説明

可塑化送出装置およびこれを含む射出成形機

【課題】射出成形機に用いられるスクロール形式の可塑化送出装置においては、螺旋溝内を移動する成形材料の混練が不充分となる可能性がある。
【解決手段】本発明による射出成形機10の可塑化送出装置15は、材料流入通路27が開口するバレル23と、バレル23の一端面23Fに摺接する端面24Fを有し、材料流入通路27を中心として駆動回転し得るロータ24と、ロータ24の端面24Fに形成されてバレル23との間に成形材料の可塑化通路30を画成し、外側端部34Oから成形材料が供給されると共に内側端部34Iが材料流入通路27の開口端に近接する螺旋溝34と、材料流入通路27を中心としてロータ24を駆動回転するロータ駆動手段25と、材料流入通路27および可塑化通路30内に介在する成形材料を加熱して軟化溶融させるための加熱手段26と、可塑化通路30内に介在する成形材料を攪拌するための材料撹拌手段28,36,37とを具える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形材料を可塑化して金型のキャビティ側へと送出するための可塑化送出装置およびこの可塑化送出装置を含む射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、射出成形機の小型化を企図して在来のスクリューをロータに置き換えた特許文献1に示すような射出成形機が提案されている。この射出成形機は、所定量の溶融材料を金型のキャビティに圧送する計量射出部と、成形材料を可塑化してこれを計量射出部に送出する可塑化送出部とを含む点で在来のものと同じである。しかしながら、可塑化送出部は、射出ノズルに連通する材料流入通路が一端面に開口するバレルと、このバレルの一端面に摺接する端面を持ったロータとを有する。このロータの端面には、外側端部から成形材料が供給されると共に内側端部がバレルの材料流入通路に連通するように、バレルの一端面との間に成形材料の可塑化通路を画成する螺旋溝が形成されている。ロータは、その端面をバレルの一端面に対して摺接させた状態で駆動回転し、ペレット状の成形材料をロータの外周側から螺旋溝の外側端部に供給する。供給された成形材料は、加熱されたバレルにより軟化溶融しつつロータの回転に伴って螺旋溝の内側端部へと次第に流動し、バレルの材料流入通路へと送出される。送出された成形材料は、計量射出部から所定量ずつ金型のキャビティへと圧送され、所定形状の成形品が射出される。
【0003】
【特許文献1】特開2005−306028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された射出成形機においては、バレルの一端面を傾斜の非常に緩やかな凸円錐面に形成すると共にこのバレルの一端面に摺接するロータの端面を対応する傾斜の非常に緩やかな凹円錐面に形成している。これにより、材料流入通路内に介在する成形材料に対して混練作用を与えるようにしているが、成形材料が可塑化通路内を層流状態で流動しやすく、充分な混練作用を期待できない可能性がある。このように成形材料の混練が不充分な状態では、ヒータを埋設したバレル側からの熱がロータの螺旋溝の底部を流動する成形材料に対して充分に伝わらない可能性があり、螺旋溝の内側端部に達した成形材料の一部が完全に可塑化しないことも考えられる。
【0005】
この結果、色相や特性が異なる複数種の成形材料を用いた場合には、成形品の外観に色むらを生じたり、成形品の場所やあるいは成形品毎にその物性が不均一となってしまうような不具合を生ずる。
【0006】
本発明の目的は、バレルとロータとを用いた射出成形機の可塑化送出部において、可塑化通路内に介在する成形材料に対する混練作用を高めることができる可塑化送出装置を提供することにある。
【0007】
また、このような可塑化送出装置が組み込まれた射出成形機を提供することも本発明の目的に含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の形態は、材料流入通路が一端面に開口するバレルと、このバレルの一端面に摺接する端面を有し、当該バレルの材料流入通路の開口を中心として駆動回転し得るロータと、このロータの端面に形成されて前記バレルの一端面との間に成形材料の可塑化通路を画成し、外側端部から成形材料が供給されると共に内側端部が前記バレルの材料流入通路の開口端に近接する螺旋溝と、前記バレルの材料流入通路の開口を中心として前記ロータを駆動回転するロータ駆動手段と、前記バレルに組み込まれ、前記材料流入通路および前記可塑化通路内に介在する成形材料を加熱して軟化溶融させるための加熱手段と、前記可塑化通路内に介在する成形材料を攪拌するための材料撹拌手段とを具えたことを特徴とする可塑化送出装置にある。
