可変バルブタイミング機構の制御装置
【課題】バルブタイミングを高応答で制御できると共に、交番トルク(カムトルク)の影響によって操作量が振れてしまうことを抑制できる可変バルブタイミング機構の制御装置を提供する。
【解決手段】エンジン回転速度NEが閾値NEsよりも高い場合には、エンジンバルブの開閉動作による交番トルクの1周期毎にバルブタイミングを検出してフィードバック制御を行わせ、エンジン回転速度NEが閾値NEs以下である場合、バルブタイミング制御が定常状態であれば、前記交番トルクの1周期毎にバルブタイミングを検出してフィードバック制御を行わせ、バルブタイミング制御が過渡状態であれば、前記交番トルクの1周期よりも小さいクランク角度毎にバルブタイミングを検出してフィードバック制御を行わせる。
【解決手段】エンジン回転速度NEが閾値NEsよりも高い場合には、エンジンバルブの開閉動作による交番トルクの1周期毎にバルブタイミングを検出してフィードバック制御を行わせ、エンジン回転速度NEが閾値NEs以下である場合、バルブタイミング制御が定常状態であれば、前記交番トルクの1周期毎にバルブタイミングを検出してフィードバック制御を行わせ、バルブタイミング制御が過渡状態であれば、前記交番トルクの1周期よりも小さいクランク角度毎にバルブタイミングを検出してフィードバック制御を行わせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンバルブのバルブタイミングを変更する可変バルブタイミング機構の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、クランクパルス信号とカムパルス信号との信号対の位相差から、バルブタイミングを検出し、検出したバルブタイミングを目標バルブタイミングに一致させる制御装置において、クランクシャフトの所定回転の間に現れる複数の信号対のうち、バルブタイミングを検出するのに使用する信号対を、エンジン回転数の増大に応じて少なく選択するバルブタイミング調整装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−326572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バルブタイミング(カムシャフトの位相)の検出を短い周期で行わせれば、バルブタイミングの検出結果に基づく操作量の演算を高応答で行えるが、実際のバルブタイミング(実際のカムシャフトの位相)は、エンジンバルブの開閉動作による交番トルク(カムトルク)に影響されて振動するため、検出周期を短くすると、前記交番トルクに影響されたバルブタイミングの振動を拾ってしまう。
【0005】
そして、振動を拾った検出結果に基づいて、可変バルブタイミング機構を制御すると、振動に伴って発生する制御エラーに基づいて操作量が振れることで、可変バルブタイミング機構を駆動するアクチュエータ(例えば電磁ソレノイド)における消費エネルギー(消費電力)が増大してしまうなどの問題が生じる。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、バルブタイミングを高応答で制御できると共に、前記交番トルク(カムトルク)の影響によって操作量が振れてしまうことを抑制できる可変バルブタイミング機構の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのため、本発明に係る可変バルブタイミング機構の制御装置は、バルブタイミング制御が定常状態である場合に、エンジンバルブの開閉動作による交番トルクの1周期のクランク角度毎に検出されたバルブタイミングに基づいて可変バルブタイミング機構を制御させ、バルブタイミング制御が過渡状態である場合に、前記交番トルクの1周期よりも小さいクランク角度毎に検出されたバルブタイミングに基づいて可変バルブタイミング機構を制御させるようにした。
【発明の効果】
【0008】
上記発明によると、バルブタイミング制御の過渡状態において、バルブタイミングを高応答で制御でき、また、バルブタイミング制御の定常状態において、交番トルクの影響による操作量の振れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る制御装置が適用される車両用エンジンの実施形態を示す全体構成図である。
【図2】実施形態のエンジンに備えられる可変作動角・リフト機構(VEL)を示す斜視図である。
【図3】実施形態のエンジンに備えられる可変作動角・リフト機構(VEL)の部分拡大図である。
【図4】実施形態のエンジンに備えられる可変バルブタイミング機構(VTC)を示す断面図である。
【図5】実施形態のエンジンに備えられる可変作動角・リフト機構(VEL)及び可変バルブタイミング機構(VTC)による吸気バルブの開特性(バルブリフト量VL、バルブ作動OA、中心位相SP)の変化を示すグラフである。
【図6】実施形態におけるクランク角センサ,カム位相センサ,気筒判別センサの構成を示す図である。
【図7】実施形態におけるクランク角センサ,カム位相センサ,気筒判別センサの出力特性、及び、クランク角センサから出力される単位クランク角信号POSのカウンタの変化を示すタイムチャートである。
【図8】実施形態におけるカム位相信号CAM毎の位相検出値と、交番トルクの1周期毎の位相検出値との相関を示すタイムチャートである。
【図9】実施形態における可変バルブタイミング機構の制御手順を示すフローチャートである。
【図10】実施形態におけるバルブタイミングの検出周期の選択手順を示すフローチャートである。
【図11】実施形態におけるバルブタイミングの検出周期の切り換え時におけるオフセット補正処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】実施形態におけるオフセット分の算出処理を説明するためのタイムチャートである。
【図13】実施形態における検出周期の切り換え実行タイミングと、オフセット補正処理とを示すタイムチャートである。
【図14】実施形態における交番トルクの1周期毎の検出に用いるカム位相信号CAMの選択学習の手順を示すフローチャートである。
【図15】実施形態における交番トルクの1周期毎の検出に用いるカム位相信号CAMの選択学習の特性を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明に係る可変バルブタイミング機構の制御装置が適用される車両用エンジンのシステム構成を示す図である。
【0011】
図1に示すエンジン101は直列4気筒ガソリン内燃機関である。
但し、本願発明を適用するエンジンを、4気筒ガソリン機関に限定するものではない。
前記エンジン101の各気筒に空気を導入するための吸気管102には、エンジン101の吸入空気流量QAを検出する吸入空気量センサ103が設けられている。
【0012】
各気筒の燃焼室104の吸気口を開閉する吸気バルブ(エンジンバルブ)105が設けられ、該吸気バルブ105の上流側の吸気管102には、気筒毎に燃料噴射弁106が配置される。
【0013】
前記燃料噴射弁106には、前記燃料噴射弁106の開弁時間に比例する燃料が噴射されるように、圧力調整された燃料が供給される。
前記燃料噴射弁106から噴射された燃料は、吸気バルブ105を介して燃焼室104内に空気と共に吸引され、点火プラグ107による火花点火によって着火燃焼し、該燃焼による圧力がピストン108をクランクシャフト109に向けて押し下げることで、前記クランクシャフト109を回転駆動する。
【0014】
また、前記燃焼室104の排気口を開閉する排気バルブ(エンジンバルブ)110が設けられ、該排気バルブ110が開くことで排ガスが排気管111に排出される。
前記排気管111には、三元触媒等を備えてなる触媒コンバータ112が介装されており、排ガス中の有害成分は、前記触媒コンバータ112によって無害成分に転換され、排出される。
【0015】
前記吸気バルブ105・排気バルブ110は、クランクシャフト109によって回転駆動される吸気カムシャフト・排気カムシャフトの回転によって開動作する。
前記排気バルブ110は、予め定められた開弁特性(バルブリフト量・バルブ作動角・バルブタイミング)で開動作するが、前記吸気バルブ105の開弁特性(バルブリフト量・バルブ作動角・バルブタイミング)は、可変作動角・リフト機構(VEL)113及び可変バルブタイミング機構(VTC)114によって可変とされる。
【0016】
前記可変作動角・リフト機構113は、吸気バルブ105のバルブ作動角をバルブリフト量と共に連続的に変化させる機構であり、前記可変バルブタイミング機構114は、クランクシャフト109に対する後述の吸気カムシャフト115の回転位相を変化させることで、吸気バルブ105(エンジンバルブ)のバルブ作動角の中心位相(バルブタイミング)を進角・遅角変化させる機構である。
【0017】
また、前記点火プラグ107それぞれには、点火プラグ107に対して点火エネルギを供給する点火モジュール116が直付けされている。
前記点火モジュール116は、点火コイルと該点火コイルへの通電を制御するパワートランジスタとを含んで構成される。
【0018】
前記燃料噴射弁106,可変作動角・リフト機構113,可変バルブタイミング機構114及び点火モジュール116は、エンジン制御装置201によって制御される。
前記エンジン制御装置201は、マイクロコンピュータを含んで構成され、各種センサ・スイッチからの信号を入力し、予め記憶されたプログラムに従った演算処理を行うことで、前記燃料噴射弁106,可変作動角・リフト機構113,可変バルブタイミング機構114及び点火モジュール116それぞれの操作量を演算して出力する。
【0019】
従って、前記エンジン制御装置201は、可変バルブタイミング機構の制御装置としての機能を有する制御ユニットである。
図2は、吸気バルブ105のバルブ作動角をバルブリフト量と共に連続的に可変とする可変作動角・リフト機構113の構造を示す斜視図である。
【0020】
前記吸気バルブ105の上方に、前記クランクシャフト109によって回転駆動される吸気カムシャフト115が気筒列方向に沿って回転可能に支持されている。
前記吸気カムシャフト115には、吸気バルブ105のバルブリフタ105aに当接して吸気バルブ105を開駆動する揺動カム4が相対回転可能に外嵌されている。
【0021】
前記吸気カムシャフト115と揺動カム4との間には、吸気バルブ105のバルブ作動角をバルブリフト量と共に連続的に変更するための可変作動角・リフト機構113が設けられている。
【0022】
また、前記吸気カムシャフト115の一端部には、クランクシャフト109に対する前記吸気カムシャフト115の回転位相を変化させることにより、吸気バルブ105のバルブ作動角の中心位相(バルブタイミング)を連続的に変更する可変バルブタイミング機構114が配設されている。
【0023】
前記可変作動角・リフト機構113は、図2及び図3に示すように、吸気カムシャフト115に偏心して固定的に設けられる円形の駆動カム11と、この駆動カム11に相対回転可能に外嵌するリング状リンク12と、吸気カムシャフト115と平行に気筒列方向へ延びる制御軸13と、この制御軸13に偏心して固定的に設けられた円形の制御カム14と、この制御カム14に相対回転可能に外嵌すると共に、一端がリング状リンク12の先端に連結されたロッカアーム15と、このロッカアーム15の他端と揺動カム4とに連結されたロッド状リンク16と、を有している。
【0024】
前記制御軸13は、モータ等のアクチュエータ17によりギア列(減速機)18を介して、ストッパで規制される作動範囲内で回転駆動される。
上記の構成により、クランクシャフト109に連動して吸気カムシャフト115が回転すると、駆動カム11を介してリング状リンク12が並進移動すると共に、ロッカアーム15が制御カム14の軸心周りに揺動し、ロッド状リンク16を介して揺動カム4が揺動して吸気バルブ105が開駆動される。
【0025】
また、前記アクチュエータ17によって制御軸13の角度を変化させることにより、ロッカアーム15の揺動中心となる制御カム14の軸心位置が変化して揺動カム4の姿勢が変化する。
【0026】
これにより、図5の矢印301に示すように、吸気バルブ105のバルブ作動角の中心位相SPが殆ど変化させることなく、吸気バルブ105のバルブ作動角OAがバルブリフト量VLと共に連続的に変化する。
【0027】
尚、バルブ作動角が連続的に変化すると同時に、バルブ作動角の中心位相が変化するように、前記可変作動角・リフト機構113を構成することも可能である。
図4は、吸気バルブ105のバルブ作動角の中心位相(バルブタイミング)を可変とする前記可変バルブタイミング機構114の構造を示す。
【0028】
前記可変バルブタイミング機構114は、クランクシャフト109によりタイミングチェーンを介して回転駆動されるカムスプロケット51(タイミングスプロケット)と、前記吸気カムシャフト115の端部に固定されてカムスプロケット51内に回転自在に収容された回転部材53と、該回転部材53をカムスプロケット51に対して相対的に回転させる油圧回路54と、カムスプロケット51と回転部材53との相対回転位置を、既定のロック位置で選択的にロックするロック機構60とを備えている。
【0029】
前記カムスプロケット51は、外周にタイミングチェーン(又はタイミングベルト)が噛合する歯部を有する回転部(図示省略)と、該回転部の前方に配置されて前記回転部材53を回転自在に収容するハウジング56と、該ハウジング56の前後開口を閉塞するフロントカバー,リアカバー(図示省略)とから構成される。
【0030】
前記ハウジング56は、前後両端が開口形成された円筒状を呈し、内周面には、横断面台形状を呈し、それぞれハウジング56の軸方向に沿って設けられる4つの隔壁部63が90°間隔で突設されている。
【0031】
前記回転部材53は、吸気カムシャフト3の前端部に固定されており、円環状の基部77の外周面に90°間隔で4つのベーン78a,78b,78c,78dが設けられている。
【0032】
前記第1〜第4ベーン78a〜78dは、それぞれ断面が逆台形状を呈し、各隔壁部63間の凹部に配置され、前記凹部を回転方向の前後に隔成し、ベーン78a〜78dの両側と各隔壁部63の両側面との間に、進角側油圧室82と遅角側油圧室83を構成する。
【0033】
前記ロック機構60は、ロックピン84が、回転部材53の初期位置において係合孔(図示省略)に係入するようになっている。
前記油圧回路54は、進角側油圧室82に対して油圧を給排する第1油圧通路91と、遅角側油圧室83に対して油圧を給排する第2油圧通路92との2系統の油圧通路を有し、この両油圧通路91,92には、供給通路93とドレン通路94a,94bとがそれぞれ通路切り換え用の電磁切換弁95を介して接続されている。
