説明

可動容量型コンデンサ、高電圧発生法及び高電圧発生装置

【課題】コンパクトで単純な運動機構を持った、効率的な静電昇圧機構により、直流ないしパルス高電圧を得ることのできる高電圧発生方法及びその装置を提供する。
【解決手段】機械力により周期的にその静電容量を変化することで、この周期に従った高電圧パルスないし直流高電圧を発生することができる可動容量型コンデンサ、該コンデンサに高圧電源と高電圧ダイオードを組み合わせた高電圧発生装置、該高電圧発生装置を使用して高電圧を発生させる高電圧発生方法。
【効果】もとの高圧電源の数倍から数100倍の電圧の高電圧パルスないし直流高電圧を得ることができる高電圧発生装置を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動容量型コンデンサ、高電圧発生方法及びその装置に関するものであり、更に詳しくは、機械力により周期的にその静電容量を変化させることで、この周期に従った高電圧パルスないし直流電圧を発生する可動容量型コンデンサ、該可動容量型コンデンサを使用した高電圧発生方法、及びその高電圧発生装置に関するものである。
【0002】
本発明は、コンパクトで単純な機械的運動機構を持った効率的な静電昇圧機構により、直流ないしパルス高電圧を得ることができる高電圧発生手段を実現するものである。本発明は、機械的運動を利用した可動容量型コンデンサを使用して、機械力により静電容量を周期的に変化させることにより、この周期に従ったパルス状の高電圧を得ることができる高電圧発生手段を提供するとともに、高電圧を必要とする機器、例えば、荷電粒子加速装置、成膜装置等の高圧電源として使用することが可能な高電圧発生装置を提供するものである。
【背景技術】
【0003】
高エネルギーの電子ビームやイオンビームを発生するための粒子加速器や、イオン工学的手法をベースとした成膜装置等では、数キロボルト(以下、kVと略す)から数メガボルト(以下、MVと略す)の直流ないしパルス状の高電圧が必要とされる場合がある。高電圧を発生する機構は、トランスによる昇圧、倍電圧整流やコッククロフトウォルトン回路等の多段縦続整流回路、及びベルト発電機等の機械的運動を伴った静電発電機があり、これらのいくつかを組み合わせた装置が粒子加速器等の電源として用いられている(非特許文献1参照)。
【0004】
これらの高電圧発生装置として、例えば、コッククロフトウォルトン回路よりなる直流高電圧発生装置の極性切換の合理化と小型化を図った直流高電圧発生装置(特許文献1参照)や、簡単な回路構成によって任意の正負直流高電圧を発生させることができ、小型化、省電力化を達成することができる直流高電圧発生装置(特許文献2参照)が提案されている。
【0005】
また、バンデグラーフ型の粒子加速器等に用いられているベルト発電機に代表される静電発電機では、機械的運動を利用してメガボルトオーダーの高電圧を発生させている。すなわち、ベルト発電機では、絶縁ベルト上に電荷を帯電させ、ベルトの運転により、電荷を機械的な力によってより高い電位へ移動させることで高い電圧を得ることができる。
【0006】
この静電発電方式では、例えば、発生した電荷の一部しか使用しなかったり、電荷を搬送するために多大な機械的エネルギーを必要とする従来の静電発電機における欠点を、発生電荷を全て導体球に帯電させ、また、帯電した導体球を荷電吸収電極に到達させて搬送用の機械的なエネルギーを不要にさせること等により解消することが可能な静電発電方法及び装置(特許文献3、4参照)が提案されている。しかし、従来、機械力を用いた高電圧発生装置をコンパクト化することは困難であった。
【0007】
【特許文献1】特開平5−252759号公報
【特許文献2】特開2000−299987号公報
【特許文献3】特開2002−165468号公報
【特許文献4】特開2004−104864号公報
【非特許文献1】熊谷寛夫編 「加速器」 実験物理学講座28、共立出版、第6章及び7章(81〜183頁)、1982年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような状況の中で、本発明者は、上記従来技術に鑑みて、コンパクトで単純な運動機構を持った効率的な静電昇圧機構により、直流ないしパルス高電圧を発生することができる高電圧発生装置を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、可動容量型コンデンサと高電圧ダイオードを組み合わせることにより所期の目的を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明は、コンパクトで単純な運動機構を持った効率的な静電昇圧機構により、直流ないしパルス高電圧を得ることのできる高電圧発生方法及びその装置を提供することを目的とするものである。