説明

可溶性Gタンパク質共役型レセプター(sGPCR)に関する組成物および方法

本発明は、可溶性Gタンパク質共役型受容体(sGPCR)に関連する組成物及び方法に関する。具体的な実施形態において、本発明は、可溶性コルチコトロピン放出因子受容体関連タンパク質sCRFR2、並びにCRFRシグナル伝達及びCRFファミリーリガンドとCRFR受容体(例えばCRFR2、CRFR1及び機能的又はシグナル伝達可能なその変異体)との間の相互作用に対するその作用に関連する組成物及び方法を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2005年2月8日に出願された米国仮特許出願第60/650,866号に対する優先権を主張する。米国仮特許出願第60/650,866号は、その全体が、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
米国合衆国政府は、NIDDKからのグラント番号DK 26741に従って、本発明における権利を有する。
【0003】
(技術分野)
本発明は一般的に分子生物学、神経学及び内分泌学に関連する方法及び組成物に関連する。特定の特徴において、これは、可溶性Gタンパク質共役型受容体(sGPCR)を、GPCR活性のモジュレーター及び/又はこのような可溶性GPCRに結合するリガンドの薬理学的作用のモジュレーターとして含む組成物及びそれを用いる方法に関する。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
受容体は一般的に、抗原、ホルモン又は神経伝達物質のような物質と弱い可逆的な結合を形成する、細胞膜内又は細胞内部に位置する分子構造である。各受容体は特定の物質と結合するように設計されている。受容体の特定のファミリーは7回膜貫通(「7TM」)又はGタンパク質共役型受容体(「GPCR」)である。これらの受容体は適切な物質が受容体に結合しているときにシグナル生成するためにグアニンヌクレオチド結合Gタンパク質(「Gタンパク質」)と連結する。Gタンパク質がグアニンジホスフェート(「GDP」)と結合している場合は、Gタンパク質は不活性であるか、又は「オフ位置」にある。同様に、Gタンパク質がグアニントリホスフェート(「GTP」)に結合する場合は、Gタンパク質は活性であるか、又は「オン位置」にあり、これにより細胞における生物学的応答の活性化が媒介される。
【0005】
GPCRは共通の構造モチーフを共有している。これらの受容体は全て、各々が膜に行き渡る7アルファヘリックスを形成する22〜24疎水性アミノ酸の7配列を有している(即ち膜貫通−1(TM−1)、膜貫通−2(TM−2)等)。膜貫通ヘリックスは細胞膜の外部又は「細胞外」の面の上において膜貫通−2と膜貫通−3、膜貫通−4と膜貫通−5、及び、膜貫通−6と膜貫通−7の間のアミノ酸の鎖により連結されている(これらを「細胞外ループ」又は「細胞外」領域と称する)。膜貫通ヘリックスはまた細胞膜の内部又は「細胞内」の面の上において膜貫通−1と膜貫通−2、膜貫通−3と膜貫通−4、及び、膜貫通−5と膜貫通−6の間のアミノ酸の鎖により連結されている(これらを「細胞内ループ」又は「細胞内」領域と称する)。受容体の「カルボキシ」(「C」)末端は細胞の内部の細胞内空間に位置し、そして受容体の「アミノ」(「N」)末端は細胞の外部の細胞外空間に位置する。
【0006】
一般的に、リガンドが受容体に結合して受容体を「活性化」する場合、細胞内領域と細胞内「Gタンパク質」の間の共役を可能にする細胞内領域のコンホーメーションの変化が生じる。GPCRはGタンパク質に関して「無差別」であることが報告されており、即ち、GPCRは1つより多いGタンパク質と相互作用することができる(Kenakin,1988)。他のGタンパク質も存在するが、現時点ではGq、Gs、Gi及びGoが発見されているGタンパク質である。Gタンパク質とのリガンド活性化GPCR共役はシグナル伝達カスケードの過程又はシグナル伝導を開始させる。通常の条件下ではシグナル伝導は究極的には細胞の活性化又は細胞の抑制をもたらす。第3の細胞内ループ(IC−3)並びに受容体のカルボキシ末端がGタンパク質と相互作用すると考えられている。
【0007】
一般的に、身体内のほぼ全ての細胞の活性は細胞外シグナルにより調節されている。ヒトにおける、そして広範な種類の生物に伴っている多くの生理学的事象はGPCRを介したタンパク質媒介膜貫通シグナル伝達を使用している。特定のGPCRから生じるシグナルは細胞内のGタンパク質の活性化をもたらす。シグナルの大多数はGPCRにより細胞の内部に伝達される。このシグナル伝達過程には多くの多様な特徴があり、例えばGPCR及びそのGタンパク質連結相手に関する複数の受容体のサブタイプ並びに種々の連結細胞内二次メッセンジャーが包含される。シグナル伝導は関与するタンパク質に応じて細胞内過程の全体的又は部分的な活性化又は不活性化をもたらす場合がある。GPCRに結合する重要なシグナル伝達分子又は神経伝達物質は、限定しないが、コルチコトロピン放出因子、副甲状腺ホルモン、モルヒネ、ドーパミン、ヒスタミン、5−ヒドロキシトリタミン、アデノシン、カルシトニン、胃抑制ペプチド(GIP)、グルカゴン、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、PACAP、セクレチン、血管活性腸ポリペプチド(VIP)、利尿ホルモン、EMR1、ラトロフィリン、脳特異的血管形成抑制剤(BAI)、カドヘリン、EGF、LAG、(CELSR)及び他の同様のタンパク質又は分子を包含する。
【0008】
GPCRはタンパク質のスーパーファミリーを構成する。現在2000超のGPCRが文献で報告されており、これらは少なくとも3つのファミリー、即ちロドプシン様ファミリー(ファミリーA)、カルシトニン受容体(ファミリーB)及び代謝性生物産生グルタメートファミリー(ファミリーC)に分割される(Ji et al.,1998)。報告されたGPCRには特性化された受容体と対応するリガンドがまだ発見されていないオーファン受容体の両方が包含される(Wilson et al.,1999;Wilson et al.,1998;Marchese et al.,1999)。多数のGPCRにも関わらず、一般的に、各GPCRは同様の分子構造を共有している。各GPCRは種々の長さのアミノ酸残基のストリングを含む。GPCRは膜貫通と呼ばれる7つの異なるコイルとして細胞膜内部に存在する。GPCRのアミノ末端は細胞外ループと共に細胞の外部に存在し、カルボキシ末端は細胞内ループと共に細胞の内部に存在する。
【0009】
GPCRに対するリガンドは小分子並びにペプチド及び小型タンパク質を含む。これらのリガンドとその受容体との間の相互作用は系毎に異なるが、それらは4つの細胞外ドメインのうちの幾つかの残基及びN末端との相互作用を必要とする。一部の場合においては、N末端単独でリガンドと相互作用するかそれと結合する能力を保持する場合がある。既知リガンドを有するGPCRは多くの疾患、例えば多発性硬化症、糖尿病、慢性関節リューマチ、喘息、アレルギー、炎症性腸疾患、数種の癌、甲状腺障害、心臓疾患、色素性網膜炎、肥満、神経学的障害、骨粗鬆症、ヒト免疫不全ウイルス(「HIV」)感染及び後天性免疫不全症候群(「AIDS」)と関連している(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5)。
【0010】
従って、当該分野においては、治療薬として使用するためのGPCRのモジュレーター及びGPCRに結合するリガンドを製造する方法が必要とされている。これらの治療薬はGPCR関連疾患及び/又は障害を防止又は治療するために使用してよい。
【非特許文献1】Murphy et al.,J.Virol.,74(17):7745−7754、2000
【非特許文献2】Mannstadt et al.,Am.J.Physiol.,277(5 Pt 2):F665−675,1999
【非特許文献3】Berger et al.,Annu.Rev.Immunol.,17:657−700,1999
【非特許文献4】Jacobson et al.,J.Acquir.Immune.DeficSyndr.,21(1):S34−41,1997
【非特許文献5】Meij et al.,Mol.Cell Biochem,157(1−2):31−38,1996
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の簡単な要旨)
本発明はsGPCRリガンド結合ドメイン並びにGPCRシグナル伝達及びGPCRリガンドとそのGPCRの間の相互作用に対するsGPCRの作用に関係する組成物及び方法に関する。
【0012】
本発明の実施形態は単離された可溶性Gタンパク質共役型受容体(sGPCR)リガンド結合ドメインを包含する。sGPCRはGPCR細胞外ドメインの全部又は部分を含む。本発明の1つの特徴において、sGPCRはGPCRファミリーBメンバーの可溶性形態である。別の特徴においてsGPCRはGPCRサブファミリーB1のメンバーである。更に別の特徴において、sGPCRは可溶性セクレチン受容体、VPAC受容体、VPAC受容体、PAC受容体、グルカゴン受容体、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)受容体、グルカゴン関連ペプチド1(GLP−1)受容体、グルカゴン関連ペプチド2(GLP−2)受容体、胃抑制ペプチド(GIP)受容体、コルチコトロピン放出因子1(CRF1)受容体、コルチコトロピン放出因子2(CRF2)受容体、副甲状腺ホルモン1(PTH1)受容体、副甲状腺ホルモン2(PTH2)受容体、カルシトニン受容体様受容体又はカルシトニン受容体である。sGPCRは可溶性PTH1受容体又はPTH2受容体であることができる。本発明の実施形態はまたコルチコトロピン放出因子受容体2α型(sCRFR2α)の可溶性形態であるsGPCRを包含する。sCRFR2αのアミノ酸配列はCRFR2α遺伝子のエクソン3、4及び5によりコードされるアミノ酸配列を含んでよく、或いは、エクソン6以上を含有しない。本発明の組み換えsGPCRはアミノ末端細胞外ドメインの全て又は部分を含むGPCRの細胞外ドメインの75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、130、135、140、150、155、160、180、200個以上及びこれらの中間範囲の数量のアミノ酸を包含してよい。特定の特徴において、sGPCRリガンド結合ドメインは配列番号4(sCRFR2α)、配列番号8(sCRFR2β)、配列番号12(sCRFR2γ)又は配列番号15(mCRFR2α)の50、75、100、125,150以上のアミノ酸に少なくとも70、75、80、85、90、95又は98%類似するアミノ酸配列を含んでよい。別の特徴において、sCRFRは配列番号4、8、12、15又はこれらの組合せのアミノ酸配列を含む。更に別の特徴において、本発明は、アフィニティータグ、標識、検出可能又は治療用の化学的部分、ビオチン/アビジン標識、放射性核種、検出可能又は治療用の酵素、蛍光マーカー、ケミルミネセントマーカー、免疫グロブリンドメイン又はこれらの何れかの組合せを更に含む単離されたsGPCRを包含する。1つの特徴において、GPCR化合物は免疫グロブリンドメイン、特にFcドメインを含む。sGPCRは例えばポリエチレングリコール(PEG)のような重合体にコンジュゲートすることができる。
【0013】
本発明の実施形態は本発明のsGPCRをコードするポリヌクレオチドを包含する。ポリヌクレオチドは更に、sGPCRをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結したプロモーターを含んでよい。sGPCRコード配列は発現カセット内に包含されることができる。発現カセットは発現ベクター内に含まれてよい。発現ベクターは限定しないが線状核酸、プラスミド発現ベクター又はウイルス発現ベクターを包含する。特定の特徴において、発現ベクターは送達ベクター内に含まれ、これは限定しないがリポソーム、ポリペプチド、ポリカチオン、脂質、細菌又はウイルスを包含してよい。
【0014】
本発明の更に別の実施形態は、a)sGPCRに標的組織を接触させること;及びb)標的組織の近接部においてGPCRリガンドを結合させることを含み、そして組織中のGPCRの活性がモジュレートされる、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)の活性をモジュレートする方法を包含する。リガンドはGPCRファミリーBリガンド、GPCRサブファミリーB1リガンドであることができる。特定の特徴において、リガンドは、コルチコトロピン放出因子(CRF)、ウロコルチン1、ウロコルチン2、ウロコルチン3、ストレスコピン、副甲状腺ホルモン、PTH関連ホルモン、TIP39、カルシトニン、アミリン、CGRP(CALCA及びCALCB),アドレノメジュリン、セクレチン、VIP、PACAP、グルカゴン、GHRH、GLP−1、GLP−2、GIP又はこれらの何れかの組合せである。方法は又、a)適切な薬学的溶液中にsGPCRリガンド結合ドメインを調製すること;及び、b)薬学的溶液を、動物、人、対象及び/又は患者に対し、動物の標的組織内の標的リガンドの結合に影響する量において、投与すること、の工程を含む標的組織を接触させることを包含してよい。投与は限定しないが内服、注射、内視鏡又は灌流であることができる。注射は限定しないが静脈内、筋肉内、皮下、皮内、頭蓋内又は腹腔内注射を包含する。治療され、緩解し、モジュレーションが行われ、重症度が低下される障害は、GPCRの過剰活性化又はGPCRリガンドの過剰分泌に起因する障害を包含する。特定の特徴において、障害はインスリン感受性又はII型糖尿病である。障害は又、不安関連障害;気分障害;外傷後ストレス障害;核上麻痺;免疫抑制;薬剤又はアルコール離脱症状;炎症性障害;疼痛;喘息;乾癬及びアレルギー;恐怖症;ストレス誘導の睡眠障害;線維筋肉痛;気分変調;双極性障害;循環気質;疲労症候群;ストレス誘導性頭痛;癌;ヒト免疫不全ウイルス感染症;神経変性疾患;胃腸疾患;摂食障害;出血性ストレス;ストレス誘導性精神エピソード;甲状腺機能正常病的症候群;不適切な抗利尿ホルモンの症候群;肥満;不妊;頭部外傷;脊髄外傷;虚血性ニューロン損傷;興奮毒性ニューロン損傷;癲癇;心臓血管及び心臓関連の障害;免疫機能不全;筋肉痙攣;尿失禁;アルツハイマー型老年性痴呆;多発脳梗塞性痴呆;筋萎縮性側索硬化症;薬物依存及び中毒;心理社会的小人症、インスリン過敏症又は感受性低下症、低血糖症、皮膚障害;又は毛髪損失を包含してよい。特定の特徴において、障害は不安関連障害;気分障害;双極性障害;外傷後ストレス障害;炎症性障害;薬物依存及び中毒;胃腸障害;又は皮膚障害である。更に別の特徴において、不安関連障害は全般的不安障害であるか、又は気分障害が抑鬱である。更に別の特徴において、胃腸障害は刺激性腸症候群である。
【0015】
本発明の別の実施形態は、a)GPCRリガンドを含有することが疑われる試料をsGPCRポリペプチドに接触させること;及びb)sGPCRポリペプチド結合リガンドの存在又は非存在を調べること、を含むGPCRリガンドを検出する方法を包含する。方法は更に結合リガンドを特性化することも含んでよい。結合リガンドの特性化は、限定しないが、種々のクロマトグラフィー、質量スペクトル分析、ペプチド配列決定等を包含する。sGPCRポリペプチドは基質又は表面に作動可能に連結してもよく、しなくてもよい。方法は更に、c)放射標識GPCRリガンドを投与すること;及びd)sGPCRへの放射標識GPCRリガンドの結合又は結合に対する競合を調べることを含むことができる。GPCRリガンドは限定しないがコルチコトロピン放出因子(CRF)、ウロコルチン1、ウロコルチン2、ウロコルチン3、副甲状腺ホルモン、PTH関連ホルモン、TIP39、カルシトニン、アミリン、CGRP(CALCA及びCALCB),アドレノメジュリン、セクレチン、VIP、PACAP、グルカゴン、GHRH、GLP−1、GLP−2又はGIPを包含する。
【0016】
更に別の実施形態はa)sGPCRを含有することが疑われる試料をsGPCR又は関連する表面結合GPCRに結合するリガンドに接触させること;及びb)GPCRリガンドの試料成分との結合を調べることを含むsGPCRを検出する方法を包含する。方法は更に結合sGPCRを特性化することを含んでよく、これはクロマトグラフィー、質量スペクトル分析、タンパク質フラグメント化及び配列決定等を包含できる。GPCRリガンドは基質又は表面に作動可能に連結してよい。方法は更に、c)放射標識GPCRリガンドを投与すること;及びd)試験すべき試料の存在下及び非存在下でGPCRへの放射標識sGPCRリガンドの結合又は結合に対する競合を調べることを含むことができる。例示されるリガンドはコルチコトロピン放出因子(CRF)、ウロコルチン1、ウロコルチン2、ウロコルチン3、副甲状腺ホルモン、PTH関連ホルモン、TIP39、カルシトニン、アミリン、CGRP(CALCA及びCALCB),アドレノメジュリン、セクレチン、VIP、PACAP、グルカゴン、GHRH、GLP−1、GLP−2、GIP又は他の知られたGPCRリガンドを包含する。
【0017】
本発明の更に別の実施形態においては、sGPCRに特異的に結合する抗体を包含する。特定の特徴において、抗体はsGPCRのアミノ末端又はカルボキシ末端に結合してよい。本発明の特徴は、GPCRの膜貫通領域をコードするヌクレオチド配列のオルタナティブリーディングフレームから誘導してよいカルボキシ末端の5、10、15、20個以上のアミノ酸の配列に結合する抗体を包含する(典型的にはオルタナティブスプライシングの結果であり、そして本発明の組み換えポリヌクレオチド中に組み込んでよい)。
【0018】
本発明の実施形態はタンパク質、核酸の何れか、又はタンパク質と核酸の両方の評価又は調査を用いたsGPCRの発現を検出する方法を包含する。本発明の特徴はa)分析すべき核酸試料を得ること;及びb)sGPCRをもたらすスプライスジャンクションを含むsGPCR核酸の存在を調べること、を含むsGPCRmRNAの検出方法を包含する。方法は核ハイブリダイゼーション、核酸増幅又は他の核酸分析方法によりmRNAの特定の種の存在を調べることを包含してよい。特定の特徴において、sGPCRは可溶性B型GPCR、可溶性B1型GPCR、可溶性CRFR、sCRFR1、sCRFR2又はsCRFRαである。ポリヌクレオチドはGPCRのアミノ末端アミノ酸を含み、膜貫通ドメインの一部分をコードするエクソンを全く含まないか、一部を含むエクソン/エクソンジャンクションを包含できる。特定の特徴において、sCRFR2αのスプライスジャンクションはエクソン5/エクソン7ジャンクションであり、ここでエクソンの表記はCRFR2エクソンのゲノム表記に基づく。CRFR2a転写産物に基づいて、エクソンはそれぞれ3及び5と表示される(例えば図1参照)。
【0019】
「可溶性」CRFR(sCRFR)は受容体の細胞外ドメインの全て又は部分を含むが、細胞膜内に完全長受容体を通常は保持している膜貫通ドメイン1つ以上の全て又は部分を欠失しているGPCRを意味する。可溶性の形態は細胞膜に組み込まれない。即ち、例えば、そのような可溶性受容体を哺乳類細胞内で組み換えにより作成する場合、それは細胞の表面に残存するのではなく、原形質膜を通って組み換え宿主から分泌されることができる。一般的に、本発明の可溶性受容体は水溶液中で可溶である。しかしながら、特定の条件下においては、受容体は封入体の形態であることができ、これは標準的な操作法により容易に可溶化される。このようなsGPCRは操作された核酸、プロセシングされたタンパク質(例えばプロテアライズされたタンパク質)、合成タンパク質又は単離されたスプライス変異体から誘導してよい。このようなsGPCRをコードするポリヌクレオチドを単離又は操作してよい。
【0020】