【0034】
前記供給通路93には、オイルパン96内の油を圧送するエンジン駆動のオイルポンプ97が設けられている一方、ドレン通路94a,94bの下流端がオイルパン96に連通している。
【0035】
前記第1油圧通路91は、回転部材53の基部77内に放射状に形成されて各進角側油圧室82に連通する4本の分岐路91dに接続され、第2油圧通路92は、各遅角側油圧室83に開口する4つの油孔92dに接続される。
【0036】
前記電磁切換弁95は、内部のスプール弁体が各油圧通路91,92と供給通路93及びドレン通路94a,94bとを相対的に切り換え制御するようになっている。
前記エンジン制御装置201は、前記電磁切換弁95を駆動する電磁アクチュエータ99に対する通電量を、ディザ信号が重畳されたデューティ制御信号(操作量)に基づいて制御する。
【0037】
前記可変バルブタイミング機構114においては、電磁アクチュエータ99にデューティ比(オン時間割合)0%のオフ制御信号を出力すると、オイルポンプ47から圧送された作動油は、第2油圧通路92を通って遅角側油圧室83に供給されると共に、進角側油圧室82内の作動油が、第1油圧通路91を通って第1ドレン通路94aからオイルパン96内に排出されるようにしてある。
【0038】
従って、電磁アクチュエータ99にデューティ比0%のオフ制御信号を出力すると、遅角側油圧室83の内圧が高くなる一方で、進角側油圧室82の内圧が低くなり、回転部材53は、ベーン78a〜78bを介して最大遅角側に回転し、この結果、吸気バルブ105の開期間(バルブ作動角の中心位相)がピストン位置に対して相対的に遅角変化する。
【0039】
即ち、電磁アクチュエータ99への通電を遮断すると、吸気バルブ105のバルブ作動角の中心位相(バルブタイミング)は遅角変化し、最終的には、最遅角位置で停止する。
また、電磁アクチュエータ99にデューティ比100%のオン制御信号を出力すると、作動油は、第1油圧通路91を通って進角側油圧室82内に供給されると共に、遅角側油圧室83内の作動油が第2油圧通路92及び第2ドレン通路94bを通ってオイルパン96に排出され、遅角側油圧室83が低圧になる。
【0040】
このため、電磁アクチュエータ99にデューティ比100%のオン制御信号を出力すると、回転部材53は、ベーン78a〜78dを介して進角側へ最大に回転し、これによって、吸気バルブ105の開期間(バルブ作動角の中心位相)がピストン位置に対して相対的に進角変化する。
【0041】
このように、前記可変バルブタイミング機構114は、図5の矢印302に示すように、吸気バルブ105のバルブ作動角OA及びバルブリフト量VLを変えずに、吸気バルブ105のバルブ作動角の中心位相SPを進・遅角変化させる機構であり、前記制御信号のデューティ比を変更することで、最遅角位置から最進角位置までの間の任意の位置に、吸気バルブ105のバルブ作動角の中心位相(バルブタイミング)を変化させることができる。
【0042】
尚、吸気バルブ105のバルブ作動角をバルブリフト量と共に連続的に可変とする可変作動角・リフト機構113、吸気バルブ105のバルブ作動角の中心位相を連続的に可変とする可変バルブタイミング機構114の構造・形式は、上記の図2〜4に示したものに限定されない。
【0043】
例えば、可変バルブタイミング機構114は、クランクシャフト109に対する吸気カムシャフト115の回転位相を変化させる機構のものであれば良く、上記の油圧ベーン式の他、歯車を用いてクランクシャフト109に対し前記吸気カムシャフト115を相対回転させる機構や、油圧アクチュエータの他、モータや電磁ブレーキをアクチュエータとして用いる機構を用いることができる。
【0044】
また、本実施形態では、可変バルブタイミング機構114と共に可変作動角・リフト機構113を備えるが、可変作動角・リフト機構113を備えない構成であっても良く、更には、吸気バルブ105(吸気カムシャフト)と共に、又は、吸気バルブ105(吸気カムシャフト)に代えて、排気バルブ110(排気カムシャフト)に可変バルブタイミング機構114を備えることができる。
【0045】
前記エンジン制御装置201には、前記制御軸13の角度に応じたレベルの信号を出力する角度センサ202の出力信号が入力され、角度センサ202の出力信号に基づき前記制御軸13の角度を検出する一方で、エンジン運転条件(エンジン負荷・エンジン回転速度など)に応じて目標バルブ作動角(目標バルブリフト量)に対応する制御軸13の目標角度を演算し、角度センサ202で検出される制御軸13の実角度が前記目標角度に近づくように、前記アクチュエータ(モータ)17への通電操作量をフィードバック制御する。
【0046】
また、前記エンジン制御装置201は、エンジン運転条件(エンジン負荷・エンジン回転速度など)に基づいて吸気バルブ105のバルブ作動角の中心位相の目標進角量(目標位相)を演算し、クランク角センサ203及びカム位相センサ204の出力信号に基づいて検出される実際の進角量(位相)が前記目標進角量(目標位相)に近づくように、前記実際の進角量(実際の位相)と目標進角量(目標位相)との偏差に基づいて、電磁アクチュエータ99に出力する制御信号のデューティ比(操作量)をフィードバック制御する。
【0047】
前記クランク角センサ203(基準角度検出手段)は、図6に示すように、クランクシャフト109に軸支したシグナルプレート203aの周縁にクランク角10deg毎に形成される被検出部203bを、センサ素子203cで検出する構成であり、図7に示すように、各気筒の上死点を起点としてクランク角10deg毎に立ち上がるパルス信号である単位クランク角信号POSを出力する。
【0048】
ここで、前記単位クランク角信号POSが、各気筒の上死点前60deg及び70degのクランク角位置で連続して抜けを生じるように、前記被検出部203bが形成されている。
換言すれば、前記単位クランク角信号POSは、エンジン101における気筒間の行程位相差(点火間隔)であるクランク角180deg毎に、連続して2パルスの歯抜けを生じるように設定されている。
【0049】
尚、クランク角センサ203が、歯抜けなしにクランク角10deg毎の単位クランク角信号POSを出力すると共に、行程位相差毎の基準クランク角信号REFを、前記単位クランク角信号POSとは独立に出力する構成とすることができる。
【0050】
また、前記カム位相センサ204(カムパルス発生手段)は、図6に示すように、吸気カムシャフト115に軸支したシグナルプレート204aの周縁にクランク角22.5deg毎に形成される被検出部204bを、センサ素子204cで検出する構成であり、図7に示すように、吸気カムシャフト115の位相検出に用いるパルス信号であるカム位相信号CAMを出力する。
【0051】
ここで、前記カム位相信号CAMが、吸気カムシャフト115の1回転当たり、1パルスだけ抜けを生じるように、前記被検出部204bを1箇所だけ欠落させてある。
そして、前記被検出部204bの欠落箇所204dを、カム位相信号CAMの周期変化に基づいて検出することで、欠落箇所204dを基点に各カム位相信号CAMを識別でき、具体的には、カム位相信号CAMが発生する毎に、欠落箇所204dから何番目のカム位相信号CAMであるかを判別するようにしてある。
【0052】
更に、気筒判別センサ210が設けられており、この気筒判別センサ210は、図6に示すように、排気カムシャフト211に軸支したシグナルプレート210aの周縁に90deg毎に相互に異なる数だけ設けられる被検出部210bを、センサ素子210cで検出する構成であり、図7に示すように、気筒間の行程位相差(点火間隔)に相当するクランク角180deg毎に、基準ピストン位置にある気筒のナンバーをパルス数で示す気筒判別信号PHASEを出力する。
【0053】
尚、気筒判別信号PHASEが、パルス幅で気筒を示すように構成することができる。
また、本実施形態におけるエンジン101の点火順は、#1気筒→#3気筒→#4気筒→#2気筒の順であるものとする。
【0054】
前記エンジン制御装置201は、前記単位クランク角信号POSの発生周期を計測することで、単位クランク角信号POSの歯抜け部分を検出し、更に、歯抜け直後の単位クランク角信号POSの出力位置をBTDC50degの位置として識別し、単位クランク角信号POSが3パルス入力される毎にカウントアップされるカウンタCRACNT1の値を、前記BTDC50deg毎に零にクリアする。
【0055】
更に、単位クランク角信号POSが3個入力される毎にカウントアップされるカウンタCRACNT2の値を、前記カウンタCRACNT1の値が4になる毎(BTDC110deg毎)にクリアさせる。
【0056】
そして、前記カウンタCRACNT2がクリアされる周期、即ち、BTDC110degから次のBTDC110degまでの間で、前記気筒判別信号PHASEの発生数をカウントし、前記気筒判別信号PHASEの発生数に基づいて次の1周期に含まれる上死点がどの気筒の圧縮上死点であるかを判別し、該判別結果に従って気筒判別値CTYLCNTを更新する。
【0057】
例えば、前記カウンタCRACNT2がクリアされる間で、気筒判別信号PHASEが3パルス出力されたときには、次に圧縮上死点となる気筒は#4気筒であると判断して、前記カウンタCRACNT2がクリアされるタイミング(BTDC110degであって基準クランク角位置)において気筒判別値CTYLCNTを、#4気筒に対応する「4」に切り換える。
【0058】
気筒別の燃料噴射時期や点火時期の制御においては、前記気筒判別値CTYLCNTに基づいて燃料噴射・点火を行わせる気筒を特定し、前記基準クランク角位置から要求の燃料噴射時期・点火時期までの角度を設定する。
【0059】
そして、基準クランク角位置から要求の燃料噴射時期・点火時期までの角度を、単位クランク角信号POSのカウント、及び、10deg以下の角度については時間換算して検出し、燃料噴射させる気筒の燃料噴射弁131に噴射パルス信号を出力し、点火する気筒の点火コイルの通電を制御するパワートランジスタに点火制御信号を出力する。
【0060】
また、前記カウンタCRACNT2がクリアされるタイミング(基準クランク角位置)から、カム位相信号CAMまでの角度FAを、単位クランク角信号POS及び時間計測によってそれぞれ検出する。
【0061】
そして、前記角度FAから実際の吸気カムシャフト115の位相(バルブタイミングの進角量)を求め、この位相検出値が、目標位相に近づくように、可変バルブタイミング機構114をフィードバック制御する。
【0062】
ここで、欠落箇所204dから何番目のカム位相信号CAMであるかが判別されるので、前記角度FAのデータが、何番目のカム位相信号CAMまでの角度であるかを判断でき、これによって、吸気カムシャフト115の位相変化によってカム位相信号CAMの出力位置がクランク角に対して変化しても、吸気カムシャフト115の位相を検出できる。
【0063】
例えば、図7において、最遅角時には、基準クランク角位置REF1の直後に出力されるのは4番目のカム位相信号CAMであるのに対し、最進角時には、基準クランク角位置REF1の直後に出力されるのは6番目のカム位相信号CAMである。
【0064】
従って、基準クランク角位置REFから最初のカム位相信号CAMまでの角度を計測しても、最初のカム位相信号CAMを識別しないと、位相を誤検出することになってしまう。
【0065】
しかし、前述のように、位相検出の対象としたカム位相信号CAMが何番目のものであるかを判別できれば、カム位相信号CAMの出力位置が、基準クランク角位置REFを跨いで変化しても、位相を正しく検出できる。
【0066】
可変バルブタイミング機構114における位相の変更幅は、180degよりも小さい角度(例えば40〜60deg程度)であるため、例えば、最遅角時における4番目のカム位相信号CAMの出力位置が基準クランク角位置の直後であれば、この4番目のカム位相信号CAMと直前の基準クランク角位置との間の角度が、最遅角時における角度よりも大きい角度に検出された場合には、4番目のカム位相信号CAMの出力位置が、基準クランク角位置REFを跨いで基準クランク角位置REFの前に変化したと判断でき、これに基づいてそのときの位相を正しく検出できる。
【0067】
上記構成によると、欠落箇所204dを除いて、同じ角度周期毎に吸気カムシャフト115の位相が検出することが可能である。
上記では、カム位相信号CAMに欠落箇所204dを設けることで、欠落箇所204dを基点に各カム位相信号CAMを特定できるようにしたが、例えば、気筒判別センサ210と同様なセンサを吸気カムシャフト115に設け、気筒判別信号PHASEと前記カム位相信号CAMとの相関から、カム位相信号CAMを個々に特定させることができ、この場合、カム位相信号CAMを一部で欠落させる必要がなくなる。
【0068】
但し、カム位相信号CAMの発生周期をクランク角22.5degに限定するものではなく、吸気バルブ150の開閉動作によって発生する交番トルク(カムトルク)の1周期(本実施形態のエンジン101ではクランク角180deg)よりも短い周期であれば良いが、後述するように、交番トルクの1周期毎の位相検出を可能にするために、カム位相信号CAMの発生周期×n(n:整数)が交番トルクの1周期(180deg)となることが要求され、更に、1周期の中間位置でカム位相信号CAMが発生することが好ましいので、前記nは4以上の偶数が好ましく、本実施形態では、n=8(カム位相信号CAMの発生周期=クランク角22.5deg)を選択してある。
【0069】
前記クランク角センサ203及びカム位相センサ204の出力信号に基づいて検出される実際のバルブタイミングの進角量(位相)のデータは、前記エンジン制御装置201において、可変バルブタイミング機構114のフィードバック制御に用いられる。
【0070】
前記エンジン制御装置201には、上記吸入空気量センサ103,角度センサ202,クランク角センサ203,カム位相センサ204及び気筒判別センサ210の出力信号が入力される他、エンジン101の運転・停止のメインスイッチであるイグニッションスイッチ(IGNスイッチ)205の信号、アクセルセンサ206からのアクセルペダル207の開度信号ACC、水温センサ208からの冷却水温度信号TW、空燃比センサ209からの空燃比信号AFなどが入力される。
【0071】
前記空燃比センサ209は、排気管111に設けられ、エンジン101の空燃比と密接な関係にある排気中の酸素濃度に感応して出力が変化するセンサ(酸素濃度センサ)である。
【0072】
