説明

可動式手摺

【課題】通常は回動手摺バーを略水平姿勢に安定保持することができ、健常者、車椅子使用者のいずれもが容易に回動手摺バーの回動操作を行って手摺を通過可能な状態に移行させることができる可動式手摺を提供する。
【解決手段】可動式手摺10を構成する回動手摺バー11の片端に設けられた回動ジョイント12は第一固定手摺バー14に取り付けられた第一支持ジョイント16に回動可能に枢支され、掛止ジョイント13は第二固定手摺バー17に取り付けられた第二支持ジョイント15に着脱可能に連結されている。回動ジョイント12は、第一支持ジョイント16に対し、鉛直方向及び水平方向へ回動可能に枢支されているため、第二支持ジョイント15から離脱させた掛止ジョイント13を、第二支持ジョイント15の側方を通過させることにより、回動手摺バー11が第二支持ジョイント15より下方へ回動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者や歩行障害者などの歩行移動を助けるために一般住宅などの建築物の敷地内に設置される可動式手摺に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者や歩行障害者などが歩行移動する場合に身体を支える手段として、一般住宅などの建築物の敷地内(例えば、門と玄関との間の部分など)や建築物内に手摺が設置されることがある。従来の手摺は、歩行者が手で把握可能な棒状の手摺バーと、これを略水平状態に保つための支柱などの保持手段と、を備えたものが主流である。ところが、手摺が設置された場所において、使用者が手摺バーを横切る方向に移動したいとき、手摺バーが通過の妨げとなることがある。そこで、一方の端部を支点にして起立する方向に回動可能な手摺バーを有する可動式手摺が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1記載の可動式手摺は、通常状態では、回動手摺バーの回動端部がジョイントに連結支持されて建築物の出入口などを横断する姿勢が維持される一方、使用者が出入口などを通過する際には、回動手摺バーの回動端部を持ち上げてジョイントから離脱させ、支端部を中心に上方に回動させると、通過の妨げとならないように、回動手摺バーが起立状態となる。
【0004】
【特許文献1】特開2005−68811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の可動式手摺の場合、健常者は回動手摺バーの回動、起立操作を比較的容易に行うことができるが、車椅子使用者が同様の操作をしようとすると、車椅子に着座した状態から身体を大きく伸ばさなければならないので、肉体的負担が大きく、不便である。また、回動手摺バーが水平姿勢に維持された状態で使用者が回動手摺バーに体重を加えたときに、回動手摺バーが不意に下方へ回動するのを防止するため、回動手摺バーの回動端部と連結するジョイントは、当該回動端部を下方から支持する構造となっている。従って、回動手摺バーの回動端部をジョイントから離脱させ、下方へ回動させることもできない。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、通常は回動手摺バーを略水平姿勢に安定保持することができ、健常者、車椅子使用者のいずれもが容易に回動手摺バーの回動操作を行って手摺を通過可能な状態に移行させることができる可動式手摺を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の可動式手摺は以下の構成を特徴とする。先ず、第1の発明は、使用者が把持可能な棒状の回動手摺バーを有し、前記回動手摺バーは片端を中心として鉛直方向へ回動可能であるとともに、他端が支持されて略水平姿勢を維持する可動式手摺において、
前記回動手摺バーの片端に設けられた回動ジョイントと、前記回動ジョイントを枢支する第一支持ジョイントと、
前記回動手摺バーの他端に設けられた掛止ジョイントと、前記掛止ジョイントと着脱可能に連結して下方より支持し、前記回動手摺バーを略水平姿勢に維持する第二支持ジョイントと、を備え、
