説明

可変印影式印鑑および印鑑照合システム

【課題】印影の偽造を効果的に防止することができる可変印影式印鑑を提供する。
【解決手段】原印影のイメージデータを保持する原印影記憶部21と、捺印者の指紋情報を保持する指紋情報記憶部22と、捺印者の指紋を読み取る指紋読取部23と、指紋読取部23が読み取った指紋と指紋情報記憶部22に保持されている指紋情報とを照合して、正当な捺印者であるか否かの認証を行なう捺印者認証部24と、捺印者認証部24で正当な捺印者であると認証された場合に、原印影記憶部21に保持されている原印影のイメージデータを所定の規則性に基づいて変化させる印影変形部25と、変化が加えられた印影のイメージデータを出力する捺印部28とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印影の偽造を防止する技術に関し、特に、偽造防止効果に優れた印鑑およびその印鑑を用いた印鑑照合システムに関する。
【背景技術】
【0002】
わが国では印鑑による本人認証が日常的に行なわれている。最近では指紋や光彩などの生体情報を用いる本人認証システムが数多く提案されているが、今後も印鑑による本人認証が本人認証手法の主流として利用されるであろうと考えられている。
近年では、印鑑による本人認証も、コンピュータの普及に伴って、予め登録された印影データをディスプレイに表示させて、被照合印影と照合することが行なわれるようになっている。例えば、特許文献1では、登録印影と被照合印影の本質的な相違を、朱肉の付着具合や押印むら等に影響されずに、印影パターンから正確に判別する印鑑照合装置が開示されている。
【特許文献1】特開2004−326821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、印鑑による本人認証には、印影の偽造が容易であり、印鑑証明書などの公的な不正防止策が講じられているものの、印鑑証明書の偽造や不正取得などの可能性もあって本人認証の確実性に問題があるといわれており、上記の印鑑照合装置では、このような印鑑の欠点を解消することができない。
また、デジタル文書への署名や捺印を行なう電子印鑑システムでは、データの改ざんや印影データの偽造の防止策などが施されているものもあるが、印鑑による本人認証は、原則として紙に押印されたもので行なわれるため、電子印鑑システムにおける偽造防止策などをそのまま流用することはできない。
そこで、本発明は、これらの事情および問題点に鑑みてなされたものであり、主として紙に押印される印鑑について、印影の偽造を効果的に防止することができる可変印影式印鑑を提供することを目的とする。また、この可変印影式印鑑を利用したセキュリティ性の高い印鑑照合システムを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明に係る可変印影式印鑑は、印影データを保持する原印影記憶手段と、捺印者の認証を行なう認証手段と、前記認証手段で認証された場合に、前記原印影記憶手段に保持されている印影データを所定の規則性に基づいて変化させる印影変化手段と、変化が加えられた印影データを出力する印影出力手段とを備えることを特徴とする。
本構成によって、捺印時に捺印者の認証を行ない、もとの印影にある規則性に基づいた変化を加えた印影を作成するので、捺印ごとに印影に差異が生じることとなり、印影の偽造を効果的に防止することができる可変印影式印鑑が実現される。
ここで、前記可変印影式印鑑は、さらに、前記可変印影式印鑑が捺印された回数を計数する捺印回数計数手段を備え、前記印影変化手段は、前記回数に応じて、前記原印影記憶手段に保持されている印影データを変化させるとしてもよく、また、前記可変印影式印鑑は、さらに、前記認証手段が認証した時点を計測する計時手段を備え、前記印影変化手段は、前記時点に応じて、前記原印影記憶手段に保持されている印影データを変化させるとしてもよい。
これによって、捺印回数や捺印日時に応じた変化を加えた印影を作成することができるようになる。
また、本発明に係る印鑑照合システムは、照合するための印影データを保持するサーバと、前記サーバと通信可能に接続され、前記サーバから前記印影データを取得して表示するクライアント端末とを備える印鑑照合システムであって、前記印鑑照合システムは、さらに、印影データを保持する原印影記憶手段と、捺印者の認証を行なう認証手段と、前記認証手段で認証された場合に、前記原印影記憶手段に保持されている印影データを所定の規則性に基づいて変化させる印影変化手段と、変化が加えられた印影データと前記所定の規則性を示す文字列とを出力する印影出力手段とを備える可変印影式印鑑を備え、前記クライアント端末は、前記文字列の入力を受け付ける入力手段と、前記入力手段で入力された文字列を前記サーバに送信する通信手段とを備え、前記サーバは、前記クライアント端末から前記文字列を受信する受信手段と、前記原印影記憶手段に保持されている印影データと同一の印影データを格納するサーバ原印影格納手段と、前記受信した文字列によって示される所定の規則性に基づいて、前記サーバ原印影格納手段に格納されている印影データを変化させるサーバ印影変化手段と、前記サーバ印影変化手段によって変化が加えられた印影データを前記クライアント端末に送信する送信手段とを備えることを特徴とする。
本構成によって、可変印影式印鑑で用いられる印影の変形式と同一の変形式を、印影を確認するためのサーバ側にも登録し、印影を照合する際に同一の規則性に基づいて照合用の印影画像を生成するので、印影の偽造がされても照合用の印影画像と一致する可能性を殆ど無くすることができ、セキュリティ性の高い印鑑照合システムを実現することができる。
なお、本発明は、このような印鑑照合システムとして実現することができるだけでなく、このような印鑑照合システムを構成する各装置が備える特徴的な手段をステップとする印鑑照合方法として実現したり、それらのステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現したりすることもできる。そして、そのようなプログラムは、CD−ROM等の記録媒体やインターネット等の伝送媒体を介して配信することができるのは言うまでもない。
【発明の効果】
【0005】
以上説明したように、本発明に係る可変印影式印鑑によれば、捺印の度に印影に変化を加えるので、印影の偽造を防止することができる。
また、捺印者の認証を経なければ捺印することができないようにしているので、印鑑の正当な所有者として登録された者以外の捺印を防止することができる。
さらに、本発明に係る印鑑照合システムによれば、可変印影式印鑑で用いられる印影の変形式と同一の変形式が確認用のサーバ側にも登録されており、認証時に同一の規則性に基づいて照合用の印影画像が生成されるので、印影の偽造がされた場合でも一致する可能性は限りなく0となり、セキュリティ性に優れた印鑑照合システムを実現することが可能となる。
よって、本発明により、印影の偽造を効率的に防止することが可能となり、未だ印鑑が本人認証の主流となっている今日における実用的価値は極めて高いといえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る可変印影式印鑑の構成を示す図である。
