説明

口腔用組成物

【課題】従来の組成物に比べて、いったん形成されたステインをより効果的に除去できる口腔用組成物の提供。
【解決手段】スルホコハク酸系界面活性剤、キサンタンガムおよびアルギン酸塩を含有することを特徴とする口腔用組成物。スルホコハク酸系界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(0〜7モル)アルキル(C10〜16)スルホコハク酸のナトリウム塩またはマグネシウム塩が例示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯牙の着色の原因となるステインを除去することができる口腔用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯牙の着色には様々な要因が考えられるが、その1つとしてステインがある。このステインは、唾液中に含まれ歯牙を覆っているタンパク質の膜(ペリクル)が、クロルヘキシジンなどの殺菌剤や茶などに含まれるポリフェノールなどにより不溶化して歯牙表面へ強固に付着し、さらに鉄などの金属イオンにより着色した色素沈着物である。
【0003】
ステインは特に審美上問題となることから、従来、これを抑制するための技術が検討されている。例えば特許文献1には、スルホコハク酸系界面活性剤を含む口腔用組成物が開示されている。当該特許文献の実施例として、ステインの形成過程で当該組成物を作用させることによりステインの形成が阻害されるという実験が記載されており、一定の効果が示されている。
【0004】
また、特許文献2には、研磨性沈降シリカと共にスルホコハク酸系界面活性剤を含む口腔用組成物が開示されている。この組成物は、ステインの形成阻害効果に加えてステイン付着抑制効果も有するとされている。即ち、当該特許文献の実施例には、エナメル試片を当該組成物中でブラッシングした後にステイン培地を作用させたところ、試片表面の着色が抑制されたとの実験結果が記載されている。
【0005】
特許文献3には、スルホコハク酸系界面活性剤、サッカリンナトリウム、ステビオサイドとバニリン等を含む口腔用組成物が開示されている。この組成物は、ステイン形成の阻害作用を有することに加えて、スルホコハク酸系界面活性剤の苦みと活性剤臭が改善されている。
【特許文献1】特開平10−17443号公報(特許請求の範囲、段落[0005]、実施例)
【特許文献2】特開2003−81796号公報(特許請求の範囲、段落[0004]、実施例)
【特許文献3】特開2003−81797号公報(特許請求の範囲、段落[0004]、実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した様に、スルホコハク酸系界面活性剤を含有する口腔用組成物であって、ステインの形成や付着を抑制するためのものは知られていた。しかし、いったん形成されたステインであっても除去することができるなど、歯の審美性を著しく貶めるステインに対してより一層の効果を有する口腔用組成物が切望されていた。
【0007】
そこで本発明が解決すべき課題は、いったん形成されたステインをより一層効果的に除去することができる口腔用の組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、口腔用組成物の成分構成につき検討を進めた。その結果、スルホコハク酸系界面活性剤に加えてキサンタンガムとアルギン酸塩を添加することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明の口腔用組成物は、スルホコハク酸系界面活性剤、キサンタンガムおよびアルギン酸塩を含有することを特徴とする。
【0010】
上記組成物において、スルホコハク酸系界面活性剤に対するキサンタンガムおよびアルギン酸塩の質量比(スルホコハク酸系界面活性剤:キサンタンガム:アルギン酸塩)としては、1:0.05〜1:0.05〜1が好適である。これら各構成成分の作用を効果的に発揮せしめるためである。
【0011】
スルホコハク酸系界面活性剤の添加量は、0.01〜5質量%が好ましい。組成物の使用感とステインの除去作用との両方を考慮したものである。なお、ここでの「質量%」は組成物全体に対する割合をいい、以下でも同様とする。
【0012】
スルホコハク酸系界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(0〜7モル)アルキル(C10-16)スルホコハク酸のナトリウム塩またはマグネシウム塩が好適であり、アルギン酸塩としてはアルギン酸ナトリウムが好ましい。後述の実施例において、その効果が実証されているからである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の口腔用組成物は、歯牙に付着したステインをより効果的に除去することができる。従って、本発明の口腔用組成物は、歯牙表面の汚れを低減し美白性を高めることができるものとして、非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の口腔用組成物は、スルホコハク酸系界面活性剤、キサンタンガムおよびアルギン酸塩を含有することを特徴とする。
