウム(トリス、ビピリジニウム)、Texas Red、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド等が挙げられるがこれらに限定されない。標識としての使用に適した化学発光化合物には、ルシフェリンおよび2,3−ジヒドロフタラジンジオン(例えばルミノール)が挙げられるがこれらに限定されない。本発明の方法で使用できる種々の標識化またはシグナル生成系の概説については、米国特許第4,391,904号を参照。
【0151】
標識を検出する方法は、当業者に周知である。従って、例えば、標識が放射性標識である場合、検出方法としては、オートラジオグラフィーの場合、シンチレーションカウンターまたは写真用フィルムが挙げられる。標識が蛍光標識の場合、標識は、光の適切な波長で蛍光色素を励起させ、結果として生じる蛍光発光を検出することによって検出され得る。蛍光は、電子検出器(例えば、電荷結合素子(CCD)または光電子増倍管等)を用いることによって視覚的に検出され得る。同様に、酵素標識は、適切な物質を酵素に与え、結果として生じる反応生成物を検出することによって検出され得る。比色標識または化学発光標識は、標識に関連する色を観察することによって容易に検出され得る。本発明の方法での使用に適した他の標識化および検出系は、当業者に容易に認識される。かかる標識モジュレータおよびリガンドは、疾患または健康状態の診断に用いられ得る。
【0152】
K.医薬組成物を用いる方法およびその投与
結合体は、それらを水性溶媒または非水性溶媒(例えば、植物油もしくは他の類似する油、合成脂肪酸グリセリド、高脂肪酸エステル、またはプロピレングリコール)に溶解、懸濁または乳化させることで、さらに所望であれば、通常の添加物(例えば、可溶化剤、等張剤、懸濁化剤、乳化剤、安定剤、および保存剤)を添加することで、注射用製剤に製剤化され得る。
【0153】
結合体は、吸入を介して投与されるエアロゾル製剤で利用され得る。本発明の化合物は、許容される加圧噴霧剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等)に製剤化され得る。
【0154】
注射または静脈内投与のための単位剤形は、滅菌水、生理食塩水、または他の薬学的に許容される担体中の溶液として、組成物に結合体を含み得る。
【0155】
実用的用途において、本明細書に記述するRAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体の結合体は、従来の医薬配合技術によって、密な混合物中の有効成分として医薬担体と組み合わされ得る。担体は、投与(例えば、経口または非経口(静脈内を含む))用の所望の製剤形状に応じて多種多様な形にすることができる。
【0156】
投与の経皮経路に関して、薬物の経皮投与の方法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th Edition, (Gennaro et al. Eds. Mack Publishing Co., 1985)に開示されている。真皮パッチまたは皮膚パッチは、本発明の方法で有用な結合体の経皮送達の好ましい手段である。パッチは、好ましくは、化合物の吸収を増加させる吸収促進薬(例えばDMSO)を提供する。経皮薬物送達の他の方法は、米国特許第5,962,012号および第6,261,595号に開示されている。これらの各参考文献全体が参考として援用される。
【0157】
薬学的に許容される賦形剤(例えば、媒体、アジュバント、担体、または希釈剤)は、市販されている。さらに、薬学的に許容される補助物質(例えば、pH調節剤および緩衝剤、浸透圧調節剤、安定剤、湿潤剤等)は、市販されている。
【0158】
当業者は、用量レベルが特定の化合物、症状の重症度、および副作用に対する被験体の感受性に応じて変化し得ることを容易に認識する。所定の化合物の好ましい用量は、当業者による種々の方法(患者、試験動物、およびin vitroで行なわれる用量反応および薬物動態評価が含まれるがこれらに限定されない)によって容易に決定できる。
【0159】
これらの態様のそれぞれにおいて、いずれかの所定の場合最も適した経路は、処置中の状態の性質および重症度、ならびに有効成分の性質に一部依存し、組成物としては、経口、直腸、局所、非経口(皮下、筋肉内、および静脈内を含む)の投与、経肺(鼻腔吸入もしくは頬側吸入)投与、または経鼻投与に適した組成物が挙げられるが、これらに限定されない。典型的な投与経路は、経口経路および静脈内経路である。組成物は、単位剤形で簡便に提供され、薬剤の分野で周知の方法のいずれかによって調製され得る。
【0160】
本発明の組成物は、カプセルに入れて、またはウイルス外皮もしくはベシクルに付着させて、または細胞に組み入れて投与され得る。ベシクルは、通常、球状であり、かつしばしば脂質であるミセル粒子である。リポソームは、二重層膜から形成されたベシクルである。適切なベシクルとしては、単層ベシクルおよび多層状脂質のベシクルまたはリポソームが挙げられるがこれらに限定されない。かかるベシクルおよびリポソームは、例えば米国特許第4,394,448号に記載されるような標準的な技法を用いて、広範囲の脂質またはリン脂質化合物(例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、糖脂質、ガングリオシド等)から作製され得る。かかるベシクルまたはリポソームを用いて、細胞内部に化学物を投与し、および化合物を標的器官に送達することもできる。目的のp97−組成物の徐放は、また、カプセル化用いて達成され得る(例えば、米国特許第5,186,941号を参照)。
【0161】
RAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体に基づく活性薬剤の結合体を血流に送達する任意の投与経路を用いてもよい。好ましくは、組成物は、末梢血管に、最も好ましくは静脈内に投与される、または心臓カテーテルによって投与される。頚静脈内注入および頚動脈内注入も有用である。組成物は、局所的または局部的に(例えば、腹腔内もしくは皮下または筋肉内に)投与されてもよい。一態様において、組成物は、適切な医薬希釈剤または担体とともに投与される。
【0162】
投与されるべき用量は、個々の必要性、所望の効果、使用される活性薬剤、生体高分子、および選択される投与経路に依存する。結合体の好ましい用量は、約0.2ピコモル/kg〜約25ナノモル/kgの範囲であり、特に好ましい用量は、2〜250ピコモル/kgの範囲である。あるいは、結合体の好ましい用量は、0.02〜2000mg/kgの範囲であり得る。これらの用量は、生体高分子に結合される活性薬剤または薬物部分の数に影響される。あるいは、用量は、投与される活性薬剤に基づいて算出され得る。