また、本発明は、機械力により周期的にその静電容量を変化することのできる可動容量型コンデンサを利用することで、機械力を用いた高電圧発生装置をよりコンパクトにすることが可能な高電圧発生装置を提供することを目的とするものである。また、本発明は、真空中で作動することが可能な高電圧発生装置として、真空中で高電圧を必要とする機器、例えば、荷電粒子加速器やイオン工学的手法を用いた成膜装置の高電圧電源として使用することができる高電圧発生装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)可動容量型のコンデンサであって、機械的運動を利用して、コンデンサの電極間の距離を制御して、コンデンサの静電容量を周期的に変化させることで、この周期に従った高電圧パルスないし直流高電圧を発生する可動容量型コンデンサ。
(2)平行平板状電極の往復運動により電極間の距離を制御して、コンデンサの静電容量を周期的に変化させる、上記(1)に記載の可変容量型コンデンサ。
(3)軸をずらした回転軸を持つ円柱状電極を、該電極に対向する電極に対して回転させることにより対向する電極間の距離を制御して、コンデンサの静電容量を、周期的に変化させる、上記(1)に記載の可動容量型コンデンサ。
(4)可動容量型コンデンサと高電圧ダイオードを組み合わせた高電圧発生機構を具備したことを特徴とする高電圧発生装置。
(5)可動容量型コンデンサが、上記(1)から(3)のいずれかに記載の可動容量型コンデンサである、上記(4)に記載の高電圧発生装置。
(6)複数の可動容量型コンデンサと高電圧ダイオードを縦列に多段に組み合わせた可動容量型多段式昇圧機構を具備した、上記(4)に記載の高電圧発生装置。
(7)周期的に静電容量が変化する可動容量型コンデンサを、その周期をずらして多段に設置した、上記(4)に記載の高電圧発生装置。
(8)高電圧発生装置が、高電圧を必要とする機器の高電圧発生部である、上記(4)に記載の高電圧発生装置。
(9)高電圧を必要とする機器が、荷電粒子加速器、又は成膜装置である、上記(8)に記載の高電圧発生装置。
(10)可動容量型コンデンサと高電圧ダイオードを組み合わせた高電圧発生機構を用いて高電圧を発生することを特徴とする高電圧発生方法。
(11)可動容量型コンデンサが、上記(1)から(3)のいずれかに記載の可動容量型コンデンサである、上記(10)に記載の高電圧発生方法。
【0011】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、可動容量型のコンデンサであって、機械的運動を利用して、コンデンサの電極間の距離を制御して、コンデンサの静電容量を周期的に変化させることで、この周期に従った高電圧パルスないし直流電圧を発生する可動容量型コンデンサの点、上記可動容量型コンデンサと高電圧ダイオードを組み合わせた高電圧発生機構を具備した高電圧発生装置の点、及び上記高電圧発生装置を使用して高電圧を発生させる高電圧発生方法の点、に特徴を有するものである。
【0012】
コンデンサは、基本的には、金属電極を対向させた構造からなり、この電極間に電圧を印可すると電圧に比例して電荷が集積される。コンデンサに電池をつなぐと、向かい合った2枚の金属板間で自由電子の移動が始まる。一方の金属板の電子は、電池の正極に引かれて電源の方に流れて行き、電池の負極から流れ出した電子は、コンデンサのもう一方の金属板に流れ込んで行く。
【0013】
このときコンデンサの正極につながれた電極は電子が不足するので正に帯電し、反対に、負極は電子が多くなるので負に帯電する。そして、電子の流れは、2枚の金属板の間の電位差が電池の電圧と一致するまで流れた後、停止し、電荷の蓄積が終了する。コンデンサの静電容量は、電極面積、電極間の距離等により決まり、静電容量(C)を増加させるには、電極面積を大きくすること、電極間を小さくすること、により達成される。
【0014】
そこで、高い耐圧を持ったコンデンサの両極に電圧Vを負荷すると、このコンデンサに、
Q=CV
という良く知られた関係で示される電荷(Q)が蓄積される。この状態で、コンデンサの両極を引き離す等の機械的力でその静電容量をC‘(<C)まで減少させると、コンデンサの両端の電位差は、
V’=Q/C’
で示される値まで上昇する。これは、機械的運動を利用した昇電圧法のひとつの形態である。
【0015】
