説明

可塑化送出装置およびこれを含む射出成形機

【課題】射出成形機に用いられるスクロール形式の可塑化送出装置においては、可塑化された樹脂の脱気が不充分となる可能性がある。
【解決手段】樹脂流入通路29が開口し、樹脂を可塑化させるための加熱手段26が組み込まれたバレル23と、バレル23に摺接しながら回転するロータ24と、ロータ24に形成されてバレル23との間に樹脂の可塑化混練通路を画成し、外側端部28Oから樹脂が供給されると共に内側端部28Iが樹脂流入通路29の開口に近接する螺旋溝28とを具え、樹脂流入通路29および可塑化混練通路内に介在する樹脂を加熱して軟化溶融させる本発明による可塑化送出装置15は、バレル23に形成されて内側端部27Iが樹脂流入通路29に連通すると共に外側端部27Oが螺旋溝28の内側端部28Iと重なり合い、ロータ24の回転に伴って螺旋溝28の内側端部28Iに導かれた樹脂を樹脂流入通路29へと導く連通溝27をさらに具える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形材料を可塑化して金型のキャビティ側へと送出するための可塑化送出装置およびこの可塑化送出装置を含む射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、射出成形機の小型化を企図して在来のスクリューをロータに置き換えた特許文献1に示すような射出成形機が提案されている。この射出成形機は、所定量の溶融樹脂を金型のキャビティに圧送する計量射出部と、材料樹脂を可塑化してこれを計量射出部に送出する可塑化送出部とを含む点で在来のものと同じである。しかしながら、可塑化送出部は、射出ノズルに連通する樹脂流入通路が一端面に開口するバレルと、このバレルの一端面に摺接する端面を持ったロータとを有する。このロータの端面には、外側端部から樹脂が供給されると共に内側端部がバレルの樹脂流入通路に連通するように、バレルの一端面との間に樹脂の可塑化混練通路を画成する螺旋溝が形成されている。ロータは、その端面をバレルの一端面に対して摺接させた状態で駆動回転し、ペレット状の樹脂材料をロータの外周側から螺旋溝の外側端部に供給する。供給された樹脂は、加熱されたバレルにより軟化溶融しつつロータの回転に伴って混練されながら螺旋溝の内側端部へと次第に流動してバレルの樹脂流入通路へと送出される。送出された樹脂は、計量射出部から所定量ずつ金型のキャビティへと圧送され、所定形状の成形品が射出される。
【0003】
【特許文献1】特開2005−306028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された射出成形機において、ロータの径が小さく、螺旋溝の長さを充分に取れないような場合、ロータの回転速度が相対的に高すぎると原料となるペレット状の樹脂の可塑化が不充分となる可能性がある。また、ヒータを埋設したバレル側からの熱がロータの螺旋溝の底部を流動する樹脂に対して充分に伝わらない場合があり、螺旋溝の内側端部に達した樹脂の一部が完全に可塑化しないことも考えられる。このような場合、気泡を巻き込んで脱気が不十分な状態の樹脂が計量射出部へと送出されてしまう可能性がある。空気を巻き込んだ軟化溶融樹脂がプランジャを通り、金型キャビティ内まで送出されてしまうと、これが成形品内部の気泡、つまりボイドとなってしまう可能性がある。このような場合、成形品の内部欠陥やひけなどの構造欠陥を生じたり、成形品表面近傍での焼けや外観不良などをもたらす。
【0005】
本発明の目的は、バレルとロータとを用いた射出成形機の可塑化送出部において、脱気の不充分な樹脂が螺旋溝の内側端部から樹脂流入通路へと送出されるのを抑制し得る可塑化送出装置を提供することにある。
【0006】
