説明

口腔用組成物

【課題】 口腔内の乾燥抑制または乾燥防止効果に優れた液体若しくは液状口腔用組成物を提供する。
【解決手段】 α,α-トレハロースの糖質誘導体、水溶性高分子、パラオキシ安息香酸メチル、水を配合した組成物において、水の配合量が80重量%以上とすることにより、口腔内の乾燥抑制または乾燥防止効果に優れた液体若しくは液状口腔用組成物を提供する。特に水溶性高分子としてキサンタンガムを使用した場合、優れた効果を発揮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体若しくは液状口腔用組成物に関する。更に詳しくは、口腔内の乾燥抑制または乾燥防止効果に優れた液体若しくは液状口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、口腔の軟組織や硬組織を健全な状態に保つことは口腔の健康だけでなく、全身の健康の維持にも重要であることが明らかになってきている。唾液は、口腔の硬組織や軟組織を保護し、咀嚼嚥下機能を助け、口腔内を清潔に保つ働きを持っており、口腔の健康だけでなく、全身の健康にも寄与していることが知られている。特に口腔の軟組織は、唾液によって常に潤いを与えられることにより保護されている。しかし、口呼吸による口腔内水分の喪失、ストレスや精神的緊張による発汗や体液量の低下などの体液分泌機能の異常、薬の副作用、老化などによる口腔機能の低下、頭頚部領域への放射線照射などによる放射線障害、シェーグレン症候群などの全身性疾患などの原因により、唾液分泌の低下や、唾液の水分の過蒸散が生じることで口腔内の水分が減少し、口腔が乾燥した状態になる。口腔内が乾燥してくると、う蝕の増加、歯周炎の増悪、口臭などの口腔トラブルにつながるだけでなく、重度の乾燥状態になると、会話困難、食物摂取困難、味覚異常などのQOLを大きく低下させるトラブルを引き起こすことが知られつつある。特に、口腔が照射野内に含まれるような頭頚部の放射線療法や、造血幹細胞移植、化学療法などを行った場合、副作用として唾液腺に損傷が起こり、唾液がほとんど分泌されなくなり、重度の口腔乾燥状態になる場合が多く、前記のようなトラブルの重症度が増し、患者のQOLは著しく低下する。また、これらの治療で頻発する口腔粘膜炎などと共に、口腔内の状態が著しく悪くなることにより、食物摂取の低下や、嚥下困難による栄養不良を引き起こし、がん治療のスケジュールの遅延や、予後に悪影響を及ぼし、ひいては医療経済的な負担が増す要因となる(非特許文献1参照。)。
【0003】
口腔乾燥は、QOLを大きく低下させるだけでなく、口腔粘膜上皮細胞の細胞死を引き起こし、口腔粘膜の正常なターンオーバーが乱れることにより、口腔内の様々な問題を引き起こすと考えられることから、口腔内の乾燥を防止するための提案がなされている。また、がん患者における口腔乾燥の防止は、治療中、治療後のQOLの低下や、口腔粘膜炎の悪化を防ぎ、治療の遅延をなくし、予後を良くすることに貢献する。がん患者の口腔内は刺激に敏感になっているため、特に刺激が少ない口腔乾燥防止用の口腔用組成物を提供することは重要である。さらには、液体、もしくは液状組成物であれば、頻回の洗口が可能であり、唾液の自浄作用が失われた口腔内の浄化に貢献することが可能である。
【0004】
唾液の分泌促進に着眼し、唾液分泌促進剤として、乳酸菌とキシリトール(特許文献1)、ポリグルタミン酸またはその塩(特許文献2)を使用したり、唾液促進剤にムチンやセルロースガムなどの潤滑ポリマーを併用する提案(特許文献3)がなされている。また、粘膜組織を保護している物質のひとつであるムチンに着眼し、ムチンの産生促進剤として、ラクトフェリン(特許文献4)やα−ラクトアルブミンのペプシン加水分解物(特許文献5)を使用することが提案されている。一方、口腔内を湿潤状態に保つために湿潤剤を使用する提案(特許文献6、7)もある。
【0005】
しかしながら、上記提案をもってしても口腔乾燥や口腔乾燥に伴うトラブルを十分に防止することができず、さらに効果の高い提案が望まれている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−115464号公報
【特許文献2】国際公開第05/049050号パンフレット
【特許文献3】特開平07−101856号公報
【特許文献4】特開平09−012473号公報
【特許文献5】特開2006−169119号公報
【特許文献6】特開2002−226315号公報
【特許文献7】特開2006−083100号公報
【非特許文献1】大田洋二郎ら、看護技術 52、p10−51、2006
