説明

可変表示構造

【課題】 印刷不良が少なく、吸収層からの光漏れが少なくできる可変表示構造を提供すること。
【解決手段】 色光源2の波長を透過させる第1印刷部分10bと、色光源3の波長を透過させる第2印刷部分10cと、前記第1表示と前記第2表示の重複する部分と重なる部分で、色光源2及び色光源3の光を抑制して透過させる第3印刷部分10dと、色光源2の波長と色光源3の波長を透過させない背景印刷部分10eと、を備え、色光源2と色光源3の少なくとも1つの光源の発光波長領域を狭くするフィルタ4,5を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一表示面に異なる表示を切り換えて表示させる可変表示構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来においては、複数の光源と各光源の光に対して透過と吸収を行うカラーフィルタを持った可変表示構造において、光源の光を透過させない吸収部では、その吸収部からの光漏れを抑えるためにフィルタ層部分を複数回重ねるように印刷している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−257938号公報(第2−10頁、全図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来にあっては、複数回の重ね印刷を原因とする印刷不良が発生し、問題であった。また、複数回の重ね印刷はコストの面からも問題であった。
【0004】
本発明は、上記問題点に着目してなされたもので、その目的とするところは、印刷不良が少なく、吸収層からの光漏れが少なくできる可変表示構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、透光性のあるシートに波長の異なる第1光源の光と第2光源の光を切り換えて投光させ、第1表示と第2表示を行わせる可変表示構造であって、第1光源の波長を透過させる第1印刷部分と、第2光源の波長を透過させる第2印刷部分と、第1光源の波長と第2光源の波長を透過させない第3印刷部分と、前記第1表示と前記第2表示の重複する部分と重なる部分で、第1光源及び第2光源の光を抑制して透過させる調光印刷部と、を備え、前記第1光源と前記第2光源の少なくとも1つの光源の発光波長領域を狭くする光源用フィルタを設けた、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
よって、本発明にあっては、印刷不良が少なくしつつ、吸収層からの光漏れが少なくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の請求項1、2に係る可変表示構造を実現する実施の形態を、実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
まず、構成を説明する。
図1は実施例1の可変表示構造の正面図である。図2は図1のA−A断面図である。図3は実施例1の可変表示構造の第1表示と第2表示を示す説明図である。
【0009】
実施例1の可変表示構造は、スイッチ等の表示部1として、図2に示すように、カラーフィルタ10と、その背面側に設けた色光源2、色光源3からなる。
色光源2は、波長が約530nmをピークとする青色に発光する光源であり、色光源3は、波長が約640nmをピークとする赤色に発光する光源である。
なお、色光源2及び色光源3は、LEDがコスト抑制、メンテナンス性から好ましいが、別のものであってもよい。色光源2,3は他の色であってもよい。
図4は、実施例1の光源発光波長特性を示す説明図である。
図4において、色光源2の特性を線200で示し、色光源3の特性を線300で示す。
【0010】
この色光源2,3にはそれぞれ周囲を覆うハウジング21,31をそれぞれ設け、その上にフィルタ4,5をそれぞれ設ける。
これにより色光源2,3の発する光は、それぞれフィルタ4,5を透過してカラーフィルタ10へ照射される構造となる。
【0011】
カラーフィルタ10は、図1,2に示すように、透明なシート10a前面に、第1印刷部分10b、第2印刷部分10c、第3印刷部分10d、背景印刷部分10eを設ける。
ここで、第1表示12を図3(a)に示すように図形の「○」、第2表示13を図3(b)に示すように図形の「×」とする。
第1印刷部分10bは、第1表示12である「○」の第2表示13「×」と重ならない図1の部分である。この部分は、色光源2の青色光を通過させる青色印刷部分である。
【0012】
図5は印刷層の光吸収特性を示す説明図である。図5において、横軸は図4に対応する波長、縦軸はその波長の光の透過率を示す。つまり、高いほど光が透過することになる。
青色印刷部分の波長に対する透過率の特性は、図5の線101で示す特性となる。
【0013】
第2印刷部分10cは、第2表示13である「×」の第1表示12「○」と重ならない図1の部分である。この部分は、色光源3の赤色光を通過させる部分であり、赤色印刷部分で形成される。赤色印刷部分の波長に対する透過率の特性は、図5の線102で示す特性となる。
【0014】
第3印刷部分10dは、第1表示12の「○」と第2表示13の「×」とが重なった部分である。この部分は、調光印刷部分で形成される。調光印刷部分の波長に対する透過率の特性は、図5の線103で示す特性である。
つまり、青色光も赤色光も適度に透過させる印刷部分である。
【0015】
背景印刷部分10eは、第1〜第3の印刷部分10b〜10d以外の表示部分であり、黒い印刷である。この部分は色光源2、色光源3の光を吸収する。図5の線104で示す特性である。
【0016】
