説明

可撓性内視鏡の挿入部とその製造方法

【課題】マルチルーメンチューブの長さが長くても内蔵物の挿通配置の組み付けを容易に行うことができ、コスト的にディスポーザブル化も可能となる可撓性内視鏡の挿入部とその製造方法を提供すること。
【解決手段】マルチルーメンチューブ10を押し出し成型で形成する際に、予め内蔵物19,20,22,23を貫通孔14,15の位置に配置して、マルチルーメンチューブ10が形成されるのと同時に内蔵物19,20,22,23が貫通孔14,15内に配置されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、いわゆるマルチルーメンチューブを用いた可撓性内視鏡の挿入部とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
可撓性内視鏡の挿入部としては、単純な円筒状の可撓管内に全ての内蔵物を束ねて挿通配置する構成が一般的であるが、内蔵物が互いに干渉するので、屈曲操作等が繰り返されると内蔵物が早期に破損する場合がある。
【0003】
そこで、可撓管として、軸線と平行方向に複数の貫通孔(ルーメン)が形成された柔軟な材料からなるマルチルーメンチューブを用いて、各貫通孔内に内蔵物を個別に挿通配置した構成の可撓性内視鏡の挿入部が知られている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平9−299314
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、内視鏡の挿入部は機種によっては例えば長さが2mに達するものもあり、製造組み立て時に長いマルチルーメンチューブの貫通孔内に細長くて腰の弱い内蔵物を挿通する作業は極めて困難であり、作業に要する時間と手間が大変であるだけでなく、組み立て作業時に内蔵物を破損してしまう恐れもある。
【0005】
そこで本発明は、マルチルーメンチューブの長さが長くても内蔵物の挿通配置の組み付けを容易に行うことができ、コスト的にディスポーザブル化も可能となる可撓性内視鏡の挿入部とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の可撓性内視鏡の挿入部は、軸線と平行方向に複数の貫通孔が形成された柔軟な材料からなるマルチルーメンチューブの少なくとも一つの貫通孔内の全長にわたって、可撓性を有する内蔵物が挿通配置されると共に、対物光学系等を内蔵する先端部本体がマルチルーメンチューブの先端に取り付けられた構成を有する可撓性内視鏡の挿入部において、内蔵物が、マルチルーメンチューブを成形する際に貫通孔の位置に配置されて、マルチルーメンチューブの形成と同時に貫通孔内に配置されたものであり、内蔵物が、貫通孔に固定された状態の可撓性の筒状体と、その筒状体の内側で軸線方向に進退自在な可撓性部材とを含んでいてもよく、先端部本体がマルチルーメンチューブの先端部分に連結固着されていてもよい。
【0007】
また、本発明の可撓性内視鏡の挿入部は、軸線と平行方向に複数の貫通孔が形成された柔軟な材料からなるマルチルーメンチューブの少なくとも一つの貫通孔内の全長にわたって、可撓性を有する内蔵物が挿通配置されると共に、対物光学系等を内蔵する先端部本体がマルチルーメンチューブの先端に取り付けられた構成を有する可撓性内視鏡の挿入部において、内蔵物が、マルチルーメンチューブを成形する際に貫通孔の位置に配置されると共に、先端部本体を接続するための接続金具が、マルチルーメンチューブを成形する際にマルチルーメンチューブの先端部分に位置するように配置されて、内蔵物がマルチルーメンチューブの形成と同時に貫通孔内に配置され、接続金具がマルチルーメンチューブの形成と同時にマルチルーメンチューブの先端に連結されたものであり、内蔵物が、マルチルーメンチューブに固定された状態の可撓性の筒状体と、その筒状体の内側で軸線方向に進退自在な可撓性部材とを含んでいてもよい。
【0008】
なお、本発明の可撓性内視鏡の挿入部において、内蔵物の一つが、複数の信号線を束ねた信号線束を可撓性チューブ内に軸線方向に進退自在に挿通配置した構成の信号ケーブルであって、可撓性チューブは貫通孔に固定され、その内側で信号線束が軸線方向に進退自在であってもよく、その場合、信号ケーブルの先端に固体撮像装置が接続されていてもよく、或いは、信号ケーブルの先端に固体撮像装置と発光素子とが接続されていてもよい。