【0015】
スルホコハク酸系界面活性剤は、アニオン界面活性剤の一種であり、コハク酸の第2位にスルホン酸基が置換したスルホコハク酸の誘導体である。斯かるスルホコハク酸系界面活性剤としては、以下の化学構造(I)を有するもの(以下、「スルホコハク酸系界面活性剤(I)」という)を例示することができる。
【0016】
【化1】

【0017】
[式中、X1およびX2のいずれか一方はR1O−(AO)n−またはR1CO−B−(AO)n−を示し、他方がM2O−を示し、ここでM1およびM2はそれぞれ同一または異なって、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたはアルカノールアミンを示し、R1は炭素数8〜22のアルキル基またはアルケニル基を示し、AOは炭素数2〜3のオキシアルキレン基を示し、平均付加モル数nは0〜20、Bは−NH−または炭素数2〜3のモノアルカノールアミン残基を示す]。
【0018】
スルホコハク酸系界面活性剤(I)において、R1は天然由来または合成した炭素数8〜22程度の直鎖または分岐のアルキル基またはアルケニル基である。例えば、ラウリル、ココイル、ミリスチル、ステアリル、C12-14合成アルキル、イソノニル、イソドデシル、オクテニル、ドデセニルなどが挙げられる。R1の炭素数が長いほど苦味や刺激は低減されるが、短いほどステイン形成阻害効果が高くなるので、R1の炭素数は10〜16程度が好ましく、12〜14程度がより好ましい。特に、C12-14合成アルキルまたはラウリルとミリスチルを組合せて用いるのが最も好ましい。
【0019】
1およびM2の定義におけるアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等を挙げることができる。アルカリ土類金属としてはマグネシウムなどが、アルカノールアミンとしてはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが例示できる。これらの中でも、M1およびM2としては、ナトリウムとマグネシウムがより好ましく、ナトリウムが特に好ましい。
【0020】
AO基としては、オキシエチレン基が好適である。AOの平均付加モル数nは、その値が小さいほどステイン形成阻害効果が高く且つ苦味も低減されるので、nが0〜7程度の場合が好ましく、0〜2程度が最も好ましい。ここに、平均付加モル数0とは、オキシアルキレンを付加していないスルホコハク酸モノエステルを意味する。
【0021】
好適なスルホコハク酸系界面活性剤(I)としては、R1が炭素数12〜14程度のアルキル基で、AO基がオキシエチレン基であって、その平均付加モル数nが0〜2程度のナトリウム塩である。具体的には、ポリオキシエチレン(2モル)アルキル(C12-14)スルホコハク酸2ナトリウム、ポリオキシエチレン(1モル)アルキル(C12-14)スルホコハク酸2ナトリウム、アルキル(C12-14)スルホコハク酸2ナトリウムなどが挙げられる。なお、本発明においては、例えばオキシエチレン基の平均付加モル数が0〜2の場合であっても「ポリオキシエチレン」に含めるものとする。
【0022】
具体的なスルホコハク酸系界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレン(7モル)ラウリルスルホコハク酸2ナトリウム、ポリオキシエチレン(2モル)ラウリルスルホコハク酸2ナトリウム、ポリオキシエチレン(1モル)ラウリルスルホコハク酸2ナトリウム、ラウリルスルホコハク酸2ナトリウム、ポリオキシエチレン(7モル)ミリスチルスルホコハク酸2ナトリウム、ポリオキシエチレン(2モル)アルキル(C12-14)スルホコハク酸2ナトリウム、ポリオキシエチレン(1モル)アルキル(C12-14)スルホコハク酸2ナトリウム、アルキル(C12-14)スルホコハク酸2ナトリウム、ポリオキシエチレン(2モル)ラウリルスルホコハク酸マグネシウム、ポリオキシエチレン(2モル)アルキル(C12-14)スルホコハク酸マグネシウム、ポリオキシエチレン(7モル)ミリスチルスルホコハク酸2トリエタノールアミン、オレイン酸アミドスルホコハク酸2ナトリウム、ポリオキシエチレン(5モル)ラウロイルエタノールアミドスルホコハク酸2ナトリウム、ポリオキシエチレン(2モル)ココイルイソプロパノールアミドスルホコハク酸2ナトリウムなどが挙げられる。
【0023】
スルホコハク酸系界面活性剤は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。例えばスルホコハク酸系界面活性剤(I)において、R1の炭素数が12〜14の場合では、R1の炭素数が12の単独のスルホコハク酸系界面活性剤であってもよく、R1の炭素数が12、13、14の3種のスルホコハク酸系界面活性剤の混合物であってもよい。