【0163】
好ましい実施形態において、結合体はRAP変異体を含む。例えば、0.005〜100mg/kgのアドリアマイシンを含むRAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体−アドリアマイシンの用量も、in vivoで有用である。特に好ましいのは、0.05mg/kg〜20mg/kgのアドリアマイシンを含むRAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体−アドリアマイシンの用量である。当業者は、RAP変異体に結合される化合物の適切な用量を、その化合物の遊離型で用いられる推奨用量にある程度基づいて決定することができる。活性薬剤をRAP変異体に結合体化させることで、通常、同じ効果を得るために必要な薬物の量を減少させる。
【0164】
本発明の結合体およびモジュレータは、動物、特にヒトにおける治療、予防、および診断の介入に有用である。RAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体の化合物は、特定の組織で優先蓄積を示す可能性がある。診断用途で好ましい医療適用としては、例えば目的の標的器官(例えば、肺、肝臓、腎臓、脾臓)に付随する任意の状態でも含まれる。
【0165】
主題の方法は、種々の異なる病状の処置における用途を見出す。いくつかの実施形態において、特に興味深いのは、所望の活性を有する活性薬剤または薬物はすでに同定されているが、その活性薬剤または薬物が標的部位、領域、または区画に適切に送達されてなく、十分に満足できる治療結果をもたらしてない病状における主題の方法の用途である。かかる活性薬剤または薬物に関して、活性薬剤をRAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体に結合体化する主題の方法を用いて、治療効果および活性薬剤もしくは薬物の治療係数を向上させることができる。
【0166】
主題の結合体を用いて処置可能な特定の病状は、結合体に存在し得る薬物部分の型と同じくらい多様である。従って、肝臓に影響を及ぼし、本発明の方法によって処置可能な病状としては、腫瘍性疾患、自己免疫疾患、ホルモン異常疾患、変性疾患、加齢疾患等の細胞増殖疾患が挙げられる。
【0167】
処置とは、結合体の投与に付随し被験体に対する任意の有益な結果を包含し、疾患にかかる可能性の減少、疾患の予防、疾患の進行の遅延、停止、もしくは好転、または宿主を苦しめている病状に付随する症状の寛解が含まれることを意味する。寛解または有益性は、広義で用いられ、少なくともパラメーターの大きさ(例えば、処置される病状に付随する症状(例えば、それに付随する炎症および疼痛))においての減少をいう。そのようなものとして、処置は、宿主が病状、または少なくとも病状を特徴付ける症状にもはや苦しまないように、病状または少なくともそれに付随する症状が完全に抑制される(例えば、発症しないように妨げられる)、または停止される(例えば、終結する)状況も含む。
【0168】
L.肝臓へのRAP結合体の送達
肝臓の大部分は、門脈によって主に灌流される。初回通過捕捉の効率と関連して、腫瘍の動脈血への依存により、RAP結合体化型化学療法薬を静脈内に投与した後、非癌性肝臓組織のかなりの部分が残されることが可能になるはずである。
【0169】
肝臓の脈管構造によってもたらされる潜在的利点に加えて、HCC腫瘍細胞および周囲の組織上でのLRP1の相対的発現レベルは、RAP結合体の有効性にさらに有利に働く可能性がある。研究は、悪性形質転換後、肝細胞上のLRP1発現が少なくとも10倍向上したことを示している(23)。好対照に、他は、LRP1が肝硬変組織以外の非腫瘍肝臓組織では著しく低発現であることを示している(24)。病的肝臓の他の部分での減弱した発現とともに、腫瘍細胞上で向上したLRP1発現は、初回通過捕捉による動脈送達のように、腫瘍組織に対する優先を有するRAP結合体の不均一送達をもたらすはずである。化学療法薬に対して一般に向上した急速に増殖する腫瘍細胞の感受性に加えて、不均一送達により、減弱した肝臓保存が提示する処置に対する障壁をHCC患者の大多数において回避することが可能となる。
【0170】
肝細胞癌を処置する有効的な方法は、イットリウム−90(90Y)の投与である。90Yは、多種類の腫瘍に対して高い抗生物質有効性を有する癌化学療法薬である。90Y崩壊は、高エネルギーβ粒子を生成し、HCCでよく見られるような大きな固形腫瘍に特に適した選択となる。イットリウムは、崩壊すると安定な元素ジルコニウムになる。肝細胞腫瘍への90Yの送達は、現在、経動脈カテーテル法によって投与される不溶性ガラスビーズ(THERASPHERE(登録商標))を含有する核種を使用することによって達成される。この方法は、大きく、境界明瞭な腫瘍の処置に有効であるが、多発性の小さな腫瘍を含む症例または転移が関与する場合には有用性が低い。別のアプローチは、腫瘍細胞を選択的に標的にする薬剤に90Yまたは他の化学療法薬を結合体化させることである。このアプローチの例は、非ホジキンリンパ腫の治療薬ZEVALIN(登録商標)(イブリツモマブチウキセタン)(注入前に90Yを添加された金属キレート剤を有する抗CD−22モノクローナル抗体)に見られる。
【0171】
RAPは、投与後、肝臓への急速な拡散を示す。30ピコモルのタンパク質の静脈内ボーラス注入後、外因性RAPの70%超が10分以内に肝臓に蓄積される(20)。注入されたRAPの循環半減期は、1分未満である。これらの薬物動態は、ラットで2.5mg/kg(60nモル/kg)までの静脈内注入でも観察される(20)。同様の薬物動態が、別の高親和性LRP1リガンド、プロテアーゼ活性化α−2−マクログロブリン(725kDa四量体血清糖タンパク質)で報告されている(21)。少量のRAP(<注入用量の1%)のみが心臓、脳、筋肉、または腎臓に蓄積され、これらの組織においてRAP結合LDLRの組織および血管の両発現がこの適用で極わずかであることを示している。静脈内に投与されたRAPは、げっ歯類種およびネコ種において測定可能な毒性を何ら示していない。肝臓によるRAPの捕捉効率は、最初、肝細胞上の豊富な細胞表面ヘパリン硫酸プロテオグリカンへの低親和性結合ステップによって、続いてLRP1による高親和性結合およびエンドサイトーシスによって向上される(1、22)。本発明によれば、静脈内投与後、化学療法薬(例えば90Y)に結合体化したRAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体の肝臓へのほぼ定量的な送達は、これらの薬物に付随する全身毒性を著しく減少させ、HCCの処置の間、患者へのリスクを減少させる。90Yまたは他の活性薬剤に結合体化したRAPまたはRAPフラグメントまたはRAP変異体は、肝臓への活性薬剤の送達の有効的な方法を提供する。
