説明

可撓性のポット苗箱の積載方法及びその運搬具

【課題】
ポット苗の育苗地から1つの運搬具に複数のポット苗箱を内面に湾曲させて積載可能としてその状態で運搬車輌に搭載し、さらに運搬車輌に複数段の運搬具の段積を可能としているので、育苗地から田植圃場までの一度の運搬で数多くのポット苗箱を搬送することが出来ると共に、育成した苗を内側に湾曲させ苗同士を密着させることで走行時の走行風を防止する可撓性のポット苗箱の積載方法とその運搬具を提供する。
【解決手段】
可撓性のポット苗箱をU形状の湾曲として、L字構成となった自立面と垂直板の自立面にはU形状の湾曲面を設置し、垂直板にはポット苗箱の短辺の縁部が接触するように自立させる。垂直面板にはポット苗箱の裏面と略接触する面となる背面板を、また背面板にはポット苗箱の裏面から、苗室の間を遮る規制板を設けてポット苗箱の水平方向の移動と、苗箱自体の広がりを防止するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、稲の種子を苗箱に播種して水田に移植するまでに育苗した可撓性のポット苗箱の搬送装置及び運搬具への積載方法と、その運搬具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
可撓性のポット苗箱として意匠登録第0507139号公報(特許文献1)や特開平10−136794号公報(特許文献2)が既に知られ実用化されている。これらのポット苗箱は湾曲自在の可撓性に優れた素材が用いられ、特に長手方向を湾曲させるのに優れているものである。従来からいくつかこの可撓性のポット苗を育苗場所から植えつける圃場まで運搬するための運搬具や運搬棚が発明されている。
【0003】
特開2004−194630号公報(特許文献3)などは、運搬車輌に運搬棚を搭載し、一度に多くのポット苗箱を搭載して運搬しようとするものであり、また特開2002−315410号公報(特許文献4)では、棒材を組み合わせてカゴ状に形成し、ポット苗箱を平面状に並列に複数配置できる苗箱運搬カゴであって、しかもこの運搬カゴが積み重ねられるものも既に公知である。
【0004】
そして、特開平9−168320号公報(特許文献5)では、並列に配した二本のフレームの側面にアームを植設して、そのアームを上方に向けて掛止してそのアーム間又はアームと支柱の間にポット苗箱を湾曲させて挿入して運搬する運搬具も公知となっている。
【0005】
【特許文献1】意匠登録第0507139号公報
【特許文献2】特開平10−136794号公報
【特許文献3】特開2004−194630号公報
【特許文献4】特開2002−315410号公報
【特許文献5】特開平9−168320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3におけるポット苗運搬棚においては、運搬車輌に前もって外枠、内枠等からなる運搬棚を構成するフレームと、そのフレームの内部に稲苗棚を角度をもって備えて、その稲苗棚にポット苗箱をそれぞれ搭載して運搬する構成となっている。稲苗棚の数だけポット苗箱の運搬を可能とするため数多くの苗箱の運搬を可能とするが、運搬車輌に稲苗棚を搭載するためのフレームを設置する必要があることと、稲苗棚には平面状にポット苗箱を搭載するため、運搬車輌の走行中にポット苗に走行風が当り、苗自体を傷めてしまう欠点が発生するものである。
【0007】
特許文献4の苗箱運搬カゴにおいては、育苗地から運搬車輌までの運搬を複数枚を一度に運搬を可能とし、運搬車両にも運搬カゴに搭載した状態でしかも段済み搭載を可能とするが、安定性にかける欠点を有すると共に、運搬カゴに平面状に苗箱が差し込まれているので、運搬車輌の走行時の走行風を苗自体が受けるので、苗の品質の低下を招いてしまう事となる。
【0008】
