説明

可動ホーム柵

【課題】 従来の可動ホーム柵における振れ止め機構では、振れ止めレールと振れ止めブロックとの間の隙間が狭すぎると扉が開閉しにくくなってしまう恐れがあるため、振れ止めレールと振れ止めブロックとの間に適当な幅の隙間を設けており、扉全閉時においてこの隙間の範囲で扉が振れて扉やレール等が磨耗してしまうという問題があった。
【解決手段】この発明に係る可動ホーム柵においては、扉2の全閉時に扉2の戸袋内に留まる部分に設けられ、傾斜面を有する扉側テーパガイド5と、戸袋内に設けられ扉2の全閉時に扉側テーパガイド5の傾斜面と面接触する傾斜面を有する戸袋側テーパガイド4とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道車両の駅のプラットホームに設置される可動ホーム柵に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年においては、鉄道車両の駅のプラットホームにおける乗降客の転落防止のために、自動開閉式の扉を備えた可動ホーム柵をプラットホームの床面に据え付ける場合が増えてきている。
【0003】
可動ホーム柵は、駅に鉄道車両が停車した際に鉄道車両の乗降口と対向するように配置され鉄道車両の乗降客の乗降に合わせて開閉する扉と、この扉の開放時に扉が収納される戸袋とを備えている。ここで、扉は戸袋に設けられたレール上を移動することで開閉する。
【0004】
可動ホーム柵の課題のひとつとして、振れ止めの問題がある。これは、扉移動時及び扉全閉時において扉が振れて扉やレール等が磨耗し、可動ホーム柵の寿命が縮まることを防止するというものである。
【0005】
従来の可動ホーム柵における振れ止め機構として、特許文献1には、扉に振れ止めブロックを設け、戸袋の振れ止めレールと振れ止めブロックとを係合させることで扉移動時の振れを防止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−239225号公報(段落0014、第2、4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
可動ホーム柵では、扉全閉時において駅を通過する鉄道車両の風圧等により、扉が振れて扉やレール等が磨耗し、可動ホーム柵の寿命が縮んでしまう恐れがあった。したがって、特に扉全閉時における振れ止めが重要になる。
【0008】
従来の可動ホーム柵における振れ止め機構では、振れ止めレールと振れ止めブロックとの間の隙間が狭すぎると、扉が開閉しにくくなってしまう恐れがある。そこで実際には、振れ止めレールと振れ止めブロックとの間に適当な幅の隙間を設ける必要がある。そのため扉全閉時においてこの隙間の範囲ではやはり扉が振れて扉やレール等が磨耗してしまうという問題があった。
【0009】
この発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、全閉時の扉の振れを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る可動ホーム柵においては、扉の全閉時に扉の戸袋内に留まる部分に設けられ、傾斜面を有する嵌入部と、戸袋内に設けられ扉の全閉時に嵌入部の傾斜面と面接触する傾斜面を有する嵌受部とを備えた。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、全閉時の扉の振れを抑制し、可動ホーム柵の寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1に係る可動ホーム柵の側面断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る扉が開かれた状態の可動ホーム柵の部分水平断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る扉が閉められた状態の可動ホーム柵の部分水平断面図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る扉が偏って閉められた状態の可動ホーム柵の部分水平断面図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る扉が開かれた状態の可動ホーム柵の部分水平断面図である。
【図6】この発明の実施の形態2に係る扉が閉められた状態の可動ホーム柵の部分水平断面図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係る扉が偏って閉められた状態の可動ホーム柵の部分水平断面図である。