【0024】
スルホコハク酸系界面活性剤の配合量は、組成物の剤形などにより異なるが、通常は組成物全体に対して0.01〜5質量%程度が好ましく、さらに好ましくは0.1〜2質量%程度である。配合量が0.01質量%程度に満たないと十分なステイン形成阻害効果が得られないおそれがあり、また、5質量%程度を超えると苦味が生じるなど使用感が悪くなる可能性がある。
【0025】
本発明組成物の必須構成成分であるキサンタンガムは、Xanthromonas campestricsが菌体外に産生する高分子多糖であり、セルロース骨格の側鎖に1つのグルクロン酸と2つのマンノースからなるトリサッカライド基を有するという構造を有する。従来、主に安定剤や増粘剤として食品や化粧品などに用いられており、安全なものである。その分子量は約200万といわれているが、1300万〜5000万との報告もある。使用するキサンタンガムの分子量は組成物の粘度等に影響し得るので、目的とする組成物の性状に応じたキサンタンガムを適宜使用すればよい。
【0026】
本発明組成物に対するキサンタンガムの配合量は、組成物の剤形などにより異なるが、通常は組成物全体に対して0.01〜2質量%程度が好ましく、さらに好ましくは0.1〜1質量%程度である。
【0027】
本発明組成物の必須構成成分であるアルギン酸塩は、マンヌロン酸とグルロン酸のβ−1,4結合からなる直鎖分子の塩であって、褐藻類を原料として得られる。従来、主に食品や化粧品などに用いられており、安全なものである。その分子量は約200万といわれているが、分子の会合によるものと考えられるが1300万〜5000万との報告もある。
【0028】
「アルギン酸塩」は、単一の塩であっても2種以上の塩の混合物であってもよい。塩としては、ナトリウム塩やカリウム塩を挙げることができる。また、カルシウム塩やマグネシウム塩などでもよいが、二価の金属塩はゲル状となる場合があるので、その場合にはアルギン酸のカルボキシル基に対する二価金属イオンの量を抑制したり、一価金属塩を混合したりすればよい。
【0029】
本発明組成物に対するアルギン酸塩の配合量は、組成物の剤形などにより異なるが、通常は組成物全体に対して0.01〜1質量%程度が好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.5質量%程度である。
【0030】
本発明組成物におけるスルホコハク酸系界面活性剤、キサンタンガムおよびアルギン酸塩の質量比(スルホコハク酸系界面活性剤:キサンタンガム:アルギン酸塩)としては、1:0.05〜1:0.05〜1が好適である。斯かる範囲内で各必須構成成分を配合すれば、各成分の作用効果を有効に発揮せしめることができ、相乗的にステインの除去を行なうことができるからである。
【0031】
本発明の口腔用組成物は、常法により粉歯磨、練歯磨、ジェル、プロフィペースト、パスタ、液体歯磨、洗口剤、チューインガム、デンタルフロス、貼付剤、シーラント、タブレットなどの剤形にできるが、使用性から歯磨剤、液体歯磨、あるいは洗口剤が特に好ましい。
【0032】
本発明の口腔用組成物では、スルホコハク酸系界面活性剤、キサンタンガムおよびアルギン酸塩に加えて、水、低級アルコール、高級アルコールや、当該分野において通常使用される添加剤を剤形などに応じて適宜配合することができる。このような添加剤としては、研磨剤、賦形剤、発泡剤、香料、甘味剤、粘結剤、pH調整剤、湿潤剤、防腐剤、着色剤、各種薬効成分などを、発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0033】
水の配合量は、剤形などに応じて適宜設定することができるが、通常は組成物全体に対して0〜90質量%程度、好ましくは10〜85質量%程度である。低級アルコールの配合量は、通常は組成物全体に対して0〜20質量%程度、好ましくは0〜10%程度である。高級アルコールの配合量は、通常は組成物全体に対して0〜70質量%程度、好ましくは5〜50質量%程度である。
【0034】
本発明組成物を歯磨剤とする場合、研磨剤として第2リン酸カルシウム・2水和物および無水和物、リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、シリカゲル、ケイ酸アルミニウム、沈降性シリカ、不溶性メタリン酸ナトリウム、第3リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ポリメタクリル酸メチル、ベントナイト、ケイ酸ジルコニウム、ハイドロキシアパタイト、合成樹脂などを用いることができる。これらの研磨剤は単独で用いても2種以上を併用してもよく、その配合量は、通常は組成物全体に対して5〜90質量%程度、練歯磨の場合には5〜50質量%程度である。
【0035】
賦形剤としては、例えば火成性シリカ、増粘性シリカ(一般に、RDA値が30以下程度のシリカを示す)、結晶セルロースを含む粉体状セルロースなどを例示することができる。これらの中では、火成性シリカ、増粘性シリカが好ましい。賦形剤の配合量は、組成物全体に対して、通常0.1〜30質量%程度であり、好ましくは0.5〜10質量%程度である。