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、口腔粘膜上皮細胞に対して刺激が低く、かつ口腔粘膜上皮細胞を乾燥から保護し、細胞死を防止することで、口腔内の乾燥を防止し、口腔内の様々なトラブルを防止する液体若しくは液状口腔用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、かかる事情を鑑み、口腔乾燥による口腔粘膜上皮細胞死に着眼し、口腔粘膜上皮細胞に接触させることで乾燥しやすい状態であっても持続性の高い乾燥耐性を口腔粘膜上皮細胞に付与する効果をもつ物質について鋭意検討を重ねた結果、驚くべきことにα,α-トレハロースの糖質誘導体、水溶性高分子、パラオキシ安息香酸メチル、水を配合した組成物において、水の配合量が80重量%以上である場合、上記の問題を解決できることを見出した。
【0009】
本発明はかかる知見に基づき完成されたものである。即ち、本発明は以下の発明を提供するものである。
【0010】
1.α,α-トレハロースの糖質誘導体、水溶性高分子、パラオキシ安息香酸メチル、水を配合した組成物において、水の配合量が80重量%以上であること特徴とする液体若しくは液状口腔用組成物。
【0011】
2.水溶性高分子がキサンタンガムであること特徴とする前記1に記載の液体若しくは液状口腔用組成物。
【0012】
3.α,α-トレハロースの糖質誘導体を0.5〜20重量%、水溶性高分子を0.005〜1重量%配合したことを特徴とする前記1又は2に記載の液体若しくは液状口腔用組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、α,α-トレハロースの糖質誘導体、水溶性高分子、パラオキシ安息香酸メチル、水を配合した組成物において、水の配合量が80重量%以上とすることで、口腔粘膜上皮細胞に対して刺激が低く、かつ口腔粘膜上皮細胞を乾燥から保護し、細胞死を防止することで、口腔内の乾燥を防止し、口腔内の様々なトラブルを防止することができる。本発明の口腔用組成物は、頭頚部の放射線療法や、造血幹細胞移植、化学療法などを行い、副作用として唾液腺に損傷が起こり、唾液がほとんど分泌されなくなったがん患者における口腔乾燥の防止にも効果的であり、治療中、治療後のQOLの低下や、口腔粘膜炎の悪化を防ぎ、治療の遅延をなくし、がん治療の質を良くすることに貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、α,α-トレハロースの糖質誘導体、水溶性高分子、パラオキシ安息香酸メチル、水を配合した組成物において、水の配合量が80重量%以上であること特徴とする液体若しくは液状口腔用組成物を提供するものである。
【0015】
本発明で用いることのできるα,α-トレハロースの糖質誘導体としては、分子内にα,α−トレハロース構造を有する3個以上のグルコースからなる非還元性オリゴ糖から選ばれる1種又は2種以上の糖質であり、その中でも、α−グルコシルα,α−トレハロース、α−マルトシルα,α−トレハロース、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース及びα−マルトテトラオシルα,α−トレハロースなどの、分子の末端にトレハロース構造を持つ糖質が利用できる。とりわけ、α−マルトシルα,α−トレハロースを主成分として含有し、他に、α−グルコシルα,α−トレハロース、α−マルトトリオシルα,α−トレハロース、α−マルトテトラオシルα,α−トレハロースから選ばれる1種又は2種以上を含有する糖質が望ましい。この場合、全糖質に対して、α−マルトシルα,α−トレハロースを、無水物換算で、約5質量%以上、望ましくは約10質量%以上、さらに望ましくは約30質量%以上含有する糖質が望ましい。
【0016】
上記糖質は、例えば、市販のシラップ状のα,α−トレハロースの糖質誘導体含有糖質(株式会社林原商事販売、商品名「ハローデックス」)や、これを水素添加して共存する還元性糖質をその糖アルコールに変換した糖質(株式会社林原生物化学研究所販売、商品名「トルナーレ」;α,α-トレハロースの糖質誘導体47%、水26%を含有)を使用することができる。
【0017】
これらα,α-トレハロースの糖質誘導体の配合量は、所望の効果が得られる範囲であれば特に制限されないが、組成物全体に対して、通常0.1〜30重量%であり、好ましくは0.5〜20重量%であり、更に好ましくは、0.5〜5重量%である。配合量が0.1重量%に満たない場合には乾燥による細胞死を防止する効果を十分に期待することができず、30重量%を超えると配合に見合った効果が得られないため好ましくない。
【0018】
本発明で用いることのできる水溶性高分子としては、セルロース系高分子、セルロース系以外の増粘性多糖類、合成系の高分子などが挙げられる。
【0019】
セルロース系高分子の具体例としては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、四級化窒素含有ヒドロキシエチルセルロースおよびそれらのアルカリ金属塩などが挙げられる。