また、このような可塑化送出装置が組み込まれた射出成形機を提供することも本発明の目的に含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の形態は、樹脂流入通路が一端面に開口するバレルと、このバレルの一端面に摺接する端面を有し、当該バレルの樹脂流入通路の開口を中心として駆動回転し得るロータと、このロータの端面に形成されて前記バレルの一端面との間に樹脂の可塑化混練通路を画成し、外側端部から樹脂が供給されると共に内側端部が前記バレルの樹脂流入通路の開口端に近接する螺旋溝と、前記バレルの樹脂流入通路の開口を中心として前記ロータを駆動回転するロータ駆動手段と、前記バレルに組み込まれ、前記樹脂流入通路および前記可塑化混練通路内に介在する樹脂を加熱して軟化溶融させるための加熱手段と、前記バレルの一端面に形成されて内側端部が前記樹脂流入通路の開口端に連通すると共に外側端部が前記螺旋溝の内側端部と重なり合い、前記ロータの回転に伴って前記螺旋溝の内側端部に導かれた樹脂を前記樹脂流入通路に導く連通溝とを具えたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の第1の形態において、ロータの螺旋溝の外側端部から供給される樹脂は、ロータ駆動手段によるロータの回転に伴って、螺旋溝の内側端部に向けて可塑化混練通路内を移動する。樹脂は、この可塑化混練通路内を移動中に加熱手段により加熱され、これにより次第に軟化溶融して混練され、その内側端部からバレルの連通溝へと流入し、ここから樹脂流入通路へと送給される。螺旋溝の内側端部から連通溝へと可塑化した樹脂が移動する際、バレル側からの熱を受けやすい螺旋溝の開口端、つまりロータの端面側に位置する可塑化した樹脂が連通溝へと流入する。これに対し、バレル側からの熱を受けにくく、脱気が充分ではない可能性がある螺旋溝の底部に位置する樹脂は、流動性が良くないこともあって樹脂流入通路側へは流入しにくくなる。
【0009】
本発明の第1の形態による可塑化送出装置において、連通溝が螺旋溝とは逆向きの螺旋状をなしているものであってよい。この場合、樹脂流入通路の開口を中心として複数の連通溝を放射状に配列することができる。
【0010】
ロータの回転中心からの距離が円周方向に沿って等しい領域を螺旋溝の内側端部の内周壁や連通溝の外側端部の外周壁に形成することができる。この場合、連通溝の外側端部の外周壁の領域は、螺旋溝の内側端部の内周壁の領域よりも径方向外側に位置することが好ましい。
【0011】
本発明の第2の形態は、所定量の成形材料を金型のキャビティ内に射出する計量射出部と、成形材料を可塑化して前記計量射出部に送出する可塑化送出部とを具えた射出成形機であって、前記可塑化送出部が本発明の第1の形態による可塑化送出装置を含んでいることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の可塑化送出装置によると、ロータの回転に伴って螺旋溝の内側端部に導かれた樹脂の流動方向を急激に変えて樹脂流入通路へと導く連通溝をバレルに具えているので、可塑化が不充分な状態の樹脂が連通溝側へ流入するのを抑制することができる。このため、可塑化が不充分な状態の樹脂中に介在している可能性の高い気泡などが樹脂流入通路へと混入する不具合を抑制し、充分に脱気された樹脂を樹脂流入通路へと送出することができる。
【0013】
連通溝が螺旋溝とは逆向きの螺旋状をなしている場合、連通溝内に流入する可塑化した樹脂を円滑に樹脂流入通路へと流動させることができる。特に、複数の連通溝が樹脂流入通路の開口を中心として放射状に配列している場合、可塑化された樹脂を樹脂流入通路の開口端の全周からほぼ均一に流入させることができる。
【0014】
ロータの回転中心からの距離が等しい領域を螺旋溝の内側端部の内周壁や連通溝の外側端部の外周壁に形成し、この連通溝の領域を螺旋溝の領域よりも径方向外側に位置させた場合、ロータの回転方向に沿った螺旋溝と連通溝との連通領域を拡げることができる。特に、連通溝が螺旋状をなしている場合、螺旋溝と連通溝との連通面積を常にほぼ一定に保持することができ、安定した樹脂の送出が可能である。
