説明

可塑剤耐性を有する剥離可能な感圧接着剤

可塑剤を含むビニルフィルム上に適用するPSAの用途に特に有用な、剥離が可能な、可塑剤耐性を有する感圧接着剤を提供する。感圧接着剤は、(a)少なくとも1種の疎水性のモノマー、(b)約0.2〜約10重量%の少なくとも1種の親水性のモノマー、(c)約1〜約40重量%の1種の部分的に親水性のモノマー、(d)ジアリルマレエート、又は式(I)(Rは水素、メチル、又はエチルから選ばれ、そしてR’はビニル、アリル、又はメタリルから選ばれる)によって表される化合物から選択される効果的な量の架橋剤;を含有し、ここで感圧接着剤は可塑剤を含んでいない。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水系のエマルションをベースにした剥離可能な感圧接着剤に関するものである。本発明の剥離可能な感圧接着剤は、更に高められた可塑剤に対する耐性を有しており、これは可塑剤を含むビニルフィルムへ感圧接着剤を適用する場合に特に有用である。
【背景技術】
【0002】
剥離可能な感圧接着剤は、ラベル、テープ、フィルム、などを含む各種の製品に用いられ、製品を基質に接着することを可能にし、その後、容易に、そして汚れを又は残余物を残すことなく、基質から剥離することを可能としている。このような用途に適合するため、感圧接着剤は、低い初期剥離強度で、良好な接着力を持っていなければならず、そしてある期間、接着力の著しい増加を示してはならない。最適には、感圧接着剤は、各種の基質上でこのような物理的な性質を示さなければならない。一般の市販で入手できる、水性エマルションの剥離可能な感圧接着剤は、ビニルフィルムのような可塑剤を含む表面素材(facestocks)と共に用いられるとき、固着性にそして剥離性に欠点を示す。
【0003】
一般に、可塑剤は、適度に高い分子量の有機液体、又は時おり、低融点の固体、であり、これらは材料中に組み込まれて、作業性、屈曲性、又は膨張性を増加させる。例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、又は更に一般的に“ビニル”と呼ばれているような、その中でも未変性の、形態のものは概して硬質である。可塑剤と混ぜ合わせるとき、これは更に軟質となり、そして更に広い範囲の用途に用いることができる。可塑化されたビニルは、単量体の、又は高分子量のどちらの可塑剤でも、一般に15〜50重量%を含んでおり、単量体の可塑剤が更に一般的に用いられている。単量体の可塑剤は比較的低分子量であり、そして可塑化されたビニルの表面に移行する傾向がある。代表的な感圧接着剤を、可塑化されたビニルフィルムに適用し、長い間、それと接したままにしておくと、ビニルから可塑剤が感圧接着剤に移行し、それを軟化しそして、接着性の減少を引き起こす傾向がある。高い初期剥離強度を有する感圧接着剤は、可塑剤に対して更に耐性があるけれども、結果として生ずる剥離性能の低下は望ましいものではない。
【0004】
可塑剤の移行の問題を、ビニルと感圧接着剤(“PSA”)の間に浸透できない遮断層を挿入することで、解決しようとする企てが為されており、例えば米国特許第4,045,600号、そして同第4,605,592号を参照されたい。その他、可塑剤による劣化に対し、影響されにくいと言われている感圧接着剤が開発されており、これは米国特許第4,985,488号を参照されたい。可塑化されたビニルの基質から、向かい合う感圧接着剤への可塑剤の移行を防止するその他の企てとして、感圧接着剤中に可塑剤を組み込んで、接している層の間の可塑剤の勾配を最小にしようとするものであって、例えば公開欧州特許出願第EP150,978A号、及びPCT公開第WO 00/36043号を参照されたい。
【0005】
上記タイプの製品によって、限定された成功が達成されたにもかかわらず、感圧接着剤に対し強い市場の要望が残されており、これは各種ビニルフィルムへの強い固着性を保持するだけではなくまた、良好な剥離性を保持することにある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の要約
本発明に従って、架橋した水性のエマルションポリマーを含有する、剥離可能な、可塑剤耐性を有する感圧接着剤(PSA)が提供され、:ここでポリマーとしては(a)アルコールのアルキル部分は直鎖又は枝分かれしており、そして少なくとも4個の炭素原子を含む、アルコールのアルキル(メタ)アクリレートエステルから選択される、少なくとも1種の疎水性のモノマー;(b)約0.2〜約10重量%の、少なくとも1種の親水性のモノマー;(c)アルコールのアルキル部分が、1〜2の炭素原子を持つ、アルコールのアルキル(メタ)アクリレートエステル、N-ビニル-2-ピロリドン、又はこれらの混合物から選択される、約1〜約40重量%の1種の部分的に親水性のモノマー;(d)ジアリルマレエート、又は式


