説明

可搬式作業台の移動装置

【課題】移動時に転倒のおそれもなく安定状態で移動でき、荷重も十分に支承でき、全体重量も特に大幅に増加することなくキャスターの出し入れの取扱いも容易で、主脚を傾斜させることで接地する車輪を備えた既存の作業台にも簡単に実施でき、使い勝手のよい可搬式作業台の移動装置を得る。
【解決手段】梯子状の主脚間に長方形状の天板を掛け渡した可搬式作業台の移動装置であって、前記主脚1へ取付部13を着脱自在に取付け、この取付部13の上部に操作レバー14の一端を、下部にキャスター取付板15の一端をそれぞれ上下に回動自在に取付け、前記操作レバー14と、下部にキャスター21を取付けたキャスター取付板15とを連結アーム23で連結するとともにキャスター取付板15を上方に回動するように付勢する圧縮コイルバネ20を前記取付部13とキャスター取付板15との間に弾装した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設工事現場、建築物の天井や壁面などの内外装作業、電気配線工事等で使用する可搬式作業台の移動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
可搬式作業台には、作業台を組み立てたままの状態でも、また、折り畳んだ状態でも台車などを不要とし、一人でも容易に移動でき、運搬の作業性を向上できるものとして、例えば特許文献1に示すものがある。
【0003】
これは、図6に示すように上部に手摺支柱4を延設した一対の主脚1間に複数の踏桟2を適宜間隔で取付けて梯子枠3を形成し、この梯子枠3の一対を対向させ上端を相互に回動自在に軸着し、主脚1間の上部位置で梯子枠3間に踏板ユニット6を折り畳み自在に掛け渡し、手摺支柱4の上部に、一対の梯子枠3のそれぞれの外方に向けて突出する手摺枠8、9を折り畳み自在に取付けたものにおいて、前記主脚1の下部に移動用の車輪10を取付けたものである。
【0004】
そして、車輪10を使用して作業台を移動するには、一方の梯子枠3の下部を持ち上げて作業台全体を傾斜させ、他方の梯子枠3に取付けてある車輪10を接地させて移動する。
【0005】
ところで、広い作業スペースを確保するために、図7に示すように前記のような脚立形状の作業台11の少なくとも一対を用意し、この一対の作業台11の上部にそれぞれ配置される踏板ユニット6間に連結板12を着脱自在に掛け渡すものがある(例えば特許文献2参照)。
【0006】
さらに図示は省略するが、前記のように一対の作業台11間に連結板12を掛け渡したものを間隔をおいて平行に配置し、この間に連結板12と直行方向に別の天板を連結してさらに広いステージを形成する場合もある。
【0007】
このような作業台11と連結板12との組み合わせで構成する可搬式作業台は、作業現場で連結されて組み立てられ(ステージ組み)る。そして、作業終了後に隣接工区に移動させるには、作業台11と連結板12との連結を外し、両者をばらしたうえで作業台11については一方の主脚1を持ち上げ、他方の主脚1に取付けてある車輪10を接地させた状態で一台ずつ移動するか、あるいは全体を折り畳み、台車を使用して連結板12とともに運搬している。
【0008】
作業現場において、例えば隣接工区に移動する場合などは、移動距離が短く、また、隣接工区では直ちに再度使用するにもかかわらず、現在の作業工区で作業台を一旦折畳み、隣接工区に運搬後、ここで再度組立てるという行程を要して作業性がよくない。
【0009】
そこで、一方の主脚を持ち上げずにそのまま隣接工区に作業台を移動できる車輪10を取付けたものがある(例えば特許文献3参照)。
【0010】
これは、主脚の最下段の踏み桟を支承する下部踏み桟受けと、上方の踏み桟を支承する上部踏み桟受けとを縦フレームの上下にそれぞれ設け、前記縦フレームに主脚の最下端よりも下方に突出する移動車輪を設けたものであり、かかる移動装置を踏み桟に取付ける。
【0011】
そして、前記縦フレームは、下部踏み桟受けと上部踏み桟受けとの距離を調整可能なよう二重管構造として伸縮自在に形成されている。
【特許文献1】特開2005−273304号公報
【特許文献2】特開2002−188284号公報
