説明

口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミン錠剤

【課題】少ない錠数で生理活性が期待できる量のN−アセチルグルコサミンを摂取でき、かつ口腔内における優れた崩壊性と溶解性を有し、取り扱い上の困難性を伴わない程度の硬度を有するN−アセチルグルコサミン錠剤、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】N−アセチルグルコサミンに、成形性の低い糖類を混合あるいは噴霧して、被覆及び/又は造粒し、得られた造粒物と成形性の高い糖類を混合して成型することにより、錠剤の硬度が5〜20kgf、1錠当りの質量が1,000〜3,000mgであり、N−アセチルグルコサミン(A)の含有量が30〜90質量%で、かつ、1錠当り、N−アセチルグルコサミン(A)を700〜1,500mg含有し、口腔内において速やかに崩壊し、かつ溶解する口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミン錠剤を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−アセチルグルコサミンを含有する錠剤及びその製造方法に関し、詳しくは、取り扱い性に優れ、口腔内において速やかに崩壊し、かつ溶解する口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミン錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
N−アセチルグルコサミンは、自然界においては、エビ、カニ等の甲殻類、カブトムシ、コオロギ等の昆虫類や真菌類の細胞壁に含まれており、キチンの構成単位として天然界に広く存在する単糖類の一種である。N−アセチルグルコサミンは、砂糖の半分程度の甘味度を有し、生体中のムコ多糖類の合成原料として知られており、美容や関節障害改善、記憶学習能改善等の生理活性を有することから、近年機能性食品素材として注目されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、グルコサミン、グルコサミン誘導体またはそれらの薬理学的に許容される塩の中から選ばれる少なくとも一種を含有するエラスターゼ阻害剤が開示されており、前記グルコサミン誘導体としてN−アセチルグルコサミンが例示されている。
【0004】
下記特許文献2には、グルコサミン又はその塩、及びN−アセチルグルコサミンから選ばれた少なくとも1種を有効成分として含む経口摂取用の組成物からなることを特徴とする記憶学習能改善剤が開示されている。
【0005】
下記特許文献3には、アミノ糖とトレハロースとを有効成分として含んでなる抗関節障害剤が開示されており、前記アミノ糖としてN−アセチルグルコサミンが例示されている。
【0006】
下記特許文献4には、キチン及びキチン加水分解物を主材料とするグルコサミン、グルコサミン塩、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルグルコサミン塩を含むアミノ糖、または、それらの単独及び選択混合したアミノ糖組成物に、大豆由来のイソフラボン及びイソフラボンを含む大豆抽出物を配合した関節軟骨再生促進及び軟骨減少防止用栄養補助組成物が開示されている。
【0007】
下記特許文献5には、アミノ酸、ヒアルロン酸及びアミノ糖を含有することを特徴とする食品組成物が開示されており、前記アミノ糖としてN−アセチルグルコサミンが例示されている。
【0008】
下記特許文献6には、N−アセチルグルコサミンを有効成分として含有する美肌促進剤が開示されている。
【0009】
下記特許文献7には、アミノ糖またはアミノ糖誘導体の一種以上を含有することを特徴とする美容食品組成物が開示されており、前記アミノ糖誘導体として、N−アセチルグルコサミンが例示されている。
【0010】
下記特許文献8には、関節の結合組織及び支持組織の退行性及び炎症性疾患、及び関連疾患の治療のための、口腔内で使用可能なN−アセチルグルコサミン製剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−83432号公報
【特許文献2】特開2004−75618号公報
【特許文献3】特開2002−193811号公報
【特許文献4】特開2002−3382号公報
【特許文献5】特開2001−231503号公報
【特許文献6】特開2001−48789号公報
【特許文献7】特開2000−50842号公報