【0009】
また、内蔵物の一つが、密着巻きコイルとその密着巻きコイル内に軸線方向に進退自在に挿通配置された操作ワイヤであって、密着巻きコイルは貫通孔に固定され、その内側で操作ワイヤが軸線方向に進退自在であってもよく、その場合、操作ワイヤの先端に、操作ワイヤより径が大きくて密着巻きコイル内に引き込まれないストッパ部材が取り付けられていてもよい。
【0010】
また、内蔵物の一つが可撓性のパイプ部材であって、その可撓性のパイプ部材がプラスチックチューブ材又は超弾性合金コイル材であってもよい。
そして、貫通孔の少なくとも一つには内蔵物が挿通配置されていなくてもよく、マルチルーメンチューブの先端寄りの部分がその他の部分より柔軟な材料で形成されていてもよい。
【0011】
また、本発明の可撓性内視鏡の挿入部の製造方法は、軸線と平行方向に複数の貫通孔が形成された柔軟な材料からなるマルチルーメンチューブの少なくとも一つの貫通孔内の全長にわたって、可撓性を有する内蔵物が挿通配置されると共に、対物光学系等を内蔵する先端部本体がマルチルーメンチューブの先端に取り付けられた構成を有する可撓性内視鏡の挿入部の製造方法において、マルチルーメンチューブを押し出し成型で形成する際に、予め内蔵物を貫通孔の位置に配置して、マルチルーメンチューブが形成されるのと同時に内蔵物が貫通孔内に配置された状態になるようにしたものであり、内蔵物が、マルチルーメンチューブを押し出し成型する際に貫通孔に固定された状態になる可撓性の筒状体と、その筒状体の内側で軸線方向に進退自在な可撓性部材とを含んでいてもよく、先端部本体が、マルチルーメンチューブ成形後にマルチルーメンチューブの先端部分に連結固着されてもよい。
【0012】
また、本発明の可撓性内視鏡の挿入部の製造方法は、軸線と平行方向に複数の貫通孔が形成された柔軟な材料からなるマルチルーメンチューブの少なくとも一つの貫通孔内の全長にわたって、可撓性を有する内蔵物が挿通配置されると共に、対物光学系等を内蔵する先端部本体がマルチルーメンチューブの先端に取り付けられた構成を有する可撓性内視鏡の挿入部の製造方法において、マルチルーメンチューブを押し出し成型で形成する際に、予め内蔵物を貫通孔の位置に配置すると共に、先端部本体を接続するための接続金具をマルチルーメンチューブの先端部分に位置するように配置して、マルチルーメンチューブが形成されるのと同時に、内蔵物が貫通孔内に配置された状態になると共に、接続金具がマルチルーメンチューブの先端に連結された状態になるものであり、内蔵物が、マルチルーメンチューブを押し出し成型する際にマルチルーメンチューブに固定された状態になる可撓性の筒状体と、その筒状体の内側で軸線方向に進退自在な可撓性部材とを含んでいてもよい。
【0013】
そして、本発明の可撓性内視鏡の挿入部の製造方法において、マルチルーメンチューブを成形する押し出し成型装置に、内蔵物を案内するための位置決め板が交換自在に配置されていてもよい。
【0014】
また、マルチルーメンチューブを成形する押し出し成型装置に、押し出される素材を軟材料と硬材料とに切り換えるための切り換えバルブが設けられていてもよく、その場合、マルチルーメンチューブの先端寄りの部分が軟材料で形成され、その他の部分が硬材料で形成されてもよい。
【0015】
また、内蔵物の一つが、複数の信号線を束ねた信号線束を可撓性チューブ内に軸線方向に進退自在に挿通配置した構成の信号ケーブルであって、可撓性チューブは押し出し成型により貫通孔に固定された状態になり、その内側で信号線束が軸線方向に進退自在であってもよく、その場合、マルチルーメンチューブが押し出し成型された後、信号ケーブルの先端に固体撮像装置が接続されてもよく、或いは固体撮像装置と発光素子とが接続されてもよい。
【0016】
また、内蔵物の一つが、密着巻きコイルとその密着巻きコイル内に軸線方向に進退自在に挿通配置された操作ワイヤであって、密着巻きコイルは押し出し成型により貫通孔に固定された状態になり、その内側で操作ワイヤが軸線方向に進退自在であってもよい。
【0017】
その場合、マルチルーメンチューブが押し出し成型された後、操作ワイヤの先端に、操作ワイヤより径が大きくて密着巻きコイル内に引き込まれないストッパ部材が取り付けられてもよい。