前記第一支持ジョイントに対し前記回動ジョイントが鉛直方向及び水平方向へ回動可能に枢支されることで、前記第二支持ジョイントから離脱させた前記掛止ジョイントを前記第二支持ジョイントの側方を通過させ、前記回動手摺バーが前記第二支持ジョイントより下方へ回動可能であることを特徴とする。
【0008】
このような構成とすれば、掛止ジョイントが第二支持ジョイントと干渉しない位置に至るまで回動手摺バーを水平方向に回動させ、さらに、そこから掛止ジョイントを第二支持ジョイントの側方を通過させ、回動手摺バーを第二支持ジョイントよりも下方へ回動させることができる。従って、車椅子使用者等であっても、身体を伸ばして回動手摺バーを上方に回動させて起立させることなく、容易に通過することができる。
【0009】
即ち、回動手摺バーを水平にした状態では、使用者が回動手摺バーに体重を加えたときに、回動手摺バーが不意に下方へ回動しないように掛止ジョイントが第二支持ジョイントと連結して下方より支持され、回動手摺バーの水平姿勢が確実に維持されるとともに、使用者の通過時には、回動手摺バーを容易に第二支持ジョイントより下方へ回動させることができる。
【0010】
次に、第2の発明は、前記第一支持ジョイント、前記回動ジョイントの一方に回動軸が保持され、他方に前記回動軸が挿通された状態で水平方向に傾斜可能な挿通孔を形成し、前記回動ジョイントは前記回動軸を中心にして鉛直方向に回動可能であるとともに、前記挿通孔内での前記回動軸の傾斜により水平方向に回動可能であることを特徴とする。
【0011】
前記第1の発明において、回動手摺バーを第二支持ジョイントより下方に回動させるためには、回動ジョイントが第一支持ジョイントに対し、鉛直方向及び水平方向の計2方向に回動可能に構成する必要がある。そこで、第2の発明では、回動軸が挿通された状態で水平方向に傾斜可能な挿通孔に回動軸を挿通させることにより、回動軸を中心とする鉛直方向の回動と、挿通孔に対し回動軸を傾斜させる水平方向の回動との合計2方向に回動可能な構成としている。
【0012】
ここで、挿通孔に対し回動軸が傾斜できる範囲は挿通孔の左右両側の開口端の水平方向の内径により限定される。しかしながら、第2の発明では、掛止ジョイントが第二支持ジョイントと干渉せず、掛止ジョイントが第二支持ジョイントの側方を通過できる程度に回動手摺バーを水平方向に回動できればよい。従って、挿通孔に対し回動軸を傾斜させることにより回動手摺バーを水平方向に回動可能とすれば、鉛直方向には回動軸を中心として広範囲に回動させることができる。
【0013】
次に、第3の発明は、前記挿通孔を、前記第一支持ジョイントから前記第二支持ジョイントに向かう方向に拡径した長孔状に形成したことを特徴とする。
【0014】
このような構成とすれば、第一支持ジョイントから第二支持ジョイントに向かう方向に拡径した長孔状の挿通孔に回動軸を挿通させることにより、回動軸周りの回動によって回動手摺バーを鉛直方向に回動させることが可能となるとともに、挿通孔内において当該挿通孔に対し回動軸を傾斜させる回動によって回動手摺バーを水平方向に回動させることが可能となる。
【0015】
次に、第4の発明は、前記第一支持ジョイント、前記回動ジョイントのうち、前記回動軸を保持する一方には一対の挟持片が間隙を挟んで突出形成され、他方には前記間隙より幅が小さく、かつ前記間隙に挿入される挿入片が突出形成され、
前記回動軸が前記間隙を跨いで前記一対の挟持片に両端部を保持され、前記挿通孔が前記挿入片に形成されたことを特徴とする。
【0016】
前記第4の発明においては、挿入片は間隙内で傾斜できるよう、その幅が間隙の幅より小さく形成されている。これにより、挿入片に形成された挿通孔に対し回動軸が傾斜可能に構成されており、第一支持ジョイントに対する回動ジョイントの水平方向への回動を可能にしている。また、挿通孔が形成された挿入片は、その両側が挟持片で覆われるため、回動軸と挿通孔との間に使用者が手指等を挟みこんでしまうといった事態を防止することができる。
【0017】
次に、第5の発明は、前記掛止ジョイントと前記第二支持ジョイントとが連結された状態において、前記挿通孔に対する前記回動軸の傾斜を規制する傾斜規制手段を設けたことを特徴とする。
