説明

可動鉄心誘導加熱炉

【課題】磁気回路の発熱を最小とする誘導加熱炉を提供する。
【解決手段】直流電源と接続した超電導の固定体と、前記固定体の直流電流路を分断して形成した空間に配置する可動鉄心と、前記可動鉄心を回転させる回転駆動源を備え、前記空間に配置する1つの可動鉄心と固定体の間、前記空間に直列方向に配置する一対の可動鉄心の間、または前記固定体の他の分断部の間を被加熱物の配置部とし、前記可動鉄心が回転して、固定鉄心と連続方向になると該可動鉄心と固定鉄心間に生じる磁気抵抗を小とし、該可動鉄心が固定鉄心との間に空隙が生じる非連続方向となると該可動鉄心と固定鉄心間に生じる磁気抵抗を大とし、前記被加熱物周辺に変動磁場を生成させて該被加熱物を加熱させる構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動鉄心誘導加熱炉に関し、バーナー、ヒーター等を用いて被加熱物を直接加熱するのではなく、誘導加熱するものである。
【背景技術】
【0002】
熱間鍛造等において金属材を加熱する場合、バーナーやヒーター等を用いて金属材を直接加熱している場合が多い。
このバーナー等を用いた金属材の直接加熱方式に代えて、交流電流に接続されたコイル中に金属棒を非接触で挿入し、コイルに流れる交流電流によって金属棒の表面付近に密度の渦電流を生じさせ、この渦電流により金属棒の表面を非接触で自己発熱させて加熱する高周波誘導加熱方式が提供されている。
しかしながら、前記高周波誘導加熱方式では、コイルに大電流の交流電流を流して渦電流を発生させるため、コイル自体も発熱する問題がある。そのため、冷却水を内部に流通させた銅管をコイルの導体として用いることになり、加熱効率が悪くなり、高効率で加熱できない問題がある。
【0003】
また、特開昭60−10581号公報(特許文献1)で提供されている移動中の金属製品の誘導加熱では、被加熱製品を水平方向に移動する搬送ローラと、搬送路に沿って連続して配置された積層構造の磁気回路と、磁気回路の溝に収容した誘導コイルとを備え、誘導コイルが加熱磁束を発生して被加熱製品を加熱し、加熱磁束は時間的に変化すると記載されている。
この特許文献1では誘導コイルは常電導線からなり、有効な加熱力を得るには相当大きな起磁力(電流)が必要で、電流値を大きくすると発熱が激しくなり、特許文献1のように冷却水が必要となる。よって、搬送ローラには冷却が必要なため水等の冷却用流体を循環させる水路が設けられている。即ち、特許文献1においても、磁性体の透磁率を低下させないために冷却水路を必要とし、加熱効率が悪くなり、高効率で加熱できない問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開昭60−10581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、誘導加熱方式を採用しながら、該誘導加熱方式における問題点である大電流の通電時において、磁気回路を構成するコイルの発熱を無くし、その結果、加熱効率を高めて、高効率で加熱できるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、
直流電源と接続した超電導の固定体と、
前記固定体の直流電流路を分断して形成した空間に配置する可動鉄心と、
前記可動鉄心を回転させる回転駆動源を備え、
前記空間に配置する1つの可動鉄心と固定体の間、前記空間に直列方向に配置する一対の可動鉄心の間、または前記固定体の他の分断部の間を被加熱物の配置部とし、
前記可動鉄心が回転して、固定鉄心と連続方向になると該可動鉄心と固定鉄心間に生じる磁気抵抗を小とし、該可動鉄心が固定鉄心との間に空隙が生じる非連続方向となると該可動鉄心と固定鉄心間に生じる磁気抵抗を大として変動磁場を発生させ、前記被加熱物周辺に交番磁界を生成させて該被加熱物を加熱させる構成としていることを特徴とする可動鉄心誘導加熱炉を提供している。