本明細書においては、「単離された」及び「精製された」という用語は、天然の存在環境において核酸又はポリペプチドに通常並存しているかそれと相互作用する成分を実質的又は本質的に含まない、核酸又はポリペプチド又はその生物学的に活性な部分を指すために互換的に使用される。即ち、単離又は精製された核酸又はポリペプチドは、組み換え手法により製造された場合には他の細胞物質又は培地を実質的に含有せず、或いは、化学合成された場合は化学的前駆体又は他の化学物質を実質的に含有しない。
【0021】
「単離された」核酸は、核酸の誘導元である生物のゲノムDNA内で天然に核酸にフランキングする配列(好ましくはタンパク質コード配列)(即ち核酸の5’及び3’末端に位置する配列)を含有しない。例えば、種々の実施形態において、単離された核酸は、核酸の誘導元である細胞のゲノムDNA内で核酸に天然にフランキングするヌクレオチド配列の約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kb又は0.1kb未満を含有できる。
【0022】
本明細書においては、本発明のポリペプチドに言及して使用される場合の「単離された」又は「精製された」という用語は、単離されたタンパク質が細胞物質を実質的に含有しないことを意味し、そして、約30%、20%、10%、5%以下(乾燥重量)より少ない夾雑タンパク質を有するタンパク質の調製品を包含する。本発明のタンパク質又は生物学的に活性なその部分を組み換えにより作成する場合は、好ましくは培地は約30%、20%、10%又は5%(乾燥重量)より少ない化学的前駆体又は非目的タンパク質の化学物質を示す。
【0023】
請求項及び/又は明細書において「含む」という用語と共に使用する単語は「1つ」のものを意味してもよいが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」又は「1つ又は1つより多い」という意味にも合致するものとする。
【0024】
請求項における「又は」という用語の使用は、選択対象単独を指すために明確に示さない限り、又は、選択対象が相互に排他的ではない限り、「及び/又は」を意味するために使用するが、開示内容は選択対象のみ及び「及び/又は」を指す定義も含んでいる。
【0025】
本発明のその他の目的、特徴及び利点は以下の詳細な説明から明確になる。しかしながら、詳細な説明及び特定の実施例は本発明の特定の実施形態を示しているものの、本詳細な説明から当業者には本発明の精神及び範囲内において種々の変更及び改変があきらかとなるため、説明のためのみに提示するものであることが理解されるべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(発明の詳細な説明)
GPCR及び関連するシグナル伝達経路に関連する疾患の治療のための有用な治療手法はGPCRの活性化又は阻害の抑制又はモジュレーションを包含する。1つの手法は開発して販売することに経費がかかる小分子阻害剤の開発である。GPCRの小分子の阻害剤又は拮抗剤の投与の難点は特に反復適用した場合の毒性の危険性である。更に又、多くのGPCRは小分子受容体拮抗剤を有していない。小分子阻害剤よりも安価及び/又は低毒性のGPCR拮抗剤の開発が価値のあることである。本発明の実施形態は可溶性GPCR(sGPCR)リガンド結合ドメイン並びにGPCRシグナル伝達及びGPCRリガンドとそのGPCRとの間の相互作用に対するその作用に関連した組成物及び方法に関する。sGPCRはインビトロ及び/又はインビボでGPCRの活性化又は抑制に拮抗するために使用してよい。
【0027】
I.Gタンパク質共役型受容体(CRFR)
GPCRはタンパク質のスーパーファミリーを構成し、これは3つのファミリー、即ち、ロドプシン様ファミリー(ファミリーA)、カルシトニン受容体(ファミリーB)及び代謝性生物産生グルタメートファミリー(ファミリーC)に分割され(Ji et al.,1998)、その各々が更にサブファミリーに分割される。報告されたGPCRには特性化された受容体と対応するリガンドがまだ発見されていないオーファン受容体の両方が包含される(Wilson et al.,1999;Wilson et al.,1998;Marchese et al.,1999)。多数のGPCRにも関わらず、一般的に、各GPCRは同様の分子構造を共有している。各GPCRは種々の長さのアミノ酸残基のストリングを含む。GPCRは膜貫通と呼ばれる7つの異なるコイルとして細胞膜内部に存在する。GPCRのアミノ末端は細胞外ループと共に細胞の外部に存在し、カルボキシ末端は細胞内ループと共に細胞の内部に存在する。
【0028】
GPCRファミリーA(ロドプシン様)は限定しないがアミン、ペプチド、ホルモンタンパク質、ロドプシン、嗅覚、プロスタノイド、ヌクレオチド様、カンナビノイド、血小板活性化因子、ゴナドトロピン放出ホルモン、チロトロピン放出ホルモン及び分泌促進物質、メラトニン、ウイルス、リソスフィンゴリピド及びLPA(EDG)、ロイコトリエンB4受容体及び他の同様の受容体タンパク質を包含する。
【0029】
GPCRファミリーB(セクレチン様)は限定しないが、カルシトニンに対する受容体、コルチコトロピン放出因子(CRF)、胃抑制ペプチド(GIP)、グルカゴン、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、下垂体アデニレートサイクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)、セクレチン、血管活性腸ポリペプチド(VIP)、利尿ホルモン、EMR1、ラトロフィリン、脳特異的血管形成抑制剤(BAI)、メトセラ様タンパク質(MTH)、カドヘリン/EGF/LAG(CELSR)及び他の同様のリガンドを包含する。Harmer(2001)はGPCRファミリーBの3つのサブファミリー、サブファミリーB1、B2及びB3を記載している。
【0030】
サブファミリーB1−サブファミリーB1は限定しないが、ヒトにおいて少なくとも15遺伝子、ショウジョウバエで少なくとも5推定メンバー及びC.elegansでは3つによりコードされた古典的ホルモン受容体を包含する。このファミリーにおける受容体に対するリガンドは約27〜141アミノ酸残基のポリペプチドホルモンであり;哺乳類受容体の少なくとも9つが相互に構造的に関連しているリガンド(グルカゴン、グルカゴン様ペプチド(GLP−1、GLP−2)、グルコース依存性インスリン親和性ポリペプチド、セクレチン、血管活性腸ペプチド(VIP)、PACAP及び成長ホルモン放出ホルモン(GHRH))に応答する。このサブファミリーの全メンバーが刺激性Gタンパク質(Gs)を介したアデニレートサイクラーゼへの共役によりcAMPの細胞内濃度を調節することができることがわかっている。サブファミリーの一部のメンバーは別のGタンパク質共役シグナル伝達経路を介して、例えば、ホスホリパーゼCの活性化を介してシグナル伝達することができる。
【0031】
サブファミリーB2−サブファミリーB2はコア7TMモチーフに連結した多様な構造エレメントを含有する長い細胞外アミノ末端を有する多数のファミリーBのGPCRよりなる。このサブファミリーのプロトタイプメンバーはヒト神経外胚葉cDNAライブラリから単離されたEGFモジュール含有ムチン様ホルモン受容体(EMR1)(Baud et al.,1995)及び白血球細胞表面抗原CD97(Hamann et al.,1995)であった。サブファミリーB2は又α−ラトロトキシンに対するカルシウム依存性の受容体を包含する。カルシウム依存性ラトロトキシン受容体をコードする3遺伝子(CL−1、CL−2及びCL−3)が発見されている。第2に、脳特異的血管形成抑制剤1、2及び3(BAI1、BAI2、BAI3)、即ち神経膠芽細胞種の血管形成に関与するとされているタンパク質の群もまたこのサブファミリーに包含される。第3に、ショウジョウバエ遺伝子フラミンゴ及びそのヒト(カドヘリンEGFLAG7回通過G型受容体Celsr1、Celsr2及びCelsr3)及びC.elegans(F15B9.7)におけるオーソログによりコードされるタンパク質もまたB2サブファミリーに包含される。最後に、サブファミリーはサブファミリーB2における受容体に共通である一部のモチーフを含有するが、その他の点においては構造的に無関連の受容体の第4の多様な群を包含する(ヒト精巣上体6(HE6)、EGF−TM7−ラトロフィリン関連タンパク質(ETL)、免疫グロブリンリピート含有受容体Igヘプタ、Gタンパク質共役型受容体56(GPR56)及び極大Gタンパク質共役型受容体1(VLGR1))。配列決定されたヒトゲノムの分析(2001年4月1日、UCSCヒトゲノムプロジェクトワーキングドラフト(genome.ucsc.edu))はサブファミリーB2のメンバーをコードする少なくとも18のヒト遺伝子が存在し、ショウジョウバエでは少なくとも4つ、C.elegansでは3つ存在することを示している。サブファミリーB2のメンバーの構造及び機能はStacey et al.,(2000)により最近検討された。
【0032】
サブファミリーB3−ファミリーBGPCRの第3のグループ(サブファミリーB3)のプロトタイプはメトセラ(mth)、即ち、D.melanogasterにおける平均寿命を延長した単一遺伝子突然変異を求めるスクリーニングにおいて単離された遺伝子である(Lin et al.,1998)。遺伝子はTM7領域内で唯一他のファミリーBへの配列同様性を示すポリペプチドをコードする。メトセラの少なくとも8つのパラログがショウジョウバエゲノム配列内でコードされている。
【0033】
全てのファミリーBGPCRの特徴は7TMモチーフであり、これは一部の他のGPCRファミリーの相当する領域に僅かに関連しているが、ファミリーB内では遥かに高度に保存されている。細胞外ループEC1及びEC2内の保存されたシステイン残基はおそらくはジスルフィド架橋を形成しており、これは、この特徴が同じく保存されているファミリーAのGPCRから類推される(Palczewski et al.,2000)。しかしながら、多くが原形質膜をターゲティングするための内部疎水性配列に依存していると考えられるファミリーAGPCRとは対照的に、大部分のファミリーBのGPCRはアミノ末端シグナルペプチドを有すると考えられる。部位指向性突然変異誘発及びファミリーBのホルモン受容体間のキメラの構築を用いた試験によれば、アミノ末端細胞外ドメインはリガンド結合には必須であるが、膜貫通ドメイン及び関連する受容体細胞外ループ領域はリガンドとの特異的相互作用の為に必要な情報を提供する。ファミリーBのホルモン受容体の全てはリガンド結合に役割を果たしていると考えられるTM1に近接したアミノ末端細胞外ドメイン内に保存された領域を含有している。PAC1受容体のこの領域におけるスプライス変異体はリガンド結合特異性及び親和性に影響することがわかっている(Dautzenberg et al.,1999)。
【0034】
サブファミリーB2の受容体は、その大型のアミノ末端細胞ガイドメイン内に、細胞−細胞接着及びシグナル伝達におけるこのドメインのための役割を示唆する種々の追加的な構造的モチーフを含有している。それらにはEGFドメイン(Celsr1、Celsr2、Celsr3、EMR1、EMR2、EMR3、CD97及びフラミンゴ)、ラミニン及びカドヘリンリピート(フラミンゴ及びそのヒトオーソログCelsr1、Celsr2及びCelsr3)、オルファクトメジン様ドメイン(ラトロトキシン受容体)、トロンボスポンジン1型リピート(BAI1、BAI2およびBAI3)及び、Igヘプタにおいては、線維芽細胞成長因子(FGF)受容体2及び神経細胞接着分子L1においても見られる免疫グロブリンC−2型ドメインが包含される。VLGR1はNa+−Ca2+交換体及びインテグリンサブユニットβ4に存在するモチーフ(Calx−beta)の2つのコピーを有している。
【0035】
ファミリーC(代謝性生物産生グルタメート/フェロモン)GPCRは代謝性生物産生グルタメート、カルシウムセンシング様、推定フェロモン受容体、GABA−B、オーファンGPCR5、オーファンGPCR6、bride of sevenlessタンパク質(BOSS)、味覚受容体(TIR)及び他の同様のタンパク質を包含する。
【0036】
特定の実施形態においては、本発明のGPCRはクラスBの受容体である。特徴において、本発明のsGPCRはサブファミリーB1受容体であり、別の特徴においてはsGPCRはCRFR1及びCRFR2及び副甲状腺ホルモン受容体である。表1はGPCRファミリーの例示されるメンバーの非限定的なセット、アクセッション番号を包含し、そして関連するUNIGENE及びOMIMのエントリーは本出願の優先日及び出願日として、参照により本明細書に組み込まれる。ユニジーンのエントリーはOMIMウェブページに含まれるインターネットリンクによりアクセスできる。多くの他のGPCR及びそのアクセッション番号は以下のウェブサイトgpcr.org/7tm/htmls/entries.html.に掲載されている。
【0037】
【表1】

A.コルチコトロピン放出因子(CRF)及びその受容体
本発明により意図されるGPCRの例として、CRF受容体を詳細に説明する。当業者はこれらの特定の教示内容をGPCRファミリーの別のメンバー、特にB型、更に特定すればサブファミリーB1受容体にも適合させることができる。特定の特徴において、本発明は限定しないが可溶性コルチコトロピン放出因子受容体(sCRFR)、特にsCRFR2αから誘導したsGPCRを包含する。もともとは視床下部より単離された視床下部の下垂体刺激性のペプチド、コルチコトロピン放出因子(CRF)(Vale et al.,1981)は基礎及びストレス条件下において視床下部−下垂体−副腎(HPA)軸の調節において重要な役割を果たしている(River and Vale,1983;Muglia et al.,1995)。更に又、CRFはストレスに対する内分泌、自律神経及び挙動の応答を統合する作用を有する(River and Vale,1983;Muglia et al.,1995;Knob and Heinrichs,1999)。哺乳類CRFペプチドファミリーはウロコルチン1(Ucn1)(Vaughan et al.,1995)及びペプチド、それぞれストレスコピン関連ペプチド(Reyes et al.,2001;Hsu and Hsueh,2001)及びストレスコピン(Hsu and Hsueh,2001;Lewis et al.,2001)としても知られているウロコルチン2(Ucn2)及びウロコルチン3(Ucn3)を含む。
【0038】
CRF関連ペプチドの作用は2つの高親和性膜受容体CRFR1(Chen et al.,1993;Vita et al.,1993;Chang et al.,1993)及びCRFR2(Perrin et al.,1995;Stenzel et al.,1995;Kishimoto et al.,1995;Lovenberg et al.,1995;Chen et al.,2005)の活性化を介して媒介され、これらはGタンパク質への共役によりシグナル伝達する7回膜貫通ドメイン(7TMD)のB1サブファミリーに属する。CRFR1遺伝子の1つの機能的変異体は、種々のエクソンの識別的スプライシングにより生産される幾つかの非機能的変異体と共に、ヒト及びげっ歯類の両方において発現される(Pisarchik and Slominski,2004;Grammatopoulos et al.,1999)。CRFR2はヒトにおいて3つの機能的スプライス変異体(α、β及びγ)及び2つのげっ歯類変異体(α及びβ)を有し、これらはオルタナティブ5’エクソンの使用により生成する(Perrin et al.,1995;Stenzel et al.,1995;Kishimoto et al.,1995;Lovenberg et al.,1995;Chen et al.,2005;Grammatopoulos et al.,1999;Kostich et al.,1998)。CRFR1mRNAは哺乳類の脳及び過衰退において広範に発現され、前下垂体、大脳皮質、小脳、扁桃、海馬及び嗅球において高水準で存在する(Van Pett et al.,2000)。末梢器官においては、CRFR1は精巣、卵巣、皮膚及び脾臓において発現される。CRFR2mRNAは脳において異なるパターンで発現され、最高密度は側方中隔核(LS)、分界条の床核(BNST)、視床下部腹内側核(VMH)、嗅球及び中脳縫線核にある(Van Pett et al.,2000)。CRFR2αはげっ歯類の脳で発現される主要スプライス変異体であり(Lovenberg et al.,1995)、CRFR2βは末梢組織において発現され、骨格筋、心臓及び皮膚において最高水準となる(Perrin et al.,1995)。
【0039】
CRFR1及びCRFR2の分布は異なっており、CRFR1又はCRFR2ヌルマウスの相違した表現型により示される通り、多様な生理学的機能を示唆している。CRFR1欠失マウスは低減した不安様挙動を示し、損なわれたストレス応答を有する(Smith et al.,1998;Timpl et al.,1998)のに対し、CRFR2ヌルマウスは増大した不安様挙動及びストレスに対する増強されたHPA応答を有している(Zhu et al.,1999;Valerio et al.,2001;Khan et al.,1993)。しかしながら、CRFR2アゴニスト及び拮抗剤の特定の脳領域への投与への応答はCRFR2の不安緩解及び不安発生の役割の両方を明らかにしている(Bale and Vale.,2004)。
【0040】
放射性受容体及び機能試験によれば、CRFR1及びCRFR2は薬理学的に異なっており;Ucn1は両方の受容体に対して等しい親和性を有しており、CRFR2に対してはCRFよりも強力であるのに対し、Ucn2及びUcn3はCRFR2に対して選択的であると考えられる(Vaughan et al.,1995;Reyes et al.,2001;Lewis et al.,2001)。受容体選択的CRFペプチドによる異なる組織又は細胞型における特異的CRFRの活性化は種々のシグナル伝達経路、例えば異なるGタンパク質への共役、PKB、PKC、細胞内カルシウム及び有糸分裂促進活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)の刺激を開始させる(Bale and Vale.,2004;Perrin and Vale,1999;Brar et al.,2002参照)。
【0041】
CRFR1及びCRFR2は両方とも複数のスプライス変異体として存在する。本発明はエクソン6がCRFR2αをコードする核酸から欠失しているsCRFR2αの例示されるスプライス変異体をコードするマウス脳由来のcDNAを発見している。このアイソフォームの翻訳により予測された143アミノ酸の可溶性タンパク質が生産される。翻訳されたタンパク質はCRFR2αの第1の細胞外ドメイン(ECD1)の多数、次いでエクソン6の欠失により生じるフレームシフトの結果として生じるユニークな38アミノ酸親水性C末端を包含する。試験によれば、嗅球、皮質及び中脳領域における高水準のsCRFR2α発現が明らかになった。哺乳類又は細菌の細胞系の何れかから発現され精製されたsCRFR2αは低いナノモル親和性において幾つかのCRFファミリーリガンドに結合する。更に又、精製されたsCRFR2αタンパク質はCRF及びウロコルチン1への細胞応答を抑制する。即ちsCRFR2αタンパク質はCRFファミリーリガンドの生物学的モジュレーターとなることができる。CRFファミリーリガンドのモジュレーションは脳に限定されず、リガンドのCRFファミリーのメンバー1つ以上に曝露された如何なる組織においても使用してよい。
【0042】
本発明の特徴は一般的に、単独、又は、CRFファミリーのリガンドの拮抗剤を包含する他のホルモン拮抗剤(例えば小分子拮抗剤)1つ以上と共に、拮抗剤としてCRF結合ポリペプチドのような可溶性GPCRリガンド結合ポリペプチドを用いた、CRFファミリーリガンドのようなGPCRリガンドの活性のモジュレーションを包含する治療効果を達成する組成物及び方法に関する。
