説明

可撓継手

【課題】比較的製造コストが低く、且つ可撓性筒部に対して接続用フランジを着脱可能とする可撓継手を提供する。
【解決手段】可撓性筒部は、筒状の本体部と、本体部の端部から径方向外側に延出する環状のシール部と、シール部の外周端部から本体部の軸方向内側に向かって屈曲する筒状の外周壁部とを有し、接続用フランジは、本体部の端部の外周縁部に外嵌する筒状の内周板部と、シール部の背面側に形成されてシール部の受け面を構成する環状の受け板部と、外周壁部に内嵌する筒状板部とを含むように、板金が折り返されて成り、可撓性筒部の外周壁部の内部には、接続用フランジの筒状板部を締結するように環状のビードワイヤーが埋設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続した管同士の地震等による相対的な変位を許容する可撓継手(たわみ管継手)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、空調機や水道等の配管に接続される可撓継手が知られている。可撓継手は、可撓性を有する可撓性筒部と、該可撓性筒部の軸方向両端にそれぞれ設けられる接続用フランジとを有している。可撓性筒部は、ある程度の柔軟性を有するゴム材料で構成され、この可撓性筒部の内部には、すだれ織りの複数の補強布が埋設されている。これにより、可撓継手には、一対の被接続管の相対的な変位に追従するようなある程度の柔軟性と、可撓性筒部内の水圧に抗するある程度の剛性との2つの特性が付与されている。
【0003】
この種の可撓継手として、例えば特許文献1には、可撓性筒部の開口端部に補強リングを埋設したもの(いわゆるソリッドリング方式)が開示されている。この可撓継手では、例えば図7に示すように、可撓性筒部101の端部の外周縁部102に金属製の接続用フランジ103が一体的に加硫接着される。これにより、可撓性筒部101から接続用フランジ103が外れてしまう、いわゆる首抜けを防止している。また、この可撓継手では、相手側のフランジ(相フランジ)に相対するシール部104に環状の金属製の補強リング105(ソリッドリング)を埋設している。これにより、被接続管との接続時において、シール部104に作用する締め付け力を増大させ、ひいてはシール性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−323187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されているような、いわゆるソリッドリング方式の可撓継手では、可撓性筒部と接続用フランジと補強リングとを一体的に成形するため、製造工程が複雑となり、製造コストも高くなる。また、可撓性筒部と接続用フランジとを一体成形する構造では、例えば可撓性筒部の劣化や製造不良に伴い可撓性筒部の交換を要する場合にも、新たな可撓性筒部を接続用フランジと共に一体成形する必要があり、部品交換に要する時間やコストも増大してしまう。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みて創案されたものであり、その目的は、比較的製造コストが低く、且つ可撓性筒部に対して接続用フランジを着脱可能とする可撓継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係る可撓継手では、板金を折り返して内周板部と受け板部と筒状板部とを含む接続用フランジを構成し、接続用フランジの受け板部でシール部を受けることで、製造コストの低減を図りつつ、可撓性筒部に対して接続用フランジを着脱可能とするようにした。
【0008】
即ち、第1の発明は、可撓性を有する可撓性筒部と、該可撓性筒部の軸方向両端部にそれぞれ接続される接続用フランジとを備えた可撓継手を対象とし、可撓性筒部は、筒状の本体部と、該本体部の軸方向端部から径方向外側に延出して表面に相フランジに対するシール面を形成する環状のシール部と、該シール部の外周端部から本体部の軸方向内側に向かって屈曲する筒状の外周壁部とを有し、接続用フランジは、板金が折り返されて成り、上記本体部の軸方向縁部に外嵌する筒状の内周板部と、シール部の裏面側に形成されてシール部の受け面を構成する環状の受け板部と、外周壁部に内嵌する筒状板部とを有し、可撓性筒部の外周壁部の内部に、環状のビードワイヤーが埋設されていることを特徴とする。
【0009】
第1の発明では、板金が折り返されることで、接続用フランジが構成される。これにより、接続用フランジは、例えば鋳造によって成形されるフランジと比較して、加工が容易となり、薄型化、軽量化が図られる。