【0018】
挿入片の幅を、一対の挟持片の間隙の幅より小さく形成すると、回動手摺バーに力が加えられたとき、回動軸が挿通孔に対し傾斜し、回動手摺バーにガタつきが生じ使用感が悪化してしまう。そこで、第5の発明では、掛止ジョイントと第二支持ジョイントとを連結して可動式手摺を使用する状態において、挿通孔に対する回動軸の傾斜を規制することにより、回動手摺バーのガタつきを防止することができる。
【0019】
次に、第6の発明は、前記傾斜規制手段に、前記回動手摺バーをその軸方向に沿って前記第一支持ジョイントから離れる方向に移動させると前記挿通孔に対する前記回動軸の傾斜の規制が解除される解除機構を設けたことを特徴とする。
【0020】
このような構成とすれば、使用者は、把持した回動手摺バーを、その軸方向に沿って第一支持ジョイントから離れるように引っ張ることにより、挿通孔に対する回動軸の傾斜の規制を解除することができるため、回動手摺バーを水平姿勢から鉛直下方へ回動させる操作を片手で行うことが可能となる。
【0021】
次に、第7の発明は、前記傾斜規制手段は、前記挿入片の一部に形成され、その幅が前記間隙の幅と等しく設定された拡幅部であって、前記拡幅部が前記挟持片と嵌合することにより、前記挿通孔に対する前記回動軸の傾斜を規制することを特徴とする。
【0022】
このような構成とすれば、拡幅部が挟持片と嵌合することにより、挿通孔に対する回動軸の傾斜を規制し、回動手摺バーのガタつきを防止することが可能となる。また、この嵌合は、一対の挟持片の間隙内で行われるため、使用者が拡幅部と挟持片との間に手指等を挟みこんでしまうといった事態を防止することができる。
【0023】
次に、第8の発明は、前記傾斜規制手段は、前記第一支持ジョイントに凹設された第一規制凹部と、前記回動ジョイントに凹設された第二規制凹部を有し、前記挟持片の先端部が前記第一規制凹部と嵌合し、前記挿入片の先端部が前記第二規制凹部と嵌合することにより、前記挿通孔に対する前記回動軸の傾斜が規制されることを特徴とする。
【0024】
このような構成とすれば、第一規制凹部、第二規制凹部のそれぞれに対し、挟持片、挿入片それぞれの先端部がそれぞれ嵌合することにより、大きく離れた2つの嵌合部分によって挿通孔に対する回動軸の傾斜を規制するため、さらに強固に挿通孔に対する回動軸の傾斜を規制し、回動手摺バーのガタつきを防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、通常は回動手摺バーを略水平姿勢に安定保持することができ、健常者、車椅子使用者のいずれもが容易に回動手摺バーの回動操作を行って手摺を通過可能な状態に移行させることができる可動式手摺を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図1〜図9に基づいて、本発明の実施の形態である可動式手摺10について説明する。図1に示すように、可動式手摺10は、使用者(図示せず)が把持可能な棒状の回動手摺バー11を有し、この回動手摺バー11は、片端に設けられた回動ジョイント12を中心として鉛直方向へ回動可能であるとともに、他端に設けられた掛止ジョイント13が第二支持ジョイント15で支持されることによって略水平姿勢を維持する。回動ジョイント12は第一固定手摺バー14に取り付けられた第一支持ジョイント16に回動可能に枢支され、掛止ジョイント13は第二固定手摺バー17に取り付けられた第二支持ジョイント15に着脱可能に連結して下方から支持され、これによって回動手摺バー11が略水平姿勢に維持されている。第一固定手摺バー14及び第二固定手摺バー17はそれぞれ、設置面に立設された支柱18,19によって水平姿勢に保たれている。
【0027】
回動ジョイント12は、後述する枢支機構を介して、第一支持ジョイント16に対し、鉛直方向及び水平方向へ回動可能に枢支されているため、第二支持ジョイント15から離脱させた掛止ジョイント13を第二支持ジョイント15の側方を通過させることにより、回動手摺バー11が第二支持ジョイント15よりも下方へ回動可能である。なお、可動式手摺10は、第一固定手摺バー14及び第二固定手摺バー17方向にそれぞれ延設された長尺の手摺の一部に設けることができるが、これに限定しないので、可動式手摺10単独で設置することもできる。