【0018】
また、内蔵物の一つが可撓性のパイプ部材であって、そのパイプ部材は押し出し成型後もマルチルーメンチューブ内に残されてもよく、その場合、可撓性のパイプ部材がプラスチックチューブ材又は超弾性合金コイル材であってもよい。
【0019】
また、少なくとも一つの貫通孔の位置には押し出し成型時に芯金が配置されて、その芯金が押し出し成型後にマルチルーメンチューブから抜去されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、マルチルーメンチューブを成形する際に同時に内蔵物をマルチルーメンチューブに組み込むことができるので、マルチルーメンチューブの長さが長くても内蔵物の挿通配置の組み付けを容易に行うことができ、コスト的にディスポーザブル化も可能となる優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
軸線と平行方向に複数の貫通孔が形成された柔軟な材料からなるマルチルーメンチューブの少なくとも一つの貫通孔内の全長にわたって、可撓性を有する内蔵物が挿通配置されると共に、対物光学系等を内蔵する先端部本体がマルチルーメンチューブの先端に取り付けられた構成を有する可撓性内視鏡の挿入部において、内蔵物が、マルチルーメンチューブを成形する際に貫通孔の位置に配置されて、マルチルーメンチューブの形成と同時に貫通孔内に配置された状態になっている。
【実施例】
【0022】
図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図2は内視鏡の全体構成を示しており、体腔内等に挿入される内視鏡挿入部1の先端には対物光学系等を内蔵する先端部本体2が接続金具2Aを介して連結され、内視鏡挿入部1の基端には操作部3が連結されている。
【0023】
内視鏡挿入部1の先端近傍部分は他の部分より柔軟に形成されて、操作部3に配置された湾曲操作ノブ4を回転操作することにより遠隔的に任意の方向に任意の角度だけ屈曲させることができる湾曲部1Aになっている。5は、処置具類を差し込むための処置具挿入口である。
【0024】
内視鏡挿入部1は、例えば直径が5〜15mm程度で長さが0.5〜2m程度の細長くて柔軟なものであり、図3にその縦断面図が拡大図示され、図4には図2におけるIV−IV断面が拡大図示されている。
【0025】
内視鏡挿入部1は全長にわたって、例えば柔軟で弾力性のあるシリコン樹脂等を材料として押し出し成型で形成されたマルチルーメンチューブ10により構成されており、そのマルチルーメンチューブ10には、軸線と平行方向に複数の貫通孔(ルーメン)11〜15が全長にわたって形成されている。
【0026】
そのような複数の貫通孔11〜15のうち、11は処置具類を挿脱するための処置具挿通チャンネル、12は送気送水チャンネル、13は被写体を洗浄する洗浄水を通すための洗浄チャンネルであり、これらは、マルチルーメンチューブ10を製造する際に各々の位置に配置された芯金を抜去することにより形成される。ただし、後述するようにその部分にパイプ部材25を配置してもよい。
【0027】
14は、可撓性のある信号ケーブル18が全長にわたって挿通配置された信号ケーブル配置孔である。信号ケーブル18は、複数の信号線を束ねた信号線束20が可撓性チューブ19内に軸線方向に進退自在に挿通配置された構成になっていて、可撓性チューブ19は信号ケーブル配置孔14に固定された状態になっていて、その可撓性チューブ19の内側で信号線束20が軸線方向に進退自在になっている。
【0028】
15は、湾曲部1Aを屈曲操作するための可撓性のある操作ワイヤ23が全長にわたって挿通配置された操作ワイヤ配置孔であり、例えばマルチルーメンチューブ10の周辺位置に等間隔(マルチルーメンチューブ10の中心軸線周りに90°間隔)で4ヵ所に、内視鏡観察視野の上下左右方向と合致する位置に配置されている。
【0029】
操作ワイヤ23は例えばステンレス鋼撚り線により形成されていて、例えばステンレス鋼線材により形成された可撓性のある密着巻きコイル22内に軸線方向に進退自在に挿通配置されている。密着巻きコイル22は操作ワイヤ配置孔15に固定された状態になっていて、その密着巻きコイル22の内側で操作ワイヤ23が軸線方向に進退自在になっている。