次に作用を説明する。
[表示作用]
(a)非表示状態
色光源2、色光源3のどちらも点灯しない状態では、どちらの光源からの光もカラーフィルタ10を透過しないため、何も表示されない。
【0017】
(b)第1表示
実施例1において、第1表示12を表示させるには、色光源2を点灯させ、色光源3を消灯させる。
まず、第1印刷部分10bにおいて、青色光は青色印刷部分を通過し、表示部分として青色に発光する。図4の線200と図5の線101の関係となる。
次に第2印刷部分10cでは、青色光は赤色印刷部分を通過できないため、表示に寄与しない。図4の線200と図5の線102の関係となる。
【0018】
次に第3印刷部分10dでは、青色光は調光印刷部分を通過し、色みと輝度が調整される。図4の線200と図5の線103の関係となる。
また、背景印刷部分10eでは、青色光は通過しないため、表示に寄与しない。表示としては黒い背景を構成することにより、第1表示12「○」を浮き上がらせるように見せる作用を行う。
これにより、第1表示12、つまり図3(a)に示す「○」が青く表示されることになる。
【0019】
(c)第2表示
実施例1において、第2表示13を表示させるには、色光源3を点灯させ、色光源2を消灯させる。
まず、第1印刷部分10bにおいて、赤色光は、青色印刷部分を通過させない。そのため、表示に寄与しない。図4の線300と図5の線101の関係となる。
次に第2印刷部分10cでは、赤色印刷部分を赤色光が通過するため、赤色の表示部分となる。図4の線300と図5の線102の関係となる。
【0020】
第3印刷部分10dでは、赤色光は調光印刷部分を通過し、色みと輝度が調整される。図4の線300と図5の線103の関係となる。
また、背景印刷部分10eでは、赤色光は通過しないため、表示に寄与しない。表示としては黒い背景を構成することにより、第2表示13「×」を浮き上がらせるように見せる作用を行う。
これにより、第2表示13、つまり図3(b)に示す「×」が赤く表示されることになる。
【0021】
[重ね印刷について]
例えば、上記説明した実施例1と同様の光源2,3が図4で示した特性を持ち、それに対する図5に示した、実施例1と同様の各印刷部分を有したもので、可変表示構造を構成し、光源2,3に、フィルタ4,5を設けず、直接カラーフィルタ10へ光を照射するものが、従来における構成であった。
【0022】
図6,7は従来の可変表示構造における発光と透過、吸収の説明図である。
この従来構成では、図4と図5に示す特性を合わせた際に、その特性から、透過させない側でわずかに透過させてしまう部分が生じる。
つまり、図6に示す青色発光部分で、光吸収不足領域400が生じ、図7に示す赤色発光部分で、光吸収不足領域400が生じてしまう。
このような、光吸収不足領域400が生じると、不要な線などが見えてしまう問題が生じる。
【0023】
そのため、両方の印刷部分、つまり第1印刷部分10b及び第2印刷部分10cを重ね印刷する。
図8,9は可変表示構造における重ね印刷時の発光と透過、吸収の説明図である。図10は可変表示構造における重ね印刷の断面図である。
このように、図6,図7に示した発光、吸収特性が、発光する側で透過が抑制され、吸収する側でより吸収して、図8,図9に示す特性(線200c、200d、300c、300dで示す特性)となるようにして、光吸収不足領域400が生じないようにしていた。
【0024】
しかしながら、印刷層を複数回、重ね印刷すると、図10に示すような断面構造となり、段差ができることから、印刷転写の際に不良が発生しやすくなる。
段差を原因として、剥がれや断裂が生じやすくなるからである。
また、重ねる層を前の層に合わせるように印刷することが必要となるため、印刷位置ズレが生じる問題がある。このような不具合が生じると、表示した際に不要な線が見えてしまい問題である。
【0025】
また、重ね印刷では、表示全体の輝度が落ちてしまう。
また、重ね印刷を行わず、インクの調合等により対応しようとすると、特別なものとなり、コストが非常に高いものとなってしまい、現実には困難である。
実施例1の可変表示構造では、これらの問題を解決している。
【0026】
[発光波長域を狭くする作用]
実施例1では、図2に示すように、各色光源2,3上にフィルタ4,5を設けている。
図11は実施例1の可変表示構造のフィルタの光透過吸収特性を示す説明図である。図12は実施例1の可変表示構造のフィルタを装着した場合の発光波長特性を示す説明図である。図13、図14は、実施例1の可変表示構造における印刷部での透過発光の状態を示す説明図である。
【0027】
本実施例1では、図11に示すように、色光源2,3の発光する波長域を両光源の中間側の波長域を削るように狭くする特性のフィルタ4,5を設けることによる。それぞれの色光源2,3から発光する光がフィルタ4,5を通過することによって、あたかも、光源の発光特性が波長を狭くしたものとなる。このフィルタ4,5を介しての発光の特性を図12に示す。各色光源2,3の中間側を削ったような特性となる。(図11、図12の特性線500、600、200e、300e)
【0028】
このようにフィルタ4,5を介した光をカラーフィルタ10が通過させると、その発光特性は、図13,14のようになり、重ね印刷を上記説明した従来の複数回より減らしても、光吸収不足領域が生じない。(図13、図14の特性線200f、300f、200g、300g)
これは、光吸収不足領域が生じる要因である、印刷層側がわずかに光を透過させる両色光源の中間側の印刷部分の波長領域において、その部分での発光側の特性を削るようにフィルタ4,5が波長特性を狭くしているからである。
重ね印刷を上記説明した従来の複数回より減らせることは、印刷不良の低減、コストの低減になる。
