説明

可変ピストンストローク式の4シリンダ、4サイクル、フリーピストン、予混合気圧縮点火型の内燃往復ピストンエンジン

【課題】高効率、少ないエミッション、多燃料作動を達成する。
【解決手段】4サイクルエンジンにおいて、2サイクル、線形、フリーピストン、予混合気圧縮点火、可変ピストンストローク式の4サイクル、4シリンダ、予混合気圧縮点火型内燃往復フリーピストンエンジンを提供する。エンジンはクランク軸を備えておらず、直接的な回転出力を提供しない。クランク軸の代わりに、フリーピストン23が2サイクルフリーピストンエンジンに類似する態様で振動する。ピストンポンプや圧縮機のような多くの用途のため、エンジンは振動ピストンによって直接駆動される出力を提供する。出力タービンのためのガスジェネレータとして使用するような他の用途(これに限定されない)では、エンジンは回転動力を生じる間接的な手段を提供する。エンジンが高速出力タービンと共に使用されるときに、出力タービンは電力の出力のための高速オルタネータに直接連結可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの分野、特に高められた効率、少ないエミッション、多種燃料作動を可能にする、可変ピストンストローク式の4サイクル、4シリンダ、フリーピストン、予混合気圧縮点火型の内燃往復ピストンエンジンに関する。用途は、自動車、エンジン駆動ポンプ、エンジン駆動圧縮機、小型航空機、船舶および動力工具と一緒の使用を含んでいるが、これらに限定されない。
【背景技術】
【0002】
予混合気圧縮点火(PCCI)エンジンと、関連する均質吸気圧縮点火(HCCI)内燃往復エンジンの発展は、多年にわたり会社、大学および米国国立研究所並びに多数の外国機関において進行中である。これらの中で次の会社と大学と研究所がある。
会社:
・Caterpillar Inc.
・Cummins Inc.
・General Motors Corporation
・Waukesha Engine
大学:
・ヘルシンキ技術大学(Helsinki University of Technology)フィンラド ヘルシンキ
・北海道大学、日本 札幌
・ルント技術工科大学(Lund Institute of Technology)スウェーデン ルント
・マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology)マサチューセッツ州ボストン
・ノルウェー科学技術大学(Norwegian University of Science and Technology)ノルウェー トロンハイム
・カルフォルニア大学(University of California)カルフォルニア州バークレー
・ミシガン大学(University of Michigan)ミシガン州アンアーバー
・ミネソタ大学(University of Minnesota)ミネソタ州ミネアポリス
・ウィスコンシン大学(University of Wisconsin)ウィスコンシン州 マジソン
研究所:
・アルゴンヌ国立研究所(Argonne National Laboratory)
・ローレンスリバーモア国立研究所(Lawrence Livermore National Laboratory)
・国立エネルギー技術研究所(National Energy Technology Laboratory)
・オークリッジ国立研究所(Oak Ridge National Laboratory)
・サンディア国立研究所(Sandia National Laboratory)
【0003】
PCCI/HCCIエンジンは、高い効率、少ないエミッションそして多種燃料作動を可能にする。技術は数ワットから数100万ワットまで拡張可能である。PCCI/HCCIエンジンの2サイクルと4サイクルの両方のバージョンで、開発が進展した。この分野での注目に値する研究は次の通りである:Cummins Inc.,米国特許出願第2004/00103860号で出願された4サイクルPCCIエンジンについて;サンディア国立研究所のヴァンブラリガン(Van Blarigan),米国特許第6,199,519B1の2サイクル、フリーピストン、HCCI「熱力学的燃料電池(Thermodynamic Fuel Cell)」について;Caterpillar Inc.,米国特許第6,463,895 B2に開示された、液圧出力部を有する2サイクルフリーピストンエンジンについて。しかしながら、これらの努力はまだ、本当に実行可能なPCCI/HCCIエンジンを作り出していない。従来のエンジンから派生する4サイクルPCCI/HCCIエンジン、例えばCumminsのエンジンでは、固定ストロークのピストンが、吸気点火時に制限される一定の圧縮比を生じる。従って、このPCCI/HCCI4サイクルエンジン研究は現在まで主として、給気パラメータの制御に重点をおいた既存の4サイクルエンジンの改良に基づいている。これらの改良は、シリンダ間で許容される燃焼均一性を得るように、給気点火のタイミングを適切に行うために要求される、個々のシリンダ給気組成と温度をきわめて複雑に制御することに重点を置いている。その結果生じる4サイクルエンジンは非常に複雑で、周囲条件および燃料の性質に対してきわめて敏感である。この敏感性は、米国特許出願を行った前述のCumminsが、給気の自動点火特性を改善するために2つの燃料の使用に重点を置いているような程度である。この現在の問題にもかかわらず、製品と技術の開発会社であるTIAXによる研究と、産業予想会社の世界的な見通しである「重負荷用パワートレーンの未来(The Future of Heavy-Duty Powertrains)」は、「HCCIエンジンは2020年までに大型車両の40%近くに動力を供給するであろう。HCCIは最初は、低速で軽負荷に動力を供給するだけであり、エンジンに対して大きな要求がなされるときには、より大きな動力を供給するために、初期バージョンのエンジンが慣用のディーゼル燃焼を組み入れるであろう。」と予想している。この研究は更に、「フルモードのHCCIエンジンは最終的には初期混合モードHCCI/ディーゼル技術に取って代わるであろう。」と予想している。
【0004】
前述の改良された従来エンジンの複雑さを避けるために、研究員はPCCI/HCCIのための他のエンジン構造を詳細に調べた。フリーピストンエジンは元々可変ストロークを有し、従来のクランクシャフトエンジンの制約を回避する。実際のフリーピストンエンジンを発展させようとして、数十年間にわたって多くの研究がなされた。しかしながら、現在まで成功は限定されている。この従来の努力の多くは、2サイクルディーゼルエンジンに重点が置かれ、火花点火エンジンの研究は少なかった。液圧によって動力を出力するフリーピストン単シリンダエンジンを提供するための、INNAS Free Piston B.V.による最近の研究は、実際の2サイクルディーゼル、フリーピストンエンジンを提供するための努力の例である(米国特許第6,279,517 B1号明細書参照)。Sunpower Inc.は、米国特許第5,775,273号明細書と米国特許第6,035,637号明細書に開示されているように、可変弁動作式の火花点火フリーピストンエンジン構造を提案している。この場合、膨張ストロークは圧縮ストロークよりも長い(効率を高めるために)。オーストラリアのPembek Systems Pty Ltd.は、ハイブリッド電気自動車のための「フリーピストンパワーパック」を推奨する。この場合、対向した2個のピストン、2サイクル、フリーピストンエンジン(ディーゼルまたは火花点火式)の複合ユニットを使用する。このエンジンは一体の線形ジェネレータを備え、自己掃気を行う(米国特許第6,651,599 B2号明細書参照)。しかしながら、前述のものは現在まで、2サイクルフリーピストンエンジン性能の実質的な改良を実例で示していない。この改良により、PCCI/HCCI変形された従来のエンジンを超える改良を与える技術に、PCCI/HCCI変形が提供されるであろう。サンディアのヴァンブラリガンのような最近の分析的な取り組みは、フリーピストンエンジンにおいてPCCI/HCCIサイクルを使用し、結論を裏付ける。サンディアで開発中の2サイクルPCCI/HCCIエンジンは、速度範囲とスロットリングが更に制限され、類似の4サイクルPCCI/HCCIエンジンと比べて、エミッションが多く、エネルギー密度が小さく(主として線形オルタネータに起因する)そして燃料消費が多い(主として、2サイクルエンジン特有の給気掃気作用制限に起因する)。Lotus Engineering Ltd.は英国のシェーフィールド大学(University of Sheffield)およびラフバラ大学(University of Loughborough)と合同で、一体の線形オルタネータ(サンディアの2サイクルユニットに形状が似ている)を備えた2シリンダ4サイクルフリーピストン線形エンジンを研究している。この場合、オルタネータ出力は動力/排気ストロークの間電気エネルギーとして(外部の貯蔵装置に)蓄えられ、そして吸気/圧縮および排気サイクルの間ピストンを駆動するためにオルタネータをモータとして回転させるために使用される(英国のシェーフィールド大学の2005年4月のMIRA会議の燃料電池およびバッテリ自動車工業学術ネットワーク(FABIAN:Full Cell and Battery Vehicle Industry Academic Network)で行われたhttp://www.shef.ac.uk/fabian/stewart_ws5.pptのプレゼンテーション「4ストロークフリーピストンエネルギー変換器(Four Stroke Free Pison Energy Converter)」参照)。彼らの初期段階の研究は、このエンジンがPCCI/HCCI燃焼の使用を含む2サイクルフリーピストンエンジンに多くの改良を提供することを示している。しかしながら、提案されたエンジンは複雑であり、そして非常に高級でコストのかかるエネルギー変換回路と外部エネルギー貯蔵装置を備えた線形オルタネータ/モータを必要とする。更に、エンジンと複合支援装置のエネルギー密度が低い。
【0005】
出力タービンで動力を取り出すディーゼル2サイクルフリーピストンガスジェネレータを開発するためのKvaerner ASAによる最近の研究は注目すべきである(http//:citeseer.csail.mit.edu/601185.html.で入手可能な「フリーピストンディーゼルエンジンの動特性と制御(Dynamics and Control of a Free piston Diesel Engine)」Johansen他、ノルウェー科学技術大学、エンジニアリングサイバネティクス部門、トロンハイム、Norway and Kvaerner ASA 技術部門、ノルウェー リサカー参照)。この研究は1925年、1935年および1941年の米国特許第1,657,641号明細書、米国特許第2,162,967号明細書、米国特許第2,581,600号明細書に開示され、そして1930年代から1960年代までGM、フォード、ジュンカース(Junkers)ほかによって更に研究が進められた元々ペスカラ(Pescara)による技術を利用している。この研究は更に、米国特許第4,873,822号明細書、ベナロヤ(Benaroya)1989年、発明の名称「内燃機関とタービンを備えたエネルギー発生設備(Energy Producing Installation with Internal Combustion Engine and Turbine)」に開示された内容に関する。Kvaerner 研究の目的は、ガスタービンのように軽くてコンパクトであり、船舶推進用途のためのディーゼルエンジンのように燃料消費が少ない(50%効率)8MWの定格をエンジンを作ることである。単シリンダ試験台エンジンからの初期結果は期待できるものである。
【0006】
