説明

口腔用組成物

【課題】口腔における抗菌、抗口臭などを可能とし、かつ、人体への為害作用のない口腔用組成物を提供する。
【解決手段】本発明にかかる口腔用組成物は、過酸化水素5.5〜6.0重量%、分散剤0.005〜0.1重量%、増粘剤4.5〜6.0重量%および界面活性剤4.5〜6.0重量%を含む水溶液100重量部に対し、過炭酸ナトリウム25〜35重量%を含む水溶液19〜20重量部を混合して、発熱反応を起こさせ、前記発熱反応が停止して得られる反応混合液を、10倍以上の希釈倍率で含む、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は口腔用組成物に関し、詳しくは、口腔における抗菌、抗口臭、清拭、洗浄などを目的として使用される口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、口腔内を清浄化しておくことにより口臭を低減することの試みがなされてきた。
【0003】
また、口腔内を清浄化しておくことは、口臭のみならず、健康という側面からも重要であり、例えば、以下のような実情がある。
【0004】
すなわち、口腔内細菌の含有量の多い唾液の誤嚥は、介護医療などで問題となっているところの、誤嚥性肺炎を惹起しており、心臓病では歯周病菌の作り出す物質が血液を介して、血管壁に着き、動脈硬化を起こし、心筋梗塞や狭心症発症の危険率が高くなると言われ、糖尿病においては歯周病の悪化が起こることがあり、そのため歯周病によって起こる疾患の発症を抑制する必要がある。このように、口腔内細菌は、これらメタボリックシンドロームに関連する病態に大きく関与していることから、莫大な医療費を必要としている。また、バージャー病と呼ばれる下肢の血行循環不全を起こす疾患も口腔内細菌の関与が検証されており、この解決の一方法として口腔管理の必要性が叫ばれている。
【0005】
例えば、代表的な口腔内細菌である歯周病菌は、口腔常在菌として存在し、その量によって病原性を発揮する。口腔内細菌が全くなくなることはないが、病原性を発揮しない程度のコントロールが必要とされる。従って、細菌数を常に病原性を発揮しない程度にコントロールすることが重要である。
【0006】
ここで、歯周病菌によって起こる歯周病、いわゆる歯槽膿漏に対する治療は、歯科医院においては歯周病に対する厚生労働省の治療指針があり、ブラッシング指導、プラークコントロール、スケーリング、ルートプレーニング、と言われる、いわゆる歯垢、歯石除去、歯周ポケットの治療などが行われ、症状が進めば外科的治療や薬物療法などが行われる。しかし、現在のところ決定的な治療法はないのが実情である。例えば、従来の歯磨き剤は、基本的には機械的、物理的に歯ブラシにて研磨、刷掃を行うものであって、細菌類に対しては抗菌効果ではなく、除菌、すなわち菌を取り除くことが行われているに過ぎない。日常の生活で、口腔内細菌は食事をした後や歯磨きをした後にはその菌数は減少するが、時間が経つにつれその細菌数は増加する。
【0007】
このような機械的、物理的な除菌効果のみに頼る場合、ブラッシングの方法を間違えれば、歯の歯頭部の摩耗や歯肉に傷を付けるなどの問題が起こりやすい欠点もある。しかも、細菌を殺しているのではなく洗浄効果で洗浄できる範囲のところの細菌数の減量を行っているだけで、現状では清掃しにくい歯周ポケットの中や、歯垢などの除菌効果を刷掃(歯磨き)によって十分に得ることは困難である。
【0008】
歯周病になると、現状では決定的な治療はなく、病状の進行を止めることが治療となっている。治療のどの段階でも歯周病に関与してくるのが歯周病菌である。
【0009】
歯周病菌は抗生剤などの使用で効果がみられるが、長期投与には副作用、耐性菌の発生など問題があるので、その使用は症状によって短期的投与がなされる程度である。抗菌剤以外に歯周病菌に直接作用する材料、製剤はない。
【0010】
また、介護医療の誤嚥性肺炎の予防のために口腔内清掃が行われているが、この口腔内清掃も単に除菌を行っているに過ぎず、抗菌とは異なる。現在のところ、抗菌効果のあるものとしては、製薬会社が提供する経口投与による抗生物質や抗菌剤だけである。これらは、口腔内で直接的に細菌に作用するものと内服薬として使用されるものがあり、口腔内で歯周ポケットなどに直接填入する抗生剤もあるが、効果はあまり評価されておらず、一般的には内服剤として使用される。内服は一度体内に取り込まれることから、副作用の発現、また、使用回数使用期間が長くなると耐性菌の発現を招くことも懸念される。そのため常時抗生剤を使用するということは不可能であり、現状でも毎日使用することができる抗生剤はない。
【0011】
さらに、ノロウィルス、インフルエンザウィルスに対する抗ウィルス効果や抗菌効果を示すものとしては、アルコール系、塩素系の消毒剤が主流であるが、これらアルコール系や塩素系の消毒剤は、汚染された機材、日常使用する物品の消毒や、手指を汚染から守るために短時間水で流すなどして使用されているものの、皮膚や粘膜に為害作用があるため、有効濃度の量を、直接皮膚や粘膜に接触保持、添加などして一定時間とどめて使用することは出来ないのが現状である。
【0012】