(Rは水素、メチル、又はエチルから選択され、そしてR’はビニル(-HC=CH2)、アリル(-CH2-CH=CH2)、又はメタリル(-C(-CH2)=CH2));
で表される化合物から選択される、効果的な量の架橋剤;を含有し、ここにおいて、感圧接着剤は可塑剤を含んでいない、剥離可能な、可塑剤に抵抗性を有する感圧接着剤(PSA)が提供される。
【0007】
ここに用いられているように、PSAは、“剥離可能な”そして“可塑剤耐性”を有しており、もし、PSAがビニルフィルムの表面素材に適用されるとき、PSAは、基質から剥離する際、故障モードは本質的に接着故障であって、約0.3ポンド/インチよりも小さい初期剥離値を有し、そして本質的に接着剤が基質へ転移することなく、約0.3ポンド/インチよりも小さい剥離値(70℃で7日間の経時変化後)を保持している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の詳細な説明
本発明は、良好な可塑剤に対する耐性を持ち、そして剥離することができる、水系のエマルションのPSAポリマーを提供する。本発明の製品は、グラフィックアートのウインドーへ応用するような、可塑剤を含むフィルムを用いる場合、特に有用であり、ここでは低い安定な剥離性が、印刷はがれが無く、そして綺麗にガラスやステンレススチールから剥離できることが要求される。本発明の感圧接着剤は、塩化ビニルのポリマー及びコポリマーのフィルムを含む、各種のビニルフィルムに対して強い固着性を保持し、そして良好な、可塑剤の耐性、及び基質からの剥離性を示す。
【0009】
剥離性の程度は、180℃の剥離角を用い、一定の温度と湿度の条件下、一定の剥離速度で、特定の試験表面から接着剤/表面素材のフィルム構成を、剥離するために必要とされる力(ポンドで)を測定することによって決めることができる。きれいな剥離性を有するPSAsは、不良モードが本質的に接着不良で、約0.3ポンド/インチよりも小さい、低い初期剥離値を有している。
【0010】
本発明の、剥離可能な、可塑剤耐性を有する感圧接着剤の組成物は、感圧接着剤が可塑剤を含んでいないという条件で、(a)アルコールのアルキル部分が直鎖、又は枝分かれし、そして少なくとも4個の炭素原子を含む、アルコールのアルキル(メタ)アクリレートエステルから選択される、少なくとも1種の疎水性のモノマー;(b)約0.2〜約10重量%の少なくとも1種の親水性のモノマー;(c)アルコールのアルキル部分が1〜2の炭素原子を持つ、アルコールのアルキル(メタ)アクリレートエステル、N-ビニル-2-ピロリドン、又はこれらの混合物から選択される、約1〜約40重量%の1種の部分的に親水性のモノマー;(d)ジアリルマレエート、又は式