【0172】
いくつかの因子は、RAP結合体が標的にする選択的な肝腫瘍に有利に働き、かかる薬剤が転移したHCCに有効であることを示唆している。転移した腫瘍細胞は、異所部位への移行後直ちにそれらの特徴を保持する傾向があり、肝外転移したヒトHCCにおいてLRP1の減弱していない発現を示している(25)。この因子は、転移したHCCを同様に、RAP、RAPフラグメント、およびRAP変異体、ならびに適切な化学療法薬または他の活性薬剤の静脈内投与された結合体の影響を受けやすい状態にすることもできる。
【0173】
M.肝障害
本発明の一態様は、肝疾患の処置のための治療化合物を肝臓に送達するために、化学療法薬物または他の薬剤をRAP、RAPフラグメントもしくはRAP変異体に結合体化することを意図する。肝疾患を処置するためのRAP結合体の投与は、肝疾患の処置に付随するいくつかの問題(例えば、肝臓による薬剤のクリアランス、または細胞膜内の薬物耐性機構(MDR、P−糖タンパク質))に取り組む。
【0174】
本発明が意図する肝疾患としては、以下記述する障害が挙げられるがこれらに限定されない。肝細胞癌(すなわち肝癌)は、世界で5番目に多い癌であり、発症率は着実に上昇している。腫瘍原性肝細胞は、高レベルのLRP1発現を保持する。肝細胞癌は、化学療法に十分な効果を示さない。これは、腫瘍細胞が高い比率で薬物耐性を示すため、および使用される化学療法が全身性(静脈内)投与のために、特に心臓および腎臓で深刻な毒性を有するためである。
【0175】
肝炎は、肝臓の炎症の総称である。肝炎は急性または慢性であり得、急性もしくは慢性肝不全、例えばウイルス(例えばA型、B型、C型、D型、もしくはE型肝炎または非ABCDE型、CMV、Epstein−Barr肝炎)、真菌感染症、リケッチア感染症、もしくは寄生虫感染症、アルコール、化学的毒素、薬物(例えばアセトアミノフェン、アミオダロン、イソニアジド、ハロタン、クロルプロマジン、エリスロマイシン)、代謝性肝疾患(例えばウィルソン病、α1−アンチトリプシン欠乏症)、癌、突発性自己免疫性肝疾患、肝硬変(例えば原発性胆汁性肝硬変)、胆管閉塞に起因する肝炎が挙げられる。A型、B型、および/またはC型ウイルス肝炎による肝臓の感染は徐々に肝疾患へと進行し、肝不全へと至る可能性がある。急性肝炎感染症は、A型肝炎に最も多く起因する。B型肝炎およびC型肝炎の両感染症は、生体内に残留し、長期にわたる感染症(慢性)になり得る。C型肝炎は、肝硬変および癌を含む危険状態を引き起こす可能性がある。
【0176】
さらに、RAPもしくはRAPフラグメントまたは変異体に結合体化した組成物を用いて処置可能であると考えられる肝障害または状態は、脂肪肝(米国特許第6,596,762号)、胆汁うっ滞(米国特許第6,069,167号)、肝硬変、中毒性肝障害、肝切除後の状態、および胆管閉塞が挙げられる。
【0177】
肝疾患の処置のためのRAPもしくはRAPフラグメントまたは変異体に結合体化する候補薬物としては、5−フルオロウラシル、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、マイトマイシンC、シスプラチン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、および表1に示す他の化学療法薬、アデホビル、ラミブジン、エンテカビル、リバビリン、インターフェロンα、ペグ化インターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、および他の抗ウイルス剤、ビタミンE、ウルソデオキシコール酸、ならびに肝障害を処置するために使用する他の薬剤が挙げられるがこれらに限定されない。
【0178】
【表1−1】

【0179】
【表1−2】

【0180】
【表1−3】

本発明の付加的な態様および詳細は、以下の実施例により明白である。これらの実施例は、限定することよりはむしろ例証することを目的としている。
【実施例】
【0181】
(実施例1) RAP結合体は、LRP1経路を介して細胞に毒素を送達する。
【0182】
細胞傷害性薬に結合体化したRAPペプチドが細胞に毒素を効率的に送達し、細胞死を惹起できるか決定するために、in vitroアッセイを用いて、RAP−LRP1結合および内部移行経路を介して毒素の送達を評価した。
【0183】
野生型のLRP1が欠損したCHO−K1細胞を、5%ウシ胎仔血清を追加したBioWhittaker Ultra−CHO中で増殖させた。実験の48時間前に、細胞を12ウェルプレートに播種した。ビオチン化し、内部にジスルフィドを結合した、RAPd3(ミニRAPc、Hep1:ビオチン−GGSGGCGFREELKHFEAKIEKHNHYQKQLEIAHEKLRHAESVGDGERVSRS REKHALLEGRTKELGYTVKKHLQDLSGGC)(配列番号9)の部分に対応する切断型ペプチドを、ストレプトアビジンと、細菌性毒素サポリン(ZAP, Advanced Targeting Systems, San Diego)との間の等モル量の結合体と組み合わせた。この混合物を、増殖培地に100nMまで希釈して、2連のウェルに添加した。対照として、2連のウェルを、RAPd3ペプチド単独(ミニRAPc)、ストレプトアビジン−サポリン結合体単独(ZAP)と共に(両方とも100nM濃度で、およびサポリン単独は1μM(SAP)で)インキュベートした。細胞を、加湿チャンバーで、37℃、5%COで48時間、インキュベートした。各処理状態の細胞生存率を、MTTアッセイキット(Invitrogen, San Diego)を用いて決定した。
【0184】
図2は、単独のペプチドが細胞生存への有意な影響を全く及ぼさなかったことを示す。単独のストレプトアビジン−サポリン結合体は、生存細胞の数を野生型CHO−K1に対して約10%減少させ、LRP欠損細胞には全く影響がなかった。ペプチドと細胞傷害性結合体との組み合わせは、生存細胞の数を野生型CHO−K1に対してはほぼ40%減少させ、LRP欠損CHO−K1での減少はわずか5%であった。サポリン単独(1μM)は、約55%(野生型)および35%(LRP欠損)の減少をもたらした。