また、特許文献5に記載のポット苗箱の運搬具においては、植生されているポット苗箱を内側に湾曲させてアーム間又はアームと支柱の間に挟みこんだ状態でセットできるように構成されている。植生されたポット苗箱を内側に湾曲させることによって運搬車輌に搭載し走行した場合の走行風の影響を受けにくくなる利点はあるが、苗箱の底面が下方向を向いて差し込まれているだけであるので、垂直方向から加わる力には弱く、苗箱が変形しないようそれぞれの苗箱同士が触れ合わない間隔を取る必要があるので、運搬具自体の構造が苗箱より大きくなる必要性がある。このことは植生されたポット苗箱をセットした運搬具を一人で育苗地から運搬車輌までの間を運搬し、運搬車輌に搭載することは困難であって、またポット苗箱を移植地に下ろした後の空の運搬具を持ち帰る場合の荷台の専有率には変化は無く、または使用しないときの保管場所の面積を多く必要とするものであり、この運搬具に苗箱を搭載しないとき又は保管時の取扱姓が良好とは言い難いものである。
【0009】
そこで、本発明においては、ポット苗の育苗地から1つの運搬具に複数のポット苗箱を内面に湾曲させて積載可能としてその状態で運搬車輌に搭載が出来ると共に、ポット苗箱の湾曲させた面を底面としているので、ポット苗箱自体が上方からの垂直方向に加わる力に対して強度をもって構成されているため、運搬車輌に複数段の運搬具の段積を可能としているので、育苗地から田植圃場までの一度の運搬で数多くのポット苗箱を搬送することが出来ると共に、育成した苗を内側に湾曲させ苗同士を密着させることで運搬車輌の走行時の走行風を苗自体が受けることを防止できる可撓性のポット苗箱の積載方法とその運搬具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は請求項1ないし請求項11に係る可撓性ポット苗箱の積載方法及びその運搬具を提案するものである。
【0011】
即ち、請求項1記載の可撓性のポット苗箱の運搬装置への積載方法は、稲の種子を播種して水田に移植するまでに育苗した可撓性のポット苗箱を、育苗場所から搬送する搬送手段への積載方法であって、可撓性のポット苗箱の苗が生長した育成面の表面を内面方向に湾曲させてU形状として苗同士を密着させ、U形状の湾曲面となった苗箱の一方の側面を搬送手段に自立させて積載することを特徴とするものである。
【0012】
請求項2記載の可撓性のポット苗箱の運搬具への積載方法は、稲の種子を播種して水田に移植するまでに育苗した可撓性のポット苗箱を、育苗場所から搬送する運搬具への積載方法であって、可撓性のポット苗箱の苗が生長した育成面の表面を内面方向に湾曲させてU形状として苗同士を密着させ、U形状の湾曲面となった苗箱の一方の側面を運搬具に自立させて積載することを特徴とするものである。
【0013】
請求項3記載の可撓性のポット苗箱の運搬具は、稲の種子を播種して水田に移植するまでに育苗した複数の苗室を備える可撓性のポット苗箱を、育苗場所から搬送する運搬具であって、可撓性のポット苗箱の苗が生長した育成面の表面を内面方向に湾曲させてU形状として苗同士を密着させ、U形状の湾曲面となった苗箱の一方の側面を自立するように運搬具に装着することを特徴とするものである。
【0014】
請求項4記載の可撓性のポット苗箱の運搬具は、請求項3記載の可撓性のポット苗箱の運搬具において、ポット苗箱のU形状の湾曲面となった一方の側面と接する水平方向の自立面と、垂直方向の苗箱両端に略接するように設けられた垂直板からなるL字構成であることを特徴とするものである。
【0015】
請求項5記載の可撓性のポット苗箱の運搬具は、請求項3又は請求項4記載の可撓性のポット苗箱の運搬具において、U形状に湾曲させたポット苗箱の両端と略接する垂直板には、ポット苗箱の裏面と略接触する面となる背面板を設けて、ポット苗箱の開帳を防止するように構成したことを特徴とするものである。
【0016】
請求項6記載の可撓性のポット苗箱の運搬具は、請求項3、4又は請求項5記載の可撓性のポット苗箱の運搬具において、背面板には、ポット苗箱の裏面から、苗室の間を遮る規制板を設けてポット苗箱と運搬具との水平方向の移動を規制したことを特徴とするものである。