【0009】
本発明において、ロータの螺旋溝の外側端部から供給される成形材料は、ロータ駆動手段によるロータの回転に伴って、螺旋溝の内側端部に向けて可塑化通路内を移動する。この時、可塑化通路内を移動中の成形材料は、加熱手段により加熱されつつ材料撹拌手段によって攪拌される結果、次第に軟化溶融してその可塑化と充分な混練とがなされ、螺旋溝の内側端部から材料流入通路へと送給される。
【0010】
本発明の第1の形態による射出成形機の可塑化送出装置において、材料撹拌手段が螺旋溝内に突出するようにロータに形成された突起部を有するものであってよい。
【0011】
あるいは材料撹拌手段がバレルの一端面からロータ側に突出するように形成された突起部と、ロータの端面に形成されて突起部に対するロータの回転に伴う干渉を回避するための突起通過溝部とを有するものであってよい。
【0012】
本発明の第2の形態は、所定量の成形材料を金型のキャビティ内に射出する計量射出部と、成形材料を可塑化して前記計量射出部に送出する可塑化送出部とを具えた射出成形機であって、前記可塑化送出部が本発明の第1の形態による可塑化送出装置を含んでいることを特徴とする射出成形機にある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の可塑化送出装置によると、可塑化通路内に介在する成形材料を攪拌するための材料撹拌手段を具えているので、可塑化通路内を流動中に成形材料の攪拌が促進されることとなる。この結果、可塑化通路内を流動する成形材料の混練効果が高まり、成形材料全体の可塑化を促進させることができる。
【0014】
材料撹拌手段が螺旋溝内に突出するようにロータに形成された突起部を有する場合、可塑化通路内における成形材料の流動方向が突起部によって乱され、特に可塑化が遅れやすい傾向にある螺旋溝の底部に介在する成形材料に対する混練効果が高まり、成形材料全体をより均一に可塑化させることができる。
【0015】
材料撹拌手段がバレルの一端面からロータ側に突出するように形成された突起部と、ロータの端面に形成されて突起部に対するロータの回転に伴う干渉を回避するための突起通過溝部とを有する場合、ロータの回転に伴ってバレルの突起部が螺旋溝の一部を横切る。この時、可塑化通路内に介在する成形材料の流動が突起部により乱される結果、その混練効果が高まることとなる。
【0016】
本発明の射出形成機によると、可塑化送出部が本発明の可塑化送出装置を含んでいるので、充分に混練された可塑化状態にある成形材料を計量射出部から金型のキャビティへと射出することができ、外観や品質が一定の成形品を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明による可塑化送出装置が組み込まれた射出成形機の一実施形態について、図1〜図9を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
まず、本実施形態における射出成形機の外観を図1に示し、その平面形状を一部破断して図2に示し、その正面形状を一部破断して図3に示す。すなわち、本実施形態における射出成形機10は、本発明における金型としての金型ユニット11と、この金型ユニット11の型締めを行うための型締め装置12とを含む。また、この射出成形機10は、本発明における成形材料としての溶融樹脂を金型ユニット11に形成されたキャビティ13に所定量ずつ射出する計量射出装置14と、先の樹脂を可塑化して計量射出装置14に送出する可塑化送出装置15とをさらに含む。
【0019】
本実施形態における金型ユニット11は、固定側金型11Sと、可動側金型11Mとを有し、これらの間に成形品の形状に対応したキャビティ13が画成される。
【0020】
本実施形態における型締め装置12は、ベース16と、このベース16に取り付けられた型締め用モータ17と、可動側ダイプレート18と、この可動側ダイプレート18と型締め用モータ17とを機械的に接続するボールねじ機構19とを含む。金型ユニット11の可動側金型11Mを保持する可動側ダイプレート18は、ベース16に突設された支柱20に対して摺動自在に嵌合されている。ボールねじ機構19は、型締め用モータ17に連結されるボールねじ軸19Aと、可動側ダイプレート18に取り付けられるボールナット19Nとを含む。