【0185】
このデータは、RAPd3ペプチドがLRP1エンドサイトーシス経路を介して結合した毒素の内部移行を効率的に推進することができ、かつ化合物および治療薬を送達する有用な系を提供することを示す。
【0186】
(実施例2) RAPおよびRAPペプチド結合体のin vivo投与
B型肝炎ウイルスによる感染は、無症候性感染から急性肝炎、劇症(急激かつ重症な発症)肝炎、または慢性の低レベル持続感染の発症に及ぶ種々の結果をもたらし得る。感染した成人の5〜10%は、慢性保因者になる。慢性保因者状態の人々のうち25〜35%は、肝硬変または肝細胞癌(HCC)のいずれかによる感染の合併症から最終的に死亡にいたる。肝細胞癌を発症する確率も、アルコール依存症、喫煙、および肥満症によって増加する。この疾患の予後は悪く、報告されている5年間の生存率中央値は5%未満である。
【0187】
HCCは、診断が5番目に多い悪性腫瘍であり、毎年世界で約50万の死亡数が報告されている。腫瘍組織の外科的切除、移植、および物理的破壊は、処置の第1の選択であるが、患者のうちわずかに5〜10%がこうしたアプローチに適した腫瘍を呈する(13〜15)。さらに、全身化学療法は、化学療法薬の毒性および腫瘍細胞の耐性の両理由で、15〜20%の低い反応率をもたらす(16〜17)。
【0188】
例えば、ドキソルビシンは、種々の腫瘍に対して高い効率を有する癌化学療法薬であり、特に、腫瘍細胞を含む急激に増殖する細胞への毒性を有する。しかし、肝細胞癌の処置におけるドキソルビシンの使用は、著しい肝臓および心臓の毒性ならびに血液細胞産生の抑制によって制限される(34)。さらに、肝細胞癌細胞は、薬物耐性型への高転換率を示す(35)。
【0189】
療法の別のアプローチは、放射線療法の利用である。例えば、現在、検証されている肝癌の新規の処置は、放射性物質(90Y)で標識した微細なガラスビーズを、腫瘍組織を灌流する微小血管に通ずる主肝動脈に注入することを含む。次いで、放射線は、腫瘍組織を破壊する。しかし、肝動脈から肺への血液の著しい短絡は、多数の患者においてガラスビーズの使用を不可能にする。消化管に送り込まれる動脈へのビーズの著しい逆流も、深刻な副作用の原因となり得る。従って、腫瘍組織への放射線療法薬の有効的な送達は、血管に閉じ込められる大きな物質に依存しないより管理されたアプローチを必要とする。
【0190】
治療薬の生体内分布および有効性を検査するための、肝細胞癌(HCC)の関連動物モデルは、ウッドチャック肝炎ウイルス(WHV)に感染したEasternウッドチャックである(33)。新生児期に該ウイルスに感染したほぼすべてのウッドチャックは、24カ月の中央値内でHCCを発症する。平均余命の中央値は30カ月であるが、WHVに感染したウッドチャックは、肝硬変(すなわち、HCC患者の大半に存在する状態)を発症しない。ウッドチャック肝炎ウイルスおよびヒトB型肝炎ウイルスは、構造、遺伝的特徴、感染方法、感染経過、および肝細胞癌への進行が類似している。このモデルの重要性を強調する著しい類似点がある。ヒトと同じように、生後間もなく肝炎ウイルスに曝露された全ウッドチャックの半数以上が慢性感染症を発症し、慢性的に感染したウッドチャックのほぼすべてが、曝露から約20〜28カ月後に肝細胞癌を発症する。残りの接種された新生仔のウッドチャックは、急性肝炎を発症することが多いが、該ウイルスに対する抗体が発生して、回復する。これらの「回復した」動物の17〜25%は、曝露から29〜56カ月後にHCCを発症する。肝炎感染から明らかに回復した後のHCC発症もヒトにおいて見られる。
【0191】
肝臓への薬剤の送達へのRAPおよびRAPペプチドの効果を決定するために、対照およびRAPペプチド結合体治療薬の摂取および毒性を、ウッドチャックHCCモデルで検査する。慢性的に感染した6匹のウッドチャックおよび非感染の4匹のウッドチャック(約1.5〜2歳)を用いる。
【0192】
薬物動態の最初の検査として、RAPペプチドを90Y(GE Healthcare)に結合体化し、麻酔をかけた、HCCを有するウッドチャックの静脈内に投与する。RAPペプチドは、N末端にDOTAキレート部分を含有し、90Y等の放射性同位体を負荷することが可能となる。従って、RAPヘプチドの修飾は、イットリウム−90で修飾したRAPペプチドをインキュベートすることによってRAPペプチド−90Yの生成を可能にする。有用な送達化合物は、通常、以下の特徴を示す。すなわち、1)すでに損なわれている肝臓の機能に悪影響を及ぼさない、2)肝臓および悪性肝臓組織によって測定可能に摂取される、および3)摂取後に、腫瘍細胞に対して毒性を有し、腫瘍退縮を引き起こす。
【0193】
対照として、さらに腫瘍を有するウッドチャックに、RAP−90Yの生成を可能にするために等モル量の遊離型90YまたはC末端でマレイミド−DOTAに結合体化したシステインを含有し、細菌で発現された完全長RAPを注入する。
【0194】
90Yは、明確な毒性および発癌性特性を有する。RAPペプチド−DOTA−90Y結合体の薬物動態特性は、急速かつほぼ定量的な肝臓蓄積を有するRAPと著しく異ならないことが予想される。RAPペプチド薬物動態は、LRP1機能、配列、および発現が亜門内で良く保存されているため、すべての哺乳類種において極めて類似している可能性がある。同様に、ヒト配列は他の霊長類のそれとのみ同一であるにもかかわらず、RAP配列は哺乳類種の間で相同である。
【0195】
動物を比較するベースラインレベルを決定するために、血清を、ウイルス負荷および以下の分子のベースラインレベルについて分析する。すなわち、アルカリホスファターゼ(ALP)−胆管に関連する酵素。胆管が塞がれると増加することが多い;アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)−ASTは、損傷した細胞から放出される、肝臓の細胞質酵素である。ウイルス肝炎で最も高い上昇が起こる。肝毒性アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)は、ASTよりもより肝臓特異性であるが、腎臓および筋肉にも存在する。AST上昇が肝臓器官のASTであることを確認するために(例えば、ASTおよびALTの両上昇は、肝細胞の損傷を強く示唆する)用いられる;ビリルビン−結合体化したビリルビンの不均衡な上昇は、胆汁うっ滞および慢性肝疾患の後期で見られる。血清ビリルビンは、肝細胞の損傷で増加する;アルブミン−肝臓によって生成される主なタンパク質を測定し、肝臓がこのタンパク質を適切な量で生成しているかどうかを示す;γグルタミルトランスフェラーゼ(GGT)−肝細胞で見られる酵素であり、かつ肝臓損傷および修復に高い感受性がある;乳酸脱水素酵素(LDH)−肝細胞に見られる。通常、細胞死および/または損傷による細胞からの漏出物を見つけると増加する;プロトロビン時間(PT)−ビタミンK依存性因子(II、VII、IX、およびX)の肝臓合成に依存する。PTの上昇は、肝不全の兆候であり得る;および総タンパク質濃度−アルブミンおよび血中の他のすべてのタンパク質(抗体を含む)を測定することは、感染症を撃退する助けとなる。