【0017】
請求項7記載の可撓性のポット苗箱の運搬具は、請求項3、4、5又は請求項6記載の可撓性のポット苗箱の運搬具において、運搬具の垂直板には、複数の背面板と規制板を有して、複数のポット苗箱を並列に積載可能であることを特徴とするものである。
【0018】
請求項8記載の可撓性のポット苗箱の運搬具は、請求項3、4、5、6又は請求項7記載の可撓性のポット苗箱の運搬具において、垂直板の上端には、苗箱運搬者が運搬具を握る取手部を設けたことを特徴とするものである。
【0019】
請求項9記載の可撓性のポット苗箱の運搬具は、請求項3、4、5、6、7又は請求項8記載の可撓性のポット苗箱の運搬具において、ポット苗箱のU形状の湾曲面となった一方の側面と接する水平方向の自立面は、それぞれのポット苗箱のU形状の湾曲面を覆う範囲の長さを有することを特徴とするものである。
【0020】
請求項10記載の可撓性のポット苗箱の運搬具は、請求項3、4、5、6、7、8又は請求項9記載の可撓性のポット苗箱の運搬具において、垂直板はポット苗箱の全高より短く構成され、水田に移植するまでに育苗した苗を備えたポット苗箱の運搬具を上下方向に重ねた状態で、ポット苗箱自体が上方の重量を受け止めるように構成したことを特徴とするものである。
【0021】
請求項11記載の可撓性のポット苗箱の運搬具は、請求項項3、4、5、6、7、8、9又は請求項10記載の可撓性のポット苗箱の運搬具において、水田に移植するまでに育苗した苗を備えたポット苗箱を搭載した運搬具を複数段積み重ねた状態において、その積み重ねたそれぞれの運搬具の前後左右方向への移動を規制する固定材を、積み重ねた運搬具の垂直板又は垂直板に設けられた取手部のどちらかに固定できるように構成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る可撓性のポット苗箱の積載方法及びその運搬具においては、可撓性のポット苗箱を育成面の表面を内面方向に湾曲させてU形状として苗同士を密着させて、湾曲面となった苗箱の一方の側面を下向きに設置し自立させた状態で運搬手段又は運搬具に積載する方法によって、育苗場所から植付場所までの間に運搬手段が走行することで発生する走行風を苗自体が受けることなく、稲の弱体化が防止できる効果を有するものである。
【0023】
また、育苗地から運搬具に可撓性のポット苗箱を育成面の表面を内面方向に湾曲させてU形状として苗同士を密着させて、湾曲面となった苗箱の一方の側面を下向きに設置し自立させた状態で運搬具に積載を行うが、ポット苗箱自体が平板状に戻ろうとする反発力を利用して運搬具に差し込んで積載しているので、装着と脱着が容易に行えると共に、外力を加えなければポット苗箱が外れ落ちる可能性が少ない構成となっている。
【0024】
尚、この運搬具には複数の可撓性のポット苗箱を取り付けることが可能であって、その状態で運搬手段若しくは運搬車輌に搭載が可能であるので、苗箱の運搬時間の短縮が可能となるばかりか、ポット苗箱を一度運搬具に搭載してしまえば、その状態を植え付ける圃場に到着してポット苗箱を運搬具から取り外すまでその運搬時の形状を変えることが無いので、ポット苗箱の苗室から苗自体が飛び出す現象が減少する効果も有する。
【0025】
特に、運搬具に苗箱を湾曲させ搭載し、苗箱自体に垂直方向からの力に対して強度を持たせ、運搬具を苗箱の上に積み重ねて段済みを可能とした構成としているので、一度の運搬手段、運搬車輌の移動で、可撓性のポット苗箱を数多く運ぶことが出来る効果を備えるものであると共に、U形状となったポット苗箱の湾曲面が上方に重なる運搬具の設置面となるため、この湾曲面は広く運搬具の底面を支えしかも凹凸が無いため安定して上方の運搬具を重ねることが可能となる効果も有している。
【0026】
