説明

可溶性RNAポリメラーゼタンパク質およびその使用方法

真核細胞起源でありかつRNAサイレンシング経路に関与するポリメラーゼタンパク質が、検出可能なRNA重合活性を保有する精製された可溶性形態で初めて提供される。このポリメラーゼは、in vitroのRNA合成のための方法およびキットにおいて有用である。本発明のポリメラーゼは、ssRNAテンプレートをコピーして、2つのタイプの反応産物(短いRNAコピーおよび長いRNAコピー)を産生する。これは、ssDNAテンプレートもまたコピーし得る。この重合はRNA合成の開始のためにプライマーを必要としないが、RNA合成はプライマーの存在下でも開始され得る。標準的なヌクレオチドに加えて、本発明のポリメラーゼは、多数の改変されたヌクレオチドをも受容する。このポリメラーゼは、多数の下流の適用(例えば、標識されたRNAプローブの産生または生きた細胞においてRNA干渉効果を誘導するかもしくはin vitro系において適切なトリガーRNA分子の生成)において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、核酸テンプレートを使用するRNAの酵素的合成に関する。より具体的には、本発明は、転写後遺伝子サイレンシングプロセスに関与する細胞性RNAポリメラーゼによって触媒されるRNA合成を扱う。本発明は、このポリメラーゼ、このポリメラーゼの可溶性の活性形態、およびこの可溶性活性ポリメラーゼをコードする核酸を使用することによって、核酸産物を産生するための方法を開示する。このポリメラーゼを核酸テンプレートと接触させることによる、RNA合成のための方法およびキットもまた開示される。本発明はまた、RNA重合産物の下流の適用に関する。
【背景技術】
【0002】
転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)またはRNAサイレンシングとは、真核細胞における配列特異的なRNA分解機構をいう(Baulcombe、2002)。PTGSおよびウイルスにより誘導される遺伝子サイレンシングという現象は、コサプレッションという名で植物において最初に発見されたが、その後、鎮圧(quelling)として糸状真菌Neurospora crassaについて、そして多数の動物および原生動物におけるRNA干渉(RNAi)として報告されている(CogoniおよびMacino、1999;Fire、1999;Fjoseら、2001)。RNAサイレンシングは、標的テンプレートに対して充分相同な二本鎖(ds)RNAトリガーによって誘導および媒介される。RNAサイレンシングは、ウイルス性RNA、トランスポゾン、ならびに実験条件下での導入遺伝子および合成dsRNAに対する細胞防御のシステムとして使用される(Plasterk、2002;Waterhouseら、2001)。
【0003】
RNAサイレンシングの実用上の重要性が増してきている。導入遺伝子により誘導されたPTGSは、農業において、例えば、ペチュニアにおいて花弁の色を変化させるため、またはトマトにおいてマセレーション(maceration)を遅延させるために使用されてきた(Baulcombe、2002)。配列特異的なdsRNAは、ハエ(例えば、Drosophila melanogaster)および虫(例えば、Caenorhabditis elegans)において同族遺伝子の発現をサイレンシングする研究目的のために使用されている。後者の場合、数千の遺伝子の機能がRNAiを使用してなされるハイスループットなスクリーニングとして報告されている(Barstead、2001;Fraserら、2000;Gonczyら、2000;Maedaら、2001)。最後に、最近の研究は、RNAサイレンシングが哺乳動物細胞においてポリオウイルスおよびヒト免疫不全ウイルス(HIV)の複製を妨害するために使用され得ることを実証しており、医学における新たな道を開いている(Gitlinら、2002;Jacqueら、2002;Novinaら、2002)。
【0004】
RNAサイレンシングの実用的な利用は、この現象の近年行われた目覚しい分子的解明なしでは不可能であった。この方法に関する重要な報告のひとつは線虫Caenorhabditis elegansにインジェクションまたは給餌さえされたdsRNA分子が、宿主によりコードされる相同なmRNAの分解をもたらすという結果であった(RNAi;Fireら、1998;Montgomeryら、1998;TimmonsおよびFire、1998)。次いで、植物においてPTGSが、センスおよびアンチセンス両方に配列特異的な約25ntのRNAの蓄積と常に関連があることが発見された(HamiltonおよびBaulcombe、1999)。短いRNAが、二本鎖RNAiトリガーがdsRNA種ヌクレアーゼであるDicerによって、数ヌクレオチド長の3’突出末端を有する21〜23nt長のdsRNAへと最初に切断されることが示され、これらのRNAの役割が明らかとなった(Bernsteinら、2001;Zamoreら、2000)。次いで、しばしば小さい干渉RNA(siRNA)と称されるこれらは、相補的mRNAとのWatson−Crick塩基対合を介して、さらなるリボヌクレアーゼ複合体RISCを形成し、最終的な分解を引き起こす(Elbashirら、2001;Hammondら、2000)。植物および動物に加えて、23〜25ntのRNAが最近DictyosteliumおよびN.crassaについて記載されており、従ってこのことは、真核生物にわたるPTGS機構の保存を示唆している(Catalanottoら、2002;Martensら、2002)。
【0005】
dsRNAメディエータはRNAサイレンシングの典型として現在受容されているものの、これらがPTGSを起こす細胞中でのこれらの現れ方はほぼ未知のままである。これらは、RNAウイルスの複製中間体または逆反復配列から産生された分子内ヘアピン様転写物として生じ得る。しかしこれは、RNAサイレンシングが異所的に挿入された導入遺伝子の過剰発現によって誘発される広範な例(コサプレッション;CogoniおよびMacino、1999)を説明しない。コサプレッションおよび関連するRNAサイレンシング現象は、細胞性RNAポリメラーゼによってdsRNAトリガーへと転換される異常なssRNA(abRNA)によって誘導され得ることが提唱されている(WasseneggerおよびPelissier、1998)。しかし、abRNAの性質ならびにそれらの二重螺旋への変形の詳細は理解されていない。
【0006】
N.crassaにおいて実施された遺伝学的スクリーニングは、PTGSに必須の3つの遺伝子座:qde−1、qde−2およびqde−3(鎮圧欠損(quelling defective)から;CogoniおよびMacino、1997)を同定した。植物および動物において、PTGSの遺伝学的レパートリーはより複雑であるが、qde遺伝子のホモログをしばしば含む(HutvagnerおよびZamore、2002;Waterhouseら、2001)。これらのうち、qde−3は、C.elegansのRNAi経路のmut−7もまた含むRecQ/WRNヘリカーゼファミリーのメンバーである(CogoniおよびMacino、1999;Kettingら、1999)。qde−2の遺伝子産物は、RNA結合タンパク質のeIF2C/AGO1/RDE−1/Piwi/Zwille群に属する(CogoniおよびMacino、2000;Fagardら、2000;Tabaraら、1999)。
【0007】
【非特許文献1】Baulcombe、2002
【非特許文献2】CogoniおよびMacino、1999
【非特許文献3】Fire、1999
【非特許文献4】Fjoseら、2001
【非特許文献5】Plasterk、2002
【非特許文献6】Waterhouseら、2001
【非特許文献7】Barstead、2001
【非特許文献8】Fraserら、2000
【非特許文献9】Gonczyら、2000
【非特許文献10】Maedaら、2001
【非特許文献11】Gitlinら、2002
【非特許文献12】Jacqueら、2002
【非特許文献13】Novinaら、2002