【0021】
従って、型締め用モータ17を駆動することにより、可動側ダイプレート18を可動側金型11Mと共に支柱20に沿って移動させることができる。より具体的には、型締め操作の場合、可動側金型11Mを固定側金型11Sに所定圧力で押し当て、型開き操作の場合、可動側金型11Mを固定側金型11Sから引き離す。
【0022】
なお、可動側ダイプレート18には、成形品を可動側金型11Mから取り出すためのエジェクタ装置21が組み込まれている。これら金型ユニット11や型締め装置12およびエジェクタ装置21に関しては、既知の射出成形機と同じ構成のものや、特許文献1に開示されたものと同じ構成を採用することが可能である。
【0023】
本発明における可塑化送出部としての可塑化送出装置15は、ケーシング22に収容されるバレル23と、ロータ24と、ロータ駆動手段25と、加熱手段26とを含む。
【0024】
図2に示した可塑化送出装置15を計量射出装置14と共に抽出拡大して図4に示し、本実施形態におけるバレルの外観を図5に示し、図4に示したバレル23の部分を抽出して図6に示す。すなわち、本実施形態におけるバレル23は、材料流入通路27が一端面23Fの中央部に開口し、本実施形態ではこの一端面23Fが傾斜の非常に緩やかな凸円錐面にて形成されている。バレル23の一端面23F側の材料流入通路27の開口端部は、その内径がロータ24側に向けて次第に拡がる漏斗状となっている。このバレル23の一端面23Fには、材料流入通路27の開口端部を囲むように、本実施形態では4本の円柱状をなす突起部28が材料流入通路27の中心に対して点対称状態で突設されているが、これら突起部28に関しては後で詳述する。
【0025】
前記材料流入通路27の途中には、逆止め弁29が組み込まれている。この逆止め弁29は、後述する可塑化通路30側から樹脂が供給されるチャンバ31と材料流入通路27との接続部分よりも材料流入通路27の上流側に配され、チャンバ31側から可塑化通路30側への溶融状態にある樹脂の逆流を防止する。本実施形態における逆止め弁29は、バレル23の一端面23F側の材料流入通路27の開口端部を塞ぎ得る弁体32と、この弁体32を材料流入通路27の長手方向(図4中、上下方向)に沿って摺動自在に保持する弁体保持筒33とを具えている。内周側が材料流入通路27を画成する弁体保持筒33は、バレル23に対して一体的に嵌着されている。弁体保持筒33の一端部には、弁体32の摺動方向に沿って延在し、材料流入通路27の一部を画成する複数本の切欠き部33Cがこの弁体32を囲むように形成されている。
【0026】
ケーシング22内に回転自在に収容された本実施形態におけるロータ24は、バレル23の一端面23Fに摺接する端面24Fを有し、従って、この端面24Fはバレル23の凸円錐面と対応した傾斜の非常に緩やかな凹円錐面にて形成されている。このように、バレル23の一端面23Fを凸円錐面に形成すると共にロータ24の端面24Fをこれと対応する凹円錐面に形成したことにより、可塑化通路30内に介在する樹脂をより円滑にロータ24の回転中心側へと付勢することができる。
【0027】
このロータ24の外観を180度反転して図7に示し、その平面形状を図8に示し、図4に示したロータ24の部分を抽出して図9に示す。すなわち、ロータ24の端面24Fには、その回転軸線の半径方向に延在する螺旋溝34が形成され、バレル23の一端面23Fとの間に樹脂の可塑化通路30を画成する。この螺旋溝34は、外側端部34oから樹脂が供給されると共に内側端部34Iがバレル23の材料流入通路27の開口端に連通するようになっている。本実施形態における螺旋溝34は、ロータ24の回転軸線を中心とし、かつ材料流入通路27の内径に等しい円を基準とするインボリュート曲線に沿って形成され、かつその幅がほぼ一定に設定されている。つまり、本実施形態の螺旋溝34においては、ロータ24の回転中心を通る任意の径方向直線に対してこれを横切る螺旋溝34の間隔、つまりピッチがすべて等しくなる。この螺旋溝34は、ロータ24の端面24Fと向き合った場合、その外側端部34Oから右回り(時計回り)で内側端部34Iへと旋回するような螺旋状となっている。より具体的には、螺旋溝34の外側端部34Oから内側端部34Iへと向かう方向をロータ24の回転方向に対して逆方向に設定している。このように、螺旋溝34をインボリュート曲線にて形成し、かつその幅をほぼ一定に設定したことにより、次のような利点が生ずる。すなわち、ロータ24の回転に伴い、ロータ24の回転中心を通る任意の径方向直線を横切る螺旋溝34内の樹脂が、見掛け上、ロータ24の回転中心、つまりバレル23の材料流入通路27に向かって等速で移動することとなる。この結果、樹脂を可塑化通路30内で円滑に流動させることが可能となる。