【0007】
前記固定体は、直流電源と接続した超電導コイルを固定鉄心に巻き付けて形成している。
なお、バルク超電導材からなる永久磁石の対向するN極とS極とを固定鉄心に結合して形成しても良いし、該バルク超電導材からなる永久磁石で固定鉄心を形成してもよい。
該固定鉄心は鉄損による渦電流の発生を抑制するために、珪素鋼鉄の積層体とすることが好ましい。
また、前記可動鉄心は棒状または長方形の平板状とした珪素鋼板等の磁性材で形成し、長さ方向の中心をモータからなる前記回転駆動源で回転される回転軸に固定していることが好ましい。
【0008】
本発明では、前記のように、超電導コイルを直流電源を接続して直流の大電流を流し、回転駆動させる可動鉄心と組み併せて磁気抵抗を増減することにより、加熱用として超電導材を用いていることを特徴としている。即ち、超電導コイルは極低温の超電導温度に保持して使用するため、加熱用の導体としては用いられていなかったが、本発明では、大電流を流すことができる超電導コイル(または超電導磁石)を加熱用として用い、かつ、超電導コイルに交流の大電流を流すと発熱が生じるが、直流の大電流を通電した場合には発熱が生じない特性を利用し、従来の問題点である通電時の発熱を抑制し、加熱効率を高め、高効率で被加熱物を加熱することができるものとしている。
また、交流電流とした場合に被加熱物の付近に交番磁界を発生させて加熱することはできるが、本発明では直流電流としているため、前記のように、超電導コイルを巻き付けた固定鉄心を分断して空間を形成し、該空間に回転駆動手段で回転させる可動鉄心を配置し、該可動鉄心と固定鉄心の空隙を周期的に増減して磁気抵抗を周期的に増減させ、直流電流を流しながら変動磁場を形成している。その結果、交流電流を用いた場合と同様に、被加熱物周辺に変動磁場が生成し、被加熱物を加熱することができる。
しかも、可動鉄心の回転駆動手段としてモータを用いると、可動鉄心の回転速度を任意に制御でき、それに応じて、磁場の振幅および周波数も調節でき、加熱温度を容易に調節することができる。
【0009】
具体的な第一の形態では、前記固定鉄心はC型として両端間に前記空間を形成し、
前記空間には、固定鉄心の一端側に1つの前記可動鉄心を配置し、該可動鉄心と前記固定鉄心の他端側との間を前記被加熱物の配置部としている。
前記可動鉄心は回転に応じて、その一端が固定鉄心の先端と微小な隙間をあけて連続すると共に、他端は被加熱物と微小な空隙をあけて連続する場合には、前記空隙に発生する磁気抵抗は小さくなる。この状態から90度回転すると、可動鉄心の一端と固定鉄心、他端と被加熱物との間の空隙は最大となり、該空隙に発生する磁気抵抗が大となる、このように、可動鉄心の回転に応じて、磁気抵抗を小→大→小→大に周期的に変化させることができる。
【0010】
具体的な第二の形態では、前記固定鉄心はC型として両端間に前記空間を形成し、
前記空間には、固定鉄心の両端側に一対の前記可動鉄心を配置し、これら可動鉄心の間を前記被加熱物の配置部とし、前記一対の可動鉄心を同期回転している。
第二の形態において、固定鉄心の分断により形成した空間が第一の形態と同一長さであるとすると、一対の可動鉄心の長さを短くでき、これら一対の可動鉄心を高速回転させることができ、磁気抵抗の増減の切り替え時間を短縮でき、第一の実施形態より高周波とすることができる。
【0011】
具体的な第三の形態では、前記固定鉄心は平行配置される左右一対の棒状の固定鉄心とし、
前記一対の固定鉄心に挟まれた中央部に、被加熱物の配置部をあけて上下両側にバルク超電導体からなる永久磁石の上下一対の棒状の固定鉄心を配置し、
前記左側の固定鉄心と前記中央の上下固定鉄心との上下両端間に形成する空間に上下一対の左側可動鉄心を配置すると共に、前記右側の固定鉄心と前記中央の上下固定鉄心との上下両端間に形成する空間に上下一対の右側可動鉄心を配置し、
前記回転駆動源により前記右側可動鉄心と左側可動鉄心の回転を90度位相させて回転している。