【0020】
セルロース系以外の増粘性多糖類の具体例としては、キサンタンガム、タラガム、グアーガム、トラガントガム、ガティガム、アエロモナスガム、アラビアガム、ジェランガム、ローカストビーンガム、タマリンド、アルギン酸、アルギン酸塩、カラギーナン、寒天、澱粉、α化澱粉、デキストリン、デキストラン、ペクチン、グルコマンナン、プルラン、ヒアルロン酸ナトリウム、ファーセレランなどが挙げられる。
【0021】
合成系の高分子の具体例としては、アルギン酸プロピレングリコール、カルボキシメチル澱粉、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、水溶性アクリル酸コポリマー、ポリビニルメチルエーテル、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体などが挙げられる。
【0022】
これらは単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。これらの高分子の中で、効果の点からキサンタンガムが最も好ましい。
【0023】
これらの水溶性高分子の配合量は、所望の効果が得られる範囲であれば特に制限されないが、組成物全体に対して、通常0.001〜3重量%であり、好ましくは0.005〜1重量%であり、更に好ましくは、0.01〜0.5重量%である。
【0024】
配合量が0.001重量%に満たない場合には乾燥による細胞死を防止する効果を十分に期待することができず、3重量%を超えると組成物の粘度が高くなりすぎるため、使用しにくいなどの不都合が生じるため好ましくない。
【0025】
本発明で用いることのできるパラオキシ安息香酸メチルの配合量は、組成物全体に対して通常0.001〜0.5重量%であり、好ましくは0.005〜0.5重量%であり、更に好ましくは、0.01〜0.3重量%である。
【0026】
本発明における液体若しくは液状口腔用組成物に含まれる水の配合量は、組成物全体に対して通常80重量%以上である。
【0027】
本発明における液体若しくは液状口腔用組成物の浸透圧は、所望の効果が得られる範囲であれば特に制限されないが、0.15〜0.5 Osmolの範囲に調整すると、口腔粘膜上皮細胞に対して乾燥による障害を受けにくくすることができる。
【0028】
本発明品は、液体若しくは液状の形態に、定法に従って調製することができる。かかる形態としては、具体的には、液体歯磨き、洗口剤、マウススプレイ、口腔乾燥防止剤、嚥下補助剤などが挙げられる。
【0029】
本発明における口腔用組成物のpHとしては、3〜10程度が好ましく、さらに好ましくは5.5〜8.5程度である。
【0030】
本発明の口腔用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて通常口腔用組成物に用いられる成分、例えばpH調整剤、界面活性剤、甘味剤、湿潤剤、着色剤、植物抽出物、薬効成分、香料などを配合することができる。
【0031】
pH調整剤としては、例えば、乳酸、リン酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、マレイン酸、アスパラギン酸、コハク酸、グルクロン酸、フマル酸及びそれらの塩、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを挙げることができ、これらの1種以上を配合することができる。
【0032】
pH調整剤の配合量は、所望のpHとなる限り特に制限されないが、組成物全体に対して、通常0.001〜1重量%程度である。
【0033】
界面活性剤としては、例えば、ノニオン性界面活性剤としてはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステルなどの糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド類、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、ポリオキシエチレン付加係数が8〜10、アルキル基の炭素数が13〜15であるポリオキシエチレンアルキルエーテル系またはポリオキシエチレン付加係数が10〜18、アルキル基の炭素数が9であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系ノニオン界面活性剤などが挙げられる。
【0034】
両性界面活性剤としては、N−ラウリルジアミノエチルグリシン、N−ミリスチルジエチルグリシンなどのN−アルキルジアミノエチルグリシン、2−アルキル−1ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインなどが挙げられる。
