説明

口腔用溶解制御性ポリマー装置

本発明は、天然歯およびその周辺の軟部組織などの硬い歯の表面に付着し、象牙質知覚過敏に伴う痛刺激に対して物的障壁を造る、口腔用の固体溶解制御性組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明は象牙質知覚過敏の処置用組成物および象牙質知覚過敏の処置方法に関する。特に、本発明は象牙質知覚過敏に対して物的障壁を造り出すことのできる物質を含み、および/または象牙質知覚過敏を処置するための医薬剤を含む、天然歯および/または歯肉に付着する溶解持続性または制御性口腔用組成物に関する。
【0002】
(従来技術)
象牙質知覚過敏は、知覚過敏の歯が温度および/または圧力の変化、あるいは化学作用を受けた場合に生じる、一時的誘発性痛覚である。損耗または摩耗により象牙質が暴露されると常に、あるいはより細い歯根の表面が歯周病に曝されると、知覚過敏が起こりうる。象牙質は歯の骨のような物質であり、一般に、歯肉線より上はエナメル質で、歯肉線より下はセメント質で覆われている。エナメル質またはセメント質は腐食、損傷、病気または他の原因を介して除去されるかもしれず、それにより象牙質が口中の外部刺激に曝されることとなる。象牙質は、一般に、象牙質の外側と、歯の内側の間で物質およびエネルギの移動を可能とする、細管と言われるチャネルを含有し、そこには神経がある。
流体力学理論と称される、象牙質知覚過敏の一の理論は、これら細管の外部刺激に対する暴露が神経刺激を惹起し、知覚過敏の不快をもたらしうることを示唆する。流体力学理論は、歯にある神経を刺激に対して敏感でないようにすること(いわゆる、神経感作抑制すること)により、あるいは細管を遮断または閉塞し、神経の外部刺激に対する暴露を抑えるか制限することで知覚過敏は処理されうると示唆する。
【0003】
象牙質知覚過敏を制御するために多くの試みがなされてきた。一の方法は敏感な歯における神経の興奮性を減少させることである。この方法は、神経をあまり敏感でないようにする薬剤を用いることにより神経の化学環境を変えることで、神経の普遍的作動工程に干渉するものである。これらの薬剤は、一般に、「神経剤」または「神経感作抑制剤」と称される。神経をそれほど敏感でないようにすることで、細管に浸透しうる外部因子の神経に対する効果が減少する。神経刺激性物質であるいずれの神経感作抑制剤、すなわち、痛みを和らげる活性または鎮痛活性を有するいずれのイオンまたは塩も本発明の組成物に用いるのに適している。
この目的のために最もよく知られている薬剤が、敏感な歯のための市販歯磨剤に使用されている硝酸カリウムであり、米国特許第3863006号に記載されている。神経感作抑制剤として知られている他の薬剤の例が以下の米国特許に見られる:炭酸水素カリウムおよび塩化カリウムなどのカリウム塩の場合、米国特許第4731185号および第4751072号に;ストロンチウムおよびフッ素イオンの場合、米国特許第4990327号に;ならびに亜鉛およびストロンチウムイオンの場合、米国特許第3888976号に記載されている。
【0004】
象牙質知覚過敏を制御する別の方法は、流体力学理論について上記したように、薬剤を用いて、細管を完全にまたは部分的に閉塞することである。細管閉塞物質は象牙質細管の密封または遮断に供され、それにより温度、圧力、イオン勾配物質などの外部刺激の効果あるいは化学刺激物質との接触が減少し、ならびに歯液の自然な流出によるカリウムの細管からのフラッシングを減少させるのに役立つ。細管遮断剤として使用される材料として、例えば、粒径が象牙質細管の径よりも小さく、象牙質細管を遮断する材料;および象牙質細管内に凝集物を生成し、および/または象牙質表面に沈降するであろう沈降物を形成する材料が挙げられる。かかる「細管遮断剤」の例が以下の特許に見出される:荷電したポリスチレンビーズ、米国特許第5211939号;アパタイト、米国特許第4634589号および第4710372号;約450000ないし約4000000の典型的な分子量を有するポリアクリル酸ポリマー、米国特許第5270031号;および水可溶性または水膨潤性ポリ電解質またはその塩、米国特許第4362713号。加えて、米国特許第5589159号はラポナイト(Laponite)またはヘクトライト(hectorite)クレイを用い、象牙質細管を密封することを開示する。