前記構成では、可動鉄心が左右上下の4個が必要となり、これら可動鉄心を夫々回転させるモータが必要となるが、90度位相して回転する左右可動鉄心の回転に応じて、高周波且つ高出力の変動磁場を発生させることができる。
【0012】
具体的な第四の形態では、前記固定鉄心はL型と倒L型の2個の固定鉄心とし、
前記2個の固定鉄心の一端間の空間に1つの前記可動鉄心を配置すると共に、該2個の固定鉄心の他端間の空間を前記被加熱物の配置部としている。
【0013】
具体的な第五の形態では、前記固定鉄心は、円筒枠からなり、その左右両端では上下内面から一対の突出片を突設し、上下突出片に挟まれた中央の空間にそれぞれモータで回転駆動される磁性回転軸を配置し、該磁性回転軸に前記可動鉄心の中心を固定し、かつ、左右の磁性回転軸を固定鉄心で囲まれた円筒枠内に前記被加熱物の配置部をあけて対向して突設している。
【0014】
本発明の誘導加熱炉で加熱する前記被加熱物は、金属材でも良いと、被加熱材が絶縁材である場合には、磁性容器に収容した状態で被加熱物の配置部に配置すると加熱することができる。
さらに、前記被加熱物の配置部は、被加熱物の全体または一部を着脱自在に載置できる配置部、または、該被加熱物を移動させる配置部のいずれもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、直流の超電導コイルを用いているため、大電流を流してもコイルの発熱を最小とでき、かつ、回転駆動させる可動鉄心と組み併せて磁気抵抗を増減することにより、被加熱物周縁に変動磁場を発生させていることで、被加熱物を効率よく加熱することができる。
特に、可動鉄心をモータで回転させているため、高速回転が可能で高周波、高出力の変動磁場を生成させることができ、投入エネルギーはモータの回転力となり、モータの効率が加熱効率となり、高効率で加熱することができる。かつ、可動鉄心の回転速度をモータで任意に制御でき、それに応じて、磁場の振幅および周波数も調節でき、加熱温度を容易に調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図3に第1実施形態の可動鉄心誘導加熱炉10−1を示す。
該可動鉄心誘導加熱炉10−1は、図2で一点鎖線で示すハウジング20内に、略C型とした固定鉄心11の垂直壁11aに超電導コイル12を巻き付けて形成した固定体を配置している。超電導コイル12を直流電源13と接続している。また、固定鉄心11は鋼板の積層体から形成している。
前記超電導コイル12を巻回した固定鉄心11の垂直壁11aには、超電導コイル12を密閉する冷却用ジャケット14を取り付け、該冷却用ジャケット14内に液体窒素等の超電導温度に超電導コイル12を保持する冷却液を充填している。
【0017】
固定鉄心11は垂直壁11aの上下両端より上下水平壁11b、11cが突出し、これら上下水平壁11b、11cの先端より下向き突出部11d、上向き突出部11eを突出させ、これら突出部11dと11eの間を分断した空間S1としている。
【0018】
前記空間S1には、下向き突出部11dの先端面側に1つの可動鉄心15を配置し、該可動鉄心15と上向き突出部11eとの間を被加熱物16の配置部とし、突出部11dと11eの間の空間S1を直列に配置する可動鉄心15と被加熱物16で連続させるようにしている。被加熱物16は本実施形態では鉄棒としている。該鉄棒は上向き突出部11eの上面に設けた配置枠部17上に載置している。
【0019】
前記可動鉄心15は珪素鋼板製の略長方形板からなり、その長さ方向両端15a、15bは円弧状としている。該可動鉄心15の中心に軸穴15cを設け、該軸穴15cにモータ18で回転駆動される回転軸19を貫通固定している。該可動鉄心15を支持する回転軸19をハウジング20の軸受(図示せず)で支持して、可動鉄心15が図1(A)に示す垂直方向に位置した時に、一端15aは突出部11dの先端面に微小空隙をあけてほぼ連続した位置となり、他端15bは被加熱物16と微小空間をあけてほぼ連続した位置となるように設定している。よって、図1(B)に示すように可動鉄心15が90度回転して、突出部11dと11eとを結ぶ線に対して直交方向となると、一端15aは突出部11dの先端面と大きな空隙C1をあけた非連続位置となり、他端15bも被加熱物16と大きな空隙C2をあけた非連続位置となる。