【0035】
アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムやポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムに代表される硫酸エステル、N−アシルサルコシンナリウム、N−アシルグルタミン酸トリエタノールアミン、N−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウムに代表されるアミノ酸系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウムに代表されるスルホコハク酸系界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤、脂肪酸石鹸などが挙げられる
【0036】
これらの界面活性剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、通常、組成物全量に対して0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜0.5重量%の割合で配合することができる。
【0037】
甘味剤としては、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、アセスルファームカリウム、グリチルリチン酸及びその塩、アスパラチルフェニルアラニンメチルエステル、アセサルファムK、ペリラルチン、タウマチン、キシリトール、パラチノース、パラチニット、エリスリトール、マルチトール、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、p−メトキシシンナミックアルデヒドなどが挙げられる。これらの甘味剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、通常、組成物全量に対して0.00001〜1重量%、好ましくは0.001〜0.1重量%の割合で配合することができる。
【0038】
湿潤剤としては、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ソルビット、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、エリスリトール、パラチノース、パラチニット、キシリット、マルチット、ラクチットなどを単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、通常、組成物全量に対して0.1〜10重量%の割合で配合することができる。乾燥による細胞死抑制の面から、グリセリンを配合することが好ましく、組成物全量に対し、0.5〜2重量%を配合することがさらに好ましい。
【0039】
植物抽出物としては、例えば、ボダイジュ抽出物、アロエ抽出物、ケイヒ抽出物、ブドウ果皮抽出色素、緑茶抽出物、リンゴ抽出物、イチョウ葉抽出物、月見草抽出物、甘草抽出物などを単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、通常、組成物全量に対して0.0001〜10重量%、好ましくは0.001〜5重量%の割合で配合することができる。
【0040】
薬効剤としては、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンゼトニウムなどのカチオン性殺菌剤、ドデシルジアミノエチルグリシンなどの両性殺菌剤、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノールなどの非イオン性殺菌剤、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素(リテックエンザイム)などの酵素、トラネキサム酸やイプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシルアラントイン、ジヒドロコレステロール、グリチルリチン塩類、ビタミン類、グリチルレチン酸、グリセロフォスフェート、クロロフィル、塩化ナトリウム、カロペプタイドなどを、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0041】
香味剤としては、l−メントール、l−カルボン、アネトール、オイゲノール、サリチル酸メチル、リモネン、オシメン、n−デシルアルコール、シトロネール、α−テルピネオール、メチルアセタート、シトロネニルアセタート、メチルオイゲノール、シネオール、リナロール、エチルリナロール、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、珪皮油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油、ピメント油などの香料を、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【実施例】