本実施の形態1に係る可変印影式印鑑1は、捺印の度に印影を変化させることができる印鑑であり、図1に示すような構成とされる。
印鑑筐体10は、従来の印鑑と同様に、直方体や円筒形となっており、捺印する側の面に捺印面19aが設けられ、側面に捺印者の指紋を読み取るための指紋センサ17aが設けられている。
可変印影式印鑑1は、この印鑑筐体10の内部に、可変印影式印鑑1を構成する各部に電力を供給する乾電池や充電池などの電源11、CPUなどの演算装置やメモリなどが搭載された基板12、変化が加えられた印影を捺印面19aに出力する捺印装置19、および、捺印装置19にインクを供給するインクカートリッジやインクリボン等のインク供給装置18を備える。また、基板12上には、日時を計測する時計13、捺印回数を計測するカウンタ14、捺印者の指紋情報や変化を加える前の印影(原印影)を保持しておくための記憶装置16、カウンタ14や記憶装置16に記憶されている情報の消失を防ぐための予備電源15、および、指紋センサ17aで読み取った指紋の認証を行なう指紋認証装置17が設けられている。
図2は、本実施の形態1に係る可変印影式印鑑1の機能的な構成を示すブロック図である。
図2に示すように、可変印影式印鑑1は、機能的な構成要素として、原印影記憶部21、指紋情報記憶部22、指紋読取部23、捺印者認証部24、印影変形部25、捺印回数計数部26、計時部27および捺印部28を備えている。
原印影記憶部21は、図1に示した記憶装置16に相当するものであり、可変印影式印鑑1の所持者(捺印者)の原印影のイメージデータを保持するROMなどの記憶装置によって実現される。指紋情報記憶部22も、図1に示した記憶装置16に相当するものであり、ROMなどの記憶装置によって実現され、捺印者の指紋情報が格納されている。
指紋読取部23は、図1に示した指紋センサ17aによって実現され、捺印者の指紋を読み取って、指紋情報を捺印者認証部24に出力する。
捺印者認証部24は、図1に示した指紋認証装置17に相当するものであり、指紋読取部23から指紋情報を取得すると、指紋情報記憶部22に格納されている指紋情報と照合して、入力された指紋情報が正当な捺印者のものであるか否かを判定する。捺印者認証部24は、正当な捺印者であると判定すると、可変印影式印鑑の捺印が可能であると認証し、印影変形部25、捺印回数計数部26および計時部27にそれぞれ指示信号を出力する。
捺印回数計数部26は、図1に示したカウンタ14によって実現され、可変印影式印鑑1の捺印回数を計数する処理部である。この捺印回数計数部26は、捺印者認証部24から指示信号を取得すると捺印回数をインクリメントし、印影変形部25と捺印部28とに特定文字列の一部として出力する。
計時部27は、図1に示した時計13に相当するものであり、捺印者認証部24から指示信号を取得すると、取得した日時(認証日時または捺印日時)を印影変形部25と捺印部28とに特定文字列の一部として出力する。
印影変形部25は、印影を所定の規則性に基づいて変化させるプログラムが格納されているROMや、そのプログラムを実行するCPUなどによって実現され、図1に示した基板12に相当するものである。
この印影変形部25は、捺印者認証部24から指示信号を取得すると原印影記憶部21から捺印者の原印影のイメージデータを読み出して印影データを変化させて捺印部28に出力する。ここで、所定の規則性とは、例えば、捺印回数計数部26から得られる捺印回数や計時部27から得られる認証日時に応じて、予め印影の変化態様や変化させる位置などがプログラミングされていることを意味する。
なお、本実施の形態1では、捺印回数計数部26から捺印回数が特定文字列の一部として、また、計時部27から認証日時が特定文字列の一部として印影変形部25に出力されることから、捺印回数と認証日時とを特定文字列とし、この特定文字列に応じて印影の変化態様や変化位置が決定されることになる。
捺印部28は、図1に示した捺印装置19に相当するものであり、例えば、従来のインクジェットプリンタの原理を利用して、印影変形部25で変化が施された印影データを印影として出力する。また、捺印部28は、捺印回数計数部26から得られる捺印回数と計時部27から得られる認証日時とを特定文字列とし、印影とともに出力する。印影を出力するトリガは、例えば、図1に示した捺印面19aが被捺印物(紙)に押し当てられたことをセンサで検知した場合が考えられる。また、印影を出力させるためのスイッチを印鑑筐体10の外部に設けるとしてもよいし、印鑑筐体10から突き出ている捺印面19aが被捺印物に押し当てられることで印鑑筐体10内部に入り込むようにして、捺印面19aが印鑑筐体10内部に入り込むと印影を出力するようにスイッチが切り替わる構成にしてもよい。なお、ここで使用されるインクは、印影として出力することから朱肉と同一色を使用するのが好ましい。また、インクジェットプリンタの機構ではなく、ドットインパクトプリンタの機構などで代替するとしてもよい。
このように、本実施の形態1に係る可変印影式印鑑1によれば、捺印者の認証を経なければ捺印することができないので、可変印影式印鑑1に正当な所有者として登録された者以外の捺印を防止することができる。
また、捺印の度に印影に変化を加えるとともに捺印回数や捺印日時も合わせて出力するので、安易な偽造を防止することも可能となる。
なお、本実施の形態1における時計としては、電波時計を利用するのが好ましい。電波時計とすることで、容易な日時の改竄を防ぐことができ、セキュリティを高めることになるからである。
(実施の形態2)
続いて、本発明の実施の形態2として、上記実施の形態1に係る可変印影式印鑑1を利用した印鑑照合システムについて説明する。
図3は、本実施の形態2に係る印鑑照合システムの運用を説明するための図である。
本実施の形態2に係る印鑑照合システムの運用主体は、可変印影式印鑑1の使用者となる不特定多数の被認証者(捺印者)、被認証者から依頼を受けて可変印影式印鑑1を製造し提供する印鑑メーカ、および、被認証者から可変印影式印鑑1で捺印された捺印書類20による認証申請を受けてその認証結果に基づいてサービス等を提供する不特定多数の認証者(例えば、銀行などの金融機関。)である。
被認証者は、印鑑メーカに対して印影作成の基礎となる氏名などの個人情報を通知して可変印影式印鑑1の製造を依頼するとともに、捺印可否の認証に用いるための情報を提供する。
印鑑メーカは、印鑑製造装置30に個人情報や認証用情報を入力して、依頼者である被認証者の可変印影式印鑑1を製造する。可変印影式印鑑1の製造にあたって、印鑑製造装置30は、被認証者ごとにユニークな被認証者ID(捺印者ID)を割り当てて可変印影式印鑑1に登録するとともに、被認証者IDと製造した印影とを関連付けて印鑑製造装置30と通信可能に接続されている確認用サーバ40にも登録する。また、このとき、印鑑製造装置30は、可変印影式印鑑1内部のROMに格納する印影の変化に関するプログラムも捺印者IDと関連付けて確認用サーバ40に登録する。なお、ここで可変印影式印鑑1に登録される捺印者IDは、捺印回数や捺印日時とともに特定文字列を形成し、可変印影式印鑑1の捺印時に印影とともに出力される。