【0020】
上記構成からなる可動鉄心誘導加熱炉10−1においては、超電導コイル12に直流電流を流して、誘電子15をモータ18で矢印で示す反時計方向に回転させている。
図1(A)に示すように、可動鉄心15の上端15aが固定鉄心11の突出部11dの先端面、下端15bが被加熱物16の上端面と略連続した位置になると、これら連続位置に発生する抵抗磁場は最小となる。可動鉄心15が回転すると、両端15a、15bはそれぞれ突出部11dの先端面、被加熱物16から離れていき、その間の空隙は次第に増大でいて磁気抵抗は増大していく。図1(B)に示す位置に達すると、空隙C1、C2は最大となり磁気抵抗は最大となる。さらに、図1(A)に示す方向に回転すると、磁気抵抗は次第に減少していく。
【0021】
即ち、図3に示すように、磁場は周期的に増減を繰り返して、被加熱物16の周辺に変動磁場を生成し、渦電流が発生して被加熱物16を加熱することができる。
特に、大電流を流すことができる超電導コイル12を用い、かつ、該超電導コイル12に直流電流を流しているため発熱を生じさせず、あるいは発熱を最小限とすることができる。被加熱物16の加熱に投入するエネルギーは、可動鉄心15を回転するモータの回転駆動エネルギーとなり、モータの効率が加熱効率となり、高効率で被加熱物16を加熱することができる。
【0022】
図4乃至図6に第2実施形態を示す。
第2実施形態の可動鉄心誘導加熱炉10−2では、C型の固定鉄心11の突出部11dと11eとの間の空間S1に2個の可動鉄心15−1、15−2を配置し、これら2個の可動鉄心15−1と15−2との間を被加熱物16の配置部としている。
前記空間S1の距離は第1実施形態と同一としているため、2個の可動鉄心15−1、15−2は第1実施形態の可動鉄心15より短尺としている。
これら2個の可動鉄心15−1と15−2とそれぞれモータ(図示せず)により回転駆動される回転軸19−1、19−2で図4中に矢印で示すように、同期して回転している。
また、可動鉄心15−1、15−2の間に配置する被加熱物16は図5に示すハウジング20の左右両側壁に設けた支持部21で支持している。
他の構成は第1実施形態と同一であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0023】
第2実施形態では2個の短尺な可動鉄心15−1、15−2を用いているため、第1実施形態の可動鉄心15より高速回転させることができる。その結果、図6に示すように、磁場が増減間隔を短くでき、周波数を多くして、第1実施形態よりも高周波とすることができる。
【0024】
図7および図8に第3実施形態を示す。
第3実施形態の可動鉄心誘導加熱炉10−3では、固定鉄心は平行配置される左右一対の棒状の固定鉄心11−1、11−2とし、これら固定鉄心11−1、11−2にそれぞれ直流電源(図示せず)と接続した超電導コイル12−1、12−2を巻き付けている。
前記左右の固定鉄心11−1、11−2に挟まれた中央位置に棒状の超電導永久磁石からなる上下一対の固定鉄心22−1、22−2を配置している。該上下一対の固定鉄心22−1と22−2の間は空間をあけて被加熱物16の配置部としている。
他の構成は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0025】