さらに、ポット苗箱を植付ける圃場で運搬具から下ろした後、または運搬具を使用しない期間においては、運搬具のそれぞれは前後方向に積み重ねて収納が出来るため、保管場所の面積を必要としない利点も備えているものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1には育苗地における可撓性のポット苗箱の育苗状態を示す斜視図。図2には可撓性のポット苗箱をU形状に湾曲させた状態を示す平面図。図3には可撓性のポット苗箱をU形状に湾曲させて、運搬手段又は運搬具に積載した状態を示す斜視図。図4には本発明の実施の形態を示す可撓性のポット苗箱の運搬具の斜視図。図5には本発明の実施の形態を示す可撓性のポット苗箱の運搬具の平面図。図6には、運搬具にポット苗箱を積載する状態を示した斜視図。図7にはポット苗箱を運搬具に5列積載した状態を示した斜視図。図8にはポット苗箱を積載した運搬具を作業者が保持した状態を示す斜視図。図9にはポット苗箱を積載した運搬具を手押し式運搬車に搭載した状態をしめす斜視略図。図10にはポット苗箱を積載した運搬具を段積にした状態を示す斜視略図。図11にはポット苗箱を積載した運搬具を段積にして、運搬車輌に搭載した状態を示す斜視略図。図12には育苗地から運搬車輌までのポット苗箱の移動の状態を示す略図。図13には運搬具の収納の状態を示した斜視略図である。
【0028】
本発明に係る可撓性のポット苗箱の積載方法及びその運搬具は、育苗地2にてポット苗3が5葉から6葉と成苗と呼ばれるまで成長し、水田に移植可能な状態のポット苗3を植生したポット苗箱1の積載方法及びその運搬具に関するものである。
【0029】
図1のように、ポット苗箱1は複数の苗室4を有してその苗室4内にはポット苗3が生育しているものである。このポット苗箱1は縁部A5の辺方向の可撓性に優れ、縁部A5をU形状に湾曲させることは容易であって、ポット苗箱1のポット苗3が生育している育成面6を内側になるようにU形状に湾曲させ、ポット苗3同士を密着させるものである(図2)。
【0030】
そして図3に示すように、U形状の湾曲面となったポット苗箱1の縁部A5の一方の側面を下向きにして、搬送手段の平面若しくは運搬具の平面に密着させるように積載するものである。尚、ポット苗箱1の縁部B7の両方の側面が搬送手段若しくは運搬具の平面に対して角度90度となる垂直面に接しているとより安定して積載が可能になるほか、U形状に湾曲させたポット苗箱1を並列に複数並べるときの基準面となる。
【0031】
U形状に湾曲させたポット苗箱1は、U形状から平板状に戻ろうとする反発力が加わるので、運搬手段及び運搬具に積載した場合にはU形状の直線部分の苗室4の裏面を両サイドから押さえるとポット苗箱1が開かなくて良い。
【0032】
ポット苗箱1はポット苗3が生育する生育面6が内側に向く方向で縁部A5をU形状の湾曲面として、ポット苗3のそれぞれが密着するように重なり合わせることによって、育苗地2から植付圃場までの輸送手段となる車輌等の荷台に搭載した場合の走行風をポット苗3が直接受けることがなくなるので、稲の葉同士が常に擦れ合うことで発生する稲の弱体化を防止できるものである。また、縁部A5のU形状の湾曲面となった一方の側面を底面として、搬送手段又は運搬具の平面に自立させているため、ポット苗箱1自体が垂直方向から加わる荷重を受けても変形しないので、ポット苗箱1を段積しても、下方のポット苗箱1自体が上方のポット苗3を備えるポット苗箱1の重量を支えることができると共に、苗箱のU形状となった段差の無い広い平面で、上方のポット苗箱1を受けることが出来るのため、安定して複数の段積を行うことが可能となる利点も有している。
【0033】
図4の8は可撓性のポット苗箱の運搬具である。この運搬具8は水平方向の自立面9と自立面9と約90度の角度をもった垂直板10からなるL字構成であることを特徴としている。垂直板10には、自立面9方向に向かって複数の背面板11が略等間隔で縦方向に備えている。この背面板11は上端が垂直板10と同等の高さで、下端は自立面9と接触する長さでしかも自立面9と接合されているとよい。また、背面板11の先端には垂直板10と平行面となるように規制板12が取り付けられている。この規制板12も縦方向に向かって細長に取り付けられており、その上端は垂直板10と同等の高さで、下端は自立面9と接しない距離をもって備えられている。