【0010】
接続用フランジの受け板部は、可撓性筒部のシール部の背面側に形成されて、シール部の受け面を形成する。接続用フランジと、この接続用フランジに相対する相フランジとの接続時には、シール部の変形が受け板部の受け面によって規制される。これにより、シール部にある程度の締め付け力が作用しても、シール部のシール性を十分に確保できる。つまり、本発明の接続用フランジでは、板金を折り返して形成された受け板部が、従来例のソリッドリング方式の補強リングと同様に機能する。
【0011】
また、接続用フランジの内周板部を本体部の端部外周縁部に外嵌させ、接続用フランジの筒状板部を外周壁部に内嵌させる嵌め合い構造としたため、可撓性筒部と接続用フランジとを一体形成せずとも、可撓性筒部に接続用フランジを保持させることができる。この嵌め合い構造により、可撓性筒部に対して接続用フランジが着脱可能となる。
【0012】
更に、可撓性筒部の外周壁部には、接続用フランジの筒状板部を締め付けるように、ビードワイヤーを埋設している。これにより、外周壁部の変形がビードワイヤーによって阻止させると共に、外周壁部と、この外周壁部に内嵌する筒状板部との間の密着度が高まる。従って、可撓性筒部から接続用フランジが外れてしまう、いわゆる首抜けも抑制される。
【0013】
また、ビードワイヤーは、シール部よりも径方向外側に位置する外周壁部に埋設される。これにより、フランジの接続時においてシール部が軸方向に圧縮されても、ビードワイヤーの埋設部に生ずる応力は、比較的小さくなる。よって、この埋設部における応力集中を緩和でき、この部位の破断、亀裂の発生等を回避できる。
【0014】
接続用フランジの受け板部の受け面は、環状の平面形状に形成されるのが好ましい(第2の発明)。
【0015】
受け面を平面形状とすると、フランジの接続時において、シール部の変形を効果的に防止できると共に、シール部に生ずる応力を分散できる。これにより、シール部では、いわゆる線シールよりも受圧面積が広い、いわゆる面シールを形成でき、シール圧が安定してシール性能が更に向上する。
【0016】
可撓性筒部の外周壁部の外周側には、空間が形成されるのが好ましい(第3の発明)。
【0017】
外周壁部の外周側に空間を形成して、外周壁部を外周側から拘束しない構成とすると、ビードワイヤーの埋設部に生ずる応力を更に軽減できる。具体的には、フランジの接続時にシール部が圧縮されると、これに伴い外周壁部に応力が生ずる。この際、外周壁部の外周側に空間が形成されると、外周壁部は、このような応力を緩和するようにして、外周側の空間に変形する。つまり、外周壁部の外周側の空間は、ビードワイヤーの埋設部における応力集中を回避するための、外周壁部の逃げ空間として機能する。これにより、ビードワイヤーの埋設部の破断、亀裂の発生を回避できる。
【0018】
接続用フランジは、筒状板部の軸方向内側端部から径方向外側に延出すると共に、複数のボルト穴が開口する環状の締結板部を更に有するのが好ましい(第4の発明)。
【0019】
これにより、締結板部のボルト穴にボルトを挿通して、接続用フランジと相フランジとをボルト/ナットにより互いに締結できる。
【0020】
接続用フランジの筒状板部には、上記本体部の軸方向内側に向かうにつれて径方向外側に拡径される拡径筒部が周方向の少なくとも一部に形成され、締結板部は、拡径筒部の軸方向内側端部から径方向外側に延出しており、可撓性筒部の外周壁部には、拡径筒部が内嵌するようにテーパ部が形成されているのが好ましい(第5の発明)。
【0021】
これにより、接続用フランジでは、拡径筒部が形成される部位において、ボルトの締結部位から筒状板部までの距離が短くなり、接続用フランジの強度を向上できる。その結果、ボルトの締結時において、筒状板部と締結板部との連接部位が、ボルトの締め付け方向へ曲がってしまうことを回避できる。
【0022】
接続用フランジは、締結板部の外周端部から可撓性筒部の軸方向外側に向かって屈曲する外周板部を含み、この外周板部の先端面に相フランジに当接する当接面を形成するのが良い(第6の発明)。
【0023】
これにより、接続用フランジと相フランジの接続時には、外周板部の先端が相フランジの当たり止めとして機能する。これにより、両者のフランジの接続時において、接続用フランジの撓み変形を防止できる。
【0024】
特に、この外周板部の先端面は、本体部の軸方向において、受け板部の受け面とシール部の表面との間に位置させるのが良い(第7の発明)。
【0025】