【0015】
本発明の射出成形機によると、その可塑化送出部が本発明による可塑化送出装置を含んでいるので、気泡を含まない可塑化された樹脂を用いた成形品を射出することができ、成形品の構造欠陥や外観不良などの不具合を抑制することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明による可塑化送出装置が組み込まれた射出成形機の一実施形態について、図1〜図10を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
まず、本実施形態における射出成形機の外観を図1に示し、その平面形状を一部破断して図2に示し、その正面形状を一部破断して図3に示す。すなわち、本実施形態における射出成形機10は、本発明における金型としての金型ユニット11と、この金型ユニット11の型締めを行うための型締め装置12とを含む。また、この射出成形機10は、所定量の溶融樹脂を金型ユニット11に形成されたキャビティ13に圧送する計量射出装置14と、樹脂材料を可塑化して計量射出装置14に送出する可塑化送出装置15とをさらに含む。
【0018】
本実施形態における金型ユニット11は、固定側金型11Sと、可動側金型11Mとを有し、これらの間に成形品の形状に対応したキャビティ13が画成される。
【0019】
本実施形態における型締め装置12は、ベース16と、このベース16に取り付けられた型締め用モータ17と、可動側ダイプレート18と、この可動側ダイプレート18と型締め用モータ17とを機械的に接続するボールねじ機構19とを含む。金型ユニット11の可動側金型11Mを保持する可動側ダイプレート18は、ベース16に突設された支柱20に対して摺動自在に嵌合されている。ボールねじ機構19は、型締め用モータ17に連結されるボールねじ軸19Aと、可動側ダイプレート18に取り付けられるボールナット19Nとを含む。
【0020】
従って、型締め用モータ17を駆動することにより、可動側ダイプレート18を可動側金型11Mと共に支柱20に沿って移動させることができる。より具体的には、型締め操作の場合、可動側金型11Mを固定側金型11Sに所定圧力で押し当て、型開き操作の場合、可動側金型11Mを固定側金型11Sから引き離す。
【0021】
なお、可動側ダイプレート18には、成形品を可動側金型11Mから取り出すためのエジェクタ装置21が組み込まれている。これら金型ユニット11や型締め装置12およびエジェクタ装置21に関しては、既知の射出成形機と同じ構成のものや、特許文献1に開示されたものと同じ構成を採用することが可能である。
【0022】
本実施形態における可塑化送出装置15は、ケーシング22に収容されるバレル23と、ロータ24と、ロータ駆動手段25と、加熱手段26とを含む。
【0023】
図2に示した可塑化送出手段15を計量射出装置14と共に抽出拡大して図4に示し、バレル23に形成された後述する連通溝27とロータ24に形成された後述する螺旋溝28との重なり具合を図5に示す。
【0024】
本実施形態におけるバレル23は、樹脂流入通路29が一端面23Fに開口し、本実施形態ではこの一端面23Fが傾斜の非常に緩やかな凸円錐面にて形成されている。バレル23の一端面23F側の樹脂流入通路29の開口端部は、その内径がロータ24側に向けて次第に拡がる漏斗状となっている。
【0025】
このバレル23の外観を図6に示し、図4に示したバレル23の部分を抽出して図7に示す。すなわち、バレル23の一端面23Fには、この樹脂流入通路29の開口端部を囲むように、3本の螺旋状をなす連通溝27が樹脂流入通路29の中心に対して点対称状態で放射状に形成されている。これら連通溝27は、バレル23の一端面23Fと向き合った場合、これらの外側端部27Oから左回りで内側端部27Iへと旋回するような螺旋状となっている。より具体的には、連通溝27の外側端部27Oから内側端部27Iへと向かう方向をロータ24の回転方向(図9中、左回り回転)と合致させている。これら連通溝27の内側端部27Iは樹脂流入通路29の開口端部に位置し、連通溝27の外側端部27Oの外周壁には、樹脂流入通路29の中心からの距離が円周方向に沿って等しい領域ZOが形成されている。また、この領域ZOよりも径方向内側の連通溝27の幅は、樹脂流入通路29に向けて漸次間隔が狭まるように設定されている。