【0005】
PCT特許出願WO00/042981は、2種の異なる感作抑制剤(フッ化スズおよび硝酸カリウム)の組成物が二相分配ユニットに分離されている、異なる作用モードを開示する。これらの薬剤はその安定性を強化するのに開示されている組成物にて分離されている。さらには、WO02/15809は少なくとも1種の細管閉塞剤と1種の神経感作抑制剤の相乗作用の組合せを開示する。
これらの方法はある一定レベルの成功を収めたが、歯過敏症およびそれに伴う痛みについて、少しであるが、長期間にわたって即効性緩和を付与する局所的に適用される、移動可能で目立たない処置に関する要求がある。本発明の口腔ケア装置は、象牙質知覚過敏に付随する痛刺激に対する障壁を造る、溶解持続性または制御性口腔用組成物を提供することでこれらの目標を達成するものである。
【0006】
象牙質または神経に活性物質をデリバーする上で最も有意な問題は歯液が流出することである。したがって、象牙質細管に障壁を造ることで、歯液の流量は減少または除去される。痛みに対する障壁を造るだけの他に、流体の流量を減少/除去することで活性物質が神経に浸透する環境が強化される。
口腔放出制御デリバリーシステムは医薬分野にてよく知られており、所望の期間にわたって医薬を所望のレベルに維持する能力を包含する。舌下錠、トローチおよびバッカルなどの自由な形態が記載されている。非付着性の口腔持続性放出形態に加えて、口腔粘膜に付着させ、活性薬剤を口腔粘膜に直接、または唾液にデリバーする他の形態も設計されている。軟膏および他の粘着性組成物も使用されてきた。これらすべての形態における活性成分は、局所的に、または全身を介して作用しうる。これらの系の第一の目標は、痛みに対する物的障壁を設けることとは対照的に薬物活性を供給することにあるため、当該系は何ら本願発明を示唆するものではない。
【0007】
米国特許第4059686号は、薬理学的に活性な薬剤、医薬担体およびポリアクリル酸ナトリウムを従来の剤形にて混合することにより特徴付けられる、口腔に付着し、粘膜に投与するための徐放性医薬製剤を記載する。
米国特許第4597959号は、遅延放出特性を有するとされる、ウエハース形態のコスメティック息清涼組成物を記載する。該組成物はフレーバー材料のマイクロカプセル化された多数の液滴を付着基剤に含有させることを含む。
米国特許第4772470号は、ポリカルボン酸および/または無水ポリカルボン酸と酢酸ビニルポリマーの酸無水物および酢酸ビニルポリマーの混合物を混和可能な状態にて含むソフトな付着フィルムからなる口腔用バンドエイド;およびその中に局所用薬物を配合した口腔用バンドエイドを含む口腔製剤を開示する。該口腔用バンドエイドまたは製剤は、口腔粘膜または歯に塗布されると、長期にわたって強い粘着性を発揮すると報告されている。
【0008】
米国特許第4876092号は、必須成分として、カルボキシビニルポリマー、水不溶性メタクリル酸コポリマー、多価アルコールおよび医薬上活性な薬剤を含有する粘着層と、必須成分として、医薬上活性な薬剤、水不溶性フィルム形成高分子量化合物および可塑剤を含有する水不浸透性の水不溶性キャリア層を含むシート状付着製剤であって、口腔粘膜に一定期間にわたって付着し、活性薬剤を放出することのできる製剤を記載する。
米国特許第5160737号および第5330746号は、アクリル酸ポリマー(ポリマーのオイドラギット(登録商標)ファミリー)および薬剤を含む、徐放性液体ポリマーまたは「光沢のある」組成物を開示する。この処方は歯および歯肉を該処方で磨くかスプレーし、その後に液体ポリマーを固体フィルムまで乾燥させることで虫歯、歯周病および歯知覚過敏を防止するのに有用である。
【0009】
欧州特許出願223245は、メタクリル酸モノマーおよび重合開始剤を含有し、インサイチュにて重合して硬質フィラーを形成する特性を有する、歯に塗布するための治療用組成物を開示する。該フィラーを活性剤と組み合わせて使用することにより、活性剤がその硬質フィラーから放出される。