前記左側の固定鉄心11−1の上端と中央の上側固定鉄心22−1との間の上側空間に第1可動鉄心15−3、固定鉄心11−1と中央の下側固定鉄心22−2との間の下側空間に第2可動鉄心15−4を配置している。また、右側の固定鉄心11−2の上端と中央の上側固定鉄心22−1との間の上側空間に第3可動鉄心15−5、固定鉄心11−2と中央の下側固定鉄心22−2との間の下側空間に第4可動鉄心15−6を配置している。
第1〜第4可動鉄心15−3〜15−6は夫々モータ(図示せず)の回転駆動軸19−3〜19−6に固定している。左側の第1、第2可動鉄心15−3、15−4は同期して反時計方向に回転させ、右側の第3、第4可動鉄心15−5、15−6も同期して反時計方向に回転させ、かつ、左側の第1、第2可動鉄心15−3、15−4と、右側の第3、第4可動鉄心15−5、15−6とは90度位相させ、ずらせて回転している。
【0026】
前記第3実施形態では、図7(A)(B)(C)に示すように作動し、図7(A)では、左側の第1、第2可動鉄心15−3、15−4は両側の固定鉄心11−1と22−1、11−1と22−2と連続する位置にあり、磁気抵抗は最小となる。この時、右側の第3、第4可動鉄心15−5、15−6は両側の固定鉄心11−2と22−1、11−2と22−2とは最も空隙があく非連続位置にあり、磁気抵抗は最大となる。
【0027】
第1〜第4可動鉄心15−3〜15−6が45度回転して図7(B)の位置となると、第1可動鉄心15−3と左側の固定鉄心11−1の上端および中央の上側固定鉄心と22−1の上端の間で空隙が増大し、第2可動鉄心15−4と固定鉄心11−1の下端および22−2の下端の間の空隙が増大する。
同様に、右側の第3、第4可動鉄心15−4、15−5の両側も固定鉄心11−2と22−1、22−2との間の空隙が増大する。
このように、4つの可動鉄心15−3〜15−6の両側で空隙が大となることにより4カ所で磁気抵抗が大となる。
【0028】
第1〜第4可動鉄心15−3〜15−6が更に45度回転して図7(C)の位置となると、図7(A)と逆になり、右側の第1、第2可動鉄心15−3、15−4の両側の空隙が最大となり磁気抵抗が最大となる。一方、右側の第3、第4可動鉄心15−5、15−6は両側の固定鉄心11−2、22−1、22−2と連続した位置となり磁気抵抗が最小となる。
【0029】
前記図7(A)(B)(C)に示すように、第1〜第4可動鉄心15−3〜15−6が回転することにより、図8に示すように磁場が発生する。図8において、A点が図7(A)の位置、B点が図7(B)の位置、C点が図7(C)の位置で発生する磁場を示す。このように、磁場の振幅が大となることにより、被加熱物16の周縁に発生する変動磁場を大きくでき、高出力で被加熱物16を加熱することができる。かつ、4つの第1〜第4可動鉄心15−3〜15−6は小型であるため高速回転が可能であり、第2実施形態と同様に高周波で加熱することができる。
即ち、第1実施形態の加熱炉を低周波誘導加熱、第2実施形態の加熱炉を高周波誘導加熱とすると、第3実施形態の加熱炉は高周波・高出力で誘導加熱することができる。
【0030】
図9に第4実施形態を示す。
第4実施形態の可動鉄心誘導加熱炉10−4では、L型として固定鉄心11−3と、倒L型とした固定鉄心11−4との2個の固定鉄心を用いている。これらの固定鉄心11−3と11−4とは両端間にそれぞれ空間をあけて四角枠を構成するように配置し、一方の空間に1つの可動鉄心15を配置し、他方の空間を被加熱物16の配置部としている。
前記2個の固定鉄心11−3、11−4には夫々直流電源(図示せず)と接続した超電導コイル12−1、12−2を巻き付け、かつ、可動鉄心15はモータ(図示せず)の回転軸に固定している。
【0031】
第4実施形態においても、可動鉄心15が回転し、図9(A)の位置では、固定鉄心11−3、11−4と可動鉄心15とが連続位置となり、磁気抵抗が減少する。また、図9(B)の90度回転した位置では非連続位置となり磁気抵抗が増大する。このように、磁気抵抗が増減することにより、被加熱物16の周辺に変動磁場を発生させて、加熱することができる。
【0032】
図10乃至図12に第5実施形態を示す。