【0026】
前記樹脂流入通路29の途中には、逆止め弁30が組み込まれている。この逆止め弁30は、後述する可塑化混練通路31側から樹脂が供給されるチャンバ32と樹脂流入通路29との接続部分よりも樹脂流入通路29の上流側に配され、チャンバ32側から可塑化混練通路31側への溶融樹脂の逆流を防止する。本実施形態における逆止め弁30は、バレル23の一端面23F側の樹脂流入通路29の開口端部を塞ぎ得る弁体30Bと、この弁体30Bを樹脂流入通路29の長手方向(図4中、上下方向)に沿って摺動自在に保持するスリーブ30Sとを具えている。内周側が樹脂流入通路29を画成するスリーブ30Sは、バレル23に対して一体的に嵌着されている。このスリーブ30Sの一端部には、弁体30Bの摺動方向に沿って延在して樹脂流入通路29の一部を画成する複数本の切欠き部30Cがこの弁体30Bを囲むように形成されている。
【0027】
ケーシング22内に回転自在に収容された本実施形態におけるロータ24は、バレル23の一端面23Fに摺接する端面24Fを有し、従って、この端面24Fはバレル23の凸円錐面と対応した傾斜の非常に緩やかな凹円錐面にて形成されている。このように、バレル24の一端面24Fを凸円錐面に形成すると共にロータ25の端面25Fをこれと対応する凹円錐面に形成したことにより、可塑化混練通路26P内に介在する樹脂をより円滑にロータ25の回転中心側へと付勢することができる。
【0028】
このロータ24の外観を180度反転して図8に示し、その正面形状を図9に示し、図4に示したロータ24の部分を抽出して図10に示す。このロータ24の端面24Fには螺旋溝28が形成され、バレル23の一端面23Fとの間に樹脂の可塑化混練通路31を画成する。この螺旋溝28は、外側端部28Oから樹脂が供給されると共に内側端部28Iの一部がバレル23の樹脂流入通路29の開口端に近接し、バレル23の一端面23Fに形成された連通溝27の外側端部27Oの一部と重なり合うように配されている。本実施形態における螺旋溝28は、ロータ24の回転軸線を中心とし、かつ樹脂流入通路29の内径に等しい円を基準とするインボリュート曲線に沿って形成され、かつその幅が内側端部28Iを除き、ほぼ一定に設定されている。つまり、本実施形態の螺旋溝28においては、ロータ24の回転中心を通る任意の径方向直線に対してこれを横切る螺旋溝28の間隔、つまりピッチがすべて等しくなる。この螺旋溝28は、ロータ24の端面24Fと向き合った場合、その外側端部28Oから右回り(時計回り)で内側端部28Iへと旋回するような螺旋状となっている。より具体的には、螺旋溝28の外側端部28Oから内側端部28Iへと向かう方向をロータ24の回転方向に対して逆方向に設定している。従って、先のバレル23とロータ24とを重ね合わせた場合、図5に示すようにバレル23の連通溝27とロータ24の螺旋溝28とは逆向きの旋回状態となることに注意されたい。
【0029】
先のバレル23の一端面23Fに形成された連通溝27は、ロータ24の回転に伴って螺旋溝28の内側端部28Iに導かれた樹脂を樹脂流入通路29へと導く機能を有する。すなわち、上述したような構成を具えたバレル23の一端面23Fとロータ24の端面24Fとを重ね合わせた状態でロータ24を駆動回転した場合、螺旋溝28の内側端部28Iに達した可塑化した樹脂が連通溝27の外側端部27Oへと流入する。連通溝27に流入した樹脂は、螺旋溝28側からの樹脂の送出圧に加え、ロータ24の回転に伴う可塑化した樹脂の連れ回り作用により、その流動方向前方側の連通溝27の内側端部27Iへ向けて流動し、樹脂流入通路29へと円滑に送出されることとなる。