公開された米国出願US2001/0024657A1は、歯および義歯などの硬い象牙質表面に付着し、医薬上活性な薬剤を含有する徐放性固体組成物を記載する。効果的な放出制御のドラッグデリバリーシステムを創作するにおいて、ポリアクリル酸またはポリメタクリル酸ポリマーが特に有用であると開示されている。
【0010】
他の既知の製剤は、通常、口中で速やかに溶解するか崩壊する、成分を含む。これらの製剤に含まれる医薬上活性な薬剤は、大抵、口腔粘膜を介して吸収されることなく、飲み込まれ、これらの製剤は徐放性または放出制御製剤として、または痛みに対する物的障壁として満足のいくものではない。これらの既知の組成物は、鉱化剤などの物質、または鉱化に好ましい即時プラグまたは環境を造るための、唾液をオーラルフローラ(oral flora)と相互作用させる他の系を容認することについても満足のいくものではない。というのも、かかる活性物質は、歯を白くする、あるいは冷たいまたは塩辛い食べ物を食事する間に痛みを緩和するなどの、所望の効果を成熟させるまでに、あるいは得るのに時間を要するからである。
【0011】
したがって、その適用が簡単で複雑でなく、象牙質知覚過敏に付随する痛刺激に対して即時に障壁を形成し、および/または細管を痛みの部位に対して閉塞させることによりかかる痛みに対する障壁を造ることのできる溶解持続性または制御性口腔用組成物に関する要求が存在する。その装置は経時的に崩壊し、したがって除去を必要としない。
【0012】
(発明の開示)
本発明は、歯などの硬い歯表面ならびに隣接する軟部組織に付着し、それにより象牙質知覚過敏に付随する痛刺激に対する障壁を形成する、溶解持続性または制御性口腔用組成物に関する。本発明の組成物はまた、象牙質知覚過敏に付随する痛みを和らげるのに効果的な薬剤を含有してもよい。組成物の溶解は、配合されるとすれば、薬剤を所定の時間、所定の濃度でされるものである。薬剤の作用部位は局所的である。
本発明はまた、口腔環境下にある因子と反応し、象牙質細管を閉塞するための不溶性障壁の形成能を有する、溶解持続性または制御性口腔用組成物に関する。細管を閉塞することに加えて、不溶性障壁を形成するのに有用な薬剤もまた、酸腐食または機械的摩耗、例えば歯のブラッシングの間の摩耗の結果としての、象牙質の損耗を減少させるのに有用である。
【0013】
本発明はさらには、口腔装置のための、適当なポリマーおよび/または他の障壁形成化合物および/または美容上効果的な化合物に関する。該装置は、単一の自己粘着性放出層、非接着層を別の接着層と組み合わせて含む二層、または多重層の構造を含みうる。該装置が多重構造からなるならば、これにより、熱と不適合の化合物を接触させるまで別々に保持することができ、および/または口腔環境下で利用可能な水との相互作用を可能とし、あるいは口腔環境因子が神経感作抑制剤または障壁形成化合物、例えば、細管閉塞剤(例えば、ケイ酸スズ)、ポリマー細管閉塞剤(例えば、オクタデセン/無水マレイン酸のコポリマー、ポリアクリル酸/カルボポールおよびキトサン)、鉱化剤(例えば、リン酸カルシウムを生成するために可溶性リン酸源と組み合わせた可溶性カルシウム源、カルシウム放出基質、例えば珪酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、炭酸アルギニンまたは生体活性ガラス)または美容上関連する化合物の放出を可能とする。
本発明はさらには、本明細書に記載の溶解持続性または制御性組成物の製法および使用法に関する。
【0014】
(発明の詳細な記載)
本明細書にて用いられる「障壁」なる語は、すべて、象牙質知覚過敏に関与する因子が神経に達することを妨害または妨げ、それにより象牙質知覚過敏に付随する痛みを減少または除去する構造物を意味する。したがって、障壁なる語は、適宜、歯および周辺の軟部組織に付着する固体ポリマー口腔ケア装置またはフィルム、および/または疼痛部位にてインサイチュにて生成され、象牙質細管を閉塞する沈降物を包含する。
装置またはフィルムの場合には、組成物は所望の部位に直接塗布され、経時的に溶解する障壁を形成する、押出しフィルムまたはキャストフィルムの形態であってもよい。別の具体例において、組成物はゲル、ペースト、半固体バルム、スプレーなどの形態であってもよく、そのすべてがインサイチュにて物的障壁を形成し、その物的障壁は経時的に溶解する。