前述のエンジンの複雑さと制限は、ここに開示した4シリンダ、4サイクル、フリーピストン、PCCI/HCCIエンジンによって克服することができる。このエンジンは4シリンダ、4サイクル、フリーピストン浮動ストローク(FPFS)、PCCI/HCCI内燃、往復ピストンエンジンを提供する。以下において、本発明は1つ以上の次の用語、すなわちFPFSエンジン、本発明および本FPFSエンジンによって区別されるであろう。
【0007】
ここに開示したFPFSエンジンは図16乃至22に示すように、ガスジェネレータ/出力タービン構造を含んでいる。これは前述のKvaernerの出力タービン2サイクルフリーピストンエンジンの利点を保持するが、4サイクルPCCI/HCCIエンジンのエミッションが少なく、燃料消費が少ないという利点を有する。
【0008】
フリーピストンエンジンは、クランクシャフトPCCI/HCCIエンジンに関連する給気燃焼タイミングの問題を解決するが、回転動力を直接出力する手段を提供しない。ここに開示したFPFSエンジンは、フリーピストンエンジンの線形運動を直接使用するためあるいはこの線形運動を回転運動に間接的に変換するために種々の機構を使用することによって、前述の問題を解決する。
【0009】
4サイクル構造のFPFS PCCI/HCCIエンジンは、可変弁動作(VVA:variable valve actuation)からVVAが実際に必要になる程度まで大きな利益を得る。幾つかの可変弁構造が他人よって現在開発されている。その中で、Sturman Industries, Inc.、Grillの米国特許第6,820,856号(2004年);電子および電磁システム電磁弁駆動システムのための技術研究所のマサチューセッツ工科大学(2004年第35回年次IEEEパワーエレクトロニクス専門家会議のために発行され、http://www.mit.edu/~djperrea/Publications/Conference%20Papers/cpPESC04p4838.pdfから入手可能である、MIT論文「電気機械エネルギー弁駆動の設計および試験による評価(Design and Experimental Evaluation of An Electromechanical Engine Valve Drive)」参照)と、Johnson Cotrols(http://www.shef.ac.uk/fabian/mareky_ws4pdf.pdfから入手可能である、2004年10月13日の英国シェーフィールドのシェーフィールド大学でのMIRA会議におけるプレゼンテーション「電気機械式弁動作(Electromechanical Valve Actuation)」参照)が注目に値する。それにもかかわらず、図11A,11B,11C及び11Dに示されているように、VVA機構がここに開示されている。このVVA機構は開発されている前述のものに類似する性能を提供し、開発されているものよりも実施コストが安くなりそうである。
【0010】
エミッションを減らし、効率を高めるように既存のエンジン技術を改良するために多数の研究がなされている。例えば、ARES,ARICE,Freedom Car,Advanced Heavy Hybrid,21st Century Truck Program等。更に、ピーク圧力を上昇させることによってディーゼルエンジン効率を高めるための長期間の研究がなされている。フィンランドのヘルシンキ大学におけるTEKES ProMOTORによる研究では、非常に高い作動圧力を含む、極端なエンジン作動パラメータが詳細に研究されている(http://www.icel.tkk.fi/eve/ICEL_Final_report.pdf.から入手可能である、TUKEVAのフィンランドアカデミーのTEKES ProMOTORによる、2003年9月30日の「ピストンエンジンの極値、最終リポート(Extreme values of the piston engine - Final Report)」参照)。エンジンのガスパワーサイクル効率が主としてエンジン平均有効圧力に関係していることが理解される(より高い圧力はより高い効率を生じる)。この平均有効圧力は更に、エンジン要素設計および入手可能な材料、特にクランクシャフトの設計および材料によって制限される。前の研究では、この極端な条件でエンジンの更なる開発を制限する要因の1つとして、このような高圧作動による増大した負荷を、クランク軸が支持できないことを挙げている。このような負荷によって要求されるクランク軸の大きさは大幅に増大し、クランク軸の大きさは結局、エンジン作動圧力を更に高める制限要因である。出力タービンのような間接的な動力取り出し法を使用する、Kaevernerによって開発されたまたはここに開示されているようなエンジン構造を使用することにより、クランク軸の制限は回避される。注意:図16乃至22に示すような、ここに開示した構造の場合、ピストン連結要素1,24,25,26,45及び46は出力負荷を支持しないがしかし、その代わりに、シリンダの圧力によって要求される、圧縮ストロークよりもはるかに小さな負荷を支持する(そして排気ストロークの負荷を圧送する)。これは、高い作動圧力が容易に得ることができるので、エンジン効率を改善するという重要な利点がある。
【発明の開示】
【0011】
本発明の全体的な目的は、4サイクルエンジンにおいて、2サイクル、線形、フリーピストン、予混合気圧縮点火(PCCI/HCCI)エンジンの可変「浮動」ストローク能力(ひいては可変圧縮比)を提供することである。2サイクル線形フリーピストンPCCI/HCCIエンジンについて前述したように、作動速度範囲が元々制限され、スロットルターンダウンが制限される。4サイクルエンジンにおいて浮動ピストンが使用されると、これらの制限が弱められ、エミッションが減少する(2サイクルエンジンに対して)。しかしながら、4サイクルPCCIエンジンは、これまでの開発のように、きわめて複雑な制御を必要とする。この制御はこのエンジンで使用される典型的なクランク軸構造に関連する一定の圧縮比によって要求される。本FPFSエンジンは図2,3,4,6,7,8,9,10,18及び19に示されているように、4サイクルPCCIエンジンで一般的に使用される従来の回転クランク軸を、浮動ストロークを得るようにピストンを連結する手段と置き換えるための機構を開示している。
【0012】
本FPFSエンジンの可変ストローク特性は、可変弁作動(VVA)によって最も良好に実行される。というのは、本FPFSエンジンの不確定のストローク長さは、従来のエンジンで見られる一定弁開閉時期を使用することが困難であるからである。電気油圧作動弁はVVAを達成するための好ましい手段である。なぜなら、各弁が独立したアクチュエータを備えているからである。しかしながら、本発明は図11A,11B,11C及び11Dに示すような、各シリンダのためのモータ駆動カム軸を使用する代替的なVVA手段を開示している。
【0013】
本FPFSエンジン作動の重要な要素は、排気弁の適切な開放時期である。排気弁が膨張サイクルの前に開放し得ると、他のシリンダの圧縮サイクルが給気の点火ポイントに充分に追いやられ、それ故エンジンが連続的に作動しなくなる。所望な弁タイミングの達成を補助するために、本発明は図2に示すように、各々のシリンダで点火検出センサ22A,22B,22C及び22Dの使用を開示する。好ましくは圧電圧力変換器、イオンセンサ、高速熱電対または高速UV火炎センサである。点火センサは図12に示すように、点火が起こるときに、エンジン制御装置に信号を送る。この信号のタイミングは、慣用のエンジンセンサからのデータと関連して、シリンダ内の排気弁を開放するための制御アルゴリズムによって使用される。本発明は更に、図13に示すように、適応制御方法を開示している。この適応制御方法は、点火センサ22A,22B,22C及び22D、すなわち給気点火ポンプで現在の圧縮比を決定するための情報(およびピストン位置のような慣用センサデータ11)を使用する。この情報はピークエンジン性能を絶えず得るように弁動作パラメータ(開放時期、開放時間、開放高さ等)を変更するために、制御装置で使用される。この適応制御装置を最適に使用するために、使用される燃料の特性を制御装置メモリ内に記憶させる必要があることと、マイクロプロセッサに基づく制御が好ましいこと(既存のエンジンでは一般的なことである)が予想される。
【0014】
可変ストローク長さによって強いられる制約と、次の圧縮サイクルを行うための膨張サイクルの要求に起因して、本FPFS4サイクルエンジンは4シリンダに限定される。例えば、FPFSエンジンエンジンの8シリンダバージョンでは、2個のシリンダが共に圧縮ストロークにある。両シリンダが同時に自動点火を行うことは実現しそうにない。一方がミスファイアすると、出力が大幅に低下し、燃料消費とエミッションが増大する。本FPFSエンジンのシリンダ構造は従来のエンジンで使用される一般的な直列、水平、V等(図示していない)とすることができるがしかし、フリーピストンの線形振動または枢着軸運動対回転クランク軸の大きなフレキシビリティに起因して、図16乃至20に示すような、図示したクワッドシリンダ配置のような一般的でない他の配置構造を使用することができる。注意:液圧ポンプまたは電気ジェネレータのようなマルチ4シリンダエンジンの出力部は、単一の大型4サイクルエンジンによって達成される出力よりも高い出力を提供するために、一緒に連結可能である。このマルチエンジン構造の利点は、低負荷時にグループ内の1個以上のエンジンを停止することによってエンジングループを絞ることができることにある。それによって、単一大型エンジンの絞りよりも改善された効率が提供される。マルチエンジングループ内で、累積作動時間および/または各エンジンから生じる動力を追跡し、摩耗が均等に分配されるように、各エンジンによって生じる作動時間または合計kWを等しくするために、グループ内の各エンジンをある時間にわたって周期的に動かす。更に、発達した問題を有するがしかし使いやすいマルチエンジングループ内のエンジンは、動力発生を個別的に制限可能である。
【0015】
フリーピストン浮動ストローク4シリンダエンジンで機能を発揮するために、ストロークが長すぎる連接棒を備えた従来のクランク軸型構造を形成することができるが、必要とされないし、副次的な最適解決策である。
【0016】
FPFSエンジンから動力を直接取り出すための好ましい浮動ストローク機構は、ピストン連接棒を取付けるための、図10A及び10Bに示すような線形振動軸または図1乃至8に示すような揺れ腕を備えた枢着軸である。FPFSの前の構造では、2つの振動ピストン対の同時線形運動が可変容積ピストンポンプまたは圧縮機または線形オルタネータを直接駆動するために使用可能である。あるいは後者では、ピストン対の線形振動が枢着(揺れ)軸出力に変換される。この枢着軸は回転しないがその代わりに時計回りに振動し、従って反時計回りに各エンジンサイクルによって部分回転する。2セットの揺れ腕を備えた枢着軸は2つのピストン対を互いに連結するために使用され、一方のピストン対の運動が他方のピストン対の運動と反対向きである(前の構造における一緒に動くピストン対とは対照的に)。枢着軸からの揺れ腕の長さは、ピストンのストロークが揺れ腕ストロークによって制限されないほど充分に長い。注意:4シリンダFPFSエンジンでは(従来の4シリンダエンジンのように)、各圧縮サイクル、膨張サイクル、排気サイクルおよび吸気サイクルが1つのシリンダまたは他のシリンダ内にいつでも存在する。1つのシリンダの膨張サイクルは他のシリンダの圧縮サイクルを駆動する。従って、ピストン移動長さは常に圧縮サイクルの圧力によって制約される。例えば膨張サイクルでの他のピストンのストローク長さは、シリンダ内、それ故圧縮ストローク内の点火によって測定される。圧縮点火は一連のエンジンおよび給気パラメータの関数である。このパラメータはサイクル毎にある程度変化する。従って、所定のすべてのサイクルのストローク長さは、給気点火が行われるまで不確かである。各ピストン圧縮ストローク長さは、他のものとは無関係であり、ピストン運動は機械的なストローク長さ制限によって全く影響を受けない。本発明によって開示した機構は、各圧縮サイクルの給気を点火するために必要な圧縮比に従って、すなわち他のシリンダ圧縮ストロークには完全に依存しないで、ストローク長さを変更または「浮動させる」ことができる。ピストンは、圧縮サイクルの給気圧力によって制約されなければ(通常は給気点火が続く)、最終的にシリンダヘッドに衝突して停止するであろう。
