説明

可撓性皮革積層品

一枚以上のシートからなる可撓性樹脂被覆基材層、基本的に皮革材料からなる化粧層、及び任意選択の上被層を、重ね合わせた関係を含む熱及び圧力で固着された・固結された(consolidated)可撓性積層品、およびその製造方法が提供される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年1月22日出願の米国特許仮出願第60/441,890号の権利および優先権を主張してなされるものであり、本明細書中でその全体を参考として援用する。
【0002】
本発明は一般に化粧積層品に関し、より詳細には、プロファイルラッピング(profile wrapping)としても知られ、化粧層として皮革材料を有する可撓性積層品に関する。さらに、本発明は可撓性積層品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
化粧積層品は、キャビネット、家具、およびその他の建材製品の製造にしばしば用いられる。様々な色、形状、および質感(texture)の可撓性化粧積層品にはかなりの需要がある。さらに、基体の外形、又は三次元的形状にぴったり適合できる可撓性積層品も大いに望ましい。これらの“プロファイルラッパー(profile wrappers)”により、基体を一枚の材料で隙間なく覆うことが可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
皮革は一般に最高級な用途に使用される上質な材料と考えられている。残念ながら、皮革および他の天然皮は、大きさが限られ、収縮し、傷があり、均一に伸長しない等のために、加工・作業・取り扱い(work)がむずかしい。したがって、家具、クラウンモールディング、キャビネット、絵画の額等の用途に見られる、二次元および三次元の形状を有する基体の周りを“プロファイルラップ(profile wrap)”することができる可撓性積層品に、皮革および他の天然皮の利用を促進するような製品を提供することは有用であろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、一枚以上のシートからなる可撓性樹脂被覆基材(backing)層、基本的に皮革材料からなる化粧層、及び任意選択の上被層(overlay)を重ね合わせた関係を含む熱と圧力で固着された・固結された(consolidated)可撓性積層品が提供される。
【0006】
歴史的には、家具に使用される皮革で被覆したパネルは、物品の二次元または三次元形状に適合させるために、家具職人が皮革皮を伸ばし、切断し、および/または折り曲げる必要のあることが多かった。いくつかの用途においては、パネルを基体に取り付ける前に皮革の端をパネルの下部に貼り付けることが必要であった。他の場合には、皮革および/または基体に接着剤を塗布する必要があった。いくつかの例においては、十分な収縮によって、皮革がパネルの下側から引き離され、基体から引き剥がされたり、引裂かれることがあった。皮革は、伸長および収縮が不均一なため、作業のむずかしいことが知られている。
【発明の効果】
【0007】
本可撓性積層品の利点は、二次元または三次元の形状を有する基体を輪郭通り覆うことができる皮革で覆われた積層品を提供することである。皮革化粧層は積層品と一体化した部分であるため、皮革をパネルまたは基体に適合(fit)または接着させる必要がない。本可撓性積層品は、様々な方法で基体に取り付けることができる。必要な場合、本可撓性積層品は、他の積層品と同様に、切り取る(trimmed)こともできる。簡単に言うと、本可撓性皮革積層品により、皮革を使用して家具を組み立てたり製作する等の場合に通常遭遇する問題の多くを、軽減したり解消できる製品が提供される。
【0008】
本可撓性皮革積層品の他の利点は、ほとんどの実施形態において、天然皮革臭を保持していることである。家具およびキャビネット用途で使用されるいくつかの皮革または皮革類似品は、皮革のように見えるが、望ましい皮革臭をほとんど保持していない。本積層品が天然の皮革臭を保持してしている事実は、明確な商業上の特徴となる。
【0009】
本発明のこれらの目的および他の目的、特徴、および利点は、以下の図および本発明の詳細な説明により明らかとなるはずである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1を参照して、本発明の可撓性皮革積層品は一般的に参照番号10で示されている。皮革積層品には、第一の側面14および第二の側面16を有する可撓性基材層12と、基本的に皮革材料からなり、その可撓性基材層12の第一の側面14に結合された(bonded)化粧層18とが含まれている。化粧層18を可撓性基材層12上に重ねることにより、化粧層18の何もない側の面19が画定される。加えて、本発明は、前記化粧層18の何もない側の面19に結合した上被層20(図2に示すように)を有することができる。
【0011】