【0043】
リガンドの作用に拮抗する1つの方法は、リガンドをデコイ又は可溶性の受容体に接触させることによりデコイに結合するリガンドの局所的濃度を制限してその細胞表面受容体を介してシグナル伝達するリガンドの能力をモジュレートすることである。膜受容体に関する可溶性タンパク質はGHRH受容体(Rekaski et al.,2000)、ドーパミンD3受容体(Liu et al.,1994)及びカルシトニン受容体(Seck et al.,2003)について示唆されている通り膜結合受容体の酵素的トランケーションにより、又は、グルタメート受容体の場合(Malherbe et al.,1999;Zhu et al.,1999;Valerio et al.,2001)のようにオルタナティブスプライシングにより、形成することができる。GPCRの細胞外領域のみを含有するスプライス変異体が報告されている(Pisarchik and Slominski,2004;Grammatopoulos et al.,1999;Kostich et al.,1998;Malherbe et al.,1999;Zhu et al.,1999;Valerio et al.,2001;Khan et al.,1993;Graves et al.,1992;You et al.,2000;Schwarz et al.,2000)。大部分の場合において、これらのタンパク質はデコイ受容体とも称される結合非シグナル伝達分子として作用する。CRFR1内にエクソン3及び4の欠失及び潜在エクソンの付加を含む2つの部分cDNAフラグメント(CRFR1e及びCRFR1h)がヒト皮膚において発見されており、そして、可溶性タンパク質として存在することが予測されている(Pisarchik and Slominski,2004)。これらのフラグメントのうちの1つ、CRFR1eは、野生型CRFR1と同時トランスフェクトした場合に優性阻害作用を示す。
【0044】
Kehne and Lombaert(2002)は不安、抑鬱及びストレス障害の治療のための非ペプチドCRF受容体拮抗剤を考察している。CRFは不安及び抑鬱のような精神障害に関与が示唆されている。コルチコトロピン放出因子(CRF)の発見以来、広範な研究により、ストレスに対する身体の挙動、内分泌及び自律神経系の応答の媒介における、この41アミノ酸ペプチド及びその関連ファミリーメンバーの重要性が確立された。
【0045】
前臨床及び臨床兆候は一般的にはCRF、そして特にCRF受容体が不安及び抑鬱に関与することを示唆している。臨床試験によれば、抑鬱及び一部の不安障害において機能不全の視床下部−下垂体−副腎(HPA)軸及び/又はCRF高値が明らかになった。げっ歯類及び非ヒト霊長類において相関付けの方法、遺伝子モデル及び外因性CRF投与の手法を利用した前臨床データは、活動亢進CRF経路と不安発生性抑鬱様症状との関連性を裏付けている。受容体ノックアウト及びCRFR1の選択的非ペプチド拮抗剤を用いた試験によれば、特定の型の実験室条件下において不安緩解及び抗鬱作用が明らかになった。大鬱病障害における第II相オープンラベル臨床治験では、CRFR1拮抗剤が安全であり、不安及び抑鬱の症状の低減において有効であることが報告された。
【0046】
CRF拮抗剤の種々の非限定的な活性がOwens等(1991)により報告されている。CRF拮抗剤はストレス関連病;気分障害、例えば抑鬱、大鬱病障害、単回エピソード鬱病、再発性鬱病、小児虐待誘導鬱病、出産後鬱病、気分変調、双極性障害及び循環気質;慢性疲労症候群;摂食障害、例えば食欲不振及び神経性大食症;全般性不安障害;パニック障害;恐怖症;強迫性障害;外傷後ストレス障害;疼痛知覚、例えば線維筋肉痛;頭痛;胃腸障害;出血性ストレス;潰瘍;ストレス誘導精神エピソード;発熱;下痢;術後イレウス;結腸過敏症;刺激性腸症候群;クローン病;痙攣性結腸;炎症性障害、例えば慢性関節リューマチ及び骨関節炎;疼痛;喘息;乾癬;アレルギー;骨粗鬆症;早産;高血圧、うっ血性心不全;睡眠障害;神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、アルツハイマー型の老年性痴呆症、多発脳梗塞性認知症、パーキンソン病及びハンチントン病;頭部外傷;虚血性ニューロン損傷;興奮毒性ニューロン損傷;癲癇;卒中;脊髄外傷;心理社会的小人症;甲状腺機能正常病的症候群;不適切な抗利尿ホルモンの症候群;肥満;薬物依存及び中毒;薬剤又はアルコール離脱症状;不妊;癌;筋肉痙攣;尿失禁;低血糖症及び免疫機能不全、例えばストレス誘導免疫機能不全、免疫抑制及びヒト免疫不全ウイルス感染及びヒト及び動物のストレス誘導感染の治療において有効であることが報告されている。これら及びCRFモジュレーションに適する他の状態は文献、例えば各々が参照により全体が本明細書に組み込まれるLovenberg et al.,(1995);Chalmers et al.,(1996);及び米国特許5,063,245に記載されている。
【0047】
II.ポリペプチド
本発明のポリペプチドはGPCRの可溶性型又は可溶性受容体を包含する。本発明の可溶性受容体は可溶性型に結合した膜から変化したサブユニットを含んでよい。即ち、可溶性ペプチドは例えば7回膜貫通領域及び/又は原形質テール部を除去するためにポリペプチドをトランケーションすることにより作成してよい。或いは、膜貫通ドメインは、膜貫通ドメインを含む通常は疎水性のアミノ酸残基の欠失又は親水性のものとの置換により除去してよい。何れの場合においても、実質的に親水性又は可溶性のポリペプチドが生じ、これは脂質親和性を低減し、そして水溶性を向上させる。膜貫通ドメインの欠失は親水性アミノ酸残基との置換よりも好ましいが、その理由は潜在的に免疫原性のエピトープの導入を回避できるためである。本発明の可溶性受容体はN末端によく知られたリーダー配列の何れかの数量を包含してよい。そのような配列は真核生物の系においてペプチドを発現させ、そして分泌経路にターゲティングできるようにする。
【0048】
A.融合タンパク質
受容体は免疫グロブリン融合タンパク質に容易に変換できるため、生物学的経路を解明するため、及び、種々の疾患状態を治療するための有力な手段となる。これらの2量体可溶性受容体形態は何れかの分泌又は表面結合のリガンドにより媒介される事象の良好な抑制剤である。これらのリガンドを結合することにより、それらは、細胞に伴っている受容体とのリガンドの相互作用を防止する。これらの受容体−Ig融合タンパク質は実験の意味において有用であるのみならず、TBF−R−Igの場合には、炎症性腸疾患、慢性関節リューマチ及びOKT3投与に付随する急性臨床症候群を治療するために臨床的に良好に使用されている(Eason et al.,1996;van Dullemen et al.,1995)。本発明者等はGPCRを介したシグナル伝達により媒介される多くの事象の操作がGPCR関連疾患の治療において広範な用途を有すると考える。
【0049】
好ましくは、安定な血漿中タンパク質、即ち、典型的には哺乳類の循環系中で数時間超の半減期を有するものは、受容体融合タンパク質を構築するために使用できる。そのような血漿中タンパク質は限定しないが、免疫グロブリン、血清アルブミン、リポタンパク質、アポリポタンパク質及びトランスフェリンを包含する。特定の細胞又は組織のタイプに可溶性受容体をターゲティングできる配列もまた受容体リガンド結合ドメインに結合することにより特異的に局在化した可溶性受容体融合タンパク質を作成してよい。
【0050】
GPCRリガンド結合ドメインを含むGPCR細胞外領域の全て又は機能的フラグメントをヒトIgG重鎖のFcドメインのような免疫グロブリン定常領域に融合してよい。可溶性受容体IgG融合タンパク質は一般的な免疫学的試薬であり、それらの構築のための方法は当該分野でよく知られている(例えば参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許5,225,538を参照できる)。
【0051】
機能的GPCRリガンド結合ドメインは免疫グロブリン(Ig)Fcドメインに融合してよい。IgFcはIgG1を包含するがこれに限定されない免疫グロブリンクラス又はサブクラスから誘導してよい。異なるIgクラス又はサブクラスに属する抗体のFcドメインは多様な二次的エフェクター機能を活性化できる。活性化はFcドメインが同属体Fc受容体により結合された場合に起こる。二次的エフェクター機能は補体系を活性化するか、又は、胎盤を通過する能力を包含する。異なるクラス及びサブクラスの免疫グロブリンの特性は当該分野で報告されている。
【0052】
当業者の知る通り、受容体−Ig融合タンパク質の接合点を形成する種々のアミノ酸残基はsGPCR融合タンパク質の構造、安定性及び究極的な生物学的活性を改変する場合がある。選択されたsGPCRフラグメントのC末端にアミノ酸1つ以上を付加することにより選択された融合ドメインを有する接合点を修飾してよい。
【0053】
sGPCR融合タンパク質のN末端もまた、選択されたsGPCRのDNAフラグメントが組み換え発現ベクターへの挿入のためにその5’末端で切断される位置を変えることにより変更してよい。各sGPCR融合タンパク質の安定性及び活性は、例えばリガンド結合に関する試験のような日常的実験を用いながら試験し、そして最適化してよい。
【0054】
本明細書に記載するような細胞外ドメイン内のsGPCRリガンド結合ドメイン配列を用いながら、アミノ酸配列変異体を構築することによりsGPCR分子のそのリガンドに対する親和性を変更してもよい。本発明の可溶性分子は外因性受容体との結合に関して競合することができる。リガンド結合について自然に存在する受容体と競合できるGPCRリガンド結合ドメインを含む何れかの可溶性分子は本発明の範囲に属する受容体ブロッキング剤又はリガンド捕獲剤であると考えられる。
B.タンパク質コンジュゲート
タンパク質の半減期に関しては、タンパク質の循環半減期を増大するための1つの方法は、特に腎クリアランス及び受容体媒介クリアランスを介した、タンパク質のクリアランスの低減を確保することである。これは見かけの大きさを増大させることができる化学的部分にタンパク質をコンジュゲートすることにより腎クリアランスを低減し、そしてインビボの半減期を増大することにより達成してよい。更に又、タンパク質への化学部分の結合はタンパク質分解酵素がタンパク質と物理的に接触することを効果的にブロックし、これにより非特異的なタンパク質分解による分解を防止できる。ポリエチレングリコール(PEG)は治療用タンパク質製品の製造において使用されているそのような化学部分の1つである。近年、単一のN末端連結20kDaPEG基で修飾されたG−CSF分子(Neulastam)が米国で販売許可された。このPEG化G−CSF分子は非PEG化G−CSFと比較して増大した半減期を有することがわかっており、このため、現在のG−CSF製品よりも低頻度で投与してよいが、それは非PEG化G−CSFと比較して好中球減少の持続時間を有意に低減しない。
【0055】
ポリエチレングリコール(PEG)修飾は製薬及び生命科学の用途の為に重要である。PEG化(PEGの共有結合)は例えば抗原性又は免疫原性のエピトープの遮蔽をもたらす。更に又、網内皮細胞系による受容体媒介取り込みを低減し、或いは、タンパク質分解酵素による認識及び分解を防止する。タンパク質のPEG化は腎濾過を低減することによりその生体利用性を増大させることがわかっている。
【0056】
「コンジュゲート」という用語は1つ以上のポリペプチド、典型的には単一のポリペプチドの1つ以上の非ポリペプチド部分、例えば重合体分子、親油性化合物、炭水化物部分又は有機誘導体化剤への共有結合により形成される異種分子を指すものとする。共有結合という用語はポリペプチド及び非ポリペプチド部分が相互に直接共有結合するか、又は、介在部分、例えば架橋、スペーサー又は連結部を介して間接的に相互に共有結合することを意味する。好ましくは、コンジュゲートは該当する濃度及び条件において可溶であり、即ち、血液のような生理学的流体中で可溶である。本発明のコンジュゲートを製造するための組成物及び方法は参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許6,831,158に記載されている。米国特許6,831,158に記載されている方法はG−CSFのコンジュゲーションに関するものであるが、本発明のsGPCRのコンジュゲーションにも容易に適用できる。
【0057】
「重合体分子」とは2つ以上の単量体の共有結合により形成される分子である。「重合体」という用語は「重合体分子」という用語と互換的に使用してよい。用語はインビボのN又はOグリコシル化によりポリペプチドに結合された炭水化物分子を包含する炭水化物分子を包含するものとし、そのような分子は又「オリゴ糖部分」とも称される。重合体分子の数を明示しない限り、本発明のポリペプチドに含有されるか、他の態様において本発明において使用される「重合体」又は「重合体分子」への言及の各々は1つ以上の重合体分子への言及とみなす。
【0058】
「結合基」という用語は該当する非ポリペプチド部分に結合することができるポリペプチドのアミノ酸残基を指す。例えば、特にPEGへの重合体コンジュゲーションについては、頻繁に使用される結合基はリジンのε−アミノ基又はN末端アミノ基である。他の重合体結合基は遊離のカルボン酸基(例えばC末端アミノ酸残基又はアスパラギン酸又はグルタミン酸残基のもの)、適当に活性化されたカルボニル基、酸化された炭水化物部分及びメルカプト基を包含する。有用な結合基及びそれに適合する非ペプチド部分を表2において例示する。
【0059】
【表2】

C.部位特異的突然変異誘発
1つの実施形態において、ポリペプチドのアミノ酸配列変異体を製造することができる。これらは、例えば、集団内の天然の変異により生じるポリペプチドのマイナー配列変異体であってよく、又は、それらは他の種に存在する相同体であってよい。それらはまた、天然に存在しないが、同様に機能する、及び/又は、ポリペプチドの天然の形態と交差反応する免疫応答を誘発するほど十分類似する配列であってよい。配列変異体は後述するような部位指向性突然変異誘発の標準的な方法により製造できる。
【0060】
ポリペプチドのアミノ酸配列変異体は置換、挿入又は欠失変異体であることができる。欠失変異体は機能又は免疫原活性の為に必須ではないネイティブタンパク質の残基1つ以上を欠失しており、膜貫通配列を欠いている受容体の変異体により例示される。
【0061】
置換変異体は典型的にはタンパク質内の1つ以上の部位においてあるアミノ酸の別のものとの交換を含有しており、そして、タンパク質分解に対する安定性又は免疫原性のようなポリペプチドの特性1つ以上をモジュレートするように設計してよい。置換は好ましくは、保存的であり、即ち、あるアミノ酸が同様の形状及び電荷のものと置き換えられる。保存的置換は当該分野で良く知られており、例えばアラニンからセリン;アルギニンからリジン;アスパラギンからグルタミン又はヒスチジン;アスパルテートからグルタメート;システインからセリン;グルタミンからアスパラギン;グルタメートからアスパルテート;グリシンからプロリン;ヒスチジンからアスパラギン又はグルタミン;イソロイシンからロイシン又はバリン;ロイシンからバリン又はイソロイシン;リジンからアルギニン;メチオニンからロイシン又はイソロイシン;フェニルアラニンからチロシン、ロイシン又はメチオニン;セリンからスレオニン;スレオニンからセリン;トリプトファンからチロシン;チロシンからトリプトファン又はフェニルアラニン;及びバリンからイソロイシン又はロイシンへの変化を包含する。
【0062】
挿入変異体はポリペプチドの迅速な精製を可能にするために使用されるもののような融合タンパク質を包含し、そしてまた、他のタンパク質及びポリペプチド由来の配列を含有するハイブリッドタンパク質を包含できる。例えば、挿入変異体はある種に由来するポリペプチドのアミノ酸配列の一部分を、別の種に由来する相同のポリペプチドの一部分とともに包含する。他の挿入変異体は、ポリペプチドのコーディング配列内に追加的なアミノ酸が導入されたものを包含することができ、例えばプロテアーゼ切断部位を導入してよい。
【0063】
修飾及び変更をポリヌクレオチドの構造において行ってよく、そしてなお、所望の特性を有するタンパク質又はポリペプチドをコードする機能的分子を得てよい。等価な、又は、むしろ改良された第二世代の分子を作成するためにタンパク質のアミノ酸を変更することに基づいた考察を以下に示す。アミノ酸の変更は以下のデータに従ってDNA配列のコドンを変更することにより達成してよい。
【0064】
例えば、特定のアミノ酸は、抗体の抗原結合領域又は基質分子上の結合部位のような構造との相互作用結合能力の多大な損失を伴うことなくタンパク質構造において他のアミノ酸と置換してよい。タンパク質の生物学的活性を決定するものはそのタンパク質の相互作用能力及び性質であるため、特定のアミノ酸置換をタンパク質配列において行い、なお、同様の特性を有するタンパク質を得ることができる。即ち、本発明者等は、遺伝子、mRNA又はポリヌクレオチドのDNA配列における種々の変更は、それらの生物学的利用性又は活性の多大な損失を伴うことなく行えることを意図している。
【0065】
そのような変更を行う場合、アミノ酸のハイドロパシー指数を考慮する。タンパク質に対して相互作用生物学的機能を与える場合のハイドロパシーアミノ酸指数の重要性は一般的に当該分野で理解されている(Kyte&Doolittle,1982)。
【0066】
【表3】

アミノ酸の相対的ヒドロパシー特性が得られるタンパク質の二次構造に寄与し、次にこれが他の分子、例えば酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原等とのタンパク質の相互作用を決定することが認められている。特定のアミノ酸は同様のヒドロパシー指数又はスコアを有する別のアミノ酸と置換してよく、そしてなお、同様の生物学的活性を有するタンパク質を得てよいことが当該分野で知られている。そのような変更を行う場合、ヒドロパシー指数が±2内にあるアミノ酸の置換が好ましく、±1内にあるものが特に好ましく、そして±0.5内にあるものが更にとりわけ好ましい。
【0067】
同様のアミノ酸の置換が親水性に基づいて効果的に行えることも当該分野でよく知られている。参照により本明細書に組み込まれる米国特許4,554,101は、自身に隣接するアミノ酸の親水性により支配される場合のタンパク質の最大局所平均親水性は、タンパク質の生物学的特性に相関すると記載している。
【0068】
アミノ酸は同様の親水性値を有する別のものと置換することができ、そしてなお、生物学的に等価で免疫学的に等価なタンパク質を得ることができることが理解される。そのような変更を行う場合、親水性値が±2内にあるアミノ酸の置換が好ましく、±1内にあるものが特に好ましく、そして±0.5内にあるものが更にとりわけ好ましい。
【0069】
部位特異的突然変異誘発は、伏在するDNAの特異的突然変異誘発を介した個々のペプチド又は生物学的機能が等価なタンパク質又はペプチドの製造において有用な手法である。手法は更に、DNAに1つ以上のヌクレオチドの配列の変更を導入することにより、前述した検討事項の1つ以上を組み込みながら、迅速に配列変異体を製造して試験する能力を与えるものである。一般的に、部位特異的突然変異誘発の手法は当該分野でよく知られている。手法は典型的には1本鎖及び2本鎖の形態の両方に存在するバクテリオファージベクターを使用する。部位特異的突然変異誘発において有用な典型的なベクターはM13ファージのようなベクターを包含する。これらのファージベクターは市販されており、その使用は一般的に当該分野でよく知られている。2本鎖プラスミドもまた部位特異的突然変異誘発に日常的に使用されており、これはファージからプラスミドに目的の遺伝子を移行させる工程を省略する。
【0070】