なお、過酸化水素や過炭酸ナトリウムが殺菌効果を有するものとして知られていたが(例えば、特許文献1〜5参照)、これらを併用するという知見は一切なく、過炭酸ナトリウムは、あくまでも過酸化水素の一使用形態としての使用に過ぎず、具体的には、過酸化水素が液状であることから、その取り扱いの便宜上、粉末状の過炭酸ナトリウムとして使用するという程度に過ぎなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特公平8−18939号公報
【特許文献2】特表2008−88062号公報
【特許文献3】特表2008−531583号公報
【特許文献4】特許第3281445号公報
【特許文献5】特許第4335051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、口腔における抗菌、抗口臭などを可能とし、かつ、人体への為害作用のない口腔用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。その過程において、以下の知見に達した。
【0016】
すなわち、上述のごとく、従来、過酸化水素や過炭酸ナトリウムが殺菌効果を有するものとして知られていたが、過炭酸ナトリウムは、あくまでも過酸化水素の一使用形態としての使用に過ぎず、具体的には、過酸化水素が液状であることから、その取り扱いの便宜上、粉末状の過炭酸ナトリウムとして使用するという程度に過ぎなかった。
【0017】
しかし、本発明者の検討によれば、驚くべきことに、過酸化水素、分散剤、増粘剤および界面活性剤を含む水溶液と過炭酸ナトリウム水溶液とを特定の割合で混合させて得られる反応混合液が、過酸化水素水や過炭酸ナトリウム単独での効果に比して、口腔における抗菌、抗口臭、洗浄効果などが優位に発揮されること、および、その優れた効果により、低濃度であっても十分な効果が発揮されることから、この反応混合液が人体に為害作用を有しない濃度レベルで使用しうることを見出した。
【0018】
本発明はこれらの知見に基づき完成されるに至った。
【0019】
すなわち、本発明にかかる口腔用組成物は、過酸化水素5.5〜6.0重量%、分散剤0.005〜0.1重量%、増粘剤4.5〜6.0重量%および界面活性剤4.5〜6.0重量%を含む水溶液100重量部に対し、過炭酸ナトリウム25〜35重量%を含む水溶液19〜20重量部を混合して、発熱反応を起こさせ、前記発熱反応が停止して得られる反応混合液を、10倍以上の希釈倍率で含む、ことを特徴とする。
【0020】
上記において、本発明にかかる口腔用組成物は、製造時または使用時において口腔内に残留可能な剤形に賦形されてなることが好ましく、例えば、製造時または使用時において泡状であるか、または、バッカル剤であることが好ましい。また、前記バッカル剤がラグビーボール様の形状を有するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる口腔用組成物は、口腔における抗菌、抗口臭などを可能とし、かつ、人体への為害作用がなく、具体的には、弱アルカリ性で、粘膜、皮膚に刺激性は少なく、人体に対して安全に使用できるものである。前記において、抗菌、抗口臭などの効果は、従来の歯磨き剤のような物理的、機械的な除菌効果とは異なり、化学的な作用により発揮されるものであるので、歯の歯頸部の摩耗や歯肉に傷を付けるなどの問題は解決される。
【0022】
人体への為害作用のないものであることから、口腔内に残留しても人体に影響はなく、むしろ、積極的に残留させることで、口腔における抗菌、抗口臭などの効果を持続的に発揮させることができるという利点がある。
【0023】
製造時または使用時において口腔内に残留可能な剤形に賦形されてなることとすれば、上記の持続性を発現させることができる。例えば、歯磨き剤や口腔洗浄剤として使用する場合、従来のように、使用後に口腔の洗浄、うがいなどの処置を必要とせず、口腔内に残留させることができ、これにより、細菌数抑制効果、抗菌効果、抗口臭効果が持続するのである。
【0024】
中でも、製造時または使用時において泡状であるか、または、バッカル剤であることとすれば、以下のような効果も期待される。
【0025】
すなわち、製造時または使用時(例えば、容器からの噴出時)において泡状であれば、口腔内の使用する目的部位に容易に到達させることが出来、口腔内に残留可能な泡状となるので、口腔内での拡散が容易となり、細菌との接触も容易となって、その結果、口腔内の細菌数抑制がより効果的に発揮される。この効果は、日常的に使用される歯磨き剤としての用途において、特に良好に発揮される。さらに、流動性が適度に得られ、操作性に優れており、使用時に流れ落ちることがないので、臥位での使用で誤嚥させることもなく、拭き取りも容易であることから、使用後にうがいの必要がなく、飲み込んでも問題はない。この効果は、誤嚥性肺炎予防目的での口腔洗浄場面での使用において、特にその操作性が良好に発揮される。したがって、従来の口腔洗浄剤や歯磨き剤では使用後にはうがいなどによる洗浄を必要とし、嚥下しない様に口腔内より排出させる必要があるが、本発明ではこのような問題が解決される。
【0026】
また、剤形がバッカル剤であれば、耳下腺よりの流出唾液が上唇小帯と頬小帯の間にあるバッカル剤と接触することで持続的に溶解して、持続的な抗菌効果を発揮できる。これにより、口腔内の状態を抗ウィルス効果、口腔内細菌数抑制効果、口臭原因物質の分解効果による抗口臭効果が発揮できる状態にすることができる。