【0017】
既存のフリーピストンPCCIエンジンによって既に実証されているように、非常に高い圧縮比を得ることができる。これはエンジン効率を改良し、多くの異なる燃料の特性に適応することができる。非常に希薄な燃料混合物が使用可能であると、エミッションが少ない。これは本FPFSエンジンのケースである。線形ピストンエンジンによってあるいは急速圧縮膨張機械を使用する研究室実験において得られる点火と類似する、真の予混合気圧縮点火は、本FPFSエンジンで得ることができる。多くの用途において、振動軸はここに開示するように、エンジンから動力を取り出すために効果的に使用可能である。しかしながら、幾つかの用途の要求は回転運動の使用によって良好に満たされることに留意すべきである。本FPFSエンジンから回転運動を得るための好ましい手段は、出力タービンのためのガスジェネレータとしてFPFSエンジンを使用することである。エンジンからエネルギーを取り出すためにタービンを使用する、オットーサイクルとディーゼルサイクルのフリーピストンエンジンは、発明の背景で述べたように、以前に製造された。しかしながら、出力タービンでエネルギーを取り出す本FPFS PCCI/HCCIエンジンはユニークである。図14及び15に示すような、振動軸および/または枢着軸から動力を直接取り出す手段と、図16乃至20に示すような、出力タービンから動力を直接取り出す手段は共に、本FPFSの一部としてここに開示されている。
【0018】
ある期間従来のエンジンでそうであったように、ターボ過給と機械式過給は共に、図16乃至19に示すように、本FPFSエンジンに効果的に適用可能である。図20乃至22に示すように、どちらも中間冷却と共にあるいは中間冷却なしに行うことができる。
【0019】
ある期間従来のエンジンでそうであったように、FPFSエンジンからの廃熱を種々の方法で回収することができる。回収されたエネルギーは熱ネルギーの形態で直接使用可能であるかあるいは二次プロセスによって他の形態に変換される。これらの代替的なエネルギーの最も一般的な形態は電気である。エンジン廃熱から作られる電気エネルギーは、複合サイクル、一般的にはジェネレータを駆動するランキンサイクルまたは有機的ランキンサイクル(ORC)を使用する。熱電を含む他の方法が使用可能である。両方共、本FPFSエンジンと共に使用可能である。シロキサン流体を使用するORCのユニークな形態は、図22に示すように、このエンジンの出力パワータービン変形の温度出力特性に良好に適合する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1A】図1Aは、各シリンダ内に2個の背中合わせピストンを備えた2個の平行シリンダからなるエンジンブロック構造と共に、可変(浮動)ピストンストロークを有する、4シリンダ、4サイクル、予混合気圧縮点火、フリーピストン、内燃機関コア(空気と燃料の吸入要素を備えていない)からなる、本発明の最も好ましい実施の形態の正面図である。
【図1B】図1Bは、図1Aに示した本発明のエンジンの最も好ましい実施の形態の平面図である。
【図1C】図1Cは、図1Aに示した本発明のエンジンの最も好ましい実施の形態の右側面図である。
【図2】図2は、図1Bのエンジンの垂直切断面A−Aに沿った、本発明の最も好ましい実施の形態の部分断面図である。上側と下側のピストン対は連接棒によって、枢着軸に固定された揺れ腕に連結されている。4ピストンのフルストローク位置が示してある。更に、可変弁開閉時期が、電子適応制御装置と電気油圧式弁作動装置によって行われている。
【図3】図3は、4ピストンの中間ストローク位置を示す、図1Cのエンジンの垂直切断面B−Bに沿った、本発明の最も好ましい実施の形態の部分断面図である。
【図4】図4は、4ピストンのフルストローク位置を示す、図1Aのエンジンの上側ピストン対の中心線を通る切断面C−Cに沿った、本発明の最も好ましい実施の形態の断面図である。
【図5】図5は、左側シリンダヘッドの表面の、図1Aの垂直面E−Eに沿った、本発明の最も好ましい実施の形態の端面図である。
【図6A】図6Aは、スタータモータをエンジンに連結する歯車装置を示す、図1Bの垂直面F−Fに沿った、本発明の最も好ましい実施の形態の断面図である。
【図6B】図6Bは、左シリンダ列の方に見た、図1Aの中心線D−Dに沿った本発明の最も好ましい実施の形態の垂直断面図である。
【図7A】図7Aは、図7Bに示した本発明の好ましい第2実施の形態の二重ピン揺れ腕の詳細図である。
【図7B】図7Bは、二重ピン揺れ腕を用いた代替的な連接棒連結法と、中間ストローク位置にある4個全部のピストンを示す、本発明の好ましい第2実施の形態の、図3と同様な断面図である。
【図7C】図7Cは、4個全部のピストンがフルストローク位置にある、本発明の好ましい第2実施の形態の、図7Bに示したものと同じ図である。
【図8A】図8Aは、連接棒と揺れ腕の間にスコッチヨーク機構を用いた代替的な連接棒連結法と、フルストローク位置にある4個全部のピストンを示す、本発明の好ましい第3実施の形態の、図3と同様な断面図である。
【図8B】図8Bは、4個全部のピストンが中間ストローク位置にある、本発明の好ましい第3実施の形態の、図8Aに示したものと同じ図である。
【図9A】図9Aは、揺れ腕と枢着軸の代わりにラックアンドピニオン機構を用いたシリンダ対の代替的な連結法と、中間ストローク位置にある4個全部のピストンを示す、本発明の好ましい第4実施の形態の、図3と同様な断面図である。
【図9B】図9Bは、ピストン対が剛性の連接棒によって連結された、図9Aに示した実施の形態に類似する本発明の好ましい第5実施の形態の断面図である。
【図10A】図10Aは、シリンダ対の連結がピストン対を相互連結するために使用される2個の液圧ピストンからなり、4個すべてのピストンが中間ストローク位置にある、本発明の好ましい第6実施の形態の、図3と同様な断面図である。
【図10B】図10Bは、ピストン対が中実のタイバーによって相互連結されている、本発明の好ましい第7実施の形態の、図3と同様な断面図である。
【図10C】図10Cは、中実のタイバーによって相互連結された、本発明の好ましい第7実施の形態のピストン対の拡大図である。
【図10D】図10Dは、2つのピストン対が中実のタイバーによって相互連結されている、図10CのA−A線に沿った、本発明の好ましい第7実施の形態の断面図である。
【図11A】図11Aは、ステッピングモータによって駆動される各シリンダ用の1本のカム軸を使用する代替的弁作動機構を有する、本発明の好ましい第8実施の形態の、下側シリンダとシリンダヘッドの中心を通る図11BのA−A線に沿った水平断面図である。
【図11B】図11Bは、弁カバーを取り外した、本発明の好ましい第8実施の形態のシリンダヘッドの平面図である。
【図11C】図11Cは、本発明の好ましい第8実施の形態のシリンダヘッドの左側面図である。
【図11D】図11Dは、本発明の好ましい第8実施の形態のシリンダヘッドの右側面図である。
【図12】図12は、適応電子制御装置と可変弁調時装置を使用する、本発明のエンジンの最も好ましい実施の形態の制御要素の概略図である。
【図13】図13は、本発明の適応エンジン制御の最も好ましい実施の形態のブロック図である。
【図14A】図14Aは、ピストンが左側のフルストローク位置にある、図1乃至10の本発明のエンジンの好ましい実施の形態の枢着軸による直接駆動に適した、揺れ腕と枢着軸の機構を使用する圧縮機の断面図である。
【図14B】図14Bは、ピストンが右側のフルストローク位置にある、図14Aと同様な図である。
【図15A】図15Aは、揺れ腕がドライバヘッドに対して傾斜した角度の位置にある、図1乃至10に示した本発明のエンジンの好ましい実施の形態の枢着軸による直接駆動に適した線形オルタネータの断面図である。
【図15B】図15Bは、揺れ腕がドライバヘッドに対してほぼ平行な位置にある、図1乃至10に示した本発明のエンジンの好ましい実施の形態の枢着軸による直接駆動に適した線形オルタネータの断面図である。
【図16A】図16Aは、図1のエンジンの変形を含む、本発明のエンジンの好ましい第9実施の形態の平面図であり、この実施の形態はエンジン軸から動力を取り出さないで、エンジン排ガスによって駆動される出力タービンから取り出し、エンジンと出力タービンの間に配置されたターボ過給器を備え、この配置構造の場合ピストンエンジンが高圧ガスジェネレータとして機能し、ピストン対が四角形に配置され、各ピストン対のために別個の揺れ腕が設けられている。
【図16B】図16Bは、図16Aに示した好ましい第9実施の形態の側面図である。
【図17A】図17Aは、図16Aに示した好ましい第9実施の形態の左側面図である。
【図17B】図17Bは、図16Aに示した好ましい第9実施の形態の右側面図である。
【図18A】図18Aは、図17Aに示した好ましい第9実施の形態の左側面図に類似する側面図であるが、弁カバーが取り外してある。
【図18B】図18Bは、図16Aに類似する、好ましい第9実施の形態の平面図であるが、エンジン上側ピストン対の中心線に沿って水平に切断した断面を示す。
【図19A】図19Aは、図16Bに類似する、好ましい第9実施の形態の側面図であるが、ピストン対の中心線に沿って垂直に切断した断面を示す。
【図19B】図19Bは、図17Bに類似する、好ましい第9実施の形態の右端面図であるが、クランクケースカバーが取り外してある。
【図20】図20は、本発明のエンジンの好ましい第10実施の形態の平面図であるが、図16乃至19に示したターボ過給器の代わりにスーパーチャージャーを備え、このスーパーチャージャーに関連してインタークーラが使用されている。
【図21A】図21Aは、図20に示した好ましい第10実施の形態の左端面図である。
【図21B】図21Bは、図20に示した好ましい第10実施の形態の側面図である。
【図22】図22は、図20に示した好ましい第10実施の形態の概略的な複合サイクルバージョンであり、エンジン冷却ジャケットと排気からエネルギーを回収するために有機的なランキンサイクルが使用される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
既存のPCCI/HCCI設計の複雑さ、敏感度および費用加算を避けつつ、エンジン効率を改善しかつエミッションを低減するために、内燃往復ピストンエンジンにおいて予混合気圧縮点火を容易にすることは、本発明のために4サイクル、4シリンダ、フリーピストンエンジン構造を使用する判断基準である。PCCI/HCCIを4サイクル、4シリンダ、フリーピストンエンジンに適用することは大変珍しいことである。ここに開示するように、本発明の前述の目的を達成し、本発明の種々の実施の形態を提供する多様なエンジン幾何学的形状が存在する。従って、図1乃至10及び図16乃至20は、種々のピストン構造および動力取り出し法を有する本発明の多数の好ましい実施の形態を示している。図1乃至7は種々の連接棒25を介して枢着軸1に連結されたピストン23を有する「平型」4シリンダブロック2を示している。この枢着軸は直接的な動力取り出しを提供する。図16乃至19は4シリンダ「クワッド」ブロック1601を示している。そのピストン23は連接棒25を介して連結されているが、動力取り出しは間接的に行われる。図8は、連結リンク81との連結部であるピストン23型の「スコッチヨーク」82,83と揺れ腕84とを使用する(図1において番号2で示す)平型ブロックの幾何学的形状を描写している。図9はピストン23を連結して一対にするラック92と、ピストン対を相互連結するピニオン91を示している。図10Aはピストン対を形成するためにタイロッド1001によってピストン23に相互連結された液圧ピストン1003を示している。図10B及び10Cでは、ピストン23がロッド1010によって連結されて対をなしている。そして、ピストン対は中実のタイバー1011によって相互連結されている。ここに図示したこれらの方策が、並行往復運動または対向往復運動を提供するためにピストン23とピストン対を連結および相互連結する手段を網羅するものではなく、浮動の「ストローク」の提供要求を満たすメカニズムの種々の例を示すのに役立つにすぎないことに留意することが重要である。