[Rは水素、メチル、又はエチルから選択され、そしてR’はビニル(-HC=CH2)、アリル(-CH2-CH=CH2)、又はメタリル(-C(-CH2)=CH2)]で表される化合物から選択される、効果的な量の架橋剤;を含有する、架橋した水性のエマルションポリマーを含有する。ここに用いられている、“感圧接着剤は可塑剤を含まない”と言う表現は、ビニルフィルム表面シート素材へ適用する場合、重合したものとして、そして配合したものとしてその両者に、PSAは可塑剤を含有していないことを意味している。一旦、ビニルの表面シート素材に適用されれば、本発明のPSAsは、ビニルフィルムからPSAへ、限定された量の可塑剤のマイグレーションを許してしまう。
【0011】
本発明に従って用いられる疎水性のモノマーは、少なくとも一種のアルコールのアルキル(メタ)アクリレートエステルであって、ここでアルコールのアルキル部分は、直鎖又は枝分かれし、そして少なくとも4個の炭素原子を含んでいる。ここに用いられているような、アルキル(メタ)アクリレートの名称は、アルキルアクリレート、及びアルキルメタクリレートの両者を含む。アルキルアクリレート、又はアルキルメタクリレートモノマーのアルキル基は、好ましくは直鎖の、或は分岐したアルキルラジカルであり、4〜約14の炭素原子、更に好ましくは4〜約10の炭素原子、そして最も好ましくは4〜約8の炭素原子を有する。適当なアルキルアクリレート、及びアルキルメタクリレートの例としては、イソオクチルアクリレート、4-メチル-2-ペンチルアクリレート、2-メチル-ブチルアクリレート、イソアミルアクリレート、sec-ブチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルへキシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、イソノニルアクリレート、イソデシルアクリレートなど、単一で、或いは2種またはそれ以上の混合物を含む。広く好まれているアルキルアクリレート、又はアルキルメタクリレートエステルモノマーは、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルアクリレート、及びこれらの混合物である。
【0012】
疎水性モノマーの量は、モノマー(a)、(b)、(c)、そして(d)の合計重量を基準にして、約50〜約90重量%、好ましくは約60〜約84重量%、そして更に好ましくは約70〜80重量%である。
【0013】
本発明に従って用いられる親水性のモノマーは、疎水性のモノマーと共重合し得る、そして水溶性のモノマーである。親水性のモノマーは、モノオレフィンのモノカルボン酸、モノオレフィンのジカルボン酸、2-ヒドロキシエチルアクリレート、又はこれらの混合物から選ばれる。
【0014】
適当な親水性のモノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、オリゴマーのアクリル酸、2-ヒドロキシエチルアクリレート、及びこれらの混合物が含まれるが、これに限らない。今のところ、好ましい親水性のモノマーは、アクリル酸、2-ヒドロキシエチルアクリレート、メタクリル酸、及びこれらの混合物である。
【0015】
親水性のモノマーの量は、モノマー(a)、(b)、(c)及び(d)の合計重量に基づいて、約0.2〜約10重量%、好ましくは約0.2〜5重量%、そして更に好ましくは約1〜3重量%である。
【0016】
本発明に従って用いられる、部分的に親水性なモノマーは、アルコールのアルキル部分が1〜2の炭素原子有する、アルコールのアルキル(メタ)アクリレートエステル、N-ビニル-2-ピロリドン、又はこれらの混合物を含む。部分的に親水性のモノマーはまた、部分的に水溶性のモノマーとして参照される。
【0017】
適当な、部分的に親水性のモノマーの例としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、N-ビニル-2-ピロリドン、及びこれらの混合物を含む。一般に、好ましい部分的に親水性のモノマーは、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、そしてこれらの混合物であり、エチルアクリレートが現在は最も好ましい。
【0018】
部分的に親水性のモノマーの量は、モノマー(a)、(b)、(c)及び(d)の合計重量を基準にして、約1〜約40重量%、好ましくは約10〜25重量%、そして更に好ましくは約12〜25重量%である。
【0019】
本発明の架橋剤の効果的な量が、発明の剥離可能な、可塑剤耐性を有するPSAsの作製に用いられる。本発明のモノマー(a),(b),及び(c)の組成に加えて、本発明の効果的な量の架橋剤を添加することが、本発明の他の重要な特徴である。発明の水性のエマルションポリマーは、得られた架橋されたPSAの網目が充分に緩んでいて、PSA-ビニルフィルムの界面で可塑剤の堆積を防止するように、十分な可塑剤の浸透を可能とし、そして更に水性のエマルションポリマー鎖の移動度を限定するために十分きつく、そして剥離強度の増加を防止するように、十分に架橋されている。その結果として、この時点の発明による感圧接着剤は、良好な固着と、それにPSAsが適用されている基質からの清浄な剥離性の、両方を達成するのである。
【0020】
本発明で用いられる架橋剤は、ジアリルマレエート、そして、式