【0027】
さらに、バッカル剤がラグビーボール様の形状を有するものであれば、口腔内への挿入、保持が容易で、使用者に与える異物感も少なく、外部からもその存在が視認され難い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明にかかる口腔用組成物のバッカル剤としての一使用形態を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明にかかる口腔用組成物について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
【0030】
本発明にかかる口腔用組成物は、過酸化水素5.5〜6.0重量%(一般的に市販されている35%過酸化水素水を用いる場合、約16〜17重量%に相当)、分散剤0.005〜0.1重量%、増粘剤4.5〜6.0重量%および界面活性剤4.5〜6.0重量%を含む水溶液(以下、「原料液」と略記することがある)100重量部に対し、過炭酸ナトリウム25〜35重量%を含む水溶液19〜20重量部を混合して、発熱反応を起こさせ、前記発熱反応が停止して得られる反応混合液を、10倍以上の希釈倍率で含むものである。
【0031】
前記分散剤としては、人体に為害作用のないものであれば、特に限定されないが、例えば、有機リン酸系のキレート剤が好ましく挙げられる。市販品としては、例えば、大道製薬社製の有機リン酸系キレート剤「ホスリン」、キレスト社製の「キレスト」、日本モンサント社製の「ラウンドアップ」などが好ましく挙げられる。
【0032】
前記増粘剤としては、人体に為害作用のないものであれば、特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール、キサンタンガム、カラギーナンなどが挙げられる。市販品としては三洋化成社製のポリエチレングリコール「マグロゴール」などが好ましく挙げられる。
【0033】
前記界面活性剤としては、人体に為害作用のないものであれば、特に限定されないが、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、N−アシルグルタメート、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−アシルタウレート、ショ糖脂肪酸エステル、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ラウロイルサルコシンナトリウム、アルキルポリグルコシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホこはく酸塩などが挙げられる。市販品としては、第一工業製薬社製の「コスメライクL−150A」などが好ましく挙げられる。
【0034】
原料液中、上記成分を除く残部は、通常、水(精製水のみならず、海洋深層水、ミネラルウォーター、アルカリイオン水などであっても良い。以下、同様。)であるが、本発明の効果を害しない範囲であれば、上記以外の成分を含んでいてもよい。
【0035】
混合は、一般的な方法を採用すればよく、通常、原料液に過炭酸ナトリウム25〜35重量%を含む水溶液を添加して、従来公知の撹拌手段により撹拌する。
【0036】
ここで、上記の発熱反応の停止は、例えば、気泡の発泡停止をもって終息と判断する。これは肉眼的な観察により確認出来る。常温での反応を基準にすると高温になればなるほど反応が早く、温度が低い時には反応は緩やかである。この様に反応速度の調整は温度設定に負うところである。発泡が終息することで、流動性のある粘稠性の液として、本剤の原材料が得られる。例えば、発熱反応であることを利用して温度変化で判断したり、反応の際に発泡することを利用して発泡の状況で判断したりすることにより確認することもできる。
【0037】
本発明にかかる口腔用組成物は、上記反応混合液を10倍以上の希釈倍率で含む。この範囲であれば、人体に対する為害作用がない。抗菌、抗口臭効果などの効果を十分に発現させるためには、好ましくは希釈倍率15倍以下である。
【0038】
上記希釈は、水による希釈だけでなく、後述する賦形剤や添加物による希釈も含む。
【0039】
ここで、上記において、例えば、反応混合液中の水分が蒸発するなどして失われた場合には、濃縮されたのと同じであるので、濃縮された分だけ余分に希釈する必要がある。この場合の希釈も、水である必要はなく、賦形剤や添加物による希釈でもよい。
【0040】
本発明にかかる口腔用組成物は、製造時または使用時において口腔内に残留可能な剤形に賦形されてなるものであることが好ましい。口腔内に残留させることで、抗菌、抗口臭などの効果を持続的に発揮させることができるからである。
【0041】
例えば、錠剤、特に、徐々に融けて口腔内に行き渡るバッカル剤やトローチ剤などが好ましく挙げられ、中でも、上顎の歯茎と頬の間などに入れて使用されるバッカル剤が好ましい。
【0042】