【0022】
直接的な動力取り出しは、(被駆動出力装置にとって可変ストローク長さが容認されれば)図10に示すような1011の線形振動から、あるいは図1乃至9に示すような枢着軸1から行うことが可能である。図14及び15はそれぞれ、可変ストロークピストン型のコンプレッサと、可変ストローク線形オルタネータを示している。線形液圧ポンプと線形オルタネータは、線形フリーピストンエンジンから動力を取り出すためのよく知られた手段である。一方向またはオーバーランニングクラッチまたは伝動装置のような種々の機械的な直接動力取り出し手段が考えられる。
【0023】
間接的な動力取り出しは、図16乃至22に示すように、エンジン排気部において出力タービンを使用することによって最適に達成される。この間接的な動力取り出し方法は、より高いエンジン圧力が発生するときには、直接的な動力取り出しと比べてかなり有利である。クランクシャフトによって課せられる制約条件を除去し、従来のエンジンのロッドを連結することにより、一層高いピーク圧力に耐えることができる。更に、出力タービンの効率は圧力の上昇と共に高まる。加えて、出力タービンはピストン単独の場合よりも高い割合のエネルギーを回収する(従って、ターボ過給および最近は複合ターボ過給が一緒に使用される)。図11は各シリンダのためにステッピングモータまたはトルクモータで駆動されるクランクシャフトを用いた可変弁作動機構を開示している。図12及び13は弁開閉時期を最適化するために適応エンジン制御を示している。
【0024】
正面図の図1A、平面図の図1Bおよび右側面図の図1Cに示すように、エンジン動力出力は、枢着軸1から取り出される。この枢着軸は、従来の往復ピストンエンジンの回転運動とは異なり、振動運動を生じる。エンジンは、左側のシリンダブロック2Aと、右側のシリンダブロック2Bと、左側のシリンダヘッド3Aと、右側のシリンダヘッド3Bと、左側の弁カバー4Aと、右側の弁カバー4Bを備えている。4シリンダの各々は空気/燃料混合気の吸気ポートと排気ポートを備えている。シリンダ1の吸気ポートは5Aで、シリンダ2の吸気ポートは5Bで、シリンダ3の吸気ポートは5Cでそしてシリンダ4の吸気ポートは5Dで示してある。シリンダ1の排気ポートは6Aで、シリンダ2の排気ポートは6Bで、シリンダ3の排気ポートは6Cでそしてシリンダ4の排気ポートは6Dで示してある。前側軸受と枢着軸シール7のためのハウジングはその中に配置された前軸シール止め12を備えている。エンジンオイルパン/オイルサンプ8は各シリンダブロック2A及び2Bの下側区間内に設けられている。オイルポンプ9はオイルパン/オイルサンプの外側に取付けられ、モータで駆動される。エンジンスタータモータ10はオルタネータとして機能することができる。枢着軸1の位置は角度センサ11によって測定される。エンジン冷却液はシリンダブロック2A及び2Bとシリンダヘッド3A及び3Bを通って循環し、そして入口/出口13を経て外部の熱交換器に達する。
【0025】
図2は図1Aに示すような正面図であり、断面A−Aを示している。これは、シリンダの垂直面を通りピストンの外周をまわるエンシンブロック中心線に沿って見た図である(図1Cに示した断面A−A参照)。注意:弁アクチュエータと点火センサを示すために、弁カバーを取り外してシリンダヘッドが示してあるが、断面図ではない。既存の4サイクルディーゼルエンジンで使用されるものに類似する従来型のピストンとシリンダが使用されている。シリンダ1,2,3及び4のためのピストンはそれぞれ、23A,23B,23C及び23Dによって示してある。連接棒25A及び25Bの反対側の端部に配置されたピストン23A及び23Bはピストン対であり、連接棒26A及び26Bの反対側の端部に配置されたピストン23C及び23Dは第2のピストン対である。シリンダ1,2のための前側と後側の揺れ腕26A及び26C(見えない)は、シリンダ3及び4のための前側と後側の揺れ腕26B及び26D(図2では見えない、図3参照)に直接向き合わせて、枢着軸1に取付けられている。連接棒25A,25B,25C及び25Dはピン27A及び27Bによって各揺れ腕に取付けられ、そしてピン24A,24B,24C及び24Dによって各ピストンに取付けられている。この連結方法により、一方のピストン対の運動が他方のピストン対の運動に対して反対向きになるように、2つのピストン対が連結される。枢着軸からの揺れ腕の長さは、ピストンのストロークが揺れ腕の動きによって制限されないように十分な長さである。注意:4サイクル、4シリンダエンジンでは、圧縮、膨張、排気および吸気の各サイクルが一方のシリンダまたは他方のシリンダにおいて常に存在する。一方のシリンダの膨張サイクルは圧縮サイクルの他方のシリンダを駆動する。従って、FPFSエンジンでは、ピストン移動距離は常に圧縮サイクルの対向圧力によって制限される。排気サイクルにおけるピストンのストロークの長さはシリンダ内、ひいては圧縮ストローク内の点火によって決定される。圧縮点火は、サイクルからサイクルまである程度変化する一連の空気/燃料パラメータの関数である。所定のすべてのサイクルのストロークの長さは、給気の点火が行われるまでは不確定である。各ピストン圧縮ストローク長さは他のピストン圧縮ストローク長さとは無関係であり、ピストン運動は機械的ストローク長さを全く制限されない。このメカニズムは、各圧縮サイクルの給気を点火するために必要な圧縮比に従って、他のシリンダ圧縮ストロークとは完全に無関係に、ストローク長さを変更または「浮動」させることができる。ピストンは、圧縮サイクルの給気圧によって制限されなければ、最終的にはシリンダヘッドにあたって停止する。フリーピストン浮動ストロークによって非常に高い圧縮比(および自動点火温度)が得られる。それによって、エンジン効率が改善され、多くの異なる燃料の特性に適応する。しかしながら、フリーピストンPCCIまたはHCCIのより高い潜在的効率は、エンジン圧縮比自体の結果ではない。この種のエンジンの潜在的に大きな効率は、(他の種類の内燃往復ピストンエンジンによる可変容積燃焼とは対照的に)このエンジンで生じる定容積燃焼の結果として得られる膨張比に起因している。定容積燃焼は、圧縮点火デトネーションにかかる時間の間にピストンが動く(容積を増大する)時間がないほど、PCCI/HCCIエンジンで起こる圧縮点火デトネーションが速いという事実に起因して起こる。注意:PCCI/HCCIエンジンは、火花点火時期または燃料噴射時期のような従来エンジンの問題点によって制限されないので、元々多種の燃料で作動可能である。
【0026】
線形ピストンエンジンによってあるいは高速圧縮膨張機械を用いた実験室試験で得られる圧縮点火に類似する、真の予混合気の圧縮点火は、FPFSエンジンで得られる。これはきわめて希薄な燃料混合物の使用を可能し、その結果エミッションが非常に少なく、高効率である。
【0027】
2サイクル線形フリーピストンエンジンは、速度範囲と出力低下が非常に制限されることが判った。他方では、4サイクルPCCI/HCCI回転軸エンジンは、一定のストロークを有するために、燃料特性および周囲状態変化に対してきわめて敏感である。これらのエンジンを機能させるには、入念な給気状態監視および制御を行わなければならない。ここで紹介されるFPFSエンジンは前記の制限や拘束に無関係であり、広い速度および出力範囲にわたって機能することができる。
【0028】
しかしながら、FPFSエンジンの可変ストローク特性は、可変弁構造の使用によって大きな利益を得る。更に、エンジンに課せられた負荷が、変化するストロークに適応しなければならないかまたはエンジンから間接的な方法で動力を取り出さなければならない。
【0029】
Sturman Inc.によって提供されるような電気油圧式可変弁構造体が図2に示してある。各弁は独立したアクチュエータを備えている。シリンダ1,2,3及び4の排気弁はそれぞれ21A,21B,21C及び21Dによって表されている。シリンダ1,2,3及び4の給気弁アクチュエータはそれぞれ20A,20B,20C及び20Dによって表されている(この図には示していない)。各シリンダは点火検出センサ、好ましくは圧電式圧力変換器またはUVセンサを備えている。シリンダ1,2,3及び4のための点火センサはそれぞれ22A,22B,22C及び22Dによって表されている。弁作動の重要な要素は、排気弁の適切な開放時期である。もし排気弁が一方のシリンダ内で膨張サイクルの前に充分に開放すべきであると、他のシリンダ内の圧縮サイクルを給気の点火時期まで進めること、ひいてはエンジンの連続的な作動は達成されないであろう。所望な弁開閉時期を達成するために、点火を行う時に点火センサは制御装置に信号を送る。この信号の時期は、従来のエンジンセンサからのデータと共に、シリンダ内の排気弁を開放するために制御装置で使用される。全部揃った制御機能については詳しく後述する。
【0030】
図3は図1AのB−B線に沿った断面図であり、揺れ腕26B及び26Dを示している。ピストンが図2に示したフルストローク位置から図3に示した中間ストローク位置まで移動するときの、ピストンと連接棒と揺れ腕と枢着軸の間の相対運動が示してある。ピストンに対する連接棒の横方向/側方運動は、回転クランク軸および連接棒を備えた従来の往復エンジンの運動よりもかなり小さいことに留意すべきである。小さくなったこの横方向/側方運動は、ピストンに対する側方スラストを低減し、かつピストンおよび揺れ腕と相対的な連接棒の動きを小さくする。それによって、これらの構成部品の摩耗が(従来エンジンと比べて)小さくなる。
【0031】
図4は上側シリンダの中心線を通る図1AのC−C切断面に沿った水平断面図である。図示のシリンダはフルストローク位置にある。連接棒25A及び25Bを揺れ腕26A,26B及びピン27Aにどのように取付けるかについて留意すべきである。25Aのこの端部は二叉に分かれ、25Bの対応する端部が25Aの2つの側の間に嵌め込まれる。これらの端部はそれぞれ軸受46A及び46Bによって保持されたピン27Aに支持されている。連接棒25A及び25Bの反対側の端部はそれぞれ軸受45A及び45Bによって保持されたピストンピン24A及び24Bに支持されている。この図において、前側の軸受兼シールハウジング7と後側の軸受兼シールハウジング41は後側軸受兼シールハウジング保持板42と共に見ることができる。扇形始動ギヤ43と扇形始動ギヤ保持板44も見える。この図には示されていないが、下側シリンダのための連接棒と揺れ腕とピストンも同じように、軸受45C,45D,46C及び46Dによって連結及び支持されている。
【0032】
図5はシリンダヘッド3Aとシリンダブロック2Aの接続部における、図1AのE−E線に沿った垂直断面図である。弁20A,20C,21A及び21C相互の位置および点火センサ22A,22Cに対する弁の相対位置が示してある。
【0033】
図6Aは、始動ギヤハウジングを通る図1AのF−F線に沿った垂直断面図である。扇形ギヤ43は枢着軸1の端部に取付けられ、スタータモータスプロケット68によって駆動される。角度センサ11は枢着軸角度を測定し、信号をエンジン制御装置に連続的に送る。扇形ギヤ43が移動距離の端部近くに達し、それに伴いピストンが最大ストローク位置に達すると、制御装置はスタータモータの方向を逆転する。ここに示されたスタータは、モータとスプロケットギヤの間に遊星歯車式減速装置を備えた高速の永久磁石または切換えリラクタンスモータである。エンジンが始動するとき、スプロケットは慣用の機構によってかみ合いを外される。