被認証者が可変印影式印鑑1で捺印された捺印書類20による認証申請を行なうと、認証者は、捺印書類20に印影とともに捺印されている特定文字列を認証者端末50に入力して、照合の対象となる印影情報の送信を確認用サーバ40に要求する。確認用サーバ40と認証者端末50は、ネットワーク100を介して通信可能になっており、確認用サーバ40は、特定文字列を含む印影情報要求を受信すると、特定文字列をキーにして照合対象となる印影情報を検索し、認証者端末50に返信する。認証者は、認証者端末50の表示装置に表示される照合用印影と捺印書類20に捺印された印影とを目視で照合し、被認証者の認証を行なう。
なお、ここでは被認証者から認証用情報を印鑑メーカに提供するとしているが、可変印影式印鑑の使用開始時に被認証者が認証用情報(例えば、指紋など)を入力するようにしてもよい。
図4は、本実施の形態2に係る印鑑照合システムを構成する各装置の機能的な構成を示すブロック図である。なお、可変印影式印鑑1については、図2に示したので、本図では図示を省略している。
印鑑製造装置30は、可変印影式印鑑1を製造する装置であり、図4に示すように、情報入力部31と印影生成部32と通信部33とを備える。
確認用サーバ40は、認証者端末50からの要求に応じて、印鑑を照合するための印影データを提供するサーバ装置であり、被認証者DB41と通信部42と印影検索部43とを備える。
認証者端末50は、確認用サーバ40に照合対象となる印影のイメージデータの提供を要求するパーソナルコンピュータや金融機関におけるATM(Automatic Teller Machine)などのクライアント端末装置であり、入力部51と通信部52と表示部53とを備える。
情報入力部31は、被認証者の個人情報や認証用情報の入力を受け付けるキーボードやマウスなどの入力装置である。
印影生成部32は、情報入力部31から入力された情報に基づいて可変印影式印鑑1の原印影のイメージデータを生成する処理部である。この印影生成部32は、情報入力部31から入力された被認証者の苗字、名前、氏名または名称などに基づいて、印影を生成するプログラムを実行し原印影をデザインして、原印影のイメージデータを生成する。
また、印影生成部32は、被認証者ごとにユニークな被認証者ID(捺印者ID)を割り当てて原印影のイメージデータと関連付けて通信部33に出力する。なお、捺印者IDを割り当てる際に、印影生成部32は、通信部33を介して、重複した捺印者IDが登録されていないかを確認用サーバ40にチェックを要求する機能を有するとしてもよい。
さらに、印影生成部32は、所定の規則性に基づいた印影の変形式を被認証者ごとに生成する。
印鑑製造装置30は、この印影生成部32で生成された原印影のイメージデータを可変印影式印鑑1の原印影記憶部21に記憶させる過程や、印影生成部32で生成された印影の変形式を可変印影式印鑑1の印影変形部25にプログラミングする過程を経て、可変印影式印鑑1を製造することになる。
通信部33は、確認用サーバ40と通信するためのインタフェースであり、情報入力部31を介して入力された被認証者の氏名や名称と、印影生成部32で生成された原印影のイメージデータ、捺印者IDおよび印影の変形式とを確認用サーバ40に送信する。
被認証者DB41は、被認証者に関する情報を格納するデータベースである。被認証者DBのデータ構成例を図5に示す。図5に示すように、この被認証者DB41には、捺印者ID、被認証者の氏名、被認証者の原印影のイメージデータや印影を変化させるプログラムなどがIDごとに記録されている。
通信部42は、印鑑製造装置30や認証者端末50と通信するためのインタフェースであり、印鑑製造装置30からは被認証者の氏名や原印影のイメージデータ等を受信して被認証者DB41に格納し、認証者端末50からは印影情報要求を受信して印影検索部43に出力する。
印影検索部43は、通信部42が受信した印影情報要求に基づいて被認証者DB41を検索し、照合対象となる印影を生成する処理部である。この印影検索部43は、印影情報要求に含まれる特定文字列から、原印影のイメージデータと原印影のイメージデータの変形式とを導き出して、変化を加えた印影画像を照合対象となる印影として生成し、通信部42を介して認証者端末50に印影情報を返信する。
入力部51は、認証者から捺印書類20に捺印された特定文字列の入力を受け付けるキーボードやマウス等の入力装置である。
通信部52は、確認用サーバ40と通信するためのインタフェースであり、入力部51を介して入力された特定文字列を含めた印影情報要求を確認用サーバ40に送信し、また、確認用サーバ40から印影情報を受信して表示部53に出力する。
表示部53は、通信部52が受信した印影情報を取得して、照合対象となる印影を表示出力するCRTディスプレイ等の表示装置である。なお、この表示部53の代わりに照合対象となる印影を印刷出力するような構成としてもよい。
以下では、印影生成部32において生成される原印影の変形式について説明する。
まず、印影生成部32は、生成した原印影のイメージデータを複数のブロックに区分割けして、各ブロックにブロックナンバー(ブロックNo)を割り当てる。ブロックの分割方法およびブロックNoの割当方法は、図6(a)に示すように、正方形または長方形のブロックに分割して所定のブロックから順番に割り当てるとしてもよいし、図6(b)に示すように、原印影のイメージデータのうち印字される部分のみを不定形のブロックに分割してランダムにブロックNoを割り当てるとしてもよい。
続いて、印影生成部32は、所定の規則性に基づいて、割り当てたブロックNoごとに変化を加えるか否か、変化を加える場合にはどのような態様の変化を加えるかを決定して原印影の変形式を生成する。そして、印影生成部32は、生成した変形式を可変印影式印鑑1の印影変形部25にプログラミングするとともに、通信部33を介して確認用サーバ40に送信する。
図7に、被認証者DB41に登録された原印影の変形式の構成例を示す。本図では、所定の規則性として、捺印回数を用いた場合を例示しており、変形式(YT001)は、捺印回数が“1”の場合、ブロックNo“A1”に点を付加する変化を加え、ブロックNo“A10”に反転させる変化を加えることが示されている。
図8は、原印影のイメージデータのブロックに加えられる変化の例を示す図である。
上述した点を付加する変化は、例えば、変形前ブロック200の印字される部分に点を中抜きして変形後ブロック201としたり、印字される部分の下方に同色の点を付加して変形後ブロック202としたり、印字される部分の縁に配色を反転させた点を付加して変形後ブロック203としたりすることが考えられる。
また、変形前ブロック200の印字される部分を市松模様として変形後ブロック211としたり、縦縞模様として変形後ブロック212としたり、横縞模様として変形後ブロック213としたりする模様付けの変化も考えられる。
さらに、変形前ブロック200の印字される部分を反転させて変形後ブロック221とする反転変化や、印字される部分を縁取りして変形後ブロック231とする縁取り変化も考えられ、この他、変形前ブロック200のブロックをさらにブロックで囲って変形後ブロック241や変形後ブロック242とするブロック囲い変化も考えられる。
次に、印鑑製造装置30が可変印影式印鑑1を製造する手順について、図9を参照しながら説明する。
図9は、可変印影式印鑑1の製造手順を示すフロー図である。