【0028】
ここで、図2に基づいて、前述した回動手摺バー11を第二支持ジョイント15よりも下方へ回動させる際の操作手順について説明する。まず、図2(a)に示すように、回動手摺バー11を上方へ持ち上げ、掛止ジョイント13を第二支持ジョイント15から離脱させる。次に、図2(b)に示すように、回動手摺バー11をその軸方向に沿って第一支持ジョイント16から離れる方向11aに引っ張ると、後述する傾斜規制手段が解除されるので、図2(c)に示すように、回動手摺バー11は水平方向11hへ回動させることができる。この後、図2(d)に示すように、水平方向11hへ回動させた状態の回動手摺バー11をそのまま下方へ回動させれば、掛止ジョイント13は第二支持ジョイント15の側方を通過可能であるため、図2(e)に示すように、回動手摺バー11は第二支持ジョイント15より下方へ回動させることができる。
【0029】
次に、図3〜図6に基づいて、可動式手摺10の構造、機能などについて詳しく説明する。図3に示すように、第一固定手摺バー14はステンレス管14bの外周面を塩化ビニル製の被覆管14aで被覆した構造であり、その開口部14cに装着された継手20を介して第一支持ジョイント16が取り付けられている。継手20は、第一固定手摺バー14内に装入されるブッシュ21と、ブッシュ21と継手20との間に配置される座金22と、バネ座金23、継手20及び座金22を軸心方向に貫通してブッシュ21に螺合されたボルト24によって第一固定手摺バー14の開口部14cに固定される。
【0030】
座金22は、円板状の本体部22cの外周から放射状に延設された複数の係止片22a,22bをそれぞれ本体部22cの表裏方向に交互に折り曲げた形状である。本体部22cの裏面方向に折り曲げられた複数の係止片22bをブッシュ21の外周に係合させ、表面方向に折り曲げられた複数の係止片22aを継手20の基端部20bに係合させた状態でボルト24をブッシュ21に螺合させ、この状態で、ブッシュ21、座金22及び継手20の基端部20bを第一固定手摺バー14の開口部14cに装入する。
【0031】
この後、ボルト24を締め付け方向に回転させると、ブッシュ21が継手20に接近するのに伴って、座金22裏側の係止片22bがブッシュ21外周と第一固定手摺バー14内周との隙間に嵌入されるとともに、座金22表側の係止片22aが継手20の基端部20b外周と第一固定手摺バー14内周との隙間に嵌入されていくため、継手20はその係合部20aが第一固定手摺バー14の開口部14cから突出した状態で固定される。最後に、係合部20aに第一支持ジョイント16を装着し、その側面から係合部20a外周に向かって止めネジ25を螺着させると、第一支持ジョイント16が係合部20aに固定される。
【0032】
なお、回動手摺バー11に対する回動ジョイント12及び掛止ジョイント13の取付構造と、第二固定手摺バー17に対する第二支持ジョイント15の取付構造は、前述した第一固定手摺バー14に対する第一支持ジョイント16の取付構造と同様であるので、各部材に同符号を付して説明を省略する。
【0033】
図3に示すように、回動手摺バー11の基端側に取り付けられる回動ジョイント12には一対の挟持片12a,12aが間隙12bを挟んで突出形成され、第一支持ジョイント16には間隙12bより幅16bが小さく且つ間隙12bに挿入される挿入片16aが突出形成されている。挿入片16aには、第一支持ジョイント16から第二支持ジョイント15に向かう方向に拡径した長孔状の挿通孔16cが形成されている。回動ジョイント12の回動軸26は、間隙12bを跨いだ状態で、一対の挟持片12a,12aに両端を保持され、先端側に離脱防止用の止め輪27が取り付けられている。第一支持ジョイント16の挿入片16aには、その幅が挟持片12a,12aの間隙12bと等しく設定された拡幅部16d,16eが、挿通孔16cを挟んで設けられている。
【0034】
