説明

可動体用異物検出装置

【課題】可動体の移動方向にある異物を安価にかつ確実に検出する。
【解決手段】スライドドア3の閉側縁部に上下に並べて2つの物体検出センサ4・5を設け、各センサのセンサ出力を判別用差分回路10に入力し、両センサ出力の差分となる判別用差分回路の出力Vcを判定回路11に入力する。判定回路11では出力Vcが閾値Vd以上になったら異物があると判定する。これにより、距離センサを設けることなく可動体の移動方向にある異物を識別することができ、可動体に用いられる異物検出装置を簡単な構成により低廉化し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動体の可動方向に異物がある場合にその検出を行うための可動体用異物検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
可動体の可動方向に異物がある場合として例えばドアの閉方向に異物がある場合には、全閉時にドアにより異物が挟み込まれてしまう。そのような挟み込みを防止するために、従来、挟み込み検出装置を設けた技術がある。例えば自動ドアにおいて、物理的な接触を検出するものでは挟み込んだ物に対する損傷が懸念されるため、挟み込みが発生する前に挟み込み位置にある物体を未然に検出する非接触式のセンサ(静電容量型センサ等)を用いたものがある。
【特許文献1】WO98/18710公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した特許文献1の挟み込み検出装置にあっては、ドアの先端部の全長に渡って1つのセンサ(静電容量型センサの検出部)を設けており、閉め切り直前での検出は挟み込んでしまう物体なのか相対するドアなのか区別できない。そのため、閉め切り直前でのドア位置を検出するドア位置センサ(リミットスイッチ等)を設け、ドア位置センサにより両ドアが所定の接近範囲内に入ったことを検出したら挟み込み検出を行わずに全閉にしている。
【0004】
一方、開閉体の自動開閉装置にあっては、上記両開きドアに限らず、例えば自動車における自動スライドドアにおいても、その全閉位置に対する直近において挟み込みが生じるような小さな物体を検出できることが好ましい。そのための一手法として、上記構造の挟み込み検出装置を用いる場合には、相対的に接近する接近体(上記の場合には相対するドア)との距離を検出する距離センサを設け、距離センサによる接近体までの距離と挟み込み検出センサによる挟み込み検出との関係において矛盾が無ければ、挟み込み検出状態であっても閉め切っても良いと判断できる。
【0005】
しかしながら、距離センサは高価であり、上記組み合わせによる判断に対する制御も複雑化するなど、装置が高騰化するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決して、可動体の移動方向にある異物を安価にかつ確実に検出することを実現するために本発明に於いては、物体までの距離が近いほど出力が増大する物体検出センサを前記可動体と前記可動体に対して相対的に接近する接近体との少なくともいずれか一方の縁に複数並べて設けると共に、前記複数の物体検出センサの少なくとも1つの出力信号と他のいずれか1つの出力信号とを比較し、その比較値が所定の閾値以上であるか否かを検出する比較検出手段を設け、前記比較値が所定の閾値以上の場合には前記可動体と前記接近体との間に異物があると判定するものとした。また、前記比較値は出力信号の差分を用いるものとした。特に、前記物体検出センサが静電容量型センサであると良い。
【発明の効果】
【0007】
このように本発明によれば、複数の物体検出センサを設けたことから、例えば可動体としての開閉体における全閉位置にある柱や壁に対しては全ての物体検出センサが略同一のセンサ出力となり得るのに対して、何らかの異物が一部に位置している場合にはセンサから異物までの距離が短くなるため、その異物に対応するセンサの出力が他のセンサの出力に対して大きくなり、その比較値から異物を検出し得る。その場合、比較値に対して異物であると判断し得る所定の閾値を設定し、比較値が閾値以上になった場合には異物があると判断することができる。これにより、距離センサを設けることなく可動体の移動方向にある異物を識別することができ、可動体に用いられる異物検出装置を簡単な構成により低廉化し得る。なお、前記比較値を出力信号の差分とすることで、前記比較手段としてコンパレータを用いることができ、回路構成を簡単にすることができる。また、物体までの距離が近いほど出力が増大する物体検出センサとして静電容量型センサを用いることで、例えば超音波センサや光センサ等の指向性があるセンサを用いた場合に比べて、不感帯が少なく、より検出精度の高い異物検出装置を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は本発明が適用された自動車用スライドドアを模式的に示す部分図である。図において、車体1の側面に例えば後部座席の乗降用の開口部2が設けられており、その開口部2を開閉状態にするための可動体としてのスライドドア3が設けられている。なお、スライドドア3は、車体1に図示されないレールなどのスライド支持手段を介して車両前後方向にスライド自在に設けられている。スライドドア3の閉側縁部には図示例では2つの物体検出センサ4・5が上下に並べて設けられている。
【0009】
物体検出センサ4・5は、本図示例では、非接触式センサとして図2に示されるように互いに平行な一対の電極4a・4bにより構成された静電容量型センサである。また、両センサ4・5は、開口部2におけるスライドドア3の閉側縁部に対向する対向縁部2aの対応する部分に対してドア開閉方向に同一距離となるように配設されている。すなわち、全閉移動時には各センサ4・5により対向縁部2aの接近を検出することになり、その場合の各検出出力は互いに同一レベルとなる。
【0010】
図2に示されるように両センサ4・5による検出回路は同一の構成であって良い。図示例の回路では、スライドドア3の閉側に位置する外側電極4a・5aには発振回路6の出力端子がレギュレート回路7及び抵抗Rをこの順に介して接続され、スライドドア3の開側に位置する内側電極4b・5bは接地されている。
【0011】