【特許文献8】特公平7−103033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献1〜8には、N−アセチルグルコサミンを含有する組成物の製品形態として錠剤が開示されている。錠剤は保存性、携帯性に優れ、水さえあれば時間や場所を問わず手軽に摂取可能であることから、食品や製薬において最もよく用いられている製品形態の一つである。
【0013】
しかしながら、従来のN−アセチルグルコサミンを含有する錠剤は、口腔内で崩壊させることなく水と共に嚥下することを前提としており、1錠の大きさに制限があるため、生理活性作用量のN−アセチルグルコサミンを摂取するためには複数錠のN−アセチルグルコサミン含有錠剤を摂取する必要があった。
【0014】
例えば、ヒトに1,000mg/dayのN−アセチルグルコサミンを経口投与することによる美肌効果への有効性が確認されている(O. Kajimoto et al, J. New Rem. & Clin., 52(3), 71-80, 2000)。また、ヒトに500若しくは1,000mg/dayのN−アセチルグルコサミンを牛乳に配合して摂取することによる関節症改善効果が確認されている(O. Kajimoto et al, J. New Rem. & Clin., 49(5), 71-82, 2003)。
【0015】
それに対して、上記特許文献1、4〜6及び8に記載されたN−アセチルグルコサミン含有錠剤は、1錠(大きさ110〜500mg)当りのN−アセチルグルコサミン含量が72〜200mgであり、このようなN−アセチルグルコサミン含有錠剤でN−アセチルグルコサミンの生理活性を得るためには、少なくとも3錠、多ければ14錠という多数の錠剤を継続的に摂取する必要があり、非常に煩わしく、また、摂取も困難であった。
【0016】
一方、上記特許文献7に記載されている、1錠当りの大きさが1,000mgであり、1錠当りのN−アセチルグルコサミン含量が500mgであるN−アセチルグルコサミン含有錠剤のような大型錠剤の場合、錠剤を口腔内で崩壊させる必要があるだけでなく、製品の流通過程、携帯中、摂取時においては錠剤形状を維持する必要があるため、錠剤の硬度や崩壊性等が重要となるが、これらについては開示されていない。
【0017】
したがって、本発明の目的は、少ない錠数で生理活性が期待できる量のN−アセチルグルコサミンを摂取でき、かつ口腔内における優れた崩壊性と溶解性を有し、更に取り扱い上の困難性を伴わない程度の硬度を有するN−アセチルグルコサミン錠剤、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、本発明の一つは、N−アセチルグルコサミン(A)を含有する錠剤であって、その錠剤の硬度が5〜20kgf、1錠当りの質量が1,000〜3,000mgであり、N−アセチルグルコサミン(A)の含有量が30〜90質量%で、かつ、1錠当り、N−アセチルグルコサミン(A)を700〜1,500mg含有し、口腔内において速やかに崩壊し、かつ溶解することを特徴とする口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミン錠剤である。
【0019】
本発明のN−アセチルグルコサミン錠剤は、大型の錠剤でありながら、通常の咀嚼によって崩壊する程度の崩壊性を有し、唾液とともに水なしに飲み下すことができるほどに口腔内における優れた崩壊性と溶解性を有している。また、取り扱い上の困難性を伴わない程度の十分な硬度を有しているので、製品の流通過程、携帯中、摂取時等において錠剤が崩れることもない。
【0020】
また、1錠中に十分な量のN−アセチルグルコサミンを含有しているので、1錠、多くとも2錠という少ない錠数で生理活性が期待できる量のN−アセチルグルコサミンを摂取することができる。
【0021】
本発明のN−アセチルグルコサミン錠剤においては、更に、200mgの糖類を8mmφの杵を用いて打錠圧200kgで打錠成型した際の錠剤硬度が2kgf未満である、成形性の低い糖類(B)と、200mgの糖類を8mmφの杵を用いて打錠圧200kgで打錠成型した際の錠剤硬度が2kgf以上である、成形性の高い糖類(C)とを含有することが好ましい。前記成形性の低い糖類としては、キシリトール、マンニトール、乳糖、グルコース、スクロース、デキストリン、果糖、キシロース、ラクチュロース、フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、エリスリトール、ラクチトールから選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。また、前記成形性の高い糖類としては、マルチトール、マルトース、ソルビトール、還元パラチノースから選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