【0036】
発泡剤としては、スルホコハク酸系界面活性剤以外のアニオン界面活性剤が挙げられる。例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等のアルキル基の炭素数が8〜18である高級アルキル硫酸エステル塩;N−長鎖アシルアミノ酸塩、α−オレフィンスルホネート塩、高級脂肪酸ナトリウムモノグリセライドモノサルフェート、N−メチル−N−パルミトイルタウライド塩、N−アシルサルコシンナトリウム、N−アシルグルタミン酸塩、N−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン界面活性剤などを例示することができる。これらアニオン界面活性剤には化学的溶解によるステイン除去作用の高いものが多く、特にラウリル硫酸ナトリウムを配合するとステイン形成抑制効果が相乗的に高くなるので好ましい。これらのアニオン界面活性剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。スルホコハク酸系界面活性剤以外のアニオン界面活性剤の配合量は、通常、組成物全体に対して0.001〜5質量%程度、好ましくは0.01〜2質量%程度である。
【0037】
アニオン界面活性剤以外にも、通常、口腔用組成物に用いられる両性界面活性剤、カチオン界面活性剤や非イオン界面活性剤を配合してもよい。この様な界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラウリン酸モノエタノールアミド、ミリスチン酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステルアルキルグリコシド(例えばアルキル鎖:C8-16程度)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(例えば脂肪酸部分のアルキル鎖:C8-16程度)、ショ糖脂肪酸エステル(例えば脂肪酸部分のアルキル鎖:C8-16程度)等の非イオン界面活性剤;N−アルキルジアミノエチルグリシン、アルキルベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン(例えば脂肪酸部分のアルキル鎖:C8-16程度)、アルキルスルホベタイン、アルキルベタイン、イミダゾリニウムベタインなどの両性界面活性剤;塩化アルキルトリメチルアンモニウム、臭化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルジメチルアンモニウムなどのカチオン界面活性剤などを例示することができる。これらの中では、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルグリコシドが好ましい。
【0038】
スルホコハク酸系界面活性剤とアニオン界面活性剤を除いた界面活性剤の配合量は、通常組成物全体に対して0.001〜5質量%程度、好ましくは0.01〜2質量%程度である。
【0039】
粘結剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体;アルギン酸プロピレングリコールエステル、トラガカントガム、カラヤガム、アラビアガム、カラギーナンなどのガム類;ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドンなどの合成粘結剤などが挙げられる。粘結剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。その配合量は、通常、組成物全体に対して0.3〜5質量%程度である。
【0040】
香料としては、バニリン、アネトール、ベンジルサクシネート、メントール、カルボン、オイゲノール、サリチル酸メチル、リモネン、オシメン、n−デシルアルコール、シトロネロール、α−テルピネオール、メチルアセテート、シトロネリルアセテート、メチルオイゲノール、シネオール、リナロール、エチルリナロール、ワニリン、チモールなどが挙げられる。これらは単品化合物として用いてもよいが、これらを含有している精油などの植物抽出液として配合してもよい。斯かる植物抽出液である香料としては、タイム油、ナツメグ油、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、桂皮油、ピメント油、珪藻油、シソ油、冬緑油、ユーカリ油、バジル油、ティーツリー油、タバナ油などが挙げられる。香料は単独で用いても2種以上を併用してもよい。香料の配合量は、通常、組成物全体に対して0.05〜10質量%程度、好ましくは0.1〜5質量%程度である。