【図8】この発明の実施の形態3に係る扉が閉められた状態の可動ホーム柵の部分水平断面図である。
【図9】この発明の実施の形態4に係る可動ホーム柵の側面断面図である。
【図10】この発明の実施の形態4に係る扉が開かれた状態の可動ホーム柵の部分水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る可動ホーム柵を示す側面図である。以下、図1に基づき、本発明の実施の形態1に係る可動ホーム柵の構成を説明する。可動ホーム柵は、扉2と戸袋1とで構成される。戸袋1は戸袋カバー3等から構成される箱型の形状であり、図1左側の一面が開放されている。図1においてプラットホームの床面側を下側、その反対側を上側とする。図1上側にはそれぞれ上側レール13が、図1下側には下側レール15がそれぞれ設けられている。なお、戸袋カバー3は図1の手前側にも設けられているが、戸袋1の内部構造を示すために図1では手前側の戸袋カバー3を省略している。
【0014】
扉2の戸袋1側端の上下にはそれぞれ上側ローラガイド12及び下側ローラガイド14が設けられている。上側ローラガイド12は上側に2つの車輪を有し、下側ローラガイド14は下側に2つの車輪を有している。
【0015】
上側レール13に上側ローラガイド12の2つの車輪が接触し、下側レール15に下側ローラガイド14の2つの車輪が接触し、扉2は図1左右方向に可動になっている。また、戸袋1の開放されている面から扉2が戸袋1に出入りするようになっている。これにより、扉2を戸袋1に収納することで扉2を開き、扉2を戸袋1から引き出すことで扉2を閉めることが出来る。
【0016】
図2はこの発明の実施の形態1に係る扉が開かれた状態の可動ホーム柵の部分水平断面図である。扉2の全閉時に扉2の戸袋1内に留まる部分の線路側及びプラットホーム側の両面には、嵌入部として、扉側テーパガイド5がそれぞれ設けられている。それらに対応し、線路側及びプラットホーム側の戸袋カバー3には、嵌受部として、戸袋1側テーパガイド4がそれぞれ設けられている。
【0017】
ばね受け6は戸袋カバー3の戸袋1内側の面にそれぞれ固定されており、扉側テーパガイド5は扉2に固定されている。ばね受け6と戸袋側テーパガイド4との間には圧縮ばね7がそれぞれ設けられており、戸袋側テーパガイド4は圧縮ばね7を介して戸袋1に接続されている。戸袋側テーパガイド4及び扉側テーパガイド5には、互いに並行な傾斜面が対向するようにそれぞれ形成されている。これにより、扉2を閉める際に扉側テーパガイド5と戸袋側テーパガイド4とが傾斜面で面接触する。
【0018】
戸袋側テーパガイド4は、戸袋カバー3と接触する面が摺動面となっており、戸袋側テーパガイド4は、戸袋カバー3に対して摺動である。
【0019】
また、戸袋側テーパガイド4の傾斜面の摩擦係数は、摺動面の摩擦係数より大きくなっている。これにより、戸袋側テーパガイド4が面接触により扉側テーパガイド3をしっかりと保持しながら、戸袋側テーパガイド4が戸袋カバー3に対して摺動するようになっている。なお、摩擦係数を調整する方法としては、例えば、面によって材質が異なるようにする方法や面に溝を多数設ける方法がある。
【0020】
図3はこの発明の実施の形態1に係る扉が閉められた状態の可動ホーム柵の部分水平断面図である。図2の状態から扉2を閉める方向(図2左方向)に動かすと、図3の状態となり、扉2が閉まる。このとき戸袋側テーパガイド4及び扉側テーパガイド5の傾斜面が面接触しているため、図3上下方向に扉2が振れない。
【0021】
図2の状態のように、扉2を開く方向に所定距離動かすと、扉側テーパガイド5と戸袋側テーパガイド4とが非接触となり、両者の間の摩擦がなくなる。したがって扉2の開閉が非常に容易である。
【0022】
次に、この発明の実施の形態1に係る可動ホーム柵が、扉2が中心より偏って設置された場合にも有効である点について説明する。駅のプラットホームにおける可動ホーム柵の据付作業において扉2の中心が戸袋1の中心からずれてしまうことがある。図4はこの発明の実施の形態1に係る扉2が中心より偏ったまま閉められた状態の可動ホーム柵の部分水平断面図である。図4においては、扉2の中心が戸袋1の中心から図4下側にずれてしまっている。
【0023】
この場合でも、扉4が偏った側である図4下側の圧縮ばね7の収縮量が、図4上側の圧縮ばね7の収縮量より大きくなることで扉側テーパガイド5が戸袋側テーパガイド4の線路側及びプラットホーム側の両面で面接触することができる。
【0024】
以上、この発明の実施の形態1に係る可動ホーム柵においては、戸袋1に嵌受部を設け、扉2に嵌入部を設けたので、扉全閉時の扉の振れを抑制することができる。