【0028】
また、本実施形態では可塑化通路30の断面積を螺旋溝34の内側端部34Iほど小さく設定し、より具体的には螺旋溝34の深さをその内側端部34Iほど浅く設定している。このように、可塑化通路30の断面積が螺旋溝34の内側端部34Iほど小さくなるように設定した場合、螺旋溝34の内側端部34Iに向けて可塑化通路30内を移動中の軟化溶融した樹脂が次第に圧縮力を受けることとなる。この結果、軟化溶融した樹脂の混練効果をさらに高めることができる。
【0029】
本実施形態におけるロータ24の端面24Fの回転中心部には、バレル23の材料流入通路27側に突出する滞留阻止部35が形成され、その先端が材料流入通路27の開口端よりもその奥側(逆止め弁29側)に突出している。この滞留阻止部35は、ロータ24の回転軸線を中心とする陣笠状曲面を有し、螺旋溝34の内側端部34Iに対して滑らかにつながっている。このように、本実施形態では滞留阻止部35がロータ24の回転軸線を中心とする円錐状曲面を有すると共に螺旋溝34の内側端部34Iに対して滑らかにつながっているため、次のような利点を有する。すなわち、軟化溶融した樹脂が滞留阻止部35と螺旋溝34の内側端部34Iとによって形成される流路に沿って流動するため、可塑化通路30内にて軟化溶融した樹脂の滞留をより確実に抑制することができる。この結果、可塑化した樹脂を可塑化通路30から材料流入通路27へと円滑に送出させることができる。
【0030】
螺旋溝34の内側端部34Iには、複数本(図示例では2本)の円柱状をなすピン36が螺旋溝34の底面から突出するように形成されている。本発明における突起部としてのピン36は、螺旋溝34の内周側と外周側とに樹脂の流動方向に沿って相隔てて配されている。このようなピン36を本発明における材料撹拌手段として螺旋溝34内に形成したことにより、ロータ24の回転に伴い、ピン36がその周囲に介在する樹脂に対して相対移動する結果、可塑化通路30の下流側に介在する樹脂の攪拌を促進させる機能を発揮する。これらピン36の径は、樹脂との相対移動に対して塑性変形しない程度の太さにする必要があるけれども、可塑化通路30における樹脂の円滑な流動を阻止しない程度に留めるべきである。また、ピン36の高さを螺旋溝34の深さと同じ高さにすることも可能であるが、螺旋溝34の深さの半分程度か、それ以下に留めておく方が好ましい。その理由は、可塑化が遅れ気味となる傾向を持つ螺旋溝34の底面領域にある樹脂と、可塑化が順調に進むバレル23の一端面23F近傍に介在する樹脂との攪拌を促進することができる からである。
【0031】
このような観点から、螺旋溝34の底面を螺旋溝34の長手方向(樹脂の流動方向)に沿って波形に形成したり、ピン36を羽根板状に形成したりすることも有効である。つまり、螺旋溝34内に突出するようにロータ24に形成される突起部の形状に関しては、可塑化通路30内に介在する樹脂の攪拌を促進できるような機能がありさえすれば、どのような形状のものであってもよい。
【0032】
先のバレル23の一端面23Fに突設された突起部28も可塑化通路30内に介在する樹脂、特にバレル23側からの加熱が受けにくい螺旋溝34の底部に介在する樹脂の攪拌を促進させるためのものであり、本発明における材料撹拌手段として機能する。このため、バレル23の一端面23Fに対してロータ24の端面24Fが密着状態で重ね合わせることができるように、ロータ24の端面24Fにはバレル23の突起部28に対する逃げ溝37が本発明における突起通過溝部として形成されている。図8中の二点鎖線は、ロータ24を回転した場合における突起部28の相対的な移動軌跡を示しており、この移動軌跡に対して干渉する部分を逃げ溝37として形成する必要がある。本実施形態では、内周側と外周側とで隣接する螺旋溝34の仕切り部分を一箇所のみ切り欠いてここを逃げ溝37としており、後は突起部28が螺旋溝34内を相対的に通過するように設定している。先のピン36は、突起部28の相対的な移動軌跡に沿ってその内周側に配設されていることが理解されよう。突起部28の突出量は、螺旋溝34の底面に当接しない程度に留めることが好ましく、逃げ溝37の幅は、突起部28の径(幅)寸法よりも僅かに大きく設定しておくことが有効である。