[Rは、水素、メチル、又はエチルから選択され、そしてR’はビニル(-HC=CH2)、アリル(-CH2-CH=CH2)、又はメタリル(-C(-CH2)=CH2)] で表される化合物を含む。
【0021】
適当な架橋剤の例としては、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ビニルアクリレート、ビニルメタクリレート、メタリルアクリレート、メタリルメタクリレート、或いはこれらの混合物が含まれる。
【0022】
架橋剤の量は、モノマー(a)、(b)、(c)及び(d)の合計重量を基準にして、約0.2〜約1.0重量%、そして好ましくは約0.3〜0.6重量%%である。
【0023】
本発明の水性のPSA組成物は、重合したものとして、そして配合されたものとして両方とも、可塑剤を含んでいない。可塑剤は、ビニルフィルムへの接着を破壊する傾向があり、そして転写の故障、又はPSAsが適用されている基質上にマイグレートを生じ、そしてPSAを剥離したときに、支持体上に可塑剤の残余物を残す。本発明のPSA組成物中に、ワックスを含まないことがまた、好ましい。
【0024】
本発明の、剥離可能な、可塑剤耐性を有する感圧接着剤の製造法において、少なくとも一種の水溶性の重合開始剤が用いられる。任意の通常の水溶性の重合開始剤即ち、アクリレートモノマーのエマルション重合に普通許容される開始剤を用いることができ、そしてこのような重合開始剤は、当業界においてよく知られている。代表的な水溶性の重合開始剤の濃度は、プレ-エマルション中に装入されたモノマー(a)、(b)、(c)、そして(d)の合計重量の、約0.01重量%〜約1重量%、好ましくは約0.01重量%〜約0.5重量%である。水溶性の重合開始剤は、単独で用いることができ、或いはビサルファイト、メタビサルファイト、アスコルビン酸、フォルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸アンモニウム第一鉄、エチレンジアミン-テトラ酢酸第二鉄などのような、通常の還元剤の1種またはそれ以上と組み合わせて用いることができる。本発明に従って用いられる、水-可溶性の重合開始剤として、水溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾ化合物及び類似物、そしてこれらの混合物が含まれる。水溶性開始剤の例としては、過硫酸塩(例えば、過硫酸カリウム、及び過硫酸ナトリウム)、過酸化物(例えば過酸化水素、tert-ブチルハイドロパーオキシド)、そしてアゾ化合物(例えば、4,4’-アゾビス(4-シアノ-ペンタン酸)、V-501 Wako Chemicalから)が含まれるが、これに限定されない。広く好まれている、水溶性の重合開始剤は、過硫酸塩、特に過硫酸カリウムである。
【0025】
重合は、熱または放射を適用するような、当業界に良く知られている従来からの任意の方法によって開始することができる。開始の方法は、用いる水溶性の重合開始剤によって決まり、当業者らに容易に明らかになるであろう。
【0026】
水溶性の重合開始剤は、重合反応に、当業界に知られている従来からの任意の方法で、加えることができる。一般に、水を含有する最初の重合反応器の充填材料に、開始剤を添加することが好ましい。あるいは、重合開始剤の最初の量を、最初の反応器充填材料に加えることができ、そして開始剤の残りを連続的に、又は益々増加するように、エマルション重合の間に添加する。
【0027】
少なくとも一種の界面活性剤が重合に用いられ、そして水とモノマーと一緒に、プレ-エマルションを形成するように界面活性剤を添加することが一般に好ましい。その後、プレ-エマルションは、重合反応器に充填されそして重合が行われる。
【0028】
用いることができる界面活性剤は、アニオン性の、ノニオン性の、カチオン性の、又は両性の乳化剤、及びこれらの混合物が含まれる。イオン性の乳化剤が一般に好ましく、アニオン性の乳化剤が今のところ最も好ましい。適当なアニオン性乳化剤の例として、アルキルアリールスルホネート(例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、アルキルスルフェート(例えばドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸アンモニウム)、エトキシル化アルコールのスルフェート(例えば、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム)、エトキシル化アルキルフェノールのスルフェート及びスルホネート(例えばアンモニウムノニルフェノール(EO=30)スルフェート、アルキルアリールポリエーテルスルホネートのナトリウム塩)、スルホ琥珀酸塩(例えばジオクチルスルホ琥珀酸ナトリウム)、ジフェニルスルホネート(例えばドデシルジフェニルオキサイドジスルホン酸ナトリウム)、及びこれらの混合物を含むが、これに限定されない。適当なノニオン性の乳化剤としては、エトキシル化アルコール(例えばエトキシル化オレイルアルコール)、エトキシル化アルキルフェノール(例えばノニルフェノールエトキシレート)、及びこれらの混合物を含むが、これに限定されない。適当なカチオン性の乳化剤の例としては、エトキシル化脂肪アミン(例えばエトキシル化牛脂アミン)が含まれるが、これに限定されない。
【0029】
界面活性剤の代表的な濃度は、モノマー(a)、(b)、(c)、そして(d)の合計重量を基準にしており、そして約0.1重量%〜約5重量%、好ましくは約0.5重量%〜約3重量%である。
【0030】
重合反応は、任意の従来からの、乳化重合が可能な、反応容器中で行われる。重合は一般的な乳化重合の温度で、好ましくは約50℃〜約95℃の範囲、最も好ましくは約55℃〜約85℃の範囲の温度で行われる。
【0031】
重合の時間は、他の反応条件、例えば温度分布、そして反応成分、例えばモノマー、開始剤、その他に基づいて、望みの転換を達成するまでに要する時間である。反応時間は、当業者らにとって、容易に明らかになるであろう。
【0032】
次に述べる重合において、もしラテックスエマルションのpHが、約6〜約9の、そして更に望ましくは約6〜約8の、望みのpH範囲内にない場合、エマルションのpHは、ラテックスエマルションを適当な塩基と、望みのpHにpHを上げるに十分な量で、接触させることによって調整される。ラテックスエマルションのpH調整に適当な塩基の例としては、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アンモニウム水酸化物、アミン等、そしてこれらの混合物を含んでいる。
【実施例】
【0033】
ラテックスエマルションは、一般に約40〜約70重量%、そして好ましくは約55〜約65重量%の固形分を持っている。
実施例
材料: 省略形/材料の情報
エチルアクリレート EA ; CAS[140-88-5] Dow, Celanese, BASF
ブチルアクリレート BA ; CAS[141-32-2] Dow, Celanese, BASF
アクリル酸(氷の) AA ; CAS[79-10-7] Celanese, BASF
アリルメタクリレート ALMA ; CAS[96-05-9] AGEFLEX AMA, Mhoromer
過硫酸カリウム PPS ; CAS[7727-21-1] FMC Corp
重炭酸ナトリウム NaHCO3 ; CAS[144-55-8] Church & Dwight
エアロゾルNPES 30/30 ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)-α-スルホ-ω(ノニルフェ
ノキシ)アンモニウム塩; CAS [9051-5-4] Cytec
エアロゾルOT (75%活性) ジオクチルスルホ琥珀酸ナトリウム;CAS [2673-22-5] Cytec
トリトンX-305(70%活性) オクチルフェノキシポリエトキシエタノール ; CAS [9036-19-
5] Dow
トリゴノックスAW-70 CAS [75-91-2] Akzo Nobel
パロライト ホルムアルデヒドスルホキシル酸亜鉛;Cas [244887-06-7]
Cognis Corp
ノーホーム1976 脱泡剤;界面活性剤混合物; Oil Chem Technologies
カトンLX 殺虫剤 Cas [26172-55-4],[2682-20-4] Rohm & Hass
ジアリルマレエート DAM ; CAS[999-21-3] ALDRICH
【0034】
剥離試験の手法
PSAの180℃角度のダイナミック剥離試験を行い、一定の温度と湿度の条件下で、一定の剥離速度で、180℃の剥離角度を用いて、接着剤/担体フィルム構造物を特殊なテスト表面から剥離するのに必要な力(ポンドで)を測定した。湿式の接着剤を、剥離ライナー上に一定の塗布量で塗布した。湿式の接着剤を、15分間空気乾燥し、その後オーブン(90℃)中に5分間置いて乾燥した。その後、接着剤をビニルフィルムの表面素材に転写した。1”×5”のサンプル試験ストリップを基板に適用し、そして圧力をかけた。試験ストリップを、時間、温度、そして湿度の特定の試験条件に暴露した[注:試験は少なくとも重複して行った]。インストロン試験機(モデルNo.1125)を用い、180℃の角度で基板からストリップを剥離することによって、剥離強度を測定した。
【0035】
結果の報告に際し、剥離故障の形態は次のように識別される: “a”は接着故障を意味し、即ち接着剤が完全に基板から分離してしまい、“c”は凝集破壊を意味し、即ち接着剤が部分的に基板上に、そして部分的に表面素材上に残され、“t”は転写故障を意味し、即ち接着剤は全て基板上に転写され、そして“g”は、あるタイプの物質が試験基板の表面上に堆積し、しかし事実上ポリマーとして分類することができず、そしていかなる著しい程度の粘着性も示さない故障を意味する。“a”の剥離故障モードは許容される。“c”または“t”の剥離故障モードは、接着剤が基板上に残されるので、許容されない。剥離試験条件の略記法は次の通りである: PL(24時間):24時間後の剥離強度; PL(1w CTH):一定の温度と湿度下で1週間後の剥離強度; PL(3d 70℃):3日後70℃での剥離強度; PL(1w 70℃):1週間後70℃での剥離強度; PL(1w Hum):一定湿度下で1週間後の剥離強度; PL(20分):20分での剥離強度; PL(20時間):20時間後の剥離強度; PL(4d@65℃);4日後65℃での剥離強度;及び PL(4d 70℃):4日後70℃の剥離強度。
【0036】
(実施例1)
各材料は次の通り充填される。パイロットプラント及びラボは、スケールが異なるのみで同一処方を有している。全てのデータ、充填量、及びスケールは、ラボの条件から得られた。
【0037】
次の表はラボスケールの充填量である。
【0038】
【表1】