【非特許文献14】Fireら、1998
【非特許文献15】Montgomeryら、1998
【非特許文献16】TimmonsおよびFire、1998
【非特許文献17】HamiltonおよびBaulcombe、1999
【非特許文献18】Bernsteinら、2001
【非特許文献19】Zamoreら、2000
【非特許文献20】Elbashirら、2001
【非特許文献21】Hammondら、2000
【非特許文献22】Catalanottoら、2002
【非特許文献23】Martensら、2002
【非特許文献24】WasseneggerおよびPelissier、1998
【非特許文献25】CogoniおよびMacino、1997
【非特許文献26】HutvagnerおよびZamore、2002
【非特許文献27】Kettingら、1999
【非特許文献28】CogoniおよびMacino、2000
【非特許文献29】Fagardら、2000
【非特許文献30】Tabaraら、1999
【非特許文献31】Schiebelら、1993
【非特許文献32】Schiebelら、1998
【特許文献1】米国特許第6218142号
【非特許文献33】Mourrainら、2000
【非特許文献34】Smardonら、2000
【非特許文献35】Dalmayら、2000
【非特許文献36】Sijenら、2001
【非特許文献37】Shiuら、2001
【非特許文献38】Cogoniら、1999
【非特許文献39】SambrookおよびRussell(2001)
【非特許文献40】Thompsonら、1994
【非特許文献41】Butcherら、2001
【非特許文献42】Hansenら、1997
【非特許文献43】Steitz、1998
【非特許文献44】Pochら、1989
【非特許文献45】MakeyevおよびBamford、2000
【非特許文献46】Gurevichら、1991
【非特許文献47】Makeyevら、1996
【非特許文献48】Laurilaら、2002
【非特許文献49】Vasiljevaら、2000
【非特許文献50】Gottliebら、1992
【非特許文献51】LewisおよびFleming、1995
【非特許文献52】Brenner、1974
【非特許文献53】Praitisら、2001
【非特許文献54】Waterhouseら、1998
【非特許文献55】ChicasおよびMacino、2001
【非特許文献56】Nishikura、2001
【非特許文献57】Lipardiら、2001
【非特許文献58】http://www.ncbi.nlm.nih.gov/
【非特許文献59】SaitouおよびNei、1987
【非特許文献60】Kolbら、2000
【非特許文献61】Chalfieら、1994
【非特許文献62】Yardenら、1992
【非特許文献63】Bowmanら、1988
【非特許文献64】Bell−Pedersenら、1992
【非特許文献65】HannaおよびSzostak、1994
【非特許文献66】Quigleyら、1978
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
遺伝子qde−1は、ウイルス/ウイロイドにより誘導されるRNA依存的RNAポリメラーゼ(RdRP)をコードするトマトの遺伝子に対する相同性を有する。トマトのRdRPはこれまで、生化学的に示されたRNA合成活性を有する唯一の細胞性RdRPである(Schiebelら、1993;Schiebelら、1993;Schiebelら、1998)。しかし、このタンパク質がPTGSプロセスと関連するか否かは現在未知である。さらに、かなりの努力にもかかわらず、組換え供給源から酵素的に活性なトマトRdRPを産生することはこれまで不可能であった(Schiebelら、1998)。このタンパク質を酵素アッセイに用いられる適切な形態で得るために現在使用される手順は、費用がかかり時間を消費する。ウイロイド感染したトマトの葉数百グラム〜キログラムが出発材料として必要であり、その精製プロトコルは、溶解物の透明化および硫酸アンモニウム沈殿の工程に加えて、多数のクロマトグラフィー工程を含む(Schiebelら、1993;および米国特許第6218142号を参照のこと)。
【0009】
興味深いことに、トマトRdRPの配列ホモログは多数の他の生物においても見出されており、1ゲノム当たり複数のRdRP様遺伝子が存在することが非常に頻繁にある。C.elegansにおいてこのような遺伝子が4つ知られており、Dictyosteliumにおいては3つ、Arabidopsisにおいては7つが知られている(Martensら、2002;Mourrainら、2000;Smardonら、2000)。これまで、N.crassaのqde−1、C.elegansのego−1およびrrf−1、DictyosteliumのRrpAならびにArabidopsisのSGS2/SDE1のみがRNAサイレンシングと遺伝学的に関連しており、他のRdRP遺伝子中の変異は、PTGS表現型に対してほとんど影響がないかまたは全く影響がない(CogoniおよびMacino、1999;Dalmayら、2000;Martensら、2002;Mourrainら、2000;Sijenら、2001;Smardonら、2000)。注目すべきことに、N.crassaの第二のRdRP様遺伝子であるsad−lは、未だ特徴付けられていない減数分裂サイレンシング経路において機能することが示されている(Shiuら、2001)。明らかに、単一の生物由来の異なるRdRP様タンパク質が異なる機能を果たし得、これらの機能のうちの1つがPTGSに関連している。
【0010】
いくつかの仮説的モデルが、RNAサイレンシングにおけるRdRPの役割について提唱されている(図1A)。しかし、精製された活性形態で対応するRdRP様タンパク質を入手できないため、これらのモデルの証明は不可能であった。トマトRdRPの原型がRNAサイレンシングと関連していなかったので、PTGSのこれらの成分が実際にRNA合成を触媒し得るか否かは知られていなかった。ライフサイエンス、医学および農業にとってのPTGSおよび関連の現象の重要性を考慮すると、RNAサイレンシング経路から充分量の生物学的に活性なRdRP様タンパク質を得、in vitroでそれらの酵素特性を決定することを可能にする方法が当該分野においては緊急に必要である。この活性なRdRP様タンパク質を組換え供給源から単離することは非常に有利である。なぜなら、これにより、高いタンパク質収率および知識に基づいた遺伝子操作の可能性の両方が可能となるからである。
【0011】
重要なことに、真核生物においてRNAサイレンシングを誘導するための現在の好ましい方法(RNAi)は、比較的手間がかかる(RNAiプロトコルについては、例えば、Barstead、2001;Fraserら、2000;Gonczyら、2000;Maedaら、2001を参照のこと)。C.elegansおよび多数の他の生物におけるRNAiは、目的の遺伝子をコードするDNAフラグメントを最初に提供し、このDNAフラグメントを2つの転写反応で転写し(例えば、対向するT7 RNAポリメラーゼプロモーターおよびT3 RNAポリメラーゼプロモーターを使用する)、2つの相補的RNA転写物をアニールさせてdsRNAトリガーを形成し、そして最後にこのdsRNAを生物または細胞中に送達してRNAiを誘導することによって、現在行われている。より単純な方法でそれらのコーディングDNAテンプレートからdsRNAトリガーを産生できれば、特にハイスループットRNAiプロジェクトに非常に有利である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、RNAサイレンシングに関与する組換えRdRPタンパク質およびその遺伝学的に変更された誘導体の効率的な産生を開示する。本発明者らはまた、この組換えRdRPおよび精製された可溶性形態のその誘導体を提供するための手順を初めて報告する。さらに、新たな開始様式またはプライマー依存的開始様式のいずれかを使用した、異なるテンプレートを用いたこれらのタンパク質のRNA依存的RNA重合活性を使用するための方法およびキットが開示される。初期に記載されたトマトからのRdRP調製物とは異なり、本発明の酵素は、以下の2つの別個のタイプのRNA産物を合成する:(1)広範囲の(全長またはほぼ全長の)コピーおよび(2)全テンプレート長に沿ってこのテンプレートと塩基対合した、短い7〜40nt長、主に9〜21nt長以内のRNA。後者のタイプの産物は、RdRPについて全く記載されていない。本発明は、この独自の反応様式がRNAiおよびマイクロアレイ技術を含むいくつかの下流の適用の利益のために如何に使用され得るかを説明する。