これにより、接続用フランジと相フランジとの間の締め付け力を最適に管理できる。具体的には、両者のフランジを締め付けて、相フランジが外周板部の先端面と面接触する状態で締め付け作業を終了させる。この状態では、相フランジが、締め付け前のシール部の表面よりも受け板部寄りに位置し、且つ受け板部と所定の距離が確保されるため、シール部に適度な締め付け力を作用させることができる。これにより、シール部の圧縮不足、及び圧縮し過ぎを防止でき、所期のシール性能を確保できる。
【0026】
可撓性筒部の外周壁部は、締結板部に当接するように本体部の軸方向内側に延出しており、ビードワイヤーは、外周壁部の先端部の内部に埋設されることが好ましい(第8の発明)。
【0027】
これにより、外周壁部の軸方向長さを最大限に確保できるため、外周壁部と接続用フランジの筒状板部との間の摩擦抵抗を増大でき、接続用フランジの首抜けを防止できる。しかも、ビードワイヤーを外周壁部の先端部に埋設することで、外周壁部を先端側から筒状板部に向かって締め付けることができる。その結果、外周壁部と筒状板部が一層強固な嵌め合いとなるため、接続用フランジの首抜けを効果的に回避できる。
【0028】
加えて、外周壁部の先端にビードワイヤーを埋設すると、フランジ接続時に圧縮されるシール部から、ビードワイヤーまでの間の距離を稼ぐことができる。これにより、外周壁部では、ビードワイヤーの埋設部に作用する応力を軽減でき、この部位の破断や亀裂の発生を防止できる。
【0029】
ビードワイヤーの直径は、接続用フランジと相フランジの接続時における、受け板部と相フランジとの間の軸方向距離よりも長く設定するのが良い(第9の発明)。
【0030】
これにより、例えば被接続管の相対的な変位に起因して、ビードワイヤーが相フランジと接続用フランジとの間を通過して径方向内側へ抜けてしまうことがない。従って、接続用フランジの首抜けを更に確実に防止できる。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、本発明に係る可撓継手によると、板金を折り返して接続用フランジを成形しているため、接続用フランジの軽量化、薄型化を図るとともに、接続用フランジの製造コストを低減できる。
【0032】
また、接続用フランジには、ソリッドリング方式の補強リングに相当する受け板部を形成しているため、部品点数を増大させることなく、シール部のシール性を向上できる。
【0033】
また、接続用フランジに内周板部や筒状板部を形成し、この接続用フランジと可撓性筒部とを嵌め合う構造としたため、可撓性筒部に対して接続用フランジを容易に着脱できる。従って、例えば可撓性筒部と、これに対応する接続用フランジとをそれぞれ別に量産できる。また、可撓性筒部や接続用フランジの交換時には、対応する部品のみを取り替えれば良いため、交換に要する時間やコストを低減できる。しかも、可撓性筒部の外周壁部にビードワイヤーを埋設し、この外周壁部を接続用フランジの筒状板部に締結する構造としているため、接続用フランジの首抜けも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、実施形態に係る可撓継手の全体を示す側面図であり、一部に縦断面を示したものである。
【図2】図2は、可撓継手を軸方向外側から視た平面図である。
【図3】図3は、接続用フランジの近傍を拡大した縦断面図である。
【図4】図4は、接続用フランジの近傍を拡大した縦断面図であり、相フランジを締結した状態を示すものである。
【図5】図5は、変形例1に係る可撓継手において、接続用フランジの近傍を拡大した縦断面図である。
【図6】図6は、変形例2に係る可撓継手において、接続用フランジの近傍を拡大した縦断面図である。
【図7】図7は、従来例のソリッドリング方式の可撓継手の要部縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0036】
図1は、本発明の実施形態に係る可撓継手10を示している。可撓継手10は、給水用の配管や空調用の配管を被接続管とし、このような被接続管の防振継手として用いられる。
【0037】
可撓継手10は、可撓性を有する可撓性筒部20と、可撓性筒部20の表面に設けられる補強部30と、可撓性筒部20の軸方向両端にそれぞれ設けられる一対の接続用フランジ40,40と、接続用フランジ40を可撓性筒部20に締め付けるための一対のビードワイヤー50とを備えている。
【0038】