また、(製造時または)使用時において泡状であれば、練り歯磨きと同じ様に、使用部位にとどめておくことができる。使用時は液体でも、最初は液状の様に流れることがないので、体位に関係なく口腔内使用が可能である。介護医療などにおける口腔清掃に操作性がよい。使用時には練り歯磨きの様に水や唾液と混ざることで口腔内に行き渡る様になり、このように、泡状であることで、口腔内で容易に拡散し、本発明の口腔用組成物の作用が、口腔内全体に行き渡り長く残留される。なお、使用時において泡状となる場合とは、例えば、製造段階では液状としておいて、使用時に、空気などの気体と混合して泡状に吐出させる場合を言う。このときの液体と気体の混合は、例えば、噴霧の際に外部から空気などの気体を取り込む機構を備えていることで、あるいは、液体中に圧縮ガスや液化ガスを含ませておくことで可能である。
【0043】
したがって、本発明にかかる口腔用組成物の剤形は、液状、錠剤、徐放剤など、特に限定されないのであるが、製造時または使用時において泡状であるものや、バッカル剤などが好ましい。
【0044】
上記において、バッカル剤を得る方法としては、上述の反応混合液を乾燥させて、これを粉末状にし、デキストリン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、砂糖、ショ糖、乳糖、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、タルク、カオリン、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、システイン、結晶セルロースなどの増量剤、賦形剤と混練したのち、公知の打錠手段により打錠する方法が挙げられる。この場合、人体への為害作用を十分に低減し、かつ、良好な効果を得るという観点から、反応混合液を乾燥させて得られた粉末を全量に対して10〜15重量%とし、賦形剤、増量剤を全量に対して85〜90重量%とすることが好ましい。
【0045】
また、製造時または使用時において泡状であるものは、例えば、噴霧時に空気を取り込み、かつ、その内部や噴射口にメッシュを備えた容器に充填することで噴霧時に泡状を形成し得るものや、炭酸ガス、窒素ガス、亜酸化窒素ガス、圧縮空気などの圧縮ガスを加圧剤として加え容器に充填して泡状を形成し得るものであればよい。上述の反応混合液は、界面活性剤を含んでおり、通常は、この界面活性剤によって泡状を形成し得るものである。
【0046】
本発明にかかる口腔用組成物には、本発明の効果を害しない範囲で、その他の添加物、例えば、香料、ハッカ油、ミント類、その他の植物の花、果物、根、葉、果皮、樹皮などより抽出されたフレーバーに甘味料としてキシリトール、エリスリトールなどと防腐剤などの添加物を配合するようにしてもよい。
【0047】
従来の歯磨き剤には、虫歯の予防や歯質の強化のためにフッ化物の添加が行われることがあるが、本発明においてもフッ素の添加は可能である。
【0048】
歯科治療において、日常的に行われる歯内治療は根管洗浄であるが、この時に使われる洗浄液は次亜塩素酸ナトリウムと過酸化水素水を使用したりするのが通常であり粘膜への為害作用などがあるため操作性に難がある。この点、本発明にかかる口腔用組成物は、口腔内への流出にも問題なく、根管内の殺菌洗浄を行うことが出来るので新たな根管洗浄剤として用いることが出来る。従来の根管洗浄剤に変わる画期的な製剤である。
【0049】
本発明にかかる口腔用組成物は、後述の実施例で実証されているように、ノロウィルス、インフルエンザウィルス、ヒトヘルペスウィルスなどの各種ウィルス類、歯周病菌、歯周病や胃疾患に関与するピロリ菌などに対し、高い抗ウィルス効果、抗菌効果を発揮するとともに、硫化水素、メチルメルカプタンなどに対し、高い分解消臭性を発揮するものである。
【0050】
好適な使用形態について詳述すると以下のとおりである。
【0051】
本発明にかかる口腔用組成物を液状や泡状で用いる場合は、例えば、布ガーゼ、不織布ガーゼ、綿球やこれらに準じたものに保持させて、これを口腔内に入れて清拭を行う方法が好ましく採用される。この清拭は、頬粘膜、歯肉部、歯など、口腔内全体を清潔にしておく場合のほか、口腔内の慢性肉芽創、慢性皮膚瘻など、特定の箇所に局所的に作用させる場合にも好適に採用できる。
【0052】
泡状で用いる場合は、さらに、歯磨き剤のような形態で使用することもできる。
【0053】
また、本発明にかかる口腔用組成物は、バッカル剤であることが好ましい。泡状あるいは液状であれば口腔内に長時間留め置くことは不可能であるが、バッカル剤すなわち固形であれば、口腔内に長時間留め置き抗菌効果を持続させることが出来る。従来にない方法であり、製剤である。その効果についての方法と結果については後述する。
【0054】
このバッカル剤は、口腔内唾液に接触すると徐々に融解を始める。例えば、以下に図1を参照して詳述する形状と量であれば、30分程度、持続させることが出来る。
【0055】
ここで、バッカル剤とは、通常、頬と歯茎の間に使用されるものであり、徐々に口腔内に融解または粘膜に吸収させる錠剤のことである。同じ様な目的で舌下錠があるが、本剤の目的は口腔内へ緩徐に持続溶解させることにある。
【0056】
例えば、図1では、上唇21、歯22、歯茎23、歯肉頬移行部(歯茎と頬に挟まれてできたポケット)24、上唇小帯25、頬小帯26、口蓋垂27を有する口腔20内(下顎部は図示を省略)において、歯肉頬移行部24にバッカル剤10を入れるようにしているが、バッカル剤10をこの位置に挿入することで、安定して位置が固定される。
【0057】