【特許文献3】特許第3993842号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記特許文献3に開示の移動装置は、踏み桟に取付けるものであるため、移動装置の車輪および踏み桟を介して荷重を支えることになり、強度的に十分とはいえない。
【0013】
また、末広がり状に開いた主脚の内側に移動装置が配設されため、車輪の接地位置、すなわち荷重を支える点が主脚の位置より中に入ることとなり、作業台の転倒角が小さくなって不安定である。
【0014】
さらに、作業台の側には主脚の下部に延長用の伸縮脚が伸縮自在に取付けられて二重管構造の伸縮機構があるが、移動装置にも二重管構造による伸縮機構が備えられているため、全体として重量も大きくなり、また、伸縮操作にも作業台側と移動装置側との両方を必要とし手間を要して取扱いが容易ではない。
【0015】
本発明は、前記従来例の不都合を解消するものとして、移動時に転倒のおそれもなく安定状態で移動でき、荷重も十分に支承でき、全体重量も特に大幅に増加することなくキャスターの出し入れの取扱いも容易で、主脚を傾斜させることで接地する車輪を備えた既存の作業台にも簡単に実施でき、使い勝手のよい可搬式作業台の移動装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1記載の本発明は、梯子状の主脚間に長方形状の天板を掛け渡した可搬式作業台の移動装置であって、前記主脚へ取付部を着脱自在に取り付け、この取付部の上部に操作レバーの一端を、下部にキャスター取付板の一端をそれぞれ上下に回動自在に取り付け、前記操作レバーと、下部にキャスターを取付けたキャスター取付板とを連結アームで連結するとともにキャスター取付板を上方に回動するように付勢する圧縮コイルバネを前記取付部とキャスター取付板との間に弾装したことを要旨とするものである。
【0017】
請求項1記載の本発明によれば、必要時にのみ取付部により移動装置を主脚に取付けることができるから、不使用時に移動装置が邪魔にならず、使用態様に応じた使い勝手を向上できる。使用時には、主脚に取付けて、操作レバーを圧縮コイルバネの弾力に抗して回動するだけの操作でキャスターを接地でき、接地面から主脚を浮かせることができるから、梯子状の主脚から天板を外すなどの手間を要せずに組み立てたままの状態で可搬式作業台を移動できる。
【0018】
また、移動装置は必要最小限の部材で主脚に直接取付けられるから、キャスターにかかる荷重を主脚に直接伝達でき、強度的にも十分なものが確保できる。
【0019】
請求項2記載の本発明は、キャスター取付板に装着されたキャスターは、操作レバーの下方への回動で主脚よりも下方の接地位置に移動することを要旨とするものである。
【0020】
請求項2記載の本発明によれば、操作レバーを下方に押すだけで回動し、操作レバーの回動が連結アームを介してキャスター取付板に伝達されてキャスターが接地位置まで下降する。
【0021】
請求項3記載の本発明は、キャスターを接地位置で係止するストッパーを操作レバーに形成したことを要旨とするものである。
【0022】
請求項3記載の本発明によれば、キャスターが接地位置まで下降すれば、操作レバーはそれ以上の回動が阻止されるから、キャスターを接地位置に係止できる。
【発明の効果】
【0023】
以上述べたように本発明の可搬式作業台の移動装置は、各主脚にそれぞれキャスターを独立させて取付けたから、キャスターが梯子状の主脚の内側に入ることが無く、移動時に転倒のおそれもなく安定状態で移動できる。また、例えば梯子状の主脚間に天板を掛け渡した可搬式作業台をそのままの組立状態で移動する場合のように、必要時にのみ主脚に簡単に取付けられるから、不使用時にキャスターが邪魔になることがない。
【0024】
移動装置に従来のような二重管構造による伸縮機構を設けずにすむから全体重量も特に大幅に増加することなくキャスターの出し入れの取扱いもレバー操作でワンタッチ的におこなうことができ容易で使い勝手のよいものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面について本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の可搬式作業台の移動装置の実施形態を示す不使用時の側面図、図2は同上使用時の側面図で、本発明の移動装置が使用される可搬式作業台の構成は例えば図6、図7ついて既に説明したとおりであるから、ここでの詳細な説明は省略する。