【0034】
さらに、垂直板10の上端には自立面9と対向する方向に取手部13が垂直板10の略全長に渡り設けられている。この取手部13は角パイプやC形鋼と呼ばれる鋼材であるとよく、この取手部13の両端には上方から棒状の固定材が差し込める大きさの貫通穴14が取手部13を貫いて設けられている。
【0035】
垂直板10には、背面板11同士間の中央を基準として横方向に背面板11に至らない範囲に、そして縦方向では取手部13の略下面から自立面9に至らない範囲で開口している開口面A15を備える。この開口面A15には、運搬具8を使用する運搬者がこの開口部A15に手又は指を通し、取手部13を握り締めて安定して運搬具8を保持する目的と、運搬具8自体の重量を軽量化する目的で備えられているものである。
【0036】
さらに、自立面9の平面方向の端部の範囲は、図6のようにポット苗箱1を湾曲させて運搬具に積載させた場合にU形状の湾曲面の縁部A5を覆う範囲であるとよい。また、ポット苗箱1の湾曲面の略中心に位置するように開口面B16を設けてもよく、この開口面B16によって運搬具8の重量をより軽くすることが可能である。
【0037】
図6のように、ポット苗箱1の育苗面6が内側を向くように縁部A5をU形状に湾曲させ、その湾曲面の一方の側面を下側に向け、ポット苗箱1の両側の縁部B7の端側から2列目の苗室4の底面が背面板11に接触するように、また両側の縁部B7の端側から2列目と3列目の苗室4に挟まれた空間に規制板12が差し込まれるように、運搬具8の上方からポット苗箱1を垂直に差し込むか、縁部A5のU形状の湾曲を一時的に多く曲げて自立面9の端部から水平に入れ込んで作業者が手を放すことでU形状と成って、背面板11には苗室4の底面が密着し、そして規制板12が苗室4に挟まれた空間に入り込んでポット苗箱1の前後左右の移動を固定するものである。
【0038】
本発明の実施例として図4、6のように、湾曲させた5枚のポット苗箱1を並列に5列積載できるようになっている。通常ポット苗箱を運搬する車輌として軽トラック、小型トラックが多く使用されているため、それらのトラックの荷台幅と、苗箱の寸法を検討すると5列の運搬具が良好である。また、背面板11と規制板12の取り付けにおいて、運搬具8の両端の規制板12は背面板11との形状がL形状であるが、その他の背面板11と規制板12との取り付け形状はT形状となっている。運搬具8の両端の背面板11と規制板12の取り付け形状はT形状であってもよいが、運搬具8のその全長を短く、しかも安全性を考慮してL形状としたものである。
【0039】
図7は、運搬具8にポット苗箱1を5列全て積載した状態を表す図であって、作業者21は図8のように開口面A15に指又は手を通し、取手部13を握り運搬具8を持ち上げ移動させるものである。
【0040】
図9では、育苗地2から運搬車輌(トラック等)まで、若しくは育苗地2から近い水田までポット苗箱を運搬する様子を示したものである。育苗地2で作業者21がポット苗箱1を運搬具8に積載し、それを手押し式運搬車17に複数個搭載して運搬具8を移動している。手押し式運搬車17として、通常は車輪18が一輪若しくは二輪の手押し式運搬車17が代表されるが、これらの手押し式運搬車17にはポット苗箱1を積載した状態で運搬具8を3個から4個搭載することが出来るため、手押し式運搬車であっても一度に15枚から20枚ほどのポット苗箱1を運搬することが可能である。
【0041】
図10には、ポット苗箱1を積載した運搬具8を上下方向に段積にした状態を示している。運搬具8の垂直板10と取手部13のその高さは、ポット苗箱1を湾曲させて運搬具8に積載させた場合の縁部B7と同じ高さ又はそれより低くなるように構成されている。
【0042】