この原理を念頭に置くと、例えば、片側が接地電位の平行平板等からなるコンデンサに電圧を負荷して電荷を蓄積した後、機械力により静電容量を周期的に変化させることにより、この周期に従ったパルス状の高電圧を得ることができる。本発明は、機械力により周期的に、その静電容量を変化させることができる可動容量型コンデンサを構築し、これに、高圧電源と高電圧ダイオードを組み合わせることにより、もとの高圧電源の数倍から数100倍の電圧の高電圧パルスないし直流高電圧を得ることを可能とする高電圧発生手段である。本発明の可動容量型コンデンサとしては、コンデンサの容量を変化させることが可能なコンデンサであれば任意のものが使用できる。
【0016】
可動容量型コンデンサを使用した高電圧発生機構を有する高電圧発生装置について説明すると、可動容量型コンデンサとしては、例えば、向かい合った二枚の金属板(電極)が空間を隔てて配置され、一方の電極は、ダイオードを介して電圧Vの電池の正極に接続され、他方の電極は接地されているものが例示される。コンデンサは、電池と同じVの電位となるが、このときの静電容量をCとすると、コンデンサの電極間の距離を増大させることで、コンデンサの静電容量は減少してCの値となる。
【0017】
そうすると、コンデンサの両極間の電位が、容量比C/C(R)に比例して変化してV=V*Rとなり、当初、Vであった電圧は、Vへと増大する。コンデンサの容量が周期的に変化するにともなって、電極間の電位が、VからVへと周期的に変化する。本発明の可変容量型コンデンサを使用して実際に電圧変化を実測した結果、パルス高電圧が発生し、電圧が−8kvから−2kvに増大した。
【0018】
本発明では、複数の可動容量型コンデンサとダイオードを縦列に組み合わせて可動容量型多段式昇圧機構を形成することができる。可動容量型コンデンサとダイオードを何段に組み合わせるかは任意であり、段数が多いほど、高電圧が得られる。一例として、平行平板方式の可動容量型コンデンサを、4段に組み合わせた例を説明すると、この高電圧発生装置は、半周期ずつずれた振動変化をする平行平板方式の可動容量型パルス高電圧発生機構を、交互に多段積み重ねた直流高電圧を発生するための装置である。
【0019】
一組の可動容量型コンデンサとダイオードが縦列に4段接合され、C〜Cの4個のコンデンサとダイオードから構成される。各コンデンサは、電極間の距離の変化に応じて、その静電容量がC〜Cに変化し、一つおきのコンデンサが同時に同じ静電容量となるように制御される。また、最終段の可動容量型コンデンサは、ダイオードを介して固定の静電容量Cを持つ最終電極に接続される。この可動容量型多段式昇圧機構による高電圧の発生は、次の過程を経て行われる。
【0020】
まず、初期段階で、可動容量型コンデンサに、電源から電圧Vが印加され、全てのコンデンサはVに帯電する。このとき、C、Cのコンデンサの静電容量がCとなり、C、C、のコンデンサの静電容量がCとなるように設定されている。ただし、C>Cである。この結果、CとCのコンデンサにはQ=C*Vの電荷が、また、CとCのコンデンサにはQ=C*Vの電荷が、更に、最終電極にはQ=C*Vの電荷が蓄積される。
【0021】
次に、極板間の距離を制御することにより、C〜Cのコンデンサの静電容量を変化させる。CとCの容量をC〜Cに減少させ、CとCの容量をC〜Cに増加させると、CとCのコンデンサに蓄積された電荷の一部が、それぞれ、CとCに移動するが、全体としての電圧Vは変化しない。
【0022】
更に極板間の距離を制御し、初期状態にもどすと、電荷の移動はダイオードにより次のようになる。コンデンサCの容量はC〜Cに増加し、電源から電荷が供給される。また、Cの電荷の一部がCに移動するが、この電圧もVである。一方、Cの容量はC〜Cに減少し、蓄積された電荷の一部が最終電極に移動する。最終電極の容量は固定されているため、結果的に両電極の電圧はV=V*(C+C)/(C+C)に上昇する。試みに、C=C=2Cと仮定して計算すると、V=1.33*Vとなる。
【0023】
更に次のステップに移行すると、CとCに蓄積された電荷が、各々CとCに移動し、上記と同様の考察から、V=V=V、V=V=1.11*V、V=1.33*Vとなる。このように、一連のコンデンサの容量を変化させることにより、電荷は最終電極の方向に逐次移動し、段階的に電圧を上昇させることが可能となる。n段の昇圧機構により最終的に得られる電圧Vは、V=V*Rで表すことができる。
【0024】
他の可動容量のコンデンサを使用した高電圧発生装置として、軸をずらした回転軸を持つ複数の円柱の回転により、静電容量を周期的に高速で変化させた多段式可動容量型コンデンサと、これを用いた多段式直流高電圧発生機構が例示される。この機構により、高い周波数の容量変化での可動が可能となり、効率的な昇電圧が実現できる。