【0022】
本発明のN−アセチルグルコサミン錠剤においては、更にまた、β−カロチン及び/又はビタミンAを含有することが好ましく、β−カロチンを0.004〜0.4質量%、ビタミンAを0.0007〜0.07質量%含有することが好ましい。
【0023】
この態様によれば、より優れた品質安定性、食感、味を有する口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミン錠剤とすることができる。また、美容や関節障害改善等の生理機能において、N−アセチルグルコサミンとβ−カロチンやビタミンAとの相乗効果が期待できる。
【0024】
本発明のN−アセチルグルコサミン錠剤においては、更にまた、PTP包装(Press Through Package)されていることが好ましい。この態様によれば、携帯性や保存性に優れたN−アセチルグルコサミン錠剤とすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、1錠当りのN−アセチルグルコサミン含有量が多く、少ない錠数で十分な生理活性が期待できる量のN−アセチルグルコサミンを摂取することができる口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミン錠剤を提供できる。本発明の口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミン錠剤は、通常の咀嚼によって崩壊する程度の崩壊性を有し、唾液とともに水なしに飲み下すことができるほどに口腔内における優れた崩壊性と溶解性を有しているため、大型の錠剤でありながら水なしでの摂取が容易であり、継続摂取に関する困難性、煩わしさをともなわない。また、取り扱い上の困難性を伴わない程度の十分な硬度を有しているため、携帯中や摂取時に錠剤が崩れることもなく、誰でも場所を問わず容易に摂取が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミン錠剤は、口腔内で2つ以上の破片に咀嚼して嚥下することを前提とした錠剤であって、通常の咀嚼によって崩壊する程度の崩壊性を有し、唾液とともに水なしに飲み下すことができるほどに溶解性を有する錠剤である。
【0027】
本発明において「口腔内において速やかに崩壊し、かつ溶解する」とは、健康な成人が錠剤1錠を口腔内に含み、咀嚼後に、錠剤が唾液のみで口溶けしてほぼ完全に崩壊するのに要する時間(口腔内崩壊時間)が、好ましくは30〜90秒、より好ましくは20〜75秒、更により好ましくは10〜60秒であることを意味し、具体的には、所定人数のパネラーによるモニター評価における統計的に有意な平均測定値を用いて規定することができる。
【0028】
本発明で用いられるN−アセチルグルコサミンの起源は特に限定されないが、例えば、カニやエビ等の甲殻類から得られたキチンを原料として、特公平5−33037号公報や特開2000−281696号公報等に記載されている方法にしたがって得られる天然型のものを用いることが好ましい。
【0029】
すなわち、カニ、エビ等の甲殻類の殻から調製された多糖類キチンを、酸で部分加水分解して得られるN−アセチルキトオリゴ糖含有混合物に、N−アセチルキトオリゴ糖に対して加水分解能を有する酵素(例えば、リゾチウム、キチナーゼ、キトビアーゼ等)を作用させて分解し、必要に応じて精製することにより得ることができる。
【0030】
上記のようにして得られたN−アセチルグルコサミンは、化学合成を行っていない天然型であるため、食品としてより安全に摂取することができる。なお、上記のようにして製造された天然型のN−アセチルグルコサミンは市販されており、例えば、商品名「マリンスウィート」(焼津水産化学工業株式会社製)等を用いることができる。
【0031】
本発明においては、精製された高純度のN−アセチルグルコサミンを用いてもよく、N−アセチルグルコサミンとキチンオリゴ糖の混合物を用いてもよい。N−アセチルグルコサミンとキチンオリゴ糖の混合物は、例えば以下のようにして得ることができる。
【0032】
すなわち、キチンを塩酸により部分加水分解し、この分解液を中和後、イオン交換膜電気透析法によって脱塩処理する。脱塩処理後、共存するグルコサミン塩酸塩をイオン交換樹脂によって吸着除去する。そして、得られた処理液を酵素分解してN−アセチルグルコサミンを遊離させる。このようにして得られた反応液は、酵素を失活させた後、必要に応じてデキストリン等の賦形剤を添加してスプレードライヤーによって噴霧乾燥すればよい。
【0033】