【0013】
本発明は、PTGS経路から新たに単離された組換えポリメラーゼを使用するRNA重合プロセスを開示する。このポリメラーゼおよびその誘導体は、in vitroアッセイに適切な可溶性の活性形態で提供される。このポリメラーゼまたはその誘導体を異なるテンプレートと接触させることによるRNA合成のための方法およびキットが開示される。本発明はまた、RNA重合産物の下流の適用(例えば、生きた細胞および無細胞抽出物におけるRNAサイレンシング、または研究および診断目的に適切な標識されたRNAプローブの合成を含む)を開示する。本発明の他の特徴、態様および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲から明らかとなる。
本発明の以下の本文ならびに以下の詳細な説明は、添付の図面と共に読むとよりよく理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、RNAサイレンシング経路由来のRNAポリメラーゼ(以前に単離も特徴付けもされていない酵素)を使用することによって、全テンプレート長に沿って分散したRNAテンプレートおよびDNAテンプレートの短い相補的RNAコピーを産生するための方法を提供する。本発明の利点は、RNAサイレンシング経路由来のこのポリメラーゼおよびその誘導体が可溶性で酵素活性を有する状態で提供されることである。「RNAサイレンシング」は、転写後遺伝子サイレンシング、コサプレッション、ウイルスにより誘導される遺伝子サイレンシング、RNA干渉(RNAi)などのような、真核細胞において見出されるいくつかの関連現象をいうために本明細書中で使用される一般的用語である。これら全ての現象の一般的な特徴は、RNAトリガー分子による標的RNAの配列特異的な分解にある(さらなる詳細については背景技術を参照のこと)。本発明のポリメラーゼタンパク質は真核細胞に起源するか、またはこのような細胞性ポリメラーゼのアミノ酸配列を有するか、またはこのようなポリメラーゼの誘導体である。
【0015】
本発明の目的のために、開示されたRNAポリメラーゼは、「ポリメラーゼタンパク質」、「ポリメラーゼ」、「細胞性RdRP」または単に「RdRP」、あるいはただタンパク質またはポリペプチドと種々に称される。本発明は、RNAサイレンシング経路の単離されたポリメラーゼが、適切な条件下でRNAテンプレートまたはDNAテンプレートと接触する場合にin vitroでRNA合成し得ることの、最初の直接的な証拠を提供する。
【0016】
(1.発明の目的)
本発明は、核酸産物を産生するための方法を提供し、この方法は、本発明のポリメラーゼタンパク質がこの酵素の機能に充分な条件下で核酸テンプレートと接触することを含む。
【0017】
本発明のポリメラーゼタンパク質が核酸テンプレートの短い相補的RNAコピー(これらのコピーは全テンプレート長中に分散している)および任意選択でテンプレート長の相補的RNAコピーを産生し得ることは、本発明のポリメラーゼタンパク質に特徴的なことである。言い換えれば、このポリメラーゼタンパク質は、テンプレート長のコピーに加えて、このテンプレートに相補的な非連続のRNA鎖を合成し得る。これは、RNAポリメラーゼにとって全く新しい特徴である。
【0018】
短いRNAコピーまたは短いRNA鎖とは、本明細書中で7〜40nt、主に9〜21ntの長さのコピーを意味する。短いRNAを構成する核酸産物とテンプレート長の(長い)RNAを構成する核酸産物との比率は、反応条件によって調整され得る。より具体的には、この比率はイオン濃度によって、例えば、二価金属イオン(例えば、Mn2+およびCa2+)の適切な濃度によって調整され得る。また、非連続または短いRNAの長さは、特定の化学物質(例えば、スペルミジン)によってより短いRNAへと調整され得る。
【0019】
本発明のポリメラーゼタンパク質は、一本鎖RNAテンプレートまたは一本鎖DNAテンプレートを使用してRNA合成を触媒し得、かつこのRNAテンプレートまたはDNAテンプレートは線状または環状であり得る。
【0020】
産生されたRNA鎖は通常テンプレートにアニールされるが、これらはまたテンプレートから変性され得る。
本発明のポリメラーゼは真核細胞に起源し得る。具体的には、本発明のポリメラーゼは真菌、緑色植物門、後生動物の界、または動菌類の群から選択される生物に起源し得る。
【0021】
より具体的には、本発明のポリペプチドは、Neurospora属、Arabidopsis属、Caenorhabditis属およびDictyostelium属のサブセット、好ましくはNeurospora crassa、Arabidopsis thaliana、Caenorhabditis elegansおよびDictyostelium discoideumから選択される生物に起源し得る。特に、このポリメラーゼはNeurospora crassaのQDE−1タンパク質またはQDE−1の変更された誘導体もしくは遺伝学的に改変された誘導体である。
【0022】
本発明のRNAポリメラーゼは、核酸テンプレートの短い相補的RNAコピー(これらのコピーは全テンプレート長中に分散している)および任意選択でテンプレート長の相補的RNAコピーを産生し得、以下の群から選択される核酸配列によってコードされる:
(a)任意選択のタグ配列に加えて配列番号1(QDE−1タンパク質に対応する)または配列番号3(QDE−1の短縮バージョンであるΔNに対応する)の配列を含む核酸配列;
(b)任意選択のタグ配列に加えて配列番号2(QDE−1タンパク質に対応する)または配列番号4(ΔNに対応する)の配列を含むポリペプチドをコードする核酸配列;
(c)遺伝子コードの縮重に起因して(a)または(b)の核酸配列とは異なる核酸配列;
(d)ストリンジェントな条件下で(a)、(b)および/または(c)の核酸配列にハイブリダイズする核酸配列;および
(e)配列番号4のアミノ酸709〜1402を含むポリペプチドまたは配列番号2のアミノ酸2〜1402を有する配列までの、それよりも長い任意の配列をコードする核酸配列;および
(f)配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも50%の同一性を示すアミノ酸配列をコードする核酸配列。
任意選択のタグ配列は、配列番号14(核酸配列)および配列番号15(アミノ酸配列)として配列表中に示される。
【0023】
本発明はまた、改善された可溶性を有してより高い収率の活性ポリメラーゼを生じるRNAポリメラーゼ形態を提供する。より具体的には、本発明は、充分なRNAポリメラーゼ活性を有し、増強された可溶性を有して、配列番号2のアミノ酸配列または配列番号1を含む核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドの場合よりも少なくとも3倍高い収率の活性ポリメラーゼを生じ、かつ以下の群から選択される核酸配列によってコードされる、単離されたポリペプチドを提供する:
(a)配列番号3の核酸配列(ΔNをコードする)を含む核酸配列;
(b)配列番号4のアミノ酸配列(ΔNのアミノ酸配列を有する)を含むポリペプチドをコードする核酸配列;
(c)遺伝子コードの縮重に起因して(a)または(b)の核酸配列とは異なる核酸配列;
(d)ストリンジェントな条件下で(a)、(b)および/または(c)の核酸配列にハイブリダイズする核酸配列;および
(e)配列番号4のアミノ酸709〜1402を含むポリペプチド、または配列番号2のアミノ酸2〜1402を有する配列までの、配列番号4のアミノ酸709〜1402を含むポリペプチドよりも長い任意の配列をコードする核酸配列;および