【0015】
本発明の溶解持続性または制御性組成物は象牙質知覚過敏を防止および/または処置することを意図とする。このことは(a)過敏性の部位にて痛みを感じる刺激に対して物的障壁を形成し、(b)該部位に痛刺激に対する物的障壁の形成能を有する薬剤を供給し、および/または(c)口腔環境、例えば唾液と相互作用させて象牙質細管を閉塞するための沈降物を形成する、ことにより達成される。
本発明の組成物は天然歯または周辺の軟部組織との付着能を有し、少なくとも1種の水膨潤性または水可溶性ポリマーを含む。適当なポリマーとして、セルロース誘導体、例えば、エチルセルロース(例えば、エタセルSt−10、ミシガン州、ミッドランドにあるダウケミカル社製)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(「HPMC」)、ヒドロキシプロピルセルロース(「HPC」)、カルボキシメチルセルロース(「CMC」)、ポリエチレンオキシド(「ポリオックス(登録商標)」)、キトサン、澱粉、アルギン酸およびその塩、アルキルビニルエーテル/マレイン酸または無水物のコポリマー(「ガントレッツ(登録商標)」のアルカリ金属塩ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0016】
適当には、口腔ケア組成物は押出しフィルムまたはキャスト/蒸発フィルムの形態のものであってもよい。加えて、口腔ケア組成物はゲル、ペースト、スプレー、半固体バルムなどの形態のもので、そのすべてが痛みの部位に塗布された後に物的障壁を形成するものであってもよい。
【0017】
本発明の口腔ケア組成物は経時的に溶解する能力を有する。組成物が溶解する時間枠は所望する用途による。そこで、例えば、組成物を「スポットレリーフ」に、すなわち、溶解時間が約1ないし5分であるように処方することができる。あるいは、例えば、食事などの事象に対応してさらに持続的に溶解するように、すなわち、溶解時間が約30ないし60分であるように組成物を処方することができる。さらには、組成物は長期的に溶解するように、例えば、丸一日、痛みを軽減するように組成物を処方することができる。溶解時間を変えるために、当業者であれば組成物に使用するポリマーを工夫するであろう。例えば、HPCはHPMCよりもずっとゆっくりと溶解する。組成物中の1またはそれ以上のこれらのポリマーの濃度を変えることにより、当業者であれば種々の時間で溶解する製品を処方することができる。この組成物の溶解持続性または制御性は、痛刺激に対する障壁として、および/または痛みの部位に直接、痛刺激に対する細管閉塞障壁を提供することのできる組成物として、作用するには不可欠である。
【0018】
知覚過敏を処置するために、本発明の組成物を象牙質知覚過敏に付随する痛刺激に対する障壁として用いることができる。例えば、食物に対して敏感な人はかかる食物、例えば、アイスクリームを摂取する直前に敏感な領域に本明細書に記載の口腔ケア組成物を塗布するであろう。本発明の組成物は冷たさならびに空気刺激に対する障壁として供され、ゆっくりと経時的に溶解するか、あるいは少なくとも食事の時間内に終えるように溶解する。
象牙質知覚過敏に付随する痛刺激に対する物的障害を提供することに加えて、本発明の組成物はまた、痛みに対する物的障壁を提供すると同時に、痛みの部位で作用する神経感作抑制剤を含有することもできる。このように、該組成物は物的障壁を設けて即時に痛みを緩和する利点を提供する一方で、神経感作抑制剤の長期に及ぶ利点も提供し、その組成物が溶解してもなおかつ、痛みの部位で作用する。
【0019】
適当な神経感作抑制剤はカリウム塩、例えば、硝酸カリウム、塩化カリウム、炭酸水素カリウムおよびクエン酸カリウム、ストロンチウム塩、例えば、塩化ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウムおよびフッ化ストロンチウム、および亜鉛とストロンチウムイオンの組合せ、またはそれらの混合物を包含するが、これに限定されるものではない。