運搬具8を複数段積み重ねた状態で棒状の固定材19を、取手部13に設けられているそれぞれの貫通穴14に通すことによって積み重ねられた上方の運搬具8の前後左右の移動を固定し、安定して数段積み重ねることができる。さらに縁部B7の辺長より垂直板10の高さが短く構成されているので、運搬具8の自立面9の底がポット苗箱1の縁部A5の湾曲面と密着して、上段のポット苗箱と運搬具の垂直に加わる重量を苗箱自体で受け止めると共に、U形状面の広い面積で上方の自立面9の底を受け止めるため安定感が増しているものである。
【0043】
図11では、運搬車輌20に運搬具8を複数列、複数段搭載した状態を例示したものである。そして運搬具8を3段に積み重ねて棒状の固定材19を上方からそれぞれの運搬具8の貫通穴14に差込み、積み重ねた上方の運搬具8の前後左右の移動を固定している。
【0044】
運搬車輌20として軽トラックの荷台にこの運搬具8を積み重ねた場合、運搬具8を6列に並べ、そして3段積にすることによって、ポット苗箱1を一度に運搬車輌20に搭載できる個数は90枚となり、ポット苗箱を効率よく運搬することが可能である。
【0045】
図12では、育苗地2から運搬車輌20までポット苗箱1を運搬する形態を示したものであって、作業者21は育苗地2内若しくはその付近に空の運搬具8を置き、育苗地2から取り上げたポット苗箱1を運搬具8に積載する。育苗地2が広く運搬具8を直接運搬車輌20に搭載するのに距離がある場合などは、手押し式運搬車17(一輪車)に一時的にポット苗箱1を積載した運搬具8を複数搭載して運搬車輌20まで搬送することで、作業者21は手間をかけずに運搬具8を効率的に運搬車輌20に搭載することが出来る。
【0046】
図13に示す運搬具8は、田植を行う圃場で運搬具8からポット苗箱1を下ろして運搬具8だけを運搬車輌20に搭載した場合と、運搬具8を使用しない場合の収納状態を表したものである。運搬具8の自立面9の表面に重ね合わせる運搬具8の自立面9の裏面が、そして規制板12には重ね合わせる運搬具8の取手部13が密着するように重ね合わせることによって、運搬具8を数多く保管収納しなくてはならない場合であっても、取手部13と背面板11と規制板12の厚みで重ね合わせることが可能であるので、収納する面積も少なくなり、取扱性にも優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】育苗地における可撓性のポット苗箱の育苗状態を示す斜視図である。
【図2】可撓性のポット苗箱をU形状に湾曲させた状態を示す平面図である。
【図3】可撓性のポット苗箱をU形状に湾曲させて運搬手段又は運搬具に積載した状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態を示す可撓性のポット苗箱の運搬具の斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態を示す可撓性のポット苗箱の運搬具の平面図である。
【図6】運搬具にポット苗箱を積載する状態を示した斜視図である。
【図7】ポット苗箱を運搬具に5列積載した状態を示した斜視図である。
【図8】ポット苗箱を積載した運搬具を作業者が保持した状態を示す斜視図である。
【図9】ポット苗箱を積載した運搬具を手押し式運搬車に搭載した状態をしめす斜視略図である。
【図10】ポット苗箱を積載した運搬具を段積にした状態を示す斜視略図である。
【図11】ポット苗箱を積載した運搬具を段積にして、運搬車輌に搭載した状態を示す斜視略図である。
【図12】育苗地から運搬車輌までのポット苗箱の移動の状態を示す略図である。
【図13】運搬具の収納の状態を示した斜視略図である。
【符号の説明】
【0048】
1 ポット苗箱
2 育苗地
3 ポット苗
4 苗室
5 縁部A
6 育成面
7 縁部B
8 運搬具
9 自立面
10 垂直板
11 背面板
12 規制板
13 取手部
14 貫通穴
15 開口面A
16 開口面B
17 手押し式運搬車
18 車輪
19 固定材
20 運搬車輌