【0196】
処置に先立ち肝臓の基本的な状態を決定した時点で、動物に麻酔をかけ、両後肢の毛をそり、消毒する。脚の主要静脈(足根の)を露出させ、片脚にカテーテルを注入する。次いで、このウッドチャックを磁気共鳴イメージング装置(MRI)、7T MRIに配置する。肝臓のスカウト画像を撮像し、肝臓の位置および大きさを決定する。ウッドチャックの人工呼吸をゲートでコントロールし、マルチスライス、マルチエコー、T2−強調画像を撮像し、全肝臓および任意の腫瘍の位置について高品質の画像を得る。造影剤(ガドリニウム)をカテーテルから注入し、T2画像の画像品質を向上させて、腫瘍を位置づける。肝臓も、2D−CSI(二次元化学シフトイメージング)リン分光法を用いて撮像する。イメージングを完了した時点で、麻酔をかけたウッドチャックをMRIから移動させ、試験薬剤を投与の準備をする。
【0197】
感染した2匹のウッドチャックに、カテーテルが注入されてない脚の静脈にRAPペプチド−90Yを注入する。感染したウッドチャックの2番目の2匹に、RAP−90Yを注入する。感染したウッドチャックの3番目の2匹に、DOTA−90Yを注入する。90Yには標的部分を付着させてないので、この状態を陰性対照として用いる。4匹の対照群ウッドチャックに、生理食塩水に溶解させたRAPペプチド−90YまたはRAP−90Yのいずれかを注入し、罹患している肝臓および健常な肝臓を有する動物を用いてこれら2つの試験化合物の相対的分布の比較を行う。
【0198】
薬物注入開始から5分ごとに、対側のカテーテルから別の無菌容器に血液を採取する。薬物を注入してから30分後、ウッドチャックを安楽死させ、死体全体を凍結させる。実験中、すべてのウッドチャックから採取した全血液試料を分析して、血液中を循環する90Y標識薬物の量を決定する。
【0199】
STD10(処置した動物の10%に強い毒性をもたらす用量)ペプチド決定を確定し、続いて非げっ歯動物で同等量の10分の1の試験を行う。病理組織診断とともに肝臓酵素の上昇から、肝毒性についての信頼できる測定結果がもたらされるはずである。非げっ歯類における強い毒性の非存在によって、ラットSTD10のヒト同等用量の10分の1で第1相試験のヒト初期投与量の直接算出が可能となる。有効用量の概算は、以前のデータを基にして行うことができる。100ピコモル/kg(3nモル/m2)の有効用量を、500MBq用量、RAPペプチド−DOTAへの90Yの定量的な負荷、およびモルあたり74ペタベクレルのYC13に対する比活性を想定することによって引き出す。
【0200】
HCC細胞に対していくらかの優先を有する肝臓へのRAPおよびRAPペプチドならびに他の化合物の初回送達は、他の組織部位と比較すると、RAPを介する肝蔵への薬剤の有効かつ好ましい送達を示唆する。著しい非肝臓送達または正常な細胞への優先を有する肝臓送達は、この送達経路が肝臓およびHCC細胞に特異的でないことを示す。
【0201】
さらに、RAPタンパク質およびRAPペプチドの投与ならびに薬物動態特性の分析は、RAPペプチドおよび完全長のRAPタンパク質が、両方とも活性薬剤を肝臓に輸送するための有効的な分子であることと、RAPおよびRAPペプチド結合体が、完全長の非結合体化型RAPの挙動をin vovoで標的にするLRP1を模倣することとを決定する方法を提供する。
【0202】
従って、完全長のRAP LRP−1特異的結合を模倣する完全長のRAPおよび短いRAPフラグメントの両方は、健常な組織に毒性を誘導することなく治療化合物を肝臓に送達するための有効的な手段であることが予想される。
【0203】
(実施例3) In vivo投与後のRAP分布の分析
RAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体が、他の組織よりも肝臓をより特異的に標的にするかどうかを決定するために、90Yに結合体化したRAPタンパク質およびフラグメントの局在化および分布を行う。動物の対照薬物および腫瘍細胞の局在化ならびに分布についてのモニターも行う。
【0204】
オスウッドチャック(Marmota monax)の組織での残留放射能の相対的レベルを決定するために、90Y標識ペプチドまたはタンパク質治療薬の単回投与後に、処置した動物の凍結切片を分析する。肝臓の腫瘍および非腫瘍の領域を区別する際に特に注意を払う。
【0205】
分析する組織切片としては、脂肪組織、消化管、皮膚、腎臓、脊髄、肝臓、脾臓、副腎、腫瘍組織、非腫瘍組織、胸腺、骨(椎骨)、肺、甲状腺/副甲状腺、骨髄、リンパ節、脳、心筋、膵臓、胃壁、唾液腺(耳下腺)、ならびに小腸および大腸が挙げられる。
【0206】
屠殺直後、動物の各標本をCO/ヘキサンで急速冷凍する。当該技術分野の動物飼育プロトコル基準に従って、適切なステップを講じて、凍結切片に適した動物標本を作製し、2%カルボキシメチルセルロース(CMC)に包埋する。標本ブロックを、Leica CM−3600クリオミクロトームで30μmに切片化する。
【0207】
切片を、ミクロトームクリオキャビネット内で少なくとも16時間凍結乾燥させるか、またはThermoSavant凍結乾燥器内で約30分間凍結乾燥させる。早急に最高の分解能を提供するために、各切片の代表を14C−イメージ板に30分間、1、2、6、12、24、48、および72時間曝露させる(放射線療法のノイズのアーチファクトを最小化するために鉛の箱内で、およそ4℃で冷蔵する)。曝露の後、イメージ板をFuji BAS−2500スキャナーおよびそのソフトウェアFuji Image Readerバージョン1.1で読み取る。
【0208】
RAP結合体は、対象動物、特に肝細胞癌または他の肝臓損傷を有する動物の肝臓で優先的に見られることが予想される。
【0209】
(実施例4) 最小化RAPペプチドの生成およびLRP1への結合親和性の評価
さらに最小化したRAPペプチドを本明細書に記述するように生成した。
【0210】