【0025】
本発明の高電圧発生装置は、直流高電圧、及びパルス高電圧を発生することができるため、例えば、高エネルギーの電子ビームやイオンビームを発生するための粒子加速器やイオン工学的手法をベースとした成膜装置等の真空装置の高電圧電源として好適に用いることができる。また、本発明の高電圧発生装置はコンパクトであるため、これを電源装置として使用した粒子加速器等の機器類をコンパクトに構築することができる。
【0026】
更に、本発明の高電圧発生装置は、例えば、10−4Pa以下の高真空場で作動することから、粒子加速器等の真空チャンバー内に設置して、チャンバー内の真空場を絶縁体として利用することが可能となる。真空チャンバー内の電源装置から粒子加速器等の機器に高電圧を供給すると、絶縁ケーブルやコネクター等多くの部品が省略でき、装置全体の大幅な低コスト化がもたらされる。これらの機器としては、その作動にあたり、高電圧及び高真空を必要とする任意の機器、例えば、電子線照射装置、イオン蒸着装置、質量分析器、荷電粒子加速器、等が例示される。
【0027】
従来、機械的運動を伴った静電発電機は種々開発されているが、従来の装置では、装置のコンパクト化と真空中での使用により直流ないしパルス高電圧を効率良く低コストで発生させることを実現させることは困難であった。これに対して、本発明では、機械力により周期的にその静電容量を変化させることで、この周期に従った高電圧パルスないし直流高電圧を発生することが可能な可動容量型コンデンサ、該可動容量型コンデンサを使用した高電圧発生方法、その高電圧発生装置を提供することが可能であり、コンパクトで単純な機械運動機構を持った効率的な静電昇圧機構により、直流ないしパルス高電圧を得ることのできる高電圧発生装置を実現することができる。また、本発明では、高電圧発生装置自体のコンパクト化と、それに伴う低コスト化を実現することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)機械力を用いた高電圧発生装置をよりコンパクトにすることが可能となる。
(2)コンデンサの静電容量を周期的に変化させることにより高電圧を周期的に発生することが可能な高電圧発生装置を提供することができる。
(3)可動容量型コンデンサに、高圧電源と高電圧ダイオードを組み合わせることにより、もとの高圧電源の数倍から数100倍の電圧の高電圧パルスないし直流高電圧を得ることができる。
(4)本手法による高電圧発生は、真空中で行うことも可能であることから、真空中で高電圧を必要とする機器、例えば、荷電粒子加速器やイオン工学的手法を用いた成膜装置等の大幅なコストダウンが実現できる。
(5)コンパクトで単純な運動機構を持った効率的な静電昇圧機構により、直流ないしパルス高電圧を得ることができる装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0030】
本実施例では、数pFから100pF程度の振幅で、数十Hz〜1000kHz程度で静電容量が振動する可動容量型コンデンサを用意し、これに数kV〜数十kVの直流高圧電源1台と、数十kVの耐圧を持つ複数のダイオードを組み合わせて使用し、周期的に変化する平行平板を用いた可動容量型パルス高電圧発生装置を構築した。これにより、直流高電圧電源の数倍から数十倍の電圧を持つ高電圧パルス電源、あるいは直流高圧電源として稼働することができることが分かった。
【0031】
この装置では、その構造は、支点で可動可能に支えられている長尺棒の一端を、回転円盤に軸をずらして支持させ、他端をコンデンサの一方の電極に結合させた機構を用いて、円盤をモーターにより回転させることで、長尺棒端の回転運動を、支点を介してコンデンサ電極の上下運動に変換し、コンデンサの両電極間の距離を変化させて、コンデンサの静電容量を変化させた。容量の減少/増大による容量比をR=C/Cとすると、発生電圧はV=V*Rで示される。本実施例で試作した平行平板方式の可動容量型パルス高電圧発生装置と、これによって測定したパルス高電圧の測定結果を図2に示した。
【実施例2】
【0032】
本実施例では、半周期ずつずれた振動変化をする平行平板方式の可動容量型パルス高電圧発生機構を交互に多段に積み重ねることにより、直流高電圧を発生するための装置を構築した。この可動型多段式昇圧機構の概念図を図3に示した。この装置では、静電容量比をR=C/Cとすると、発生電圧は、V=V*Rであり、発生電圧の飛躍的向上がもたらされることが分かった。
【実施例3】
【0033】