21 作業者


【特許請求の範囲】
【請求項1】
稲の種子を播種して水田に移植するまでに育苗した可撓性のポット苗箱を、育苗場所から搬送する搬送手段への積載方法であって、可撓性のポット苗箱の苗が生長した育成面の表面を内面方向に湾曲させてU形状として苗同士を密着させ、U形状の湾曲面となった苗箱の一方の側面を搬送手段に自立させて積載することを特徴とする、可撓性のポット苗箱の運搬装置への積載方法。
【請求項2】
稲の種子を播種して水田に移植するまでに育苗した可撓性のポット苗箱を、育苗場所から搬送する運搬具への積載方法であって、可撓性のポット苗箱の苗が生長した育成面の表面を内面方向に湾曲させてU形状として苗同士を密着させ、U形状の湾曲面となった苗箱の一方の側面を運搬具に自立させて積載することを特徴とする、可撓性のポット苗箱の運搬具への積載方法。
【請求項3】
稲の種子を播種して水田に移植するまでに育苗した複数の苗室を備える可撓性のポット苗箱を、育苗場所から搬送する運搬具であって、可撓性のポット苗箱の苗が生長した育成面の表面を内面方向に湾曲させてU形状として苗同士を密着させ、U形状の湾曲面となった苗箱の一方の側面を自立するように運搬具に装着することを特徴とする、可撓性のポット苗箱の運搬具。
【請求項4】
可撓性のポット苗箱の運搬具は、ポット苗箱のU形状の湾曲面となった一方の側面と接する水平方向の自立面と、垂直方向の苗箱両端に略接するように設けられた垂直板からなるL字構成であることを特徴とする、請求項3記載の可撓性のポット苗箱の運搬具。
【請求項5】
U形状に湾曲させたポット苗箱の両端と略接する垂直板には、ポット苗箱の裏面と略接触する面となる背面板を設けて、ポット苗箱の開帳を防止するように構成したことを特徴とする、請求項3又は請求項4記載の可撓性のポット苗箱の運搬具。
【請求項6】
背面板には、ポット苗箱の裏面から、苗室の間を遮る規制板を設けてポット苗箱と運搬具との水平方向の移動を規制したことを特徴とする、請求項3、4又は請求項5記載の可撓性のポット苗箱の運搬具。
【請求項7】
運搬具の垂直板には、複数の背面板と規制板を有して、複数のポット苗箱を並列に積載可能であることを特徴とする、請求項3、4、5又は請求項6記載の可撓性のポット苗箱の運搬具。
【請求項8】
垂直板の上端には、苗箱運搬者が運搬具を握る取手部を設けたことを特徴とする請求項3、4、5、6又は請求項7記載の可撓性のポット苗箱の運搬具。
【請求項9】
ポット苗箱のU形状の湾曲面となった一方の側面と接する水平方向の自立面は、それぞれのポット苗箱のU形状の湾曲面を覆う範囲の長さを有することを特徴とする、請求項3、4、5、6、7又は請求項8記載の可撓性のポット苗箱の運搬具。
【請求項10】
垂直板はポット苗箱の全高より短く構成され、水田に移植するまでに育苗した苗を備えたポット苗箱の運搬具を上下方向に重ねた状態で、ポット苗箱自体が上方の重量を受け止めるように構成したことを特徴とする、請求項3、4、5、6、7、8又は請求項9記載の可撓性のポット苗箱の運搬具。
【請求項11】
水田に移植するまでに育苗した苗を備えたポット苗箱を搭載した運搬具を複数段積み重ねた状態において、その積み重ねたそれぞれの運搬具の前後左右方向への移動を規制する固定材を、積み重ねた運搬具の垂直板又は垂直板に設けられた取手部のどちらかに固定できるように構成されたことを特徴とする、請求項項3、4、5、6、7、8、9又は請求項10記載の可撓性のポット苗箱の運搬具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−6760(P2007−6760A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−190823(P2005−190823)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000001465)金子農機株式会社 (53)
【Fターム(参考)】