前述のように、本実施形態の場合、カム位相信号CAMの発生毎に吸気カムシャフト115の位相(吸気バルブ105のバルブタイミング)を検出できるが、吸気バルブ150の開動作によって発生する交番トルク(カムトルク)の1周期よりも短い周期で位相を検出させた場合、前記交番トルクに因る位相(バルブタイミング)の振れ(周期的な変動)を検出値が拾い、図8に示すように、位相検出値に振れ(周期的な変動)が生じる。
【0073】
前述のように、位相検出値に振れ(周期的な変動)が生じると、振れに伴って発生する制御エラーに基づいて操作量(デューティ信号)が振れることで、可変バルブタイミング機構114を駆動する電磁アクチュエータ99の消費エネルギー(消費電力)が増大してしまう。
【0074】
前記交番トルクの影響を排除するには、交番トルクの1周期と同じ周期でバルブタイミングを検出すれば良いが、係る構成とすると、目標のバルブタイミングに向けて実際のバルブタイミングを追従変化させるバルブタイミング制御の過渡状態において、バルブタイミング検出値の更新が遅れ、制御応答が低下したり、オーバーシュートが発生したりする。
【0075】
そこで、本実施形態では、前記交番トルクの1周期毎(クランク角180deg毎)のバルブタイミングの検出(第1のバルブタイミング検出手段)と、前記交番トルクの1周期よりも短い角度周期であるカム位相信号CAM発生毎のバルブタイミングの検出(第2のバルブタイミング検出手段)とを、バルブタイミング制御の過渡・定常判定に応じて切り替えるようにしてある。
【0076】
具体的には、バルブタイミング制御の過渡状態では、制御応答の改善及びオーバーシュートの抑制を図るために、カム位相信号CAM発生毎のバルブタイミングの検出(第2のバルブタイミング検出手段)を選択し、バルブタイミング制御の定常状態では、交番トルクに影響された検出値の振れによって操作量が振れることを抑制するために、前記交番トルクの1周期毎(クランク角180deg毎)のバルブタイミングの検出(第1のバルブタイミング検出手段)を選択する。
【0077】
上記のバルブタイミング制御の過渡・定常判定に応じてバルブタイミングの検出周期を選択する、エンジン制御装置201の演算機能が、本実施形態における選択手段に相当する。
【0078】
前記交番トルクの1周期毎(クランク角180deg毎)のバルブタイミングの検出は、前記カム位相信号CAMのうちから、クランク角180deg毎に出力される信号を選択(クランク角180deg毎に出力される信号以外をマスク)して、位相検出に用いることで行える。
【0079】
更に、クランク角180deg毎に第2のカム位相信号CAM2を出力する第2のカム位相センサを、前記カム位相センサ204と共に吸気カムシャフト115に備えるようにし、前記第2のカム位相センサから出力される第2のカム位相信号CAM2と前記基準クランク角位置REFとの位相差を検出することによっても、交番トルクの1周期毎のバルブタイミングの検出を行わせることができる。
【0080】
図9のフローチャートは、エンジン制御装置201によって実行される可変バルブタイミング機構114の制御手順を示す。
図9のフローチャートに示すルーチンは、予め決められた時間周期(例えば10ms)毎に実行され、まず、ステップS101では、エンジン運転条件(エンジン負荷・エンジン回転速度など)の検出結果を読み込む。
【0081】
ステップS102では、前記ステップS101で読み込んだエンジン運転条件に基づいて、吸気バルブ105のバルブ作動角の中心位相の目標進角量(目標位相、目標バルブタイミング)を演算する。
【0082】
ステップS103では、前記中心位相の進角量(位相、バルブタイミング)の最新検出値を読み込む。
ステップS104では、前記目標進角量(目標位相)と最新検出値との偏差(制御エラー)を演算する。
【0083】
ステップS105では、前記偏差(制御エラー)に基づく比例動作・積分動作・微分動作によって、前記電磁アクチュエータ99のフィードバック操作量(制御デューティ)を演算する。
【0084】
尚、前記偏差(制御エラー)に基づくフィードバック操作量の演算を、比例動作・積分動作・微分動作(PID制御)に限定するものではなく、比例動作・積分動作(PI制御)やスライディングモード制御を用いるなど、公知の自動制御技術を適用できる。
【0085】
ステップS106では、前記ステップS500で算出した操作量(制御デューティ)を電磁アクチュエータ99に出力する。
前記ステップS103で読み込まれる実際の進角量(実際のバルブタイミング)は、前述のように、その検出周期が切り替えられるようになっており、検出周期の選択手順を、図10のフローチャートに従って説明する。
【0086】
図10のフローチャートに示すルーチンは、予め決められた時間周期(例えば10ms)毎に実行され、まず、ステップS201では、そのときのエンジン回転速度NEが閾値NEs以上であるか否かを判断する。
【0087】
前記閾値NEsは、前記交番トルクの1周期(180deg)毎のバルブタイミングの検出周期(ms)が、前記図9のフローチャートに示すルーチンの実行周期(例えば10ms)以下となる回転速度に予め設定されている。
【0088】
エンジン回転速度NEが前記閾値NEs以上であれば、前記交番トルクの1周期毎のバルブタイミングを検出させたとしても、前回の操作量の演算タイミングから今回の操作量の演算タイミングまでの間にバルブタイミングの検出値が少なくとも1回は更新されるから、前回の操作量の演算に用いた検出値をそのまま用いて今回の操作量演算がなされることが回避され、必要充分な更新周期で実際のバルブタイミングが検出されることになる。
【0089】
更に、前記交番トルクの1周期毎にバルブタイミングを検出させれば、交番トルクに影響されてバルブタイミングが振れたとしても、検出値が前記振れを拾って変動することがない。
【0090】
そこで、エンジン回転速度NEが前記閾値NEs以上であると判断されると、ステップS202へ進み、バルブタイミングの検出を前記交番トルクの1周期毎に行わせることを選択する。
【0091】
上記のように、エンジン回転速度NEが前記閾値NEs以上である場合には、交番トルクの1周期毎にバルブタイミングを検出させれば、必要な応答性を確保しつつ、カム位相信号CAMの発生毎にバルブタイミングを検出させる場合に比べて、バルブタイミング検出のための演算負荷を軽減できる。
【0092】
前記交番トルクの1周期毎の検出は、カム位相信号CAMのうち、交番トルクの1周期毎の検出に用いる信号が出力された時点で、直前の基準クランク角位置から当該信号までの角度から実際の位相を演算するものである。
【0093】
一方、ステップS201でエンジン回転速度NEが前記閾値NEs未満であると判断された場合には、ステップS203へ進む。
ステップS203では、前記ステップS104で演算される偏差(制御エラー)が、許容誤差以内であるか否かを判断する。
【0094】
詳細には、前記偏差(制御エラー)の絶対値が、許容誤差値以下であるか否かを判断することで、実際のバルブタイミングが、目標値を含む既定範囲内の値であるか否かを判断する。
【0095】
前記許容誤差は、予測される定常偏差などを考慮して、予め設定・記憶される。
ステップS203で、偏差(制御エラー)が前記許容誤差以内であると判断されると、ステップS204へ進み、偏差(制御エラー)が前記許容誤差以内である状態が既定時間以上継続しているか否かを判断する。
【0096】
前記ステップS204の判断は、偏差(制御エラー)が前記許容誤差以内となった状態が、一時的なものではなく、安定していることを判断するものであり、前記既定時間は、オーバーシュートなどによって目標を横切って実際のバルブタイミングが変化する場合や、目標を中心とした実際のバルブタイミングの振幅が徐々に減衰し、収束状態に向けて変化しつつある場合を排除できるように、予め設定・記憶される。
【0097】
ステップS204で、偏差(制御エラー)が前記許容誤差以内である状態が既定時間以上継続していると判断した場合には、実際のバルブタイミングが目標付近に収束している状態であるので、ステップS205へ進んで、フィードバック制御が定常状態であると判定する。
【0098】
そして、ステップS205でフィードバック制御の定常判定を行うと、ステップS206へ進み、前記交番トルクの1周期毎のバルブタイミングの検出を選択する。
フィードバック制御の定常状態であれば、実際のバルブタイミングが目標付近に収束しており、交番トルクの影響によって周期的にバルブタイミングが変動するが、バルブタイミングの検出を前記交番トルクの1周期毎に行わせれば、検出値が前記周期的な変動に影響されて変動することが抑制される。
【0099】
従って、検出値に基づいて算出される操作量が無用に変動し、可変バルブタイミング機構114のアクチュエータにおける電力消費が大きくなることを抑制できる。
また、フィードバック制御の定常状態であれば、バルブタイミングの検出遅れがあっても、該遅れによるフィードバック制御性の低下が充分に小さく、前記交番トルクの1周期毎にバルブタイミングを検出させることができる。
【0100】
一方、ステップS203で、偏差(制御エラー)が前記許容誤差を超えていると判断された場合、及び、ステップS204で、偏差(制御エラー)が前記許容誤差以内である状態の継続時間が前記既定時間に達していないと判断された場合には、ステップS207へ進み、バルブタイミングを目標に向けて変化させているフィードバック制御の過渡状態であると判定する。
【0101】
そして、ステップS207でフィードバック制御の過渡判定を行うと、ステップS208へ進み、カム位相信号CAM発生毎のバルブタイミングの検出を選択する。
前記カム位相信号CAM発生毎のバルブタイミングの検出は、カム位相信号CAMが出力される毎に、直前の基準クランク角位置から当該信号までの角度から実際の位相を演算するものである。
【0102】
実際のバルブタイミングが目標に向けて変化している途中である過渡状態において、定常時よりも短い周期毎にバルブタイミングを検出すれば、目標に向けて変化しつつある実際のバルブタイミングを応答良く検出でき、目標バルブタイミングに向けて応答良く制御することが可能となる。
【0103】
尚、バルブタイミング制御の定常・過渡を、目標バルブタイミングの変化に基づいて判断させることができ、具体的には、目標バルブタイミングの変化から、バルブタイミングの収束が見込まれる基準時間が経過するまでの間を過渡状態として判別し、かつ、前記基準時間を目標バルブタイミングの変化量に応じて可変に設定することができる。
【0104】
ところで、過渡状態から定常状態への切り換り判断に基づいて、カム位相信号CAM発生毎のバルブタイミング検出から、交番トルク周期毎(クランク角180deg毎)のバルブタイミング検出に切り換えるときに、交番トルクに影響されたバルブタイミング変動の中心値と、交番トルク周期毎(クランク角180deg毎)のバルブタイミング検出値との偏差によって、実際にはバルブタイミングが目標付近に収束しているのに、実際のバルブタイミングをシフトさせる補正がなされてしまう可能性がある。
【0105】
そこで、前記エンジン制御装置201は、前記過渡状態から定常状態への切り換り判断に基づいて、カム位相信号CAM発生毎のバルブタイミング検出から、交番トルク周期毎(クランク角180deg毎)のバルブタイミング検出に切り換えるときに、前記交番トルク周期毎のバルブタイミング検出値をオフセット補正するようになっている。
【0106】
図11のフローチャートは、カム位相信号CAMの発生毎に実行され、まず、ステップS301では、可変バルブタイミング機構114の制御に用いるバルブタイミングの検出値VTCNOWとして、カム位相信号CAMの発生毎の検出値VTCANG1が選択されているか、交番トルク周期毎の検出値VTCANG2が選択されているかを判別する。
【0107】
ステップS301で、交番トルク周期毎(クランク角180deg毎)の検出が選択されていると判断されると、ステップS302へ進み、現在、可変バルブタイミング機構114の制御に用いているバルブタイミングの検出値VTCNOWが、カム位相信号CAMの発生毎の検出値VTCANG1であるか否かを判断する。
【0108】
ここで、現在制御に用いている検出値VTCNOWが、交番トルク周期毎(クランク角180deg毎)の検出値VTCANG2であれば、そのまま、交番トルク周期毎(クランク角180deg毎)の検出を継続すればよいので、ステップS303〜ステップS309を迂回して本ルーチンを終了させる。
【0109】
一方、現在制御に用いている検出値VTCNOWが、カム位相信号CAM発生毎の検出値VTCANG1であれば、交番トルク周期毎(クランク角180deg毎)の検出値VTCANG2への切り替えが完了していないことになるので、前記切り替えを実行すべくステップS303へ進む。
【0110】
ステップS303では、交番トルク周期毎(クランク角180deg毎)のバルブタイミング検出を開始させる。尚、ステップS303に進んだ時点では、カム位相信号CAMの発生毎の検出値VTCANG1の更新演算は継続されている。
【0111】
ステップS304(平均値演算手段)では、交番トルク周期毎(クランク角180deg毎)の検出への切り替え判断直後の交番トルクの1周期における検出値VTCANG1の平均値A2を演算し、かつ、平均値A2に最も近い検出値VTCANG1が算出された時刻T2を求める。
【0112】
ステップS305では、ステップS304で平均値A2を求めた交番トルクの1周期中に算出された検出値VTCANG2をA1として求め、更に、当該検出値VTCANG2(A1)が算出された時刻T1を求める。
【0113】
ステップS306(平均値演算手段)では、ステップS304で平均値A2を求めた交番トルクの1周期の次の1周期における検出値VTCANG1の平均値A3を演算し、かつ、平均値A3に最も近い検出値VTCANG1が算出された時刻T3を求める。
【0114】
ステップS307(補正値演算手段)では、前記A1,A2,A3,T1,T2,T3の情報に基づいて、時刻T1における検出値VTCANG1の平均値と検出値VTCANG2とのオフセット分VTCOFS(補正値)を算出する。
【0115】
図12は、前記A1,A2,A3,T1,T2,T3を示すタイムチャートであり、T0の時点で、交番トルク周期毎(クランク角180deg毎)の検出への切り替えを判断すると、その後交番トルクの1周期(クランク角180deg)の間で、カム位相信号CAM毎に算出された検出値VTCANG1の平均値A2を演算し、更に、該平均値A2を求めた交番トルクの1周期に続く次の1周期における平均値A3を演算する。
【0116】
一方、最初の交番トルクの1周期の間で演算された検出値VTCANG2をA1とする。