第5実施形態の可動鉄心誘電加熱炉10−5では、固定鉄心11−5は円筒枠からなり、その内周面に超電導コイル12を巻き付けている。前記固定鉄心11−5は左右両端では上下内面から一対の突出片11−5aと11−5b、11−5cと11−5dとを突設している。左右の上下突出片11−5aと11−5b、11−5cと11−5dにそれぞれ挟まれた中央の空間に、モータ(図示せず)で回転駆動される鉄製の回転軸19−7、19−8に中心を固定した第1可動鉄心15−7、第2可動鉄心15−8を配置し、第1、第2可動鉄心15−7、15−8を同期して同一方向に回転している。また、左右の前記回転軸19−7、19−8を固定鉄心となる円筒枠11−5内に突出させ、その間の空間は被加熱物16の配置部としている。
【0033】
第5実施形態では、第1、第2可動鉄心15−7、15−8の回転軸19−7、19−8を磁気回路として利用している。第1、第2可動鉄心15−7、15−8の回転に応じて図11(A)(B)に示すように磁気抵抗が増減し、図12に示すように変動磁場が発生し、回転軸19−7と19−8に挟まれた空間の配置する被加熱物16の周辺に交番磁界を発生させて加熱することができる。
【0034】
図13に第6実施形態を示す。
第6実施形態の可動鉄心誘導加熱炉10−6では、超電導コイルを用いず、U形状としたバルク超電導体からなる永久磁石を固定鉄心11−6として用い、該固定鉄心11−6の両端に上下対向する突起部11−6a、11−6bを設けている。該突起部11−6a、11−6bとに挟まれた空間にモータで回転駆動される可動鉄心15と被加熱物16の配置部を設けている。
該第6実施形態は、第1実施例に対してバルク超電導体からなる永久磁石を用いている点が相違するだけで、加熱作用は同様である。
【0035】
なお、前記いずれの実施形態においても、被加熱物16を配置部に搭載して、被加熱物16の全体を加熱する構成としているが、被加熱物16の一部を前記配置部に搭載して部分的に加熱する構成としてもよい。
また、被加熱物16の配置部に連続搬送材を配置して、被加熱物16を連続的に移動させながら加熱する構成としてもよい。
さらに、被加熱物16が絶縁材である場合には、磁性容器内に絶縁材を収容して加熱している。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の可動鉄心誘導加熱炉は、熱間鍛造やアルミ型材の押し出し成形など、種々の産業上の加熱用途に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】(A)(B)は第1実施形態の磁気回路を示す概略図である。
【図2】(A)は第1実施形態の加熱炉の概略斜視図、(B)は要部断面図である。
【図3】第1実施形態の低周波で発生する磁場を示す線図である。
【図4】(A)(B)は第2実施形態の磁気回路を示す概略図である。
【図5】第2実施形態における被加熱物の配置部を示す概略図である。
【図6】第2実施形態の高周波で発生する磁場を示す線図である。
【図7】(A)(B)(C)は第3実施形態の磁気回路を示す概略図である。
【図8】第2実施形態の高周波・高出力で発生する磁場を示す線図である。
【図9】(A)(B)は第4実施形態の磁気回路を示す概略図である。
【図10】第5実施形態を示し、(A)は概略断面図、(B)は側面図である。
【図11】(A)(B)は第5実施形態の磁気回路を示す概略図である。
【図12】第5実施形態の磁場を示す図面である。
【図13】第6実施形態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0038】
10ー1〜10−6 可動鉄心誘導加熱炉
11(11−1〜11−6) 固定鉄心
12 超電導コイル
13 直流電源
15(15−1〜15−8) 可動鉄心
16 被加熱物
18 モータ