(f)配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも50%の同一性を示すアミノ酸配列をコードする核酸配列。
【0024】
充分なRNAポリメラーゼ活性とは、本明細書中で、上記のような核酸テンプレートの短いRNAコピーおよび長いRNAコピーを産生する、ポリメラーゼの測定可能な活性を意味する。この活性は、このポリメラーゼタンパク質がこの酵素の機能に充分な条件下で核酸テンプレートと接触する場合に測定可能であると規定され、この核酸産物は、エチジウムブロマイド(EtBr)染色によって検出され得る。
【0025】
本発明のRNAポリメラーゼの短縮形態をコードする核酸配列によって得られる収率は、全長配列によって得られる収率と比較してより高い。なぜなら、この産物は可溶性かつ活性な形態であるからである。言い換えれば、RNAポリメラーゼの短縮形態をコードする核酸配列によって得られた活性タンパク質の測定された量は、全長配列によって得られた量よりも高い。全長配列は主に凝集形態でタンパク質を産生し、従って可溶性タンパク質の測定された量はより低い。好ましくは、RNAポリメラーゼの短縮形態によって得られた可溶性タンパク質の収率は、RNAポリメラーゼタンパク質の全長配列によって得られた収率よりも3倍高く、より好ましくは5倍高く、そして最も好ましくは10倍高い。
【0026】
本発明のRNAポリメラーゼの最も好ましい短縮形態は、配列番号2のアミノ酸377〜1402を含むΔNである。しかし、本発明のRNAポリメラーゼの増強された収率は、ΔNよりも長いアミノ酸配列(すなわち、1402アミノ酸を有する全長配列よりも短いが、配列番号2のN末端部分由来のアミノ酸を含む配列)をコードする核酸配列によっても得られ得る。短縮形態はまた、ΔNよりも短いもの(すなわち、アミノ酸709〜アミノ酸1402よりも長いアミノ酸配列をコードする核酸配列)であり得る。Cogoniら、1999は、全長QDE−1およびアミノ酸710からアミノ酸1280まで伸びるQDE−1の570アミノ酸のフラグメントをコードするアミノ酸配列をコードするcDNAを開示している。この短縮配列は本発明者らの実験において活性かつ可溶性のRNAポリメラーゼを産生せず、従って、これは、本発明において使用され得るポリペプチドではない。QDE−1の全長アミノ酸配列は本発明の方法において使用され得るが、本発明のRNAポリメラーゼの好ましい形態は本発明の可溶性のポリペプチドまたはタンパク質である。
【0027】
本発明はまた、遺伝子コードの縮重に起因する、配列番号1または配列番号3あるいは配列番号2または配列番号4をコードする配列とは異なる核酸配列に関する。本発明はさらに、例えばSambrookおよびRussell(2001)に記載されるような従来のハイブリダイゼーション条件下、好ましくはストリンジェントな条件下で、配列番号1もしくは配列番号3または配列番号2もしくは配列番号4をコードする配列あるいは分解された配列にハイブリダイズする核酸配列に関する。高いストリンジェンシーのハイブリダイゼーションは、6×SSC、0.5% SDS、5×デンハルト溶液および100μgの非特異的担体DNAの溶液中で、約65℃から70℃の間であり得る。好ましいプローブは配列番号3であり、これはΔNをコードする。約0.2×〜0.1×SSC未満のイオン強度で当量を有する溶液中で洗浄することによって、過剰なプローブが除去される。典型的な高いストリンジェンシーの洗浄は、55℃で30分間2回および60℃で15分間3回である。
【0028】
本発明の核酸配列にハイブリダイズするこれらの核酸配列は、このような核酸配列を保有する任意の生物に原則的に由来し得る。好ましくは、これらの核酸配列は、本明細書中で前記したように真核生物由来である。本発明の核酸配列にハイブリダイズする核酸配列は、例えば、種々の生物のゲノムライブラリーから単離され得る。
【0029】
このような核酸配列は、本発明の核酸配列またはこれらの配列のフラグメントあるいはこれらの分子の相補配列を使用することによって、例えば、標準的な技術(SambrookおよびRussell、2001を参照のこと)に従うハイブリダイゼーションによって、同定および単離され得る。
【0030】
ハイブリダイゼーションプローブとして、配列番号1と同じヌクレオチド配列またはこの配列のフラグメントを正確にまたは実質的に有する核酸分子を使用し得る。好ましくは、配列番号3のヌクレオチド配列が使用される。ハイブリダイゼーションプローブとして使用されるフラグメントはまた、その配列は本発明の核酸配列の配列と実質的に同一である、従来の合成技術によって得られた合成フラグメントであり得る。一旦本発明の核酸配列にハイブリダイズする遺伝子が同定および単離されると、その配列を決定してその配列によりコードされるタンパク質の特性を分析することが必要である。
【0031】
「ハイブリダイズする核酸配列」という用語には、配列番号1または配列番号3のフラグメント、誘導体および対立遺伝子改変体であって、同一または実質的に類似のタンパク質あるいはその生物学的に活性なフラグメントをコードするものが含まれる。フラグメントは、記載されたタンパク質(または実質的に類似のタンパク質)あるいはその生物学的に活性なフラグメントをコードするのに充分な長さの核酸配列の部分である。これに関して本文の「誘導体」という用語は、これらの分子のヌクレオチド配列が1つまたは複数の位置で上記核酸分子の配列とは異なり、かつこの配列に高度に相同であることを意味する。
【0032】
「%同一性」とは本明細書中で、対応する位置での同一のヌクレオチドまたはアミノ酸の最大量を与えるように2つのアミノ酸配列が整列される場合に、対応する位置に存在する同一なアミノ酸の百分率を意味する。本発明は、そのアミノ酸配列が配列番号2の特定のアミノ酸配列に対してアミノ酸レベルで少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、なおより好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の同一性を有するタンパク質に関する。同一性%は以下の式によって計算され得る:
(同一な残基の数)×100%/(長い方の配列である配列番号2の長さ=1402)=同一性の百分率。
【0033】
タンパク質操作は、改善された特性を保有する改変されたポリメラーゼを構築するために使用され得る。このような改変には、例えば、ポリメラーゼまたはタンパク質を、テンプレート特異性が低いかまたはより処理のしやすい(もしくは処理のしにくい)ものにするため、あるいはプライマー伸長、配列決定、核酸の増幅などのために酵素を最適化するために、QDE−1ポリメラーゼもしくはそのフラグメントまたは実質的に類似の特性を有するタンパク質のアミノ酸配列に変異導入することが含まれ得る。
【0034】
当該分野の実施形態において、いくつかの改変バージョンのQDE−1を生成して特徴付けた(図2A)。改変タンパク質の1つはΔNと称され、これはQDE−1のN末端部分を欠失させたものである。このタンパク質は、全長QDE−1の酵素活性を保持し、そしてまた以下の2つのさらなる長所を有する:(1)精製されたΔNの収率はQDE−1よりも高い、および(2)ΔNは+4℃で保存した場合にQDE−1よりも安定である(結果省略)。なお別の改変タンパク質として、そのAsp1011残基(全長QDE−1について番号付けした)をAlaに転換する点変異を有するΔNを得た。このタンパク質(ΔNDA)は、ポリメラーゼとして完全に不活性であった。Asp1011は配列保存(図1B)に基づくとヌクレオチジル−トランスフェラーゼ反応の触媒に関与することが示唆され、この為に不活性であった可能性が高い。しかし、この変異はΔNの全体的な折り畳みに影響を与えない。これは、ネイティブゲル電気泳動から明らかである(図3CおよびDを参照のこと;一部結果省略)。
【0035】