上記のようにして得られるN−アセチルグルコサミンとキチンオリゴ糖の混合物は、N−アセチルグルコサミン80〜99質量%、キチンオリゴ糖1〜20質量%を含有するものであることが好ましい。このようなN−アセチルグルコサミンとキチンオリゴ糖の混合物として、商品名「マリンスウィート40」(焼津水産化学工業株式会社製)等の市販されているものを用いることができる。
【0034】
本発明の口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミン錠剤は、更に、成形性の低い糖類と成形性の高い糖類を含有することが好ましい。
【0035】
本発明において、成形性の低い糖類とは、200mgの糖類を8mmφの杵を用いて打錠圧200kgで打錠成型した際の錠剤硬度が2kgf未満である糖類、より好ましくは錠剤硬度が1.8kgf未満である糖類、更により好ましくは錠剤硬度が1.5kgf未満である糖類を意味する。このような糖類としては、キシリトール、マンニトール、乳糖、グルコース、スクロース、デキストリン、果糖、キシロース、ラクチュロース、フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、エリスリトール、ラクチトール等が例示でき、好ましくはキシリトール、マンニトール、乳糖、グルコース、スクロース、デキストリンが挙げられ、特に好ましくはデキストリンが挙げられる。
【0036】
また、成形性の高い糖類とは、200mgの糖類を8mmφの杵を用いて打錠圧200kgで打錠成型した際の錠剤硬度が2kgf以上である糖類、より好ましくは錠剤硬度が1.8kgf以上である糖類、更により好ましくは錠剤硬度が1.5kgf以上である糖類を意味する。このような糖類としては、マルチトール、マルトース、ソルビトール、還元パラチノース等が例示でき、好ましくはマルチトールが挙げられる。
【0037】
更に、本発明の口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミン錠剤は、β−カロチン及び/又はビタミンAを含有することが好ましい。
【0038】
β−カロチン及びビタミンAは、市販の食品用のものを用いることができ、例えば、β−カロチンであれば、商品名「β−カロチン1%冷水可溶粉末」(DSMニュートリションジャパン社製)、商品名「発酵β−カロチン1%末」(三共ライフテック株式会社製)等、ビタミンAであれば、商品名「理研ドライA−S200PT」(理研ビタミン株式会社製)、商品名「ドライビタミンA三共」(三共ライフテック株式会社製)等を用いることができる。なお、β−カロチンは、ヒアルロン酸合成促進能を有することが知られており(T. Sato et al, Skin Pharmacol Physiol 17, 77−83, 2004)、美容や関節障害改善等の生理機能においてもN−アセチルグルコサミンとの相乗効果が期待され、N−アセチルグルコサミンの生理機能をより効果的に得ることができる。
【0039】
本発明の口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミン錠剤は、1錠中に十分な量のN−アセチルグルコサミンを含有し、かつ良好な食感とするために、その錠剤の硬度が5〜20kgf、1錠当りの質量が1,000〜3,000mgである必要がある。
【0040】
すなわち、錠剤の硬度が、上記範囲よりも低い場合、製品の流通や保存時に錠剤が崩壊してしまい、上記範囲よりも高い場合は、摂取時の口腔内における崩壊性が悪くなり、結果として食感の悪い錠剤となってしまうため好ましくない。また、1錠当りの質量が、上記範囲よりも小さい場合は、1錠中に十分な量のN−アセチルグルコサミンを配合させることが困難であり、上記範囲よりも大きい場合は、打錠加工における安定性が低下して品質安定性が低下し、1錠を一口で摂取することが困難になるため好ましくない。
【0041】
そして、1錠中に十分な量のN−アセチルグルコサミンを含有し、かつ、より良好な食感とするためには、錠剤の硬度が5〜13kgfであることが好ましく、7〜9kgfであることがより好ましい。また、1錠当りの質量は1,200〜2,000mgであることが好ましい。
【0042】
本発明においては、N−アセチルグルコサミンを30〜90質量%含有させる。その含有量としては40〜80質量%であることが好ましく、50〜70質量%であることがより好ましい。N−アセチルグルコサミンの含有量が、上記範囲よりも少ない場合、1錠中に十分な量のN−アセチルグルコサミンを配合させることが困難であり、上記範囲よりも多い場合は、打錠加工性や錠剤の食感が悪化するため好ましくない。また、1錠当りのN−アセチルグルコサミンの含有量としては、700〜1,500mgを含有させる。
【0043】