部位指向性突然変異誘発を用いたGPCR、例えば限定しないがsCRFR2α、ポリヌクレオチドの配列変異体の製造は、潜在的に有用な種、即ち、特定のリガンドに対する増大した親和性を包含する改変されたリガンド結合特性を有する種を製造する手段として提供され、そして、核酸の配列変異体が得られる別の方法も存在するため、限定する意図はない。例えば、所望の遺伝子をコードする組み換えベクターを突然変異誘発性の物質、例えばヒドロキシルアミンで処理することにより配列変異体を得てよい。
D.ポリペプチドの発現及び精製
本発明のポリヌクレオチド、特にGPCR、ファミリーBGPCR、ファミリーB1GPCR又は例えば添付する配列表に記載する配列、例えば配列番号1、3、5、7、9、11、13又は14と70、75、80、85、90、95、98又は100%同一であるポリヌクレオチドをコードする100、150、200、250、300、400、450、500、550以上のDNAの隣接ヌクレオチドをコードされたペプチド又はタンパク質として発現することができる。特定の特徴において、DNAはGPCR細胞外ドメイン、そして特にアミノ末端細胞外ドメインの全て又は部分をコードする。原核生物又は真核生物の系における発現のためのDNAセグメントの操作は、組み換え発現の当該分野でよく知られている手法により実施してよい。実質的に如何なる発現系も請求項記載の核酸配列の発現において使用してよいと考えられる。
【0071】
特定の実施形態においては、本発明はsGPCR、sCRFR又はsCRFR2のようなタンパク質性分子少なくとも1つを含む新規な組成物に関する。本明細書においては、「タンパク質性分子」、「タンパク質性組成物」、「タンパク質性化合物」、「タンパク質性鎖」又は「タンパク質性物質」とは一般的に、限定しないが、約200アミノ酸超のタンパク質又は遺伝子から翻訳された完全長の内因性配列;約100アミノ酸超のポリペプチド;及び/又は約3〜約100アミノ酸のペプチドを指す。上記した「タンパク質性」という用語は全て、本明細書においては互換的に使用してよい。更に又、これらの用語は融合タンパク質にも同様に適用してよい。
【0072】
特定の実施形態においては、少なくとも1つのタンパク質性分子のサイズは限定しないが、概ね、又は少なくとも、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、275、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1750、2000、2250、2500以上のアミノ酸分子残基及びこれより誘導される何れかの範囲、特に、GPCR、ファミリーBGPCR、ファミリーB1GPCR、又は、配列番号4、8、12又は15の完全長を包含する配列番号2、4、6、8、10、12または15のそのような長さの、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190以上の隣接アミノ酸配列を含んでよい。cDNA及びゲノム配列の両方が真核生物発現に適しているが、その理由は宿主細胞は一般的にゲノム転写物をプロセシングしてタンパク質への翻訳のための機能的mRNAを生成するためである。
【0073】
本明細書においては、「操作された」及び「組み換え」の細胞という用語は外因性DNAセグメント又はポリヌクレオチド、例えばcDNA又はポリヌクレオチドが導入されている細胞を指すものとする。従って、操作された細胞は組み換えにより導入された外因性DNAセグメント又は遺伝子を含有しない天然に存在する細胞とは異なる。即ち操作された細胞は人為的に導入された遺伝子を有する細胞である。組み換え細胞は導入されたcDNA又はゲノムDNAを有するものを包含し、そして特定の導入された遺伝子に天然には付随しないプロモーターに隣接して位置する遺伝子を包含してよい。
【0074】
本発明により突然変異体又は野生型に関わらず組み換えタンパク質又はポリペプチドを発現するためには、1つ以上のプロモーターの制御下に請求項に記載した単離された核酸の1つを含む発現ベクターを製造する。プロモーターの「制御下」にコーディング配列を置くためには、リーディングフレームの翻訳開始部位の5’末端を一般的には選択されたプロモーターの約1〜50ヌクレオチド「下流」(すなわち、3’)に位置づける。「上流」のプロモーターは挿入されたDNAの転写を刺激し、そしてコードされた組み換えタンパク質の発現を促進する。これが本明細書において使用される意味における「組み換え体の発現」の意味である。
【0075】
種々の宿主発現系においてタンパク質又はペプチドの発現を達成するために適切な核酸及び転写/翻訳制御配列を含有する発現ベクターを構築するには多くの標準的手法が使用できる。発現のために使用できる細胞のタイプは限定しないが細菌、例えばE・コリ(E.coli)、B・サブチルス、E・コリのRR1株、E・コリLE392、E・コリB、E・コリχ1776(ATCC31537)並びにE・コリW3110(F−、ラムダ−、原栄養性、ATCC237325);桿菌類、例えばバチルス・サブチルス;及び他の腸内細菌科、例えばサルモネラ・チフィムリウム、セラチア・マルセセンス及び種々のシュードモナス種を組み換えファージDNA、プラスミドDNA又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換したものを包含する。
【0076】
ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドフラグメントは標準的なサブクローニング手法により発現ベクター内に挿入できる。1つの実施形態においては、タンパク質の迅速なアフィニティー精製を可能にする融合タンパク質として組み換えポリペプチドを生産するE・コリ発現ベクターを用いる。そのような融合タンパク質発現系の例はグルタチオンS−トランスフェラーゼ系(Pharmacia,Piscataway,NJ)、マルトース結合タンパク質系(New England Biolabs,Beverly,MA)、FLAG系(IBI,New Haven,CT)及び6xHis系(Qiagen,Chatsworth,CA)である。別の有用なベクターはpINベクター(Inoue et al.,1985);及びグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)可溶性融合タンパク質を生成する場合に使用するpGEXベクターを包含する。他の適当な融合タンパク質はβ−ガラクトシダーゼ、ユビキチン等を伴うものである。
【0077】
サッカロマイセスにおける発現のためには、例えばプラスミドYRp7が一般的に使用される(Stinchcomb et al.,1979;Kingsman et al.,1979;Tschemper et al.,1980)。このプラスミドはtrp1遺伝子を含有しており、これはトリプトファン中で生育する能力を欠失しているコウボの突然変異株、例えばATCC44076又はPEP4−1に関する選択マーカーを与える(Jones,1977)。次にコウボ宿主細胞ゲノムの特徴としてのtrp1損傷の存在がトリプトファン非存在下の生育により形質転換を検出するための効果的な環境を与える。
【0078】
コウボベクターにおける適当なプロモーター配列は3−ホスホグリセレートキナーゼ(Hitzeman et al.,1980)又は他の解糖酵素(Hess et al.,1968;Holland et al.,1978)、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルベートデカルボキシラーゼ、ホスホフラクトキナーゼ、グルコース−6−ホスフェートイソメラーゼ、3−ホスホグリセレートムターゼ、ピルベートキナーゼ、トリオースホスフェートイソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ及びグルコキナーゼに関するプロモーターを包含する。適当な発現プラスミドを構築する場合、これらの遺伝子に付随する終止配列もまた発現することが望まれる配列の3’側で発現ベクターにライゲーションすることにより、mRNAのポリアデニル化及び終止をもたらすことができる。
【0079】
生育条件により制御される転写の追加的利点を有する他の適当なプロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロームC、酸ホスファターゼ、窒素代謝に関連する分解酵素及び上記したグリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ及びマルトース及びガラクトースの利用に関与する酵素のプロモーター領域を包含する。
【0080】
微生物のほかに、多細胞生物から誘導した細胞の培養物も宿主として使用してよい。原則として、如何なるこのような細胞培養物も、哺乳類及び昆虫の細胞を包含する脊椎動物又は無脊椎動物の培養物を問わず、使用可能である(例えば米国特許4,215,051)。
【0081】
有用な哺乳類宿主細胞系統の例はVERO及びHeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系統、WI38、BHK、COS−7、293、HepG2、NIH3T3、RIN及びMDCK細胞系統である。更に又、挿入された配列の発現をモジュレートする、又は、所望の特定の態様に遺伝子産物を変調又はプロセシングする宿主細胞を選択してもよい。タンパク質産物のこのような変調(例えばグリコシル化)及びプロセシング(例えば切断)はコードされたタンパク質の機能のために重要な場合がある。
【0082】
特定の開始シグナルもまた請求項に記載する単離された核酸コーディング配列の効率的な翻訳のために必要となる。これらのシグナルはATG開始コドン及び隣接配列を包含する。外因性翻訳制御シグナル、例えばATG開始コドンを追加的に提供する必要がある場合がある。この必要性を判断すること及び必要なシグナルを提供することは、当業者が容易に行えることである。開始コドンは、全インサートの翻訳を確実に行うためには所望のコーディング配列のリーディングフレームに対してインフレーム(又はインフェイズ)でなければならないことはよく知られている。発現の効率は適切な転写エンハンサーエレメント又は転写ターミネーターの包含により増強してよい(Bittner et al.,1987)。
【0083】
組み換えタンパク質の長期の高収率の生産のためには、安定な発現が好ましい。例えばGタンパク質をコードするコンストラクトを安定に発現する細胞系統を操作してよい。ウイルス複製起点を含有する発現ベクターを用いるよりはむしろ、宿主細胞は、適切な発現制御エレメント(例えばプロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位等)及び選択可能なマーカーにより制御されたベクターで形質転換することができる。外来性DNAの導入の後、操作された細胞をリッチ化培地中で1〜2日間成育させてよく、そして次に選択培地に交換する。組み換えプラスミド中の選択可能なマーカーは選択に対する耐性を付与し、細胞がその染色体内にプラスミドを安定に組み込み、そして生育して集落を形成することを可能とし、次にこれをクローニングして増殖させ、細胞系統とすることができる。
【0084】
多くの選択系、例えば限定しないが、それぞれtk、hgprt又はaprt細胞における単純疱疹ウイルスチミジンキナーゼ(Wigleret al.,1977)、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska et al.,1962)及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Lowy et al.,1980)を使用してよい。更に又、抗代謝産物耐性は、メトトレキセートに対する耐性を付与するdhfr(Wigler et al.,1980;O’Hare et al.,1981);ミコフェノール酸に対する耐性を付与するgpt(Mulligan et al.,1981);アミノグリコシドG−418に対する耐性を付与するneo(Colbere−Garapin et al.,1981);及びハイグロマイシンに対する耐性を付与するhygroに対する選択の基準として使用することができる。
【0085】
特定のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列が判明又は操作された後、ポリヌクレオチドを適切な発現系に挿入することができる。この場合、本発明者等はsGPCRリガンド結合ドメインポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを意図している。ポリヌクレオチドは何れかの数量の異なる組み換えDNA発現系中で発現することにより大量のポリペプチド産物を生成することができ、次にこれを精製及び/又は単離して治療薬として使用するか、又は、動物にワクチン接種して抗血清を形成するか、又は、本発明の特定の特徴においてはGPCRリガンド及び/又はGPCR活性化の拮抗剤として用いる。別の特徴において、本発明のsGPCRはGPCRのリガンド、受容体又はアゴニスト及び/又は拮抗剤を検出、スクリーニング又は発見するための方法において使用できる。本発明のポリヌクレオチドを発現することにより、配列表に示すアミノ酸配列、例えば配列番号2、4、6、8、10、12又は15の全て又は部分を含むアミノ酸配列を含むGPCRリガンド結合ドメイン、ファミリーBGPCRリガンド結合ドメイン、ファミリーB1GPCRリガンド結合ドメイン、sCRFRリガンド結合ドメイン又はCRFR2リガンド結合ドメインポリペプチドを得てよい。
【0086】
組み換えポリペプチドの代替として、本発明のポリペプチドに相当する合成ペプチド、例えば抗原性ペプチドを製造できる。このような抗原ペプチドは少なくとも6アミノ酸残基長であり、そして約35残基までを含有してよい。自動ペプチド合成機はApplied Biosystems(Foster City,CA)より入手できるものを包含する。ワクチン接種のためのこのような小型ペプチドの使用は典型的にはB型肝炎表面抗原、キーホールリンペットヘモシアニン又はウシ血清アルブミンのような免疫原性担体タンパク質へのペプチドのコンジュゲーションを必要とする。このコンジュゲーションを実施するための方法は当該分野で良く知られている。
1.発現されたタンパク質の精製
本発明の別の特徴は、sGPCRリガンド結合ドメインの全て又は部分を含むタンパク質又はペプチドの単離のための精製、そして特定の実施形態においては実質的な精製に関する。「精製された、又は、単離されたタンパク質又はペプチド」という用語は本明細書においては、他の成分から単離することができる組成物を指し、ここでタンパク質、ポリペプチド又はペプチドはその天然に得られる状態と相対比較して、即ちこの場合は、生物又は組織内のその純度と相対比較して、ある程度まで精製される。従って精製又は単離されたタンパク質又はペプチドはまた、それが天然に存在する環境から離脱したタンパク質又はペプチドを指す。精製又は単離されたタンパク質又はポリペプチドは少なくとも70、75、80、85、90、95、98又は99%純度又はそれより高純度であってよい。
【0087】
一般的に「精製された」とは種々の他の成分を除去するために分画に付されているタンパク質又はペプチドの組成物を指し、そしてその組成物は実質的にその発現された活性を保持している。「実質的に精製された」という用語を用いる場合、この表記はタンパク質又はペプチドが組成物の主要な成分を形成する、例えば組成物中のタンパク質の約50%以上を構成する組成物を指す。
【0088】
タンパク質又はペプチドの精製の程度を定量するための種々の方法は本発明の開示を鑑みれば当業者の知る通りである。これらは例えば活性画分の特定の活性(例えばGPCRリガンド、例えばCRF又はCRFファミリーのリガンドに対する結合親和性)を測定すること、又は、SDS/PAGE分析により画分内のポリペプチドの数を調べることを包含する。画分の純度を調べるための好ましい方法は画分の特異的活性を計算すること、それを初期の抽出液の特異的活性と比較すること、及び、これにより本明細書においては「精製倍率数」により調べた純度の程度を計算することである。結合活性又は親和性を包含する活性の量を示すために使用される実際の単位は当然ながら選択された特定の試験手法により変動する。
【0089】
タンパク質精製において使用するために適する種々の手法は当該分野で良く知られている。これらは例えば、硫酸アンモニウム、ポリエチレングリコール、抗体等を用いるか熱変性による沈殿、その後の遠心分離;クロマトグラフィーの工程、例えばイオン交換、ゲル濾過、逆相、ヒドロキシアパタイト及び/又はアフィニティークロマトグラフィー;等電点電気泳動;ゲル電気泳動;及びこれらのものと他の手法の組合せを包含する。当該分野で一般的に知られる通り、種々の精製工程を実施する順序は変更してよいこと、又、特定の工程は省略してよいことがわかっており、しかもなお実質的に精製されたタンパク質又はペプチドの製造のための適当な方法となる。
【0090】
タンパク質又はペプチドは常時それらの最も精製された状態で提供されるという一般的必要性は存在しない。実際、実質的に精製度のより低い産物が特定の実施形態において用途を有することも意図される。部分的精製はより少ない精製工程を組合せて使用することにより、又は、同じ一般的精製スキームの異なる形態を利用することにより達成してよい。例えば、当然ながら、HPLC装置を用いて実施されるカチオン交換カラムクロマトグラフィーは一般的に低圧クロマトグラフィー系を用いる同様の手法よりも高倍率の精製をもたらす。より低い程度の相対的精製を示す方法はタンパク質産物の総回収率において、又は、発現されたタンパク質の活性を維持することにおいて、有利である場合がある。
E.sGPCRに特異的な抗体の製造
一部の実施形態のためには、例えばsCRFR2αを包含するsGPCRをコードする単離された核酸のタンパク質産物に高い特異性で結合する抗体を生産することが望ましい。特定の特徴において、GPCR、特にスプライス変異体、例えばsCRFR2αスプライス変異体のc末端を認識するかそれと結合し、これにより膜関連受容体からsGPCRポリペプチドを識別するために使用できる抗体調製品が意図される。そのような抗体は当該分野で知られた種々の用途の何れか、例えば免疫検出法、免疫沈降法、ELISA試験、タンパク質精製法等において使用してよい。抗体を作成し、特性化するための手段は当該分野で良く知られている(例えば参照により本明細書に組み込まれるHarlow and Lane,1988を参照)。
【0091】
ポリクローナル抗体を作成するための方法は当該分野で良く知られている。要約すれば、ポリクローナル抗体は抗原性組成物で動物を免疫化すること、及び、免疫化された動物から抗血清を採取することにより製造される。広範な動物種を抗血清生産の為に使用できる。典型的には、抗血清を生産するために使用される動物はウサギ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウマ又はヤギである。ウサギの血液は比較的大容量であるため、ポリクローナル抗体の生産のためにはウサギが好ましく選択される。
【0092】
当該分野で良く知られている通り、ある組成物はその免疫原性において変動する場合がある。従って、担体へのペプチド又はポリペプチド免疫原の結合により達成されるように、宿主免疫系をブーストすることが必要である場合が多い。例示される好ましい担体はキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)及びウシ血清アルブミン(BSA)である。他のアルブミン、例えば卵白アルブミン、マウス血清アルブミン又はウサギ血清アルブミンもまた担体として使用できる。担体タンパク質にポリペプチドをコンジュゲートするための方法は当該分野で良く知られており、グルタルアルデヒド、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、カルボジイミド及びビスビアゾ化ベンジジンを包含する。
【0093】