本明細書において、本発明の様々な層を記述するのに使われているように、可撓性という用語は、材料が実質的に柔らかく、実質的に均一に二次元または三次元の形状に適合する能力を有していることを意味する。可撓性基材層12は、実質的に可撓性が残っている樹脂で被覆されたシートを含む。該シートは通常セルロース材料からなる。本発明の好ましい実施形態において、基材層12はポリエステル基(polyester-based)樹脂で被覆される。ポリエステル基樹脂は、本明細書においては“ポリエステル樹脂”とも呼ぶが、当技術分野において公知であり、購入可能である。ポリエステル樹脂の様々な特性についてはこれ以上記述しないが、特定のパラメータを有するポリエステル樹脂が選択されて目下の用途に対処できる可能性があると言える。
【0012】
本発明の他の実施形態において、前述の基材層12を、Kimberly Clark(登録商標)社が販売する購入可能な基材製品(backer product)で置き換えることができる。
【0013】
化粧層18は皮革材料を含む。本明細書において“皮革”と呼ぶものは、動物の皮を含む材料であり、特定の動物種に限定されない。皮革材料は好ましくは結合させた皮革(bonded leather)である。本明細書において使用する“結合させた皮革”という用語は、断片および/またはリサイクルされた皮革から作られた皮革削り屑を含む皮革製品を意味する。結合剤・接着剤(bonding agents)を使用して削り屑はシート製品に加工され、結合させた皮革が製造される。結合させた皮革は購入可能であるため、ここでは更なる詳述はしない。厚さが約0.2mmから約4.0mmまでの範囲の皮革シートは、ほとんどの用途で使用可能である。厚さが約0.2mmから約0.8mmまでの範囲のシートは、特に有用である。
【0014】
いくつかの実施形態においては、さらに図2を参照して、本可撓性皮革積層品は、化粧皮革層18の何もない側の面19上に配設される上被層20をさらに含む。上被層20は、例えば、一枚以上の、硬化後も実質的に可撓性が残る樹脂を含浸させた上質アルファセルロース紙のシートから構成することができる。アルファセルロース紙は、樹脂の半透明担体(carrier)として機能し、樹脂に強度を付与し、樹脂厚を均一に保つことを容易にし、皮革層18に付加的な耐摩耗強さを与える。
【0015】
本可撓性積層品10を製造する第一の方法は、可撓性基材層12、化粧皮革層18、及び任意選択の上被層20を重ね合わせた関係(すなわち、“積層状態(build-up)”)で鋼板間に積層することを含む。次いで積層は、各層を固着するのに十分な時間の間、所定の圧力および温度にさらされる。
【0016】
本可撓性皮革積層品を製造する第二の方法は、基材層12および化粧層18(使用する場合はさらに上被層20)を前記の重ね合わせた関係で連続式プレスの上流に供給することを含む。プレスは、各層を結合させて完成品の積層品製品とするのに必要な温度および圧力環境をつくるようにセットされる。連続式プレスのライン速度は、様々な層の十分な結合を確保するのに適したプレス内での滞留時間を創出する・得る(create)ように選択される。プレス導入前に、積層の両側の面に離型・解放・剥離用シート(release sheet)が配設される。通常皮革化粧層に接触する離型用シートは、織り目加工されており(textured)、積層品10にエンボス加工の外見・風合い(embossed texture)を与える。離型用シートは通常、積層品がプレスを出た後に取り外され、次の処理のためにロールに巻かれる。皮革積層品は下流の処理装置(連続した積層品製品をロールに巻き取り、ロールのための操作装置)に続く。連続式プレスは、積層品の製造・処理・加工時間(processing time)を減じるため、有利である。
【0017】
いずれの製造方法においても、温度および圧力が上がると、基材層12内の樹脂および、もしも使用される場合には、上被層20内の樹脂が層間を流動し、皮革化粧シート18と結合し、様々な層12,18(さらに任意選択で20)を固着させて一体化した可撓性積層品10になる。本皮革積層品は、通常、約110℃から約250℃の範囲の温度、および約100PSI(0.690MPa)から約1400PSI(9.653MPa)の範囲の圧力で加工される。
【0018】
前述の本可撓性積層品10は基体に貼り付けるように設計される。図3を参照すると、基体22は二次元の外形を有する“クラウンモールディング”の一部である。図4に示すように、基体22は三次元の外形を有することもできる。通常、図1または2の可撓性皮革積層品10は、基体22に、熱的に結合されるか、接着される。ほとんどの場合、圧力が可撓性皮革積層品10に加えられ、本可撓性皮革積層品と基体22の外形との均一な適合を確実としている。
【実施例】
【0019】
以下の実施例は、本可撓性皮革積層品を説明するためのものであって、本発明の内容に関し、いかなる制限をおこなうものではない。
【0020】
(実施例I)