【0042】
本発明を以下の実施例にて例証するが、これらに制限されるわけではない。
【0043】
[実施例1〜5、比較例1〜11]
表1〜3に示す成分を有する液体口腔用組成物を常法に従って調製し、細胞を用いた耐乾燥性の評価、刺激評価を行った。
【0044】
〔細胞を用いた耐乾燥性評価:長期的処理〕
○細胞へのサンプル処理および乾燥処理
培養ヒト歯肉上皮細胞Ca9-22は、10%ウシ胎児血清(FBS Lot.34300113;Moregate, Australia)および1%抗生物質(Antibiotic-Antimycotic;penicillin G sodium, streptomycin sulfate, amphotericin Bを含む;GIBCO, USA)を含むMinimum essential medium Eagle(Sigma, USA)を用いて、37℃、5%CO2存在下のインキュベータ内で培養した。対数増殖期にある細胞を96穴プレートに播種し、1日後に培地の10%になるようにサンプルを加え、3日間培養した。培地を除去し、1xPBSで洗浄し除去した後、25℃、30%湿度下で乾燥した。
○細胞生存率測定
耐乾燥性として細胞生存率低下の抑制効果を測定した。乾燥処理後のウェルに血清も抗生物質も含まない培地で1/11希釈したalamarBlue(AbD Serotec, UK)溶液を100μLずつ添加した。2時間後、蛍光マイクロプレートリーダー(Gemini XPS;Molecular Devices Corporation, USA )を用いて、励起波長560nm、発光波長590nmにおける蛍光を測定した。比較例1(コントロール)処理の生存率が40%の時点でのコントロール処理の生存率を1としたときの、各サンプルの生存率の値を表1〜3に示した。
【0045】
〔細胞を用いた耐乾燥性評価:短期的処理〕
○細胞へのサンプル処理および乾燥処理
培養ヒト歯肉上皮細胞Ca9-22は、前述のように10%ウシ胎児血清(FBS Lot.34300113;Moregate, Australia)および1%抗生物質(Antibiotic-Antimycotic;penicillin G sodium,streptomycin sulfate, amphotericin Bを含む;GIBCO, USA)を含むMinimum essential medium Eagle(Sigma, USA)を用いて、37℃、5%CO2存在下のインキュベータ内で培養した。対数増殖期にある細胞を96穴プレートに播種し、2日後にコンフルエントになるように培養した。2日後培地を除去し、1xPBSで洗浄し除去した後、各サンプルを37℃で15分間処理した。サンプルを除去後、25℃、30%湿度下で乾燥した。
○細胞生存率測定
前述と同様に耐乾燥性として細胞生存率低下の抑制効果を測定した。乾燥処理後のウェルに血清も抗生物質も含まない培地で1/11希釈したalamarBlue(AbD Serotec, UK)溶液を100μLずつ添加した。2時間後、蛍光マイクロプレートリーダー(Gemini XPS;Molecular Devices Corporation, USA )を用いて、励起波長560nm、発光波長590nmにおける蛍光を測定した。比較例1(コントロール)処理の生存率が40%の時点でのコントロール処理の生存率を1としたときの、各サンプルの生存率の値を表1〜3に示した。
【0046】
〔総合耐乾燥性の評価〕
総合耐乾燥性の評価は、比較例1(コントロール)の処理時の生存率を1としたときの、長期的処理時の耐乾燥性の数値および短期的処理時の耐乾燥性の数値とその合計点数によって次のように分類した。
×:どちらかが1.0以下、もしくは合計点数が2未満
△:どちらかが1.3以下、合計が2以上3未満
○:合計が3以上
【0047】
〔細胞を用いた刺激評価〕
○細胞へのサンプル処理
培養ヒト歯肉上皮細胞Ca9-22は、前述のように10%ウシ胎児血清(FBS Lot.34300113;Moregate, Australia)および1%抗生物質(Antibiotic-Antimycotic;penicillin G sodium, streptomycin sulfate, amphotericin Bを含む;GIBCO, USA)を含むMinimum essential medium Eagle(Sigma, USA)を用いて、37℃、5%CO2存在下のインキュベータ内で培養した。対数増殖期にある細胞を96穴プレートに播種し、2日後にコンフルエントになるように培養した。2日後培地を除去し、1xPBSで洗浄し除去した後、各サンプルを37℃で15分間処理した。