ここで、時刻T2の時点での平均値A2と、時刻T3の時点での平均値A3と、時刻T3の時点で平均値A2と同じ値を示す点A2’とによって構成される三角形TR1と、時刻T2の時点での平均値A2と、時刻T1の時点での平均値A4と、時刻T1の時点で平均値A2と同じ値を示す点A2’’とによって構成される三角形TR2とは、相似であって、下記の式(1)の関係を満たす。
【0117】
式(1)…(A2−A4):(A3−A2)=(T2−T1):(T3−T2)
そして、A4以外のA2,A3,T1,T2,T3は既知であるから、式(1)から時刻T1の時点での平均値A4を求めることができ、時刻T1の時点での検出値VTCANG2であるA1と前記平均値A4との差を、前記オフセット分VTCOFSとして算出する。
【0118】
即ち、前記オフセット分VTCOFSは、検出値VTCANG2を、検出値VTCANG1の平均値に近づけるための補正値である。
尚、前記式(1)は、時刻T2及び時刻T3における平均値A2,A3から、平均値の変化速度を求め、該変化速度から、時刻T1における平均値を推定することができることを示すものであり、A4を求める方法を式(1)に限定するものではない。
【0119】
ステップS307でオフセット分VTCOFSを算出すると、次のステップS308(補正手段)では、オフセット分VTCOFSを求めた後に検出値VTCANG2を演算したタイミングで、制御に用いる検出値VTCNOWを、検出値VTCANG1から、検出値VTCANG2をオフセット分VTCOFSだけ減算して求められる検出値VTCANG3に切り換える。
【0120】
ステップS309では、検出値VTCANG1の演算を停止させ、以後、カム位相信号CAM発生毎の検出値VTCANG1の演算への切り換えが判断されるまで、検出値VTCANG1の演算停止状態に保持され、交番トルクの1周期毎(クランク角180deg毎)に、VTCANG2−VTCOFS=VTCANG3をVTCNOWに設定し、VTCNOW=VTCANG3に基づいて、可変バルブタイミング機構114を制御させる。
【0121】
上記のようにして、検出値VTCANG1から検出値VTCANG3に切り換えれば、切り換え後は検出値VTCANG1の平均値に基づいて可変バルブタイミング機構114が制御されることになり、無用なバルブタイミングのシフト補正がなされることを抑制できる。
【0122】
図13は、検出値VTCANG1から検出値VTCANG3への切り換えの様子を示すタイムチャートである。
時刻T3は、検出値VTCANG1がその平均値を示したタイミングであり、前記平均値A3及び時刻T3に基づいて前述のようにして、オフセット分VTCOFSが算出される。
【0123】
そして、オフセット分VTCOFSを算出した後の最初の検出値VTCANG2の演算タイミング(時刻T5)から、交番トルクの1周期毎の検出に切り換えられるが、検出値VTCANG2が演算される毎に、検出値VTCANG2をオフセット分VTCOFSだけ補正し、該補正の結果である検出値VTCANG3を、可変バルブタイミング機構114のフィードバック制御に用いるようにする。
【0124】
従って、検出値VTCANG3に切り換えられた後も、検出値VTCANG1の振れの中心値に基づいて、可変バルブタイミング機構114がフィードバック制御されることになる。
【0125】
一方、ステップS301で、可変バルブタイミング機構114の制御に用いるバルブタイミングの検出値VTCNOWとして、カム位相信号CAM発生毎の検出値VTCANG1が選択されていると判断されると、ステップS310へ進む。
【0126】
ステップS310では、現在制御に使用している検出値VTCNOWが、交番トルク周期毎(クランク角180deg毎)の検出値VTCANG3であるか否かを判断する。
そして、現在制御に使用している検出値VTCNOWが、交番トルク周期毎(クランク角180deg毎)の検出値VTCANG3であって、カム位相信号CAM発生毎の検出値VTCANG1への切り換えが済んでいない場合には、ステップS311へ進む。
【0127】
ステップS311では、カム位相信号CAM発生毎の検出値VTCANG1の演算を開始させ、次のステップS312では、交番トルク周期毎(クランク角180deg毎)の検出値VTCANG3の算出タイミングになるのを待って、制御に用いる検出値VTCNOWを、検出値VTCANG3から検出値VTCANG1に切り換える。
【0128】
そして、次のステップS313では、制御に用いなくなった検出値VTCANG2(VTCANG3)の演算を停止させる。
ところで、交番トルクに影響されて振れるバルブタイミングの中心値を検出するタイミングと、交番トルク周期毎の検出タイミングとのずれによって、前記オフセット分VTCOFSによる補正が必要となる。
【0129】
そこで、交番トルク周期毎の検出タイミングを、交番トルクに影響されて振れるバルブタイミングの中心値を検出するタイミングに設定する処理、換言すれば、交番トルクに影響されて振れるバルブタイミングの中心値を検出することになるカム位相信号CAMを、交番トルク周期毎のバルブタイミングの検出に用いるカム位相信号CAMとして選択する処理を行わせることができ、係る選択処理を、図14のフローチャートに従って説明する。
【0130】
図14のフローチャートは、カム位相信号CAM発生毎に実行され、まず、ステップS401では、交番トルク周期(180deg周期)毎の検出タイミングの学習条件が成立しているか否かを判断する。
【0131】
具体的には、イグニッションスイッチがONされてから学習を行っていないこと、エンジン101が設定回転速度以下で定常運転されていること、バルブタイミング制御の定常状態であることなどの条件が成立している場合に、学習条件の成立を判断する。
【0132】
前述のように、前記エンジン回転速度NEを学習条件とするのは、回転速度が高い条件では、バルブタイミングの検出精度が低下するためであり、アイドル定常運転状態を学習条件とすることがより好ましい。
【0133】
また、交番トルクに影響されて振れるバルブタイミングの中心値を検出するタイミングは、経時変化を示すが、急激に変化することはないので、イグニッションスイッチがONされてからOFFされるまでの間に1回だけ行わせるようにすれば充分である。
【0134】
尚、交番トルクに影響されて振れるバルブタイミングの中心値を検出するタイミングの経時的変化は、バルブスプリング特性・カムシャフトのフリクション特性・可変バルブタイミング機構114内部のフリクション特性の経時変化などによって発生する。
【0135】
また、学習条件を上記のものに限定するものではなく、また、記述した3条件が成立している場合に学習を行わせたり、記述した3条件のうちの1つ或いは複数が成立している場合に学習を行わせたりすることができる。
【0136】
学習条件が成立すると、ステップS402へ進み、カム位相信号CAMの発生毎にバルブタイミング(位相)を検出させ、ステップS403(平均値演算手段)では、カム位相信号CAMの発生毎に検出したバルブタイミング(位相)について、交番トルクの1周期(180deg)の間の平均値を算出する。
【0137】
ステップS404(選択パルス設定手段)では、前記平均値に最も近いバルブタイミング(位相)を検出したカム位相信号CAMに基づいて、交番トルクの1周期(180deg)毎のバルブタイミング(位相)の検出に用いるカム位相信号CAMを選択する。
【0138】
上記のようにして、交番トルクに影響されて振れるバルブタイミングの中心値を検出するタイミング(カム位相信号CAM)を、交番トルクの1周期(180deg)毎の検出タイミングとして選択すれば、前記オフセット分VTCOFSによる補正を行うことなく、カム位相信号CAM発生毎の検出から交番トルクの1周期(180deg)毎の検出に移行させても、バルブタイミングの制御中心がずれることを抑制できる。
【0139】
但し、交番トルクに影響されて振れるバルブタイミングの中心値を検出するタイミング(カム位相信号CAM)を、交番トルクの1周期(180deg)毎の検出タイミングとして選択する処理を行いつつ、前記オフセット分VTCOFSによる補正を行わせることができる。
【0140】
図15は、交番トルク(カムトルク)の位相の経時変化、及び、交番トルクの1周期毎の検出に用いるカム位相信号CAMの選択の様子を示すタイムチャートであり、経時変化によってカムトルク(交番トルク)の位相が変化すると、交番トルクに影響される位相(バルブタイミング)の振れの位相も変化する。
【0141】
そこで、図15に示す例では、交番トルクの1周期毎の検出用として経時変化前に用いていたカム位相信号CAMを、経時変化後は、図中に点線で示すカム位相信号CAMに切り換え、交番トルクの1周期毎の検出用として用いるカム位相信号CAMの発生位置で、実際の位相(バルブタイミング)が振れの中心値を示すように学習する。
【0142】
尚、可変バルブタイミング機構114によって可変とされるバルブタイミングを、クランクシャフト109と吸気カムシャフト115との位相差に基づいて検出するのに用いるクランク角センサやカム位相センサのセンサ構造や出力特性を、図6,図7に示したものに限定されず、交番トルク(カムトルク)の1周期毎のバルブタイミングの検出と、前記交番トルク(カムトルク)の1周期よりも短い周期でのバルブタイミングの検出とが行えるセンサ構造・出力特性のものであれば良い。
【0143】
ここで、上記実施形態から把握し得る請求項以外の技術的思想について、以下に効果と共に記載する。
(イ)請求項2記載の可変バルブタイミング機構の制御装置において、
前記閾値が、前記第1のバルブタイミング検出手段におけるバルブタイミングの検出周期が、前記制御手段による前記操作量の演算周期以下となるエンジン回転速度である可変バルブタイミング機構の制御装置。
【0144】
上記発明によると、前回の操作量の演算タイミングから今回の操作量の演算タイミングまでの間にバルブタイミングの検出値が少なくとも1回は更新されるから、前回の操作量の演算に用いた検出値をそのまま用いて今回の操作量演算がなされることが回避され、必要充分な更新周期で実際のバルブタイミングが検出されることになる。
(ロ)請求項3記載の可変バルブタイミング機構の制御装置において、
前記補正値演算手段が、前記平均値算出手段で算出された平均値と、該平均値に相当するバルブタイミングを前記第2のバルブタイミング検出手段が検出したタイミングとから、前記第1のバルブタイミング検出手段によるバルブタイミングの検出タイミングにおける前記平均値を推定し、この推定した平均値と、前記第1のバルブタイミング検出手段によるバルブタイミングの検出値との偏差を、前記補正値として演算する可変バルブタイミング機構の制御装置。
【0145】
上記発明によると、バルブタイミング検出手段の切り換えに伴ってバルブタイミングの制御中心がずれることを抑制できる。
(ハ)請求項1〜3、(イ)、(ロ)のいずれか1つに記載の可変バルブタイミング機構の制御装置において、
前記エンジンバルブを開閉するカムシャフトの1回転当たり複数のカムパルス信号を発生するカムパルス発生手段と、
クランクシャフトの基準角度位置を検出する基準角度検出手段と、
を更に含み、
前記第1のバルブタイミング検出手段及び前記第2のバルブタイミング検出手段が、前記基準角度位置と前記カムパルス信号との位相差からバルブタイミングを検出し、かつ、前記第1のバルブタイミング検出手段が、前記カムパルス信号から、前記交番トルクの1周期に対応する角度毎のカムパルス信号を選択し、選択したカムパルス信号に対応して求められた位相差からバルブタイミングを検出する可変バルブタイミング機構の制御装置。
【0146】
上記発明によると、カムパルス信号から、交番トルクの1周期に対応する角度毎のカムパルス信号を選択することで、エンジンバルブの開閉動作による交番トルクの1周期のクランク角度毎に、バルブタイミングを検出できる。
(ニ)請求項(ハ)記載の可変バルブタイミング機構の制御装置において、
前記第2のバルブタイミング検出手段によるバルブタイミングの検出値について、前記交番トルクの1周期当たりの平均値を求める平均値算出手段と、
前記第2のバルブタイミング検出手段による検出値と前記平均値との比較に基づき、前記第1のバルブタイミング検出手段が選択する前記カムパルス信号を設定する選択パルス設定手段と、
を更に含む可変バルブタイミング機構の制御装置。
【0147】
上記発明によると、交番トルクに影響されて振れるバルブタイミングの中心値を検出するタイミングを、交番トルクの1周期毎の検出タイミングとして選択すれば、バルブタイミング検出手段の切り換えに伴ってバルブタイミングの制御中心がずれることを抑制できる。
【符号の説明】
【0148】
101…エンジン、105…吸気バルブ(エンジンバルブ)、109…クランクシャフト、114…可変バルブタイミング機構、115…吸気カムシャフト、201…エンジン制御装置、203…クランク角センサ(基準角度検出手段)、204…カム位相センサ(カムパルス発生手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンバルブのバルブタイミングを変更する可変バルブタイミング機構の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、クランクパルス信号とカムパルス信号との信号対の位相差から、バルブタイミングを検出し、検出したバルブタイミングを目標バルブタイミングに一致させる制御装置において、クランクシャフトの所定回転の間に現れる複数の信号対のうち、バルブタイミングを検出するのに使用する信号対を、エンジン回転数の増大に応じて少なく選択するバルブタイミング調整装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−326572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バルブタイミング(カムシャフトの位相)の検出を短い周期で行わせれば、バルブタイミングの検出結果に基づく操作量の演算を高応答で行えるが、実際のバルブタイミング(実際のカムシャフトの位相)は、エンジンバルブの開閉動作による交番トルク(カムトルク)に影響されて振動するため、検出周期を短くすると、前記交番トルクに影響されたバルブタイミングの振動を拾ってしまう。
【0005】