図4に示すように、回動手摺バー11の先端側に取り付けられる掛止ジョイント13には掛止片13aが突出形成され、第二固定手摺バー17に取り付けられる第二支持ジョイント15には、その上面側から掛止ジョイント13が着脱可能な支持凹部15aが設けられている。支持凹部15aには、掛止片13aを下方から支えるための支持底部15b(図5参照)が設けられている。
【0035】
図1(a)に示すように、可動式手摺10の回動手摺バー11が略水平姿勢に維持されているとき、回動手摺バー11の先端側に設けられた掛止ジョイント13と第二支持ジョイント15とは図5に示す連結状態にあり、回動手摺バー11の基端側に設けられた回動ジョイント12と第一支持ジョイント16とは図6に示す状態にある。即ち、回動手摺バー11が略水平状態にあるとき、使用者が回動手摺バー11に体重を加えた際に、回動手摺バー11が不意に下方に回動するのを防止するため、図5に示すように、掛止ジョイント13の掛止片13aが第二支持ジョイント15の支持凹部15aの支持底部15bによって下方より支持されている。
【0036】
また、図1(a)に示すように、可動式手摺10の回動手摺バー11が略水平姿勢に維持されているとき、回動ジョイント12の回動軸26は、図6に示すように、第一支持ジョイント16の挿通孔16c内の第一固定手摺バー14寄りに位置するとともに、挿入片16aの拡幅部16d,16eが挟持片12a,12aに嵌合している。これにより、挿通孔16cに対する回動軸26の傾斜が規制され、回動手摺バー11のガタつきを防止することができる。また、拡幅部16d,16eと挟持片12a,12aとの嵌合は、一対の挟持片12a,12aの間隙12b内で行われるため、使用者が、拡幅部16d,16eと、挟持片12a,12aと、の間に手指などを挟み込むような事態を回避することができる。
【0037】
次に、図1(b)及び図2(a)に示すように、回動手摺バー11の先端側を上方へ持ち上げ、掛止ジョイント13を第二支持ジョイント15から離脱させ、図2(b)に示すように、回動手摺バー11をその軸方向に沿って第一支持ジョイント16から離れる方向11aに引っ張ると、第一支持ジョイント16及び回動ジョイント12は図7に示す状態となる。即ち、回動ジョイント12が第一支持ジョイント16から離れることにより、挿入片16aの拡幅部16d,16eと挟持片12a,12aとの嵌合が解消されるため、回動軸26の傾斜規制手段が解除される。従って、図2(c)及び図8に示すように、回動手摺バー11は水平方向11hへ回動させることができる。
【0038】
この後、図2(d)及び図9に示すように、水平方向11hへ回動させた状態の回動手摺バー11をそのまま下方へ回動させれば、掛止ジョイント13は第二支持ジョイント15の側方をすれ違うようにして通過させることができる。従って、図2(e)に示すように、回動手摺バー11は第二支持ジョイント15より下方へ回動させることができる。
【0039】
このように、可動式手摺10においては、掛止ジョイント13が第二支持ジョイント15と干渉しない位置に至るまで回動手摺バー11を水平方向に回動させた後、そこから掛止ジョイント13を第二支持ジョイント15の側方を通過させ、回動手摺バー11を第二支持ジョイント15よりも下方へ回動させることができる。従って、車椅子使用者等であっても、身体を伸ばして回動手摺バー11を上方に回動させて起立させることなく、容易に通過することができる。
【0040】
即ち、回動手摺バー11を水平にした状態では、使用者が回動手摺バー11に体重を加えたときに、回動手摺バー11が不意に下方へ回動しないように掛止ジョイント13が第二支持ジョイント15と連結して下方より支持され、回動手摺バー11の水平姿勢が確実に維持されるとともに、使用者の通過時には、回動手摺バー11を容易に第二支持ジョイント15より下方へ回動させることができる。
【0041】
また、回動軸26が挿通された状態で水平方向に傾斜可能な挿通孔16cに回動軸26を挿通させることにより、回動軸26を中心とする鉛直方向の回動と、挿通孔16cに対し回動軸26を傾斜させる水平方向の回動との合計2方向に回動可能な構成としている。従って、挿通孔16cに対し回動軸26を傾斜させることにより、掛止ジョイント13が第二支持ジョイント15と干渉せず、掛止ジョイント13が第二支持ジョイント15の側方を通過できる程度に回動手摺バー11は水平方向に回動可能であるとともに、鉛直方向については、回動軸26を中心として広範囲に回動可能である。