【0039】
重合の手順
水、及び開始剤PPSを重合の反応釜(2リットル反応器)に充填し、攪拌を開始した。エアロゾルNPSE、トリトンX-305、及びエアロゾルOTを、水と共にバケツの中で予め混合し、そしてその後、この混合物を減衰タンク(delay tank)に添加した。界面活性剤が均一に水と混和するまで減衰タンク中で攪拌した。攪拌しつつ、プレエマルションのモノマーを減衰タンクに、アクリル酸、エチルアクリレート、アリルメタクリレート、ブチルアクリレートの添加順序で充填した。モノマーと界面活性剤を減衰タンク中で一緒に混合し、白色のミルク状のプレエマルションを形成した。反応器の内容物を55℃に加熱した。反応器のジャケットを、反応器の混合物が77+/−1℃に達するまで加熱し、それからプレエマルションを195分の時間に亘って反応釜中に送り込んだ。重合の間、反応器の温度を82.5+/−0.5℃に保持した。プレエマルションの遅延装入の終点で、反応器を82℃で30分間保持した。反応器の内容物を、それから55℃に冷却し、トリゴノックス及びパロライトを反応器に添加し、そして反応器の内容物を30分間保持した。後-硬化時間の後、反応器の内容物を35+/−1℃に冷却、その後ノーホーム1976脱泡剤、及びカトンLX殺虫剤を反応器に添加した。
【0040】
発明に従って作られた、水性のPSAポリマー(サンプル#1及びサンプル#2)は、不溶性の、または凝塊のような異物を含まない白色粘稠エマルションを作る。合計の固体分は、約56%〜約60重量%である。ポリマー製品の剥離強度を、以下の表1に示す。
【0041】
PSAsは、試験前に配合された。次の表はPSA配合の処方である。
【0042】
【表2】