まず、印鑑製造装置30は、情報入力部31において、可変印影式印鑑1の製造依頼者である被認証者(捺印者)の情報の入力を受け付け(S102)、印影生成部32において、入力された内容に基づき捺印者IDの割り当てを行なう(S104)。
次に、印鑑製造装置30は、印影生成部32において、入力された捺印者情報の内容に基づいて原印影のイメージデータ、つまり、印影画像を生成する(S106)。そして、生成した印影画像を複数のブロックに分割して(S108)、各ブロックにブロックNoを割り当てる(S110)。ブロック分割およびブロックNoの割り当てについては上述したので、ここでは説明を省略する。
続いて、印鑑製造装置30は、印影生成部32において、原印影の変形式を生成し(S112)、原印影の画像と変形式とを可変印影式印鑑1に登録するとともに、通信部33を介して確認用サーバ40に送信し、被認証者DB41への登録も行なう(S114)。
最後に、印鑑製造装置30は、可変印影式印鑑1に捺印の可否を認証するための捺印者の指紋情報を入力して(S116)、終了する。なお、製造手順をステップS114で終了するとし、ステップS116は捺印者が使用開始時に入力するようにしても構わない。
続いて、このような手順で製造される可変印影式印鑑1の動作について、図10を参照しながら説明する。
まず、可変印影式印鑑1は、指紋読取部23で捺印者からの指紋の入力を受け付けて、捺印者認証部24において認証を行なう(S202)。捺印者認証部24が、入力された指紋と指紋情報記憶部22に記憶されている指紋情報とを照合した結果、正当な捺印者であると認証すると(S204のYes)、捺印回数計数部26が、捺印回数をインクリメントし、その値を特定文字列の一部として印影変形部25と捺印部28とに出力する。計時部27も認証日時を印影変形部25と捺印部28とに特定文字列の一部として出力し、印影変形部25は、捺印回数の値および認証日時から特定文字列を生成する(S206)。
印影変形部25では、予めプログラミングされた変形式を用いて、生成した特定文字列に基づき、原印影画像のいずれのブロックを変化させるか、すなわち差異を与えるブロックを決定する(S208)。
最後に、捺印部28において、決定された印影画像を印影として出力するとともに、特定文字列および捺印者IDも併せて出力して(S210)、動作を終了する。
このような手順を経て捺印された捺印書類20を認証者が受け取ると、認証者は、認証者端末50を用いて印影の照合を行なう。以下に、印影照合時における印鑑照合システムの動作手順を、図11を参照しながら説明する。
図11は、印影照合時における認証者端末50と確認用サーバ40の通信シーケンス図である。
まず、認証者端末50は、入力部51を介して認証者から、認証者の名称や認証の目的などの認証者に関する情報の入力を受け付け(S302)、入力された認証者情報を通信部52を介して確認用サーバ40に送信する(S304)。
確認用サーバ40は、認証者情報を受信すると、その認証者が信頼できる認証者であるか否かをチェックし(S402)、チェック結果を認証者端末50に返信する(S404)。このように、印影照合を開始する前に認証者チェックを確認用サーバ40で行なうのは、印鑑の不正使用を未然に防止するためである。なお、認証者チェックは、確認用サーバ40側で認証者情報のデータベースを用意しておき、そのデータベースに登録されているか否かをもって判断する等とすればよい。
認証者端末50は、肯定的な認証者チェック結果を受信すると、捺印者名や捺印者ID、特定文字列の入力を受け付ける画面を表示部53に表示させ、入力部51を介してこれらの入力を受け付ける(S306)。図12に、その画面の一例を示す。捺印者名や捺印者ID、特定文字列が入力されると、認証者端末50は、入力された情報を印影情報要求として確認用サーバ40に送信する(S308)。図12に示す画面例では、捺印者名と、コード(特定文字列)の入力後、送信ボタンを押下する操作を受け付けると、認証者端末50は、印影情報要求を確認用サーバ40に送信することになる。
確認用サーバ40は、印影情報要求を受信すると、印影検索部43において、被認証者D41の中から被認証者IDをキーにして原印影のイメージデータを検索し(S406)、また、原印影のイメージデータの変形式も読み出す。そして、確認用サーバ40は、読み出した変形式に基づいて、印影情報要求に含まれる特定文字列に応じた差異を原印影画像に加えて、照合対象となる印影を生成し(S408)、生成した印影画像を認証者端末50に送信する(S410)。
認証者端末50は、受信した印影画像を表示部53に表示出力して(S310)、通信シーケンスを終了する。図13に、その画面の一例を示す。図13に示す画面例では、受信した照合対象となる印影画像と、印影画像に加えられた変化の数が示されており、認証者は、この印影画像と捺印書類20に押印されている印影とを目視で照合することにより、捺印者本人が押したものであるかどうかを容易に判断することが可能となる。
なお、この画面に表示される印影画像を第三者が見ることで、変化が加えられた位置や数が知られ、この印影画像をそのまま偽造される場合も考慮して、確認用サーバ40が生成する印影画像に少なくとも1つのブロックにダミーの変化をランダムに加えるとしてもよい。ダミーの変化を挿入した場合でも、実際の印影(捺印書類20に捺印された印影)が手元にある認証者は、どの部分がダミーであるかを判断することができるので、照合に支障は生じさせず、より強固な偽造防止効果を得ることができる。
また、確認用サーバ40で、問い合わせを受けた特定文字列のログを蓄積しておき、同一の特定文字列を含む印影情報要求に対しては、照合対象となる印影の生成を行なわないように制御するのが好ましい。このような制御で、同一印による複数回の認証を不可能とすることにより、偽造防止により優れた印鑑照合システムが実現されることになる。なお、同一印による複数回の認証を一元的に制限するのではなく、一定期間内(例えば、1日限り)であれば、複数回の認証を可能とするなど弾力的に運用してもよいことはいうまでもない。
なお、このように確認用サーバ40側で印影の照合を行なう場合には、以下のような仕組みとすることもできる。
確認用サーバ40は、印影情報要求を受信すると、該当する原印影の画像を認証者端末50に送信する。この原印影画像は、ブロックごとに選択することができるように設定されており、認証者は、捺印書類に捺印されている印影を見ながら、マウスなどの入力装置(入力部51)を用いて、認証者端末の表示部53に表示されている印影画像のブロックの中から変化が加えられているブロックを選択する。
認証者端末50は、ブロックが選択された後の印影画像を確認用サーバ40に送信し、確認用サーバ40は、送信されてきた印影画像と照合対象となる印影画像とを照合する。
さらに、本実施の形態2に係る印鑑照合システムは、図14に示すような構成としてもよい。
図14に示す構成では、確認用サーバ60は、上記の構成に加えて、さらに照合部64を備え、認証者端末70は、上記の構成に加えて、さらに印影読取部74を備えている。
照合部64は、パターンマッチングなどのアルゴリズムを利用して、認証者端末70から受信した印影のイメージデータと、印影検索部63が生成した照合対象となる印影のイメージデータとを照合する処理部であり、照合結果を通信部62を介して認証者端末70に送信する。