【0034】
図6Bはシリンダブロック2Aの左側の方を見た、シリンダ2A及び2Bの間の図1AのD−D線に沿った垂直断面図である。この図は前側と後側のシール保持板12及び42と共に、前側と後側の軸受兼シールハウジング7及び41内の前側と後側の軸シール62A及び62B、前側と後側の軸受63A及び63Bおよび前側と後側のスラスト座金64A及び64Bの配置を示している。更に、揺れ腕スペーサ65と揺れ腕位置決めピン66は、枢着軸1に対する揺れ腕の幾つかの取付け方法のうちの一つを示している。潤滑油はオイルポンプ9によってフィルタ61を通して取り出され、そして回転往復エンジンで使用される慣用の方法を用いて、枢着軸、揺れ腕、ピンおよび連接棒内の通路(図示していない)を通って分配される。枢着軸1上に扇形始動ギヤ43を保持するための締付け板44と保持ねじ67が明瞭に示してある。
【0035】
図7Aは、図2及び3に示した26A,26Cと26B,26Dに代わる、後側と前側の代替的な二重揺れ腕構造71A,71B(上側)と71C,71D(下側)を示している。この構造では、各連接棒25A,25B,25C及び25Dはそれぞれ分離された連接ピン72A,72B,72C及び72Dを備えている。これにより、図4に示すように、連接棒を二叉に形成する必要がなくなる。
【0036】
図7Bは中間ストローク位置にあるピストンを示す、図3の断面B−Bに似ている。しかし、二重揺れ腕71B/Dが使用されている。
【0037】
図7Cは図7Bに似ているがしかし、(図2に示すように)フルストローク位置にあるピストンを示している。
【0038】
図8Aは、代替的な連接棒連結方法を示す、図3と同様な断面図である。この連接棒連結方法は連接棒と揺れ腕の間にスコッチヨーク型の機構を使用している。ピストンはフルストローク位置にある。ピストン23A/23B及び23C/23Dの間の連接リンク81A(シリンダ1と2)及び81B(シリンダ3と4)はそれぞれ、リンクに対して垂直に固定されたリンクピン82A(シリンダ1と2)及び82B(シリンダ3と4)を備えた剛性部材である。リンクピン82A及び82Bはそれぞれ、スライダ83A及び83Bに結合している。スライダ83A(シリンダ1と2)及び83B(シリンダ3と4)はそれぞれ、揺れ腕84B及び84D内に切り込まれた軌道内を移動する。これにより、特別な用途においてピストンに対する側方の力を更に減少させることが望ましいときに、揺れ腕と枢着軸機構がスコッチヨーク機構に容易に適合可能である。
【0039】
図8Bは図8Aに似ているが、ピストンは中間ストーク位置にある。図8Aと比べて、スライダ83A及び83Bが揺れ腕26B及び26Dに沿って内側に移動していることに留意すべきである。
【0040】
図9Aは図3と同様な断面図であるが、シリンダ対を連結する代替的な方法を示している。揺れ腕と枢着軸の代わりに、ラックアンドピニオン機構が使用される。この構造の場合、ピニオンギヤ91が枢着軸1に固定され、連結リンク92A及び92Bの2個のラック歯車にかみ合っている。連結リンク92A及び92Bはそれぞれ上側ピストン23A及び23Bを、そして下側ピストン23C及び23Dを連結している。上側ピストンセットによる運動は、ピニオンギヤ91の回転を生じる。この回転は更に、下側ピストンセットによる反対向きの直接比例する運動に変換される。この機構は、各圧縮サイクルで給気を点火するために要求される圧縮に従って、ストローク長さを変更または「浮動」させることができる。これは、揺れ腕および枢着軸機構と同じように、他のシリンダの圧縮ストロークとは完全に無関係に行われる。ピニオンギヤ91によってリンク92A及び92Bに付与されるスラスト荷重を支持するためのカム従動子型のころ軸受93A,93B,93C及び93Dが示してある。この構造は前に示した揺れ腕および枢着軸機構よりも一層コンパクトなユニットを生じる。しかし、ラックアンドピニオンのギヤ材料とギヤ寸法は、高いピーク力を支持するのに充分であるように注意深く選定すべきである。
【0041】
図9Bはリンク94A及び94Bがピストンに固定連結されている点を除いて図9Aと同じである。これはピストンピン24A,24B,24C及び24Dを不要にする。ピストン対の固定連結はピストン側部の遊びとそれに関連する摩耗を低減する。しかしながら、ピストンとシリンダの許容誤差が厳しくなり、この構造の場合、前述のものと比べて、部品の製作に一層コストがかかるであろう。
【0042】
図10Aは図3と同じような断面図であるが、シリンダ対を連結するために代替的な方法が用いられている。ピストンは中間ストローク位置にある。分割式ハウジング1004A及び1004Bは2個の液圧シリンダを有する。液圧ピストン1003Aはピストンタイロッド1001A及び1001Bによって各々の上側ピストン24A及び24Bに連結されている。更に、液圧ピストン1003Bはピストンタイロッド1001C及び1001Dによって各々の下側ピストン24C及び24Dに連結されている。液圧シリンダ横孔1005A及び1005Bは各シリンダの端部で液圧シリンダを相互接続し、ピストン対を相互接続するために使用される。エンジン始動中にシリンダ間の流体流れを閉止するために、弁1002A及び1002Bの対の回転閉止体が横孔内に配置されている。弁1002A及び1002Bは外部から操作される。更に、外部の対の方向制御弁に接続された通路1006A,1006B,1006C及び1006Dが横孔1005A及び1005B内に配置されている。この方向制御弁は各液圧シリンダにつき1個設けられている。始動中、方向制御弁は各液圧シリンダを反対方向に駆動するために周期的に操作される。一旦、エンジンが始動すると、方向制御弁は、外部のすべての圧液流れを閉鎖する中立位置にセットされる。内部の横孔弁1002A及び1002Bは完全開放され、燃焼膨張サイクルはピストン対のピストンを反対方向に駆動する。この機構はストローク長さを変更または「浮動」させることができる。これは、各圧縮サイクルにおける給気の点火のために要求される圧縮比に従って、他のすべてのシリンダ圧縮ストロークとは全く無関係に、揺れ腕枢着軸構造およびラックアンドピニオン構想と同じように行われる。シール1007A,1007B,1007C及び1007Dはエンジンクランクケースに対してタイロッドをシールする。シール1008A,1008B,1008C及び1008Dは液圧シリンダ内で液圧ピストンをシールする。
【0043】
図10Bは図10Aと同じような断面図であるが、ピストン23Aと23B,23Cと23Dを中実のタイロッド1010A及び1010Bによって連結することによってピストン対が形成されている。タイロッドとピストンは種々の慣用手段によって連結された別個の部品であってもよいし、図示のように一体に形成してもよい。2つのピストン対は心合わせピン1013A,1013B,1013C及び1013Dを有するタイバー1011A(上側)及び1011B(下側)によって、締結具1012A及び1012B(この事例ではナットとボルトであるが他の種類でもかまわない)を用いて連結されている。この構造により、2つのピストン対の剛性組み立て体が形成される。これはその結果として、同じ方向に一緒に移動する。図10Cはピストン対のこの剛性組み立て体を示している。図示したクランクケース構造例の場合、この剛性組み立て体は予め、シリンダ内に配置する前に組み立てられる。注意:組み立てられたピストン対と均等物である一体部材は、別々に組み立てられる複数の部材よりも製作が困難でコストが高くつくにもかかわらず製作可能である。代替的な一体クランクケース構造は、最初に個々のピストン対を設置し、そしてクランクケースを経てアクセスし、ピストン対を連結することにより、別個のピストン対の方式によって提供可能である。このようにして連結された(上記の両方式の)ピストン対は、線形往復運動で作動し、この運動から、前に開示した手段によって動力が直接的に取り出し可能である。この手段は例えば、よく知られた種々の手段でタイバーに連結可能な線形液圧ポンプおよび圧縮機または線形オルタネータである。更に、動力は、例えば排ガスによって駆動されるタービンによって間接的に取り出し可能である。エンジンの始動は線形往復運動を生じる種々の始動機構をタイバー、例えば液圧ピストンに連結することによって達成可能である。この液圧ピストンは液圧ポンプによって駆動され、かつ制御弁によって周期的に動かされる。図10Dは図10CのA−A線に沿った断面図であり、タイバー1011A及び1011Bのための便利な取付け手段を提供するような、タイロッド1010A及び1010Bを形成する1つの方法を示している。タイロッドのウェブの断面形状に留意すべきである。或る用途については、(一般に、大型エンジンのクロスヘッド機構によって行われるような)ピストン対の側方荷重の低減のために、図10Bに示したガイド1009を使用することが望ましい。
【0044】
図11は、各シリンダのために別個のカム軸を用い、可変弁操作を行うシリンダヘッドの4つの図を含んでいる。各カム軸は専用割り出し装置またはステッピングモータによって操作される。動弁装置の他の構成要素および機構は従来の頭上弁設計方法に基づいている。この設計方法は、吸気弁(I)および排気弁(E)1107AE,1107CIと、弁ばね1105AI,1105AE,1105CI,1105CEと、弁カイド兼シール1106CI,1106CEと、カム軸軸受1104CI,1104CEと、軸受ハウジング1103AI,1103AE,1103CI,1103CEを含んでいる。
【0045】
図11Aはシリンダ3のカム軸1101Cの中心線を通る図11BのA−A線に沿った断面図である。カム軸1101Cはシリンダ3内の弁を操作する。カム軸はシリンダヘッド3Aに取付けられている。カム1102CE及び1102CIはそれぞれシリンダ3の排気弁と吸気弁を操作する。図11Bはシリンダヘッドとカム軸の平面図である。図11C及び11Dはそれぞれ図11Bの左側面図と右側面図である。図11Bにおいて、これらのカムはカム軸上での向きが180°ずらして示してある。カム軸1101Cは吸気弁と排気弁の両方が閉じるような位置が示してある。カム軸1101Aは、排気弁1107AEが完全に開放し、吸気弁1107AIが完全に閉じるような位置が示してある。図11Bから判るように、カム軸1101A及び1101Cは互いに90°ずらして配向されている。それによって、カム軸を90°間隔で回転することにより、両弁は一緒に閉鎖可能であるかあるいは吸気弁または排気弁が相互排他的に開放位置または閉鎖位置に達することができる。すなわち、吸気弁と排気弁の両方が一緒に開放することはできない。注意:吸気弁と排気弁のオーバーラップが可能であるように、カム形状を変更することができる。ステッピングモータ1108A及び1108Cはそれぞれ、カム軸1101A及び1108Cを回転させる。回転は所望な弁開放量に依存して、90°間隔またはそれ以下の間隔で行われる。弁の開放時期と閉鎖時期は共に、個別的に制御可能である。従って、この構造は完全可変の弁操作および制御を提供する。ステッピングモータ1108A及び1108Cはそれぞれ、独立した入力をエンジン制御装置から受け取る。従って、各シリンダ弁操作は互いに完全に独立している。
【0046】
図12は適応電子制御装置と可変弁開閉時期装置を使用する、エンジンの制御要素を概略的に示す。電子制御装置1201は給気状態とエンジンパラメータのデータをリアルタイムで収集するために使用される一連のセンサ入力部を備えている。図示したセンサは軸角度センサ11と、点火センサ22A,22B,22C及び22Dと、エンジン温度センサ1202と、燃料流れセンサ1203と、空気温度センサ1207と、空気圧力センサ1208と、空気流れセンサ1209と、排ガスセンサ1210と、(エンジンの)負荷センサ1213である。センサは多くても少なくてもよいし、変化するタイプでもよい。例えば、3個の空気センサを1個の流入空気量センサによって置き換え可能である。