【0030】
上述のような構成の内視鏡挿入部1において、操作ワイヤ23が挿通されている密着巻きコイル22と、信号線束20が挿通されている可撓性チューブ19は、いずれもマルチルーメンチューブ10が押し出し成型される際に操作ワイヤ配置孔15と信号ケーブル配置孔14の位置に配置されて、両端部付近を除いて各孔15,14の全長に埋め込まれて固定された状態になっている。
【0031】
そして、操作ワイヤ23と信号線束20は、マルチルーメンチューブ10の押し出し成型時に予め密着巻きコイル22内と可撓性チューブ19内とに全長にわたって挿通配置されていて、マルチルーメンチューブ10の押し出し成型後も密着巻きコイル22内と可撓性チューブ19内において各々軸線方向に進退自在である。
【0032】
なお、図5に示されるように、処置具挿通チャンネル11、送気送水チャンネル12、洗浄チャンネル13等においても、マルチルーメンチューブ10の押し出し成型時に可撓性のあるプラスチックチューブ材又は超弾性合金コイル材等のような可撓性のパイプ部材25を配置して、押し出し成型後にそのパイプ部材25をそのまま残しても差し支えない。
【0033】
図1は、上述のようなマルチルーメンチューブ10を製造するための押し出し成型装置50を示しており、柔軟性が相違する硬材料と軟材料の二種類の原材料を供給するための硬材料ホッパ51と軟材料ホッパ52とが、材料供給管53で一つにまとめられて押し出し成型装置50に通じており、押し出し成型装置50にどちらの材料を供給するか、或いはどのような比率で混合するかを切り換えバルブ54で任意に制御して、マルチルーメンチューブ10の硬さを調整することができる。
【0034】
押し出し成型装置50内で加熱溶融された樹脂は、ノズルの押出口55から矢印Aで示されるように押し出された後、冷却器60で冷却されることでマルチルーメンチューブ10として細長く形成されるが、押出口55の径が相違するものを選択して用いることができ、それによってマルチルーメンチューブ10の外径を制御することができる。
【0035】
56は、マルチルーメンチューブ10に貫通孔11〜15を形成するために押出口55に対して位置関係を定めて押出口55の背面側の位置に着脱自在に取り付けられた位置決め板であり、位置決め板56を取り替えることにより、マルチルーメンチューブ10に形成される貫通孔11〜15の配置を任意に設定することができる。
【0036】
この位置決め板56には、操作ワイヤ23が軸線方向に移動自在に挿通配置された状態の密着巻きコイル22、信号線束20が軸線方向に移動自在に挿通配置された状態の可撓性チューブ19(即ち信号ケーブル18)及び芯金59(又はパイプ部材25)などの所定の内蔵物を案内するための複数の位置決め孔が押出口55に向かう位置に形成されている。そのような各位置決め孔は、各内蔵物を抵抗なく但しガタつきなく通過させる径に形成されている。
【0037】
そのような構成により、内蔵物である可撓性チューブ19、信号線束20、密着巻きコイル22、操作ワイヤ23、芯金59(又はパイプ部材25)が位置決め板56の各位置決め孔を通って押し出し成型装置50内に導かれ、そこで周囲を溶融樹脂で埋められることにより内蔵物が溶融樹脂と共に押し出し成型装置50から押し出されて、各内蔵物により貫通孔11〜15がマルチルーメンチューブ10に全長にわたって形成される。
【0038】
そして、押し出し成型後に、芯金59は抜去されてチャンネル用の貫通孔11〜13が各々通孔として形成される。ただし、信号ケーブル18の可撓性チューブ19は両端部付近を除いて貫通孔14内に埋設固定された状態に残されてその内部で信号線束20が軸線方向に自由に進退し、密着巻きコイル22も両端部付近を除いて貫通孔15内に固定された状態に残されてその内部で操作ワイヤ23が軸線方向に自由に進退する。
【0039】
図6は、そのようにして製造されたマルチルーメンチューブ10を示している。ただし、チャンネル用の貫通孔11〜13には芯金に代えて可撓性のパイプ部材25が配置されたものであり、パイプ部材25は押し出し成型後も貫通孔11〜13内に固定された状態に残されて処置具通路及び流体通路等になる。
【0040】