軸をずらした回転軸を持つ円柱の回転により静電容量を周期的に高速で変化させる多段式可動容量型コンデンサにより直流高電圧を発生するための高電圧発生装置を構築した。この多段式直流高電圧発生装置の概念図を図4に示した。本装置により、より高い周波の容量変化での稼働が可能となり、効率的な昇電圧が実現されることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上詳述したように、本発明は、高電圧発生方法及び高電圧発生装置に係るものであり、本発明により、機械力により周期的にその静電容量を変化させることで、この周期に従った高電圧パルスないし直流高電圧を発生することができる可動容量型コンデンサ、該可動容量型コンデンサを使用した高電圧発生方法、及びその高電圧発生装置を提供することができる。また、本発明により、上記可動容量型コンデンサを使用することで、今まで実現が困難であった、コンパクトな高電圧発生装置を提供することが可能である。また、本発明では、上記可動容量型コンデンサに高圧電源と高電圧ダイオードを組み合わせることにより、もとの高圧電源の数倍から数100倍の電圧の高電圧パルスないし直流高電圧を得ることができる高圧発生手段に関する新技術・新製品を提供することができる。
【0035】
また、本発明の高電圧発生装置を、数kVないし数MVの高電圧を必要とするイオン加速器やイオン工学をベースとした成膜装置等の高圧電源として採用することにより、装置自身のコンパクト化とそれに伴うコストダウンを実現することができる。更に、本発明は、コンパクトで単純な運動機構を持った効率的な静電昇圧機構により、直流ないしパルス高電圧を得ることができる高電圧発生装置を実現するものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】可動容量型コンデンサによるパルス高電圧の発生機構、及びコンデンサの容量変化と発生電位の時間的変化を示す。
【図2】発生したパルス高電圧の測定結果、及び高電圧発生装置を示す。
【図3】平行平板方式による可動容量型多段式昇圧機構により直流高電圧を発生するための装置の概念図を示す。
【図4】回転式可動容量型コンデンサによる多段式直流高電圧発生装置による直流電圧を発生させるための装置の概念図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動容量型のコンデンサであって、機械的運動を利用して、コンデンサの電極間の距離を制御して、コンデンサの静電容量を周期的に変化させることで、この周期に従った高電圧パルスないし直流高電圧を発生することを特徴とする可動容量型コンデンサ。
【請求項2】
平行平板状電極の往復運動により電極間の距離を制御して、コンデンサの静電容量を周期的に変化させる、請求項1に記載の可変容量型コンデンサ。
【請求項3】
軸をずらした回転軸を持つ円柱状電極を、該電極に対向する電極に対して回転させることにより対向する電極間の距離を制御して、コンデンサの静電容量を、周期的に変化させる、請求項1に記載の可動容量型コンデンサ。
【請求項4】
可動容量型コンデンサと高電圧ダイオードを組み合わせた高電圧発生機構を具備したことを特徴とする高電圧発生装置。
【請求項5】
可動容量型コンデンサが、請求項1から3のいずれかに記載の可動容量型コンデンサである、請求項4に記載の高電圧発生装置。
【請求項6】
複数の可動容量型コンデンサと高電圧ダイオードを縦列に多段に組み合わせた可動容量型多段式昇圧機構を具備した、請求項4に記載の高電圧発生装置。
【請求項7】
周期的に静電容量が変化する可動容量型コンデンサを、その周期をずらして多段に設置した、請求項4に記載の高電圧発生装置。
【請求項8】
高電圧発生装置が、高電圧を必要とする機器の高電圧発生部である、請求項4に記載の高電圧発生装置。
【請求項9】
高電圧を必要とする機器が、荷電粒子加速器、又は成膜装置である、請求項8に記載の高電圧発生装置。
【請求項10】
可動容量型コンデンサと高電圧ダイオードを組み合わせた高電圧発生機構を用いて高電圧を発生することを特徴とする高電圧発生方法。
【請求項11】
可動容量型コンデンサが、請求項1から3のいずれかに記載の可動容量型コンデンサである、請求項10に記載の高電圧発生方法。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−159358(P2007−159358A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−354734(P2005−354734)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】