また、前記成形性の低い糖類を、0.01〜49質量%含有することが好ましく、0.05〜20質量%含有することがより好ましく、0.1〜10質量%含有することが特に好ましい。成形性の低い糖類の含有量が、上記範囲よりも少ない場合、打錠加工時におけるN−アセチルグルコサミンの流動性が得られないため打錠加工性が悪化し、上記範囲よりも多い場合は、錠剤の硬度が必要以上に高くなるため好ましくない。
【0044】
また、前記成形性の高い糖類を、0.01〜49質量%含有することが好ましく、1〜45質量%含有することがより好ましく、20〜40質量%含有することが特に好ましい。成形性の高い糖類の含有量が、上記範囲よりも少ない場合、錠剤の十分な硬度を得ることができず、上記範囲よりも多い場合は、錠剤の硬度が必要以上に高くなるため好ましくない。
【0045】
更に、本発明においては、β−カロチンを0.004〜0.4質量%、ビタミンAを0.0007〜0.07質量%含有することが好ましく、β−カロチンを0.01〜0.1質量%、ビタミンAを0.002〜0.02質量%含有することがより好ましい。β−カロチンやビタミンAの含有量が上記範囲よりも少ない場合、美容や関節障害改善等の生理機能におけるN−アセチルグルコサミンとの十分な相乗効果が期待できず、上記範囲よりも多い場合は、これらの成分の標準摂取量を超過してしまうため好ましくない。
【0046】
本発明の口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミン錠剤は、上記基本的成分の他に、味や物性に悪影響を与えない範囲で他の成分を含有することができ、例えば、アルギニン、タウリン、グルタミン酸、ヒスチジン、分岐鎖アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン)等のアミノ酸、ヒスチジン、1−メチルヒスチジン、3−メチルヒスチジン、アンセリン、カルノシン、ホモカルノシン、バレニンのようなイミダゾール化合物、オクタコサノール、クエン酸、酢酸、キチンダイマー、キチンペンタマー、キトサンヘキサマー、オリゴグルコサミン、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、トウガラシ、高麗人参、酵母亜鉛、酵母セレン等を適宜用いることができる。これらの成分を配合することにより、様々な生理機能を付与することができる。また、口腔内で咀嚼して嚥下することを前提とした錠剤であるため呈味付与成分を適宜配合することにより、その呈味の観点からも摂取しやすいものとすることができる。
【0047】
また、本発明の口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミン錠剤の包装形態としては、PTP包装(Press Through Package)が好ましい。これにより、携帯性や保存性が向上し、また、錠剤の取り出しも容易になる。
【0048】
以下、本発明の口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミン錠剤の製造方法について説明する。
【0049】
(1)造粒工程
まず、所定量のN−アセチルグルコサミンに、所定量の上記成形性の低い糖類を混合あるいは噴霧して、被覆及び/又は造粒する。被覆・造粒方法については、特に限定されず、公知の方法を採用することができ、例えば、通常用いられる流動層造粒機、転動攪拌造粒機等によって被覆・造粒することができる。なお、加工条件は使用する装置により異なるので、適宜決定すればよい。
【0050】
(2)打錠成型工程
前記工程で得られた造粒物と所定量の上記成形性の高い糖類を混合して成型する。打錠成型方法については、特に限定されず、公知の方法を採用することができるが、高速回転式錠剤機等が例示できる。加工条件は、錠剤の硬度を5〜20kgf、好ましくは錠剤の硬度を5〜13kgf、より好ましくは7〜9kgfとし、1錠当りの質量を1,000〜3,000mg、好ましくは1,200〜2,000mgとなるようにする。また、N−アセチルグルコサミンを、その含有量が錠剤全体の30〜90質量%となるように配合し、1錠当りのN−アセチルグルコサミンの含有量としては、700〜1,500mgを含有させる。
【0051】
なお、β−カロチン及び/又はビタミンAは、上記造粒工程又は上記打錠成型工程において混合することが好ましい。
【0052】