【0026】
本発明の移動装置は、例えば図7に示すような、少なくとも一対の脚立形状の作業台11の上部にそれぞれ配置される踏板ユニット6間に連結板12を着脱自在に掛け渡したものに取付けられるものであり、主脚1の下部に延長脚5が取付けられている場合は、この延長脚5に取付けられるもので、主脚1の下部または延長脚5には、主脚1を傾けることで接地する移動用の車輪10が固定的に取付けてある。
【0027】
移動装置は、基本構成として主脚1へ着脱自在に取付けられる取付部13と、この取付部13の上部に一端が回動自在に軸着される操作レバー14と、前記取付部13の下部に一端が回動自在に軸着されるキャスター取付板15と、操作レバー14とキャスター取付板15とを連結する連結アーム23と、取付部13と操作レバー14との軸着部16とキャスター取付板15との間に弾装される圧縮コイルバネ20とで構成する。
【0028】
前記取付部13は、一例として図1、図2に示すように短尺なチャンネル状の取付部材13aと長尺なチャンネル状の取付部材13bとを背中合わせに結合したもので、短尺な取付部材13aの開口部を主脚1に嵌合し、ボルトなどで取付ける。
【0029】
この状態で長尺な取付部材13bが開口部が主脚1とは反対側に向いて主脚に取付けられる。
【0030】
この長尺な取付部材13bの上部に操作レバー14の一端を上下方向に回動自在に軸着する。操作レバー14は側面L字形のチャンネル部材で形成し、L字形の角部の近傍に切欠きによるストッパー14aを形成した。
【0031】
長尺な取付部材13bの下部はキャスター21が下降するときにその移動を妨げないように斜めの切欠き部22に形成した。
【0032】
この長尺な取付部材13bの下部にキャスター21のキャスター取付板15の一端を上下方向に回動自在に連結し軸着部18とする。
【0033】
そして、L字形の操作レバー14の角部とキャスター取付板15の上部とを連結アーム23で回動自在に連結し、操作レバー14との連結部を軸着部17a、キャスター取付板15との連結部を軸着部17bとする。
【0034】
さらに、一端を前記軸着部16に取付けた圧縮コイルバネ20の他端を前記軸着部17bと軸着部18との中間に結合し、これを軸着部19とする。これにより、この圧縮コイルバネ20の弾力によって操作レバー14とキャスター取付板15とは上方に引っ張られるように付勢される。
【0035】
次に動作について説明する。移動装置を使用しない場合は、主脚1に取付けておかない。使用時に主脚1に短尺な取付部材13aをはめ込んでボルトで固定する。この状態では圧縮コイルバネ20の弾力で図1に示すように操作レバー14とキャスター取付板15とが引上げられ、キャスター21は接地面から浮いた位置にある。
【0036】
この状態からキャスター21を使用して可搬式作業台を移動するには、操作レバー14を圧縮コイルバネ20の弾力に抗して下方に押せば、軸着部16を中心にして操作レバー14が下方に回動し、軸着部17aを介して連結アーム23が下方に押され、連結アーム23の回動が軸着部17bを介してキャスター取付板15に伝達され、キャスター取付板15も軸着部18を中心軸にして下方に回動してキャスター21が接地位置の方向に移動する。
【0037】
操作レバー14、連結アーム23およびキャスター取付板15の下降により圧縮コイルバネ20は付勢方向に反して伸張するが、軸着部16、17a、17bが一直線上に位置した後、図2に示すように軸着部16と軸着部17bとを結ぶ線上よりも内側(図1においては左側)に軸着部17aが位置する箇所すなわち接地位置まで連結アーム23および操作レバー14が回動すると、連結アーム23が操作レバー14に形成してあるストッパー14aに当接して操作レバー14のそれ以上の下方への回動が阻止され、操作レバー14、連結アーム23およびキャスター取付板15はこの接地位置に係止される。
【0038】