可撓性筒部20は、伸縮性ないし可撓性を有するゴム材料で構成されている。本実施形態の可撓性筒部20は、その内部を流れる流体(例えば水道水等)の影響による経年劣化を考慮して、耐塩素性/耐オゾン性に優れた合成ゴムが用いられる。
【0039】
可撓性筒部20は、筒状の胴部を成す本体部21を有している。本体部21は、軸方向両端にそれぞれ正円形の開口21b,21bが形成され、両者の開口21bの間に流体が流れる内部空間Sが形成される。
【0040】
本体部21の軸方向における中間部位には、径方向外側に向かって略球状に膨出する膨出部21aが形成されている。この膨出部21aは、未加流の円筒状のゴム成形材料の内部において、中空球形状の成形型(エアバッグ等)を膨らませてゴム成形材料の胴部を径方向外側に加圧変形させ、その後にこのゴム成形材料を加流させることで、得ることができる。なお、このような成形/加流工程は、本体部を成す未加流のゴム成形材料の表面に、補強部30の補強布31が貼り付けた状態で行われる。
【0041】
図1〜図3に示すように、可撓性筒部20の本体部21の軸方向両端には、シール部22,22及び外周壁部23,23が、本体部21と一体的に形成される。シール部22は、本体部21の軸方向端部の開口21bの縁部から、径方向外側に延出する環状に形成されている。シール部22の表面(本体部21の軸方向外側の面)には、接続用フランジ40に締結される相フランジ60に対するシール面22aが形成される(図4を参照)。外周壁部23は、シール部22の外周端部から本体部21の軸方向内側(軸方向のうち膨出部21aが形成される中央部側)に向かって屈曲するように形成されている。これにより、外周壁部23と本体部21との間には、軸方向内側に開口する環状の溝が形成されることになる。
【0042】
可撓性筒部20では、シール部22と外周壁部23との間の連接部位に、外側傾斜部24が形成され、シール部22と本体部21との間の連接部位に、内側傾斜部25が形成されている。外側傾斜部24は、本体部21の軸方向内側に向かうに連れて径方向外側に拡径するような環状の傾斜面を形成している。また、内側傾斜部25は、本体部21の軸方向内側に向かうに連れて径方向内側に縮径するような環状の傾斜面を形成している。このような傾斜部24,25の形成箇所に応じて、シール部22のシール面22aの面積が規定されている。
【0043】
本実施形態の補強部30は、可撓性筒部20の表面側に形成される1枚の補強布31で構成されている。補強布31は、その外径が略筒状に形成されており、その両端が各ビードワイヤー50,50を包むように折り返されて、本体部の軸方向内側に伸びている。このような状態の補強布31が可撓性筒部20に加流接着されることで、可撓性筒部20の表面側に補強布31が保持される。補強布31は、例えば一軸方向のすだれ織りの補強布を複数積層することで構成される。
【0044】
図1〜図4に示すように、接続用フランジ40は、可撓性筒部20の軸方向端部に設けられている。接続用フランジ40は、ボルト61及びナット62を介して、被接続管側の相フランジ60に締結される(図4を参照)。
【0045】
接続用フランジ40は、SPCC(一般構造用圧延鋼材)から成る板金を折り返してプレス成形される、いわゆるプレスフランジで構成されている。このように、接続用フランジ40をプレス加工によって成形することで、例えば鋳造によって成形する鋼性のフランジと比較して、フランジの加工コストを低減でき、更にはフランジの薄肉化、軽量化を図ることができる。
【0046】
接続用フランジ40では、その径方向内側から径方向外側へ向かって順に、内周板部41、受け板部42、中間板部(筒状板部)43、締結板部44、及び外周板部45が連続的に形成されている。
【0047】
内周板部41は、可撓性筒部20の本体部21の端部の外周縁部(図3に示す首部21c)に外嵌している。内周板部41と首部21cとの間には、補強布31の本体層31aと、折り返し層31bとが積層されて狭持されている。受け板部42は、内周板部41の軸方向外側端部から、径方向外側に延出する環状に形成されている。受け板部42は、シール部22の背面側に形成されており、受け板部42の表面(シール部側に臨む面)には、シール部22の受け面42aが形成されている。中間板部43は、受け板部42の外周端部から軸方向内側に屈曲しており、外周壁部23に内嵌している。
【0048】
以上のように、接続用フランジ40では、内周板部41と受け板部42と中間板部43とによって、軸方向外側に突出する環状の凸条が構成されている。この凸条が、外周壁部23の内側の環状溝に嵌り込むことで、可撓性筒部20に接続用フランジ40が保持される。このような嵌め合い構造により、接続用フランジ40は、可撓性筒部20に対して着脱可能となる。