【0041】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、トレハロース、ステビオサイド、アセスルファームK、グリチルリチンまたはその塩、ペリラルチン、タウマチン、アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル、キシリトール、パラチノース、パラチニット、エリスリトール、マルチトールなどが挙げられる。甘味剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。甘味剤の配合量は、通常、組成物全体に対して0.01〜5質量%程度である。
【0042】
湿潤剤としては、例えば、ソルビット液、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ラクチット等が挙げられる。湿潤剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよく、その配合量は、通常、組成物全体に対して5〜70質量%程度である。
【0043】
pH調整剤としては、例えば、リン酸およびその塩(リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウムなど)、クエン酸およびその塩(ナトリウム塩等)、リン酸およびその塩、リンゴ酸およびその塩、グルコン酸およびその塩、マレイン酸およびその塩、アスパラギン酸およびその塩、グルコン酸およびその塩、コハク酸およびその塩、グルクロン酸およびその塩、フマル酸およびその塩、グルタミン酸およびその塩、アジピン酸およびその塩、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウムなどを例示することができる。pH調整剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。pH調整剤の配合量は、所望のpHとなる限り特に制限されないが、組成物全体に対して、通常0.01〜5質量%程度、好ましくは0.1〜3質量%程度である。本発明の組成物のpHは、本発明の効果が奏される限り特に制限されないが、通常4〜10程度であり、好ましくは5.5〜9程度である。
【0044】
防腐剤としては、安息香酸ナトリウムなどの安息香酸塩;メチルパラベン、ブチルパラベンなどのパラベン類を例示することができる。防腐剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。防腐剤の配合量は、組成物全体に対して、通常0.01〜3質量%程度である。
【0045】
着色剤としては、例えば、青色1号、黄色4号、赤色202号、緑3号などの法定色素;群青、強化群青、紺青などの鉱物系色素;酸化チタンなどを例示することができる。着色剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。着色剤の配合量は、組成物全体に対して、通常0.0001〜1質量%程度である。
【0046】
薬効成分としては、例えば、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルピリジニウム等の第四級アンモニウム塩、塩酸クロルヘキシジン、酢酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸アレキシジン、酢酸アレキシジン、グルコン酸アレキシジン等のビグアニド系殺菌剤等のカチオン性殺菌剤;n−ラウロイルサルコシンナトリウムなどのアニオン性殺菌剤;トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、チモール、ヒノキチオール等の非イオン性殺菌剤;デキストラナーゼ、アミラ−ゼ、パパイン、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素(リテックエンザイム)などの酵素;酸化亜鉛、塩化亜鉛などの亜鉛化合物;モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウムなどのアルカリ金属モノフルオロホスフェート、フッ化ナトリウム、フッ化第一スズ、フッ化ジアミン銀、茶およびその抽出物、海藻およびその抽出物などのフッ化物;トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシアラントイン、ジヒドロコレステロール、酢酸トコフェロールなどのビタミンE誘導体;その他、グリチルリチン塩類、グリチルレチン酸、グリセロホスフェート、クロロフィル、硝酸カリウム、塩化ナトリウム、カロペプタイド、水溶性無機リン酸化合物などが挙げられる。
【0047】
水溶性無機リン酸化合物としては、
一般式(II):Mm+2m3m+1
[式中、Mはナトリウムまたはカリウムを示し、mは2以上の整数である]、および
一般式(III):(MPO3q
[式中、Mはナトリウムまたはカリウムを示し、qは3以上の整数である]
で表される化合物を例示することができる。
【0048】
mは通常2以上の整数であり、好ましくは2〜6程度の整数である。qは通常3以上の整数であり、好ましくは3〜6程度の整数である。
【0049】