当該分野で良く知られている通り、特定の免疫グロブリン組成物の免疫原性はアジュバントとして知られている免疫応答の非特異的な刺激物質の使用により増強することができる。例示される好ましいアジュバントは完全フロイントアジュバント(殺傷したマイコバクテリウム・ツベルクロシスを含有する免疫応答の非特異的刺激物質)、不完全フロイントアジュバント及び水酸化アルミニウムアジュバントを包含する。
【0094】
モノクローナル抗体(MAb)は参照により本明細書に組み込まれる米国特許4,196,265に例示されるもののようなよく知られた手法の使用により容易に製造してよい。典型的には、この手法では選択された免疫原組成物、例えば精製又は部分精製された発現されたタンパク質、ポリペプチド又はペプチドで適当な動物を免疫化する。免疫化組成物は抗体生産細胞を効果的に刺激するような態様において投与される。
【0095】
動物に上記した抗原を注射する。免疫化の後、抗体を生産する潜在能力を有する体細胞、特にBリンパ球(B細胞)を選択してMAb生成プロトコルに供する。多くの場合、動物のパネルが免疫化され、最高抗体力価を有する動物の脾臓が摘出され、脾臓をシリンジでホモゲナイズすることにより脾臓リンパ球を得る。
【0096】
次に免疫化された動物に由来する抗体生産Bリンパ球を不朽化骨髄腫細胞、一般的には免疫化された動物と同じ種のものの細胞と融合する。ハイブリドーマ生産融合操作法において使用するのに適する骨髄腫細胞系統は好ましくは非抗体生産性であり、高い融合効率を有し、そして所望の融合細胞(ハイブリドーマ)のみの生育を支援する特定の選択培地中で生育することを不可能とする酵素欠損を有する。多くの骨髄腫細胞の何れか1つを当業者の知る通り使用してよい(Goding,1986)。例えば、免疫化された動物がマウスである場合は、P3−X63/Ag8、X63−Ag8.653、NS1/1.Ag41、Sp210−Ag14、FO、NSO/U、MPC−11、MPC11−X45−GTG1.7及びS194/5XX0Bulを使用してよく;ラットの場合はR210.RCY3、Y3−Ag1.2.3、IR983F及び4B210を使用してよく;そしてヒト細胞融合との関連においてはU−266、GM1500−GRG2、LICR−LON−HMy2及びUC729−6が全て有用である。
【0097】
1つの好ましいネズミ骨髄腫細胞はNS−1骨髄腫細胞系統(P3−NS−1−Ag4−1とも称する)であり、これは細胞系統レポジトリー番号GM3573をリクエストすることによりNIGMS Human Genetic Mutant Cell Repositoryから容易に入手できる。使用してよい別のマウス骨髄腫細胞系統は8−アザグアニン体制マウスネズミ骨髄腫SP2/0非プロデューサー細胞系統である。
【0098】
本発明のモノクローナル抗体の多くの量はまたインビボでハイブリドーマ細胞を増殖させることにより得てもよい。細胞のクローンを親細胞と組織適合性のある哺乳類、例えば同系のマウスに注射することにより抗体産生腫瘍の生育を誘発する。場合により、動物を炭化水素、特に油脂類、例えばプリスタン(テトラメチルペンタデカン)でプライミングした後に注射する。
【0099】
本発明によれば、モノクローナル抗体のフラグメントはペプシン又はパパインのような酵素による消化及び/又は化学的還元によるジスルフィド結合の切断を包含する方法により得ることができる。或いは、本発明により包含されるモノクローナル抗体フラグメントは自動ペプチド合成装置を用いながら合成することができ、又は、Mabの全て又は部分をコードする完全長ポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドフラグメントの発現により得ることができる。
【0100】
抗体コンジュゲートは当該分野で知られた方法により、例えばグルタルアルデヒド又は過ヨウ素酸塩のようなカップリング剤の存在下に抗体を酵素と反応させることにより製造してよい。フルオレセインマーカーとのコンジュゲートはこれらのカップリング剤の存在下、又は、イソチオシアネートとの反応により製造する。金属キレートとのコンジュゲートも同様に製造される。抗体をコンジュゲートしてよい他の部分は放射性核種、例えばH、125I、131I、32P、35S、14C、51Cr、36Cl、57Co、58Co、59Fe、75Se、152Eu及び99mTcを包含する。本発明の放射標識抗体は当該分野で良く知られている通り製造できる。例えば、抗体をヨウ化ナトリウム又はカリウム及び化学的酸化剤、例えば次亜塩素酸ナトリウム又は酵素的酸化剤、例えばラクトパーオキシダーゼと接触させることによりヨウ素化することができる。本発明の抗体は例えばパーテクネテート(pertechnate)をスズ溶液で還元し、還元されたテクネチウムをセファデックスカラムにキレート化し、抗体をこのカラムに適用することによるリガンド交換過程により、又は、直接標識の手法により、例えばパーテクネテート、還元剤、例えばSnCl、緩衝溶液、例えばナトリウム−カリウムフタレート溶液及び抗体と共にインキュベートすることにより、テクネチウム−99で標識してよい。
【0101】
III.sGPCRポリペプチドをコードする核酸
本発明はsGPCR、例えば限定しないが、GPCR、ファミリーBGPCR、ファミリーB1GPCR、CRFR又はCRFR2ポリペプチドの全て又は部分をコードする核酸を包含し、そして核酸配列の送達並びに核酸配列の転写及び/又は翻訳に必要な種々の核酸配列を包含してよい。本発明の核酸分子は核酸の種々の隣接ストレッチ、例えば、約10、15、17、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、250、300、350、400、500、600、700、800、900、1000、1250、1500、1750、2000、2100、例えば配列表の完全長核酸配列、例えば配列番号1、3、5、7、9、11、13又は14、又は本明細書で参照したGPCRのポリヌクレオチド、そのフラグメント、本明細書に記載した、又は参照した配列を含むmRNA又はcDNAの全て又は部分を包含し、そして各々の突然変異体も意図される。同様に意図されるものは、上記した配列に相補であり、高ストリンジェンシー条件下においてこれらの配列に結合する分子である。これらのプローブは種々のハイブリダイゼーション実施形態、例えばサザン及びノーザンブロッティングにおいて有用である。
【0102】
種々のプローブ及びプライマーを開示したヌクレオチド配列の周囲に設計できる。プライマーは如何なる長さでもよいが、典型的には10〜20塩基長である。特定の特徴において、プローブ又はプライマーはGPCRのオルタナティブスプライシング型、例えば限定しないがエクソン5/エクソン7スプライスジャンクション(CRFR2α転写に関連してエクソン3/エクソン5接合部とも記載してよい)を含むCRFR2遺伝子の存在を発見又はスクリーニングするために使用できる。これらのプローブ又はプライマーは操作された核酸又はスプライスジャンクションのユニークな配列にハイブリダイズするか、又は、操作された核酸又はスプライスジャンクションに特徴的な核酸を増幅してよい。数値を配列に割り付けることにより、例えば第1の残基を1、第2の残基を2等とすることにより、全てのプライマーを定義するアルゴリズムが以下の通り提案される。
n〜n+y
ここで、nは1〜配列の最後の数の整数であり、そしてyはプライマーの長さマイナス1であり、ここでn+yは配列の最後の数を超えない。即ち、10量体については、プローブは塩基1〜10、2〜11、3〜12等々に相当する。15量体については、プローブは塩基1〜15、2〜16、3〜17等々に相当する。20量体については、プローブは塩基1〜20、2〜21、3〜22等々に相当する。
【0103】
特定の特徴において、本発明の核酸配列は本明細書に記載する種々のポリペプチドをコードするために使用してよい。本発明の1つの実施形態において、核酸配列はハイブリダイゼーションプローブ又は増幅プライマーとして使用してよい。特定の実施形態においては、これらのプローブ及びプライマーはオリゴヌクレオチドフラグメントよりなる。このようなフラグメントは組織から抽出されたRNA又はDNA試料への特異的ハイブリダイゼーションをもたらすために十分な長さを有さなければならない。配列は典型的には10〜20ヌクレオチドであるが、より長くてもよい。より長い配列、例えば40、50、100、500及び更には完全長に至るものも特定の実施形態のためには好ましい。
【0104】
17〜100ヌクレオチド長のハイブリダイゼーションプローブの使用は安定でかつ選択的な二重分子の形成を可能にする。ハイブリッドの安定性及び選択性を増大させ、そしてこれにより得られる特定のハイブリッド分子の品質及び等級を向上させるためには、20塩基長を超えるストレッチに亘り相補配列を有する分子が一般的に好ましい。一般的に20〜30ヌクレオチド、又は所望によりそれより長いストレッチを有する核酸分子を設計することが好ましい場合がある。そのようなフラグメントは例えば化学的手段によりフラグメントを直接合成することによるか、又は、組み換え生産のための組み換えベクター内に選択された配列を導入することにより、容易に製造してよい。従って、本発明のヌクレオチドは遺伝子、ポリヌクレオチド又はRNAの相補ストレッチと二重分子を選択的に形成するその能力に関して、又は、組織由来のDNA又はRNAの増幅のためのプライマーを提供するために使用してよい。想定される用途に応じて、種々のハイブリダイゼーション条件を用いることにより、標的配列に対するプローブの選択性の種々の程度を達成することが望まれるであろう。
【0105】
高選択性が必要である用途の場合は、典型的には比較的ストリンジェント又は高度にストリンジェントな条件を用いてハイブリッドを形成することが望ましく、例えば約50℃〜約70℃の温度における約0.02M〜約0.10MNaClにより得られる比較的低い塩濃度及び/又は高い温度の条件を選択することになる。このような高いストリンジェンシーの条件はプローブと鋳型又は標的鎖との間のミスマッチに対して、もしあったとしても、ごく僅かな耐容性しか示さず、そして、特異的遺伝子の単離又は特異的mRNA転写物の検出のためには特に適している。条件についてホルムアミドの増量添加により更にストリンジェントとすることができることが一般的に認められている。
【0106】
特定の実施形態においては、ハイブリダイゼーションを測定するための蛍光又は放射標識のような検出の適切な手段と組み合わせて本発明の核酸配列を使用することが好都合となる。広範な種類の適切なインジケーター手段、例えば蛍光、放射能、酵素及び他のリガンド、例えばアビジン/ビオチンが当該分野で知られており、これらは検出されることができる。
【0107】
本発明の核酸セグメントを発現ベクター、例えばプラスミド、コスミド又はウイルスポリヌクレオチドに取り込むような用途の場合、これらのセグメントは他のDNA配列、例えばプロモーター、ポリアデニル化シグナル、制限酵素部位、マルチクローニング部位、他のコーディングセグメント等と組み合わせることにより、それらの全体的な長さを大きく変動させてよい。殆ど如何なる長さの核酸フラグメントも使用してよいことを意図しており、総長は好ましくは、意図される組み換えDNAプロトコルにおいて製造及び使用の容易性により制限される。
【0108】
特定のポリヌクレオチドをコードするDNAセグメントを組み換え宿主細胞中に導入し、そしてsGPCR、例えば限定しないがsCRFR2αポリペプチドを発現するために使用してよい。或いは、遺伝子工学の手法の適用を介して、選択されたポリヌクレオチドのサブポーション又は誘導体を使用してよい。
【0109】
本出願を通じて、「発現コンストラクト」という用語は、核酸配列の部分又は全部が転写されることができる、例えば限定しないがポリペプチドをコードする生成物のような、生成物を定義する配列を有する核酸を含有する何れかの型の遺伝子コンストラクトを包含する。転写物はタンパク質内に翻訳されてよいが、必須ではない。即ち、特定の実施形態においては、発現はポリヌクレオチドの転写及びポリペプチド産物へのRNAの翻訳の両方を包含する。
【0110】
好ましい実施形態においては、核酸はプロモーターの転写制御下にある。「プロモーター」とは、ポリヌクレオチドの特異的転写を開始するために必要な、細胞の合成機序又は導入された合成機序により認識されるDNA配列を指す。「転写制御下」という表現はプロモーターがRNAポリメラーゼ開始及びポリヌクレオチド発現を制御するために核酸に対して正しい位置及び方向にあることを意味する。プロモーターという用語は本明細書においては、RNAポリメラーゼ、特にRNAポリメラーゼIIのための開始部位の周囲に集合している転写制御モジュールの群を指す。特定の特徴において、各プロモーター中の少なくとも1つのモジュールがRNA合成のための開始部位を位置付ける機能を有する。これの最もよく知られた例はTATAボックスであるが、TATAボックスを欠失している一部のプロモーター、例えば哺乳類末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ遺伝子に関するプロモーター及びSV40後期遺伝子に関するプロモーターにおいては、開始部位自身に重複している異なるエレメントが開始部位の固定に寄与する。
【0111】
核酸の発現を制御するために使用される特定のプロモーターは、それが標的細胞中で核酸を発現できる限り、厳密ではないと考えられる。即ち、ヒトの細胞がターゲティングされる場合は、ヒト細胞内で発現され得るプロモーターに隣接してその制御下に核酸コーディング領域を位置づけることが好ましい。一般的に、そのようなプロモーターはヒト又はウイルスのプロモーターを包含する。
【0112】
種々の他の実施形態において、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)前早期遺伝子プロモーター、SV40早期プロモーター及びラウス肉腫ウイルス長末端リピートを使用することにより、トランスジーンの高水準の発現を達成できる。当該分野で良く知られている他のウイルス又は哺乳類細胞又は細菌ファージのプロモーターを用いてトランスジーンの発現を達成することも意図しているが、ただし、発現の水準は所定の目的の為に十分なものとする。後述する幾つかのエレメント/プロモーターを本発明の範囲において使用することによりトランスジーンのようなポリヌクレオチドの発現を調節してよい。このリストはトランスジーン発現の促進に関与する可能なエレメントの全てを網羅することを意図しておらず、単に例示に過ぎない。
【0113】
何れかのプロモーター/エンハンサーの組合せ(真核生物プロモーターデータベースEPDBによる)もポリヌクレオチドの発現を駆動するために使用できる。T3、T7又はSP6原形質発現系の使用も可能な別の実施形態である。真核生物細胞は、送達複合体の部分として、又は、追加的な遺伝子発現コンストラクトとして適切な細菌ポリメラーゼが提供されれば、特定の細菌プロモーターからの原形質転写を支援することができる。バキュロウイルス系の使用では、強力なポリヘドリンプロモーターからの高水準発現を行う。
【0114】
プロモーターは限定しないが免疫グロブリン重鎖、免疫グロブリン軽鎖、T細胞受容体、HLADQα及びDQβ、β−インターフェロン、インターロイキン−2、インターロイキン−2受容体、MHCクラスII5、MHCクラスIIHLA−DRα、β−アクチン、筋クレアチンキナーゼ、プレアルブミン(トランスタイレチン)、エラスターゼI、メタロチオネイン、コラゲナーゼ、アルブミン遺伝子、α−フェトプロテイン、α−グロビン、β−グロビン、c−fos、c−HA−ras、インスリン、神経細胞接着分子(NCAM)、α−抗トリプシン、H2B(TH2B)ヒストン、マウス又はI型コラーゲン、グルコース調節タンパク質(GRP94及びGRP78)、ラット成長ホルモン、ヒト血清アミロイドA(SAA)、トロポニンI(TNI)、血小板誘導成長因子、デュシェーヌ筋ジストロフィー、SV40、ポリオーマ、レトロウイルス、乳頭種ウイルス、B型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、サイトメガロウイルス、テナガザル白血病ウイルスを包含する。
【0115】
種々のエレメント(インデューサー)は限定しないがMTII(ホルボールエーテル(TPA)重金属);MMTV(グルココルチコイド、β−インターフェロン、ポリ(rI)X、ポリ(rc));アデノウイルス5E2(Ela);c−jun(ホルボールエステル(TPA)、H);コラゲナーゼ(ホルボールエステル(TPA));ストロメリシン(ホルボールエステル(TPA)、IL−1);SV40(ホルボールエステル(TPA));Murine MX遺伝子(インターフェロン、ニューカッスル病ウイルス);GRP78遺伝子(A23187);α−2−Macroglobulin(IL−6);Vimentin(血清);MHCクラスI遺伝子H−2kB(インターフェロン);HSP70(E1a、SV40大型T抗原);プロリフェリン(ホルボールエステル−TPA);腫瘍壊死因子(FMA);及び甲状腺刺激ホルモンα遺伝子(甲状腺ホルモン)を包含する。
【0116】
典型的にはポリアデニル化シグナルを包含することにより転写物の適切なポリアデニル化を行う。ポリアデニル化シグナルの性質は本発明の良好な実施にとって重要ではないと考えられ、何れかのそのような配列を使用してよい。好ましい実施形態はSV40ポリアデニル化シグナル及びウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルを包含し、簡便であり、種々の標的細胞内で良好に機能することがわかっている。同様に意図されるものは発現カセットのエレメントとしてのターミネーターの取り込みである。これらのエレメントはメッセージ水準を増強し、カセットから他の配列へのリードスルーを最小限とする機能を有する。
【0117】
本発明の種々の実施形態において、発現コンストラクトはウイルスゲノムから誘導されたウイルス又は操作されたコンストラクトを含んでよい。受容体媒介エンドサイトーシスを介して細胞に進入し、そして宿主細胞ゲノム内に組み込まれウイルス遺伝子を安定に効率的に発現する特定のウイルスの能力は、それ自身を哺乳類細胞への外来遺伝子の転移のための注目に値する候補としている(Ridgeway,1988;Nicolas and Rubenstein,1988;Baichwal and Sugden,1986;Temin,1986)。ベクターとして使用される第1のウイルスはDNAウイルス、例えばパポバウイルス(シミアンウイルス40、ウシ乳頭腫ウイルス及びポリオーマ)(Ridgeway,1988;Baichwal and Sugden,1986)及びアデノウイルス(Ridgeway,1988;Baichwal and Sugden,1986)及びアデノ関連ウイルスとした。レトロウイルスもまたワクシニアウイルス(Ridgeway,1988)及びアデノ関連ウイルス(Ridgeway,1988)と同様に注目に値する遺伝子転移ベヒクル(Nicolas and Rubenstein,1988;Temin,1986)である。このようなベクターは(i)目的のGタンパク質を発現するという目的の為にインビトロで細胞系統を形質転換するため、又は(ii)遺伝子療法シナリオにおいて治療用ポリペプチドを提供するためにインビトロ又はインビボで細胞を形質転換するために使用してよい。
【0118】
別の実施形態において、使用するsGPCRコード核酸は実際にsGPCR又は他のコード核酸に細胞内条件下でハイブリダイズするアンチセンスコンストラクトをコードしていてよい。「アンチセンスコンストラクト」という用語は、標的DNA又はRNAの塩基配列に相補な核酸、好ましくはオリゴヌクレオチドを指すものとする。
【0119】
本明細書においては、「相補な」という用語は自身の全長に亘り実質的に相補であり、そして極めて少ない塩基ミスマッチを有する核酸配列を意味する。例えば、15塩基長の核酸配列は、それが13又は14位置において相補ヌクレオチドを有し、僅か単一のミスマッチのみ有する場合に相補であると称してよい。本来、「完全に相補である」核酸配列はその全長に亘り完全に相補であり、そして塩基ミスマッチを有さない核酸配列となる。