このように構成されたマルチルーメンチューブ10においては、前述のように、信号ケーブル18の可撓性チューブ19と密着巻きコイル22とが両端付近を除いてマルチルーメンチューブ10内に全長にわたって埋め込まれて固定された状態になっていて、それらに挿通されている信号線束20と操作ワイヤ23が軸線方向に進退自在になっている。パイプ部材25も、両端付近を除いてマルチルーメンチューブ10内に全長にわたって埋め込まれて固定された状態になっている。
【0041】
また、この実施例においては、マルチルーメンチューブ10の先端寄りの湾曲部1Aになる部分が軟材料で形成されてその他の部分が硬材料で形成され、湾曲部1Aは屈曲し易くて、その他の部分は手元側からの進退及び回転操作の際のトルク伝達がスムーズに行われるようになっている。
【0042】
図7ないし図10は、押し出し成型されたマルチルーメンチューブ10の先端部分に先端部本体2を取り付けて内視鏡挿入部1を完成する工程を順に示しており、まず図7に示されるように、マルチルーメンチューブ10の貫通孔11〜15の位置に合わせて軸線と平行方向に貫通孔が形成された接続金具2Aを、マルチルーメンチューブ10の先端部分に接着等で直列に連結固着する。
【0043】
次に、図8に示されるように、各操作ワイヤ23の先端と信号線束20の先端を各々接続金具2Aの先端側に引き出して、各操作ワイヤ23の先端には、操作ワイヤ23より径が大きくて密着巻きコイル22内に引き込まれずに接続金具2A内に係合するストッパ部材28を固着し、信号線束20の先端には固体撮像装置27を接続して、図9に示されるように、それらを接続金具2A内に引き込む。
【0044】
そして、図10に示されるように、対物光学系31が内蔵されると共にその対物光学系31の表面である観察窓32に向かって開口する送気送水ノズル33が突設された先端部本体2を、接着等で接続金具2Aの先端に接続固着する。その際に、対物光学系31が嵌め込まれている対物鏡筒31A内に固体撮像装置27が嵌合することで、光軸合わせが行われる。
【0045】
その結果、対物光学系31により被写体の観察像が固体撮像装置27の撮像面に投影されて内視鏡観察像が得られ、4本の操作ワイヤ23を操作部3側から選択的に牽引操作することにより、湾曲部1Aを任意の方向に任意の角度だけ屈曲させて内視鏡挿入部1の先端を体腔内等で誘導することができる。
【0046】
このようにして製造された本実施例の可撓性内視鏡の挿入部においては、マルチルーメンチューブ10を押し出し成型するのと同時に、内蔵物が軸線方向に進退自在に貫通孔11〜15内に挿通配置されるので、マルチルーメンチューブ10の長さが長くても内蔵物の組み付けを極めて容易に行うことができ、必要に応じてマルチルーメンチューブ10を使い捨てにするディスポーザブル化等もコスト的に可能となる。
【0047】
図11ないし図16は本発明の第2の実施例を示しており、マルチルーメンチューブ10の先端に先端部本体2を接続するための接続金具2Aが、マルチルーメンチューブ10を押し出し成型する際にマルチルーメンチューブ10の先端に連結された状態になるようにしたものであり、接続金具2Aの後端部分にはマルチルーメンチューブ10との係合力を強めるための鍔状部2eが突出形成されている。
【0048】
なお、マルチルーメンチューブ10を押し出し成型する際に予め内蔵物が貫通孔内に位置するように配置されて、マルチルーメンチューブ10が形成されるのと同時に内蔵物が貫通孔内に配置される点は上述の第1の実施例と同じであり、第1の実施例と同符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0049】
この実施例においては、まず、図11に示されるように、接続金具2Aの後半部分が押し出し成型装置50の押出口55内に差し込まれた状態にセットされてから、図12に示されるように、マルチルーメンチューブ10の押し出し成型が行われる。
【0050】
それによって、図13に示されるように、接続金具2Aの後端に突設された鍔状部2eを囲む状態にマルチルーメンチューブ10の先端部分が被覆成形され、マルチルーメンチューブ10が押し出し成型されるのと同時にその先端部分に接続金具2Aが連結された状態になるので、接続金具2Aをマルチルーメンチューブ10に連結する作業が不要になる。
【0051】