【0049】
また、シール部22の背面側に受け面42aを形成することで、フランジ40,60の接続時において、シール部22の変形を受け面42aによって阻止できる。これにより、シール部22にある程度の締め付け力が作用しても、シール部22のシール性を十分確保できる。また、受け面42aは、環状の平面形状をしているため、フランジ40,60の接続時にシール部22に生じる応力を分散できる。これにより、シール部22では、いわゆる面シールを形成でき、シール圧が安定してシール性能を向上できる。
【0050】
また、受け面42aを形成する受け板部42は、接続用フランジ40を折り返して形成されるため、例えばソリッドリング方式のように、別途、環状の補強リングを設ける必要がない。つまり、本実施形態では、接続用フランジ40の一部が受け面42aを兼ねているため、製造コストを低減できる。
【0051】
締結板部44は、中間板部43の軸方向内側端部から径方向外側に延出する環状に形成されている。締結板部44は、受け板部42よりも径方向の幅が広くなっている。締結板部44のうち径方向外側寄りの部位には、複数のボルト穴44aが、周方向に等間隔置きに配列されている。ボルト穴44aには、接続用フランジ40と相フランジ60とを締結するためのボルト61が挿通される(図4を参照)。ボルト61は、接続用フランジ40のボルト穴44aと、相フランジ60のボルト穴60を挿通した状態で、ナット62に締結される。
【0052】
本実施形態において、締結板部44のうち径方向内側寄りの部位には、外周壁部23の先端が当接している。そして、この外周壁部23の先端部の内部に、ビードワイヤー50が埋設されている。ビードワイヤー50は、軸直角断面が略円形状となる炭素鋼製のワイヤーであり、接続用フランジ40の中間板部43を囲むような閉ループ状に形成されている。このビードワイヤー50により、外周壁部23を中間板部43側に締め付けることで、可撓性筒部20からビードワイヤー50が外れてしまう、いわゆる首抜けを防止している。
【0053】
ビードワイヤー50は、締め付け力が集中的に作用するシール部22よりも径方向外側に設けられている。このため、外周壁部23では、ビードワイヤー50の埋設部位に作用する応力を軽減できる。また、外周壁部23の先端を締結板部44まで延出させ、ビードワイヤー50を外周壁部23の先端部に設けると、シール部22のシール面22aからビードワイヤー50までの距離を稼ぐことができる。このため、外周壁部23におけるビードワイヤー50の埋設部位に作用する応力を更に軽減できる。以上のように、外周壁部23では、ビードワイヤー50の埋設部位における応力集中を緩和している。このため、この部位が破断したり、この部位に亀裂が生じたりすることを回避できる。
【0054】
ビードワイヤー50の直径D1は、約6mmに設定されている。また、本実施形態のビードワイヤー50の直径D1は、受け板部42の受け面42a(図3に示すL1で表す面)と、未締結時のシール部22の表面(図3に示すL2で表す面)との間の距離D2よりも、短く設定されている。また、ビードワイヤー50の直径D1は、接続用フランジ40と相フランジ60の接続時における、受け板部42と相フランジ60との間の軸方向距離D3よりも長く設定される(図4を参照)。これにより、フランジ40,60の接続時において、接続用フランジ40からビードワイヤー50が外れてしまうことが回避される。
【0055】
具体的には、図4に示すようなフランジ40,60の締結時における、受け板部42と相フランジ60の間隔D3よりも、ビードワイヤー50の直径D1を長くすると、受け板部42と相フランジ60との間をビードワイヤー50が通過することがない。よって、例えば地震等により、可撓継手10が変形してビードワイヤー50が径方向内側に引っ張られたとしても、ビードワイヤー50が接続用フランジ40の内側へ抜けてしまうことがない。従って、接続用フランジ40の首抜けを一層確実に回避できる。
【0056】
外周板部45は、締結板部44の径方向外側端部から軸方向外側に向かって屈曲する筒状に形成されている。外周板部45の先端面45a(図3に示すL3で表す面)は、本体部21の軸方向において、受け板部42の受け面42a(図3に示すL1で表す面)と、未締め付け状態のシール部22の表面(図3に示すL2で表す面)との間に位置するように設定されている。この先端面45aは、フランジ40,60の接続時において、相フランジ60に当接する当接面を構成している。これにより、外周板部45は、相フランジ60の当たり止めとして機能するため、フランジ40,60の接続時において、接続用フランジ40の撓み変形を防止できる。