そして、振動を拾った検出結果に基づいて、可変バルブタイミング機構を制御すると、振動に伴って発生する制御エラーに基づいて操作量が振れることで、可変バルブタイミング機構を駆動するアクチュエータ(例えば電磁ソレノイド)における消費エネルギー(消費電力)が増大してしまうなどの問題が生じる。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、バルブタイミングを高応答で制御できると共に、前記交番トルク(カムトルク)の影響によって操作量が振れてしまうことを抑制できる可変バルブタイミング機構の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのため、本発明に係る可変バルブタイミング機構の制御装置は、バルブタイミング制御が定常状態である場合に、エンジンバルブの開閉動作による交番トルクの1周期のクランク角度毎に検出されたバルブタイミングに基づいて可変バルブタイミング機構を制御させ、バルブタイミング制御が過渡状態である場合に、前記交番トルクの1周期よりも小さいクランク角度毎に検出されたバルブタイミングに基づいて可変バルブタイミング機構を制御させるようにした。
【発明の効果】
【0008】
上記発明によると、バルブタイミング制御の過渡状態において、バルブタイミングを高応答で制御でき、また、バルブタイミング制御の定常状態において、交番トルクの影響による操作量の振れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る制御装置が適用される車両用エンジンの実施形態を示す全体構成図である。
【図2】実施形態のエンジンに備えられる可変作動角・リフト機構(VEL)を示す斜視図である。
【図3】実施形態のエンジンに備えられる可変作動角・リフト機構(VEL)の部分拡大図である。
【図4】実施形態のエンジンに備えられる可変バルブタイミング機構(VTC)を示す断面図である。
【図5】実施形態のエンジンに備えられる可変作動角・リフト機構(VEL)及び可変バルブタイミング機構(VTC)による吸気バルブの開特性(バルブリフト量VL、バルブ作動OA、中心位相SP)の変化を示すグラフである。
【図6】実施形態におけるクランク角センサ,カム位相センサ,気筒判別センサの構成を示す図である。
【図7】実施形態におけるクランク角センサ,カム位相センサ,気筒判別センサの出力特性、及び、クランク角センサから出力される単位クランク角信号POSのカウンタの変化を示すタイムチャートである。
【図8】実施形態におけるカム位相信号CAM毎の位相検出値と、交番トルクの1周期毎の位相検出値との相関を示すタイムチャートである。
【図9】実施形態における可変バルブタイミング機構の制御手順を示すフローチャートである。
【図10】実施形態におけるバルブタイミングの検出周期の選択手順を示すフローチャートである。
【図11】実施形態におけるバルブタイミングの検出周期の切り換え時におけるオフセット補正処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】実施形態におけるオフセット分の算出処理を説明するためのタイムチャートである。
【図13】実施形態における検出周期の切り換え実行タイミングと、オフセット補正処理とを示すタイムチャートである。
【図14】実施形態における交番トルクの1周期毎の検出に用いるカム位相信号CAMの選択学習の手順を示すフローチャートである。
【図15】実施形態における交番トルクの1周期毎の検出に用いるカム位相信号CAMの選択学習の特性を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明に係る可変バルブタイミング機構の制御装置が適用される車両用エンジンのシステム構成を示す図である。
【0011】
図1に示すエンジン101は直列4気筒ガソリン内燃機関である。
但し、本願発明を適用するエンジンを、4気筒ガソリン機関に限定するものではない。
前記エンジン101の各気筒に空気を導入するための吸気管102には、エンジン101の吸入空気流量QAを検出する吸入空気量センサ103が設けられている。
【0012】
各気筒の燃焼室104の吸気口を開閉する吸気バルブ(エンジンバルブ)105が設けられ、該吸気バルブ105の上流側の吸気管102には、気筒毎に燃料噴射弁106が配置される。
【0013】
前記燃料噴射弁106には、前記燃料噴射弁106の開弁時間に比例する燃料が噴射されるように、圧力調整された燃料が供給される。
前記燃料噴射弁106から噴射された燃料は、吸気バルブ105を介して燃焼室104内に空気と共に吸引され、点火プラグ107による火花点火によって着火燃焼し、該燃焼による圧力がピストン108をクランクシャフト109に向けて押し下げることで、前記クランクシャフト109を回転駆動する。
【0014】
また、前記燃焼室104の排気口を開閉する排気バルブ(エンジンバルブ)110が設けられ、該排気バルブ110が開くことで排ガスが排気管111に排出される。
前記排気管111には、三元触媒等を備えてなる触媒コンバータ112が介装されており、排ガス中の有害成分は、前記触媒コンバータ112によって無害成分に転換され、排出される。
【0015】
前記吸気バルブ105・排気バルブ110は、クランクシャフト109によって回転駆動される吸気カムシャフト・排気カムシャフトの回転によって開動作する。
前記排気バルブ110は、予め定められた開弁特性(バルブリフト量・バルブ作動角・バルブタイミング)で開動作するが、前記吸気バルブ105の開弁特性(バルブリフト量・バルブ作動角・バルブタイミング)は、可変作動角・リフト機構(VEL)113及び可変バルブタイミング機構(VTC)114によって可変とされる。
【0016】
前記可変作動角・リフト機構113は、吸気バルブ105のバルブ作動角をバルブリフト量と共に連続的に変化させる機構であり、前記可変バルブタイミング機構114は、クランクシャフト109に対する後述の吸気カムシャフト115の回転位相を変化させることで、吸気バルブ105(エンジンバルブ)のバルブ作動角の中心位相(バルブタイミング)を進角・遅角変化させる機構である。
【0017】
また、前記点火プラグ107それぞれには、点火プラグ107に対して点火エネルギを供給する点火モジュール116が直付けされている。
前記点火モジュール116は、点火コイルと該点火コイルへの通電を制御するパワートランジスタとを含んで構成される。
【0018】
前記燃料噴射弁106,可変作動角・リフト機構113,可変バルブタイミング機構114及び点火モジュール116は、エンジン制御装置201によって制御される。
前記エンジン制御装置201は、マイクロコンピュータを含んで構成され、各種センサ・スイッチからの信号を入力し、予め記憶されたプログラムに従った演算処理を行うことで、前記燃料噴射弁106,可変作動角・リフト機構113,可変バルブタイミング機構114及び点火モジュール116それぞれの操作量を演算して出力する。
【0019】
従って、前記エンジン制御装置201は、可変バルブタイミング機構の制御装置としての機能を有する制御ユニットである。
図2は、吸気バルブ105のバルブ作動角をバルブリフト量と共に連続的に可変とする可変作動角・リフト機構113の構造を示す斜視図である。
【0020】
前記吸気バルブ105の上方に、前記クランクシャフト109によって回転駆動される吸気カムシャフト115が気筒列方向に沿って回転可能に支持されている。
前記吸気カムシャフト115には、吸気バルブ105のバルブリフタ105aに当接して吸気バルブ105を開駆動する揺動カム4が相対回転可能に外嵌されている。
【0021】
前記吸気カムシャフト115と揺動カム4との間には、吸気バルブ105のバルブ作動角をバルブリフト量と共に連続的に変更するための可変作動角・リフト機構113が設けられている。
【0022】
また、前記吸気カムシャフト115の一端部には、クランクシャフト109に対する前記吸気カムシャフト115の回転位相を変化させることにより、吸気バルブ105のバルブ作動角の中心位相(バルブタイミング)を連続的に変更する可変バルブタイミング機構114が配設されている。
【0023】
前記可変作動角・リフト機構113は、図2及び図3に示すように、吸気カムシャフト115に偏心して固定的に設けられる円形の駆動カム11と、この駆動カム11に相対回転可能に外嵌するリング状リンク12と、吸気カムシャフト115と平行に気筒列方向へ延びる制御軸13と、この制御軸13に偏心して固定的に設けられた円形の制御カム14と、この制御カム14に相対回転可能に外嵌すると共に、一端がリング状リンク12の先端に連結されたロッカアーム15と、このロッカアーム15の他端と揺動カム4とに連結されたロッド状リンク16と、を有している。
【0024】
前記制御軸13は、モータ等のアクチュエータ17によりギア列(減速機)18を介して、ストッパで規制される作動範囲内で回転駆動される。
上記の構成により、クランクシャフト109に連動して吸気カムシャフト115が回転すると、駆動カム11を介してリング状リンク12が並進移動すると共に、ロッカアーム15が制御カム14の軸心周りに揺動し、ロッド状リンク16を介して揺動カム4が揺動して吸気バルブ105が開駆動される。
【0025】
また、前記アクチュエータ17によって制御軸13の角度を変化させることにより、ロッカアーム15の揺動中心となる制御カム14の軸心位置が変化して揺動カム4の姿勢が変化する。
【0026】
これにより、図5の矢印301に示すように、吸気バルブ105のバルブ作動角の中心位相SPが殆ど変化させることなく、吸気バルブ105のバルブ作動角OAがバルブリフト量VLと共に連続的に変化する。
【0027】
尚、バルブ作動角が連続的に変化すると同時に、バルブ作動角の中心位相が変化するように、前記可変作動角・リフト機構113を構成することも可能である。
図4は、吸気バルブ105のバルブ作動角の中心位相(バルブタイミング)を可変とする前記可変バルブタイミング機構114の構造を示す。
【0028】
前記可変バルブタイミング機構114は、クランクシャフト109によりタイミングチェーンを介して回転駆動されるカムスプロケット51(タイミングスプロケット)と、前記吸気カムシャフト115の端部に固定されてカムスプロケット51内に回転自在に収容された回転部材53と、該回転部材53をカムスプロケット51に対して相対的に回転させる油圧回路54と、カムスプロケット51と回転部材53との相対回転位置を、既定のロック位置で選択的にロックするロック機構60とを備えている。
【0029】
前記カムスプロケット51は、外周にタイミングチェーン(又はタイミングベルト)が噛合する歯部を有する回転部(図示省略)と、該回転部の前方に配置されて前記回転部材53を回転自在に収容するハウジング56と、該ハウジング56の前後開口を閉塞するフロントカバー,リアカバー(図示省略)とから構成される。
【0030】
前記ハウジング56は、前後両端が開口形成された円筒状を呈し、内周面には、横断面台形状を呈し、それぞれハウジング56の軸方向に沿って設けられる4つの隔壁部63が90°間隔で突設されている。
【0031】
前記回転部材53は、吸気カムシャフト3の前端部に固定されており、円環状の基部77の外周面に90°間隔で4つのベーン78a,78b,78c,78dが設けられている。
【0032】
前記第1〜第4ベーン78a〜78dは、それぞれ断面が逆台形状を呈し、各隔壁部63間の凹部に配置され、前記凹部を回転方向の前後に隔成し、ベーン78a〜78dの両側と各隔壁部63の両側面との間に、進角側油圧室82と遅角側油圧室83を構成する。
【0033】
前記ロック機構60は、ロックピン84が、回転部材53の初期位置において係合孔(図示省略)に係入するようになっている。
前記油圧回路54は、進角側油圧室82に対して油圧を給排する第1油圧通路91と、遅角側油圧室83に対して油圧を給排する第2油圧通路92との2系統の油圧通路を有し、この両油圧通路91,92には、供給通路93とドレン通路94a,94bとがそれぞれ通路切り換え用の電磁切換弁95を介して接続されている。
【0034】
前記供給通路93には、オイルパン96内の油を圧送するエンジン駆動のオイルポンプ97が設けられている一方、ドレン通路94a,94bの下流端がオイルパン96に連通している。
【0035】
前記第1油圧通路91は、回転部材53の基部77内に放射状に形成されて各進角側油圧室82に連通する4本の分岐路91dに接続され、第2油圧通路92は、各遅角側油圧室83に開口する4つの油孔92dに接続される。
【0036】
前記電磁切換弁95は、内部のスプール弁体が各油圧通路91,92と供給通路93及びドレン通路94a,94bとを相対的に切り換え制御するようになっている。
前記エンジン制御装置201は、前記電磁切換弁95を駆動する電磁アクチュエータ99に対する通電量を、ディザ信号が重畳されたデューティ制御信号(操作量)に基づいて制御する。
【0037】
前記可変バルブタイミング機構114においては、電磁アクチュエータ99にデューティ比(オン時間割合)0%のオフ制御信号を出力すると、オイルポンプ47から圧送された作動油は、第2油圧通路92を通って遅角側油圧室83に供給されると共に、進角側油圧室82内の作動油が、第1油圧通路91を通って第1ドレン通路94aからオイルパン96内に排出されるようにしてある。
【0038】
従って、電磁アクチュエータ99にデューティ比0%のオフ制御信号を出力すると、遅角側油圧室83の内圧が高くなる一方で、進角側油圧室82の内圧が低くなり、回転部材53は、ベーン78a〜78bを介して最大遅角側に回転し、この結果、吸気バルブ105の開期間(バルブ作動角の中心位相)がピストン位置に対して相対的に遅角変化する。
【0039】
即ち、電磁アクチュエータ99への通電を遮断すると、吸気バルブ105のバルブ作動角の中心位相(バルブタイミング)は遅角変化し、最終的には、最遅角位置で停止する。
また、電磁アクチュエータ99にデューティ比100%のオン制御信号を出力すると、作動油は、第1油圧通路91を通って進角側油圧室82内に供給されると共に、遅角側油圧室83内の作動油が第2油圧通路92及び第2ドレン通路94bを通ってオイルパン96に排出され、遅角側油圧室83が低圧になる。
【0040】
このため、電磁アクチュエータ99にデューティ比100%のオン制御信号を出力すると、回転部材53は、ベーン78a〜78dを介して進角側へ最大に回転し、これによって、吸気バルブ105の開期間(バルブ作動角の中心位相)がピストン位置に対して相対的に進角変化する。
【0041】
このように、前記可変バルブタイミング機構114は、図5の矢印302に示すように、吸気バルブ105のバルブ作動角OA及びバルブリフト量VLを変えずに、吸気バルブ105のバルブ作動角の中心位相SPを進・遅角変化させる機構であり、前記制御信号のデューティ比を変更することで、最遅角位置から最進角位置までの間の任意の位置に、吸気バルブ105のバルブ作動角の中心位相(バルブタイミング)を変化させることができる。