本発明においては、上記造粒工程及び/又は上記打錠成型工程において、錠剤の味、物性に悪影響を与えない範囲において、必要に応じて、(1)賦形剤(糖類):澱粉、デキストリン等の澱粉若しくは澱粉分解物、カラギーナン、寒天、アルギン酸、グアーガム、キトサン、キサンタンガム等の多糖類、砂糖、ブドウ糖、乳糖、麦芽糖等の単糖類、二糖類、フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キチンオリゴ糖、キトサンオリゴ糖等のオリゴ糖類、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール等の糖アルコール類等、(2)増粘剤:グアガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アルギン酸、ペクチン等、(3)滑沢剤(乳化剤):ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等の副資材を使用することができる。
【0053】
上記賦形剤(糖類)は、その成形性によって、上記成形性の低い糖類や成形性の高い糖類と同じ範囲内の配合で使用することができる。増粘剤は、主原料と粉体混合した後、造粒加工してもよく、その一部又は全部を水やエタノール等の液体に溶解後、主原料に噴霧して造粒加工してもよい。また、造粒加工を行わずに、打錠成型時に混合してもよい。滑沢剤は、打錠成型時に混合すればよい。
【0054】
このようにして得られた口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミン錠剤は、携帯性や保存性の向上、錠剤の取り出しやすさの点から、PTP包装(Press Through Package)することが好ましい。
【実施例】
【0055】
表1に示す配合の造粒加工用原料を用いて、常法にしたがって、流動造粒装置(商品名「FD−WH(G)−60型」、POWREX社製)により、造粒加工及び乾燥を行った。乾燥は温度80℃にて水分が1%以下になるまで行った。
【0056】
乾燥後、表1に示す配合の打錠加工用原料を混合して、常法にしたがって、打錠機(商品名「TEGA 1024SS4−HY」、株式会社菊水製作所製)により、打錠圧1000kgで打錠加工を行い、口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミン錠剤(20mm丸、1,850mg/錠)を製造した。
【0057】
【表1】

【0058】
(1)口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミン錠剤の硬度測定
上記で得られた各口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミン錠剤について、硬度計(商品名「FY−KD−20」、株式会社富士薬品器械製)を用いて、日局硬度測定法に準じて硬度の測定を行った。
【0059】
(2)口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミン錠剤のモニター評価
上記の口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミン錠剤を20人のパネラーに試食してもらい、口腔内で噛んだときの噛み易さ(崩壊性)、口腔内における噛んだ後の口どけ感(溶解性)、総合的な食べ易さ(総合評価)について、良好か否かを判定した(◎:16人以上が良好であると判定、○:11人以上16人未満が良好であると判定、△:6人以上11人未満が良好であると判定、×:6人未満が良好であると判定)。
【0060】
(3)口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミン錠剤の口腔内崩壊時間の評価
上記の口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミン錠剤を20人のパネラーに試食してもらい、口腔内で咀嚼により錠剤が崩壊したと認識したことを各パネラーに申告してもらい、錠剤が唾液のみで口溶けしてほぼ完全に崩壊するのに要する時間(口腔内崩壊時間)について評価した。結果は実施例又は比較例の各錠剤につき、パネラー20人の平均値として表わした。
【0061】
上記(1)、(2)及び(3)の結果をまとめて表2に示す。
【0062】
【表2】

【0063】
表2から、実施例の錠剤は、その硬度が7.9kgfであり、口腔内で噛んだときの噛み易さ(崩壊性)及び口腔内における噛んだ後の口どけ感(溶解性)が良好で、総合的な食べ易さに関する評価(総合評価)も高いことが分かる。一方、成型性の高い糖類を造粒加工し、成型性の低い糖類を打錠加工時に混入した比較例1の錠剤は、実施例の錠剤と同等の硬度(7.7kgf)を有するものの、口腔内においては硬く感じられ、総合評価が低くなった。
【0064】