さらに、歯肉頬移行部24にバッカル剤10をとどめておくことにより、両側耳下腺より流出した唾液が歯肉頬移行部24のポケットに沿って前歯部のポケットに至ることから、バッカル剤10は唾液に曝されて、徐々に融解させることが出来るので、口腔内全体に広がり、これにより一定時間の抗菌作用を期待できる。また、飲み込むことで中咽頭・扁桃輪におよび、含嗽剤として、ここでの抗菌効果、抗ウィルス効果も期待される。
【0058】
バッカル剤としての抗菌、抗ウィルス効果は、歯周病菌、口腔内ピロリ菌、ヘルペスウィルス、ノロウィルス、インフルエンザウィルスに発揮するのみならず、口臭の原因となる物質(後述)の分解消臭を行うことから、持続的に口臭効果を発揮できる。バッカル剤の性質を遺憾なく発揮でき、これまでに類を見ない画期的な発明である。
【0059】
特に、図1に示すように、バッカル剤10の形状がラグビーボール様であると、歯肉頬移行部24の形状に良好に適合し、バッカル剤10が歯肉頬移行部24から容易に脱落することなく、また、使用者において過度の違和感を生じさせず、さらに、外部からバッカル剤10の隆起が目立つこともない。
【0060】
なお、ラグビーボール様とは、ラグビーボールと同様あるいはこれに類似した形状のことであり、扁平形状を有しているので歯肉頬移行部24に入り易く異物感を生じさせ難いとともに、長軸を有しているので歯肉頬移行部24の広い範囲にわたって配置される。
【0061】
この場合のバッカル剤の重量は、特に限定するわけではないが、挿入や固定のし易さ、十分な効果の発現といった観点から、2.0〜2.5g程度が好ましい。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を用いて、本発明にかかる口腔用組成物について具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下において、便宜上、重量%を単に%と表記し、重量部を単に部と表記する。
【0063】
〔実施例1〕
35%濃度の過酸化水素水17%、ホスリン(大道製薬社製の有機リン酸系キレート剤)0.06%、マクロゴール(三洋化成工業社製の増粘剤)5%、コスメライク(ショ糖脂肪酸エステル、第一工業製薬社製の界面活性剤)5%、イオン交換水72.94%の混合液を原料液とした。
【0064】
前記原料液100重量部に対して、30%過炭酸ナトリウム水溶液20重量部(過炭酸ナトリウム粉末を原料液に加えても反応が遅いため、精製水に溶解させて用いた)を加え、全量を300mlとすることで、発泡しながら発熱反応が起こった。
【0065】
発泡が収まり反応が停止したことを確認し、得られた反応混合液を水で15倍に希釈することにより、本発明にかかる口腔用組成物を得た。
【0066】
〔比較例1〕
市販の35%濃度の過酸化水素水を水で10倍に希釈することにより、比較例1にかかる組成物を得た。
【0067】
〔比較例2〕
過炭酸ナトリウム1gを水で100倍に希釈したところ、直ちに発泡することはないが、徐々に発泡し軽微な発熱反応が起こった。
発泡が収まり反応が停止したことを確認し、これを、比較例2にかかる組成物とした。
【0068】
上記において、100倍の希釈としたのは、薬事法にて口腔内に用いることのできる過酸化水素濃度が0.3%以下とされており、これに相当あるいはそれ以下の過酸化水素量である必要があるためである。
【0069】
〔性能評価〕
上述の実施例、比較例の各組成物を検体として、以下の殺菌効果試験、ウィルス不活性化試験、脱臭効果試験を行い、その性能を評価した。
【0070】
<殺菌効果試験>
(歯周病菌)
試験液をSCDLP培地で10倍に希釈することにより、検体の影響を受けずに生菌数が測定できることを、予備試験により確認した。
【0071】
1)試験菌株
ジンジバリス菌(Porphyromonas gingivalis JCM 8525)を用いた。
【0072】
2)菌数測定用培地および培養条件
菌数測定用培地としては5%馬脱繊維血液加Brucella Agar(BBL製)を用い、その培養条件としては平板塗抹培養法により、35±1℃で5〜7日間の嫌気培養とした。
【0073】
3)試験菌液の調製
試験菌株を5%馬脱繊維血液加Brucella Agarで35±1℃、4〜7日間嫌気培養した後、生理食塩水に浮遊させ、菌数が108〜109/mLとなるように調製し、これを試験菌液とした。
【0074】
4)試験操作
実施例1および比較例1,2にかかる各検体10mLに、上記試験菌液0.1mLを接種し、試験液とした。各試験液は、室温で保存して、1,3および5分後にSCDLP培地(日本製薬社製)で直ちに10倍に希釈し、菌数測定用培地を用いて試験液中の生菌数を測定した。
【0075】
なお、対照として、生理食塩水を用いて同様に試験し、開始時および5分後に生菌数を測定した。
【0076】
結果を表1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
上記結果から、本発明にかかる口腔用組成物は、歯周病菌に対して殺菌効果があることが分かった。この殺菌効果は、過炭酸ナトリウム溶液や過酸化水素水のいずれに対しても優位に発現されていることから、過炭酸ナトリウム溶液や過酸化水素水を併用することの相乗効果が確認できる。
【0079】
(ピロリ菌)
試験液を0.75%チオ硫酸ナトリウム加SCDLP培地で100倍に希釈することにより、検体の影響を受けずに生菌数が測定できることを、予備試験により確認した。