各レギュレート回路7の出力端子から分岐された分岐ラインが、一対の入力ポートを有して比較手段を構成する各差分回路8a・8bのそれぞれ一方の入力ポートに基準値Vsを入力するべく接続されている。各差分回路8a・8bの他方の入力ポートにはそれぞれ波形成形回路9を介して外側電極4a・5bが接続されている。そして、各差分回路8a・8bの出力ポートが判別用差分回路10の一対の入力ポートにそれぞれ接続され、その判別用差分回路10の出力Vsが判定回路11に入力するようになっている。判定回路11の出力は図示されない開閉体制御回路に入力されるようになっている。
【0012】
このようにして構成されたセンサ回路にあっては、各差分回路8a・8bに入力する基準値Vsは一定値であるが、各外側電極4a・5aの電位を示す電極電位Va・Vbは、物体の遠近の影響を受けて接近する程低下する。その電極電位Va・Vbの変化に対応する各差分回路8a・8bの出力Vas・Vbsは、例えば開口部2の対向縁部2aとの間に一方のセンサ4では検出できないが他方のセンサ5により検出可能位置に異物12が存在していた場合には、スライドドア3と対向縁部2aとの距離応じて図3(a)に示されるように変化する。
【0013】
図3(a)に示されるように、対向縁部2aに対してスライドドア3が遠い場合には両センサ4・5の検出レベルVas・Vbsは略同一であるが、スライドドア3が全閉位置に近付くにつれて、異物12の方の接近する割合が大きくなるため、その異物12に対応する方のセンサ5の検出レベルが高くなる。
【0014】
したがって、両センサ4・5の検出レベルの比較値(差分)に対応する判別用差分回路10の出力である差分出力Vcを表す図3(b)に示されるように、スライドドア3の全閉動作時に片方のセンサ5で検出できる位置に異物12が存在する場合にはスライドドア3が全閉位置に近付くに連れて判別出力Vcが増大する。例えば確実に異物であると判定して良いレベルとなる所定の閾値Vdを設定し、判定回路11にて判別出力Vcが閾値Vd以上になったことを検出した場合にはスライドドア3と対向縁部2aとの間に異物12が存在すると判定する。この判定結果を受けて図示されない開閉体制御回路ではスライドドア3を停止かつ反転させる処理を行うことにより、挟み込みを事前に回避することができる。
【0015】
異物が存在しない場合には、両センサ4・5は対向縁部2aの各対応する部分に対して互いに同一距離のまま近付くため、差分出力Vcは図3(b)の想像線に示されるように距離Lの遠近にかかわらず常に一定(=0)となる。
【0016】
このように、距離センサを設けるなどの複雑な構成とすることなく、物体検出センサを複数配設することにより、異物12が存在する場合にはいずれか1つのセンサの検出出力が他のものと異なるようになるため、その違いを検出して異物を検出することができる。なお、判別回路に入力される信号としては、上記出力信号の差分の他に、出力信号を微分した値(傾き)を用いることもできる等、様々な値を用いることができる。微分値を用いた場合、急激な変化量の検出に優れるといった効果が得られる。また、図示例ではセンサの数を2つとしたが、3つやそれ以上であっても良く、数が多いほど検出精度を高めることができる。3つ以上の場合には、例えば各センサ出力の一番大きい値と一番小さい値とを比較するようにしても良い。
【0017】
また、異物12が小さい場合には相対的にスライドドア3の閉側縁部と対向縁部2aとの距離が短くなった時に異物12との距離差が大きくなるため、閉め切り間際での異物12の検出が可能となる。したがって、全閉直前でも異物を検出することができ、高精度な異物検出が可能である。
【0018】
なお、可動体としては図示例の車両用スライドドアに限られるものではなく、例えば自動車の場合にはウィンドウやサンルーフなど、建造物にあっては出入り口のドアや窓など種々の開閉体に適用可能である。さらに工場などに設けられた自動機械における可動部の可動方向に対する異物検出としても有効である。例えば、可動方向にフェンスなどを設けておき、通常時にはフェンスに対して全センサの検出レベルが同一であり、異物が間に入った場合には上記と同様にして検出可能であり、異物による機械の損傷を防止し得る。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明にかかる可動体用異物検出装置は、簡単な構成で可動体の移動方向にある異物を検出することができ、開閉体における挟み込み検出装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明が適用された自動車用スライドドアを模式的に示す部分図である。
【図2】本は詰めに基づく異物検出装置の主要回路図である。
【図3】(a)は各センサの検出レベルを示す図であり、(b)は(a)の差分出力を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
2 開口部、2a 対向縁部
3 スライドドア
4・5 物体検出センサ
10 判別用差分回路
11 判定回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体までの距離が近いほど出力が増大する物体検出センサを前記可動体と前記可動体に対して相対的に接近する接近体との少なくともいずれか一方の縁に複数並べて設けると共に、
前記複数の物体検出センサの少なくとも1つの出力信号と他のいずれか1つの出力信号とを比較し、その比較値が所定の閾値以上であるか否かを検出する比較検出手段を設け、
前記比較値が所定の閾値以上の場合には前記可動体と前記接近体との間に異物があると判定することを特徴とする可動体用異物検出装置。
【請求項2】
前記比較値は、前記出力信号の差分であることを特徴とする請求項1に記載の可動体用異物検出装置。
【請求項3】
前記物体検出センサが静電容量型センサであることを特徴とする請求項1または2に記載の可動体用異物検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−90828(P2006−90828A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−276419(P2004−276419)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】