【0057】
また、外周板部45と相フランジ60とを当接させることで、両者のフランジ40,60の相対位置(即ち、両フランジ40,60の締め付け力)を最適に管理できる。
【0058】
具体的に、フランジ40,60の締結時において、相フランジ60の端面と外周板部45の先端面45aとが面接触させると、相フランジ60の端面を、上記L1とL2の間にシール面22aを形成できる。これにより、シール部22の圧縮代が最適に保持されるため、シール部22の圧縮不足や圧縮し過ぎによりシール性能が損なわれてしまうことも回避できる。
【0059】
また、本実施形態の接続用フランジ40は、可撓性筒部20の外周壁部23の外周側に環状の逃げ空間46を形成するように折り返されている。つまり、本実施形態の外周壁部23の外周面は、接続用フランジ40によって拘束されない。これにより、フランジ40,60の接続時にシール部22が圧縮変形し、これに伴い外周壁部23に応力が生じると、外周壁部23は、拘束されない逃げ空間46側に向かって弾性変形しようとする。これにより、外周壁部23では、ビードワイヤー50の埋設部における応力集中を一層効果的に緩和できるため、この埋設部の破断や、亀裂の発生を回避できる。
【0060】
《その他の実施形態》
上記実施形態においては、以下のような構成としても良い。
【0061】
上記実施形態では、外周壁部23の外周側に逃げ空間46を形成している。しかしながら、図5に示す例(変形例1)ように、外周壁部23の外周側にも筒状の折り返し板部47を形成し、中間板部43と折り返し板部47との間に外周壁部23の先端部を嵌め込む構造としても良い。この構造では、接続用フランジ40の嵌め合いが更に強固となり、且つ外周壁部23の弾性変形を防止できるため、接続用フランジ40の首抜けを確実に回避できる。
【0062】
上記実施形態では、接続用フランジ40の筒状板部(中間板部)43が、受け板部42の外周端部から軸方向内側へ向かって真っ直ぐに伸びている。つまり、上記実施形態の筒状板部43は、軸方向に亘って均一な径となる円筒状に形成されている。しかしながら、図6に示す例(変形例2)のように、筒状板部43を径方向外側に向かって拡径させるようしてもよい。
【0063】
具体的に、図6に示す例の筒状板部43には、その中間部から下端部に亘って拡径筒部48が形成されている。この拡径筒部48は、可撓性筒部20の軸方向内側に向かうにつれて径方向外側に拡径するような、略台形円筒状に形成されている。つまり、図6の例では、筒状板部43において、拡径筒部48が全周に亘って形成されている。
【0064】
一方、可撓性筒部20の外周壁部23には、拡径筒部48に沿うようにテーパ部27が形成されている。このテーパ部27は、外周壁部23の下部に形成されており、可撓性筒部20の軸方向内側に向かうにつれて内径を拡大させる傾斜面を形成している。そして、テーパ部27の内側に拡径筒部48が内嵌している。
【0065】
図6に示す構成では、相フランジ60に対する接続用フランジ40の締結時において、筒状板部43と締結板部44との連接部位が、ボルトの締結方向に変形してしまうのを確実に防止できる。
【0066】
具体的に、図4に示す上記の実施形態のように、筒状板部43を軸方向に延ばし、筒状板部43の下部に締結板部44を連接する構造では、ボルトの締結時において、筒状板部43の下部からボルトの締結部までの距離が比較的長くなる。このため、ボルト締め付け時には、筒状板部43と締結板部44との連接部位に作用する曲げモーメントが大きくなり易い。従って、ボルトの締め付け力が過剰になると、この連接部位がボルトの締め付け方向に変形してしまう可能性がある。
【0067】
これに対し、図6に示す構成では、筒状板部43の下部からボルトの締結部までの距離が比較的短くなるので、筒状板部43の下部に作用する曲げモーメントも比較的小さくなる。その結果、ボルトの締め付け時において、筒状板部43と締結板部44との連接部位が変形してしまうのを確実に防止できる。
【0068】