【0080】
1)試験菌株
ピロリ菌(Helicobacter pylori JCM 12093)を用いた。
【0081】
2)菌数測定用培地および培養条件
菌数測定用培地としては5%馬脱繊維血液加Blood Agar Base No.2(OXOID製)を用い、その培養条件としては平板塗抹培養法により、37±1℃で7日間の微好気培養とした。
【0082】
3)試験菌液の調製
試験菌株を5%馬脱繊維血液加Blood Agar Base No.2で37±1℃、3〜4日間微好気培養した後、生理食塩水に浮遊させ、菌数が108〜109/mLとなるように調製し、これを試験菌液とした。
【0083】
4)試験操作
実施例1にかかる検体10mLに、上記試験菌液0.1mLを接種し、試験液とした。試験液は、36±1℃で保存して、5,10および20分後に0.75%チオ硫酸ナトリウム加SCDLP培地(日本製薬社製)で直ちに100倍に希釈し、菌数測定用培地を用いて試験液中の生菌数を測定した。
【0084】
なお、対照として、精製水を用いて同様に試験し、開始時、5,10および20分後に生菌数を測定した。
【0085】
結果を表2に示す。
【0086】
【表2】

【0087】
上記結果から、本発明にかかる口腔用組成物は、菌自体の増殖を抑え、放置しても菌が増殖することがなく、したがって、ピロリ菌に対して抗菌効果があることが分かった。
【0088】
なお、ピロリ菌も口腔内に生息するものは、歯周病菌の進行に関与している。胃潰瘍などの胃腸粘膜疾患を引き起こすことで知られるピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、口腔内にも存在し、歯周病の進行でピロリ菌の検出率も高くなり、ピロリ菌が炎症を増悪させることが示唆されている。また、本発明にかかる口腔用組成物の抗ピロリ菌効果は胃内における効果も期待される。
【0089】
<ウィルス不活性化試験>
(ネコカリシウィルス)
細胞維持培地で作用液を1000倍に希釈することにより、検体の影響を受けずにウィルス感染価が測定できることを、予備試験により確認した。
【0090】
ネコカリシウィルスは、細胞培養が不可能なノロウィルスの代替ウィルスとして広く使用されている。
【0091】
1)試験ウィルス
ネコカリシウィルス(Feline Calicivirus F−9 ATCC VR−782)
【0092】
2)使用細胞
CRFK細胞(大日本製薬社製)
【0093】
3)使用培地
(ア)細胞増殖培地
イーグルMEM培地「ニッスイ」(日水製薬社製)に牛胎仔血清を10%加えたものを使用した。
【0094】
(イ)細胞維持培地
イーグルMEM培地「ニッスイ」(日水製薬社製)に牛胎仔血清を2%加えたものを使用した。
【0095】
4)ウィルス浮遊液の調製
(ア)細胞の培養
細胞増殖培地を用い、使用細胞を組織培養用フラスコ内に単層培養した。
【0096】
(イ)ウィルスの接種
単層培養後にフラスコ内から細胞増殖培地を除き、試験ウィルスを接種した。次に、細胞維持培地を加えて37±1℃の炭酸ガスインキュベーター(CO2濃度5%)内で1〜5日間培養した。
【0097】
(ウ)ウィルス浮遊液の調製
培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態を観察し、細胞に形態変化(細胞変性効果)が起こっていることを確認した。次に、培養液を遠心分離(3000r/min、10分間)し、得られた上澄み液をウィルス浮遊液とした。
【0098】
5)試験操作
検体1mlにウィルス浮遊液0.1mlを添加、混合し、作用液とした。室温で作用させ、1,5,15および30分後に細胞維持培地を用いて1000倍に希釈した。
なお、精製水を対照として同様に試験し、開始時および30分後について測定を行った。
【0099】
6)ウィルス感染価の測定
細胞増殖培地を用い、使用細胞を組織培養用マイクロプレート(96穴)内で単層培養した後、細胞増殖培地を除き細胞維持培地を0.1mlずつ加えた。次に、作用液の希釈液0.1mlを4穴ずつに接種し、37±1℃の炭酸ガスインキュベーター(CO2濃度5%)内で4〜7日間培養した。培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態変化(細胞変性効果)の有無を観察し、Reed−Muench法により50%組織培養感染量(TClD50)を算出して作用液1ml当たりのウィルス感染価に換算した。
【0100】
結果を表3に示す。
【0101】
【表3】

【0102】
上記結果から、本発明にかかる口腔用組成物は、ネコカリシウィルスを不活性化する効果、したがって、ノロウィルスを不活性化する効果があることが分かった。
【0103】
(インフルエンザA)
細胞維持培地で作用液を10000倍に希釈することにより、検体の影響を受けずにウィルス感染価が測定できることを、予備試験により確認した。
【0104】
1)試験ウィルス
インフルエンザウィルスA型(H1N1)
【0105】
2)使用細胞
MDCK(NBL−2)細胞 ATCC CCL−34株(大日本製薬社製)
【0106】
3)使用培地
(ア)細胞増殖培地
イーグルMEM培地「ニッスイ」(日水製薬社製)に牛胎仔血清を10%加えたものを使用した。