【0042】
尚、吸気バルブ105のバルブ作動角をバルブリフト量と共に連続的に可変とする可変作動角・リフト機構113、吸気バルブ105のバルブ作動角の中心位相を連続的に可変とする可変バルブタイミング機構114の構造・形式は、上記の図2〜4に示したものに限定されない。
【0043】
例えば、可変バルブタイミング機構114は、クランクシャフト109に対する吸気カムシャフト115の回転位相を変化させる機構のものであれば良く、上記の油圧ベーン式の他、歯車を用いてクランクシャフト109に対し前記吸気カムシャフト115を相対回転させる機構や、油圧アクチュエータの他、モータや電磁ブレーキをアクチュエータとして用いる機構を用いることができる。
【0044】
また、本実施形態では、可変バルブタイミング機構114と共に可変作動角・リフト機構113を備えるが、可変作動角・リフト機構113を備えない構成であっても良く、更には、吸気バルブ105(吸気カムシャフト)と共に、又は、吸気バルブ105(吸気カムシャフト)に代えて、排気バルブ110(排気カムシャフト)に可変バルブタイミング機構114を備えることができる。
【0045】
前記エンジン制御装置201には、前記制御軸13の角度に応じたレベルの信号を出力する角度センサ202の出力信号が入力され、角度センサ202の出力信号に基づき前記制御軸13の角度を検出する一方で、エンジン運転条件(エンジン負荷・エンジン回転速度など)に応じて目標バルブ作動角(目標バルブリフト量)に対応する制御軸13の目標角度を演算し、角度センサ202で検出される制御軸13の実角度が前記目標角度に近づくように、前記アクチュエータ(モータ)17への通電操作量をフィードバック制御する。
【0046】
また、前記エンジン制御装置201は、エンジン運転条件(エンジン負荷・エンジン回転速度など)に基づいて吸気バルブ105のバルブ作動角の中心位相の目標進角量(目標位相)を演算し、クランク角センサ203及びカム位相センサ204の出力信号に基づいて検出される実際の進角量(位相)が前記目標進角量(目標位相)に近づくように、前記実際の進角量(実際の位相)と目標進角量(目標位相)との偏差に基づいて、電磁アクチュエータ99に出力する制御信号のデューティ比(操作量)をフィードバック制御する。
【0047】
前記クランク角センサ203(基準角度検出手段)は、図6に示すように、クランクシャフト109に軸支したシグナルプレート203aの周縁にクランク角10deg毎に形成される被検出部203bを、センサ素子203cで検出する構成であり、図7に示すように、各気筒の上死点を起点としてクランク角10deg毎に立ち上がるパルス信号である単位クランク角信号POSを出力する。
【0048】
ここで、前記単位クランク角信号POSが、各気筒の上死点前60deg及び70degのクランク角位置で連続して抜けを生じるように、前記被検出部203bが形成されている。
換言すれば、前記単位クランク角信号POSは、エンジン101における気筒間の行程位相差(点火間隔)であるクランク角180deg毎に、連続して2パルスの歯抜けを生じるように設定されている。
【0049】
尚、クランク角センサ203が、歯抜けなしにクランク角10deg毎の単位クランク角信号POSを出力すると共に、行程位相差毎の基準クランク角信号REFを、前記単位クランク角信号POSとは独立に出力する構成とすることができる。
【0050】
また、前記カム位相センサ204(カムパルス発生手段)は、図6に示すように、吸気カムシャフト115に軸支したシグナルプレート204aの周縁にクランク角22.5deg毎に形成される被検出部204bを、センサ素子204cで検出する構成であり、図7に示すように、吸気カムシャフト115の位相検出に用いるパルス信号であるカム位相信号CAMを出力する。
【0051】
ここで、前記カム位相信号CAMが、吸気カムシャフト115の1回転当たり、1パルスだけ抜けを生じるように、前記被検出部204bを1箇所だけ欠落させてある。
そして、前記被検出部204bの欠落箇所204dを、カム位相信号CAMの周期変化に基づいて検出することで、欠落箇所204dを基点に各カム位相信号CAMを識別でき、具体的には、カム位相信号CAMが発生する毎に、欠落箇所204dから何番目のカム位相信号CAMであるかを判別するようにしてある。
【0052】
更に、気筒判別センサ210が設けられており、この気筒判別センサ210は、図6に示すように、排気カムシャフト211に軸支したシグナルプレート210aの周縁に90deg毎に相互に異なる数だけ設けられる被検出部210bを、センサ素子210cで検出する構成であり、図7に示すように、気筒間の行程位相差(点火間隔)に相当するクランク角180deg毎に、基準ピストン位置にある気筒のナンバーをパルス数で示す気筒判別信号PHASEを出力する。
【0053】
尚、気筒判別信号PHASEが、パルス幅で気筒を示すように構成することができる。
また、本実施形態におけるエンジン101の点火順は、#1気筒→#3気筒→#4気筒→#2気筒の順であるものとする。
【0054】
前記エンジン制御装置201は、前記単位クランク角信号POSの発生周期を計測することで、単位クランク角信号POSの歯抜け部分を検出し、更に、歯抜け直後の単位クランク角信号POSの出力位置をBTDC50degの位置として識別し、単位クランク角信号POSが3パルス入力される毎にカウントアップされるカウンタCRACNT1の値を、前記BTDC50deg毎に零にクリアする。
【0055】
更に、単位クランク角信号POSが3個入力される毎にカウントアップされるカウンタCRACNT2の値を、前記カウンタCRACNT1の値が4になる毎(BTDC110deg毎)にクリアさせる。
【0056】
そして、前記カウンタCRACNT2がクリアされる周期、即ち、BTDC110degから次のBTDC110degまでの間で、前記気筒判別信号PHASEの発生数をカウントし、前記気筒判別信号PHASEの発生数に基づいて次の1周期に含まれる上死点がどの気筒の圧縮上死点であるかを判別し、該判別結果に従って気筒判別値CTYLCNTを更新する。
【0057】
例えば、前記カウンタCRACNT2がクリアされる間で、気筒判別信号PHASEが3パルス出力されたときには、次に圧縮上死点となる気筒は#4気筒であると判断して、前記カウンタCRACNT2がクリアされるタイミング(BTDC110degであって基準クランク角位置)において気筒判別値CTYLCNTを、#4気筒に対応する「4」に切り換える。
【0058】
気筒別の燃料噴射時期や点火時期の制御においては、前記気筒判別値CTYLCNTに基づいて燃料噴射・点火を行わせる気筒を特定し、前記基準クランク角位置から要求の燃料噴射時期・点火時期までの角度を設定する。
【0059】
そして、基準クランク角位置から要求の燃料噴射時期・点火時期までの角度を、単位クランク角信号POSのカウント、及び、10deg以下の角度については時間換算して検出し、燃料噴射させる気筒の燃料噴射弁131に噴射パルス信号を出力し、点火する気筒の点火コイルの通電を制御するパワートランジスタに点火制御信号を出力する。
【0060】
また、前記カウンタCRACNT2がクリアされるタイミング(基準クランク角位置)から、カム位相信号CAMまでの角度FAを、単位クランク角信号POS及び時間計測によってそれぞれ検出する。
【0061】
そして、前記角度FAから実際の吸気カムシャフト115の位相(バルブタイミングの進角量)を求め、この位相検出値が、目標位相に近づくように、可変バルブタイミング機構114をフィードバック制御する。
【0062】
ここで、欠落箇所204dから何番目のカム位相信号CAMであるかが判別されるので、前記角度FAのデータが、何番目のカム位相信号CAMまでの角度であるかを判断でき、これによって、吸気カムシャフト115の位相変化によってカム位相信号CAMの出力位置がクランク角に対して変化しても、吸気カムシャフト115の位相を検出できる。
【0063】
例えば、図7において、最遅角時には、基準クランク角位置REF1の直後に出力されるのは4番目のカム位相信号CAMであるのに対し、最進角時には、基準クランク角位置REF1の直後に出力されるのは6番目のカム位相信号CAMである。
【0064】
従って、基準クランク角位置REFから最初のカム位相信号CAMまでの角度を計測しても、最初のカム位相信号CAMを識別しないと、位相を誤検出することになってしまう。
【0065】
しかし、前述のように、位相検出の対象としたカム位相信号CAMが何番目のものであるかを判別できれば、カム位相信号CAMの出力位置が、基準クランク角位置REFを跨いで変化しても、位相を正しく検出できる。
【0066】
可変バルブタイミング機構114における位相の変更幅は、180degよりも小さい角度(例えば40〜60deg程度)であるため、例えば、最遅角時における4番目のカム位相信号CAMの出力位置が基準クランク角位置の直後であれば、この4番目のカム位相信号CAMと直前の基準クランク角位置との間の角度が、最遅角時における角度よりも大きい角度に検出された場合には、4番目のカム位相信号CAMの出力位置が、基準クランク角位置REFを跨いで基準クランク角位置REFの前に変化したと判断でき、これに基づいてそのときの位相を正しく検出できる。
【0067】
上記構成によると、欠落箇所204dを除いて、同じ角度周期毎に吸気カムシャフト115の位相が検出することが可能である。
上記では、カム位相信号CAMに欠落箇所204dを設けることで、欠落箇所204dを基点に各カム位相信号CAMを特定できるようにしたが、例えば、気筒判別センサ210と同様なセンサを吸気カムシャフト115に設け、気筒判別信号PHASEと前記カム位相信号CAMとの相関から、カム位相信号CAMを個々に特定させることができ、この場合、カム位相信号CAMを一部で欠落させる必要がなくなる。
【0068】
但し、カム位相信号CAMの発生周期をクランク角22.5degに限定するものではなく、吸気バルブ150の開閉動作によって発生する交番トルク(カムトルク)の1周期(本実施形態のエンジン101ではクランク角180deg)よりも短い周期であれば良いが、後述するように、交番トルクの1周期毎の位相検出を可能にするために、カム位相信号CAMの発生周期×n(n:整数)が交番トルクの1周期(180deg)となることが要求され、更に、1周期の中間位置でカム位相信号CAMが発生することが好ましいので、前記nは4以上の偶数が好ましく、本実施形態では、n=8(カム位相信号CAMの発生周期=クランク角22.5deg)を選択してある。
【0069】
前記クランク角センサ203及びカム位相センサ204の出力信号に基づいて検出される実際のバルブタイミングの進角量(位相)のデータは、前記エンジン制御装置201において、可変バルブタイミング機構114のフィードバック制御に用いられる。
【0070】
前記エンジン制御装置201には、上記吸入空気量センサ103,角度センサ202,クランク角センサ203,カム位相センサ204及び気筒判別センサ210の出力信号が入力される他、エンジン101の運転・停止のメインスイッチであるイグニッションスイッチ(IGNスイッチ)205の信号、アクセルセンサ206からのアクセルペダル207の開度信号ACC、水温センサ208からの冷却水温度信号TW、空燃比センサ209からの空燃比信号AFなどが入力される。
【0071】
前記空燃比センサ209は、排気管111に設けられ、エンジン101の空燃比と密接な関係にある排気中の酸素濃度に感応して出力が変化するセンサ(酸素濃度センサ)である。
【0072】
前述のように、本実施形態の場合、カム位相信号CAMの発生毎に吸気カムシャフト115の位相(吸気バルブ105のバルブタイミング)を検出できるが、吸気バルブ150の開動作によって発生する交番トルク(カムトルク)の1周期よりも短い周期で位相を検出させた場合、前記交番トルクに因る位相(バルブタイミング)の振れ(周期的な変動)を検出値が拾い、図8に示すように、位相検出値に振れ(周期的な変動)が生じる。
【0073】
前述のように、位相検出値に振れ(周期的な変動)が生じると、振れに伴って発生する制御エラーに基づいて操作量(デューティ信号)が振れることで、可変バルブタイミング機構114を駆動する電磁アクチュエータ99の消費エネルギー(消費電力)が増大してしまう。
【0074】
前記交番トルクの影響を排除するには、交番トルクの1周期と同じ周期でバルブタイミングを検出すれば良いが、係る構成とすると、目標のバルブタイミングに向けて実際のバルブタイミングを追従変化させるバルブタイミング制御の過渡状態において、バルブタイミング検出値の更新が遅れ、制御応答が低下したり、オーバーシュートが発生したりする。
【0075】
そこで、本実施形態では、前記交番トルクの1周期毎(クランク角180deg毎)のバルブタイミングの検出(第1のバルブタイミング検出手段)と、前記交番トルクの1周期よりも短い角度周期であるカム位相信号CAM発生毎のバルブタイミングの検出(第2のバルブタイミング検出手段)とを、バルブタイミング制御の過渡・定常判定に応じて切り替えるようにしてある。
【0076】
具体的には、バルブタイミング制御の過渡状態では、制御応答の改善及びオーバーシュートの抑制を図るために、カム位相信号CAM発生毎のバルブタイミングの検出(第2のバルブタイミング検出手段)を選択し、バルブタイミング制御の定常状態では、交番トルクに影響された検出値の振れによって操作量が振れることを抑制するために、前記交番トルクの1周期毎(クランク角180deg毎)のバルブタイミングの検出(第1のバルブタイミング検出手段)を選択する。
【0077】
上記のバルブタイミング制御の過渡・定常判定に応じてバルブタイミングの検出周期を選択する、エンジン制御装置201の演算機能が、本実施形態における選択手段に相当する。
【0078】
前記交番トルクの1周期毎(クランク角180deg毎)のバルブタイミングの検出は、前記カム位相信号CAMのうちから、クランク角180deg毎に出力される信号を選択(クランク角180deg毎に出力される信号以外をマスク)して、位相検出に用いることで行える。
【0079】
更に、クランク角180deg毎に第2のカム位相信号CAM2を出力する第2のカム位相センサを、前記カム位相センサ204と共に吸気カムシャフト115に備えるようにし、前記第2のカム位相センサから出力される第2のカム位相信号CAM2と前記基準クランク角位置REFとの位相差を検出することによっても、交番トルクの1周期毎のバルブタイミングの検出を行わせることができる。
【0080】
図9のフローチャートは、エンジン制御装置201によって実行される可変バルブタイミング機構114の制御手順を示す。