非連続式プレスを用いて、一枚の可撓性皮革積層品を製造した。離型用シート、基材層12、化粧皮革層18、および織り目加工された離型用シートからなる積層を重ね合わせた関係で製造し、鋼板の間に置いた。次に、積層に約300PSI(2.069MPa)の圧力をかけた。所定の圧力に達した後、プレスを約150℃の所定の温度まで加熱した。所定の圧力および温度で加熱サイクルの約60秒間プレスを保持した。次に、圧力を解放し、可撓性皮革積層品となった積層を冷却期間を延長せずにプレスから取り出した。離型用シートをはがし、完成した可撓性皮革積層品を積み重ねた。
【0021】
(実施例II)
導入部、加熱部、および冷却部を含む、GreCon連続式高圧積層プレスを使用して、一枚の可撓性皮革積層品を製造した。各部の温度は独立して制御した。積層の各層に加える合計熱量は、異なる部分の温度およびライン速度に依存する滞留時間によって制御した。この連続プロセスでは、積層品の製造に使用する各種の層のすべてを連続織布(continuous webs)としてプレス内に供給する必要がある。約4.5ミル(約0.114mm)厚の基材層12用のロールおよび約0.6mm厚の化粧皮革シート18用のロールは、前記重ね合わせた関係で基材層および化粧皮革シートを連続してプレスに供給できるように、連続式プレスの上流に配置された。離型用シートのロールは、前記積層の外表面に離型用シートを連続的に供給できるように、連続式プレスの上流に配置された。皮革化粧層に接触する離型用シートは、本実施例の積層品にエンボス加工の外見・風合いを与えるように織り目加工された。異なるプレス各部の温度設定は、導入部が90℃、加熱部が135℃、冷却部が115℃であった。圧力は200PSI(1.379MPa)に設定した。連続式プレスのライン速度は、プレス内での滞留時間が約5秒間になるように、60フィート(約18.29m)/分に設定した。積層品がプレスを出る際に、離型用シートが剥がされ、次の処理のためにロールに巻かれた。可撓性皮革積層品がロールに巻き取られた。
【0022】
当業者にとって、本発明の範囲を逸脱することなく、様々な変更が可能であること、および本発明は本明細書で記述および例示したものに限定されると考えるべきでないことは明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本可撓性皮革積層品の重ね合わせた構成層の断面図である。
【図2】図1に示す本可撓性皮革積層品の上に上被層を追加したものの断面図である。
【図3】二次元の外形を有する基体の図である。
【図3A】図1に示す本可撓性皮革積層品を図3の基体(破線で示す)に密着して形成させた図である。
【図4】三次元の外形を有する基体の図である。
【図4A】図1に示す本可撓性皮革積層品を図4の基体(破線で示す)に密着して形成させた図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル含浸シートを含む可撓性基材層と、
基本的に皮革材料からなる化粧層を重ね合わせた関係を含み、
前記層が同時に110℃から250℃までの温度および100PSI(0.690MPa)から450PSI(3.103MPa)までの圧力にさらされた熱及び圧力で固着された・固結された(consolidated)可撓性積層品。
【請求項2】
前記化粧層に結合された可撓性上被層をさらに含む請求項1に記載の熱及び圧力で固着された可撓性積層品。
【請求項3】
前記可撓性上被層が、硬化後も実質的に可撓性が残る樹脂を含浸させた少なくとも一枚のアルファセルロース紙からなる請求項2に記載の熱及び圧力で固着された可撓性積層品。
【請求項4】
前記皮革材料が、シート厚が約0.2mmから約4mmまでの範囲にある結合させた皮革である請求項1に記載の熱及び圧力で固着された可撓性積層品。
【請求項5】
ポリエステル含浸シートを含む可撓性基材層と、
基本的に皮革材料からなる化粧層と、前記皮革材料が、シート厚が約0.2mmから約4mmまでの範囲にある結合させた皮革であり、
前記化粧層に結合され、硬化後も実質的に可撓性が残る樹脂を含浸させた少なくとも一枚のアルファセルロース紙からなる可撓性上被層と、
を重ね合わせた関係を含み、
前記層は同時に110℃から250℃までの温度および100PSI(0.690MPa)から450PSI(3.103MPa)までの圧力にさらされた熱及び圧力で固着された可撓性積層品。
【請求項6】
熱及び圧力で固着された可撓性積層品を製造する方法であって、
可撓性基材層、基本的に皮革材料を含む化粧層、及び離型用シートを重ね合せた関係で積層するステップと、
該積層された層を熱硬化プレスのプレート間に挿入するステップと、
前記熱硬化プレスの圧力を所定の圧力まで上げるステップと、
前記熱硬化プレスの温度を所定の温度まで上げるステップと、
前記積層された層を加熱、加圧された熱硬化プレス内で前記層から積層品を形成するのに十分な一定時間の間、保持するステップと、
前記積層品を熱硬化プレスから取り出すステップと、
前記積層品から離型用シートを剥がすステップと、
を備えた方法。
【請求項7】