【0047】
制御装置内で、センサからのデータが分析され、メモリに記憶されたエンジンおよび給気パラメータに関する情報を使用して計算が行われる。これらの計算はどの程度かを決定し、もしあれば、セットされたエンジン操作状態を維持するためあるいはセットされた状態を変更するために、エンジン制御装置が調節される。
【0048】
図12に示すように、制御装置1201は電気回路を用いてエンジン制御装置に出力する。しかしながら、空気圧回路および/または液圧回路を単独であるいは電気回路と組み合わせて用いることができる。図示した制御装置構成要素は、吸気弁アクチュエータ20A,20B,20C及び20Dと、排気弁アクチュエータ21A,21B,21C及び21Dと、スロットル位置アクチュエータ1204と、燃料噴射装置1206に接続された燃料調節弁1205と、排ガス循環弁1211と、負荷制御装置1212である。排ガス循環は、慣用のオットーサイクルエンジン、特に自動車エンジンにおいてエミッションを低減するために使用される一般的な技術である。HCCIエンジンは元々、オットーサイクルエンジンよりもエミッションが少ないがしかし、或る負荷状態ではそれでもなおEGRの恩恵を受ける。多かれ少なかれ異なるタイプの制御装置を設けてもよい。例えばスロットル位置アクチュエータはターボ過給機付きエンジンまたはスーパーチャージャー付きエンジンでは除去され、エンジンスロットリングの制御はターボ過給器またはスーパーチャージャーの圧縮機出力の制御によって行われる(図16および図20参照)。点火センサ22と弁アクチュエータ20及び21を除く他の構成要素、すなわち図示したセンサやアクチュエータは、既存の大量生産エンジンで使用される共通品である。点火センサ22は既存の工業センサ、すなわち圧力センサ、温度センサまたは紫外線(UV)火炎検出センサに由来するものである。弁アクチュエータ20及び21は市販品目であるが、限定された規模である。この制御装置は主として既存の自動車エンジンに設けられているマイクロプロセッサを使用する。しかしながら、パーソナルコンピュータまたは工業制御マイクロプロセッサを使用することもできる。
【0049】
図13はFPFSエンジンで使用するための適応エンジン制御装置の機能ブロック図である。マクロプロセッサとそれに関連する記憶装置は、適応制御モジュール1301に含まれている。センサ信号はこの区間の入力に送信される。この区間からの出力は種々のモジュールに達する。このモジュールはエンジン制御アクチュエータ装置に接続された適切な調整および駆動回路を提供する。図示した制御モジュールは弁アクチュエータ制御モジュール1302と、燃料制御モジュール1303と、空気制御モジュール1304と、排ガス循環制御モジュール1305と、インタークーラファン制御モジュール1306と、負荷制御モジュール1307である。1301内で、エンジン給気流量および空気/燃料比が決定される。これらから、空気制御1304と、EGR弁制御1305と、インタークーラファン制御1306のための目標デマンドを提供することができる。更に、空気特性データと燃料特性データがこの区間の第2部分に提供される。このデータはこの区間内のメモリに記憶された空気と燃料の特性と、現在の空気と燃料のパラメータのセンサ測定とから計算して求められる。1301の第2区間では、空気と燃料の特性データが予想されるエンジン性能に基づくアルゴリズムを通過する。このエンジン性能は圧縮サイクル中に点火するために必要な圧縮圧力とストローク(および軸角度またはピストン位置)を含んでいる。点火センサと軸角度センサ(またはピストン位置センサ)から、現在の点火圧力が測定される。現在の点火圧力は計算された点火圧力と比較され、弁開閉時期の計算が行われる。これらの計算は弁開閉命令に変換され、弁アクチュエータモジュール1302に送られる。従って、制御は、メモリに記憶された性能測定のみに依存する代わりに、現在のエンジン動作特性に適合する。
【0050】
ここで説明した制御は、他の適応制御手段と実質的に異なっている。この制御は、給気点火がいつ行われたかを決定するためおよび可変弁動作(特にシリンダ内、それ故膨張サイクル部分内での排気弁開放時期)を制御するために点火センサデータを使用することによってユニークである。注意:この排気弁がシリンダよりも前に、それ故圧縮サイクル内で充分開放すると、給気を点火するための充分な圧力を得ること、すなわち継続するエンジン動作がたぶん失敗するであろう。
【0051】
エンジン始動サイクル順序は制御機能である。枢着軸角度(またはピストン位置)がセンサ11によって監視され、エンジンのフルストローク位置近くで、スタータ動作を逆転する。この動作は、エンジンが始動したことを点火センサ22が信号で知らせるまで繰り返される。エンジンが始動すると、始動サイクルが終了する。
【0052】
負荷センサ1213からのデータを使用する負荷制御は、負荷制御モジュール1307によって提供される。この負荷制御は別個の制御機能である。負荷制御からの出力は、一次制御へのエンジン設定値要求である。この種の負荷制御は、負荷がエンジン軸に直接結合されるときに有益である。
【0053】
図14A及び14Bは線形ピストン往復圧縮機の中心線に沿った断面図である。この圧縮機は、図1乃至8の揺れ腕と枢着軸機構または図9のラックアンドピニオン機構の往復運動と図16の揺れ腕と枢着軸機構の振動運動を直接的に利用することができる。図14Aの圧縮機は枢着軸1401と連接棒1403A及び1403Bからなり、この連接棒はピストン1404A及び1404Bと揺れ腕1402を連結する。リード型弁1405A及び1405Bはそれぞれ、ピストン1404A及び1404Bの吸入作用を制御する。リード型弁1406A及び1406Bはそれぞれ、ピストン1404A及び1404Bの排気作用を制御すする。図14Aはフルストローク位置にあるピストン1404Aと、最小スローク位置にあるピストン1404Bを示している。図14Bは反対位置を示している。エンジンストロークと枢着軸角度が変化すると、圧縮機角度、ひいては変位がエンジン変形に従って変化する。圧縮機リード型弁は、ストローク長さに関係なく、ピストン加圧および吸入サイクルに受動的に追従する。このような圧縮機は空気または冷媒のようなあらゆるガスのために使用可能である。上記と類似の構造を液体ポンプで使用可能である。この液体ポンプはリード弁の代わりに逆止弁を備えている。従って、このエンジン構造の多くの種類の潜在的用途のために、エンジン軸の振動運動を回転運動に変更する必要はない。更に、この構造の圧縮機またはポンプはエンジン枢着軸に直接連結することができる。更に、この構造の圧縮機またはポンプは単シリンダでもよいし、あらゆる数の多シリンダでもよい。
【0054】
図15Aは揺れ腕と枢着軸によって駆動される2個の線形オルタネータの断面図である。オルタネータ電機子は図示ではフルスローク位置にあり、揺れ腕は最大回転角度位置にある。図15Bでは、オルタネータ電機子は最小ストローク位置にあり、揺れ腕は中間回転角度位置にある。枢着軸がフル回転角度位置まで時計回りに動くと、オルタネータ電機子は再びフルストローク位置まで移動する。従って、揺れ腕の1サイクル当たり、オルタネータ電機子は2つのサイクルを行う。枢着軸1501は互いに180°ずらして取付けられた揺れ腕1502の2つのセットを有する。各揺れ腕は端部に固定された軸受1503を備えている。この軸受1503は駆動ヘッド1510を動かし、それによって戻しばね1509が圧縮され、磁石リング1504が内側積層体1507と外側積層体1505の間で往復運動させられる。外側積層体1505はジェネレータ固定子磁極を形成する巻線1506を含んでいる。このジェネレータ固定子磁極は、磁石リング1504が通過するときに、変化する磁界によって励磁され、巻線内に交流電圧を生じる。電機子ガイド1508は固定子磁極に対して同心位置に電機子を保持する。図示したオルタネータ形状は、一般的に線形フリーピストンスターリングエンジンに適用される市販の線形オルタネータに類似するタイプのものである。揺れ腕と枢着軸構造と共に使用可能な幾つかの他の線形オルタネータが市販されている。しかしながら、ここで提案した揺れ腕と枢着軸構造の周波数倍増はユニークである。原動機の周波数の2倍の周波数で作動することにより、オルタネータは巻線と積層を少なく設計することができる。それによって、ユニットの比出力(kW/lb)が改善され、ユニットのコストが低下する。線形オルタネータは一般的に、類似の回転オルタネータよりも効率が低く、比出力が小さく、そしてコストが高い。これは特に、市販のマイクロタービンに基づく現在の高速オルタネータの場合に当てはまる。これらの高速オルタネータは通常、線形オルタネータに類似する永久磁石ロータを使用するがしかし、同じ電力出力のために永久磁石材料量がきわめて少なくて済む。高周波数の動作は更に、小さな巻線と積層をもたらす。これらの特徴は線形オルタネータ(または慣用の回転オルタネータ)と比べて、小型でコストパフォーマンスの高い製造設計を可能にする。従って、FPFSエンジンを備えた高速ジェネレータを使用すると有利である。
【0055】
図16乃至19は、4サイクル、4シリンダ、予混合気圧縮点火、フリーピストン、浮動ストローク型の内燃機関の概要図である。この内燃機関は図1に示した内燃機関に似ているがしかし、1)クワッドエンジンブロック内のシリンダセット、2)ターボ過給器の追加、そして3)高速オルタネータを駆動する出力タービンの追加が異なっている。この構造の場合、フリーピストンエンジンはタービンのためのガス発生器またはエンジン「コア」1601として機能する。エンジン出力は出力タービンから取り出される。フリーピストンエンジン枢着軸は出力取り出しのために使用されない。フリーピストンエンジン枢着軸の主たる機能は、揺れ腕を支持および連結することであり、第二の機能はエンジンの始動を容易にすることである。2:1から5:1までの範囲の給気圧比を生じるターボ過給器によって、比出力が空気質量流量に比例して大きくなる。このエンジン構造は、効率が高く、エミッションが少なく、比出力が高く、そしてターンダウン範囲が広い(これはブースト圧と空気/燃料比の両方を変更することによって得られる)という特徴を有する。ターボ過給のコストは、同じ定格出力を達成するために、フリーピストンエンジンの排気量を増やすコストよりも少なくて済む。しかしながら、出力タービンコストは枢着軸からの動力取り出しよりも高い。ターボ過給または機械駆動式過給の特徴と出力タービンの特徴を組み合わせると、コスト対効果が大きく性能が優れているエンジンが提供される。
【0056】
図16Aはエンジンの平面図である。フリーピストンエンジンコア160内には、吸気が空気取入口1605から燃料入口160と空気流センサ1608とターボ過給器圧縮機1602Aを経て吸気マニホルド1609に達する。排気はエンジンコア1601からマニホルド1610とタービン1602Bと出力タービン1603を経て外側排気管1606に達する。出力タービンは高速ジェネレータ1604を直接駆動する。注意:出力タービンの出力は、直接的にまたはガスタービンでは一般的であるような変速機を介して、機械的に負荷と結合可能である。エンジン始動は、液圧ピストン1613への流れと液圧を生じる液圧ピストンポンプ1612および電気駆動モータ1611からなる液圧駆動装置によって行われる。
【0057】