【0042】
また、挿通孔16cは、第一支持ジョイント16から第二支持ジョイント15に向かう方向に拡径した長孔状に形成されているため、回動軸26周りの回動によって回動手摺バー11は鉛直方向に回動可能であるとともに、挿通孔16c内において当該挿通孔16cに対し回動軸26を傾斜させる回動によって回動手摺バー11を水平方向に回動させることができる。
【0043】
さらに、掛止ジョイント13と第二支持ジョイント15とが連結された状態において、挿通孔16cに対する回動軸26の傾斜を規制する傾斜規制手段として、挟持片12a,12aに嵌合する拡幅部16d,16eを挿入片16aの両側に設けている。また、この傾斜規制手段には、回動手摺バー11をその軸方向に沿って第一支持ジョイント16から離れる方向11aに移動させると、挟持片12a,12aと拡幅部16d,16eとの嵌合が解消され、挿通孔16cに対する回動軸26の傾斜の規制が解除される解除機構を設けている。
【0044】
従って、使用者は、図2(a)に示す状態で把持した回動手摺バー11を、その軸方向に沿って第一支持ジョイント16から離れるように引っ張ることにより、挿通孔16cに対する回動軸26の傾斜の規制を解除することができるため、回動手摺バー11を水平姿勢から鉛直下方へ回動させる操作を片手で容易に行うことができる。
【0045】
次に、図10〜図12に基づいて、傾斜規制手段に関するその他の実施の形態について説明する。なお、図10〜図12において、図1〜図9と同符号を付している部分は可動式手摺10の構成部分と同じ構造、機能を有する部分であり、説明を省略する。
【0046】
回動手摺バー11の基端側に取り付けられる回動ジョイント32には一対の挟持片32a,32aが間隙32bを挟んで突出形成され、第一支持ジョイント36には間隙32bより幅36bが小さく且つ間隙32bに挿入される挿入片36aが突出形成されている。挿入片36aには、第一支持ジョイント36から第二支持ジョイント15に向かう方向に拡径した長孔状の挿通孔16cが形成されている。回動ジョイント32の回動軸26は、間隙32bを跨いだ状態で、一対の挟持片32a,32aに両端を保持されている。
【0047】
本実施形態の傾斜規制手段は、図10に示すように、第一支持ジョイント36の挿入片36aの基端部両側に凹設された一対の第一規制凹部36eと、回動ジョイント32の間隙32bの基端部に凹設された第二規制凹部32eとを有し、挟持片32a,32aの先端部32dが第一規制凹部36eと嵌合し、挿入片36aの先端部36dが第二規制凹部32eと嵌合することにより、挿通孔16cに対する回動軸26の傾斜が規制される。
【0048】
このような構成とすれば、第一規制凹部36e、第二規制凹部32eのそれぞれに対し、挟持片32a、挿入片36aそれぞれの先端部32d,36dがそれぞれ嵌合することにより、大きく離れた2つの嵌合部分によって挿通孔16cに対する回動軸26の傾斜が規制されるため、さらに強固に挿通孔16cに対する回動軸26の傾斜を規制することができ、回動手摺バー11のガタつきを防止することができる。
【0049】
一方、図1(b)及び図2(a)に示すように、回動手摺バー11の先端側を上方へ持ち上げ、掛止ジョイント13を第二支持ジョイント15から離脱させ、図2(b)に示すように、回動手摺バー11をその軸方向に沿って第一支持ジョイント36から離れる方向に引っ張ると、第一支持ジョイント36及び回動ジョイント32は図11に示す状態となる。即ち、回動ジョイント32が第一支持ジョイント36から離れることにより、挟持片32a、挿入片36aそれぞれの先端部32d,36dが、第一規制凹部36e、第二規制凹部32eから離脱するため、回動軸26の傾斜規制手段が解除される。従って、図2(c)及び図12に示すように、回動手摺バー11は水平方向11hへ回動させることができる。
【0050】