【0029】
しかも、重ね印刷を複数回行う従来に比べ、全体の輝度を抑えてしまうものではないため、光源そのものよりもやや輝度は低下するが、従来よりも高い輝度を得ることができる。
【0030】
次に効果を説明する。実施例1の可変表示構造にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0031】
(1)透光性のあるシート10aに波長の異なる色光源2の光と色光源3の光を切り換えて投光させ、第1表示12と第2表示13を行わせる可変表示構造であって、色光源2の波長を透過させる第1印刷部分10bと、色光源3の波長を透過させる第2印刷部分10cと、前記第1表示と前記第2表示の重複する部分と重なる部分で、色光源2及び色光源3の光を抑制して透過させる第3印刷部分10dと、色光源2の波長と色光源3の波長を透過させない背景印刷部分10eと、を備え、色光源2と色光源3の少なくとも1つの光源の発光波長領域を狭くするフィルタ4,5を設けたため、印刷不良が少なくしつつ、吸収層からの光漏れが少なくできる。
【0032】
(2)フィルタ4,5は、色光源2と色光源3の中間波長側で発光波長領域の透過を抑制するものであるため、印刷部分の波長特性が光の吸収特性を不足させている領域において、光源側でその領域を抑制することによって、光の吸収が不足している領域を発生させないようにして、光源に光漏れによる線が出ないようにでき、また、複数回の重ね印刷の回数を低減して、印刷不良をなくすことができ、これらにより、より品質の高い表示を提供することができる。
【0033】
(他の構成例)
図15に示すのは、実施例1の可変表示構造におけるフィルタ4,5の他の例である。
図15に示す可変表示構造では、フィルタ4,5は、色光源2,3のそれぞれの発光部分を覆うように取り付けるキャップ形状である。
このように、フィルタ4,5は、色光源の発光部分と、カラーフィルタ10の間に設けるものであれば、どのようなものでもよく、このようにキャップ形状であってもよい。
【0034】
以上、本発明の可変表示構造を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
第1表示、第2表示の色は他の色であってもよい。
各印刷部分のシートへの印刷は、シルク印刷、凸版印刷、インクジェット印刷、熱転写印刷があり、いずれの印刷によるものでもよい。また、他の印刷によるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本願の可変表示構造は、スイッチ等のように、簡易的な表示が必要な部位への利用は容易である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1の可変表示構造の正面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】実施例1の可変表示構造の第1表示と第2表示を示す説明図である。
【図4】実施例1の光源発光波長特性を示す説明図である。
【図5】印刷層の光吸収特性を示す説明図である。
【図6】従来の可変表示構造における発光と透過、吸収の説明図である。
【図7】従来の可変表示構造における発光と透過、吸収の説明図である。
【図8】可変表示構造における重ね印刷時の発光と透過、吸収の説明図である。
【図9】可変表示構造における重ね印刷時の発光と透過、吸収の説明図である。
【図10】可変表示構造における重ね印刷の断面図である。
【図11】実施例1の可変表示構造のフィルタの光透過吸収特性を示す説明図である。
【図12】実施例1の可変表示構造のフィルタを装着した場合の発光波長特性を示す説明図である。
【図13】実施例1の可変表示構造における印刷部での透過発光の状態を示す説明図である。
【図14】実施例1の可変表示構造における印刷部での透過発光の状態を示す説明図である。
【図15】実施例1の可変表示構造におけるフィルタの他の例である。
【符号の説明】
【0037】
1 表示部
2 色光源
21 ハウジング
3 色光源
31 ハウジング
4 フィルタ
5 フィルタ
10 カラーフィルタ
10a シート
10b 第1印刷部分
10c 第2印刷部分
10d 第3印刷部分
10e 背景印刷部分
12 第1表示
13 第2表示

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性のあるシートに波長の異なる第1光源の光と第2光源の光を切り換えて投光させ、
第1表示と第2表示を行わせる可変表示構造であって、
第1光源の波長を透過させる第1印刷部分と、
第2光源の波長を透過させる第2印刷部分と、
前記第1表示と前記第2表示の重複する部分と重なる部分で、第1光源及び第2光源の光を抑制して透過させる第3印刷部と、
第1光源の波長と第2光源の波長を透過させない第4印刷部分と、
を備え、
前記第1光源と前記第2光源の少なくとも1つの光源の発光波長領域を狭くする光源用フィルタを設けた、
ことを特徴とする可変表示構造。
【請求項2】
請求項1に記載の可変表示構造において、
前記光源用フィルタは、
前記第1光源と前記第2光源の中間波長側で発光波長領域の透過を抑制するものである、
ことを特徴とする可変表示構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−256995(P2008−256995A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100039(P2007−100039)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】