【0043】
【表3】


略称
SS; ステンレススチール基板の試験プレート
GL; ガラス基板試験プレート
INTEX; PVCビニルフィルム INTEXプラスチック社
GF; PVCビニルフィルム General Formulations (GF)/VPl, Geon, Renolit,HPG)から
この結果は、発明の架橋したPSAsは、剥離性がありそして可塑剤耐性があることを示す(許容できる剥離強度と接着故障モード)。
【0044】
(実施例2(比較例))
実施例2のポリマーは、0.4重量%(2.4g)のブテンジオールジアクリレートを架橋剤として用いた以外は、実施例1に記載の手法に従って重合した。重合の手順そして反応物の量は同一である。架橋剤は両者とも、ALMAとして、同一のモル量を用い、これはポリマーに相応して、0.026モルである(ジアリルマレエート:5.48g 、アリルアクリルアミド2.89g)。
【0045】
3種の配合、HL2A、HL2B、及びHL2Cは、粘着剤(Tacolyn 1070)の異なるレベルで製造されている。ポリマー製品の剥離強度は、表2に与えられる。
【0046】
【表4】

【0047】
結果は、架橋剤としてブテンジオールジアクリレートを用いて架橋したPSAsは、剥離性がない事を説明している(剥離強度>0.3ポンド/インチ)。
【0048】
(実施例3(比較例))
実施例3のポリマーは、0.08重量%のヘキサンジオールジアクリレート(0.48gを架橋剤として用いた点を除いて、実施例2に記載の同一の手順に従って作製した。4種の配合(HL3A〜D)は、異なる粘着性付与剤レベル(Tacolyn1070)で、同一ベースのポリマーHL3Uから作成した。ポリマー生成物の剥離強度は、180℃ダイナミック剥離試験法を用いて測定し、表3に示す。
【0049】
【表5】