【0120】
A.核酸の検出及び定量
本発明の1つの実施形態はsGPCRに相当する核酸を増幅し、検出することによる、生物学的試料中の例えばCRFR2α核酸のようなsGPCR核酸の発見のための方法を包含する。生物学的試料はポリヌクレオチドが存在すると考えられる何れかの組織又は液体であることができる。増幅のための鋳型として使用される核酸は標準的な方法に従って生物学的試料に含有される細胞から単離する(Sambrook et al.,1989)。核酸は分画するか、全細胞RNAであってよい。
【0121】
sGPCRに相当する核酸に選択的にハイブリダイズするプライマー対を選択的ハイブリダイゼーションが可能な条件下に単離された核酸に接触させる。ハイブリダイズした後、核酸プライマー複合体を鋳型依存性核酸合成を促進する酵素1つ以上に接触させる。複数ラウンドの増幅は「サイクル」とも称されるが、これを十分な量の増幅産物が生成するまで実施する。増幅産物を検出してよい。特定の用途においては、検出は目視による手段により行ってよい。或いは、検出では、ケミルミネセンス、取り込まれた放射標識又は蛍光標識の放射性シンチグラフィーを介して、或いは、さらに電気的又は熱的なインパルスシグナルを用いた系を介して(Affymax technology;Bellus,1994)、生成物の間接的発見を行ってよい。
【0122】
所定の鋳型試料中に存在するマーカー配列を増幅するために多くの鋳型依存性の方法が用いられる。最もよく知られた増幅方法の1つはポリメラーゼ連鎖反応(PCRと称する)であり、これは参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許4,683,195、4,683,202及び4,800,159及びInnis et al.,1990に詳細に説明されている。ポリメラーゼ連鎖反応の方法は当該分野で良く知られている。
【0123】
増幅の別の方法は、参照により全体が本明細書に組み込まれるEPA320,308に開示されているリガーゼ連鎖反応(「LCR」)である。米国特許4,883,750は標的配列にプローブ対を結合させるためのLCRと同様の方法を記載している。またPCT出願PCT/US87/00880に記載されているQベータレプリカーゼを本発明における更に別の増幅方法として使用してよい。制限部位の一方の鎖にヌクレオチド5’−[アルファチオ]−トリホスフェートを含有する標的分子の増幅を達成するために制限エンドヌクレアーゼ及びリガーゼを用いる等温増幅方法もまた本発明の核酸の増幅において有用であり、参照により全体が本明細書に組み込まれるWalker et al.,(1992)を参照できる。更に又、鎖置換増幅(SDA)も核酸の等温増幅を実施する別の方法であり、鎖の置換及び合成、即ちニック翻訳の複数回試行を行う。修復鎖反応(RCR)と称される同様の方法では増幅の為にターゲティングされた領域全体に亘り数個のプローブをアニーリングし、その後、4塩基中2つのみが存在する修復反応を行う。標的の特異的配列はまた環状プローブ反応(CPR)を用いて検出できる。各々が参照により全体が本明細書に組み込まれるGB出願2202328及びPCT出願PCT/US89/01025に記載されている更に別の増幅方法もまた本発明に従って使用してよい。他の核酸増幅の操作法は転写に基づいた増幅系(TAS)、例えば核酸配列に基づいた増幅(NASBA)及び3SR(Kwoh et al.,1989);参照により全体が本明細書に組み込まれるPCT出願WO88/10315を包含する。
【0124】
増幅の後、特異的増幅が生じたかどうかを調べる目的のため、鋳型及び過剰なプライマーから増幅産物を分離することが望ましい場合がある。1つの実施形態において、増幅産物は標準的な方法を用いたアガロース、アガロース−アクリルアミド又はポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離する。Sambrook et al.,1989を参照できる。
【0125】
クロマトグラフィー手法を分離の為に使用できる。本発明において使用してよいクロマトグラフィーには多くの種類があり、吸着、分配、イオン交換及びモレキュラーシーブ、及び、それらを使用するための多くの専門的な手法、例えばカラム、紙、薄層及びガスクロマトグラフィーが挙げられる(Freifelder,1982)。
【0126】
IV.sGPCR遺伝子発現のための方法
本発明の1つの実施形態において、細胞における増大したsGPCR発現、例えば限定しないがsCRFR2α発現のための方法が提供される。これは、タンパク質の異常があるか、又はタンパク質の発現が正常な機能の為に十分ではない場合に特に有用である。これによりsGPCRの欠損、GPCRの過剰活性化又はGPCRリガンドの大量存在の結果として経験される疾患の症状の緩解が可能となる。
【0127】
sGPCRを増大させる一般的な方法は細胞、組織、動物又は対象にsGPCRポリペプチドを接触させる、又は投与することである。タンパク質は直接送達されることが好ましいが、細胞又は近隣細胞に対してsGPCRポリペプチドをコードする核酸を提供する実施形態も考えられる。このような提供の後、sGPCRポリペプチドは宿主細胞の転写及び翻訳の機序並びに発現コンストラクトにより提供される何れかのものにより合成される。sGPCRポリヌクレオチドの発現を支援するために必要なシス作用性の調節エレメントは発現コンストラクトの形態で提供される。ウイルスコードsGPCRの発現を刺激又は増強するか、又は、発現されたポリペプチドを安定化させることにより同様の作用を達成することも可能である。
【0128】
sGPCRポリヌクレオチドをコードするコンストラクトの発現を行うためには、発現コンストラクトを送達ベクターにより細胞内に送達しなければならない。送達の1つの機序はウイルス感染によるものであり、その場合は、複製又は非複製核酸を送達するウイルス粒子内に発現コンストラクトを封入する。
【0129】
受容体媒介エンドサイトーシスを介して細胞内に進入し、宿主細胞ゲノム内に組み込まれてウイルス遺伝子を安定かつ効率的に発現する特定のウイルスの能力は、それらを哺乳類細胞内への外来性遺伝子の転移のための注目に値する候補としている(Ridgeway,1988;Nicolas and Rubenstein,1988;Baichwal and Sugden,1986;Temin,1986)。遺伝子ベクターとして使用された最初のウイルスはDNAウイルス、例えばパポバウイルス(シミアンウイルス40、ウシ乳頭腫ウイルス及びポリオーマ)(Ridgeway,1988;Baichwal and Sugden,1986)及びアデノウイルス(Ridgeway,1988; Baichwal and Sugden,1986)であった。これらは外来性DNA配列に対しては比較的低容量であり、制限された宿主スペクトルを有する。更に又、許容性細胞におけるその癌原性能及び細胞障害作用は安全性の問題を呈する。それらは僅か8kb以下の外来性の遺伝子物質を収容できるのみであるが、種々の細胞系統及び実験動物に容易に導入できる(Nicolas and Rubenstein,1988;Temin,1986)。
【0130】
レトロウイルスは感染細胞においてそのRNAを2本鎖DNAに変換する能力を特徴とする一本鎖RNAウイルスの群であり;それらはベクターとしても使用できる。他のウイルスベクターを本発明において発現コンストラクトとして使用してよい。ワクシニアウイルス(Ridgeway,1988;Baichwal and Sugden,1986;Coupar et al.,1988)アデノ関連ウイルス(AAV)(Ridgeway,1988;Baichwal and Sugden,1986;Hermonat and Muzycska,1984)及びヘルペスウイルスのようなウイルスから誘導されたベクターを使用してよい。それらは種々の哺乳類細胞に対して幾つかの注目に値する特徴を与える(Friedmann,1989;Ridgeway,1988;Baichwal and Sugden,1986;Coupar et al.,1988;Horwich et al.,1990)。
【0131】
培養哺乳類細胞への発現コンストラクトの転移のための幾つかの非ウイルス方法もまた本発明は意図している。これらにはリン酸カルシウム沈殿(Graham and Van Der Eb,1973;Chen and Okayama,1987;Rippe et al.,1990)DEAE−デキストラン(Gopal,1985)、エレクトロポレーション(Tur−Kaspa et al.,1986;Potter et al.,1984)、直接のマイクロインジェクション(Harland and Weintraub,1985)、DNA負荷リポソーム(Nicolau and Sene,1982;Fraley et al.,1979)及びリポフェクタミン−DNA複合体、細胞超音波処理(Fechheimer et al.,1987)、高速マイクロプロジェクタイルを用いた遺伝子ボンバードメント(Yang et. al.,1990)及び受容体媒介トランスフェクション(Wu and Wu,1987;Wu and Wu,1988)が包含される。これらの手法の一部は後述するようにインビボ又はエクスビボに良好に適合される。
【0132】
本発明の別の実施形態において、発現コンストラクトは単にネイキッドの組み換えDNA又はプラスミドよりなるものであってよい。コンストラクトの転移は細胞膜を物理的又は化学的透過性とする上記した方法の何れかにより実施してよい。これは特にインビトロの転移に適用されるが、インビボの用途にも適用してよい。細胞にネイキッドDNA発現コンストラクトを転移させるための本発明の別の実施形態では粒子ボンバードメントを行う。この方法はDNAコーティングマイクロプロジェクションを加速して高速とすることにより細胞膜を貫通させ細胞を殺傷することなくそれに進入させる能力に依存している(Klein et al.,1987)。小粒子を加速するための幾つかの装置が開発されている。そのような装置の1つでは高電圧放電を行って電流を発生させ、これにより運動力を与えている(Yang et al.,1990)。使用されたマイクロプロジェクタイルはタングステン又は金のビーズのような生物学的に不活性な物質よりなるものであった。
【0133】
本発明の更に別の実施形態においては、発現コンストラクトはリポソーム内に捕獲してよい。リポソームはリン脂質の2層膜及び不活性の水性媒体を特徴とする小胞構造である。多層リポソームは水性の媒体で分離された多重の脂質層を有する。それらはリン脂質が過剰量の水溶液に懸濁されると自発的に形成される。脂質成分は閉鎖構造形成前に自己再配列を起こし、水を捕獲して脂質2層間に溶質を溶解させる(Ghosh and Bachhawat,1991)。リポフェクタミン−DNA複合体も意図される。
【0134】
細胞にsCRFR2αポリヌクレオチドをコードする核酸を送達するために使用できる他の発現コンストラクトは受容体媒介送達ベヒクルである。これらは殆ど全ての真核生物の細胞における受容体媒介エンドサイトーシスによる巨大分子の選択的取り込みを利用している。種々の受容体の細胞のタイプに特異的な分布により、送達は高度に特異的であることができる(Wu and Wu,1993)。
【0135】
V.疾患の治療のための医薬及び方法
別の実施形態において、本発明は、単独、又は、治療の他の様式1つ以上と組み合わせて、細胞、組織、動物、患者又は対象に投与するための製薬上許容しうる溶液中の本明細書に開示したポリヌクレオチド、ポリペプチド及び/又は抗体の組成物の1つ以上の製剤に関する。
【0136】
本発明の水性医薬組成物はsGPCR発現コンストラクト、sGPCRと共に治療用遺伝子をコードする発現コンストラクト、又は、GPCRリガンド活性又は感受性又は他の内分泌機能をモジュレートするsGPCRタンパク質および/または化合物の有効量を有する。そのような組成物は一般的には製薬上許容しうる担体又は水性媒体中に溶解又は分散される。治療目的のための「有効量」とは、対象の条件において臨床的に測定可能な差をもたらすような量と定義される。この量は物質、患者の状態、治療の種類等により変動する。
【0137】
「製薬上又は薬理学上許容しうる」という表現は、動物又はヒトに投与した場合に、多大な有害、アレルギー性又は他の望ましくない反応をもたらさない分子実体及び組成物を指す。本明細書においては、「製薬上許容しうる担体」とは全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌及び抗カビ剤、等張性付与及び吸収遅延剤等を包含する。薬学的に活性な物質に対するそのような媒体及び薬剤の使用は当該分野で良く知られている。何れかの従来の媒体又は薬剤が活性成分と不適合でない限り、治療用組成物中のその使用は意図される。
【0138】
静脈内又は筋肉内注射用のもののような非経腸投与の為に製剤される化合物のほかに、他の製薬上許容しうる形態は、例えば錠剤又は他の経口投与用固体;時限放出カプセル;及び現在使用されている何れかの他の形態、例えばクリーム、ローション、吸入剤等を包含する。
【0139】
本発明の活性化合物はしばしば非経腸投与用に製剤され、例えば静脈内、筋肉内、皮下又は腹腔内の経路用に製剤される。単独又は活性成分としての従来の治療薬と組み合わせてsGPCRを含有する水性組成物の製造は本明細書の開示を鑑みれば当業者が知りえるものである。典型的にはそのような組成物は液体の溶液又は懸濁液の何れかとしての注射剤として製造でき;注射前に液体の添加により溶液又は懸濁液を製造するために使用するのに適する固体形態もまた製造でき;そして調製品は乳化することもできる。
【0140】
注射用途に適する医薬品形態は滅菌水溶液又は分散液;ゴマ油、ピーナツ油又は水性ポリエチレングリコールを含む製剤;および滅菌注射用溶液又は分散液の要時製剤用の滅菌粉末を包含する。多くの場合において、形態は滅菌され、そしてシリンジ使用が容易となる程度の流動性を有さなければならない。製造及び保存の条件下において安定であり、細菌及びカビのような微生物の汚染作用に対抗して保存されなければならない。
【0141】
担体は又、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール等)、その適当な混合物及び植物油を含有する溶媒又は分散媒体であることができる。適切な流動性は例えばコーティング、例えばレシチンの使用により、分散体の場合は必要な粒径を維持することにより、そして、界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の防止は種々の抗細菌及び抗カビ剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等により行うことができる。多くの場合において、等張性付与剤、例えば糖類又は塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の延長された吸収は、組成物中、吸収を遅延させる物質、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によりもたらすことができる。
【0142】
滅菌注射用溶液は必要に応じて上記した種々の他の成分と共に適切な溶媒中に必要量の活性化合物を配合し、その後、濾過滅菌することにより製造する。一般的に、分散液は基礎的分散媒体と上記したもののうち所要の他の成分を含有する滅菌ベヒクル中に種々の滅菌された活性成分を配合することにより製造される。滅菌注射用溶液を製造するための滅菌粉末の場合は、好ましい製造方法は、真空乾燥及び凍結乾燥の手法であり、これらは、活性成分+何れかの追加的な所望の成分の粉末を、それらの予め滅菌濾過された溶液から与えるものである。
【0143】
製剤後、溶液は投薬処方に合致した様式で、そして治療上有効な量において投与される。製剤は種々の剤型、例えば上記した注射用溶液の型において容易に投与されるが、均一薬剤放出カプセル等も使用できる。
【0144】
例えば水溶液としての非経腸投与のためには、溶液は必要に応じて適宜緩衝性付与することが必要であり、そして、液体希釈剤は先ず十分な塩又はグルコースで等張性とする。これらの特定の水溶液は特に静脈内、筋肉内、皮下及び腹腔内投与に適している。この点に関し、使用できる滅菌水性媒体は本発明の開示を鑑みれば当業者の知る通りである。例えば1投薬量を等張性NaCl溶液1mlに溶解し、そして皮下注入液1000mLに添加するか、又は注入の提案される部位に注射する(例えば“Remington’s Pharmaceutical Sciences”(1980)参照)。投薬量のある程度の変動は治療すべき対象の状態に応じて必然的に生じる。投与の責任者は如何なる場合も個々の対象に対して適切な用量を決定する。
【0145】
本発明の方法の特定の特徴において、治療用組成物が投与される経路は非経腸投与であってよい。非経腸投与は静脈内注射、皮下注射、筋肉内注射、骨髄内注射、摂取又はこれらの組合せであってよい。特定の特徴において、sGPCRを含む組成物は投薬当たり約0.1〜約10マイクログラム/kg/体重で投与する。特定の特徴において、sGPCRを含む組成物は投薬当たり約1〜約5マイクログラム/kg/体重で投与する。特定の特徴において、sGPCRを含む組成物は投薬当たり約1.2〜約3.6マイクログラム/kg/体重で投与する。特定の特徴において、sGPCRを含む組成物は投薬当たり約1.2〜約2.4マイクログラム/kg/体重で投与する。好ましい特徴において、投薬当たり投与されるsGPCRの量は約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9、約3.0、約3.1、約3.2、約3.3、約3.4、約3.5、約3.6、約3.7、約3.8、約3.9、約4.0、約4.1、約4.2、約4.3、約4.4、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、約7.6、約7.7、約7.8、約7.9、約8.0、約8.1、約8.2、約8.3、約8.4、約8.5、約8.6、約8.7、約8.8、約8.9、約9.0、約9.1、約9.2、約9.3、約9.4、約9.5、約9.6、約9.7、約9.8、約9.9、約10.0マイクログラム/kg/身体又はこれ以上であってよい。
【0146】
製薬上許容しうる賦形剤及び担体溶液の製剤は、適当な用量及び、例えば経口、非経腸、静脈内、鼻内及び筋肉内の投与及び製剤を包含する種々の治療の用法において本明細書に記載した特定の組成物を使用するための治療の用法の開発と同様に、当該分野で良く知られている。
【0147】
A.消化送達
「消化送達」という用語は動物の消化管の一部に対し、直接又はその他の態様で投与することを指す。「消化管」という用語は、口から肛門まで伸長する食物の消化及び吸収及び食物残渣の排出において機能する動物内の管状の通路及びその部分又は断片の何れか及び全て、例えば口腔、食道、胃、小腸及び大腸及び結腸、並びにその複合的部分、例えば胃腸管を指す。即ち「消化送達」という用語は幾つかの投与経路を包含し、例えば限定しないが経口、直腸、内視鏡及び舌下/口内投与が挙げられる。これらの投与様式に共通の条件は消化管の一部又は全体に亘る吸収及びそのようにして投与される核酸の効率的な粘膜通過の必要性である。
【0148】
1.経口送達
特定の用途において、本明細書に開示した医薬組成物は経口投与を介して動物、患者又は対象に送達してよい。そのような場合、これらの組成物は不活性希釈剤と共に、又は、同化可能な食用担体と共に製剤してよく、或いは、それらはハード又はソフトゼラチンカプセルに封入してよく、又は、それらは圧縮成型して錠剤としてよく、又は、それらは食餌中に直接配合してよい。
【0149】