次いで、図14に示されるように、信号線束20の先端を接続金具2Aの先端側に引き出してそこに固体撮像装置27を接続すると共に、照明用の発光素子(LED等)37も接続し、図15に示されるように信号線束20を後方に少し引き戻して、固体撮像装置27と発光素子37を接続金具2A側に引き寄せる。
【0052】
そして、図16に示されるように、対物光学系31が内蔵されると共にその表面である観察窓32に向かって開口する送気送水ノズル33が突設された先端部本体2を接着等で接続金具2Aの先端に接続固着する。その際に、固体撮像装置27が対物鏡筒31A内に嵌合して光軸合わせが行われる。38は、発光素子37をカバーするように観察窓32と並んで先端部本体2の表面に設けられた照明窓である。
【0053】
このようにして、第2の実施例においては、マルチルーメンチューブ10が押し出し成型されるのと同時に接続金具2Aがマルチルーメンチューブ10の先端部分に取り付けられるので、第1の実施例に比べて製造がさらに簡素化されて、ディスポーザブル化を行うためのコスト面でもさらに有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施例の押し出し成型装置の略示図である。
【図2】本発明の第1の実施例の内視鏡の全体構成を示す側面図である。
【図3】本発明の第1の実施例の可撓性内視鏡の挿入部の縦断面図である。
【図4】本発明の第1の実施例の可撓性内視鏡の挿入部の図2におけるIV−IV断面図である。
【図5】本発明の第1の実施例の可撓性内視鏡の挿入部の変形例の縦断面図である。
【図6】本発明の第1の実施例の可撓性内視鏡の挿入部の側面断面図である。
【図7】本発明の第1の実施例のマルチルーメンチューブの先端部分に先端部本体が取り付けられる工程を順に示す側面断面図である。
【図8】本発明の第1の実施例のマルチルーメンチューブの先端部分に先端部本体が取り付けられる工程を順に示す側面断面図である。
【図9】本発明の第1の実施例のマルチルーメンチューブの先端部分に先端部本体が取り付けられる工程を順に示す側面断面図である。
【図10】本発明の第1の実施例のマルチルーメンチューブの先端部分に先端部本体が取り付けられる工程を順に示す側面断面図である。
【図11】本発明の第2の実施例の押し出し成型装置の略示図である。
【図12】本発明の第2の実施例の押し出し成型装置の略示図である。
【図13】本発明の第2の実施例のマルチルーメンチューブの先端部分に先端部本体が取り付けられる工程を順に示す側面断面図である。
【図14】本発明の第2の実施例のマルチルーメンチューブの先端部分に先端部本体が取り付けられる工程を順に示す側面断面図である。
【図15】本発明の第2の実施例のマルチルーメンチューブの先端部分に先端部本体が取り付けられる工程を順に示す側面断面図である。
【図16】本発明の第2の実施例のマルチルーメンチューブの先端部分に先端部本体が取り付けられる工程を順に示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 内視鏡挿入部
1A 湾曲部
2 先端部本体
2A 接続金具
2e 鍔状部
10 マルチルーメンチューブ
11〜15 貫通孔
18 信号ケーブル(内蔵物)
19 可撓性チューブ(内蔵物)
20 信号線束(内蔵物)
22 密着巻きコイル(内蔵物)
23 操作ワイヤ(内蔵物)
25 パイプ部材(内蔵物)
27 固体撮像装置
28 ストッパ部材
31 対物光学系
32 観察窓
37 発光素子
50 押し出し成型装置
51 硬材料ホッパ
52 軟材料ホッパ
54 切り換えバルブ
55 押出口
56 位置決め板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線と平行方向に複数の貫通孔が形成された柔軟な材料からなるマルチルーメンチューブの上記少なくとも一つの貫通孔内の全長にわたって、可撓性を有する内蔵物が挿通配置されると共に、対物光学系等を内蔵する先端部本体が上記マルチルーメンチューブの先端に取り付けられた構成を有する可撓性内視鏡の挿入部において、
上記内蔵物が、上記マルチルーメンチューブを成形する際に上記貫通孔の位置に配置されて、上記マルチルーメンチューブの形成と同時に上記貫通孔内に配置されたものであることを特徴とする可撓性内視鏡の挿入部。
【請求項2】