上記のQDE−1誘導体に加えて、2つの自然発生的なQDE−1変異体を精製形態で得て特徴付けした。これらは、1アミノ酸変化(H1161Y)または4アミノ酸変化(M131T、D893G、A1000T、F1124L)のいずれかを含む全長QDE−1タンパク質であった。興味深いことに、両方の変異体が検出可能なRNAポリメラーゼ活性を保持し、全長RNA産物および短いRNA産物の両方を産生できた。
【0036】
本発明はまた、N.crassa以外の生物由来の、RNAサイレンシング経路の精製されたRdRPタンパク質に関する。図1Bは、遺伝子データに従って、PRGSに関与するいくつかのRdRP様タンパク質を列挙している。本明細書中でポリメラーゼ活性を保有することが示されているQDE−1に対するそれらの配列類似性を考慮すると、これらの他のタンパク質の少なくともいくつかもまた、精製形態で提供された後にRNA合成を触媒し得ることが予測される。
【0037】
本発明はまた、本発明のポリペプチドをコードする核酸配列、ならびに遺伝子発現に必要な調節配列と任意選択で連結されたこの核酸配列を含むベクター、そしてこのベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0038】
本発明はさらに、ポリメラーゼタンパク質を産生するための方法を提供し、この方法はこのタンパク質の発現に適切な条件下で宿主細胞を培養する工程を含む。このタンパク質は、宿主細胞または培養培地から回収され得、任意選択で精製され得る。
【0039】
本発明は、in vitroでRNAを産生するための方法を提供し、この方法は、
(a)ssRNAテンプレートまたはssDNAテンプレートを提供する工程;
(b)このssRNAテンプレートを、RNA合成に充分な条件下で本発明のタンパク質またはポリペプチドと接触させる工程、
を含む。
【0040】
この反応混合物は、引き続く反応においてそのまま使用され得るか、または新たに賛成されたRNA種がこの反応混合物から回収され得る。
上記の方法において、工程(a)および(b)は、同じ反応容器中で同時または連続的に実施され得る。
【0041】
一本鎖RNAがテンプレートとして使用される場合、このssRNAテンプレートは、DNA依存的RNAポリメラーゼを用いてDNAテンプレートを転写することによって提供される。適切なDNA依存的RNAポリメラーゼの例は、好ましくは、T7バクテリオファージ、T3バクテリオファージおよびSP6バクテリオファージの群から選択されるバクテリオファージ由来である。
【0042】
新たに産生されたRNA鎖は、テンプレートとアニールされてdsRNAエレメントを形成するか、あるいはテンプレートから変性される。
この方法において、RNA合成はプライマーなしで開始され得るが、RNA合成は、RNAテンプレートまたはDNAテンプレートと相補的な核酸プライマーの3’末端からも開始され得る。
【0043】
RNA合成のための反応混合物は、放射性同位体で任意選択で標識されているかまたは化学的に改変された少なくとも1種のヌクレオシド三リン酸、pH緩衝液、酢酸アンモニウム、PEG、Mg2+イオン、Mn2+イオンおよび/または非イオン性界面活性剤を含む。この方法は、放射能によりまたは化学的に標識されたRNAプローブを産生するために特に使用され得る。この方法はまた、新たに産生された標識されたRNAを反応混合物の成分から精製する工程を含み得る。精製工程の後、この標識されたRNA種は、サザンブロット分析またはノザンブロット分析のためのプローブとして使用され得る。この標識されたRNAはまた、蛍光in situハイブリダイゼーション分析のためのプローブとしてか、またはマイクロアレイ分析のためのプローブとして使用され得る。
【0044】
本発明のポリペプチドまたはタンパク質は、種々の応用のため(例えば、核酸構造を研究するため、核酸−タンパク質相互作用を研究するため、およびin vivoまたはin vitroでRNA干渉を誘導するためのRNAトリガー分子を産生するため)に使用され得る。従って、本発明はまた、核酸の二次構造、好ましくはRNAの二次構造を研究するための方法を提供する。この方法は、
(a)核酸標的分子、好ましくはRNA標的分子を提供する工程;
(b)放射能によりまたは化学的に標識されたヌクレオチドをさらに含む混合物において、この標的分子をRNA合成に充分な条件下で本発明のタンパク質またはポリペプチドと接触させて、その結果この標的RNAの一本鎖エレメントが本発明のポリメラーゼによってコピーされる工程;
(c)新たに産生された標識された核酸種を反応混合物から回収し、任意選択で精製する工程;
(d)この標的分子の核酸フラグメントを含むマイクロアレイチップのためのプローブとして標識された核酸種を使用する工程;
(e)このマイクロアレイ分析からのデータを解釈して、標的分子のどの部分が一本鎖であるかを推定する工程;および任意選択で
(f)標的分子の二次構造または三次構造についてのモデルを構築する工程、を含む。
さらに、本発明は、核酸−タンパク質相互作用、好ましくはRNA−タンパク質相互作用を研究するための方法を提供する。この方法は、
(a)核酸標的および核酸結合タンパク質、好ましくはRNA標的およびRNA結合タンパク質を提供する工程;
(b)標的−タンパク質相互作用に充分な条件下で、標的と実験混合物中のタンパク質の溶液とを接触させ、かつ別個の容器中でこの標的をこのタンパク質を欠く対照溶液と接触させる工程;
(c)RNA合成に充分な条件下で、本発明のタンパク質またはポリペプチドと、実験混合物および対照混合物を接触させる工程;
(d)新たに産生された標識された核酸種を両方の反応混合物から回収し、任意選択で精製する工程;
(e)この標的の核酸フラグメントを含む2つの同一なマイクロアレイチップのためのプローブとして2セットの標識された核酸種を使用する工程;
(f)2つのマイクロアレイ分析からのデータを解釈して、標的分子のどの部分がRNA合成のためにアクセス可能であるかを推定する工程;
(g)2つのデータセットを比較して、実験混合物中の標的と対照混合物中の標的との間の差異を決定する工程;および任意選択で
(h)2つのデータセット間の差異を、核酸−タンパク質相互作用についてのモデルとして解釈する工程、を含む。
さらに、本発明は、in vivoまたはin vitroでRNA干渉を誘導するためのRNAトリガー分子を産生するための方法を提供する。この方法は、
(a)RNAテンプレートまたはDNAテンプレートを提供する工程;
(b)核酸テンプレート、本発明のタンパク質、ヌクレオシド三リン酸および任意選択でpH緩衝液、酢酸アンモニウム、PEG、Mg2+イオン、Mn2+イオンおよび/または非イオン性界面活性剤を含む混合物中で、RNA合成に充分な条件下で、このRNAテンプレートまたはDNAテンプレートを本発明のタンパク質またはポリペプチドと接触させる工程;および
(c)RNA合成に充分な温度でこの反応混合物をインキュベートする工程、を含む。
この方法において、RNAテンプレートまたはDNAテンプレートは細胞またはウイルス起源であり得る。このRNAテンプレートは、好ましくはT7バクテリオファージ、T3バクテリオファージおよびSP6バクテリオファージの群から選択されるバクテリオファージ由来のDNA依存的RNAポリメラーゼを用いてDNAテンプレートを転写することによって得られ得る。
この方法において、工程(a)および(b)は、同じ反応容器中で同時または連続的に実施され得る。
【0045】
本発明はまた、本発明のタンパク質またはポリペプチドを含むキットを提供する。このキットは、検出可能なレベルのRNA合成に必要な添加剤をさらに含み得る。このキットは、例えば、RNA合成に充分な濃度でヌクレオシド三リン酸(少なくとも1種のヌクレオシド三リン酸が、放射性同位体で標識されているかまたは化学的に改変されている)および/または本発明のタンパク質もしくはポリペプチドによるRNA合成のためのテンプレートとして働く特徴付けられた能力を有する標準的な核酸調製物を含み得る。
【0046】