この場合、バレル23側に組み込まれた後述する加熱手段26からの熱を受けやすい螺旋溝28の開口端、つまりロータ24の端面24F側に位置する可塑化した樹脂が連通溝27へと流入しやすくなる。これに対し、バレル23側からの熱を受けにくく、脱気が充分ではない可能性がある螺旋溝28の底部に位置する樹脂は、流動性が良くないこともあって樹脂流入通路29側へは流入しにくくなる。この結果、気泡を含む樹脂を樹脂流入通路29内へ送出されにくくなり、従来のものよりも脱気状態の良好な可塑化された樹脂を計量射出装置14へと送出することができる。
【0030】
なお、ロータ24の回転方向に関係なく、連通溝27の螺旋方向を本実施形態とは逆向きに設定することも可能である。この場合には、可塑化混練通路31側からの可塑化した樹脂の送出圧に伴い、連通溝27内をその外側端部27Oから内側端部27Iへと流動し、樹脂流入通路29内へと送出されることとなる。従って、連通溝27の形状や構成は上述した実施形態に限定されるわけではなく、螺旋溝28の内側端部28Iと樹脂流入通路29とが連通溝27を介して連通し得るような構成でありさえすれば良い。
【0031】
螺旋溝28をインボリュート曲線にて形成し、かつその幅をほぼ一定に設定したことにより、次のような利点が生ずる。すなわち、ロータ24の回転に伴い、ロータ24の回転中心を通る任意の径方向直線を横切る螺旋溝28内の樹脂が、見掛け上、ロータ24の回転中心、つまりバレル23の連通溝27に向かって等速で移動することとなる。この結果、樹脂を可塑化混練通路31内で円滑に流動させることが可能となる。
【0032】
また、本実施形態では可塑化混練通路31の断面積を螺旋溝28の内側端部28Iほど小さく設定し、より具体的には螺旋溝28の深さをその内側端部28Iほど浅く設定している。このように、可塑化混練通路31の断面積が螺旋溝28の内側端部28Iほど小さくなるように設定した場合、螺旋溝28の内側端部28Iに向けて可塑化混練通路31内を移動中の軟化溶融した樹脂が次第に圧縮力を受けることとなる。この結果、軟化溶融した樹脂の混練効果をさらに高めることができる。さらに、本実施形態における螺旋溝28の内側端部28Iの内周壁には、ロータ24の回転中心からの距離、つまり樹脂流入通路29の中心からの距離が円周方向に沿って等しい領域ZIが形成されている。この領域ZIは、先の樹脂流入通路29の中心からの距離、つまりロータ24の回転中心からの距離が円周方向に沿って等しい連通溝27の外側端部27Oの外周壁の領域ZOよりも径方向内側に位置している。しかしながら、ロータ24の任意の回転位置において、螺旋溝28の内側端部28Iと連通溝27の外側端部27Oとは、これらの幅方向に関して完全に重なり合わないようになっている。また、螺旋溝28の内側端部28Iの一部と連通溝27の外側端部27Oの一部との連通領域がロータ24の回転に伴って順次ずれるようになっている。
【0033】
前記ロータ駆動手段25は、ロータ24の端面24Fとバレル23の一端面23Fとが当接した状態のまま、バレル23の樹脂流入通路29を中心としてロータ24を駆動回転させる。ケーシング22に設置されてロータ駆動手段25の一部を構成するロータ駆動モータ33がロータ24に機械的に連結されている。なお、このロータ24の駆動回転による樹脂の流動原理などに関しては、特許文献1などに詳述されているように周知である。
【0034】
前記加熱手段26は、樹脂流入通路29および可塑化混練通路31内に介在する樹脂を加熱して軟化溶融させるためのものである。本実施形態においては、バレル23内に組み込まれたヒータがこの加熱手段26の一部を構成する。ヒータ26に対する通電を制御することによって、バレル23の温度が樹脂の融点温度以上かつロータ24の温度がバレル23の温度以下または樹脂の融点以下となるように調整する。
【0035】