前記所定の温度が約110℃から約250℃までの範囲である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記所定の圧力が約100PSI(0.690MPa)から約450PSI(3.103MPa)までの範囲である請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記積層品を形成するのに十分な一定時間が約20秒から約150秒の範囲である請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記化粧層上にエンボス加工の外見・風合い(embossed texture)を与えるために、前記離型用シートが織り目加工され(textured)ている請求項6に記載の方法。
【請求項11】
加熱と加圧で固着された可撓性積層品を製造する方法であって、
前記連続式熱硬化プレスの温度を所定の温度に設定するステップと、
前記連続式熱硬化プレスの圧力を所定の圧力に設定するステップと、
可撓性基材層、基本的に皮革材料を含む化粧層、および離型用シートを重ね合せた関係で連続式熱硬化プレスに供給し、前記可撓性基材層、化粧層、および離型用シートを前記連続式熱硬化プレスの上流からプレスに供給するステップと、
前記重ね合せた層を加熱、加圧された熱硬化プレス内で前記層から積層品を形成するのに十分な一定時間の間、保持するステップと、
前記積層品がプレスを出る際に積層品から前記離型用シートを剥がすステップと、
を備えた方法。
【請求項12】
前記可撓性皮革積層品をさらに加工するために、前記連続式熱硬化プレスの下流にある処理装置に移送するステップをさらに含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記所定の温度が約110℃から約250℃までの範囲である請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記所定の圧力が約100PSI(0.690MPa)から約450PSI(3.103MPa)までの範囲である請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記可撓性基材層、基本的に皮革材料からなる化粧層、及び離型用シートを前記連続式熱硬化プレスの上流に位置する連続織布(continuous webs)から連続式熱硬化プレスに供給する請求項11に記載の方法。
【請求項16】
加熱と加圧で固着された可撓性積層品を製造する方法であって、
前記連続式熱硬化プレスの温度を所定の温度に設定し、前記所定の温度が約110℃から約250℃までの範囲であるステップと、
前記連続式熱硬化プレスの圧力を所定の圧力に設定し、前記所定の圧力が約100PSI(0.690MPa)から約450PSI(3.103MPa)までの範囲であるステップと、
可撓性基材層、基本的に皮革材料からなる化粧層、および離型用シートを重ね合せた関係で前記連続式熱硬化プレスの上流に位置する連続織布から前記連続式熱硬化プレスに供給するステップと、
前記重ね合せた層が、加熱、加圧された連続式熱硬化プレス内で前記層から可撓性積層品を形成するのに十分な時間の間、留まることが可能なように連続式熱硬化プレスのライン速度を選定するステップと、
積層品がプレスを出る際に前記積層品から前記離型用シートを剥がすステップと、
を備えた方法。
【請求項17】
前記ライン速度が約60フィート(約18.29m)/分である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記可撓性皮革積層品をさらに加工するために、前記連続式熱硬化プレスの下流にある処理装置に移送するステップをさらに含む請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記可撓性皮革積層品が基体の不均一外観表面と適合するように、加熱結合法(thermal bonding process)により、前記可撓性皮革積層品を不均一外観表面を有する基体に貼り付けるステップをさらに含む請求項16に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2007−521154(P2007−521154A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501082(P2006−501082)
【出願日】平成16年1月20日(2004.1.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/001604
【国際公開番号】WO2004/065639
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(501279811)パノラム・インダストリーズ・インターナショナル・インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】