この後、図2(d)及び図12に示すように、水平方向11hへ回動させた状態の回動手摺バー11をそのまま下方へ回動させれば、掛止ジョイント13は第二支持ジョイント15の側方をすれ違うようにして通過させることができる。従って、図2(e)に示すように、回動手摺バー11は第二支持ジョイント15より下方へ回動させることができる。その他の部分の構造、機能などは前述した可動式手摺10と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の可動式手摺は、高齢者や歩行障害者などの歩行移動を助けるために一般住宅などの建築物の敷地内に設置して広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】(a)は本発明の実施の形態である可動式手摺を示す斜視図、(b)は回動手摺材を上方に回動させた状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す可動式手摺の操作手順を示す図である。
【図3】図1に示す可動式手摺を構成する回動ジョイント及び第一支持ジョイントの分解斜視図である。
【図4】図1に示す可動式手摺を構成する掛止ジョイント及び第二支持ジョイントの分解斜視図である。
【図5】(a)は図1に示す可動式手摺を構成する回動ジョイント及びそれを下方から支持する第一支持ジョイントの平面図、(b)は前記(a)におけるA−A線断面図である。
【図6】(a)は図1に示す可動式手摺を構成する第二支持ジョイントが掛止ジョイントを支持している状態における回動ジョイント及び第一支持ジョイントの平面図、(b)は前記(a)におけるB−B線断面図、(c)は前記(a)に示す状態における回動ジョイント及び第一支持ジョイントの側面図、(d)は前記(c)におけるC−C線断面図である。
【図7】(a)は図1に示す可動式手摺を構成する回動手摺バーを上方に回動させ軸線方向に引っ張った状態における回動ジョイント及び第一支持ジョイントの平面図、(b)は前記(a)におけるD−D線断面図、(c)は前記(a)に示す状態における回動ジョイント及び第一支持ジョイントの側面図、(d)は前記(c)におけるE−E線断面図である。
【図8】(a)は図1に示す可動式手摺を構成する回動手摺バーを上方に回動させて軸線方向に引っ張り、水平方向に回動させた状態における回動ジョイント及び第一支持ジョイントを示す平面図、(b)は前記(a)におけるF−F線断面図、(c)は前記(a)に示す状態における回動ジョイント及び第一支持ジョイントの側面図、(d)は前記(c)におけるG−G線断面図である。
【図9】(a)は掛止ジョイントと第二支持ジョイントとをすれ違わせる状態における回動ジョイントと及び第一支持ジョイントの平面図、(b)は前記(c)におけるH−H線断面図、(c)は前記(a)に示す状態における側面図、(d)は前記(c)におけるI−I線断面図である。
【図10】(a)は傾斜規制手段に関するその他の実施の形態である回動ジョイント及び第一支持ジョイントを示す平面図、(b)は前記(a)におけるJ−J線断面図、(c)は前記(a)に示す状態における回動ジョイント及び第一支持ジョイントの側面図、(d)は前記(c)におけるK−K線断面図である。
【図11】(a)は図10(a)に示す回動手摺バーを上方に回動させ軸線方向に引っ張った状態における回動ジョイント及び第一支持ジョイントを示す平面図、(b)は前記(a)におけるL−L線断面図、(c)は前記(a)に示す状態における回動ジョイント及び第一支持ジョイントを示す側面図、(d)は前記(c)におけるM−M線断面図である。
【図12】(a)は図10(a)に示す回動手摺バーを上方に回動させて軸線方向に引っ張り、水平方向に回動させた状態における回動ジョイント及び第一支持ジョイントを示す平面図、(b)は前記(a)におけるN−N線断面図、(c)は前記(a)に示す状態における回動ジョイント及び第一支持ジョイントの側面図、(d)は前記(c)におけるO−O線断面図である。
【符号の説明】
【0053】
10 可動式手摺
11 回動手摺バー
11a 第一支持ジョイントから離れる方向
11h 水平方向
12,32 回動ジョイント
12a,32a 挟持片