上記内蔵物が、上記貫通孔に固定された状態の可撓性の筒状体と、上記筒状体の内側で軸線方向に進退自在な可撓性部材とを含んでいる請求項1記載の可撓性内視鏡の挿入部。
【請求項3】
上記先端部本体が上記マルチルーメンチューブの先端部分に連結固着されている請求項1又は2記載の可撓性内視鏡の挿入部。
【請求項4】
軸線と平行方向に複数の貫通孔が形成された柔軟な材料からなるマルチルーメンチューブの上記少なくとも一つの貫通孔内の全長にわたって、可撓性を有する内蔵物が挿通配置されると共に、対物光学系等を内蔵する先端部本体が上記マルチルーメンチューブの先端に取り付けられた構成を有する可撓性内視鏡の挿入部において、
上記内蔵物が、上記マルチルーメンチューブを成形する際に上記貫通孔の位置に配置されると共に、上記先端部本体を接続するための接続金具が、上記マルチルーメンチューブを成形する際に上記マルチルーメンチューブの先端部分に位置するように配置されて、上記内蔵物が上記マルチルーメンチューブの形成と同時に上記貫通孔内に配置され、上記接続金具が上記マルチルーメンチューブの形成と同時に上記マルチルーメンチューブの先端に連結されたものであることを特徴とする可撓性内視鏡の挿入部。
【請求項5】
上記内蔵物が、上記マルチルーメンチューブに固定された状態の可撓性の筒状体と、上記筒状体の内側で軸線方向に進退自在な可撓性部材とを含んでいる請求項4記載の可撓性内視鏡の挿入部。
【請求項6】
上記内蔵物の一つが、複数の信号線を束ねた信号線束を可撓性チューブ内に軸線方向に進退自在に挿通配置した構成の信号ケーブルであって、上記可撓性チューブは上記貫通孔に固定され、その内側で上記信号線束が軸線方向に進退自在である請求項1ないし5のいずれかの項に記載の可撓性内視鏡の挿入部。
【請求項7】
上記信号ケーブルの先端に固体撮像装置が接続されている請求項6記載の可撓性内視鏡の挿入部。
【請求項8】
上記信号ケーブルの先端に固体撮像装置と発光素子とが接続されている請求項6記載の可撓性内視鏡の挿入部。
【請求項9】
上記内蔵物の一つが、密着巻きコイルとその密着巻きコイル内に軸線方向に進退自在に挿通配置された操作ワイヤであって、上記密着巻きコイルは上記貫通孔に固定され、その内側で上記操作ワイヤが軸線方向に進退自在である請求項1ないし8のいずれかの項に記載の可撓性内視鏡の挿入部。
【請求項10】
上記操作ワイヤの先端に、上記操作ワイヤより径が大きくて上記密着巻きコイル内に引き込まれないストッパ部材が取り付けられている請求項9記載の可撓性内視鏡の挿入部。
【請求項11】
上記内蔵物の一つが可撓性のパイプ部材である請求項1ないし10のいずれかの項に記載の可撓性内視鏡の挿入部。
【請求項12】
上記可撓性のパイプ部材がプラスチックチューブ材又は超弾性合金コイル材である請求項11記載の可撓性内視鏡の挿入部。
【請求項13】
上記貫通孔の少なくとも一つには上記内蔵物が挿通配置されていない請求項1ないし12のいずれかの項に記載の可撓性内視鏡の挿入部。
【請求項14】
上記マルチルーメンチューブの先端寄りの部分がその他の部分より柔軟な材料で形成されている請求項1ないし13のいずれかの項に記載の可撓性内視鏡の挿入部。
【請求項15】
軸線と平行方向に複数の貫通孔が形成された柔軟な材料からなるマルチルーメンチューブの上記少なくとも一つの貫通孔内の全長にわたって、可撓性を有する内蔵物が挿通配置されると共に、対物光学系等を内蔵する先端部本体が上記マルチルーメンチューブの先端に取り付けられた構成を有する可撓性内視鏡の挿入部の製造方法において、
上記マルチルーメンチューブを押し出し成型で形成する際に、予め上記内蔵物を上記貫通孔の位置に配置して、上記マルチルーメンチューブが形成されるのと同時に上記内蔵物が上記貫通孔内に配置された状態になるようにしたことを特徴とする可撓性内視鏡の挿入部の製造方法。
【請求項16】
上記内蔵物が、上記マルチルーメンチューブを押し出し成型する際に上記貫通孔に固定された状態になる可撓性の筒状体と、上記筒状体の内側で軸線方向に進退自在な可撓性部材とを含んでいる請求項15記載の可撓性内視鏡の挿入部の製造方法。
【請求項17】
上記先端部本体が、上記マルチルーメンチューブ成形後に上記マルチルーメンチューブの先端部分に連結固着される請求項15又は16記載の可撓性内視鏡の挿入部の製造方法。
【請求項18】