19(19−1〜19−8) 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と接続した超電導の固定体と、
前記固定体の直流電流路を分断して形成した空間に配置する可動鉄心と、
前記可動鉄心を回転させる回転駆動源を備え、
前記空間に配置する1つの可動鉄心と固定体の間、前記空間に直列方向に配置する一対の可動鉄心の間、または前記固定体の他の分断部の間を被加熱物の配置部とし、
前記可動鉄心が回転して、固定鉄心と連続方向になると該可動鉄心と固定鉄心間に生じる磁気抵抗を小とし、該可動鉄心が固定鉄心との間に空隙が生じる非連続方向となると該可動鉄心と固定鉄心間に生じる磁気抵抗を大とし、前記被加熱物周辺に変動磁場を生成させて該被加熱物を加熱させる構成としていることを特徴とする可動鉄心誘導加熱炉。
【請求項2】
前記固定体は、直流電源と接続した超電導コイルを固定鉄心に巻き付けて形成し、
または、バルク超電導体からなる永久磁石を固定鉄心の中に入れて形成し、かつ、
前記可動鉄心は棒状または長方形の平板状とした珪素鋼板で形成し、長さ方向の中心をモータからなる前記回転駆動源で回転される回転軸に固定している請求項1に記載の可動鉄心誘導加熱炉。
【請求項3】
前記固定鉄心はC型として両端間に前記空間を形成し、
前記空間には、固定鉄心の一端側に1つの前記可動鉄心を配置し、該可動鉄心と前記固定鉄心の他端側との間を前記被加熱物の配置部としている請求項1または請求項2に記載の可動鉄心誘導加熱炉。
【請求項4】
前記固定鉄心はC型として両端間に前記空間を形成し、
前記空間には、固定鉄心の両端側に一対の前記可動鉄心を配置し、これら可動鉄心の間を前記被加熱物の配置部とし、前記一対の可動鉄心を同期回転している請求項1または請求項2に記載の可動鉄心誘導加熱炉。
【請求項5】
前記固定鉄心は平行配置される左右一対の棒状の固定鉄心とし、
前記一対の固定鉄心に挟まれた中央部に、被加熱物の配置部をあけて上下両側にバルク超電導材からなる永久磁石からなる上下一対の棒状の固定鉄心を配置し、
前記左側の固定鉄心と前記中央の上下固定鉄心との上下両端間に形成する空間に上下一対の左側可動鉄心を配置すると共に、前記右側の固定鉄心と前記中央の上下固定鉄心との上下両端間に形成する空間に上下一対の右側可動鉄心を配置し、
前記回転駆動源により前記右側可動鉄心と左側可動鉄心の回転を90度位相をずらせて回転している請求項1または請求項2に記載の可動鉄心誘導加熱炉。
【請求項6】
前記固定鉄心はL型と倒L型の2個の固定鉄心とし、
前記2個の固定鉄心の一端間の空間に1つの前記可動鉄心を配置すると共に、該2個の固定鉄心の他端間の空間を前記被加熱物の配置部としている請求項1または請求項2に記載の可動鉄心誘導加熱炉。
【請求項7】
前記固定鉄心は、円筒枠からなり、その左右両端では上下内面から一対の突出片を突設し、上下突出片に挟まれた中央の空間にそれぞれモータで回転駆動される磁性回転軸を配置し、該磁性回転軸に前記可動鉄心の中心を固定し、かつ、左右の磁性回転軸を固定鉄心で囲まれた円筒枠内に前記被加熱物の配置部をあけて対向して突設している請求項1または請求項2に記載の可動鉄心誘導加熱炉。
【請求項8】
前記被加熱物は導電性材または導電性容器に収容した絶縁材からなり、該被加熱物の配置部は、該被加熱物の全体または一部を着脱自在に載置できる配置部、または、該被加熱物を移動させる配置部としている請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の可動鉄心誘導加熱炉。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2009−218017(P2009−218017A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58769(P2008−58769)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】