図16Bはエンジンの正面図である。液圧ピストンポンプ1612に連結された液圧ピストン1613はエンジン始動中、枢着軸を駆動する。電気駆動のオイルポンプ1615はオイルパン/オイルサンプ1614からオイルを吸い込んで、軸受、弁およびピストンを潤滑するためにエンジン内のオイル流路に吐出する。エンジン冷却液はポート1616A及び1616Bから流入および流出する。エンジンは単シリンダヘッド1617と弁カバー1618を備えている。ジェネレータ1604は、現在マイクロタービンにおいてエンジンの大きさに依存して使用されている種類のものであり、25,000乃至150,000回転/分の速度範囲で回転する(一層小型のエンジンは一層高い速度で作動する)。高速ジェネレータは、減速機によってタービンに連結された従来のジェネレータに対して、次の利点を有する。1)比出力(kW/lb)がかなり高い、2)交流の周波数が高い、これは小さな(変圧器のような)電気回路要素の使用を可能にする、3)エンジン動作のフレキシビリティが一層高い。多くの場合、この種のジェネレータからの電気的な出力は、電気負荷に対する整合を改善するために、固体電力変換器に送られる。電力変換器のコストおよび複雑さは前述の最初の2つの利点をかなり相殺するがしかし、かなりの程度の電力フレキシビリティを付加する。永久磁石ロータを備えた高速ジェネレータは市販されている。永久磁石構造よりもコストが安い(しかし、効率が幾分低い)切換磁気抵抗ジェネレータは市販されつつある。更に、高速誘導ジェネレータも使用可能である。
【0058】
図17A及び17Bはそれぞれ、図16のエンジンの左側面図と右側面図である。
【0059】
図18Aは弁カバー1618を外した、図16Aのエンジンの左端面図である。吸気弁アクチュエータ20A,20B,20C及び20Dと排気弁アクチュエータ21A,21B,21C及び21Dと点火センサ22A,22B,22C及び22Dの配置は、4シリンダの「クワッド」構造を示している。
【0060】
図18Bは、フリーピストンエンジンコア1601の上側シリンダ対、すなわちシリンダ1及びシリンダ2の中心線を通る図18Aの切断面A−Aに沿った断面図である。クワッド構造では、シリンダ1及びシリンダ2は(図1のエンジンの「縦一列配置」と異なり)互いに隣接している。シリンダ3及びシリンダ4は互いに隣接し、それぞれシリンダ2,1のすぐ下にあり、シリンダ2,1と直列に配置されている。図1の要素の番号と名称は図18A及び18Bにおいて使用されているが、要素の形状が幾分異なっている。26A,26B,26C及び26Dで示した4本の揺れ腕が設けられている。揺れ腕26A及び26Bは1つのセットを形成し、揺れ腕26C及び26Dは第2のセットを形成している。連接棒25A,25B,25C及び25Dは1本ずつ揺れ腕セットの各端部に連結されている。ピストンを備えた一対の連接棒は、揺れ腕セットの両端に互いに連結されている。図示のピストンはフルストローク位置にある。
【0061】
図19Aはシリンダ2及びシリンダ3の中心線を通る、図19Bの切断面B−Bに沿った断面図である。ピストン23C及び23Dは連接棒25C及び25Dによって揺れ腕26C及び26Dに取付けられている。連接棒はピストン端部のピン24C及び24Dと、揺れ腕端部のピンピン27C及び27Dに取付けられている。
【0062】
図19Bはクランクケースカバーを取り外したエンジンの右端面図である。枢着軸1に固定され、ピン27A,27B,27C及び27Dを備えた連接棒25A,25B,25C及び25Dを保持する、26A,26B,26C及び26Dからなる揺れ腕対の2つのセットが示してある。揺れ腕対の2つのセットは、従来のエンジン設計では一般的であるように、割り軸受押えを組み込んだ連接棒構造を使用する手段を容易に提供することができる。図1のエンジンの場合のように、揺れ腕は、一方のピストン対の運動が他方のピストン対の運動と反対向きになるように、2つのピストン対を互いに連結している。枢着軸からの揺れ腕の長さは、ピストンのストロークが揺れ腕形状によって制限されないような充分な長さを有している。図1のエンジンと同じように、4サイクル、4シリンダエンジンのこの構造では、各圧縮サイクル、膨張サイクル、排気サイクルおよび吸気サイクルが一方のシリンダまたは他方のシリンダ内に常に存在している。一方のシリンダの膨張サイクルは他方のシリンダの圧縮サイクルを促進する。従って、ピストンストローク長さは常に、圧縮サイクルの圧力によって制限される。排気サイクルにおけるピストンのストローク長さは、シリンダ内の点火ひいては圧縮ストローク内の点火によって決定される。圧縮点火はサイクル毎にある程度変化する、一連の空気/燃料パラメータの関数である。所定のすべてのサイクルのストローク長さは、給気が点火されるまで不確定である。各ピストン圧縮ストロークは他の圧縮ストロークと無関係であり、ピストン運動は機械的なストローク長さ制限を全く受けない。図1に示すエンジンの場合のようなこの機構は、他のすべてのシリンダの圧縮ストロークに全く関係なく、各圧縮サイクルで給気を点火するために必要な圧縮比に従って、ストローク長さを変更または「浮動」させることができる。枢着軸1を用いてエンジンからエネルギーを取り出す図1のエンジン構造とは異なり、このエンジンは出力タービンを用いて動力を取り出す。従って、エンジン排気口1601からの排ガスは、図1のエンジンよりも、圧力と温度とエネルギーレベルが高い。その結果、弁冷却およびシールが一層厳しいが、既存の市販構造体によって達成可能である。排気マニホルド1610は高温および高圧である。この高温および高圧は、容易に入手可能な厚壁タービンおよび高温定格合金を使用することによって適応可能である。この構造の単一エンジンブロック、シリンダヘッドおよび弁カバーはエンジンの剛性を高める。更に、特に割り軸受押え構造体が使用される場合には、一体ブロックおよび一体シリンダヘッドの組み立ておよびシールが容易であることにより、エンジンの製造可能性が高められる。
【0063】
図20及び21は図16に似ているがしかし、ターボ過給器の代わりにスーパーチャージャーを備え、インタークーラを追加したエンジンを示す図である。更に、エンジン冷却ループが示してある。
【0064】
図20は機械式過給エンジンの平面図である。エンジンへの空気の吸入は空気取入口1605を経て行われる。空気流はセンサ1608によって測定される。モータ2002によって駆動される圧縮機1602は、空気を圧縮し、インタークーラ2003の内部通路にこの空気を排出する。圧縮機モータ2002は図12及び13の適応エンジン制御装置の変形の制御下にある。この制御装置の変形では、図12及び13に示したすべての要素に加えて、駆動モータ2002の速度を変更することにより、圧縮機の空気流が変化する。それによって、エンジン給気の所望の質量流量、ひいてはエンジン出力を定めることができる。インタークーラは圧縮された空気温度を低下させて空気密度(更に空気/燃料給気の密度)を増大させる熱交換器である。モータ駆動ファン2004によって外面を経て空気を強制案内する空冷式インタークーラ2003が示してあるが、他のタイプの熱交換器(水冷式等)を使用することができる。圧縮および冷却された空気がインタークーラ2003からフリーピストンエンジン2001のエンジン吸気マニホルド内に排出される。このフリーピストンエンジンはタービン用ガスジェネレータとして機能する。吸気マニホルドは温度センサ2005と燃料ノズル1206を備えている。図12及び13の適応エンジン制御装置はインタークーラファンモータ2004の速度を変更することによって圧縮空気温度を制御するために、温度センサ2005入力を使用する。図12及び13の適応エンジン制御装置は、所望の空気/燃料比を得るために、圧縮空気に噴射される適切な燃料量を決定する。フリーピストンエンジンガスジェネレータ2001の排気口から、加圧された高温ガスが排気マニホルド1610内に、そして出力タービン1603内に流れる。出力タービン1603は高速ジェネレータ1604を直接駆動する。この場合、高速ジェネレータはスーパーチャージャー駆動モータ2002に動力を供給するためおよびエンジン出力を生じるために充分である。ガスは出力タービンから排気管2009に排出される。排気管内の排ガスは排気センサ1210のそばを通って流れる。
【0065】
フリーピストンエンジン2001と、熱交換器(ラジエータ)2006、ラジエータファン2008、冷却液ポンプおよびモータ2007からなる冷却液ループが示してあるが、多くの変更が可能である(例えば冷却液の水冷式熱交換器)。図20の機械式過給エンジンはエンジン出力とエミッションレベルの改良された制御手段を提供する一方、図16に示したターボ過給エンジンよりも一層速いレスポンスを提供する。しかしながら、機械式過給エンジンの改善された特性は、更にコストのかかる要素(高速電気駆動モータと電気駆動対ターボ過給器のガスタービンと高容量出力タービンと高速ジェネレータと電気出力調節モジュール)の使用によって得られる。機械式過給エンジン対ターボ過給エンジンの優れた性能と高いコストの間のトレードオフは、種々の潜在的用途の要求に対して特別な2つの機能設定から選択する。
【0066】
図21Aは図20の機械式過給エンジンの左端面図である。
【0067】
図21Bは図20の機械式過給エンジンの側面図である。
【0068】
図22は、複合サイクルシステムと共に機能する熱回収システムとランキンサイクルタービンを付加した、図20及び21の機械式過給エンジンを示す。図20の冷却液ラジエータ2006は熱交換器2201によって置き換えられている。この熱交換器はエンジン冷却液から熱を回収し、この熱を、蒸発器段としてのランキンサイクル流体に伝達する。ランキンサイクル流体は冷却液熱交換器2201から、過熱器として機能する排気熱交換器2202に移動する。高温のランキン流体蒸気は、膨張装置2203に流れ、こん膨張装置はランキンサイクル蒸気内のエネルギーを機械エネルギーに変換する。図示した構造の場合、膨張器2203は高速電気ジェネレータ2204に直接連結されている。膨張器2203から、低圧低温のランキン流体が熱交換器2205に流れる。この熱交換器はランキンサイクル凝縮器として機能する。ファン2206は熱交換器2205を横切って周囲空気を循環させる。供給ポンプ2207は凝縮熱交換器2205からランキンサイクル圧力を上昇させ、ランキン流体を冷却液熱交換器2201の入口に圧送し、それによってランキンサイクル回路を終える。エンジン冷却液とエンジン排ガスの作動温度を考慮すると、有機ランキンサイクルは最大のエネルギー回収効率を提供することが予想される。エンジン冷却液温度と排気温度について良好な特性を示す有機流体の1つのファミリーは、単一流体または二液組み合わせとして使用可能なシロキサン流体のファミリーである。
【0069】
蒸気の複合サイクル構造に加えて、複合出力および熱回収システムのようなエネルギー回収システムの他の変形が、ここで説明したFPFSフリーピストン浮動ストロークエンジンのファミリーと共に使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明はエンジン、特に上昇した効率、少ないエミッションおよび多燃料作動を可能にする可変ピストンストローク式の、4サイクル、4シリンダ、フリーピストン、予混合気圧縮点火、内燃往復ピストンエンジンに関する。用途は無制限であるが、自動車、エンジン駆動ポンプ、エンジン駆動圧縮機、小型航空機、船舶および動力工具と一緒の使用を含む。固定ストローク4サイクルPCCIエンジンと線形フリーピストンPCCIエンジンの両方の有利な特性が、個々に開示したFPFSエンジンで組み合わせられる。これらの特性は、
・高い作動効率
・少ないエミッション
・元々多燃料で作動可能
・高い出力密度
・広範囲のエンジン大きさ
・良好なスロットルターンダウン
・価格競争力
を含む。
【0071】
ここに開示したFPFSエンジンの変形を生ずる電力は特に、多数の新生技術および伝統的な用途に適している。例えば、歴史的に広く使用されていない分散発電が可能であると共に、FPFSエンジンの効率が改善される。自動車(ハイブリッドを含む)はその上本FPFSエンジンの恩恵を受ける。更に、エンジン駆動ポンプおよび圧縮機を含む多くの一般的用途は、燃料消費が少なく、エミッションが少なく、そして燃料フレキシビリティを有することによるFPFSエンジンの恩恵を受ける。
【0072】