【0025】
また、この発明の実施の形態1に係る可動ホーム柵においては、圧縮ばね7が圧縮することにより扉2を開閉方向に多少ずれて設置されてしまっても戸袋側テーパガイド4と扉側テーパガイド5とが面接触する。そのため、可動ホーム柵の設置における扉2と戸袋1の扉開閉方向の位置関係の精度の許容範囲が広くなる。
【0026】
また、この発明の実施の形態1に係る可動ホーム柵においては、線路側及びプラットホーム側の両側に戸袋側テーパガイド4、扉側テーパガイド5及び圧縮ばね7をそれぞれ配したので、扉の中心が戸袋1の中心からずれて設置されてしまっても扉の振れを十分抑えることができる。そのため、可動ホーム柵の設置における扉2と戸袋1の乗降方向の位置関係の精度の許容範囲が広くなる。
【0027】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態2に係る扉が開かれた状態の可動ホーム柵の部分水平断面図である。図6はこの発明の実施の形態2に係る扉が閉められた状態の可動ホーム柵の部分水平断面図である。図7はこの発明の実施の形態2に係る扉が偏って閉められた状態の可動ホーム柵の部分水平断面図である。実施の形態2に係る可動ホーム柵の構成は、基本的に実施の形態1に係る可動ホーム柵の構成と同様であり、同一の構成には同一の番号を付して説明を省略する。実施の形態1との相違点は、ばねの取り付け方である。
【0028】
図5に示すように、この発明の実施の形態2に係る可動ホーム柵においては、ばね受け8及び伸張ばね9が戸袋側テーパガイド4より扉2の閉方向側に設けられている。これにより、実施の形態1において扉2を閉める際に圧縮ばね7が圧縮されていたのに対して実施の形態2においては伸張ばね9が伸張することになるが、その効果は同様である。
【0029】
以上、この発明の実施の形態2に係る可動ホーム柵においても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0030】
また、実施の形態1では戸袋の開口付近に物が侵入した際にばね受け6及び圧縮ばね7と扉2との間に物を挟んでしまう恐れがある。それに対し実施の形態2においては、ばね受け8及び伸張ばね9が戸袋の開口から離れて設置されるため、戸袋の開口付近に物が侵入した際にばね受け8及び伸張ばね9と扉2との間に物を挟むなどの事故を防止することができ、安全性を高めることができる。
【0031】
実施の形態3.
図8はこの発明の実施の形態3に係る可動ホーム柵の部分水平断面図である。実施の形態3に係る可動ホーム柵の構成は、基本的に本発明の実施の形態1に係る可動ホーム柵の構成と同様であり、同一の構成には同一の番号を付して説明を省略する。実施の形態1との相違点は、圧縮ばね11を戸袋側テーパガイド4ではなく扉側テーパガイド5に取り付けた点である。このような構成にしても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0032】
ばね受け10は扉2の線路側及びプラットホーム側の両面にそれぞれ固定されており、戸袋側テーパガイド4は戸袋カバー3の戸袋1内側の面にそれぞれ固定されている。ばね受け10と扉側テーパガイド5との間には圧縮ばね11がそれぞれ設けられており、扉側テーパガイド5は圧縮ばね11を介して扉2に接続されている。
【0033】
扉側テーパガイド5は、扉2と接触する面が摺動面となっており、扉側テーパガイド5は、扉2に対して摺動可能になっている。
【0034】
また、扉側テーパガイド5の傾斜面の摩擦係数は、摺動面の摩擦係数より大きくなっている。これにより、扉側テーパガイド5が面接触により戸袋側テーパガイド4をしっかりと保持しながら、扉側テーパガイド5が扉2に対して摺動するようになっている。
【0035】
以上、扉側テーパガイド5に圧縮ばね11を取り付けたこの発明の実施の形態3に係る可動ホーム柵においても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0036】
また、実施の形態3においては、ばね受け10及び圧縮ばね11が扉2に設けられたため、扉2を開くほどばね受け10及び圧縮ばね11が戸袋の開口から遠く離れる。そのため、扉2を開いている間において、戸袋の開口付近に物が侵入した際にばね受け10及び圧縮ばね11と扉2との間に物を挟むなどの事故を防止することができ、安全性を高めることができる。
【0037】
なお、ここではばね受け10及び圧縮ばね11を扉側テーパガイド5より扉2の閉方向側に設けたが、扉側テーパガイド5より扉2の開方向側に伸張ばねを設けてもよい。
【0038】
実施の形態4.