印影読取部74は、捺印書類20に捺印された印影を読み取ってデジタル画像化するものであり、スキャナ装置などによって実現される。
このように構成される認証者端末70と確認用サーバ60の印影照合時における通信シーケンスを、図15に示す。
本図に示すように、認証者端末70は、捺印者IDや特定文字列の入力を受け付ける際に、印影読取部74によって捺印書類20に捺印された印影を読み取り(S502)、捺印者IDや特定文字列と併せて読み取った印影の画像を確認用サーバ60に送信する(S504)。
また、確認用サーバ60は、照合部64において、受信した印影画像と、印影検索部63が生成した照合対象となる印影とを照合し、その照合結果を認証者端末70に送信する(S604)。
認証者端末70は、受信した照合結果を表示部73に表示出力して(S506)、通信シーケンスを終了する。
また、本実施の形態2に係る印鑑照合システムは、図16に示すような構成とすることもできる。
図16に示す構成では、確認用サーバ80が、印鑑登録装置30の構成を併せ持っており、認証者端末90が照合部95を備えている。
このように構成される認証者端末90と確認用サーバ60の印影照合時における通信シーケンスを、図17に示す。
本図に示すように、確認用サーバ80が照合対象となる印影画像を認証者端末90に送信する段階までは、図11に示した通信シーケンスと同様である。
その後、認証者端末90は、確認用サーバ80から印影画像を受信した後に(受信前でもよい。)、印影読取部94によって捺印書類20に捺印された印影を読み取り(S702)、照合部95において読み取った印影の画像と受信した印影画像とを照合し(S704)、その照合結果を表示部93に表示出力する(S706)。
印鑑照合システムをこのような構成とすることで、照合作業を認証者の目視によるのではなく自動化することが可能となる。
さらに、本実施の形態2に係る印鑑照合システムは、図18に示すような構成としてもよい。
図18に示す印鑑照合システムは、確認用サーバ60aが照合部64aを備えている点で、図4に示した印鑑照合システムと異なっている。また、確認用サーバ60aに備えられている通信部62aが、認証者端末50の通信部52と通信する点において、図14に示した確認用サーバ60と異なっている。
このように構成される認証者端末50と確認用サーバ60aの印影照合時における通信シーケンスを、図19に示す。
本図に示すように、認証者端末50が捺印者IDや特定文字列の入力を受け付ける段階までは、図11に示した通信シーケンスと同様である。
その後、認証者端末50は、表示部53を介して、捺印された印影の中で変更されている箇所(ブロック)の指定を認証者に促す画面を出力し、入力部51を介して認証者から変更箇所の指定の入力を受け付ける(S802)。変更箇所の入力を受け付けると、認証者端末50は、捺印者ID、特定文字列および変更箇所を確認用サーバ60aに送信する(S804)。
その後、確認用サーバ60aは、図11と同様に、原印影のイメージデータを検索し(S406)、変形式に基づいて差異を加えた、照合対象となる印影を生成する(S408)。そして、確認用サーバ60aは、照合部64aにおいて、通信部62aを介して受信した変更箇所と、生成した印影画像における変更箇所とを照合し(S902)、照合結果を認証者端末50に送信する(S904)。
最後に、認証者端末50は、受信した照合結果を表示部53から表示出力する(S906)。
印鑑照合システムをこのように構成することで、認証者は変更が加えられた箇所のみを指定すればよいので、照合時の操作を簡素化することができる。
以上、本実施の形態2に係る印鑑照合システムによれば、可変印影式印鑑にプログラミングされる変形式を確認用サーバにも登録しておき、認証時に特定文字列をキーにして照合用の印影画像を生成するので、偽造された印鑑と照合しても一致する可能性は限りなく0に近くなり、セキュリティ性の高い印鑑照合システムを実現することが可能となる。
また、特定文字列を用いて同一印影による複数回の認証を認めないようにすれば、さらに、そのセキュリティ性を強固なものとすることができる。
(変形例)
続いて、上記実施の形態1に係る可変印影式印鑑の変形例について説明する。
図20は、可変印影式印鑑の変形例の構成を示す図である。
本変形例に係る可変印影式印鑑300は、捺印の度に印影を変化させることができる点で、上記実施の形態1に係る可変印影式印鑑1と共通する。しかしながら、カード型の形状を有しており、捺印装置やインク供給装置を有していない点で、上記実施の形態1に係る可変印影式印鑑1と異なる。
また、この可変印影式印鑑300は、モード切替スイッチ310、表示部318およびデータ入出力端子319を備えている点で、上記実施の形態1に係る可変印影式印鑑1と異なる。
以下では、これらの異なる点を中心に説明する。
印鑑筐体301は、カード形状となっており、一方の面(おもて面)にモード切替スイッチ310と指紋センサ317aと表示部318とを備えている。
モード切替スイッチ310は、可変印影式印鑑300の電源のオン/オフや、可変印影式印鑑300の動作モード(後に詳述する。)を切り替えるためのスイッチである。このモード切替スイッチ310は、図示しているようなスライド式のスイッチの他に、ボタン式のスイッチなどであってもよい。なお、モード切替スイッチ310が設けられる位置は、印鑑筐体301のおもて面に限られず、うら面や側面であってもよい。
表示装置318は、変化が加えられた印影の画像を表示したり、可変印影式印鑑300の動作モードなどのユーザインタフェース画面を表示したりする液晶ディスプレイなどの表示装置である。この表示部318は、タッチパネル式の操作入力インタフェースを兼用するのが好ましいが、印鑑筐体301に操作入力のためのボタンを別途設ける構成としてもよい。なお、表示装置318が表示する印影は、捺印装置19等によって捺印される印影と全く同じものとする他、これと異なる色で表示するとしてもよい。例えば、捺印装置19等によって捺印される印影を朱色や赤色とし、表示装置318で表示される印影は黒色とするとしてもよい。また、表示装置318は、簡易的な表示として、ブロックの枠組み、捺印によって変化が与えられたブロックおよび特定文字列のみを表示するとしてもよい。
データ入出力端子319は、他の外部機器とデータの通信(入出力)を行なうためのインタフェースの端子である。インタフェースとしては、例えば、USBやIEEE1394などを用いることができる。ここで、他の外部機器とは、上記実施の形態1の可変印影式印鑑1におけるインク供給装置18と捺印装置19とを独立させて構成した装置(印影捺印装置)や、認証者端末などである。
図21は、本変形例に係る可変印影式印鑑300の機能的な構成を示すブロック図である。
図21に示すように、可変印影式印鑑300は、機能的な構成要素として、印影データ出力部328と表示部329と登録情報変更部330とを備えている点で可変印影式印鑑1と異なっている。
印影データ出力部328は、印影変形部325で変化が施された印影データと、捺印回数計数部326から得られる捺印回数や計時部327から得られる認証日時、捺印者IDからなる特定文字列とを外部機器や表示部329に出力する処理部である。