12b,32b 間隙
13 掛止ジョイント
14 第一固定手摺バー
14a 被覆管
14b ステンレス管
14c 開口部
15 第二支持ジョイント
16,36 第一支持ジョイント
16a,36a 挿入片
16b,36b 幅
16c 挿通孔
16d,16e 拡幅部
17 第二固定手摺バー
18,19 支柱
20 継手
20a 係合部
20b 基端部
21 ブッシュ
22 座金
22a,22b 係止片
22c 本体部
23 バネ座金
24 ボルト
25 止めネジ
26 回動軸
27 止め輪
32d,36d 先端部
32e 第二規制凹部
36e 第一規制凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が把持可能な棒状の回動手摺バーを有し、前記回動手摺バーは片端を中心として鉛直方向へ回動可能であるとともに、他端が支持されて略水平姿勢を維持する可動式手摺において、
前記回動手摺バーの片端に設けられた回動ジョイントと、前記回動ジョイントを枢支する第一支持ジョイントと、
前記回動手摺バーの他端に設けられた掛止ジョイントと、前記掛止ジョイントと着脱可能に連結して下方より支持し、前記回動手摺バーを略水平姿勢に維持する第二支持ジョイントと、を備え、
前記第一支持ジョイントに対し前記回動ジョイントが鉛直方向及び水平方向へ回動可能に枢支されることで、前記第二支持ジョイントから離脱させた前記掛止ジョイントを前記第二支持ジョイントの側方を通過させ、前記回動手摺バーが前記第二支持ジョイントより下方へ回動可能であることを特徴とする可動式手摺。
【請求項2】
前記第一支持ジョイント、前記回動ジョイントの一方に回動軸が保持され、他方に前記回動軸が挿通された状態で水平方向に傾斜可能な挿通孔を形成し、前記回動ジョイントは前記回動軸を中心にして鉛直方向に回動可能であるとともに、前記挿通孔内での前記回動軸の傾斜により水平方向に回動可能であることを特徴とする請求項1記載の可動式手摺。
【請求項3】
前記挿通孔を、前記第一支持ジョイントから前記第二支持ジョイントに向かう方向に拡径した長孔状に形成したことを特徴とする請求項2記載の可動式手摺。
【請求項4】
前記第一支持ジョイント、前記回動ジョイントのうち、前記回動軸を保持する一方には一対の挟持片が間隙を挟んで突出形成され、他方には前記間隙より幅が小さく、かつ前記間隙に挿入される挿入片が突出形成され、
前記回動軸が前記間隙を跨いで前記一対の挟持片に両端部を保持され、前記挿通孔が前記挿入片に形成されたことを特徴とする請求項2または3記載の可動式手摺。
【請求項5】
前記掛止ジョイントと前記第二支持ジョイントとが連結された状態において、前記挿通孔に対する前記回動軸の傾斜を規制する傾斜規制手段を設けたことを特徴とする請求項4記載の可動式手摺。
【請求項6】
前記傾斜規制手段に、前記回動手摺バーをその軸方向に沿って前記第一支持ジョイントから離れる方向に移動させると前記挿通孔に対する前記回動軸の傾斜の規制が解除される解除機構を設けたことを特徴とする請求項5記載の可動式手摺。
【請求項7】
前記傾斜規制手段は、前記挿入片の一部に形成され、その幅が前記間隙の幅と等しく設定された拡幅部であって、前記拡幅部が前記挟持片と嵌合することにより、前記挿通孔に対する前記回動軸の傾斜を規制することを特徴とする請求項5記載の可動式手摺。
【請求項8】
前記傾斜規制手段は、前記第一支持ジョイントに凹設された第一規制凹部と、前記回動ジョイントに凹設された第二規制凹部を有し、前記挟持片の先端部が前記第一規制凹部と嵌合し、前記挿入片の先端部が前記第二規制凹部と嵌合することにより、前記挿通孔に対する前記回動軸の傾斜が規制されることを特徴とする請求項5記載の可動式手摺。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−275383(P2009−275383A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126361(P2008−126361)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】