図9のフローチャートに示すルーチンは、予め決められた時間周期(例えば10ms)毎に実行され、まず、ステップS101では、エンジン運転条件(エンジン負荷・エンジン回転速度など)の検出結果を読み込む。
【0081】
ステップS102では、前記ステップS101で読み込んだエンジン運転条件に基づいて、吸気バルブ105のバルブ作動角の中心位相の目標進角量(目標位相、目標バルブタイミング)を演算する。
【0082】
ステップS103では、前記中心位相の進角量(位相、バルブタイミング)の最新検出値を読み込む。
ステップS104では、前記目標進角量(目標位相)と最新検出値との偏差(制御エラー)を演算する。
【0083】
ステップS105では、前記偏差(制御エラー)に基づく比例動作・積分動作・微分動作によって、前記電磁アクチュエータ99のフィードバック操作量(制御デューティ)を演算する。
【0084】
尚、前記偏差(制御エラー)に基づくフィードバック操作量の演算を、比例動作・積分動作・微分動作(PID制御)に限定するものではなく、比例動作・積分動作(PI制御)やスライディングモード制御を用いるなど、公知の自動制御技術を適用できる。
【0085】
ステップS106では、前記ステップS500で算出した操作量(制御デューティ)を電磁アクチュエータ99に出力する。
前記ステップS103で読み込まれる実際の進角量(実際のバルブタイミング)は、前述のように、その検出周期が切り替えられるようになっており、検出周期の選択手順を、図10のフローチャートに従って説明する。
【0086】
図10のフローチャートに示すルーチンは、予め決められた時間周期(例えば10ms)毎に実行され、まず、ステップS201では、そのときのエンジン回転速度NEが閾値NEs以上であるか否かを判断する。
【0087】
前記閾値NEsは、前記交番トルクの1周期(180deg)毎のバルブタイミングの検出周期(ms)が、前記図9のフローチャートに示すルーチンの実行周期(例えば10ms)以下となる回転速度に予め設定されている。
【0088】
エンジン回転速度NEが前記閾値NEs以上であれば、前記交番トルクの1周期毎のバルブタイミングを検出させたとしても、前回の操作量の演算タイミングから今回の操作量の演算タイミングまでの間にバルブタイミングの検出値が少なくとも1回は更新されるから、前回の操作量の演算に用いた検出値をそのまま用いて今回の操作量演算がなされることが回避され、必要充分な更新周期で実際のバルブタイミングが検出されることになる。
【0089】
更に、前記交番トルクの1周期毎にバルブタイミングを検出させれば、交番トルクに影響されてバルブタイミングが振れたとしても、検出値が前記振れを拾って変動することがない。
【0090】
そこで、エンジン回転速度NEが前記閾値NEs以上であると判断されると、ステップS202へ進み、バルブタイミングの検出を前記交番トルクの1周期毎に行わせることを選択する。
【0091】
上記のように、エンジン回転速度NEが前記閾値NEs以上である場合には、交番トルクの1周期毎にバルブタイミングを検出させれば、必要な応答性を確保しつつ、カム位相信号CAMの発生毎にバルブタイミングを検出させる場合に比べて、バルブタイミング検出のための演算負荷を軽減できる。
【0092】
前記交番トルクの1周期毎の検出は、カム位相信号CAMのうち、交番トルクの1周期毎の検出に用いる信号が出力された時点で、直前の基準クランク角位置から当該信号までの角度から実際の位相を演算するものである。
【0093】
一方、ステップS201でエンジン回転速度NEが前記閾値NEs未満であると判断された場合には、ステップS203へ進む。
ステップS203では、前記ステップS104で演算される偏差(制御エラー)が、許容誤差以内であるか否かを判断する。
【0094】
詳細には、前記偏差(制御エラー)の絶対値が、許容誤差値以下であるか否かを判断することで、実際のバルブタイミングが、目標値を含む既定範囲内の値であるか否かを判断する。
【0095】
前記許容誤差は、予測される定常偏差などを考慮して、予め設定・記憶される。
ステップS203で、偏差(制御エラー)が前記許容誤差以内であると判断されると、ステップS204へ進み、偏差(制御エラー)が前記許容誤差以内である状態が既定時間以上継続しているか否かを判断する。
【0096】
前記ステップS204の判断は、偏差(制御エラー)が前記許容誤差以内となった状態が、一時的なものではなく、安定していることを判断するものであり、前記既定時間は、オーバーシュートなどによって目標を横切って実際のバルブタイミングが変化する場合や、目標を中心とした実際のバルブタイミングの振幅が徐々に減衰し、収束状態に向けて変化しつつある場合を排除できるように、予め設定・記憶される。
【0097】
ステップS204で、偏差(制御エラー)が前記許容誤差以内である状態が既定時間以上継続していると判断した場合には、実際のバルブタイミングが目標付近に収束している状態であるので、ステップS205へ進んで、フィードバック制御が定常状態であると判定する。
【0098】
そして、ステップS205でフィードバック制御の定常判定を行うと、ステップS206へ進み、前記交番トルクの1周期毎のバルブタイミングの検出を選択する。
フィードバック制御の定常状態であれば、実際のバルブタイミングが目標付近に収束しており、交番トルクの影響によって周期的にバルブタイミングが変動するが、バルブタイミングの検出を前記交番トルクの1周期毎に行わせれば、検出値が前記周期的な変動に影響されて変動することが抑制される。
【0099】
従って、検出値に基づいて算出される操作量が無用に変動し、可変バルブタイミング機構114のアクチュエータにおける電力消費が大きくなることを抑制できる。
また、フィードバック制御の定常状態であれば、バルブタイミングの検出遅れがあっても、該遅れによるフィードバック制御性の低下が充分に小さく、前記交番トルクの1周期毎にバルブタイミングを検出させることができる。
【0100】
一方、ステップS203で、偏差(制御エラー)が前記許容誤差を超えていると判断された場合、及び、ステップS204で、偏差(制御エラー)が前記許容誤差以内である状態の継続時間が前記既定時間に達していないと判断された場合には、ステップS207へ進み、バルブタイミングを目標に向けて変化させているフィードバック制御の過渡状態であると判定する。
【0101】
そして、ステップS207でフィードバック制御の過渡判定を行うと、ステップS208へ進み、カム位相信号CAM発生毎のバルブタイミングの検出を選択する。
前記カム位相信号CAM発生毎のバルブタイミングの検出は、カム位相信号CAMが出力される毎に、直前の基準クランク角位置から当該信号までの角度から実際の位相を演算するものである。
【0102】
実際のバルブタイミングが目標に向けて変化している途中である過渡状態において、定常時よりも短い周期毎にバルブタイミングを検出すれば、目標に向けて変化しつつある実際のバルブタイミングを応答良く検出でき、目標バルブタイミングに向けて応答良く制御することが可能となる。
【0103】
尚、バルブタイミング制御の定常・過渡を、目標バルブタイミングの変化に基づいて判断させることができ、具体的には、目標バルブタイミングの変化から、バルブタイミングの収束が見込まれる基準時間が経過するまでの間を過渡状態として判別し、かつ、前記基準時間を目標バルブタイミングの変化量に応じて可変に設定することができる。
【0104】
ところで、過渡状態から定常状態への切り換り判断に基づいて、カム位相信号CAM発生毎のバルブタイミング検出から、交番トルク周期毎(クランク角180deg毎)のバルブタイミング検出に切り換えるときに、交番トルクに影響されたバルブタイミング変動の中心値と、交番トルク周期毎(クランク角180deg毎)のバルブタイミング検出値との偏差によって、実際にはバルブタイミングが目標付近に収束しているのに、実際のバルブタイミングをシフトさせる補正がなされてしまう可能性がある。
【0105】
そこで、前記エンジン制御装置201は、前記過渡状態から定常状態への切り換り判断に基づいて、カム位相信号CAM発生毎のバルブタイミング検出から、交番トルク周期毎(クランク角180deg毎)のバルブタイミング検出に切り換えるときに、前記交番トルク周期毎のバルブタイミング検出値をオフセット補正するようになっている。
【0106】
図11のフローチャートは、カム位相信号CAMの発生毎に実行され、まず、ステップS301では、可変バルブタイミング機構114の制御に用いるバルブタイミングの検出値VTCNOWとして、カム位相信号CAMの発生毎の検出値VTCANG1が選択されているか、交番トルク周期毎の検出値VTCANG2が選択されているかを判別する。
【0107】
ステップS301で、交番トルク周期毎(クランク角180deg毎)の検出が選択されていると判断されると、ステップS302へ進み、現在、可変バルブタイミング機構114の制御に用いているバルブタイミングの検出値VTCNOWが、カム位相信号CAMの発生毎の検出値VTCANG1であるか否かを判断する。
【0108】
ここで、現在制御に用いている検出値VTCNOWが、交番トルク周期毎(クランク角180deg毎)の検出値VTCANG2であれば、そのまま、交番トルク周期毎(クランク角180deg毎)の検出を継続すればよいので、ステップS303〜ステップS309を迂回して本ルーチンを終了させる。
【0109】
一方、現在制御に用いている検出値VTCNOWが、カム位相信号CAM発生毎の検出値VTCANG1であれば、交番トルク周期毎(クランク角180deg毎)の検出値VTCANG2への切り替えが完了していないことになるので、前記切り替えを実行すべくステップS303へ進む。
【0110】
ステップS303では、交番トルク周期毎(クランク角180deg毎)のバルブタイミング検出を開始させる。尚、ステップS303に進んだ時点では、カム位相信号CAMの発生毎の検出値VTCANG1の更新演算は継続されている。
【0111】
ステップS304(平均値演算手段)では、交番トルク周期毎(クランク角180deg毎)の検出への切り替え判断直後の交番トルクの1周期における検出値VTCANG1の平均値A2を演算し、かつ、平均値A2に最も近い検出値VTCANG1が算出された時刻T2を求める。
【0112】
ステップS305では、ステップS304で平均値A2を求めた交番トルクの1周期中に算出された検出値VTCANG2をA1として求め、更に、当該検出値VTCANG2(A1)が算出された時刻T1を求める。
【0113】
ステップS306(平均値演算手段)では、ステップS304で平均値A2を求めた交番トルクの1周期の次の1周期における検出値VTCANG1の平均値A3を演算し、かつ、平均値A3に最も近い検出値VTCANG1が算出された時刻T3を求める。
【0114】
ステップS307(補正値演算手段)では、前記A1,A2,A3,T1,T2,T3の情報に基づいて、時刻T1における検出値VTCANG1の平均値と検出値VTCANG2とのオフセット分VTCOFS(補正値)を算出する。
【0115】
図12は、前記A1,A2,A3,T1,T2,T3を示すタイムチャートであり、T0の時点で、交番トルク周期毎(クランク角180deg毎)の検出への切り替えを判断すると、その後交番トルクの1周期(クランク角180deg)の間で、カム位相信号CAM毎に算出された検出値VTCANG1の平均値A2を演算し、更に、該平均値A2を求めた交番トルクの1周期に続く次の1周期における平均値A3を演算する。
【0116】
一方、最初の交番トルクの1周期の間で演算された検出値VTCANG2をA1とする。
ここで、時刻T2の時点での平均値A2と、時刻T3の時点での平均値A3と、時刻T3の時点で平均値A2と同じ値を示す点A2’とによって構成される三角形TR1と、時刻T2の時点での平均値A2と、時刻T1の時点での平均値A4と、時刻T1の時点で平均値A2と同じ値を示す点A2’’とによって構成される三角形TR2とは、相似であって、下記の式(1)の関係を満たす。
【0117】
式(1)…(A2−A4):(A3−A2)=(T2−T1):(T3−T2)
そして、A4以外のA2,A3,T1,T2,T3は既知であるから、式(1)から時刻T1の時点での平均値A4を求めることができ、時刻T1の時点での検出値VTCANG2であるA1と前記平均値A4との差を、前記オフセット分VTCOFSとして算出する。
【0118】
即ち、前記オフセット分VTCOFSは、検出値VTCANG2を、検出値VTCANG1の平均値に近づけるための補正値である。
尚、前記式(1)は、時刻T2及び時刻T3における平均値A2,A3から、平均値の変化速度を求め、該変化速度から、時刻T1における平均値を推定することができることを示すものであり、A4を求める方法を式(1)に限定するものではない。
【0119】
ステップS307でオフセット分VTCOFSを算出すると、次のステップS308(補正手段)では、オフセット分VTCOFSを求めた後に検出値VTCANG2を演算したタイミングで、制御に用いる検出値VTCNOWを、検出値VTCANG1から、検出値VTCANG2をオフセット分VTCOFSだけ減算して求められる検出値VTCANG3に切り換える。
【0120】
ステップS309では、検出値VTCANG1の演算を停止させ、以後、カム位相信号CAM発生毎の検出値VTCANG1の演算への切り換えが判断されるまで、検出値VTCANG1の演算停止状態に保持され、交番トルクの1周期毎(クランク角180deg毎)に、VTCANG2−VTCOFS=VTCANG3をVTCNOWに設定し、VTCNOW=VTCANG3に基づいて、可変バルブタイミング機構114を制御させる。
【0121】
上記のようにして、検出値VTCANG1から検出値VTCANG3に切り換えれば、切り換え後は検出値VTCANG1の平均値に基づいて可変バルブタイミング機構114が制御されることになり、無用なバルブタイミングのシフト補正がなされることを抑制できる。
【0122】
図13は、検出値VTCANG1から検出値VTCANG3への切り換えの様子を示すタイムチャートである。
時刻T3は、検出値VTCANG1がその平均値を示したタイミングであり、前記平均値A3及び時刻T3に基づいて前述のようにして、オフセット分VTCOFSが算出される。
【0123】
そして、オフセット分VTCOFSを算出した後の最初の検出値VTCANG2の演算タイミング(時刻T5)から、交番トルクの1周期毎の検出に切り換えられるが、検出値VTCANG2が演算される毎に、検出値VTCANG2をオフセット分VTCOFSだけ補正し、該補正の結果である検出値VTCANG3を、可変バルブタイミング機構114のフィードバック制御に用いるようにする。