【0050】
この結果は、ヘキセンジオールジアクリレートを架橋剤として用いた、架橋したPSAsは、剥離性がないことを示している。
【0051】
(実施例4(比較例))
実施例4のポリマーは、架橋剤のヘキセンジオールジアクリレートの量が、夫々0.2重量%(HL4A)(1.2g)そして0.4重量%(HL4B)(2.4g)である事以外は、実施例3に記載と同一の手順に従って重合した。架橋剤としてヘキセンジオールジアクリレートを用いた、架橋したPSAsは両者とも、実施例3のHL3シリーズの結果と同様に、接着故障モードを伴う、許容する事が出来ない高い剥離強度を示した。
【0052】
(実施例5(比較例))
実施例5のポリマーは、架橋剤としてアリルグリシジルエーテル(0.1%として0.6gAGE、0.25%として1.4gAGE、そして0.5%として2.7gAGE)を架橋剤として用いた点以外は、実施例1に記載の手順に従って重合した。サンプルLT5BおよびLT5Cは、異なる量の架橋剤を有するサンプルである。180℃ダイナミック剥離試験を用いた、架橋したPSA製品の剥離強度を、表4に示す。
【0053】
【表6】


* 表面素材: PVCフィルム
【0054】
この結果は、アリルグリシジルエーテルを用いて架橋したPSAは、高い剥離強度により剥離することが出来ず、そして許容されない故障モードであることを説明している。
【0055】
(実施例6)
実施例6のポリマーは、PSAsがALMA(HL6A、発明)、ジアリルマレエート(HL6B、発明)、及びアリルアクリルアミド(HL6C、比較)(2.89gの架橋剤を使用)で架橋された事以外は、実施例1に記載の手順に従って重合した。ALMA架橋剤は0.0046モル/100gのレベル;重量%では0.059%で用いられる。
【0056】
【表7】

【0057】
実験結果は、ジアリルマレエート及びアリルメタクリレートを、架橋剤として用いて作製した架橋したPSAポリマーは、試験片(基板)から剥離可能である事を示している。アリルアクリルアミドを架橋剤として用いて作製した、PSAサンプルは、許容する事が出来ない高い剥離強度を、そして/又は許容する事の出来ない接着故障モードを示している。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋した水性のエマルションポリマーを含有する、剥離可能な、耐可塑剤性を有する感圧接着剤であって、ポリマーが、
(a)アルコールのアルキル(メタ)アクリレートエステルから選ばれた、少なくとも1種の疎水性のモノマーであって、ここでアルコールのアルキル部分は直鎖又は枝分かれしており、そして少なくとも4個の炭素原子を含むモノマー;
(b)約0.2〜約10重量%の少なくとも1種の親水性のモノマー;そして
(c)アルコールのアルキル部分が1〜2個の炭素原子を持つ、アルコールのアルキル(メタ)アクリレートエステル、N-ビニル-2-ピロリドン、そしてこれらの混合物から成るグループから選ばれる、約1〜約40重量%の1種の部分的に親水性のモノマー;そして
(d)ジアリルマレエート、及び式;