○細胞生存率測定
サンプル処理後にサンプルを除去し、1xPBSで洗浄したウェルに血清も抗生物質も含まない培地で1/11希釈したalamarBlue(AbD Serotec, UK)溶液を100μLずつ添加した。2時間後、蛍光マイクロプレートリーダー(Gemini XPS;Molecular Devices Corporation, USA )を用いて、励起波長560nm、発光波長590nmにおける蛍光を測定した。比較例1(コントロール)処理の生存率を1としたときの、各サンプルの生存率の値を表1〜3に示した。また、細胞に対する刺激性評価として、生存率が0.9を超える場合を○、0.5〜0.9の場合を△、0.5未満の場合を×と評価した。
【0048】
〔総合評価〕
総合耐乾燥性評価と、細胞を用いた刺激性評価が両方とも○の場合を○、どちらかが○で他方が△、もしくは両方とも△の場合を△、どちらかに×がある場合を×とした。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
表1、表2、表3から明らかなように、α,α-トレハロースの糖質誘導体、水溶性高分子、パラオキシ安息香酸メチル、水の配合量が80重量%以上である液体口腔用組成物は、長期的な処理、短期的な処理ともに細胞に対する耐乾燥性が高く、刺激性は低かった。
【0053】
[実施例6]
次の処方により、常法に従って液状口腔用組成物を調製した。
成分 配合量(%)
トルナーレ 3.0
グリセリン 1.0
1,3−ブチレングリコール 0.6
クエン酸ナトリウム 0.1
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.1
パラオキシ安息香酸メチル 0.03
キサンタンガム 0.02
香料 0.02
無水クエン酸 0.01
サッカリンナトリウム 0.01
精製水 95.11
計 100.0
【0054】
[臨床試験例]
頭頚部の放射線療法、造血幹細胞移植、化学療法などによるがん治療に伴う口腔乾燥を自覚する患者4名が、実施例6に示した液状口腔用組成物(洗口液)を2日間使用した。使用前に口腔外科医による口腔内所見調査と、本人の口腔乾燥に対する自覚症状の5段階評価を行なった。使用後、洗口液の刺激性と口腔乾燥の緩和感、今まで使用した洗口液との比較に関して、5段階評価を行なった。各評価項目の詳細は表4に示す。また、表5に結果を示す。
【0055】
【表4】

【0056】
【表5】

【0057】
表5に示すとおり、本発明の液状口腔用組成物は、頭頚部の放射線療法、造血幹細胞移植、化学療法などによるがん治療に伴う重度の口腔乾燥の患者による臨床試験において、刺激が少なく、口腔乾燥の緩和に効果的であることが示された。
【0058】
[実施例7]
次の処方により、常法に従って液状口腔用組成物を調製した。
成分 配合量(%)
70%ソルビット液 2.0
グリセリン 1.0
クエン酸3ナトリウム 0.1
無水クエン酸 0.01
トルナーレ 5.0
パラオキシ安息香酸メチル 0.03
キサンタンガム 0.8
ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油 0.2
フローラル系香料 0.1
サッカリンナトリウム 0.01
水 残部
計 100.0

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α,α-トレハロースの糖質誘導体、水溶性高分子、パラオキシ安息香酸メチル、水を配合した組成物において、水の配合量が80重量%以上であること特徴とする液体若しくはは液状口腔用組成物。
【請求項2】
水溶性高分子がキサンタンガムであること特徴とする請求項1に記載の液体若しくは液状口腔用組成物。
【請求項3】
α,α-トレハロースの糖質誘導体を0.5〜20重量%、水溶性高分子を0.005〜1重量%配合したことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体若しくは液状口腔用組成物。
【請求項4】
頭頚部の放射線療法、造血幹細胞移植、化学療法などによるがん治療中またはがん治療後の患者のための請求項1〜3のいずれかに記載の液体若しくは液状口腔用組成物。

【公開番号】特開2009−84279(P2009−84279A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234664(P2008−234664)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000106324)サンスター株式会社 (200)
【出願人】(590002389)静岡県 (173)
【Fターム(参考)】