mRAP−8cおよびmRAP−14cと命名した付加的な2つのペプチドを生成した。mRAP−8c(配列番号10)は、フラグメントのN末端にアミノ酸置換E246C、L247Gを、C末端にアミノ酸置換L311G、S312Cを含む。mRAP−14c(配列番号11)は、アミノ酸置換F250CおよびL308G、Q309Cを含む。GGSGG(配列番号12)を各ペプチドのN末端に付加した。
【0211】
mRAP−8cおよびmRAP−14cのペプチドのLRP1クラスターIIへの親和性を固相結合アッセイによって決定した。簡潔に、組換えヒトLRP1クラスターII(R&D Systems, amino acids 786−1165, with C−terminal Fc tag, 1μg)を用いて、5mM CaCl(TBSC)を補充したTBS(pH8)中でNunc MAXISORP(登録商標)96ウェルを4℃で一晩コーティングした。ウェルをTBSCで洗浄して、2%BSAを含有するTBSCでブロックした。
【0212】
ストレプトアビジンとビオチン化ペプチドとの間に複合体を含むアッセイでは、LRP1リガンドを、阻害剤の存在下または非存在下で、固定化受容体とともに、0.05%Tween−20を補充した上述のブロック緩衝液中で、室温にて2時間インキュベートした。抗ビオチン抗体およびビオチン化ペプチドの複合体を含むアッセイでは、RAPd3リガンドの追加を指示する前に、すべての阻害剤溶液を、固定化LRP1−C2を用いて1時間、プレインキュベートした。CR対の応答能を結合するリガンドは、カルシウムを必要とするため、同一の結合反応を50mM EDTAの存在下で行い、非特異的結合の評価基準を提供した。対照ウェルは追加した阻害剤を含まなかった。ウェルを、5mM CaClおよび0.05%Tween20を補充したTBSで洗浄した。結合したリガンドを、抗−S−ペプチド−HRP結合体(Abcam)または抗−α−2−マクログロブリン−HRP結合体(Abcam)のいずれかを用いて検出した。過剰なHRP結合体を除去して、ウェルを洗浄した。TMB試薬(BioRad, Hercules, CA)を用いて色素を発色させた。450nmでの吸収を、マイクロプレート分光光度計(Molecular Devices, Palo Alto)を用いて測定した。
【0213】
結合アッセイの結果、mRAP−8cは約4nMのLRP1クラスターIIへの親和性を示し、一方、mRAP−14cは約21nMの親和性を示した。
【0214】
これらの結果は、完全長RAPd3の大きさの約半分であり得る最小化RAPフラグメントが、RAP受容体LRP1に効率的に結合し、LRP1エンドサイトーシスを介して肝臓に薬物を送達するのに有用であることを確認する。
【0215】
(実施例5) 環状RAPペプチドオリゴマー組み合わせの評価
最小化RAP環状ペプチドは、適切なCR対への同様の親和性を保持するが、多数のCR対で受容体に結合する完全長RAPによって与えられる結合価の利点を示さない。この結合価の利点を再構成するために、ストレプトアビジンまたは抗ビオチン抗体上でビオチン化RAPd3ペプチドの多量体集合体を生成した(図3)。
【0216】
RAPd3に由来し、分子内ジスルフィド結合によって環化した切断型ペプチド(mRAPc)を用いて、LRP1の第2のリガンド結合ドメイン(LRP1−C2)への結合にたいして多量体化の影響を試験した。検出を単純化して、ストレプトアビジンまたは抗ビオチン抗体によってペプチドの多量体化を可能にするために、ペプチドにN末端ビオチン残基(ペンタペプチドリンカー(GGSGG)(配列番号12)によってRAP配列から分離した)を合わせた。単量体mRAPcペプチドを、LRP1−C2への高親和性で結合するために上記に示した。LRP1−C2のCR7対のうち6対は、RAP結合のために必要なモチーフを共有し、および同様の親和性(1〜5nM)でRAPd3に独立的に結合することが示されている(Obermoeller et al.,J Biol Chem 272:10761−10768, 1997; Andersen et al., J Biol Chem 275:21017−21024, 2000)。
【0217】
ストレプトアビジンまたは抗ビオチン抗体のいずれかの存在下および非存在下で、組換えRAPd3のLRP1−C2への結合を抑制するmRAPcの能力を、上述のように固相結合アッセイによって測定した。
【0218】
結果は、単量体ペプチドのための抑制(EC50)の程度が29±7nM(表3)であったことを示す。mRAPcのEC50をストレプトアビジンに相当する1/2モルと組み合わせたが、他の同一の条件下において、6±1nMであり、ペプチド単独よりもほぼ5倍向上した。成熟RAPは0.8±3nMのEC50であり、単量体mRAPcペプチドよりも36倍優れており、かつストレプトアビジン上で構築したペプチドよりも依然として約10倍優れていた。ストレプトアビジン単独は、抑制効果がなかった。ストレプトアビジンの存在下で見られる抑制の種々の増強は、最小化RAPドメインの多量体化の結合活性における向上と一致している。
【0219】
【表3】

ビオチンへの抗ビオチン抗体の比較的に弱い一価親和性(低ナノモルKD)を考慮に入れて、適切に隣接した2つの受容体結合ペプチドおよび単一の抗体からなる多価複合体の予備構築は、ペプチド−抗体複合体を安定させると仮定されていた。従って、洗浄およびその後のRAPd3リガンドの付加に先立って、1対3のモル比で抗体およびペプチドを、固定化受容体を用いてインキュベートした。対照、ペプチド単独、抗体単独、および完全長RAPに対して同じ手順を用いた。この方法で、単量体mRAPcペプチドのEC50を、20±1nMとして測定した(表4)。
【0220】
【表4】

mRAPcと抗ビオチン抗体との組み合わせによって3±1nMのEC50を得た。完全長RAPは、0.5±5nMのEC50をもたらした。抗体単独は、RAPd3の受容体への結合に影響を及ぼさなかった。抗体の予備構築によって、mRAPc阻害能力は、明らかにストレプトアビジンよりもより効率的に(約7倍)改善した。抗体の存在下でmRAPcのEC50は、完全長RAPのそれよりも6倍高いままであった。従って、四価ストレプトアビジンによる場合のように、二価抗体の付加は、RAPd3のLRP1−C2への結合を抑制するペプチドの能力を向上させた。
【0221】
他のLRP1−リガンドの結合を抑制するmRAPcの多量体形成の能力を、mRAPc単量体および完全長RAPによる抑制に比較した。トリプシン活性化α−2−マクログロブリンおよびuPA/PAI−1の複合体を、mRAPcペプチドの存在下で、単一のリガント濃度を用いてインキュベートした。これら両方の場合において、ストレプトアビジンおよびmRAPcの複合体は、RAPおよびmRAPc単量体の間のほぼ中ほどでEC50との結合を抑制した。