神経感作抑制剤は感作抑制に有効な量にて組成物に配合される。この量は用いられる固体口腔ケア組成物の個々の形状および厚みに応じて変化するであろう。適当には、該神経剤は約0.1ないし15重量%、好ましくは約0.3ないし10重量%、最も好ましくは約2ないし8重量%の量にて存在するであろう。
象牙質知覚過敏に付随する痛刺激に対する物的障壁として働くことに加えて、本発明の組成物はまた、象牙質細管の閉塞能を有する薬剤を含ませることにより物的障壁を造ることもできる。
【0020】
象牙質細管の閉塞能を有する薬剤は口腔環境と反応して鉱化作用と称される工程を介して細管を閉塞する沈降物を造ることによりかかる作用を行うこともできる。適当には、鉱化作用により象牙質細管を閉塞する薬剤は本発明の範囲内に含まれ、可溶性リン酸源と組み合わさってリン酸カルシウムを生成する可溶性カルシウム源、珪酸カルシウムなどのカルシウム放出基質、ヒドロキシアパタイト、炭酸アルギニンまたは生体ガラスを包含するが、これに限定されるものではない。鉱化作用は、口腔ケア組成物がカルシウムおよび/またはリン酸を含有する唾液に曝されると、起こりうる。
【0021】
象牙質細管の閉塞能を有する薬剤はまた、鉱化作用なしでかかる作用を達成することもできる。一の方法は、例えば、細管の閉塞能を有する沈降物を「塩析」させることにより非鉱物性沈降物を形成することによるものである。このことは、組成物が口腔環境と遭遇する際に、あるいは組成物が唾液中のイオンに暴露される際に、組成物のpHを操作することにより行うことができる。適当には、鉱化作用なしで象牙質細管を閉塞する薬剤もまた、本発明の範囲内に含まれ、無機細管閉塞剤、例えば、ケイ酸スズ、およびポリマー細管閉塞剤、例えば、アルギン酸ナトリウム、オクタデセン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアクリル酸/カーボポールおよびキトサンを包含するが、これに限定されるものではない。
【0022】
適当な閉塞剤は、出典明示により本明細書の一部とする、WO 02/15809にて見出すことができる。細管遮断剤/閉塞剤は感作抑制性の細管閉塞有効量にてこの組成物中に配合される。該配合量は用いられる固体口腔ケア組成物の個々の形状および厚みに応じて変化するであろう。適当には、細管遮断剤は、約0.1ないし15重量%、好ましくは約0.4ないし10重量%、最も好ましくは約2ないし8重量%の量にて存在するであろう。リン酸塩、ココヤシ(coco)およびMAPS(Rhodia)などの擬似石けんを配合し、物的閉塞をさらに強化してもよい。所望により、さらに多量の細管遮断剤を用いることもできる。
【0023】
本発明の組成物はまた、歯を白くする製剤に付随する知覚過敏を防止することにおける使用にも適する。本発明の組成物のさらなる使用は、歯肉炎の治療および虫歯の予防を包含するが、これに限定されるものではない。本発明の組成物は、物的障壁を造ることにより、敏感な領域が口腔環境にある過敏症、疾患または痛みを惹起する、刺激物、食物の酸、細菌および他の因子に暴露されることを防止する。
本発明の感作抑制属性を含有する溶解持続性または制御性組成物は、典型的には口腔ケア組成物中に配合される、付加的な成分を含有してもよい。適当な成分は、フッ素源、フレーバー、保湿剤、結合剤および甘味剤を包含するが、これに限定されるものではない。
これらの組成物に用いることを意図とする保湿剤は、ポリオール、例えば、グリセロール、ソルビトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、水素化された部分的に加水分解された多糖類などを包含するが、これに限定されるものではない。保湿剤は、一般に、0ないし80重量%の量にて存在する。本発明に用いるのに適する増粘剤、例えば、シリカは、約0ないし50重量%のレベルで存在してもよい。
【0024】
本発明の組成物に用いるのに適する結合剤はヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースならびにキサンタンガム、アイリスゴケ(Iris moss)およびトラガカントガムを包含するが、これに限定されるものではない。結合剤は0.01ないし100重量%の量にて存在してもよい。使用するのに適する甘味剤、例えば、サッカリンは約0ないし5重量%のレベルで存在してもよい。