【0124】
従って、検出値VTCANG3に切り換えられた後も、検出値VTCANG1の振れの中心値に基づいて、可変バルブタイミング機構114がフィードバック制御されることになる。
【0125】
一方、ステップS301で、可変バルブタイミング機構114の制御に用いるバルブタイミングの検出値VTCNOWとして、カム位相信号CAM発生毎の検出値VTCANG1が選択されていると判断されると、ステップS310へ進む。
【0126】
ステップS310では、現在制御に使用している検出値VTCNOWが、交番トルク周期毎(クランク角180deg毎)の検出値VTCANG3であるか否かを判断する。
そして、現在制御に使用している検出値VTCNOWが、交番トルク周期毎(クランク角180deg毎)の検出値VTCANG3であって、カム位相信号CAM発生毎の検出値VTCANG1への切り換えが済んでいない場合には、ステップS311へ進む。
【0127】
ステップS311では、カム位相信号CAM発生毎の検出値VTCANG1の演算を開始させ、次のステップS312では、交番トルク周期毎(クランク角180deg毎)の検出値VTCANG3の算出タイミングになるのを待って、制御に用いる検出値VTCNOWを、検出値VTCANG3から検出値VTCANG1に切り換える。
【0128】
そして、次のステップS313では、制御に用いなくなった検出値VTCANG2(VTCANG3)の演算を停止させる。
ところで、交番トルクに影響されて振れるバルブタイミングの中心値を検出するタイミングと、交番トルク周期毎の検出タイミングとのずれによって、前記オフセット分VTCOFSによる補正が必要となる。
【0129】
そこで、交番トルク周期毎の検出タイミングを、交番トルクに影響されて振れるバルブタイミングの中心値を検出するタイミングに設定する処理、換言すれば、交番トルクに影響されて振れるバルブタイミングの中心値を検出することになるカム位相信号CAMを、交番トルク周期毎のバルブタイミングの検出に用いるカム位相信号CAMとして選択する処理を行わせることができ、係る選択処理を、図14のフローチャートに従って説明する。
【0130】
図14のフローチャートは、カム位相信号CAM発生毎に実行され、まず、ステップS401では、交番トルク周期(180deg周期)毎の検出タイミングの学習条件が成立しているか否かを判断する。
【0131】
具体的には、イグニッションスイッチがONされてから学習を行っていないこと、エンジン101が設定回転速度以下で定常運転されていること、バルブタイミング制御の定常状態であることなどの条件が成立している場合に、学習条件の成立を判断する。
【0132】
前述のように、前記エンジン回転速度NEを学習条件とするのは、回転速度が高い条件では、バルブタイミングの検出精度が低下するためであり、アイドル定常運転状態を学習条件とすることがより好ましい。
【0133】
また、交番トルクに影響されて振れるバルブタイミングの中心値を検出するタイミングは、経時変化を示すが、急激に変化することはないので、イグニッションスイッチがONされてからOFFされるまでの間に1回だけ行わせるようにすれば充分である。
【0134】
尚、交番トルクに影響されて振れるバルブタイミングの中心値を検出するタイミングの経時的変化は、バルブスプリング特性・カムシャフトのフリクション特性・可変バルブタイミング機構114内部のフリクション特性の経時変化などによって発生する。
【0135】
また、学習条件を上記のものに限定するものではなく、また、記述した3条件が成立している場合に学習を行わせたり、記述した3条件のうちの1つ或いは複数が成立している場合に学習を行わせたりすることができる。
【0136】
学習条件が成立すると、ステップS402へ進み、カム位相信号CAMの発生毎にバルブタイミング(位相)を検出させ、ステップS403(平均値演算手段)では、カム位相信号CAMの発生毎に検出したバルブタイミング(位相)について、交番トルクの1周期(180deg)の間の平均値を算出する。
【0137】
ステップS404(選択パルス設定手段)では、前記平均値に最も近いバルブタイミング(位相)を検出したカム位相信号CAMに基づいて、交番トルクの1周期(180deg)毎のバルブタイミング(位相)の検出に用いるカム位相信号CAMを選択する。
【0138】
上記のようにして、交番トルクに影響されて振れるバルブタイミングの中心値を検出するタイミング(カム位相信号CAM)を、交番トルクの1周期(180deg)毎の検出タイミングとして選択すれば、前記オフセット分VTCOFSによる補正を行うことなく、カム位相信号CAM発生毎の検出から交番トルクの1周期(180deg)毎の検出に移行させても、バルブタイミングの制御中心がずれることを抑制できる。
【0139】
但し、交番トルクに影響されて振れるバルブタイミングの中心値を検出するタイミング(カム位相信号CAM)を、交番トルクの1周期(180deg)毎の検出タイミングとして選択する処理を行いつつ、前記オフセット分VTCOFSによる補正を行わせることができる。
【0140】
図15は、交番トルク(カムトルク)の位相の経時変化、及び、交番トルクの1周期毎の検出に用いるカム位相信号CAMの選択の様子を示すタイムチャートであり、経時変化によってカムトルク(交番トルク)の位相が変化すると、交番トルクに影響される位相(バルブタイミング)の振れの位相も変化する。
【0141】
そこで、図15に示す例では、交番トルクの1周期毎の検出用として経時変化前に用いていたカム位相信号CAMを、経時変化後は、図中に点線で示すカム位相信号CAMに切り換え、交番トルクの1周期毎の検出用として用いるカム位相信号CAMの発生位置で、実際の位相(バルブタイミング)が振れの中心値を示すように学習する。
【0142】
尚、可変バルブタイミング機構114によって可変とされるバルブタイミングを、クランクシャフト109と吸気カムシャフト115との位相差に基づいて検出するのに用いるクランク角センサやカム位相センサのセンサ構造や出力特性を、図6,図7に示したものに限定されず、交番トルク(カムトルク)の1周期毎のバルブタイミングの検出と、前記交番トルク(カムトルク)の1周期よりも短い周期でのバルブタイミングの検出とが行えるセンサ構造・出力特性のものであれば良い。
【0143】
ここで、上記実施形態から把握し得る請求項以外の技術的思想について、以下に効果と共に記載する。
(イ)請求項2記載の可変バルブタイミング機構の制御装置において、
前記閾値が、前記第1のバルブタイミング検出手段におけるバルブタイミングの検出周期が、前記制御手段による前記操作量の演算周期以下となるエンジン回転速度である可変バルブタイミング機構の制御装置。
【0144】
上記発明によると、前回の操作量の演算タイミングから今回の操作量の演算タイミングまでの間にバルブタイミングの検出値が少なくとも1回は更新されるから、前回の操作量の演算に用いた検出値をそのまま用いて今回の操作量演算がなされることが回避され、必要充分な更新周期で実際のバルブタイミングが検出されることになる。
(ロ)請求項3記載の可変バルブタイミング機構の制御装置において、
前記補正値演算手段が、前記平均値算出手段で算出された平均値と、該平均値に相当するバルブタイミングを前記第2のバルブタイミング検出手段が検出したタイミングとから、前記第1のバルブタイミング検出手段によるバルブタイミングの検出タイミングにおける前記平均値を推定し、この推定した平均値と、前記第1のバルブタイミング検出手段によるバルブタイミングの検出値との偏差を、前記補正値として演算する可変バルブタイミング機構の制御装置。
【0145】
上記発明によると、バルブタイミング検出手段の切り換えに伴ってバルブタイミングの制御中心がずれることを抑制できる。
(ハ)請求項1〜3、(イ)、(ロ)のいずれか1つに記載の可変バルブタイミング機構の制御装置において、
前記エンジンバルブを開閉するカムシャフトの1回転当たり複数のカムパルス信号を発生するカムパルス発生手段と、
クランクシャフトの基準角度位置を検出する基準角度検出手段と、
を更に含み、
前記第1のバルブタイミング検出手段及び前記第2のバルブタイミング検出手段が、前記基準角度位置と前記カムパルス信号との位相差からバルブタイミングを検出し、かつ、前記第1のバルブタイミング検出手段が、前記カムパルス信号から、前記交番トルクの1周期に対応する角度毎のカムパルス信号を選択し、選択したカムパルス信号に対応して求められた位相差からバルブタイミングを検出する可変バルブタイミング機構の制御装置。
【0146】
上記発明によると、カムパルス信号から、交番トルクの1周期に対応する角度毎のカムパルス信号を選択することで、エンジンバルブの開閉動作による交番トルクの1周期のクランク角度毎に、バルブタイミングを検出できる。
(ニ)請求項(ハ)記載の可変バルブタイミング機構の制御装置において、
前記第2のバルブタイミング検出手段によるバルブタイミングの検出値について、前記交番トルクの1周期当たりの平均値を求める平均値算出手段と、
前記第2のバルブタイミング検出手段による検出値と前記平均値との比較に基づき、前記第1のバルブタイミング検出手段が選択する前記カムパルス信号を設定する選択パルス設定手段と、
を更に含む可変バルブタイミング機構の制御装置。
【0147】
上記発明によると、交番トルクに影響されて振れるバルブタイミングの中心値を検出するタイミングを、交番トルクの1周期毎の検出タイミングとして選択すれば、バルブタイミング検出手段の切り換えに伴ってバルブタイミングの制御中心がずれることを抑制できる。
【符号の説明】
【0148】
101…エンジン、105…吸気バルブ(エンジンバルブ)、109…クランクシャフト、114…可変バルブタイミング機構、115…吸気カムシャフト、201…エンジン制御装置、203…クランク角センサ(基準角度検出手段)、204…カム位相センサ(カムパルス発生手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンバルブのバルブタイミングを変更する可変バルブタイミング機構の制御装置であって、
前記バルブタイミングを、前記エンジンバルブの開閉動作による交番トルクの1周期のクランク角度毎に検出する第1のバルブタイミング検出手段と、
前記バルブタイミングを、前記交番トルクの1周期よりも小さいクランク角度毎に検出する第2のバルブタイミング検出手段と、
前記バルブタイミング制御が定常状態である場合に、前記第1のバルブタイミング検出手段を選択し、前記バルブタイミング制御が過渡状態である場合に、前記第2のバルブタイミング検出手段を選択する選択手段と、
前記選択されたバルブタイミング検出手段によるバルブタイミングの検出値に基づいて前記可変バルブタイミング機構の操作量を演算して出力する制御手段と、
を含んで構成された可変バルブタイミング機構の制御装置。
【請求項2】
前記選択手段が、エンジン回転速度が閾値未満である場合に、前記定常・過渡状態の判別に基づいて前記第1のバルブタイミング検出手段と前記第2のバルブタイミング検出手段とのいずれか一方を選択する一方、エンジン回転速度が前記閾値以上である場合には、前記第1のバルブタイミング検出手段を選択し、かつ、前記第2のバルブタイミング検出手段によるバルブタイミングの検出を停止させる請求項1記載の可変バルブタイミング機構の制御装置。
【請求項3】
前記第2のバルブタイミング検出手段によるバルブタイミングの検出値について、前記交番トルクの1周期当たりの平均値を求める平均値算出手段と、
前記平均値に基づいて前記第1のバルブタイミング検出手段の検出値を補正するための補正値を演算する補正値演算手段と、
前記補正値演算手段で演算された補正値に基づいて前記第1のバルブタイミング検出手段の検出値を補正する補正手段と、
を更に備え、
前記選択手段で前記第1のバルブタイミング検出手段が選択された場合に、前記制御手段が、前記補正手段で補正された検出値に基づいて前記可変バルブタイミング機構の操作量を演算して出力する請求項1又は2記載の可変バルブタイミング機構の制御装置。
【請求項1】
エンジンバルブのバルブタイミングを変更する可変バルブタイミング機構の制御装置であって、
前記バルブタイミングを、前記エンジンバルブの開閉動作による交番トルクの1周期のクランク角度毎に検出する第1のバルブタイミング検出手段と、
前記バルブタイミングを、前記交番トルクの1周期よりも小さいクランク角度毎に検出する第2のバルブタイミング検出手段と、
前記バルブタイミング制御が定常状態である場合に、前記第1のバルブタイミング検出手段を選択し、前記バルブタイミング制御が過渡状態である場合に、前記第2のバルブタイミング検出手段を選択する選択手段と、
前記選択されたバルブタイミング検出手段によるバルブタイミングの検出値に基づいて前記可変バルブタイミング機構の操作量を演算して出力する制御手段と、
を含んで構成された可変バルブタイミング機構の制御装置。
【請求項2】
前記選択手段が、エンジン回転速度が閾値未満である場合に、前記定常・過渡状態の判別に基づいて前記第1のバルブタイミング検出手段と前記第2のバルブタイミング検出手段とのいずれか一方を選択する一方、エンジン回転速度が前記閾値以上である場合には、前記第1のバルブタイミング検出手段を選択し、かつ、前記第2のバルブタイミング検出手段によるバルブタイミングの検出を停止させる請求項1記載の可変バルブタイミング機構の制御装置。
【請求項3】
前記第2のバルブタイミング検出手段によるバルブタイミングの検出値について、前記交番トルクの1周期当たりの平均値を求める平均値算出手段と、
前記平均値に基づいて前記第1のバルブタイミング検出手段の検出値を補正するための補正値を演算する補正値演算手段と、
前記補正値演算手段で演算された補正値に基づいて前記第1のバルブタイミング検出手段の検出値を補正する補正手段と、
を更に備え、
前記選択手段で前記第1のバルブタイミング検出手段が選択された場合に、前記制御手段が、前記補正手段で補正された検出値に基づいて前記可変バルブタイミング機構の操作量を演算して出力する請求項1又は2記載の可変バルブタイミング機構の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−196481(P2010−196481A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39205(P2009−39205)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】
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