【0033】
このように、本実施形態では突起部28をバレル23の一端面23Fに突設すると共にピン36をロータ24の螺旋溝34の底面から突出するように形成している。このため、ロータ24の回転に伴って突起部28およびピン36が樹脂を逆方向に撹拌することとなり、樹脂に対する混練効果をより高めることができる。しかしながら、突起部28およびピン36の何れか一方のみでも樹脂に対する混練効果を得ることができるので、突起部28およびピン36の何れかを省略することも当然可能である。
【0034】
なお、上述した円柱状の突起部28やピン36以外に、角柱状または板状あるいは細いワイヤ状をなすものを本発明の突起部として用いることができる。特に、螺旋溝34内に突出する突起部は、螺旋溝34の底部以外に、側壁部分に形成することも可能である。
【0035】
前記ロータ駆動手段25は、ロータ24の端面24Fとバレル23の一端面23Fとが当接した状態のまま、バレル23の材料流入通路27を中心としてロータ24を駆動回転させる。ケーシング22に設置されてロータ駆動手段25の一部を構成するロータ駆動モータ38がロータ24に機械的に連結されている。なお、このロータ24の駆動回転による樹脂の流動原理などに関しては、特許文献1などに詳述されているように周知である。
【0036】
前記加熱手段26は、材料流入通路27および可塑化通路30内に介在する樹脂を加熱して軟化溶融させるためのものである。本実施形態においては、バレル23内に組み込まれたヒータがこの加熱手段26の一部を構成する。ヒータ26に対する通電を制御することによって、バレル23の温度が樹脂の融点温度以上かつロータ24の温度がバレル23の温度以下または樹脂の融点以下となるように調整する。
【0037】
ペレット状をなす樹脂は、ケーシング22に取り付けられたホッパ39内に貯溜されており、ここからケーシング22を介してロータ24の螺旋溝34の外側端部34Oへと供給される。そして、ロータ駆動モータ38の作動によるロータ24の回転に伴い、バレル23とロータ24との間に形成された可塑化通路30内を流動する。この時、バレル23の一端面23Fに形成された突起部28および螺旋溝34内に形成されたピン36の存在により、特に可塑化の進んでいない螺旋溝34の底部に介在する樹脂の攪拌が促進される。同時に、加熱手段26により樹脂の軟化溶融が進行し、バレル23の一端面23Fに対する樹脂の粘性抵抗が増大する結果、樹脂は圧力上昇を伴って螺旋溝34の内側端部34Iへと流動することとなる。
【0038】
本発明における計量射出部としての計量射出装置14は、固定側金型11Sを保持する固定側ダイプレート40と、固定側金型11Sに挿通されるノズル41と、射出プランジャ42と、射出・計量用モータ43とを含む。
【0039】
先端がキャビティ13に臨むノズル41は、バレル23に形成された材料流入通路27に連通する樹脂通路44が形成されている。また、バレル23には材料流入通路27に連通するチャンバ31がその側方に画成され、射出プランジャ42は、このチャンバ31に対して摺動自在に嵌合し、チャンバ31内に介在する樹脂をノズル41の樹脂通路44側に所定量ずつ圧送する。射出プランジャ42は、減速機45および図示しない動力伝達機構を介して射出・計量用モータ43に機械的に連結されている。
【0040】
従って、ロータ駆動モータ38によるロータ24の回転と、射出・計量用モータ43の逆転駆動による射出プランジャ42の後退動作(図4中、右方向移動)とを組み合わせ、可塑化通路30から材料流入通路27へと導かれた樹脂をチャンバ31内に収容する。しかる後、射出・計量用モータ43の正転駆動による射出プランジャ42の前進動作(図4中、左方向移動)によって、チャンバ内30に収容された所定量の樹脂をノズル41から金型ユニット11のキャビティ13内に射出する。
【0041】
このように、本実施形態におけるスクロール型の射出成形機10は、旧来のプリプラ方式の射出成形機と比較すると、可塑化送出装置15を大幅に小型化することができるため、射出成形機10としての全体的な小型化を企図することが可能である。
【0042】