本発明の主な利点は、この可溶性ポリメラーゼが組換え供給源から得られることである。なぜなら、これは高いタンパク質収率を確実にし、かつまた分子アプローチを使用してポリメラーゼの特性を変更することを可能にするからである。本発明の好ましいポリメラーゼである真菌Neurospora crassaに起源するQDE−1タンパク質およびその遺伝学的に変更された形態は、多数のRNAテンプレートをin vitroで使用して、2つのタイプの娘RNA鎖(短い(7〜40nt、好ましくは9〜21nt)娘RNA鎖および長い(テンプレート長までの)娘RNA鎖)を生成し得る。このポリメラーゼタンパク質はRNA合成の開始のためにプライマーを必要としないが、プライマーからRNA合成を開始することもできる。
【0047】
QDE−1、ΔNおよびそれらの誘導体のいくつかによるRNA合成の効率は充分高く、従ってこのことは、RNA産物が多数の実用上の適用のため(例えば、ハイブリダイゼーションに基づく技術のためのRNAプローブを産生するため、または生きた生物においてRNAサイレンシングを誘導するためのRNAトリガーを産生するため)に有利に使用され得ることを示唆する。
【0048】
(2.本発明のポリメラーゼタンパク質の調製)
本発明は、本発明のタンパク質、好ましくはN.crassaのQDE−1タンパク質またはQDE−1の遺伝学的誘導体の発現および精製の方法を提供する。この方法は、
(a)本発明のポリメラーゼタンパク質をコードする配列を有する核酸を含む細胞を培養して、この核酸からタンパク質を発現させる工程;
(b)宿主または培養培地からこのタンパク質を回収する工程;および
(c)少なくとも1回のクロマトグラフィー工程を使用してこのタンパク質を精製する工程、を含む。
【0049】
本発明の核酸配列は、発現ベクター中の調節エレメントに連結され得、このベクターは、本発明のタンパク質を産生するために選択された宿主細胞中に導入される。当該分野のポリメラーゼの発現は、任意の適切な宿主細胞(例えば、動物、植物、真菌または細菌の細胞)において達成され得る。好ましい本発明の実施形態においては、発現宿主はパン酵母のSaccharomyces cerevisiaeを用いた。
【0050】
宿主細胞におけるその合成の際に、このタンパク質は、以下を含む工程によって好ましくは単離および精製される:
(a)宿主細胞を緩衝液中で破壊して、細胞溶解物を得る工程;
(b)遠心分離によってこの溶解物を透明化する工程;
(c)少なくとも1回のクロマトグラフィー工程(好ましくは固定化金属−アフィニティクロマトグラフィー)を使用してこのタンパク質を精製して、ヌクレアーゼ活性およびプロテアーゼ活性を本質的に有さない画分を得る工程。
【0051】
「ヌクレアーゼおよびプロテアーゼを本質的に有さない」とは本明細書中で、精製されたタンパク質調製物が、検出可能な量のヌクレアーゼおよび/またはプロテアーゼを含まないことを意味する。
特定の実施形態として、QDE−1ポリメラーゼおよびその酵素的に活性なN末端短縮バージョン(ΔN)の発現および精製は、実施例1に記載される。
【0052】
(3.反応条件)
細胞性RdRPの発現および精製のための方法に加えて、本発明は、in vitroのRNA合成のための方法およびキットにも関する。
その一般的な形態において、RNA合成のための方法は以下の工程を含む:
(a)RNAテンプレートまたはDNAテンプレートを提供する工程;
(b)このテンプレートを、RNA合成に充分な条件下で本発明のタンパク質と接触させる工程;および任意選択で
(c)新たに産生された核酸種をこの反応混合物から回収する工程。
本発明の特定の実施形態によれば、RNA合成のための混合物は実施例2に列挙される成分を含む。この反応混合物は、30℃で1時間インキュベートされる。幾分変更された条件もまた、検出可能なレベルのRNA合成をなし得る。具体的には、改変された条件は、以下の群から選択される1つまたはいくつかの変化を意味し得る:
(1)異なる最終濃度の反応混合物中の本発明のタンパク質(好ましくは0.1μg/ml〜200μg/ml);
(2)異なる濃度のヌクレオシド三リン酸(好ましくは0.1mM〜4mMの各NTP);
(3)異なる濃度のMnCl(好ましくは0mM〜4mM);
(4)異なるインキュベーション温度(好ましくは15℃〜42℃)。
【0053】
(3.1.RNAテンプレート)
RNA合成のための現在好ましい方法は、以下の工程を含む:
(a)好ましくは40μg/ml〜400μg/mlの最終濃度で一本鎖RNAテンプレートを提供する工程;
(b)pH緩衝液(好ましくはHEPES(pH7.8))、Mg2+イオン(好ましくは5mM〜10mM)、ヌクレオシド三リン酸(好ましくは0.2mM〜1mMの各NTP)、および任意選択でMn2+イオン(好ましくは2mMまで)および非イオン性界面活性剤(好ましくは0.1%〜0.2%のTriton X−100)をさらに含む混合物中で、RNA合成に充分な条件下でこのRNAテンプレートを本発明のタンパク質(好ましくは1μg/ml〜100μg/ml)と接触させる工程;
(c)この反応混合物を許容温度(好ましくは20℃〜37℃)でインキュベートする工程;および任意選択で
(d)新たに産生された核酸種をこの反応混合物から回収する工程。
【0054】
本発明のポリメラーゼ、最も好ましくはΔNおよびQDE−1の他の誘導体が、広範なssRNAテンプレートを受容して投入RNAの全てまたはかなりの部分を二本鎖形態に転換することは、非常に有利である(詳細については実施例2および関連の図を参照のこと)。以下の2つの別個のタイプの反応産物がテンプレート配列に関わらず生成されることもまた有利である:(1)テンプレート長に近いかまたはテンプレート長と等しい長いRNAコピーおよび(2)テンプレート長に沿って分散した7〜40nt、主に9〜21ヌクレオチド長の短いRNAオリゴヌクレオチド(本発明の目的のためにsRNAと称される)(詳細については実施例2および関連の図を参照のこと)。現在好ましい条件下で、両方のタイプのRNA産物は、そのコーディングテンプレートに結合してdsRNAエレメントを形成したままである。二重重合機構に基づいて、本発明者らは転写後遺伝子サイレンシングにおける本発明のRdRPの役割についての新規のモデルを提唱する(図11)。
【0055】
重要なことに、適切な条件を選択することにより、新たに産生された長いRNAコピーと短いRNAコピーとの間の比率を調整することが可能である。特定の例において、二価金属イオン(例えば、Mn2+およびCa2+)の濃度は、2つの異なるタイプの反応産物の相対的な量を変化させ得る(図3E)。さらに、反応条件はまた、所定のRNAテンプレートに対して産生された短いRNAの長さ分布をも調整し得る。図8は、現在好ましい実施形態において、ポリアミンであるスペルミジンの添加が短いRNAの分布をより短い種のほうにシフトさせることを実証している。
【0056】
本発明の特定の実施形態において、QDE−1により触媒されるRNA合成のためのssRNAテンプレートは、DNA依存的RNAポリメラーゼを用いてDNAテンプレートを転写することによって提供され得る。好ましくは、このDNA依存的RNAポリメラーゼはバクテリオファージ由来である。このバクテリオファージがT7バクテリオファージ、T3バクテリオファージおよびSP6バクテリオファージからなる群から選択されることが最も有利である。当該分野のいくつかの実施形態において、DNA依存的RNAポリメラーゼを用いたDNAテンプレートの転写およびQDE−1により触媒される新たに産生された線状ssRNAの複製は、同じ容器中で生じ得る。後者のアプローチの可能性を実証するために、特別な実験を実施した(図14を参照のこと)。T7 RNAポリメラーゼのためのプロモーターを含む線状dsRNA(すなわち、XhoIで切断したpTZluc(−ストップ))を、T7 RNAポリメラーゼおよびN末端短縮バージョンのQDE−1ポリメラーゼ(ΔN)と共に35℃でインキュベートした。両方のポリメラーゼをこの反応混合物に添加した場合、その反応産物はssRNAおよび異なる形態のdsRNAの混合物を本質的に含み、その一方でT7 RNAポリメラーゼのみが存在する場合にはssRNAのみが形成された。
【0057】
好ましい実施形態において、インタクトなdsRNAテンプレート(例えば、dsRNAウイルスのゲノムセグメント)は、検出可能なRNA合成を指向するために本発明のポリメラーゼによって使用され得ない(図10A)。しかし、例えば、1分間の煮沸によって反応前に変性されるdsRNAは、テンプレートとして有効に受容され得る(結果省略)。