また、成型性の高い糖類と低い糖類を共に造粒加工した比較例2の錠剤は、その硬度が13.8kgfと高く、口腔内においても硬く感じられ、総合評価も低くなった。成型性の低い糖類を使用しない比較例3の錠剤は、その硬度が4.8kgfと低く、口腔内においては若干やわらかく感じられたものの総合評価は高かった。成型性の高い糖類を使用しない比較例4の錠剤は、その硬度が3.0kgfと低く、やわらかく感じられたが、溶解性が悪く、総合評価も低くなった。
【0065】
そして、錠剤が唾液のみで口溶けしてほぼ完全に崩壊するのに要する時間(口腔内崩壊時間)については、比較例の錠剤が103〜123秒であるのに対して、実施例の錠剤においては32秒と有意に低減されることが明らかとなった。
【0066】
なお、実施例の口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミン錠剤を1錠(NAG1,000mg含有)/dayで1ヶ月間継続摂取したが、継続摂取に関する困難性、煩わしさを訴えるものはいなかった。
【0067】
(4)口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミンのPTP包装
実施例の口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミン錠剤について、PTP包装装置(商品名「HM−135」、テクノ自動機製作所製)を用いて、常法に従いPTP包装を行った。PTP包装は特に問題なく円滑に行うことができ、PTP包装された口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミン錠剤は、移送中や保存中、PTP包装からの取り出し時に形状が崩れることはなかった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミン錠剤は、サプリメントや健康食品等として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−アセチルグルコサミン(A)を含有する錠剤であって、その錠剤の硬度が5〜20kgf、1錠当りの質量が1,000〜3,000mgであり、N−アセチルグルコサミン(A)の含有量が30〜90質量%で、かつ、1錠当り、N−アセチルグルコサミン(A)を700〜1,500mg含有し、口腔内において速やかに崩壊し、かつ溶解することを特徴とする口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミン錠剤。
【請求項2】
更に、200mgの糖類を8mmφの杵を用いて打錠圧200kgで打錠成型した際の錠剤硬度が2kgf未満である糖類(B)と、200mgの糖類を8mmφの杵を用いて打錠圧200kgで打錠成型した際の錠剤硬度が2kgf以上である糖類(C)とを含有する請求項1記載の口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミン錠剤。
【請求項3】
前記糖類(B)が、キシリトール、マンニトール、乳糖、グルコース、スクロース、デキストリン、果糖、キシロース、ラクチュロース、フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、エリスリトール、ラクチトールから選ばれた少なくとも1種であり、前記糖類(C)が、マルチトール、マルトース、ソルビトール、還元パラチノースから選ばれた少なくとも1種である請求項1又は2記載の口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミン錠剤。
【請求項4】
更に、β−カロチン及び/又はビタミンAを含有する請求項1〜3のいずれか一つに記載の口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミン錠剤。
【請求項5】
β−カロチンを0.004〜0.4質量%、ビタミンAを0.0007〜0.07質量%含有する請求項4記載の口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミン錠剤。
【請求項6】
PTP包装されている請求項1〜5のいずれか一つに記載の口腔内崩壊型N−アセチルグルコサミン錠剤。

【公開番号】特開2009−269929(P2009−269929A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189102(P2009−189102)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【分割の表示】特願2006−550749(P2006−550749)の分割
【原出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(390033145)焼津水産化学工業株式会社 (80)
【Fターム(参考)】