表示部329は、図20に示した表示装置318に相当するものであり、印影データ出力部328から取得した印影データなどを表示出力する。
登録情報変更部330は、指紋情報記憶部322に記録されている情報を変更したり、削除したり、指紋情報記憶部322に新たな情報を記録したりする処理部である。この登録情報変更部330は、捺印者認証部324で正当なユーザであると認証された場合に、上述した操作入力インタフェースを介した、ユーザからの操作に基づいて指紋情報記憶部322に記録されている情報の変更などを行なう。
捺印者認証部324は、上記実施の形態1の捺印者認証部24と同様に、指紋読取部323で入力された指紋情報が正当な捺印者のものであるか否かを判定するが、上記したモード切替スイッチ310によって設定される可変印影式印鑑300の動作モードに応じて、印影変形部325等を起動させたり、登録情報変更部330を起動させたりする。
ここで、可変印影式印鑑300の動作モードについて説明する。動作モードとしては、例えば、捺印モードや登録情報の変更モードなどがある。
捺印モードは、印影データ出力部328から表示部329や印影捺印装置に印影データを出力するモードであり、上記実施の形態1で説明した手順と同様に動作する。
登録情報変更モードは、登録情報変更部330を動作させて指紋情報記憶部322に記録されている情報を変更するモードである。登録情報変更モードを設けることによって、以下のような利便性を得ることができる。
指紋情報記憶部322に捺印者の別の指紋情報を追加記録可能とすることで、怪我などによって捺印者の指紋情報が一部利用できなくなった場合であっても認証を行なうことができるようになる。ここで、指紋情報記憶部322に記録される情報は、異なる指の指紋としてもよいし、指紋と光彩や静脈パターンなどのその他の生体情報との組合せとしてもよい。
また、指紋情報記憶部322に複数の捺印者の指紋情報を追加記録可能とすることで、例えば、捺印者の代理人の指紋情報を登録しておけば代理人による捺印ができるようになる。代理人の指紋情報を登録する際には、まず可変印影式印鑑300で捺印者の認証を行なった後、一定時間内に代理人となる者の指紋情報を入力する手順とすればよい。無制限に代理人の指紋情報登録を受け付けないようにしてセキュリティ性を確保するためである。代理人として指紋情報の登録をした場合、指紋情報記憶部322ではフラグなどを付けて代理人の指紋情報であることを識別可能に記録しておくのが好ましい。また、代理人による捺印を可能とする場合、上記実施の形態2で説明した印鑑照合システムについては、代理人に関する情報を確認用サーバの被認証者DBにも登録するとしてもよい。確認用サーバ側にも代理人に関する情報を登録しておくことで、印影変化のパターンを捺印者とその代理人とで異なる構成とすることが可能となる。さらに、捺印者認証部324が代理人の認証を行なった場合には、印影データ出力部328は代理人による捺印であることを明示するよう印影データに、例えば(代)のような代理人表示を付加するようにしてもよい。
さらに、指紋情報記憶部322に複数の捺印者の指紋情報を追加記録可能とすることで、複数人の認証を経なければ捺印できないようにしたり、印影が誰(複数人の場合も含む。)の承認を得て捺印されたのかを証明したりすることが可能となる。例えば、捺印される印影が会社などの法人印である場合には、このような用途が特に有効となる。
指紋情報記憶部322に複数の捺印者の指紋情報を記録した場合の、指紋情報記憶部322に記録されているデータ構造の一例を、図22に示す。
図22に示すように、指紋情報記憶部322では、各人および各人の組合せにそれぞれ割り当てられた捺印者IDと、それぞれの捺印者IDに対応する氏名および氏名の組合せと、それぞれの捺印者IDごとに異なる印影の変形式などが記録されている。なお、このようなデータの構成として、各人および各人の組合せごとに異なる変形式を用いる場合、上記実施の形態2で説明した印鑑照合システムについては、同一の情報を被認証者DBに記録しておく必要がある。
図22に示した指紋情報記憶部322の一例に基づいて、会社印を捺印する場合の、可変印影式印鑑300の表示装置318に示される印影の表示例を図23に示す。
印影例341は、図22に示される捺印者ID“KOH001‐A”の捺印者のみが捺印した場合の印影である。上記実施の形態2で説明した印鑑照合システムを利用すると、認証者は、会社印の印影下に表示される特定文字列を認証者端末に入力し確認用サーバに照合を要求することで、確認用サーバの被認証者DBに登録されている情報に基づいて、捺印を承認した者(山田一郎)を知ることができる。
また、印影例342、343は、図22に示される捺印者ID“KOH001‐B”または“KOH001‐C”の捺印者のみが捺印した場合の印影であり、上記実施の形態2で説明した印鑑照合システムを利用すると、同様に、認証者は捺印を承認した者(鈴木二郎または田中三郎)を知ることができる。
さらに、印影例344、345は、図22に示される捺印者ID“KOH001‐AB”または“KOH001‐ABC”の捺印者が捺印した場合の印影であり、上記実施の形態2で説明した印鑑照合システムを利用すると、同様に、認証者は捺印を承認した者(山田一郎と鈴木二郎の組合せ又は山田一郎と鈴木二郎と田中三郎の組合せ)を知ることができる。
このように指紋情報記憶部322に複数の捺印者の指紋情報を記録する場合、捺印者IDごとに異なる操作権限の設定ができる構成とし、その設定を指紋情報記憶部322に登録するとしてもよい。このような構成とした場合、例えば、会社における役職に応じて指紋情報記憶部322に記録されている情報の変更を可能又は不可能としたり、捺印を承認する順序を設定したりすることができるようになる。
また、原印影画像記憶部321にも複数の原印影データを格納し、捺印者IDと原印影データとの関連性を指紋情報記憶部322に記録して、ユーザが指紋認証を行なった後に捺印する印影の選択を受け付けるような構成とすることも可能である。
ここまで本発明に係る可変印影式印鑑および印鑑照合システムについて各実施の形態および変形例に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態や変形例に限定されるものではなく、その範囲を逸脱することなく本発明の趣旨に沿って様々の変形または修正が可能であることはいうまでもない。
例えば、上記各実施の形態では、捺印者の認証について指紋認証を例に挙げて説明したが、パスワードによる認証や、その他の生体情報を用いた認証方法を用いるとしてもよい。このような場合、図2における指紋読取部23は、それぞれパスワード入力を受け付けるパスワード入力受付部または光彩などの生体情報を取得する生体情報取得部に置き換わることになり、指紋情報記憶部22は、パスワードを記憶しておくパスワード記憶部または生体情報を記憶しておく生体情報記憶部に置き換わることになる。
また、上記実施の形態2では、印影検索部は、印影情報要求に含まれる特定文字列から、原印影のイメージデータと原印影のイメージデータの変形式とを導き出して、変化を加えた印影画像を照合対象となる印影として生成するとしたが、被認証者DBに印影画像の変化パターンを記録しておき、印影情報要求に含まれる特定文字列から、いずれの捺印者の印影をいずれの変形式で変化させたものであるかを解析して照合対象となる印影を抽出するとしてもよい。