本実施形態におけるロータ24の端面24Fの回転中心部には、バレル23の樹脂流入通路29側に突出する樹脂滞留阻止部34が形成されている。この樹脂滞留阻止部34は、ロータ24の回転軸線を中心とする陣笠状曲面を有し、その先端が樹脂流入通路29の開口端よりもこの樹脂流入通路29の内側、つまり下流側に突出している。このように、ロータ24の回転中心部に樹脂滞留阻止部34を突設したことにより、バレル23の樹脂流入通路29の開口端部と対向するロータ24の中央部に可塑化した樹脂が滞留せず、樹脂流入通路29側へと円滑に導かれる。つまり、螺旋溝28から連通溝27へと導かれた溶融樹脂は、樹脂滞留阻止部34によって樹脂流入通路29の開口端からその奥側へと円滑に誘導されることとなる。
【0036】
ペレット状をなす樹脂材料は、ケーシング22に取り付けられたホッパ35内に貯溜されており、ここからケーシング22を介してロータ24の螺旋溝28の外側端部28Oへと供給される。そして、ロータ駆動モータ33の作動によるロータ24の回転に伴い、バレル23とロータ24との間に形成された可塑化混練通路31内を流動する。この間に、加熱手段26により樹脂の軟化溶融が進行し、バレル23の一端面23Fに対する樹脂の粘性抵抗が増加する結果、樹脂は圧力上昇を伴って螺旋溝28の内側端部28Iへと流動することとなる。
【0037】
本実施形態における計量射出装置14は、固定側金型11Sを保持する固定側ダイプレート36と、固定側金型11Sに挿通されるノズル37と、射出プランジャ38と、射出・計量用モータ39とを含む。
【0038】
先端がキャビティ13に臨むノズル37は、バレル23に形成された樹脂流入通路29に連通する樹脂通路40が形成されている。また、バレル23には樹脂流入通路29に対して連通するチャンバ32がその側方に画成され、射出プランジャ38は、このチャンバ32に対して摺動自在に嵌合し、チャンバ32内に介在する樹脂をノズル37の樹脂通路40側に所定量ずつ圧送する。射出プランジャ38は、減速機41および図示しない動力伝達機構を介して射出・計量用モータ39に機械的に連結されている。
【0039】
従って、ロータ駆動モータ33によるロータ24の回転と、射出・計量用モータ39の逆転駆動による射出プランジャ38の後退動作(図4中、右方向移動)とを組み合わせ、可塑化混練通路31から樹脂流入通路29へと導かれた樹脂をチャンバ32内に収容する。しかる後、射出・計量用モータ39の正転駆動による射出プランジャ38の前進動作(図4中、左方向移動)によって、チャンバ内30に収容された所定量の樹脂をノズル37から金型ユニット11のキャビティ13内に射出する。
【0040】
以上のように構成された本実施形態における射出成形機10は、従来のプリプラ方式の出成形機と比較すると、可塑化送出装置15を大幅に小型化することができるため、全体的な小型化を企図することができる。
【0041】
なお、本発明はその特許請求の範囲に記載された事項のみから解釈されるべきものであ、上述した実施形態においても、本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が記載した事項以外に可能である。つまり、上述した実施形態におけるすべての事項は、本発明を限定するためのものではなく、本発明とは直接的に関係のないあらゆる構成を含め、その用途や目的などに応じて任意に変更し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明による射出成形機の一実施形態の外観を表す立体投影図である。
【図2】図1に示した実施形態における主要部の内部構造を模式的に表す破断平面図ある。
【図3】図1に示した実施形態における主要部の内部構造を模式的に表す破断正面図ある。
【図4】図2に示した主要部をさらに抽出拡大した断面図である。
【図5】バレルに形成された連通溝とロータに形成された螺旋溝との重なり具合を示す模式図である。
【図6】図2〜図4に示したバレルの外観を表す立体投影図である。