抗カリエス利点をデリバーするのに、口腔ヘルスケア組成物に一般に使用されるフッ化源、例えば、フッ化ナトリウム、フッ化スズ、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化アンモニウム亜鉛、フッ化アンモニウムスズ、フッ化カルシウム、フッ化アミンおよびフッ化アンモニウムコバルトを含めてもよい。含めるとすれば、フッ化イオンは、典型的には、0ないし1500ppm、好ましくは50ないし1500ppmのレベルで供給されるが、約3000ppmまでのより高いレベルを用いることもできる。
適当なフレーバーは、一般に、0ないし約5重量%などの少ない量で含まれる。その上、口腔ヘルスケア組成物に適する色素/着色料、すなわち、FD&Cブルー#1、FD&Cイエロー#10、FD&Cレッド#40等を利用してもよい。
【0025】
適当には、本発明の組成物はまた、局所塗布を要する他の医薬上または美容上活性な薬剤、例えば、局所麻酔剤、例えばオイゲノール、塩酸ジブカイン、ジブカイン、塩酸リドカイン、リドカイン、ベゾカイン、p−ブチルアミノ安息香酸2−(ジエチルアミノエチルエステル)塩酸塩、塩酸プロカイン、塩酸テトラカイン、塩酸クロロプロカイン、塩酸オキシプロカイン、メピバカイン、塩酸コカインおよび塩酸ピペロカイン、歯美白剤、例えばトリポリリン酸ナトリウム、過酸化尿素、過酸化水素、および過ホウ酸塩または過炭酸塩などの過酸化物放出剤を含んでいてもよい。pH調節剤;グリセロリン酸カルシウム、トリメタリン酸ナトリウムなどの抗カリエス剤;抗染色性化合物、例えばシリコーンポリマー、植物抽出液またはその混合物も配合してもよい。
【0026】
本発明の口腔ケア装置は、口中の目立たない領域に適用するのに適するいずれの形状または厚みからなることもできる。口腔ケア装置は、被覆すべき領域に合致し、口中での該装置の「違和感」を減少させるという要求を満たすことを考慮に入れた、正方形、矩形、円形、半円形、または他の幾何学的形状であってもよい。適当には、口腔ケア装置の厚みは、その構造(例えば、単一層または多重層)、所望する溶解時間および活性成分の存在に応じて、0.1−50mm、好ましくは3−5mmである。
適当には、口腔ケア装置は、適合しない材料(亜鉛および/またはカルシウム、およびリン酸および/またはケイ酸など)を別々の層にて、および/または(歯肉、歯に対しては粘性であるが、頬または舌に対しては粘性でないように)一の接着層と他の非接着層の多重層とすることができる。
【0027】
もう一つ別の具体例において、組成物はスプレー、ペースト、ゲル、半固体バルムなどの形態にて投与することができる。これらの形態のうちの一つの形態でデリバーされるならば、該組成物は歯表面と接触するとフィルムを形成し、痛刺激に対する物的障壁を作り、その後に経時的に溶解するであろう。
本発明を以下の実施例を参考にしてさらに詳細に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を限定することを意図とするものではない。
【0028】
実施例
実施例1:本発明の組成物を製造するためのカチオン性ポリマーの使用を説明する。そのポリマーは該組成物に配合する他のカチオン性成分、例えば、スズイオン、亜鉛イオンおよび塩化セチルピリジニウム(「CPC」)と適合しうる。
成分 %w/w
キトサン 2.0
グリセリン 0.5
SnF 90ppm
乳酸亜鉛 1.0
乳酸 2.0
グルコン酸スズ 0.5
CPC 0.2
水 適量
【0029】
実施例2:本発明の組成物を製造するための非イオン性ポリマーの使用を説明する。
成分 %w/w
HEC 0.25
水 適量
HPC 4.50
HPMC 0.25
トリクロザン 0.02
【0030】
実施例3:本発明の組成物を製造するためのアニオン性ポリマーの使用を説明する。ここで該ポリマーは組成物中に配合する他のアニオン性成分、例えば、アルギン酸、ポリオックス(登録商標)およびCMCと適合する。
成分 %w/w
アルギン酸 1.0
HPC 3.0
ポリオックス(登録商標) 0.5
CMC 0.3
Na/Caガントレッツ 0.3