さらに、上記変形例では、カード状の可変印影式印鑑を用いて説明したが、上記変形例に係る可変印影式印鑑の構成を携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistants)などの携帯端末に実装させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0007】
本発明に係る可変印影式印鑑および印鑑照合システムは、本人確認のために使用する印鑑や金融機関等における印鑑照合システム等として利用することができ、特に、高いセキュリティレベルが要求される用途に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1に係る可変印影式印鑑の構成を示す図である。
【図2】本実施の形態1に係る可変印影式印鑑の機能的な構成を示すブロック図である。
【図3】本実施の形態2に係る印鑑照合システムの運用を説明するための図である。
【図4】本実施の形態2に係る印鑑照合システムを構成する各装置の機能的な構成を示すブロック図である。
【図5】被認証者DBのデータ構成例を示す図である。
【図6】(a)は、ブロックの分割方法およびブロックナンバーの割り当て方を説明するための図であり、(b)は、ブロックの別の分割方法およびブロックナンバーの別の割り当て方を説明するための図である。
【図7】被認証者DBに登録された原印影の変形式の構成例を示す図である。
【図8】原印影のイメージデータのブロックに加えられる変化の例を示す図である。
【図9】可変印影式印鑑の製造手順を示すフロー図である。
【図10】可変印影式印鑑の動作手順を示すフロー図である。
【図11】印影照合時における認証者端末と確認用サーバの通信シーケンス図である。
【図12】認証者端末の第1の画面例を示す図である。
【図13】認証者端末の第2の画面例を示す図である。
【図14】本実施の形態2に係る印鑑照合システムの第2の構成例を示す機能ブロック図である。
【図15】第2の構成例とした場合の、印影照合時における認証者端末と確認用サーバの通信シーケンス図である。
【図16】本実施の形態2に係る印鑑照合システムの第3の構成例を示す機能ブロック図である。
【図17】第3の構成例とした場合の、印影照合時における認証者端末と確認用サーバの通信シーケンス図である。
【図18】本実施の形態2に係る印鑑照合システムの第4の構成例を示す機能ブロック図である。
【図19】第4の構成例とした場合の、印影照合時における認証者端末と確認用サーバの通信シーケンス図である。
【図20】本実施の形態1の変形例に係る可変印影式印鑑の構成を示す図である。
【図21】変形例に係る可変印影式印鑑の機能的な構成を示すブロック図である。
【図22】指紋情報記憶部に記録されているデータの一例を示す図である。
【図23】会社印を捺印する場合の、本変形例に係る可変印影式印鑑の表示装置に示される印影の例を示す図である。
【符号の説明】
【0009】
1、2 可変印影式印鑑
10、301 印鑑筐体
11、311 電源
12、312 基板
13、313 時計
14、314 カウンタ
15、315 予備電源
16、316 記憶装置
17、317 指紋認証装置
17a、317a 指紋センサ
18 インク供給装置
19 捺印装置
19a 捺印面
20 捺印書類
21、321 原印影記憶部
22、322 指紋情報記憶部
23、323 指紋読取部
24、324 捺印者認証部
25、325 印影変形部
26、326 捺印回数計数部
27、327 計時部
28 捺印部
30 印鑑製造装置
31、81 情報入力部
32、82 印影生成部
33、42、52、62、72、85、92 通信部
40、60、80 確認用サーバ
41、61、83 被認証者DB
43、63、84 印影検索部
50、70、90 認証者端末
51、71、91 入力部
53、73、93 表示部
64、95 照合部
74、94 印影読取部
100 ネットワーク
200 変形前ブロック
201〜242 変形後ブロック
310 モード切替スイッチ
318 表示装置
319 データ入出力端子
328 印影データ出力部
329 表示部
330 登録情報変更部
341〜345 印影例


【特許請求の範囲】
【請求項1】
印影データを保持する原印影記憶手段と、
捺印者の認証を行なう認証手段と、
前記認証手段で認証された場合に、前記原印影記憶手段に保持されている印影データを所定の規則性に基づいて変化させる印影変化手段と、
変化が加えられた印影データを出力する印影出力手段とを備える
ことを特徴とする可変印影式印鑑。
【請求項2】
前記可変印影式印鑑は、さらに、
前記可変印影式印鑑が捺印された回数を計数する捺印回数計数手段を備え、
前記印影変化手段は、前記回数に応じて、前記原印影記憶手段に保持されている印影データを変化させる
ことを特徴とする請求項1記載の可変印影式印鑑。
【請求項3】
前記可変印影式印鑑は、さらに、
前記認証手段が認証した時点を計測する計時手段を備え、
前記印影変化手段は、前記時点に応じて、前記原印影記憶手段に保持されている印影データを変化させる
ことを特徴とする請求項1または2記載の可変印影式印鑑。
【請求項4】
前記印影変化手段は、前記原印影記憶手段に保持されている印影データを所定の単位に区分して、当該単位ごとに変化させる
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の可変印影式印鑑。
【請求項5】
前記印影変化手段は、点の付加、色の反転、模様付け、縁取りのうち、少なくとも1つを用いて、前記印影データを変化させる
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の可変印影式印鑑。
【請求項6】
前記認証手段は、前記捺印者の指紋を用いて前記捺印者の認証を行なう
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の可変印影式印鑑。
【請求項7】
前記印影出力手段は、被捺印物にインクを噴出させて、変化が加えられた印影データを出力する
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の可変印影式印鑑。
【請求項8】
前記印影出力手段は、被捺印物にインクを噴出させて印影データを出力する印影捺印装置に、変化が加えられた印影データを送信する
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の可変印影式印鑑。
【請求項9】
前記可変印影式印鑑は、さらに、
前記変化が加えられた印影データを表示出力する表示手段を備える
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の可変印影式印鑑。
【請求項10】
照合するための印影データを保持するサーバと、前記サーバと通信可能に接続され、前記サーバから前記印影データを取得して表示するクライアント端末とを備える印鑑照合システムであって、
前記印鑑照合システムは、さらに、
印影データを保持する原印影記憶手段と、
捺印者の認証を行なう認証手段と、