活性化合物は賦形剤と共に配合し、そして内服用錠剤、舌下錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハース等の形態で使用してよい(各々が参照により全体が本明細書に組み込まれるMathiowitz et al.,1997;Hwang et al.,1998;米国特許5,641,515;5,580,579及び5,792,451参照)。錠剤、トローチ、丸薬、カプセル等はまた以下のもの、即ちバインダー、例えばトラガカントガム、アカシア、コーンスターチ又はゼラチン;賦形剤、例えばリン酸2カルシウム;錠剤崩壊剤、例えばコーンスターチ、ポテトスターチ、アルギン酸等;潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム;及び甘味剤、例えばスクロース、ラクトース又はサッカリンを含有してよく、フレーバー剤、例えばペパーミント、ウインターグリーン油又はチェリーフレーバーも添加してよい。単位剤型がカプセルの場合は、それは上記種類の物質に加えて、液体担体を含有してよい。種々の他の物質がコーティングとして、又は他の態様で剤型の物理的形態を変更するために存在してよい。例えば、錠剤、丸薬又はカプセルはシェラック、糖類又は両方でコーティングしてよい。エリキシルのシロップは活性成分、すなわち、甘味剤としてのスクロース、保存料としてのメチル及びプロピルパラベン、染料及びフレーバー剤、例えばチェリー又はオレンジフレーバーを含有してよい。当然ながら、何れかの単位剤型の製造に使用される何れかの物質は薬学的に純粋であり、使用量において実質的に非毒性でなければならない。更に又、活性化合物は徐放性の調製品及び製剤中に配合してよい。
【0150】
典型的にはこれらの製剤は活性化合物少なくとも約0.1%以上を含有してよいが、活性成分のパーセントは当然ながら変動してよく、そして好都合には総製剤の重量又は容量の約1又は2%〜約60%又は70%であってよい。本来、各治療有効組成物中の活性化合物の量は、化合物の何れかの所定単位用量中に適当な投薬量が得られるように製造してよい。溶解度、生体利用性、生物学的半減期、投与経路、製品のシェルフライフ、並びに他の薬理学的検討事項のような要因は、そのような医薬品製剤を製造する当業者の意図するとおりであり、そして種々の投薬及び治療の用法が望ましい。
【0151】
2.直腸投与
経口経路により投与される治療薬は、代替として、下部腸管経路により、即ち肛門部を経て直腸又は下部腸管に投与することができる。直腸坐剤、保持浣腸又は直腸カテーテルをこの目的の為に使用することができ、そして、患者のコンプライアンスが他の方法では達成困難な場合(例えば小児及び老人への適用、又は患者が嘔吐又は意識不明の場合)に好ましい。直腸投与は経口経路よりも急速でより高値の血中濃度をもたらす場合があるが、その逆が正しい場合もある(Harvey,1990)。直腸から吸収される治療薬の約50%は肝臓を迂回するため、この経路の投与は初回通過代謝の潜在性を大きく低下させる(Benet et al.,1996)。
【0152】
B.非経腸送達
「非経腸送達」という用語は、消化管を経由しない態様における動物、患者又は対象への本発明の治療薬の投与を指す。非経腸用の医薬組成物の製造及び投与の方法は当該分野で知られている(例えばAvis,1990参照)。
【0153】
C.管腔内投与
管状の臓器又は組織(例えば動脈、静脈、尿管又は尿道)の隔離された部分への治療薬の直接の送達のための管腔内投与はそのような臓器又は組織の管腔が罹患している疾患又は状態を有する患者の治療の為に望ましい場合がある。この様式の投与を行うためには、カテーテル又はカニューレを適切な手段により外科的に導入する。治療を希望している管状の臓器又は組織の一部を隔離した後、本発明の治療薬を含む組成物を隔離された区間内にカニューレ又はカテーテルを介して注入する。治療薬が取り込まれるか、管の内部管腔細胞と接触している約1〜約120分間のインキュベーションの後に、注入カニューレ又はカテーテルを取り外し、区間の隔離を行っていた結紮の除去により管状臓器又は組織内の流動を再開する(Morishita et al.,1993)。本発明の治療用組成物はまた生体適合性のマトリックス、例えばヒドロゲル材料と組み合わせてインビボで血管組織に直接適用してもよい。
【0154】
D.脳室内投与
患者の脳への治療薬の直接送達のための脳室内投与は脳が罹患している疾患又は状態を有する患者の治療の為に望ましい場合がある。この様式の投与を行う1つの方法は、シリコンカテーテルをヒト患者の脳室内に外科的に導入し、腹部領域に外科的にインプラント処置しておいた(Zimm et al.,1984;Shaw,1993)皮下注入ポンプ(Medtronic Inc.,Minneapolis,Minn.)に連結する。ポンプを用いて治療薬を注射し、そして、外部プログラム装置により厳密な用量の調節及び投薬予定の変更を可能にする。ポンプのリザーバ容量は18〜20mLであり、注入速度は0.1mL/h〜1mL/hの範囲である。毎日〜毎月の投与の頻度、及び、kg体重当たり0.01μg〜100gの投与すべき薬剤の用量に応じて、ポンプリザーバは3〜10週の間隔で再充填してよい。ポンプの再充填はポンプの自己密封セプタムの経皮的穿刺により行ってよい。
【0155】
E.髄腔内薬剤投与
患者の脊柱への治療薬の導入のための髄腔内薬剤投与は中枢神経系の疾患を有する患者の治療の為に望ましい場合がある。この経路の投与を行うためには、シリコンカテーテルをヒト患者のL3−4腰部脊椎間空内に外科的にインプラント処置し、そして上腹部領域に外科的にインプラント処置しておいた皮下注入ポンプに連結する(Luer and Hatton,1993;Ettinger et al.,1978; Yaida et al.,1995)。ポンプを用いて治療薬を注射し、そして、外部プログラム装置により厳密な用量の調節及び投薬予定の変更を可能にする。ポンプのリザーバ容量は18〜20mLであり、注入速度は0.1mL/h〜1mL/hの範囲である。毎日〜毎月の投与の頻度、及び、kg体重当たり0.01μg〜100gの投与すべき薬剤の用量に応じて、ポンプリザーバは3〜10週の間隔で再充填してよい。ポンプの再充填はポンプの自己密封セプタムの経皮的穿刺により行ってよい。
【0156】
この方法を介して脳又は脊柱以外の領域への送達を行うためには、シリコンカテーテルは例えば肝臓への送達のためには肝動脈に皮下注入ポンプを連結するような配置とする(Kemeny et al.,1993)。
【0157】
F.膣送達
膣送達は局所投与を可能にし、そして初回通過代謝、消化酵素による分解及び潜在的な全身性副作用を回避する。膣坐剤(Block, Chapter 87 In:Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.,Gennaro,ed.,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1990,p.1609−1614)又は局所用軟膏をこの様式の送達を行うために使用できる。
【0158】
G.リポソーム、ナノカプセル及び微粒子の媒介する送達
特定の実施形態においては、本発明者等は、適当な宿主細胞への本発明の組成物の導入のための、本発リポソーム、ナノカプセル、微粒子、微小球、脂質粒子、小胞等の使用を意図している。特に、本発明の組成物は液体粒子、リポソーム、小胞、ナノスフェア又はナノ粒子等中に封入されて送達されるために製剤してよい。
【0159】
そのような製剤は本明細書に開示した核酸又はコンストラクトの製薬上許容しうる製剤の導入の為に好ましい。リポソームの製剤及び使用は一般的に当業者の知る通りである。(例えば細胞内細菌感染症及び疾患のターゲティングされた抗生物質療法におけるリポソーム及びナノカプセルの使用を記載しているCouvreue et al.,1977;Lasic,1998参照)。近年、向上した血清中安定性及び循環半減期を有するリポソームが開発された(参照により全体が本明細書に組み込まれるGabizon and Papahadjopoulos,1988;Allen and Choun,1987;米国特許5,741,516)。更に又、潜在的薬剤担体としての種々のリポソーム及びリポソーム様調製品の種々の方法が検討されている(各々が参照により全体が本明細書に組み込まれるTakakura,1998;Chandran et al.,1997;Margalit,1995;米国特許5,567,434; 5,552,157;5,565,213;5,738,868及び5,795,587)。
【0160】
リポソームは水性媒体中に分散され、自発的に多層同心円二層小胞(多層小胞(MLV)とも称する)を形成するリン脂質から形成する。MLVは一般的に25nm〜4μmの直径を有する。MLVの超音波処理によりコア中に水溶液を含有する200〜500Åの範囲の直径を有する小型の単層の小胞(SUV)が形成する。
【0161】
静脈内注射されたリポソームの消長及び傾向はその物理的特性、例えば大きさ、流動性及び表面電荷により異なる。それらはそれらの組成に応じて数時間又は数日間組織内に存続し、血中半減期は数分〜数時間の範囲である。より大きいリポソーム、例えばMLV及びLUVは網内皮細胞系の貪食細胞により急速に取り込まれるが、循環系の生理学的特徴は大部分の部位においてそのような大型の分子種の退出を制約する。それらは肝臓又は脾臓の洞部のような毛細管内皮に大型の開口部又は孔部が存在する場所でのみ退出することができる。即ち、これらの臓器が取り込みの優先的な部位となる。一方、SUVはより広範な組織分布を示すが、なお肝臓及び脾臓に高度に封鎖される。一般的に、このインビボの挙動はリポソームの潜在的ターゲティングをその大型サイズに接触可能な臓器及び組織のみに限定する。これらには血液、肝臓、脾臓、骨髄及びリンパ様臓器が包含される。
【0162】
或いは、本発明は本発明の組成物の製薬上許容しうるナノカプセル製剤を提供する。ナノカプセルは一般的に安定で再現性のある態様において化合物を捕獲することができる(Henry−Michelland et al.,1987;Quintanar−Guerrero et al.,1998;Douglas et al., 1987)。細胞内重合体過剰負荷による副作用を回避するためには、このような超微細粒子(約0.1μmサイズ)はインビボで分解され得る重合体を用いて設計しなければならない。これらの条件に合致する生体分解性のポリアルキル−シアノアクリレートのナノ粒子が本発明における使用の為に意図される。このような粒子は記載される通り容易に作成される(特に参照により全体が本明細書に組み込まれるCouvreur et al.,1980;1988;zur Muhlen et al.,1998;Zambaux et al. 1998;Pinto−Alphandry et al.,1995及び米国特許5,145,684)。
【実施例】
【0163】
以下の実施例は本発明の種々の実施形態を説明する目的で提示するものであり、如何なる点においても本発明を限定する意味を有さない。当業者の知る通り、本発明は目的を実施し、そして記載した結果と利点並びに本発明に固有の目的、結果及び利点を得るために十分適合される。本実施例は本明細書に記載した細胞及び方法と共に、現時点において好ましい実施形態の代表例であり、例示であり、本発明の範囲を限定する意図はない。請求項の範囲により定義される本発明の精神の範囲内に包含される変更及び他の用途は当業者の知る通りである。
【0164】
A.材料及び方法
マウス可溶性CRFR2αcDNAの単離。可溶性CRFR2αスプライス変異体をマウスCRFR2αオーソログのものと平行して単離した。PCRプライマーは既知哺乳類CRFR2遺伝子の間の相同性に基づいて設計した。以下のオリゴヌクレオチドプライマー、5’CCCCGAAGCTGCCCGACTGG3’(配列番号16)(センス)及び5’GGAAGGCTGTAAAGGATGGAGAAG3’(配列番号17)(アンチセンス)を使用することにより、オリゴdT又はランダムプライマーを用いて逆転写したマウス全脳ポリ(A)+RNAから製造したcDNAをスクリーニングした。PCRは72℃において90秒の伸長を行いながら35サイクル62℃で実施した。増幅されたフラグメントをpCRIITOPOベクター(Invitrogen,Carlsbad,CA)にサブクローニングし、配列決定し、そして、エクソン6を欠失している完全長CRFR2αの新規スプライス変異体、sCRFR2αをコードしていることがわかった(Chen et al.,2005)。
【0165】
半定量的RT−PCR及びサザン分析。以下のマウス末梢及びCNS組織、即ち、全脳、嗅球、視床下部、皮質、小脳、海馬、中脳、脳橋/延髄、脊髄及び下垂体を摘出し、前に報告されている通り(Chen et al.,2005)直接全RNA単離に付した。CRFR2α、sCRFR2α及びリボソームタンパク質S16に対する特異的プライマーを用いた半定量RT−PCR分析用の鋳型としてcDNA産物を使用した。エクソン3及び7におけるオリゴヌクレオチドプライマーの位置によりそれぞれCRFR2α及びsCRFR2αに相当する418及び309の2産物の増幅がもたらされる。オリゴヌクレオチドプライマー配列及びPCR条件は補助テキストに記載する。
【0166】
細胞外受容体キナーゼ1/2(ERK1/2)試験。CATH.a細胞を6時間1%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA)添加DMEM中で平衡化し、次に0.1%DMDM/BSA(ベヒクル)又は10nMUcnIにより、0.1%DMEM/BSA中に希釈した0.4又は4nMのsCRFR2αの存在下又は非存在下において刺激した。細胞を即座に回収し、ホスホリル化されたERK1/2−p42,44について前に報告されている通り(Chen et al.,2005)分析した。
【0167】
一過性のトランスフェクション及びルシフェラーゼ活性。HEK293T細胞を強力なCRE部位を含有するEVX1遺伝子のフラグメントを含有するルシフェラーゼレポーターでトランスフェクトした。細胞を回収し、ルシフェラーゼレポーター活性を前に報告されている通り(Chen et al.,2005)試験した。トランスフェクション後20時間において細胞を4時間ベヒクル又はUcn1(0.0001〜100nM)で、0.1nMsCRFR2αの存在下又は非存在下に処理した。
【0168】
ラジオイムノアッセイ(RIA)。インヒビンサブユニットに関して以前に報告されたプロトコル(Vaughan et al.,1989)を用いてキーホールリンペットヘモシアニンにコンジュゲートしたマウスsCRFR2αのユニークなC末端テール部(aa113〜143)をコードする合成ペプチドフラグメントで免疫化したウサギから抗血清を作成した。類縁体Tyr113sCRFR2α(113〜143)をクロタミンーTを用いながらNa125Iで放射標識し、HA中のトレーサーとして使用するためにHPLCで精製した(Vaughan et al.,1989)。sCRFR2αRIAの操作法はインヒビンサブユニットに関して以前に詳細に報告されたものと同様とした(Vaughan et al.,2005)。要約すれば、抗sCRFR2αを1/300,000最終希釈度で使用し、合成sCRFR2α(113〜143)を標準物質として使用した。ネズミ組織を酸抽出し、報告されている通り(Vaughan et al.,1989)オクタデシルシリカカートリッジを用いて部分的に精製した。凍結乾燥した試料を3〜7用量水準において試験した。遊離のトレーサーはヒツジ抗ウサギγ−グロブリン及び10%(w/v)ポリエチレングリコールを添加することにより結合型から分離した。sCRFR2αのEC50及び最小検出用量はそれぞれ試験管当たり〜5pg及び100pgであった。
【0169】
免疫組織化学的検討。成熟雄性C57B6Jマウス(Jackson Laboratories)及びSprague−Dawleyアルビノラット(Harlan Sprague−Dawley)を抱水クロラール(350mg/kg、ip)で麻酔し、Zamboniの固定液で灌流し(Bittencourt et al.,1999)、その後、0〜4時間、後固定した。Vectastain Elite試薬(Vector Laboratories,Burlingame,CA)を用いてsCRFR2α−irのニッケル増強アビジン−ビオチンイムノパーオキシダーゼ局在化の為に脳全体に亘って規則的間隔(4中1)の一連の30μm厚みの前頭葉切片を作成した。一次sCRFR2α抗血清を担体に吸着させ、アフィニティー精製し、1:2000の希釈度で使用した。免疫染色の特異性は0〜300μMの合成免疫原と共に4℃で一夜予備インキュベートした一次抗血清を用いて評価した。標識もまた一方又は両方のCRFRを欠損した突然変異体マウスにおいて評価した(Smith et al.,1998;Bale et al.2000)。sCRFR2αでトランスフェクトしたCOSM6細胞の蛍光免疫細胞化学的分析の詳細な説明は補助テキストに記載する。
【0170】
sCRFR2αの哺乳類発現。アミノ酸143の後にFLAGエピトープが含まれるようにPCRによって修飾したアミノ酸1〜143に相当するcDNAをpSec−Tag2HygroA(Invitrogen,Carlsbad,CA)にサブクローニングし、報告されている通りCOSM6細胞のトランスフェクションの為に使用した(Perrin et al.,2001)。4日後、培地を収集し、FLAGアガロース(Sigma,St.Louis,Mo.)免疫アフィニティークロマトグラフィーを用いた精製によりsCRFR2αをリッチ化した。抗FLAG抗体又はユニークなsCRFR2αC末端に対して形成された抗体の何れかを用いたイムノブロット分析によりタンパク質を検出した。
【0171】
sCRFR2αの細菌発現。鋳型としてmCRFR2αを用いたPCRによりアミノ酸20〜143に相当するcDNAを作成した。cDNAをpET−32a(+)(Novagen,La Jolla,CA)にサブクローニングし、前に報告されている通り(Perrin et al.,2001)Sタンパク質アフィニティークロマトグラフィーによりタンパク質を精製した。ユニークなsCRFR2αC末端に対して形成された抗体の何れかを用いたイムノブロット分析によりタンパク質を検出した。
【0172】
放射性受容体試験。COSM6細胞培地又はE・コリの何れかより精製した可溶性タンパク質を[125I−DTyr]−アストレシン及び漸増濃度の未標識ペプチドと共に前に報告されている通り(Perrin et al.,2003)3連のウエル中でインキュベートした。
【0173】
B.結果
より小型(〜100bp)のcDNA転写物がマウスCRFR2αの単離の間に観察されている(Van Pett et al.,2000)。このより小型のフラグメントを単離したところ、エクソン6を欠失したCRFR2αの変異体をコードすることがわかった。変異体転写物の翻訳はCRFR2αの最初の細胞外ドメインの大半とその後のユニークな38アミノ酸C末端を含む新規な143アミノ酸タンパク質、sCRFR2αを予測させるものである(図1A)。ゲンバンクのスクリーニングによれば他のタンパク質とのC末端の相同性は無かった。sCRFR2αのゲノムの配置は図1Bに示す通りである。
【0174】
sCRFR2αmRNAが単にスプライシングエラーの産物であるとすれば、正しくスプライシングされたRNAよりも遥かに低アバンダンスとなるはずである。この問題を調べるために、半定量的RT−PCR、次いでサザンハイブリダイゼーション分析を用いることにより数箇所の脳の領域におけるCRFR2α及びsCRFR2αの相対的なアバンダンスを比較した。マウス組織から製造した全RNAを逆転写することにより、CRFR2α及びsCRFR2αに対する特異的なプライマー及びプローブを用いた半定量的RT−PCR用とその後のサザンハイブリダイゼーションの鋳型として使用するcDNAを作成した(図2)。オリゴヌクレオチドプライマー対(エクソン3及び7に位置)により、可溶性形態と完全長の膜結合受容体の両方が単一の反応において同時に増幅できた(図2A)。sCRFR2αは嗅球、皮質、中脳及び下垂体において高度に発現されている(図2B及び2C)。より低水準の発現が海馬、視床下部、橋、延髄及び脊髄において観察された(図2B及び2C)。図2に示される通り、sCRFR2αmRNAのアバンダンスはより低値であるが、CRFR2αmRNAとは同等である。RT−PCRで得られたcDNAフラグメントの配列はマウスCRFR2α遺伝子のスプライス変異体をコードしていることがわかった(図1A)。