この接地位置では、操作レバー14、連結アーム23およびキャスター取付板15に対して圧縮コイルバネ20の圧縮力はなお作用するが、前記のように軸着部16と軸着部17bとを結ぶ線上よりも内側(図1においては左側)に軸着部17aが位置しているから、圧縮力によりキャスター取付板15に対してこれを引上げる方向に力が加わっても連結アーム23の途中が操作レバー14に形成したストッパー14aの箇所に係止して連結アーム23の引上げ方向への移動が阻止される。
【0039】
これによりキャスター21は接地位置に固定される。よって、全ての主脚1に前記のようにして移動装置を取付けたならば、梯子状の作業台に天板を取付けた使用状態のままで可搬式作業台の全体を容易に移動できる。
【0040】
移動装置を外すには、前記と反対の操作で操作レバー14を引上げれば、キャスター21が接地位置から浮上するから、この状態にして取付部材13aを主脚1から外せばよい。
【0041】
移動装置を主脚1に取付けるための取付部13の構成としては、前記した構造に限定されるものではなく、図3〜図5に示すワンタッチ式の取付金具24を使用することもできる。
【0042】
これは平面コ字形の金具本体24aの一端に操作レバー24bを回動自在に取付け、この操作レバー24bに係止片24cを取付けたものである。
【0043】
この取付金具24を使用して移動装置を主脚1に取付けるには、係止片24cを外側に開いた状態で図4に示すように金具本体24aを主脚1に対して側部から嵌めこみ、次いで、図5に示すように操作レバー24bを回動して係止片24cで金具本体24aの開口を閉塞する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の可搬式作業台の移動装置の実施形態を示す正面図である非接地状態の側面図である。
【図2】本発明の可搬式作業台の移動装置の実施形態を示す接地状態の側面図である。
【図3】本発明の可搬式作業台の移動装置の実施形態を示す取付部の他の例を示す側面図である。
【図4】本発明の可搬式作業台の移動装置の実施形態を示す取付部の他の例を示す固定前の平面図である。
【図5】本発明の可搬式作業台の移動装置の実施形態を示す取付部の他の例を示す固定状態の平面図である。
【図6】脚立状の可搬式作業台の斜視図である。
【図7】天板を連結した可搬式作業台の斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
1 主脚 2 踏桟
3 梯子枠 4 手摺支柱
5 延長脚 6 踏板ユニット
8 手摺枠
9 手摺枠 10 車輪
11 作業台 12 連結板
13 取付部 13a 短尺な取付部材
13b 長尺な取付部材 14 操作レバー
14a ストッパー 15 キャスター取付板
16 軸着部 17a 17b 軸着部
18 軸着部 19 軸着部
20 圧縮コイルバネ 21 キャスター
22 切欠き部 23 連結アーム
24 取付金具 24a 金具本体
24b 操作レバー 24c 係止片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
梯子状の主脚間に長方形状の天板を掛け渡した可搬式作業台の移動装置であって、前記主脚へ取付部を着脱自在に取付け、この取付部の上部に操作レバーの一端を、下部にキャスター取付板の一端をそれぞれ上下に回動自在に取付け、前記操作レバーと、下部にキャスターを取付けたキャスター取付板とを連結アームで連結するとともにキャスター取付板を上方に回動するように付勢する圧縮コイルバネを前記取付部とキャスター取付板との間に弾装したことを特徴とする可搬式作業台の移動装置。
【請求項2】
キャスター取付板に装着されたキャスターは、操作レバーの下方への回動で主脚よりも下方の接地位置に移動する請求項1記載の可搬式作業台の移動装置。
【請求項3】
キャスターを接地位置で係止するストッパーを操作レバーに形成した請求項1または請求項2に記載の可搬式作業台の移動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−270437(P2010−270437A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120561(P2009−120561)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(597144484)ジーオーピー株式会社 (50)
【Fターム(参考)】