【0107】
(イ)細胞維持培地
以下の組成の培地を使用した。
イーグルMEM培地「ニッスイ」(日水製薬社製) 1000ml
10%NaHCO3 14ml
L−グルタミン(30g/l) 9.8ml
100×MEM用ビタミン液 30ml
10%アルブミン 20ml
0.25%トリプシン 20ml
【0108】
4)ウィルス浮遊液の調製
ネコカリシウィルスにおける試験と共通であるので記載を省略する。
【0109】
5)試験操作
検体1mlにウィルス浮遊液0.1mlを添加、混合し、作用液とした。室温で作用させ、30,60および300秒後に細胞維持培地を用いて10000倍に希釈した。
なお、精製水を対照として同様に試験し、開始時および300秒後について測定を行った。
【0110】
6)ウィルス感染価の測定
ネコカリシウィルスにおける試験と共通であるので記載を省略する。
【0111】
結果を表4に示す。
【0112】
【表4】

【0113】
上記結果から、本発明にかかる口腔用組成物は、インフルエンザAを不活性化する効果があることが分かった。
【0114】
(ヒトヘルペスウィルス)
細胞維持培地で作用液を100倍に希釈することにより、検体の影響を受けずにウィルス感染価が測定できることを、予備試験により確認した。
【0115】
1)試験ウィルス
ヒトヘルペスウィルスI(Human herpesvirus I KOS ATCC VR−1493)。
【0116】
2)使用細胞
HEp−2細胞:HEp−2 03−108(大日本製薬社製)
【0117】
3)使用培地
ネコカリシウィルスにおける試験と共通であるので記載を省略する。
【0118】
4)ウィルス浮遊液の調製
ネコカリシウィルスにおける試験と共通であるので記載を省略する。
【0119】
5)試験操作
精製水を用いて検体希釈液(10倍希釈液)を調製し、試験液とした。試験液1mlにウィルス浮遊液0.1mlを添加、混合し、作用液とした。室温で作用させ、3,5および10分後に細胞維持培地を用いて100倍に希釈した。
なお、精製水を対照として同様に試験し、開始時および10分後について測定を行った。
【0120】
6)ウィルス感染価の測定
ネコカリシウィルスにおける試験と共通であるので記載を省略する。
【0121】
結果を表5に示す。
【0122】
【表5】

【0123】
上記結果から、本発明にかかる口腔用組成物は、ヒトヘルペスウィルスを不活性化する効果があることが分かった。
【0124】
<脱臭効果試験>
(硫化水素)
実施例1にかかる組成物5mLを、25cm×40cmのにおい袋(ミヤコビニル加工所製)に入れ、ヒートシールを施した後、空気3Lを封入し、初期ガス濃度20ppmとなるように硫化水素を添加した。これを室温下で静置し、経過時間ごとに袋内のガス濃度をガス検知管(ガステック社製)を用いて測定した。比較のため、実施例1にかかる組成物に代えて精製水を用いた対照(水)についても同様に測定した。また、実施例1にかかる組成物および精製水のいずれも用いなかった空試験も行った。
【0125】
結果を表6に示す。
【0126】
【表6】

【0127】
上記結果から、本発明にかかる口腔用組成物は、硫化水素に対して脱臭効果があることが分かった。
【0128】
(メチルメルカプタン)
初期ガス濃度20ppmの硫化水素に代えて初期ガス濃度8ppmのメチルメルカプタンを用いた以外は上記硫化水素の試験と同様にして試験を行った。
【0129】
結果を表7に示す。
【0130】
【表7】

【0131】
上記結果から、本発明にかかる口腔用組成物は、メチルメルカプタンに対して脱臭効果があることが分かった。
【0132】
<刺激性試験>
7週齢のHartley系雌モルモットを日本エスエルシー社から購入し、1週間予備飼育を行って一般状態に異常のないことを確認した。試験用モルモットは、FRP製ケージに各5匹収容し、室温22±2℃、照明時間12時間/日に設定した飼育室において飼育した。飼料はモルモット用固形飼料「ラボGスタンダード」(日本農産工業社製)を給与し、飲料水は水道水を自由摂取させた。
【0133】
検体を適用する試験群および対照として注射用水を適用する対照群を設定し、各群につきそれぞれ5匹のモルモットを用いた。モルモットの口腔粘液に炎症などの異常がないことを確認した後、試験に使用した。試験群には、実施例1にかかる検体、対照群には注射用水を、胃ゾンデを用いて、それぞれ0.25gずつ口腔内に適用した。適用は約2時間ごとに1日4回、4日間連続して行った。各適用前ならびに最終適用後、1および4日後に口腔粘膜を肉眼的に観察し、発赤、壊死、出血および潰瘍の形成などの刺激性の有無について検索した。
【0134】
試験群および対照群ともに、各適用前ならびに最終適用後1および4日のいずれにおいてもモルモットの口腔粘膜に異常は見られなかった。
【0135】
したがって、本発明にかかる口腔用組成物は、モルモットの口腔粘膜に対して刺激性を示さないものと判断された。
【0136】
〔実施例2〕(発泡性液剤の調製例)
実施例1の組成物を用いて、発泡性液剤を調製した。
【0137】
具体的には、実施例1の組成物100mlに、キシリトール5g、ハッカ油1滴を添加し、これを、発泡性液剤とした。
【0138】
この発泡性液剤は、空気などの気体と混合して泡状に吐出させて使用することができる。