【0175】
配列のコンピューター分析によれば、最初の19アミノ酸が推定シグナルペプチドとして作用していることが予測された。配列は膜結合のための明らかな部位を含有していないため、タンパク質は可溶性形態で分泌されると仮定される。この仮説を検討するために、タンパク質をCOSM6細胞中で発現させた。培地から精製した後、〜30kDのタンパク質バンドを抗FLAG抗血清、又は抗sCRFR2α、即ちsCRFR2αのユニークなC末端テール部(aa113〜143)をコードする合成ペプチドフラグメントに対して作成した抗血清のいずれかを用いたイムノブロット分析により可視化した(図3A)。cDNAから予測されたものと比較してより大型のタンパク質は恐らくはグリコシル化の結果である。
【0176】
より大量のsCRFR2αを得るために、推定シグナルペプチドを欠失したタンパク質をE・コリ中で融合タンパク質として発現させた(Perrin et al.,2001)。切断及び精製の後、〜20kDの大きさの狭小バンドとしてイムノブロット分析によりタンパク質を可視化した(抗sCRFR2αを使用)。抗sCRFR2α血清はラジオイムノアッセイ(図3B)並びに免疫細胞化学的検討(図3C)の両方においてsCRFR2αタンパク質を検出している。
【0177】
抗sCRFR2α血清を用いた免疫組織化学的試験によれば、げっ歯類の脳にsCRFR2α−irが分布していた。sCRFR2α−irの免疫標識の細胞分布は広範であり、CRFR2よりもCRFR1mRNA発現パターンの位置により緊密に合致していた(図4A〜4F)。記載した結果はマウスにおける試験で得られたものであり、ラットにおいても同様の標識パターンが観察された。細胞発現の主要な部位は嗅球の僧帽状及び房飾細胞、中央中隔対角帯複合体、梨状皮質、黒質、赤核、基部側方扁桃、深部小脳及び後索核を包含し、これらは全てCRFR1発現の顕著な部位である。CRFR1と同様に、sCRFR2α−ir細胞体は同種皮質全体に亘って多数であるが、層状の分布は部分的に重複するのみである。即ち、CRFR1及びsCRFR2α発現細胞体の両方とも層2/3に多数であるが、CRFR1発現の優勢な皮質シートは層4にあるのに対し、sCRFR2αのものは層5にある。側方中隔、中脳縫線、視床下部腹内側及び中央扁桃核を包含するCRFR2発現の主要な部位は全てsCRFR2α染色された細胞体を欠いていたが、興味深いことに、後者の2部位は本発明者等がsCRFR2α−ir終末野の代表とした標識された静脈瘤様腫脹で被覆された数箇所内にあった。視床下部の室傍核もまた中等度の密度の予測されたsCRFR2α−ir終末野を含有していた。
【0178】
脳全体にわたる標識は免疫原として使用したsCRFR2α(113〜143)ペプチドの低マイクロモル濃度(≧30μM)存在下の抗血清の予備インキュベーションによりブロックされ、CRFR1配列から推測された相当するペプチドとの競合は3mMもの高濃度でも免疫標識を妨害しなかった。標識の特異性に関する別の裏づけは、CRFR1及び/又はCRFR2欠失マウスにおいて全免疫局在化が持続したという観察結果であり、既存の受容体ノックアウト系統の各々を作成するために使用したターゲティングコンストラクトがsCRFR2αコーディング領域を温存することが予測されることに注目すべきである(Smith et al.,1998;Timpl et al.,1998;Bale et al.,2000)。
【0179】
脳内のsCRFR2α様irの存在を測定するために、抗sCRFR2α−及び[125I−Tyr113]sCRFR2α(113〜143)をトレーサーとして用いながら高度に特異的なラジオイムノアッセイを開発した。マウス脳由来の組織を酸抽出し、C18カートリッジ上で部分的に精製し、そしてラジオイムノアッセイにおいて複数の用量で試験した。組織抽出液は用量依存的に抗sCRFR2αに結合した[125I−Tyr113]sCRFR2α(113〜143)を排除した(図4G)。発現の最高水準は嗅球、視床下部、皮質及び中脳で観察され、これらは全て、免疫組織化学的試験により測定したir細胞及び線維の存在と相関している(図4)。CRFR1の推定可溶性形態(エクソン5の欠失により作成)は異なるユニークなC末端配列を含んでいる。その配列に相当するタンパク質はラジオイムノアッセイにおいて[125I−Tyr113]sCRFR2α(113〜143)を排除しなかった。これらの結果はげっ歯類CNSにsCRFR2αタンパク質が存在することを更に確認するものである。
【0180】
CRFファミリーリガンドとのsCRFR2αの相互作用をsCRFR2αに結合した[125I−DTyr]−アストレシンの競合的排除を用いた放射性受容体試験により調べた。COSM6細胞から分泌されるか、又は、細菌中で生産される可溶性タンパク質はアゴニストUcn1及びCRF、並びに拮抗剤、アストレシンにナノモル親和性で結合するのに対し、Ucn2及びUcn3に対する親和性は遥かに低値である(表2)。
【0181】
【表2】

COSM6細胞培地(哺乳類sCRFR2α)又はE・コリ(細菌sCRFR2α)の何れかより精製したsCRFR2αタンパク質へのCRFファミリーメンバーの結合。詳細は方法を参照。
【0182】
sCRFR2αの可能な機能を明確化するために、本発明者等はCREファミリーリガンドによるシグナル伝達に対するその作用を検討した。哺乳類及び細菌により発現されたsCRFR2αタンパク質の両方とも、EVX1遺伝子のCREルシフェラーゼ活性により測定した場合、マウスCRFR2αでトランスフェクトしたHEK293T細胞においてUcn1及びCRFへのcAMP応答を用量依存的な態様で抑制する(図5A)。ウロコルチンはMAPKシグナル伝達を活性化するため(Brar et al.,2002)、本発明者等はCRFR1およびCRFR2αを内因性に発現するCATH.a細胞においてERK1/2−p42,44のUcn1による活性化を抑制するsCRFR2αの能力を測定した。sCRFR2αはCATH.a細胞においてUcn1によるホスホリル化ERKの誘導を抑制する(図5B)。
【0183】
本発明及びその利点を詳細に説明したが、添付請求項により定義される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく種々の変更、置き換え及び改変が行えると理解される。更に又、本出願の範囲は明細書に記載したプロセス、機器、製造、物質組成、手段、方法及び工程の特定の実施形態に限定される意図はない。当業者には本発明の開示から明らかであるとおり、本明細書に記載した相当する実施形態と実質的に同じ機能を果たすか、実質的に同じ結果を達成する既存又は将来開発されるプロセス、機器、製造、物質組成、手段、方法及び工程を本発明に従って利用してよい。従って、添付請求項はそのようなプロセス、機器、製造、物質組成、手段、方法及び工程をその範囲内に包含することを意図している。
【0184】
参考文献
以下に挙げられた参考文献は、それらが背景を補足し、説明し、提供する範囲で本明細書中に参考として援用されるか、または本明細書中で用いられる方法論、技術、および/または組成物を教示している。
【0185】
【表5】

【0186】
【表6】

【0187】
【表7】

【0188】
【表8】

【0189】
【表9】

【0190】
【表10】

【図面の簡単な説明】
【0191】
上記した本発明の特徴、利点及び目的並びに明確になるその他のものが達成される要件がより詳細に理解されるように、上記において簡単に要約した本発明のより特定された説明及び特定の実施形態を添付の図面において説明する。これらの図面は明細書の部分を構成する。しかしながら、添付の図面は本発明の特定の実施形態を説明するものであり、従ってその範囲を限定するものとみなしてはならない。
【図1】可溶性GPCR、CRF受容体2α型(sCRFR2α)の例示されるヌクレオチド及び翻訳されたアミノ酸配列を示す(図1A)。下線を付したアミノ酸はユニークなC末端テール部を示す。枠内の残基は推定されるN連結グリコシル化部位を示す。マウスCRFR2遺伝子(上パネル)、マウスにおける2つの既知の機能的転写物、α及びβ(中パネル)及び新規なsCRFR2αスプライス変異体(下パネル)の構造の模式的表示である(図1B)。翻訳開始部位(ATG)の位置を示す。N末端細胞外ドメイン(ECD)をコーディングしているエクソン、7回膜貫通ドメイン(7TM)及びC末端原形質ドメイン(CD)を示す。5’及び3’−UTRは斜線枠で示す。黒色の枠はコーディング領域であり、白色の枠は停止コドンの下流のエクソンを示す。
【図2】マウスの脳及び下垂体におけるCRFR2α及びsCRFR2αのmRNAの発現を示す。図2AはマウスのCRFR2α(上パネル)及びsCRFR2α(下パネル)の転写物の増幅された部分の模式図及びオリゴヌクレオチドプライマーの位置である。それぞれCRFR2α及びsCRFR2αに相当する418及び309の2産物の増幅をもたらすエクソン3及び7におけるオリゴヌクレオチドプライマーの位置を示す。図2BはmCRFR2α及びsCRFR2αのmRNA及びリボソームタンパク質S16mRNA(上パネル)に関する半定量的RT−PCRの電気泳動分析の代表的画像である。増幅されたmCRFR2α及びsCRFR2αのcDNA及びリボソームタンパク質S16のcDNAフラグメントのサザンブロットハイブリダイゼーションも実施した(下パネル)。放射性のバンドはPhosphorImagerで定量し、規格化された数値(S16発現に対して)を相対デンシトメトリー単位として表示する(図2C)。
【図3】マウスsCRFR2αタンパク質(aa113〜143)のユニークなC末端テール部をコードする合成ペプチドフラグメントを用いてウサギにおいて作成した高度に特異的な抗血清を用いてsCRFR2αのラジオイムノアッセイを開発し、イムノブロット分析及び免疫細胞化学的検討の為に用いた。図3Aは抗sCRFR2α(113〜143)血清(左パネル)又はモノクローナル抗体M2抗FLAG(右パネル)と反応させたsCRFR2αFLAGコンストラクトで一過性にトランスフェクトしたCOS−M6細胞の培地から単離したマウスsCRFR2αのウエスタンイムノブロットである。レーン1、2及び3はそれぞれ0.1、1.0及び10μlのsCRFR2α−FLAG抽出液に相当する。図3Bは合成sCRFR2α(aa113〜143)による、そして、精製COS−M6発現sCRFR2α(aa113〜143)FLAGによるウサギ抗sCRFR2α(aa113〜143)への[125I]Tyr113sCRFR2α(aa113〜143)結合の置き換えである。図3Cは抗sCRFR2α(aa113〜143)血清、次いでCy3コンジュゲート二次抗体で可視化したマウスsCRFR2αコンストラクトで一過性にトランスフェクトしたCOS−M6細胞の免疫蛍光染色(図3C(b))である。スライドはDAPIで逆染色することによりトランスフェクト及び未トランスフェクトの細胞の両方を可視化した(図3C(a))。陰性対照としての正常ウサギ血清(NRS)、次いでCy3コンジュゲート二次抗体と共にインキュベートした細胞はいずれの染色も示さなかった(図3C(c))。
【図4】免疫組織化学的検討及びラジオイムノアッセイ(RIA)を用いた場合のマウス脳におけるsCRFR2α様免疫反応性(ir)の存在を示す。図4A〜4Fは選択マウス脳領域におけるsCRFR2αに関するイムノパーオキシダーゼ染色を示す。細胞発現の主要な部位は嗅球の主要排出ニューロン(図4A);内側中隔核(図4B);及び扁桃の基底側方(BLA)であるが中央(CeA)ではない核(図4C);層5と2/3に主に染色細胞が局在化している大脳皮質(図4D);及び赤色核(図4E)を包含していた。これらの部位の各々において、細胞標識のパターンはCRFR1mRNA発現の場合と必ずしも同一ではないが同様であった。免疫標識線維及び静脈瘤様腫脹が視床下部の室傍核を含む僅かの細胞群に限局していた(PVH;図4F)。図4Gはマウス脳から単離した酸抽出部分精製組織におけるsCRFR2α様免疫反応性をラジオイムノアッセイで測定したものである。組織抽出液を5〜7用量水準で試験したところ、ウサギ抗sCRFR2α(aa113〜143)への[125I]標識Tyr113sCRFR2α(aa113〜143)の結合を用量依存的態様において置き換えた。
【図5】sCRFR2αタンパク質はUcn1又はCRFにより媒介されるcAMPの誘導及びMAPKシグナル伝達を妨害する。図5AはマウスCRFR2αで一過性にトランスフェクトした293T細胞におけるsCRFR2αの予備インキュベーションの存在下又は非存在下のUcn1又はCRFによるCREルシフェラーゼレポーターの活性化を示す。EVX1遺伝子のCREプロモーターのフラグメントを含有するルシフェラーゼレポーターをCRFR2α発現ベクターと共に293T細胞に同時トランスフェクトした。ルシフェラーゼ活性は0.1nMsCRFR2αの存在下又は非存在下、0.0001〜100nMのUcn1又はCRFで処理(4h)した後に測定した。試験は同時トランスフェクトしたβ−ガラクトシダーゼ活性に対して規格化した。1実験6連の代表的平均値をグラフに示す。図5Bは平衡化したCATH.a細胞をsCRFR2α(0.4又は4nM)の存在下又は非存在下にUcn1(10nM)で処理したものである。受容体刺激の5分後、細胞溶解物を採取し、ホスホERK1/2−p42,44抗体及びERK2−p44抗体を用いたSDS−PAGEイムノブロット分析に付した。ERK活性化は総ERK2−p44に対してホスホリル化ERK1/2−p42,44の水準を規格化することにより計算した。1実験3連の平均の代表値をグラフで示す。,P<0.05vsベヒクル処理、#,P<0.05vsUcn1処理、UD=検出せず。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された可溶性コルチコトロピン放出因子受容体2型(sCRFR2)。
【請求項2】
前記sCRFR2がコルチコトロピン放出因子受容体2型のアミノ末端細胞外ドメインを含む、請求項1記載のsCRFR2。
【請求項3】
前記sCRFR2のアミノ酸配列がCRFR2遺伝子のエクソン3、4及び5によりコードされるアミノ酸配列を含む、請求項1記載のsCRFR2。
【請求項4】
前記sCRFR2が配列番号4、配列番号8又は配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも70%類似する少なくとも50アミノ酸のアミノ酸配列を含む、請求項1記載のsCRFR2。
【請求項5】
前記sCRFR2が配列番号4、配列番号8又は配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも90%類似する少なくとも50アミノ酸のアミノ酸配列を含む、請求項4記載のsCRFR2。
【請求項6】
前記sCRFR2が配列番号4、配列番号8又は配列番号12のアミノ酸配列と少なくとも95%類似する少なくとも50アミノ酸のアミノ酸配列を含む、請求項5記載のsCRFR2。
【請求項7】
前記sCRFR2が配列番号4、配列番号8又は配列番号12の少なくとも50アミノ酸のアミノ酸配列を含む、請求項6記載のsCRFR2。
【請求項8】
前記単離されたsCRFR2が更に、アフィニティータグ、標識、放射性核種、酵素、蛍光マーカー、ケミルミネセントマーカー、免疫グロブリンドメイン又はこれらの組合せを含む、請求項1記載のsCRFR2。
【請求項9】
前記単離されたsCRFR2が更にアフィニティータグを含む、請求項8記載のsCRFR2。
【請求項10】
前記単離されたsCRFR2が更に蛍光マーカーを含む、請求項8記載のsCRFR2。
【請求項11】
前記単離されたsCRFR2が更に免疫グロブリンドメインを含む、請求項8記載のsCRFR2。
【請求項12】
前記sCRFR2が免疫グロブリンFcドメインを含む、請求項11記載のsCRFR2。
【請求項13】
更にリーダー配列を含む、請求項1記載のsCRFR2。
【請求項14】
前記sCRFR2が重合体にコンジュゲートされる、請求項1記載のsCRFR2。
【請求項15】
前記重合体がポリエチレングリコール(PEG)である、請求項14記載のsCRFR2。
【請求項16】
sCRFR2の少なくとも50連続アミノ酸をコードする、単離された核酸。
【請求項17】
前記sCRFR2をコードする核酸に作動可能に連結したプロモーターを更に含む、請求項16記載の核酸。
【請求項18】
前記核酸が発現カセットである請求項17記載の核酸。
【請求項19】
前記発現カセットが発現ベクターに含まれる、請求項18記載の核酸。
【請求項20】
前記発現ベクターが線状核酸、プラスミド発現ベクター又はウイルス発現ベクターである、請求項19記載の核酸。
【請求項21】
前記発現ベクターが送達ベクターに作動可能に連結している、請求項19記載の核酸。
【請求項22】
前記送達ベクターがリポソーム、ポリペプチド、ポリカチオン、脂質、細菌又はウイルスである、請求項21記載の核酸。
【請求項23】
Gタンパク質共役型受容体(GPCR)の活性をモジュレートする方法であって、該方法は、前記sCRFR2の有効用量をそれを必要とする対象に投与することを含み、細胞表面GPCRへのGPCRリガンドの結合が低減される、方法。
【請求項24】
前記リガンドが、コルチコトロピン放出因子(CRF)、ウロコルチン1、ウロコルチン2、ウロコルチン3又はストレスコピンである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
投与を内服、注射、内視鏡又は灌流により行う、請求項23記載の方法。
【請求項26】
投与を注射により行う、請求項25記載の方法。
【請求項27】
注射が静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、皮内注射、頭蓋内注射又は腹腔内注射である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記対象がヒトである、請求項23記載の方法。
【請求項29】
GPCRの過剰活性化又はGPCRリガンドの過剰分泌から生じる障害を治療することを更に含む、請求項23記載の方法。
【請求項30】
前記障害がII型糖尿病である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記障害がII型糖尿病、インスリン感受性、不安関連障害;気分障害;双極性障害;外傷後ストレス障害;炎症性障害;薬物依存及び中毒;胃腸障害;又は皮膚障害である、請求項29記載の方法。
【請求項32】
前記不安関連障害が全般的不安障害であるか、又は前記気分障害が抑鬱である、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記胃腸障害が刺激性腸症候群である、請求項31記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2008−529500(P2008−529500A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554332(P2007−554332)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【国際出願番号】PCT/US2006/004321
【国際公開番号】WO2006/086402
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(505098937)リサーチ ディベロップメント ファウンデーション (16)
【Fターム(参考)】