(Gantrez)
二酸化ケイ素 0.1
PEG600 0.5
SrCl 0.6
水 適量
【0031】
実施例4:歯を白くすることに伴う痛みを防止するために有用な処方を説明する。
成分 %w/w
HEC 0.25
水 適量
シリカ鉱化剤 1.00
HPC 4.50
HPMC 0.25
過酸化尿素 0.80
【0032】
上記のフィルムは該成分を適当に攪拌しながら水に溶かし、その混合物をキャスティングプレートに注ぐことで製造される。該液体を室温で風乾させるか、または真空オーブン中高温で乾燥させる。過酸化尿素などの反応性剤を含む組成物の場合には、溶液中での反応を防止するために、組成物が乾燥がいくらか生じた後でその反応性剤は添加することができる。ついで、そのフィルムを所望の幾何学的形状に切断することができる。
【0033】
実施例5ないし7は本発明にしたがって製造される押出フィルムを説明する。押出フィルムの製造において当該分野にて既知の一般的技法を本発明に適用することができる。
【0034】
実施例5:
成分 %w/w
ポリリシン 10.0
HPC 適量
キトサン 5.0
クエン酸 5.0
グリセリン 3.0
クロルヘキシジン 0.1
【0035】
実施例6:
成分 %w/w
HPC 80
SiO 2.5
HEC 4.0
HPMC 1.5
PEG1450 4.0
過酸化尿素 8.0
フレーバー 0.1
【0036】
実施例7:
成分 %w/w
ポリオックス 45.0
CMC 3.0
HPC 5.0
Na/Caガントレッツ 15.0
二酸化ケイ素 3.0
PEG600 0.1
澱粉 5.0
KNO 3.8
水 25.0
【0037】
実施例8:本発明に係る二層系を説明する。
層1:
成分 %w/w
SnF 500ppm
SnCl 1.0
HPC 90.0
水 適量
【0038】
層2(歯側):
成分 %w/w
ケイ酸カリウム 1.0
SiO 2.5
HPC 90.0
水 適量
【0039】
実施例9:フィルム形成ゲルを説明する。この実施例において、カーボポールをエタノールに分散させた。グリセロールを添加し、材料が密の状態になるまで混合物を攪拌した。エトセルを添加した。溶融したペトロラタム、PEG400、丁子油を含有する第二の混合物を調製し、シリカをその混合物中に分散させた。このペトロラタム−シリカの分散液に、エトセルの混合物を攪拌しながら添加した。そして、混合物が均質になるまで完全にブレンドした。冷却したゲルをチューブに装填した。この物質は湿った表面に容易にくっつく。
成分 %w/w
ペトロラタム 22.0
サイデント22 5.00
(Sident)
カーボポール974P 3.00
丁子油 1.00
エトセルSt−10 10.0
エタノール 30.0
グリセロール 20.0
PEG400 10.0
【0040】
実施例10:フィルム形成ゲルを説明する。エチルセルロースをエタノールに分散させた。溶融したペトロラタム、鉱油、丁子油を含有する第二の混合物を調製し、その中にシリカを分散させた。このペトロラタム−シリカの分散液に、エトセルの混合物を攪拌しながら添加した。混合物が均質になるまで完全にブレンドした。この混合物をチューブに装填するか、あるいはペンアプリケーターに装填し、指またはブラシで歯上に伸ばすことができる。
成分 %w/w
ペトロラタム 10.0
サイデント22 10.0
鉱油 20.0
丁子油 1.00
エトセルSt−10 10.0
ガントレッツM955 14.0
エタノール 35.0
【0041】
実施例11:フィルム形成スプレーを説明する。エチルセルロースをエタノールおよびクエン酸トリエチルに分散させた。溶融したペトロラタム、鉱油および丁子油を含有する第二の混合物を調製し、そこにシリカを分散させた。このペトロラタムの混合物にエチルセルロースの混合物を攪拌しながら添加した。この混合物を、該混合物が完全に均質になるまで、十分にブレンドした。該混合物はポンプスプレーから湿った表面にスプレーすることができる。
成分 %w/w
ペトロラタム 20.0
鉱油 15.0
丁子油 1.00
エトセルSt−10 10.0
クエン酸トリエチル 2.00
エタノール 53.0
【0042】