小型航空機推進は、既存の火花点火往復エンジンで使用されるハイオクタン燃料を、エンジン用ディーゼル燃料またはジェット燃料に置き換える大きな努力が現在進行中であるので、FPFSエンジンの恩恵を受ける。FPFSエンジンの多燃料使用可能性と、その少ない燃料消費は、広範囲の航空推進用途を実行可能なライバルにする。小型ターボプロップまたは回転翼航空機のような既存の幾つかのガスタービン用途は、本FPFSエンジンによって設計されている場合には、作動が一層経済的になる。本FPFSエンジンの変形出力タービンは、航空機用途における本発明の最も好ましい実施の形態である。
【0073】
更に、多くの船舶用途が、本発明によって開示されたFPFSエンジンの特性の恩恵を受ける。FPFSエンジンの、船外エンジンと船尾推進機バージョンを想像することができる(本FPFSエンジンから、プロペラを駆動するアキシャルピストン液圧モータへの液圧出力)。
【0074】
チェーンソーや芝刈機のような小型エンジン動力工具は、本FPFSエンジンの実行可能な対象である。この用途の重要な要素は低コストの電子制御である。それにもかかわらず、このような大量生産エンジンのために、制御装置が経済的な1個のマイクロチップに減らされることが見込まれる。
【0075】
本FPFSエンジンのマイクロエンジンバージョンが想像可能である。本FPFSエンジンのフリーピストンおよび浮動ストロークの特徴は、マイクロエンジンを製造するために開発されるプロセスを容易に受け入れる。更に、本FPFSエンジンの動作特性は、マイクロエンジンの多くの提案用途に適している。
【0076】
かねてから従来のエンジンでそうであったように、FPFSエンジンからの廃熱は種々の方法で回収可能である。この回収されたエネルギーは、熱エネルギーの形態で直接使用されるかまたは二次プロセスによって他の形態に変換される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変ピストンストローク式の4サイクル、フリーピストン、予混合気圧縮点火型の内燃往復ピストンエンジンであって、
往復エンジンの典型的な態様で構成され、それぞれ2つの開放端部を有する4つのシリンダと、
前記シリンダに固定され、前記各シリンダの前記開放端部の一つを閉鎖するように形成された少なくとも1つのシリンダヘッドと、
それぞれ前記シリンダの異なる1つのシリンダに関連して設けられ、このシリンダ内で自由に動くように配置された4つのピストンであって、圧縮ストロークの制御のために前記ピストンを加速及び減速させるための付加的手段なしに前記シリンダの中で往復移動する4つのピストンとを備え、
前記ピストンの2つが同時に往復するように第1ピストン対を形成するために第1機構によって連結され、前記ピストンの他の2つが同時に往復するように第2ピストン対を形成するために第2機構によって連結され、
更に、ストローク長さを予め定めないで、可変ストロークおよび可変圧縮比を許容するように、前記第1ピストン対を同時に往復させ、且つ前記第2ピストン対を同時に往復させる手段を備え、前記第2ピストン対の同時の前記往復が前記第1ピストン対に対して反対向きの往復と、前記第1ピストン対と同じ向きの往復とからなるグループから選定され、
更に、燃料と反応物質の予混合気を形成する手段を備え、該手段が前記予混合気の大きさを制御する手段と、前記給気の組成を制御する手段とを含み、
前記の各シリンダに関連して設けられ、前記シリンダの関連する1つ内への前記予混合気の導入を制御するように形成された少なくとも1つの吸気弁と、
燃料と反応物質の予混合気を前記少なくとも1つの吸気弁の各々に案内する手段とを備え、
前記ピストンがそれぞれ、前記シリンダの関連する1個内で吸気ストロークを生じるように形成および採寸され、前記シリンダヘッドから離れる方向の前記ピストンの往復運動が、前記の少なくとも1つの吸気弁を経て、それに関連する前記シリンダの1つ内に前記予混合吸気を移動させることを可能にし、
更に、前記の各シリンダ内に形成された燃焼室を備え、該燃焼室がそれぞれ、前記ピストンと、前記シリンダの関連する1つと、前記シリンダを閉鎖する少なくとも1つのシリンダヘッドによって画成され、
前記ピストンがそれぞれ、前記シリンダの関連する1つ内で圧縮ストロークを生じるように形成および採寸され、前記予混合気を自動点火して燃焼ガスを形成するために、前記ピストンが前記予混合気の温度を充分に上昇させるように、前記燃焼室内で前記予混合気を圧縮するまで、前記少なくとも1つのシリンダヘッドの方への前記ピストンの往復運動が続けられ、
前記ピストンがそれぞれ、前記シリンダの関連する1つ内で膨張ストロークを生じるように形成および採寸され、前記ピストンが自由運動するように前記シリンダ内に配置され、前記少なくとも1つのシリンダヘッドから離れるような前記ピストンの往復運動が、前記燃焼室内で前記燃焼ガスの膨張を可能にし、
前記少なくとも1つの排気弁が、前記各シリンダに関連して設けられ、かつ前記シリンダからの前記燃焼ガスの排出を制御するように形成され、
前記ピストンがそれぞれ、前記シリンダの関連する1つ内で排気ストロークを生じるように形成および採寸され、前記ピストンが自由運動するように前記シリンダ内に配置され、前記少なくとも1つのシリンダヘッドの方への前記ピストンの往復運動が、前記の関連する排気弁の少なくとも1つを経て前記膨張燃焼ガスの排出を可能にし、
更に、前記エンジンからの排気としての前記燃焼ガスを案内する手段と、
前記すべてのサイクルの間に前記吸気弁と前記排気弁の開閉とその時期を制御する手段と、
前記エンジンを潤滑する手段と、
潤滑剤と前記ピストンを通過した漏洩ガスを封じ込めるように、前記少なくとも1つのシリンダヘッドによって閉鎖されていない前記各シリンダの前記開放端部の1つを充分に閉鎖するための閉鎖手段と、
前記エンジンを始動させるための手段と、
前記エンジンを冷却するための手段とを備えており、
前記すべてのサイクルの間に前記吸気弁と前記排気弁の開閉とその時期を制御する手段のための、電気的接続部及び電子的接続部から成るグループから選択される接続部を有するエンジン電子制御装置を更に備えており、
前記エンジン電子制御装置が、更に、センサとデータの入力部を備え、更に計算処理能力を有する適応電子制御モジュール;センサとデータの入力部を備え、更に自動点火される前記予混合気の実際の圧縮比を決定することができ、且つ前記吸気弁および前記排気弁の開閉の時期および時間を調節および変更するために前記入力データと比較して前記計算処理を使用することができるマイクロプロセッサの形式の計算処理能力を有する適応電子制御モジュール;センサとデータの入力部を備え、更に自動点火される前記予混合気の実際の圧縮比を決定することができ、且つ前記予混合気の燃料および反応物質特性を制御するために前記入力データと比較して計算処理を使用することができるマイクロプロセッサの形式の計算処理能力を有する適応電子制御モジュール;入力センサとデータ入力手段を備え、更に自動点火される前記予混合気の実際の圧縮比を決定することができ、前記データ入力手段によって与えられる入力データと比較して計算処理を使用することができるマイクロプロセッサの形式の計算処理能力を有する適応電子制御モジュール:から成るグループから選択される態様を有しており、
前記適応電子制御モジュールが、更に、最適なエンジン作動状態を維持する電気的及び/又は電子的出力を与えるのに適した出力制御手段を備えており、
前記適応電子制御モジュールの前記入力センサが、前記エンジン電子制御装置のセンサ入力端子への電気的及び/又は電子的接続部を有しており、
更に、前記入力センサが、燃料流センサ、燃料質量流量データを提供する燃料流センサ、燃料および反応物質特性センサ、反応物質質量流量データを提供する燃料および反応物質特性センサ、燃料および反応物質吸気温度センサ、エンジン温度センサ、エンジンスロットルセンサ、デジタル形式でエンジン作動設定値を提供するエンジンスロットルセンサ、エンジン始動および停止信号センサ、エンジン負荷センサ、前記ピストンの位置を感知する位置センサ、エンジン排気エミッションセンサ、前記各シリンダ内の点火センサであって圧電式圧力変換器、イオンセンサ、高速熱電対および高速UV火炎センサから成るグループから更に選択される態様を有する点火センサ、から成るグループから選択され、
前記適応電子制御モジュールの前記データ入力手段が、前記エンジン電子制御装置への電気的及び/又は電子的接続部を有しており、
前記データ入力手段が、電子データ入力およびデータ記憶能力、変化する周囲条件下での燃料と反応物質の給気の自動点火を達成するために要求される予想圧縮比に関するデータを含む電子データ入力およびデータ記憶能力、エンジン動作範囲にわたって燃料と反応物質の給気の自動点火を達成するために要求される予想圧縮比に関するデータを含む電子データ入力およびデータ記憶能力、エンジン動作条件制限に関するデータを含む電子データ入力およびデータ記憶能力、高速データルックアップ表の形式のエンジン動作条件制限に関するデータを含む電子データ入力およびデータ記憶能力、から成るグループから選択され、
前記適応電子制御モジュールの前記出力制御手段が、前記エンジン電子制御装置への電気的及び/又は電子的接続部を有しており、
前記出力制御手段が、吸気および排気弁作動装置、給気および反応物質の混合および制御装置、排ガス再循環装置、エンジン冷却装置及びエンジン潤滑装置から成るグループから選択されることを特徴とするエンジン。
【請求項2】
さらに、前記各シリンダに関連して前記少なくとも1の吸気弁及び前記少なくとも1の排気弁を個別に作動させるのに適した可変弁動作を備えており、前記可変弁動作が、
前記シリンダヘッド吸気ポート内に配置された少なくとも1のきのこ形吸気弁、戻しばね、シールおよび弁ガイドであって、前記少なくとも1のきのこ形吸気弁が前記ポートと前記シリンダとの間のガス交換をさせるように、全て往復エンジンに典型的な態様で構成されたきのこ形吸気弁、戻しばね、シールおよび弁ガイドと、
前記シリンダヘッド排気ポート内に配置された少なくとも1のきのこ形排気弁、戻しばね、シールおよび弁ガイドであって、前記少なくとも1のきのこ形排気弁が前記ポートと前記シリンダとの間のガス交換をさせるように、全て往復エンジンに典型的な態様で構成されたきのこ形排気弁、戻しばね、シールおよび弁ガイドと、
前記各シリンダヘッドの上方に配置され、前記シリンダ内の各前記きのこ形弁のためのカムローブを有し、前記シリンダ内で前記各きのこ形吸気及び排気弁を動作させるような方式で前記カムローブが固定され、前記シリンダのきのこ形吸気及び排気弁が往復エンジンに典型的な前記シリンダヘッドの上方に配置された弁棒端部をそれぞれ有している少なくとも1のカム軸と、
前記カム軸のうちの取り付けられたものが回転または割り出されるときに加わる圧力と前記弁棒端部の線形運動によって、前記カム軸ローブが前記きのこ形吸気及び排気弁のそれぞれを動作させて、前記きのこ形吸気及び排気弁を開閉させるように、前記シリンダ吸気弁と排気弁の上に前記少なくとも1のカム軸を取付けるのに適した手段と、
電気駆動モータ、二方向ステッピングモータ及び二方向トルクモータから成るグループから選択される、前記少なくとも1のカム軸のモータ駆動による回転又は割り出しに適した手段と、
前記モータ駆動による回転又は割り出し手段の電子制御に適した手段と、
前記少なくとも1のカム軸用の潤滑手段と、
前記きのこ形弁用の潤滑手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載のエンジン。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−184769(P2012−184769A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−113094(P2012−113094)
【出願日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【分割の表示】特願2007−557132(P2007−557132)の分割
【原出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(507279314)
【Fターム(参考)】