なお、本発明はその特許請求の範囲に記載された事項のみから解釈されるべきものであり、上述した実施形態においても、本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が記載した事項以外に可能である。つまり、上述した実施形態におけるすべての事項は、本発明を限定するためのものではなく、本発明とは直接的に関係のないあらゆる構成を含め、その用途や目的などに応じて任意に変更し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明による射出成形機の一実施形態の外観を表す立体投影図である。
【図2】図1に示した実施形態における主要部の内部構造を模式的に表す破断平面図ある。
【図3】図1に示した実施形態における金型の部分の内部構造を模式的に表す破断正図である。
【図4】図2に示した主要部をさらに抽出拡大した断面図である。
【図5】図2,図4に示した実施形態におけるバレルの外観を表す立体投影図である。
【図6】図4に示したバレルの部分を抽出した断面図である。
【図7】図2,4に示した実施形態におけるロータを180度反転してその外観を表す立体投影図である。
【図8】図7に示したロータの正面図である。
【図9】図4に示したロータの部分を抽出した断面図である。
【符号の説明】
【0044】
10 射出成形機
11 金型ユニット
11S 固定側金型
11M 可動側金型
12 型締め装置
13 キャビティ
14 計量射出装置
15 可塑化送出装置
16 ベース
17 型締め用モータ
18 可動側ダイプレート
19 ボールねじ機構
19A ボールねじ軸
19N ボールナット
20 支柱
21 エジェクタ装置
22 ケーシング
23 バレル
23F バレルの一端面
24 ロータ
24F ロータの端面
25 ロータ駆動手段
26 加熱手段(ヒータ)
27 材料流入通路
28 突起部
29 逆止め弁
30 可塑化通路
31 チャンバ
32 弁体
33 弁体保持筒
33C 切欠き部
34 螺旋溝
34O 螺旋溝の外側端部
34I 螺旋溝の内側端部
35 滞留阻止部
36 ピン
37 逃げ溝
38 ロータ駆動モータ
39 ホッパ
40 固定側ダイプレート
41 ノズル
42 射出プランジャ
43 射出・計量用モータ
44 樹脂通路
45 減速機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料流入通路が一端面に開口するバレルと、
このバレルの一端面に摺接する端面を有し、当該バレルの材料流入通路の開口を中心として駆動回転し得るロータと、
このロータの端面に形成されて前記バレルの一端面との間に成形材料の可塑化通路を画成し、外側端部から成形材料が供給されると共に内側端部が前記バレルの材料流入通路の開口端に近接する螺旋溝と、
前記バレルの材料流入通路の開口を中心として前記ロータを駆動回転するロータ駆動手段と、
前記バレルに組み込まれ、前記材料流入通路および前記可塑化通路内に介在する成形材料を加熱して軟化溶融させるための加熱手段と、
前記可塑化通路内に介在する成形材料を攪拌するための材料攪拌手段と
を具えたことを特徴とする可塑化送出装置。
【請求項2】
前記材料撹拌手段は、前記螺旋溝内に突出するように前記ロータに形成された突起部を有することを特徴とする請求項1に記載の可塑化送出装置。
【請求項3】
前記材料撹拌手段は、前記バレルの一端面からロータ側に突出するように形成された突起部と、前記ロータの端面に形成されて前記突起部に対する前記ロータの回転に伴う干渉を回避するための突起通過溝部とを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の可塑化送出装置。
【請求項4】
所定量の成形材料を金型のキャビティ内に射出する計量射出部と、成形材料を可塑化して前記計量射出部に送出する可塑化送出部とを具えた射出成形機であって、前記可塑化送出部が請求項1から請求項3の何れかに記載の可塑化送出装置を含んでいることを特徴とする射出成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−285879(P2009−285879A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−138087(P2008−138087)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】