【0222】
(実施例6) 環状RAPペプチドオリゴマー組み合わせの肝臓への侵入の評価
静脈内注入後に、多量体ペプチドが完全長RAPのin vivo生体内分布挙動を複製するか決定するために、肝臓内のmRAPcペプチド蓄積濃度を測定した。ビオチン化RAPペプチド、ビオチン化RAPタンパク質、または緩衝剤を35S−SLR−ストレプトアビジン(0.7mCi/mL、300Ci/ミリモル、GE Healthcare)と組み合わせ、D−TUBE(登録商標)透析カセット(14kDa MWCO, EMD Biosciences)によってリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に対して透析した。オスSprague−Dawleyラット(6〜8週齢)に、試験物質(2μl/g、約20μCi/ラット)を尾静脈から注入した。動物を、注入から30分後にペントバルビタール(200mg/kg)で犠牲にした。すべての対象動物を、実験動物の人道的処置に関するCanadian Council on Animal Careによって記述されるガイドラインに従って処置した。死体を凍結させ、カルボキシメチルセルロースに包埋して、Fuji BAS−2500ホスフォイメージャーを用いて半定量的全身オートラジオルミノグラフィ(QWBA)による分析のために切片化した。各動物の分析した器官内で明確に描出された領域を発光分析(Fuji Image Reader v1.1およびFuji Image Gauge v3.12)のために選択した。値を、単位領域あたりの光刺激発光の単位で表す(PSL/mm)。
【0223】
35S−標識ストレプトアビジンの製剤を、ビオチン化mRAPcペプチド(20対1のモル比で)またはin vivoビオチン化RAP(5対1のモル比で)と組み合わせ、ラットに静脈内注入した。標識ストレプトアビジン単独を対照として使用した。
【0224】
ストレプトアビジンは、静脈内注入後、腎臓に蓄積されるが、肝臓での蓄積はわずかであると報告されている(Wilbur, et al., Bioconjug Chem 9:100−107, 1998; Rosebrough,et al., J Nucl Med 37:1380−1384, 1996)。本実験において、ビオチン化RAPの製剤は、ストレプトアビジン単独のそれよりも2.7倍高いレベルで肝臓に分布され、検査した他のすべての組織では、同様のレベルまたは低いレベルで分布された(図3)。標識ストレプトアビジン上で予備構築したmRAPcペプチドは、ストレプトアビジン単独のそれよりも7倍を超えるレベルで肝臓に分布され、および検査した他のすべての組織において、比較したレベルは同様のレベルまたは低いレベルで分布された(図3)。血中の競合するLRP1リガンドの高レベルは、ペプチド複合体の肝臓摂取を明らかに遮断できなかったことを示すことに注目すべきである。静脈内に投与された完全長RAPについて以前に観察が行なわれた(Warshawsky,et al., J Clin Invest 92:937−944, 1993)。
【0225】
ラットにおける生体内分布の研究に加えて、mRAPc多量体形成ペプチドの分布をウッドチャックで評価した。ウッドチャックは、肝障害(例えば肝細胞癌)を研究する際に有用である(実施例2を参照)。生体内分布研究を、基本的に上述のようにmRAPc−ストレプトアビジンおよび対照としてストレプトアビジン単独で行った。研究の結果は、ウッドチャックの肝臓でmRAPc−ストレプトアビジンの摂取(1979年の平均値PSL/mm)は、ストレプトアビジン単独の摂取よりも約4.5倍高かった(平均値435PSL/mm)ことを示す。
【0226】
これらの結果は、多量体形成mRAPcが肝臓によってin vivoで効率的に取り込まれ、および多量体形成RAPcが肝障害の処置のために肝臓に治療薬を投与するための有効的な媒体であることを示す。
【0227】
上記の例示的な実施例で記述するように当業者には本発明で多数の修正および変化が起こることが予想される。従って、添付の特許請求の範囲に表示するようにそのような限定だけを本発明に記載する必要がある。
【0228】
(参考文献)
【0229】
【表5−1】

【0230】
【表5−2】

【0231】
【表5−3】

【0232】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体の肝障害を処置する方法であって、
肝障害の処置のための活性薬剤(b)に結合した、配列番号1の受容体関連タンパク質(RAP)、RAPフラグメント、および約1〜5nMのLRP1へのRAP結合親和性を保持するRAP変異体からなる群から選択される受容体結合部分(a)を含む、有効量の結合体を該被験体に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記結合体の受容体結合部分が、配列番号1のN末端から少なくとも200、および最高243までのアミノ酸を欠損しているRAPフラグメントまたは変異体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記結合体の受容体結合部分が、配列番号1のN末端から少なくとも200、および最高243までのアミノ酸を欠損しているRAPフラグメントである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記RAPフラグメントまたは変異体が、配列番号1のN末端から243のアミノ酸を欠損している、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記RAPフラグメントまたは変異体が、配列番号1のC末端から少なくとも4、