【図7】図4に示したバレルの部分を抽出した断面図である。
【図8】図2〜図4に示したロータの外観を180度反転した状態で表す立体投影図である。
【図9】図8に示したロータの正面図である。
【図10】図4に示したロータの部分を抽出した断面図である。
【符号の説明】
【0043】
10 射出成形機
11 金型ユニット
11S 固定側金型
11M 可動側金型
12 型締め装置
13 キャビティ
14 計量射出装置
15 可塑化送出装置
16 ベース
17 型締め用モータ
18 可動側ダイプレート
19 ボールねじ機構
19A ボールねじ軸
19N ボールナット
20 支柱
21 エジェクタ装置
22 ケーシング
23 バレル
23F バレルの一端面
24 ロータ
24F ロータの端面
25 ロータ駆動手段
26 加熱手段(ヒータ)
27 連通溝
27O 連通溝の外側端部
27I 連通溝の内側端部
28 螺旋溝
28O 螺旋溝の外側端部
28I 螺旋溝の内側端部
29 樹脂流入通路
30 逆止め弁
31 可塑化混練通路
32 チャンバ
33 ロータ駆動モータ
34 樹脂滞留阻止部
35 ホッパ
36 固定側ダイプレート
37 ノズル
38 射出プランジャ
39 射出・計量用モータ
40 樹脂通路
41 減速機
O 樹脂流入通路からの距離が等しい連通溝の外周壁の領域
I 樹脂流入通路からの距離が等しい螺旋溝の内周壁の領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂流入通路が一端面に開口するバレルと、
このバレルの一端面に摺接する端面を有し、当該バレルの樹脂流入通路の開口を中心として駆動回転し得るロータと、
このロータの端面に形成されて前記バレルの一端面との間に樹脂の可塑化混練通路を画成し、外側端部から樹脂が供給されると共に内側端部が前記バレルの樹脂流入通路の開口端に近接する螺旋溝と、
前記バレルの樹脂流入通路の開口を中心として前記ロータを駆動回転するロータ駆動手段と、
前記バレルに組み込まれ、前記樹脂流入通路および前記可塑化混練通路内に介在する樹脂を加熱して軟化溶融させるための加熱手段と、
前記バレルの一端面に形成されて内側端部が前記樹脂流入通路の開口端に連通すると共に外側端部が前記螺旋溝の内側端部と重なり合い、前記ロータの回転に伴って前記螺旋溝の内側端部に導かれた樹脂を前記樹脂流入通路に導く連通溝と
を具えたことを特徴とする射出成形機の可塑化送出装置。
【請求項2】
前記連通溝は前記螺旋溝とは逆向きの螺旋状をなしていることを特徴とする請求項1に記載の可塑化送出装置。
【請求項3】
複数の前記連通溝が前記樹脂流入通路の開口を中心として放射状に配列していることを特徴とする請求項2に記載の可塑化送出装置。
【請求項4】
前記螺旋溝の内側端部の内周壁には、前記ロータの回転中心からの距離が円周方向に沿って等しい領域があり、前記連通溝の外側端部の外周壁には、前記ロータの回転中心からの距離が円周方向に沿って等しく、かつ前記螺旋溝の内側端部の内周壁よりも径方向外側に位置する領域があることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の可塑化送出装置。
【請求項5】
所定量の成形材料を金型のキャビティ内に射出する計量射出部と、成形材料を可塑化して前記計量射出部に送出する可塑化送出部とを具えた射出成形機であって、前記可塑化送出部が請求項1から請求項4の何れかに記載の可塑化送出装置を含んでいることを特徴とする射出成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−269183(P2009−269183A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118766(P2008−118766)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】