本明細書中に引用されている、特許および特許出願(限定されるものではない)を含め、すべての刊行物を、その出典を明示することで本明細書の一部とする。
本願明細書の記載はその好ましい具体例を含め本願発明を十分に開示するものである。本願明細書に具体的に開示されている具体例の修飾および改良は添付した特許請求の範囲の範囲内にある。当業者であれば、さらに工夫することなく、本願明細書の記載に基づき、本願発明を最大限利用することができると考える。したがって、実施例は単なる例示であって、本願発明の範囲を何ら限定するものではない。排他的性質または特権を要求する発明の具体例は添付した特許請求の範囲にて定めされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の水膨潤性または水可溶性ポリマーを含み、天然歯および隣接する軟部組織に付着する溶解制御性口腔ケア用組成物であって、象牙質知覚過敏に伴う痛刺激に対して物的障壁を造り出すところの、組成物。
【請求項2】
ポリマーが、セルロース誘導体、ポリ酸化エチレン、キトサン、澱粉、アルギン酸またはその塩、アルキルビニルエーテル/マレイン酸のアルカリ金属塩または無水コポリマーならびにそれらの混合物から選択されるところの、請求項1記載の溶解制御性口腔ケア用組成物。
【請求項3】
少なくとも1種の水膨潤性または水可溶性ポリマーと、神経感作抑制剤とを含み、天然歯および隣接する軟部組織に付着する溶解制御性口腔ケア用組成物であって、象牙質知覚過敏に伴う痛刺激に対して物的障壁を造り出すところの、組成物。
【請求項4】
神経感作抑制剤がカリウム塩、ストロンチウム塩または亜鉛もしくはストロンチウムイオンの組合せ、およびそれらの混合物から選択されるところの、請求項3記載の溶解制御性口腔ケア用組成物。
【請求項5】
少なくとも1種の水膨潤性または水可溶性ポリマーと、鉱化剤とを含み、天然歯および隣接する軟部組織に付着する溶解制御性口腔ケア用組成物であって、象牙質知覚過敏に伴う痛刺激に対して物的障壁を造り出すところの、組成物。
【請求項6】
鉱化剤が、リン酸カルシウムを生成するために可溶性リン酸源と組み合わせた可溶性カルシウム源、カルシウム放出基質、ヒドロキシアパタイト、炭酸アルギニンまたは生体活性ガラスから選択されるところの、請求項5記載の溶解制御性口腔ケア用組成物。
【請求項7】
少なくとも1種の水膨潤性または水可溶性ポリマーと、象牙質細管を閉塞するための非鉱物沈降物の形成能を有する物質とを含み、天然歯および隣接する軟部組織に付着する溶解制御性口腔ケア用組成物であって、象牙質知覚過敏に伴う痛刺激に対して物的障壁を造り出すところの、組成物。
【請求項8】
非鉱物沈降物の形成能を有する物質が無機細管閉塞物質またはポリマー細管閉塞物質から選択されるところの、請求項7記載の溶解制御性口腔ケア用組成物。
【請求項9】
ポリマー細管閉塞物質がアルギン酸ナトリウム、オクタデセン/無水マレイン酸のコポリマー、ポリアクリル酸またはキトサンから選択されるところの、請求項8記載の溶解制御性口腔ケア用組成物。
【請求項10】
組成物がパッチ、スプレー、ゲル、スティックまたはペーストの形態であるところの、上記した請求項のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
上記した請求項のいずれか一項に記載の組成物を歯表面に塗布することで歯知覚過敏を処置および/または防止する方法。

【公表番号】特表2006−506436(P2006−506436A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553706(P2004−553706)
【出願日】平成15年11月14日(2003.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2003/036491
【国際公開番号】WO2004/045446
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(591002957)スミスクライン・ビーチャム・コーポレイション (341)
【氏名又は名称原語表記】SMITHKLINE BEECHAM CORPORATION
【Fターム(参考)】