および最高11のアミノ酸をさらに欠損している、請求項2〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記RAPフラグメントまたは変異体が、配列番号1のC末端から11のアミノ酸をさらに欠損している、請求項2〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記RAPフラグメントまたは変異体が、配列番号1の成熟RAPから1〜143および320〜323のアミノ酸を欠失している、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記RAPフラグメントまたは変異体が、(a)少なくとも長さが71のアミノ酸であるRAPd3(配列番号2)の連続部分を含み、かつ(b)256〜270のアミノ酸を含む、請求項2〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記受容体結合部分が、長さ約85未満のアミノ酸であり、配列番号4と少なくとも70%同一である50の連続するアミノ酸を含み、かつ約1×10−8M以下のKdを有するLRP1に結合する環状RAPペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記受容体結合部分がRAP変異体であり、該RAP変異体が配列番号1の天然のRAPと比較して1つ以上の保存的置換を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記受容体結合部分がRAP変異体であり、該RAP変異体が成熟RAPの217、249、または251の位置のいずれか1つに変異を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記RAP変異体が1つの変異を含み、該変異が酸性アミノ酸の塩基性アミノ酸との置換である、請求項2〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記酸性アミノ酸がDおよびEからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記塩基性アミノ酸がKおよびRからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記RAP変異体が1つの変異を含み、該変異が塩基性アミノ酸の酸性アミノ酸との置換である、請求項2〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記塩基性アミノ酸がKおよびRからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記酸性アミノ酸がDおよびEからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記RAP変異体が1つの変異を含み、該変異がA、C、D、E、G、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、およびVからなる群から選択されるアミノ酸の、F、Y、W、およびHからなる群から選択されるアミノ酸との置換である、請求項2〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記結合体の前記受容体結合部分が配列番号9に示されるRAPフラグメントまたは変異体である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記RAP、RAPフラグメント、またはRAP変異体、および診断薬剤または治療薬剤がリンカーを介して連結される、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記リンカーがペプチドリンカーである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記受容体結合部分がRAPフラグメントまたはRAP変異体のオリゴマー組み合わせである、請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記結合体が、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む医薬組成物中に存在する、請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記肝障害が、肝癌、肝炎、肝硬変、真菌感染、リケッチア感染または寄生虫感染、アルコール毒素、化学的毒素、薬物毒性に起因する損傷、代謝性肝疾患、突発性自己免疫性肝疾患、胆管閉塞、脂肪肝、胆汁うっ滞、および肝切除後の状態からなる群から選択される、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記肝癌が肝細胞癌からなる群から選択され、前記活性薬剤部分が細胞傷害性化学療法薬剤である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記肝障害が肝臓腫瘍または肝臓内での腫瘍転移であり、そして前記治療薬剤が化学療法薬剤である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記活性薬剤が細胞傷害性薬剤である、請求項1〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記細胞傷害性薬剤が、塩酸メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、クロラムブシル、メルファラン、ブスルファン、チオテパ、カルムスチン、ロムスチン、ダカルバジン、およびストレプトゾシンからなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記活性薬剤が放射性同位体である、請求項1〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記放射性同位体が、131I、125I、111In、90Y、67Cu、127Lu、212Bi、213Bi、255Fm、149Tb、223Rd、213Pb、212Pb、211At、89Sr、153Sm、166Ho、225Ac、186Re、67Ga、68Ga、および99mTcからなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記肝障害がウイルスに起因する肝炎であり、そして前記治療薬が抗ウイルス剤である、請求項24に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−503710(P2010−503710A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528530(P2009−528530)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/078792
【国際公開番号】WO2008/036682
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(508080012)ラプトール ファーマシューティカル インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】