なお、この変形例2の拡径筒部48は、必ずしも筒状板部43の全周に亘って形成しなくてもよく、例えば筒状板部43の周方向の一部のみに形成しても良い。具体的には、例えば筒状板部43において、周方向に所定の間隔を介して複数の拡径筒部48を形成し、各径筒部48の間にリブを形成するようにしても良い。なお、このリブの形状は、例えば図3の実施形態の筒状板部43に相当する縦断面形状とすれば良い。複数の拡径筒部48の間にリブを形成することで、接続用フランジ40の強度を向上できる。なお、この場合、複数のリブが、締結板部44のボルト穴44aと径方向に一致するように、各リブを配設してもよいし、複数のリブが複数のボルト穴44aと径方向にずれるように各リブを配設してもよい。また、例えば図3の構成において、筒状板部43と締結板部44との間の角部を局所的にビードワイヤー46側(図3における斜め上方側)へ折り返すことで、この部位を変形例2の拡径筒部48に相当する補強部とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上説明したように、本発明は、可撓継手の製造コストを図ると共に、可撓性筒部から接続用フランジを容易に着脱でき、且つ接続用フランジの首抜けも確実に防止できることから、産業上の利用性は高い。
【符号の説明】
【0070】
10 可撓継手
20 可撓性筒部
21 本体部
22 シール部
22a シール面
23 外周壁部
27 テーパ部
40 接続用フランジ
41 内周板部
42 受け板部
42a 受け面
43 中間板部(筒状板部)
44 締結板部
45 外周板部
45a 先端面
48 拡径筒部
50 ビードワイヤー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する可撓性筒部と、該可撓性筒部の軸方向両端部にそれぞれ接続される接続用フランジとを備えた可撓継手であって、
上記可撓性筒部は、筒状の本体部と、該本体部の軸方向端部から径方向外側に延出して表面に相フランジに対するシール面を形成する環状のシール部と、該シール部の外周端部から本体部の軸方向内側に向かって屈曲する筒状の外周壁部とを有し、
上記接続用フランジは、板金が折り返されて成り、上記本体部の軸方向端部に外嵌する筒状の内周板部と、上記シール部の裏面側に形成されて該シール部の受け面を構成する環状の受け板部と、上記外周壁部に内嵌する筒状板部とを有し、
上記可撓性筒部の外周壁部の内部には、環状のビードワイヤーが埋設されていることを特徴とする可撓継手。
【請求項2】
請求項1において、
上記受け板部の受け面は、環状の平面形状に形成されることを特徴とする可撓継手。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記可撓性筒部の外周壁部の外周側には、空間が形成されることを特徴とする可撓継手。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つにおいて、
上記接続用フランジは、上記筒状板部の軸方向内側端部から径方向外側に延出すると共に複数のボルト穴が開口する環状の締結板部を更に有することを特徴とする可撓継手。
【請求項5】
請求項4において、
上記接続用フランジの筒状板部には、上記本体部の軸方向内側に向かうにつれて径方向外側に拡径される拡径筒部が周方向の少なくとも一部に形成され、
上記締結板部は、上記拡径筒部の軸方向内側端部から径方向外側に延出しており、
上記可撓性筒部の外周壁部には、上記拡径筒部が内嵌するようにテーパ部が形成されていることを特徴とする可撓継手。
【請求項6】
請求項4又は5において、
上記接続用フランジは、上記環状板部の外周端部から可撓性筒部の軸方向外側に向かって屈曲する外周板部を含み、
上記外周板部の先端面には、上記相フランジに当接する当接面が形成されることを特徴とする可撓継手。
【請求項7】
請求項6において、
上記外周板部の先端面は、本体部の軸方向において、上記受け板部の受け面とシール部の表面の間に位置していることを特徴とする可撓継手。
【請求項8】
請求項4乃至7のいずれか1つにおいて、
上記可撓性筒部の外周壁部は、上記環状板部に当接するように上記本体部の軸方向内側に延出しており、
上記ビードワイヤーは、上記外周壁部の先端部の内部に埋設されていることを特徴とする可撓継手。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1つにおいて、
上記ビードワイヤーの直径が、上記接続用フランジと相フランジの接続時における、受け板部と相フランジとの間の軸方向距離よりも長いことを特徴とする可撓継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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