図9はこの発明の実施の形態4に係る可動ホーム柵を示す側面図である。実施の形態4に係る可動ホーム柵の構成は、基本的に本発明の実施の形態1に係る可動ホーム柵の構成と同様であり、同一の構成には同一の番号を付して説明を省略する。実施の形態4の実施の形態1との相違点は、扉側テーパガイド及び戸袋側テーパガイドの構造である。
【0039】
本発明の実施の形態4に係る可動ホーム柵においては、戸袋カバー3の先端上側には、嵌受部として、戸袋側テーパガイド16が設けられている。それに対応して扉2の上側には、嵌入部として、扉側テーパガイド17は設けられている。実施の形態4に係る可動ホーム柵においては、戸袋側テーパガイド16及び扉側テーパガイド17はそれぞれ一つずつである。
【0040】
扉側テーパガイド17は楔形に形成されており、戸袋側テーパガイド16は中央に扉側テーパガイド17が嵌合する溝が設けられている。
【0041】
また、ばね受け18及び圧縮ばね19も扉2の上側の扉側テーパガイド17より戸袋20側に設けられている。
【0042】
図10はこの発明の実施の形態4に係る可動ホーム柵の部分水平断面図である。戸袋側テーパガイド16は中央が扉側テーパガイド17と嵌合するような形状になっており、戸袋側テーパガイド16及び扉側テーパガイド17は、互いに対向するように傾斜面が同じ角度で形成されている。扉2を閉める時に扉側テーパガイド17が戸袋側テーパガイド16と面接触する。
【0043】
以上、この発明の実施の形態4に係る可動ホーム柵においても、戸袋20に嵌受部を設け、扉2に嵌入部を設けたので、扉全閉時の扉の振れを抑制することができる。
【0044】
また、部材が少なくすることができ、組み立てが容易になる。
【符号の説明】
【0045】
1 戸袋
2 扉
3 戸袋カバー
4 戸袋側テーパガイド
5 扉側テーパガイド
6 ばね受け
7 圧縮ばね
8 ばね受け
9 伸張ばね
10 ばね受け
11 圧縮ばね
12 上側ローラガイド
13 上側レール
14 下側ローラガイド
15 下側レール
16 戸袋側テーパガイド
17 扉側テーパガイド
18 ばね受け
19 圧縮ばね
20 戸袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に開口が設けられた戸袋と、
前記戸袋内を進退移動可能で前記開口を通じて前記戸袋を出入りすることで開閉する扉と、
前記扉の全閉時に前記扉の前記戸袋内に留まる部分に設けられ傾斜面を有する嵌入部と、
前記戸袋内に設けられ前記扉の全閉時に前記嵌入部の傾斜面と面接触する傾斜面を有する嵌受部と、
を備えた可動ホーム柵。
【請求項2】
前記嵌入部は、前記扉の開閉方向に伸縮する弾性体を介して前記扉に接続された請求項1に記載の可動ホーム柵。
【請求項3】
前記嵌受部は、前記扉の開閉方向に伸縮する弾性体を介して前記戸袋に接続された請求項1に記載の可動ホーム柵。
【請求項4】
前記嵌入部及び嵌受部の傾斜面の摩擦係数は摺動面の摩擦係数より大きいことを特徴とする請求項2又は3に記載の可動ホーム柵。
【請求項5】
一端に開口が設けられた戸袋と、
前記戸袋内を進退移動可能で前記開口を通じて前記戸袋を出入りすることで開閉する扉と、
前記扉の全閉時に前記扉の前記戸袋内に留まる部分の線路側面に設けられ傾斜面を有する第1の嵌入部と、
前記戸袋内の線路側の内面に設けられ前記扉の全閉時に前記第1の嵌入部の傾斜面と面接触する傾斜面を有する第1の嵌受部と、
前記扉の全閉時に前記扉の前記戸袋内に留まる部分のプラットホーム側面に設けられ傾斜面を有する第2の嵌入部と、
前記戸袋内のプラットホーム側の内面に設けられ前記扉の全閉時に前記第2の嵌入部の傾斜面と面接触する傾斜面を有する第2の嵌受部とを備えた可動ホーム柵。
【請求項6】
前記第1及び第2の嵌入部は、扉開閉方向に伸縮する弾性体を介して前記扉に接続された請求項5に記載の可動ホーム柵。
【請求項7】
前記第1及び第2の嵌受部は、扉開閉方向に伸縮する弾性体を介して前記戸袋に接続された請求項5に記載の可動ホーム柵。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−140047(P2012−140047A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292341(P2010−292341)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】