[Rは、水素、メチル、及びエチルから成るグループから選択され、そしてR’はビニル(-HC=CH2)、アリル(-CH2-CH=CH2)、そしてメタリル(-C(-CH2)=CH2)から成るグループから選択される];によって表される化合物とから成るグループから選択される効果的な量の硬化剤を、含有し、ここで前記の感圧接着剤は可塑剤を含んでいない感圧接着剤。
【請求項2】
前記剥離可能な、可塑剤耐性を有する感圧接着剤が、接着故障モードで、約0.3ポンド/インチ剥離力よりも小さい初期剥離強度を有する、請求項1の組成物。
【請求項3】
前記の架橋した水性エマルションポリマー中の、モノマー(a)の量が、約50〜約90重量%である、請求項1の組成物。
【請求項4】
前記の架橋した水性エマルションポリマー中の、モノマー(a)の量が、約60〜約84重量%である、請求項1の組成物。
【請求項5】
前記の架橋した水性エマルションポリマー中の、モノマー(a)の量が、約70〜約80重量%である、請求項4の組成物。
【請求項6】
前記の架橋した水性エマルションポリマー中の、モノマー(b)の量が、約0.2〜約5重量%である、請求項1の組成物。
【請求項7】
前記の架橋した水性エマルションポリマー中の、モノマー(b)の量が、約1〜約3重量%である、請求項6の組成物。
【請求項8】
前記の架橋した水性エマルションポリマー中の、モノマー(c)の量が、約10〜約25重量%である、請求項1の組成物。
【請求項9】
前記の架橋した水性エマルションポリマー中の、モノマー(c)の量が、約12〜約25重量%である、請求項8の組成物。
【請求項10】
前記のモノマー(a)が、イソオクチルアクリレート、4-メチル-2-ペンチルアクリレート、2-メチルブチルアクリレート、イソアミルアクリレート、sec-ブチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、イソノニルアクリレート、イソデシルアクリレート、及びこれらの混合物、から成るグループから選ばれる、請求項1の組成物。
【請求項11】
前記モノマー(a)が、2-エチル-ヘキシルアクリレート、n-ブチルアクリレート、及びこれらの混合物から成るグループから選ばれる、請求項10の組成物。
【請求項12】
前記モノマー(b)が、モノオレフィンのモノカルボン酸、モノオレフィンのジカルボン酸、2-ヒドロキシエチルアクリレート、及びこれらの混合物から成るグループから選ばれる、請求項1の組成物。
【請求項13】
前記モノマー(b)が、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、アクリル酸オリゴマー、2-ヒドロキシエチルアクリレート、及びこれらの混合物から成るグループから選ばれる、請求項12の組成物。
【請求項14】
前記モノマー(b)が、アクリル酸、2-ヒドロキシエチルアクリレート、メタクリル酸、及びこれらの混合物から成るグループから選ばれる、請求項13の組成物。
【請求項15】
前記モノマー(c)が、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、N-ビニル-2-ピロリドン、およびこれらの混合物から成るグループから選ばれる、請求項1の組成物。
【請求項16】
前記モノマー(c)がエチルアクリレートである、請求項15の組成物。
【請求項17】
前記架橋剤の量が、約0.2〜約1.0重量%である、請求項1の組成物。
【請求項18】
前記架橋剤の量が、約0.3〜約0.6重量%である、請求項17の組成物。
【請求項19】
前記架橋剤が、式


[Rは、水素、メチル、又はエチルから成るグループから選択され、そしてR’はビニル(-HC=CH2)、アリル(-CH2-CH=CH2)、及びメタリル(-C(-CH2)=CH2) から成るグループから選択される] によって表される、請求項17の組成物。
【請求項20】
前記架橋剤が、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、ビニルアクリレート、ビニルメタクリレート、メタリルアクリレート、メタリルメタクリレート、及びこれらの混合物から成るグループから選ばれる、請求項19の組成物。
【請求項21】
前記の架橋剤が、アリルアクリレート、及びアリルメタクリレート、から成るグループから選ばれる、請求項20の組成物。
【請求項22】
前記の架橋剤が、ジアリルマレエートである、請求項17の組成物。
【請求項23】
架橋された水性のエマルションポリマーを含有する、剥離可能な、可塑剤耐性を有する感圧接着剤であって:ポリマーが、
(a) 約70〜約80重量%の量の2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルアクリレートアクリレート、又はこれらの混合物;
(b) 約1〜約3重量%のアクリル酸、2-ヒドロキシエチルアクリレート、メタクリル酸、又はこれらの混合物;
(c) 約12〜約25重量%のエチルアクリレート;そして
(d) 約0.3%〜約0.6重量%のジアリルマレエート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート又はこれらの混合物;を含有し、前記感圧接着剤が可塑剤を含んでいない、感圧接着剤。
【請求項24】
請求項1に記載の剥離可能な、可塑剤耐性を有する感圧接着剤の、ラベル製造のための使用。
【請求項25】
請求項1に記載の剥離可能な、可塑剤耐性を有する感圧接着剤の、テープ製造のための使用。
【請求項26】
請求項1に記載の剥離可能な、可塑剤耐性を有する感圧接着剤の、フィルム製造のための使用。


【公表番号】特表2006−524741(P2006−524741A)
【公表日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509483(P2006−509483)
【出願日】平成16年3月30日(2004.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/009724
【国際公開番号】WO2004/092295
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(502358717)ユ セ ベ ソシエテ アノニム (13)
【Fターム(参考)】