一般式(II)で示される化合物の具体例として、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウムなどを挙げることができる。
【0050】
一般式(III)で示される化合物の具体例としては、例えば、テトラメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムなどを挙げることができる。
【0051】
有効成分は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。有効成分の配合量は、所望の効果が得られる範囲内であれば特に制限されず、有効成分の種類などに応じて適宜設定することができる。有効成分の配合量は、組成物全体に対して、通常0.001〜30質量%程度、好ましくは0.01〜20質量%程度である。
【0052】
本発明組成物の製造方法は、剤形に応じた常法を用いればよく特に限定されない。例えば、キサンタンガムとアルギン酸塩をグリセリン等の多価アルコール溶媒に分散させた上で水を加えて溶解し、さらに他の添加成分を加えて溶解または均一に分散するまで練合等すればよい。その他、製剤が良好になる製造条件であれば、それを採用することができる。
【0053】
本発明の口腔用組成物は、その必須構成成分であるスルホコハク酸系界面活性剤、キサンタンガムおよびアルギン酸塩の相乗効果によって、高いステイン除去効果を示す。その作用機構は必ずしも明らかではないが、アルギン酸塩やキサンタンガムはカルシウムとの結合力が高いことからスルホコハク酸系界面活性剤を伴って歯牙表面に結合し、ステインに対するスルホコハク酸系界面活性剤の効果を高めていることが考えられる。
【0054】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0055】
製造例1
表1に示す配合量の組成物を調製合し、本発明の組成物とした(製剤例1)。また、比較のためにキサンタンガムとアルギン酸塩を用いない組成物も調製し(比較例1)、キサンタンガムまたはアルギン酸塩のみの作用効果を調べるために比較例2〜4も調製した。表1中の数値は質量%である。また、POEアルキルスルホコハク酸Naはポリオキシエチレン(2モル)アルキル(C12-14)スルホコハク酸2ナトリウムを用い、研磨性シリカAとBは以下の物性を有するものである。
【0056】
研磨性シリカA:d50=3.5μm、d90=9.5μm、RDA値=180
研磨性シリカB:d50=10μm、d90=30μm、RDA値=90
【0057】
【表1】

【0058】
試験例1 ステイン除去試験
直径1cmのハイドロキシアパタイトディスクを歯のモデルとして用い、2%ウシ血清アルブミン(BSA)水溶液に10分間、0.2%塩酸クロルヘキシジン水溶液に2分間、0.3%クエン酸鉄(III)アンモニウム水溶液に2分間、紅茶抽出液に10分間の順番で浸漬する処理を10回繰り返し、ステインを付着させた。このディスクについて、色彩色差計(ミノルタ社製、CR−241)を使用して色差を測定した(測定値を「dE0」とする)。次いで、ステインが付着したハイドロキシアパタイトディスクを製剤例1または比較例1〜4の組成物に浸漬し、攪拌などを行なうことなく10分間静置した。その後、同様の条件で色差を測定し(測定値を「dE」とする)、ステインの除去率をdE/dE0×100の式で計算した。実験はそれぞれ6例ずつ行なった。製剤例1と比較例1の平均値を図1に示す。
【0059】
当該結果の通り、従来組成物(比較例1)のステイン除去率は38.6%であるのに対し、本発明組成物(製剤例1)では42.9%であった。これら数値について統計的な考察を行なったところ、危険率p<0.02で有意差が認められた。従って、本発明組成物のステイン除去効果は、従来組成物に比して有意に優れていることが実証された。また、キサンタンガムおよび/またはアルギン酸ナトリウムのみの組成物(比較例2〜4)はステイン除去作用を全く示さないことから、本発明組成物のステイン除去作用は、スルホコハク酸系界面活性剤、キサンタンガムおよびアルギン酸ナトリウムの3剤の相乗効果によるものであることが分かった。
【0060】
製剤例2 歯磨剤
POE(2モル)アルキル(C12-14)スルホコハク酸2Na 0.5質量%
キサンタンガム 0.3質量%
アルギン酸ナトリウム 0.3質量%
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.6質量%
ラウリル硫酸ナトリウム 0.5質量%
ソルビット液(70%) 55質量%
研磨性シリカA 7.0質量%
研磨性シリカB 20質量%
増粘性シリカ 2.0質量%
酸化チタン 0.2質量%
サッカリンナトリウム 0.1質量%
ポリエチレングリコール400 5.0質量%
メチルパラベン 1.0質量%
香料 1.0質量%
水など 残分
【0061】
製剤例3 歯磨剤
POE(2モル)アルキル(C12-14)スルホコハク酸2Na 1.0質量%