軸線と平行方向に複数の貫通孔が形成された柔軟な材料からなるマルチルーメンチューブの上記少なくとも一つの貫通孔内の全長にわたって、可撓性を有する内蔵物が挿通配置されると共に、対物光学系等を内蔵する先端部本体が上記マルチルーメンチューブの先端に取り付けられた構成を有する可撓性内視鏡の挿入部の製造方法において、
上記マルチルーメンチューブを押し出し成型で形成する際に、予め上記内蔵物を上記貫通孔の位置に配置すると共に、上記先端部本体を接続するための接続金具を上記マルチルーメンチューブの先端部分に位置するように配置して、上記マルチルーメンチューブが形成されるのと同時に、上記内蔵物が上記貫通孔内に配置された状態になると共に、上記接続金具が上記マルチルーメンチューブの先端に連結された状態になることを特徴とする可撓性内視鏡の挿入部の製造方法。
【請求項19】
上記内蔵物が、上記マルチルーメンチューブを押し出し成型する際に上記マルチルーメンチューブに固定された状態になる可撓性の筒状体と、上記筒状体の内側で軸線方向に進退自在な可撓性部材とを含んでいる請求項18記載の可撓性内視鏡の挿入部の製造方法。
【請求項20】
上記マルチルーメンチューブを成形する押し出し成型装置に、上記内蔵物を案内するための位置決め板が交換自在に配置されている請求項15ないし19のいずれかの項に記載の可撓性内視鏡の挿入部の製造方法。
【請求項21】
上記マルチルーメンチューブを成形する押し出し成型装置に、押し出される素材を軟材料と硬材料とに切り換えるための切り換えバルブが設けられている請求項15ないし20のいずれかの項に記載の可撓性内視鏡の挿入部の製造方法。
【請求項22】
上記マルチルーメンチューブの先端寄りの部分が上記軟材料で形成され、その他の部分が上記硬材料で形成される請求項21記載の可撓性内視鏡の挿入部の製造方法。
【請求項23】
上記内蔵物の一つが、複数の信号線を束ねた信号線束を可撓性チューブ内に軸線方向に進退自在に挿通配置した構成の信号ケーブルであって、上記可撓性チューブは上記押し出し成型により上記貫通孔に固定された状態になり、その内側で上記信号線束が軸線方向に進退自在である請求項15ないし22のいずれかの項に記載の可撓性内視鏡の挿入部の製造方法。
【請求項24】
上記マルチルーメンチューブが押し出し成型された後、上記信号ケーブルの先端に固体撮像装置が接続される請求項23記載の可撓性内視鏡の挿入部の製造方法。
【請求項25】
上記マルチルーメンチューブが押し出し成型された後、上記信号ケーブルの先端に固体撮像装置と発光素子とが接続される請求項23記載の可撓性内視鏡の挿入部の製造方法。
【請求項26】
上記内蔵物の一つが、密着巻きコイルとその密着巻きコイル内に軸線方向に進退自在に挿通配置された操作ワイヤであって、上記密着巻きコイルは上記押し出し成型により上記貫通孔に固定された状態になり、その内側で上記操作ワイヤが軸線方向に進退自在である請求項15ないし25のいずれかの項に記載の可撓性内視鏡の挿入部の製造方法。
【請求項27】
上記マルチルーメンチューブが押し出し成型された後、上記操作ワイヤの先端に、上記操作ワイヤより径が大きくて上記密着巻きコイル内に引き込まれないストッパ部材が取り付けられる請求項26記載の可撓性内視鏡の挿入部の製造方法。
【請求項28】
上記内蔵物の一つが可撓性のパイプ部材であって、上記パイプ部材は上記押し出し成型後も上記マルチルーメンチューブ内に残される請求項15ないし27のいずれかの項に記載の可撓性内視鏡の挿入部の製造方法。
【請求項29】
上記可撓性のパイプ部材がプラスチックチューブ材又は超弾性合金コイル材である請求項28記載の可撓性内視鏡の挿入部の製造方法。
【請求項30】
少なくとも一つの上記貫通孔の位置には上記押し出し成型時に芯金が配置されて、上記芯金は上記押し出し成型後に上記マルチルーメンチューブから抜去される請求項15ないし29のいずれかの項に記載の可撓性内視鏡の挿入部の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−325691(P2006−325691A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−150278(P2005−150278)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】