【0139】
〔実施例3〕(バッカル剤の調製例)
実施例1の組成物を用いて、バッカル剤を調製した。
【0140】
具体的には、以下の配合で、原料混合物(1錠当たり重量0.22g)を得て、これを打錠機で打錠することにより、ラグビーボール用の形状を有するバッカル剤を得た。
【0141】
上記において、原料混合物の配合は、実施例1に記載の希釈前の反応混合液(原料液と過炭酸ナトリウム水溶液との反応液)を乾燥させたもの0.016g、エリスリトール0.107g、結晶セルロース0.039g、ショ糖脂肪酸エステル0.001g、クエン酸0.016g、アセロラフレーバー0.041gとした。
【0142】
〔性能評価〕
上述の実施例3のバッカル剤を用いて、抗歯周病効果に関する臨床試験を行い、その性能を評価した。この臨床試験は、株式会社ジージー オーラルチェックセンターに依頼して行った「歯周病原細菌検査(唾液)」である。実験法および実験結果の評価は歯科領域において、口腔細菌評価に用いられている方法で実施された。
【0143】
具体的には、歯周病を惹起する原因菌とされる下記4種類の細菌につき、実施例3のバッカル剤の口腔内使用での結果をみた。
1)P.gingivalis:強い悪臭を放つ歯周病菌。
2)T.denticola:歯周ポケットが深くなると増殖が活発になり、歯周病が進行すると歯肉に入り、歯周病の症状を悪化させる。
3)T.forsythensis:歯周ポケットに生息し歯周病を進行させる。
4)P.intermedia:歯を支える骨(歯槽骨)を溶かす毒素(内毒素)をもつ。女性ホルモンと関係する。
【0144】
臨床試験条件は下記1)〜3)に示すとおりである。
1)口腔内の食前1時間程度の唾液を採取する(口腔内の口腔内細菌が一番多くなるのは食事前であることから、この時間帯で採取する)。
2)5分間ガム噛みを行わせ、この間の唾液を採取する。
3)次の5分間にバッカルタブレットを口腔上顎歯肉頬移行部のポケットに置き、流出してたまった唾液を採取する。
【0145】
結果は下記表8に示すとおりであった。
【0146】
【表8】

【0147】
すなわち、表8は、採取された検体中の4種類の口腔内細菌(いわゆる歯周病菌)の数を測定した実際の細菌数の計測値を示しており、「バッカル剤使用前」はガム噛み時に得られた唾液のテスト結果、「バッカル剤使用5分後」はバッカル剤を使用して5分後の口腔内唾液のテスト結果である。
【0148】
いずれもガム噛みの時の細菌数とバッカル剤使用時の細菌数には減少あるいは消失がみられた。
【0149】
以上の結果から、実施例3のバッカル剤が歯周病菌に対して抗菌効果を示すことが実証された。
【0150】
このように、本発明のバッカル剤を使用することで、口腔内細菌、歯周病菌の明らかな減少をみたことから、実際に、本発明のバッカル剤を使用することで、歯磨きの後に歯周病菌に対する抗菌効果を持続的に持たせることができると考えられる。これは、従来の製剤にはない画期的なものであり、現在の歯周病治療に役立つと考えられ、歯周病にまつわる呼吸器疾患、循環器疾患などの予防、発症に寄与できるものと考える。
【0151】
歯周病菌に対する抗菌効果の持続のみならず、口臭の原因となるメチルメルカプタン、硫化水素などの分解も行われ、バッカル剤使用で、持続して口腔領域の細菌、ウィルスの抑制効果と同時に、抗口臭効果が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明にかかる口腔用組成物は、例えば、口腔清拭剤や歯磨き剤、バッカルタブレットなどとして好適に利用することができる
【符号の説明】
【0153】
10 バッカル剤
20 口腔
21 上唇
22 歯
23 歯茎
24 歯肉頬移行部
25 上唇小帯
26 頬小帯
27 口蓋垂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化水素5.5〜6.0重量%、分散剤0.005〜0.1重量%、増粘剤4.5〜6.0重量%および界面活性剤4.5〜6.0重量%を含む水溶液100重量部に対し、過炭酸ナトリウム25〜35重量%を含む水溶液19〜20重量部を混合して、発熱反応を起こさせ、前記発熱反応が停止して得られる反応混合液を、10倍以上の希釈倍率で含む、口腔用組成物。
【請求項2】
製造時または使用時において口腔内に残留可能な剤形に賦形されてなる、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
製造時または使用時において泡状であるか、または、バッカル剤である、請求項2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
前記バッカル剤がラクビーボール様の形状を有するものである、請求項3に記載の口腔用組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2013−79219(P2013−79219A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220879(P2011−220879)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(309030779)株式会社エス・アイ・ティー (2)
【Fターム(参考)】