キサンタンガム 0.3質量%
アルギン酸ナトリウム 0.5質量%
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.2質量%
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0質量%
ソルビット液(70%) 50質量%
研磨性シリカA 6.0質量%
研磨性シリカB 20質量%
増粘性シリカ 5.0質量%
ハイドロキシアパタイト 5.0質量%
酸化チタン 0.2質量%
サッカリンナトリウム 0.1質量%
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.7質量%
ポリエチレングリコール400 5.0質量%
香料 1.0質量%
水など 残分
【0062】
製剤例4 歯磨剤
ラウリルスルホコハク酸2ナトリウム 1.5質量%
キサンタンガム 0.6質量%
アルギン酸ナトリウム 0.1質量%
ソルビット液(70%) 40質量%
研磨性シリカB 15質量%
増粘性シリカ 5.0質量%
結晶セルロース 5.0質量%
酸化チタン 0.2質量%
ピロリン酸ナトリウム 2.0質量%
ポリエチレングリコール400 5.0質量%
フッ化ナトリウム 0.2質量%
トリクロサン 0.2質量%
香料 1.0質量%
水など 残分
【0063】
製剤例5 洗口剤
POE(2モル)アルキル(C12-14)スルホコハク酸2Na 0.5質量%
キサンタンガム 0.05質量%
アルギン酸ナトリウム 0.05質量%
ラウリル硫酸ナトリウム 0.5質量%
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.5質量%
サッカリンナトリウム 0.01質量%
ポリエチレングリコール400 5.0質量%
エタノール 5.0質量%
香料 0.2質量%
水など 残分
【0064】
製剤例6 歯磨剤
POE(7モル)ミリスチルスルホコハク酸2Na 1.0質量%
キサンタンガム 0.2質量%
アルギン酸ナトリウム 0.5質量%
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.3質量%
グリセリン 30質量%
リン酸カルシウム 40質量%
増粘性シリカ 5.0質量%
酸化チタン 0.2質量%
サッカリンナトリウム 0.1質量%
塩化セチルピリジニウム 0.1質量%
安息香酸ナトリウム 1.0質量%
香料 1.0質量%
水など 残分
【0065】
製剤例7 歯磨剤(研磨剤無配合)
POE(5モル)パルミチルスルホコハク酸2Na 1.5質量%
キサンタンガム 1.0質量%
アルギン酸ナトリウム 0.5質量%
ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 0.5質量%
ヒドロキシエチルロース 1.0質量%
グリセリン 20質量%
プロピレングリコール 2.0質量%
ポリエチレングリコール600 3.0質量%
ソルビット液(70%) 40質量%
フッ化ナトリウム 0.2質量%
酢酸トコフェロール 0.1質量%
メチルパラベン 0.1質量%
水など 残分
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の口腔用組成物によるステイン除去効果を示す図である。従来組成物の効果に比して、有意に優れた効果が示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホコハク酸系界面活性剤、キサンタンガムおよびアルギン酸塩を含有することを特徴とする口腔用組成物。
【請求項2】
スルホコハク酸系界面活性剤に対するキサンタンガムおよびアルギン酸塩の質量比(スルホコハク酸系界面活性剤:キサンタンガム:アルギン酸塩)が1:0.05〜1:0.05〜1である請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
スルホコハク酸系界面活性剤を0.01〜5質量%含む請求項1または2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
スルホコハク酸系界面活性剤が、ポリオキシエチレン(0〜7モル)アルキル(C10-16)スルホコハク酸のナトリウム塩またはマグネシウム塩である請求項1〜3のいずれかに記載の口腔用組成物。
【請求項5】
アルギン酸塩がアルギン酸ナトリウムである請求項1〜4のいずれかに記載の口腔用組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2006−347986(P2006−347986A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−178431(P2005−178431)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(000106324)サンスター株式会社 (200)
【Fターム(参考)】