前記認証手段で認証された場合に、前記原印影記憶手段に保持されている印影データを所定の規則性に基づいて変化させる印影変化手段と、
変化が加えられた印影データと前記所定の規則性を示す文字列とを出力する印影出力手段とを備える可変印影式印鑑を備え、
前記クライアント端末は、
前記文字列の入力を受け付ける入力手段と、
前記入力手段で入力された文字列を前記サーバに送信する通信手段とを備え、
前記サーバは、
前記クライアント端末から前記文字列を受信する受信手段と、
前記原印影記憶手段に保持されている印影データと同一の印影データを格納するサーバ原印影格納手段と、
前記受信した文字列によって示される所定の規則性に基づいて、前記サーバ原印影格納手段に格納されている印影データを変化させるサーバ印影変化手段と、
前記サーバ印影変化手段によって変化が加えられた印影データを前記クライアント端末に送信する送信手段とを備える
ことを特徴とする印鑑照合システム。
【請求項11】
前記サーバは、さらに、
前記クライアント端末から受信した文字列を蓄積するログ蓄積手段と、
前記受信した文字列が前記ログ蓄積手段に蓄積されている文字列と同一であるか否かを判定し、同一であると判定した場合に、前記変化が加えられた印影データを送信しない旨のメッセージを前記クライアント端末に送信する再使用禁止手段とを備える
ことを特徴とする請求項10記載の印鑑照合システム。
【請求項12】
印影データを照合するサーバと、前記サーバと通信可能に接続され、前記サーバに印影データを送信し前記サーバから照合結果を取得して表示するクライアント端末とを備える印鑑照合システムであって、
前記印鑑照合システムは、さらに、
印影データを保持する原印影記憶手段と、
捺印者の認証を行なう認証手段と、
前記認証手段で認証された場合に、前記原印影記憶手段に保持されている印影データを所定の規則性に基づいて変化させる印影変化手段と、
変化が加えられた印影データと前記所定の規則性を示す文字列とを出力する印影出力手段とを備える可変印影式印鑑を備え、
前記クライアント端末は、
前記印影出力手段が出力した印影データと前記文字列とを取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した印影データと前記文字列とを前記サーバに送信する通信手段とを備え、
前記サーバは、
前記クライアント端末から前記印影データと前記文字列とを受信する受信手段と、
前記原印影記憶手段に保持されている印影データと同一の印影データを格納するサーバ原印影格納手段と、
前記受信した文字列によって示される所定の規則性に基づいて、前記サーバ原印影格納手段に格納されている印影データを変化させるサーバ印影変化手段と、
前記サーバ印影変化手段によって変化が加えられた印影データと、前記受信手段が受信した印影データとを照合する照合手段とを備える
ことを特徴とする印鑑照合システム。
【請求項13】
印影データを照合するサーバと、前記サーバと通信可能に接続され、前記サーバに印影データを送信し前記サーバから照合結果を取得して表示するクライアント端末とを備える印鑑照合システムであって、
前記印鑑照合システムは、さらに、
印影データを保持する原印影記憶手段と、
捺印者の認証を行なう認証手段と、
前記認証手段で認証された場合に、前記原印影記憶手段に保持されている印影データを所定の規則性に基づいて変化させる印影変化手段と、
変化が加えられた印影データと前記所定の規則性を示す文字列とを出力する印影出力手段とを備える可変印影式印鑑を備え、
前記クライアント端末は、
前記印影出力手段が出力した印影データのうち変化が加えられた箇所である変更箇所および前記文字列の入力を受け付ける入力手段と、
前記入力手段で入力された変更箇所と前記文字列とを前記サーバに送信する通信手段とを備え、
前記サーバは、
前記クライアント端末から前記変更箇所と前記文字列とを受信する受信手段と、
前記原印影記憶手段に保持されている印影データと同一の印影データを格納するサーバ原印影格納手段と、
前記受信した文字列によって示される所定の規則性に基づいて、前記サーバ原印影格納手段に格納されている印影データを変化させるサーバ印影変化手段と、
前記サーバ印影変化手段が変化させた印影データの変化が加えられた箇所と、前記受信手段が受信した変更箇所とを照合する照合手段とを備える
ことを特徴とする印鑑照合システム。
【請求項14】
照合するための印影データを保持するサーバと、前記サーバと通信可能に接続され、前記サーバから前記印影データを取得して表示するクライアント端末とを備える印鑑照合システムにおける印鑑照合方法であって、
前記印鑑照合システムは、さらに、
印影データを保持する原印影記憶手段と、
捺印者の認証を行なう認証手段と、
前記認証手段で認証された場合に、前記原印影記憶手段に保持されている印影データを所定の規則性に基づいて変化させる印影変化手段と、
変化が加えられた印影データと前記所定の規則性を示す文字列とを出力する印影出力手段とを備える可変印影式印鑑を備えており、
前記印鑑照合方法は、
前記クライアント端末において、
前記文字列の入力を受け付ける入力ステップと、
前記入力ステップで入力された文字列を前記サーバに送信する通信ステップとを含み、
前記サーバにおいて、
前記クライアント端末から前記文字列を受信する受信ステップと、
前記受信した文字列によって示される所定の規則性に基づいて、前記原印影記憶手段に保持されている印影データと同一の、前記サーバが保持している印影データを変化させるサーバ印影変化ステップと、
前記サーバ印影変化ステップにおいて変化が加えられた印影データを前記クライアント端末に送信する送信ステップとを含む
ことを特徴とする印鑑照合方法。
【請求項15】
照合するための印影データを保持するサーバと、前記サーバと通信可能に接続され、前記サーバから前記印影データを取得して表示するクライアント端末とを備える印鑑照合システムにおけるサーバのためのプログラムであって、
前記印鑑照合システムは、さらに、
印影データを保持する原印影記憶手段と、
捺印者の認証を行なう認証手段と、
前記認証手段で認証された場合に、前記原印影記憶手段に保持されている印影データを所定の規則性に基づいて変化させる印影変化手段と、
変化が加えられた印影データと前記所定の規則性を示す文字列とを出力する印影出力手段とを備える可変印影式印鑑を備えており、
前記クライアント端末から前記文字列を受信する受信ステップと、
前記受信した文字列によって示される所定の規則性に基づいて、前記サーバが保持しており、前記原印影記憶手段に保持されている印影データと同一の印影データを変化させるサーバ印影変化ステップと、
前記サーバ印影変化ステップにおいて変化が加えられた印影データを前記クライアント端末に送信する送信ステップとをコンピュータに実行させる
ことを特徴とするプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2006−209713(P2006−209713A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−47415(P2005−47415)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(505003171)
【Fターム(参考)】