【0058】
本発明の特定の実施形態において、単離されたQDE−1ポリメラーゼおよびΔNポリメラーゼは、RNAテンプレートにアニールした相補的オリゴヌクレオチドの3’末端からRNA合成を開始し得る(図10B、10C、または結果省略。このプライムされたRNA合成は、特定の実用上の応用(例えば、プライマー伸長方法)のために将来目的となり得る。
【0059】
(3.2.DNAテンプレート)
当該分野のいくつかのさらなる実施形態によれば、1セットの一本鎖DNA(M13ファージ線状ssDNAまたは線状化して熱変性したプラスミドDNA)は、一本鎖RNAについての上記と類似の条件下で、QDE−1およびΔNを用いて複製可能であることが示された(図13および結果省略)。この反応は、テンプレートDNAおよび新たに産生されたRNAレプリカからなる二重鎖を生じる。従って、本発明はin vitroでRNAを産生するための方法に関し、この方法は、
(a)有効に一本鎖の形態でDNAテンプレートを提供する工程;
(b)このDNAテンプレートをRNA合成に充分な条件下で本発明のタンパク質と接触させる工程;および任意選択で
(c)新たに産生されたDNA−RNAハイブリッド産物をこの反応混合物から回収する工程、を含む。
DNAによりプログラムされた反応は、RNA形態へのDNA配列の転写を必要とする方法のために潜在的に有用であり得る。
【0060】
(4.本発明のポリメラーゼの実用上の適用)
上記の知見に基づいて、本発明は、異なる核酸テンプレートと接触させた本発明のポリメラーゼを使用してRNAを産生するための方法を提供する。これらの方法のいくつかは、いくつかの下流の適用(例えば、干渉するRNAおよびプローブとして使用され得る放射能によりまたは化学的に標識されたRNAを産生すること)のために特に適切である。
【0061】
(4.1.RNA干渉)
本発明は、動物および原生動物においてRNA干渉(RNAi)ならびに他の真核生物においてRNAサイレンシングとして公知の関連の現象を誘導し得るRNAを産生するための方法に関する。この方法は以下の工程を含む:
(a)一本鎖RNAテンプレートを提供する工程;
(b)この一本鎖核酸テンプレートの少なくとも一部を、二本鎖エレメントを含む産物へと転換するために、RNA合成に充分な条件下でこの一本鎖RNAを本発明のタンパク質と接触させる工程;
(c)充分に精製された形態でこの産物をこの反応混合物から回収する工程;
(d)適切な真核生物系を使用して、in vivoまたはin vitroでこのRNA産物のRNAi活性をアッセイする工程。
【0062】
特定の実施形態において、この適切な真核生物系は生きた線虫Caenorhabditis elegansである。RNAiを誘導するために、GFP(緑色蛍光タンパク質)のmRNAを、QDE−1またはΔNを使用してdsRNA産物に最初に転換した。GFPを発現する組換えC.elegansを、この産物を含む溶液中に浸し、その遺伝子サイレンシング効果を、F1子孫において下限を下回る蛍光を示す虫の百分率としてスコアリングした(図15)。RNAサイレンシング機構を支持する他の生物もまた、(背景技術に記載されるように)他の実施形態における潜在的な標的であり得、dsRNA産物を生物または細胞中に指向させる方法はまた、浸す、注射する、バリスティック、リポフェクションまたは他の送達方法を使用することも可能である。
【0063】
RNAiを誘導する先行技術に記載された方法は通常、RNAi実験のために使用され得るdsRNA分子を形成するように、サイレンシングすべき遺伝子に対して相同なセンスRNAおよびアンチセンスRNAの合成、これら2つの相補的RNAの引き続く精製ならびにそれらのアニーリングに依存する。図14に示されるように、本発明は、dsRNAトリガーがDNA依存的RNAポリメラーゼを用いた目的の遺伝子の転写と同時に生成され得るという利点を提供する。この連結された系は、センス−アンチセンスアニーリングストラテジーよりも速くて作業が少なく、かつ数千の異なる遺伝子がサイレンシングされかつその対応する現象が決定される必要がある場合、ハイスループットRNAi方法に特に歓迎される(更なる詳細については、Barstead、2001;Fraserら、2000;Gonczyら、2000;Maedaら、2001を参照のこと)。
【0064】
本発明の特定の実施形態において、RNAiを誘導するためのdsRNAトリガー分子は、以下の工程を含む方法に従って、一本鎖DNAテンプレートを有効に使用して本発明のポリメラーゼによって産生され得る:
(a)一本鎖形態でDNAテンプレートを提供する工程;
(b)このDNAテンプレートをRNA合成に充分な条件下で本発明のタンパク質と接触させる工程;
(c)そのコーディングDNAテンプレートから、新たに産生されたRNA産物を解離させる工程;
(d)同じ反応混合物または新たな反応混合物中で、dsRNA産物が形成されるように、RNA合成に充分な条件下でこの解離したRNA産物を本発明のタンパク質と接触させる工程;
(e)充分に精製された形態でこのdsRNA産物をこの反応混合物から回収する工程;
(f)適切な真核生物系を使用して、このRNA産物のRNAi活性をin vivoまたはin vitroでアッセイする工程。
【0065】
(4.2.放射能により標識されていないRNAの生成)
未標識または放射能により標識されたヌクレオシド三リン酸に加えて、本発明のポリメラーゼは、化学的に改変されたヌクレオチドをRNA産物中に取り込み得る。このことにより、非放射能方法により(例えば、蛍光または化学ルミネセンスの検出に基づくもの)を使用してRNA合成をアッセイすることが可能となる。
【0066】
好ましい実施形態においては、ssRNAテンプレートを含む標準的なRNA重合混合物に、クマリン−5−CTPまたはビオチン−11−CTPを補充した。反応を30℃で1時間インキュベートした。次いでこの反応混合物をゲル濾過スピンカラムを通過させて、反応していないヌクレオチドアナログおよび他の低分子量混入物からRNA産物を精製した。次いで、新たに産生されたRNAへのヌクレオチドアナログの取り込みを、分光蛍光計(クマリン−5−CTPの場合)またはドットブロットアッセイ(ビオチン−11−CTPの場合)を使用して、フロースルー画分を測定した。両方の場合において、改変されたヌクレオチドの検出可能な部分は、RNA産物中に取り込まれた(図12)。
【0067】
(4.3.プローブとしての標識されたRNAの使用)
精製された細胞性RdRPによって生成された標識されたRNA産物が、放射能検出または非放射能検出に基づいてさらなる応用のためのRNAプローブとして使用されることもまた、本発明の範囲に含まれる。このような適用の例には、マイクロアレイ技術、蛍光in situハイブリダイゼーションならびにノザンブロッティングおよびサザンブロッティングが含まれる。本発明のRdRPが、7〜40nt、主に9〜21ヌクレオチドの好ましい長さを有する短い相補的sRNAのかなりの量を産生し得ることは、この応用について、非常に大きな利点である。
【0068】
本発明の好ましい実施形態において、反応産物の短いRNAの画分は、変性ゲル電気泳動を使用して、テンプレートおよび長いRNA産物から精製される(図9A)。例えば、変性条件下でのゲル濾過またはイオン交換クロマトグラフィーを使用した精製のような、他の精製方法もまた可能である。図9Cで報告されるように、短いRNAの回収された画分は、引き続き行われるハイブリダイゼーション手順に適切である。本発明のポリメラーゼが全テンプレート長に沿って分散した短いRNAを生成することは、(図9から結論付けられるように)このハイブリダイゼーション手順にとって明らかに利益になる。
【0069】
(4.4.核酸構造および核酸−タンパク質相互作用を研究するための特殊化された適用)
図8中に示される実験から明らかなように、短いRNAは、有効に一本鎖であって安定な二次構造にも三次構造にも関与しないテンプレートRNAのエレメントに対して産生される。本発明のポリメラーゼのこの特性は、本質的に任意の所定のssRNA標的(またはssDNA標的)の二次構造および/または三次構造への洞察を得るための新規な技術を示唆する。現在好ましいバージョンにおいて、この方法は以下の工程を含む:
(a)提供されたssRNA標的が、標識されたsRNAの合成に充分な条件下で、本発明のポリメラーゼと共に最初にインキュベートされる工程;
(b)標識された短いRNAがこの反応混合物から回収されて、例えば、ゲル電気泳動および/またはクロマトグラフィーを使用して、テンプレートおよび長いRNA産物から任意選択で精製される工程;
(c)短いRNA画分が、RNA標的の核酸フラグメントを含むマイクロアレイチップ、好ましくは合成オリゴヌクレオチドのアレイを探索するために使用される工程;
(d)次いで、マイクロアレイ分析由来のデータが解釈されて、標的分子の部分が有効に一本鎖であることが推定される工程;および任意選択で
(e)標的RNA分子の二次構造または三次構造についてのモデルが構築される工程。
RNA−タンパク質相互作用を研究するために上記のアルゴリズムを適合させることも可能である。RNA標的へのタンパク質の結合は、結合部位のアクセス可能性を減少させなければならず、かつ同様にRNAの二次構造および三次構造を変更させ得る。従って、RNA−タンパク質相互作用についての情報は、以下の2つのデータセットを比較することから収集され得る:1つのデータセットは個々のRNA標的についてのもの、他の1つのデータセットはRNA標的とRNA結合タンパク質との混合物についてのものである。その現在好ましい形態において、RNA−タンパク質相互作用を研究するための方法は以下の通りである:
(a)RNA分子およびRNA結合タンパク質を提供する工程;
(b)実験混合物を形成するように、RNA−タンパク質相互作用に充分な条件下でこのRNAおよびRNA結合タンパク質の溶液を接触させ、かつ別個の容器中で、対照混合物を形成するように、このRNAをこのRNA結合タンパク質を欠く対照溶液と接触させる工程;
(c)この実験混合物および対照混合物を、RNA合成に充分な条件下で本発明のタンパク質と接触させる工程;
(d)新たに産生された標識された核酸種を両方の反応混合物から回収し、任意選択で精製する工程;
(e)このRNA標的の核酸フラグメントを含む2つの同一なマイクロアレイチップのためのプローブとして2セットの標識された核酸種を使用する工程;
(f)2つのマイクロアレイ分析からのデータを解釈して、標的分子のどの部分が短いRNAの合成のためにアクセス可能であるかを推定する工程;
(g)2つのデータセットを比較して、実験混合物中のRNAと対照混合物中のRNAとの間の差異を決定する工程;および任意選択で
(h)2つのデータセット間の差異を、RNA−タンパク質相互作用についてのモデルとして解釈する工程。
【0070】
RNA構造およびRNA−タンパク質相互作用を研究するための新規の方法は、非常に長いRNA標的(例えば、1kbより長いssRNA)に適用され得る。これは、RNA分子の化学的探索または酵素的探索を含む以前に記載された技術を超える明らかな利点であり、数百ヌクレオチドに限定される小さいRNAフラグメントについての情報を生じる。
【0071】
現在好ましい実施形態においては、上記の両方法はssRNA標的およびRNA結合タンパク質を用いて実施されるが、他の実施形態において、ssDNAの空間的構造およびDNA−タンパク質相互作用についての情報を得るために、ssDNA標的およびssDNA結合タンパク質がそれぞれ使用され得る。
本発明のさらなる態様および利点は、添付の実施例および特許請求の範囲から明らかとなる。
【実施例1】
【0072】
(組換え可溶性QDE−1およびその遺伝学的誘導体の発現および精製)
(細胞性RdRP様タンパク質の配列分析)
PTGSに関与することが遺伝学的に示された、トマトRdRPおよび細胞性RdRP様タンパク質のアミノ酸配列を、ClustalWアルゴリズム(Thompsonら、1994)を使用して整列させた。アラインメントデータに対して構築された類似性プロットは、これらのタンパク質のアミノ末端が、カルボキシ末端部分よりも目だって異なっている(20%未満の類似性)ことを実証する(図1B)。この保存された領域内で、1つの特定の範囲が最も高い類似性を示している(図1B中の「HS」;および図1C)。RdRP様タンパク質が実際にRNA重合活性を保有する場合、この機能に必須のエレメントは、おそらくC末端ドメイン内の残基である。ウイルス性RdRPにおいて、モチーフAおよびモチーフC内に位置する2つの保存されたカルボキシレートは、ヌクレオチジル転移を触媒する(Butcherら、2001;Hansenら、1997;Steitz、1998)。配列の状況に基づいて、HS配列内のGSDLDGDX(配列番号13)(Xは任意のアミノ酸であり得る)ブロック由来の3番目のアスパラギン酸は、ウイルス性RdRPのCモチーフ由来の触媒的アスパラギン酸(GDD/N;Pochら、1989)に対応し得る。
【0073】
(発現プラスミドの構築)
Hisタグ化全長QDE−1をコードするS.cerevisiae発現プラスミド(pEM41)を構築するために、野生型のイントロンのないQDE−1遺伝子を、Turbo Pfu(Stratagene)およびTaq(Promega)DNAポリメラーゼならびにプライマー5’−GCCAAGCTTCCATGAACCCTATTACTCCTA−3’(配列番号7)(qde1_up3)および5’−CCGAATTCATAATCGCCATTCCCTGTGA−3(配列番号8)(qde1_down3)の混合物を使用して、N.crassaのゲノムDNAからPCR増幅した。HindIIIおよびEcoRIで消化したPCRフラグメントをゲル濾過し、同様に切断したベクターpYES2/CT(Invitrogen)とライゲーションさせた。QDE−1インサートの配列をいくつかのpEM41クローンで配列決定した。アミノ酸レベルで以前に公開された配列と異ならなかった1つのクローンをさらなる実験のために選択した。
【0074】
ΔN(1aa〜376aaを欠くQDE−1)をコードする2つのプラスミド(pEM42およびpEM46)を構築した。この目的のためにQDE−1遺伝子の3’末端部分を、pEM41から、Turbo Pfu DNAポリメラーゼならびにプライマー5’−GCTCAAATCCCATGGCTCGGAGCGAAGAAA−3’(配列番号9)(qde1_up2)および5’−CCGAATTCTAATAATCGCCATTCCCTGTGA−3’(配列番号10)(qde1_down1)を使用して増幅した。このPCRフラグメントをNcoI−EcoRIで処理して、同様に切断したベクターpET21d(Novagen)とライゲーションさせて、E.coli発現プラスミドpEM42を得た。QDE−1のNcoI−Eco81IフラグメントをpEM42から切り出してpEM41中に挿入して、QDE−1のHindIII−Eco81Iフラグメントを置換し、NcoIおよびHindIIIで切断した末端を、DNAポリメラーゼIのKlenowフラグメントで満たした。得られたプラスミドpEM46を使用して、Hisタグ化QDE−1ΔNをS.cerevisiaeにおいて産生した。
【0075】
(発現および精製)
発現プラスミドpEM41を、S.cerevisiae INVScl(Invitrogen、his3Δ1/his3Δ1 leu2/leu2 trp1−289/trp1−289 ura3−52/ura3−52)中に導入し、QDE−1発現をガラクトースで誘導した。クマシー染色したSDS−PAGEによって判断されるように、これらの細胞は、誘導されていないINVScl(pEM41)対照および誘導されたINVScl(pYES2/CT)対照中には存在しなかった約163kDaのタンパク質を産生した。Hisタグ特異的抗体がウエスタンブロット上のタンパク質を認識し、このことはその同一性をさらに確認する(データは示さず)。最初の精製実験において、誘導されたINVScl(pEM41)細胞を、フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下で、50mM Tris−HCl(pH8.0)、300mM NaClを含む緩衝液中で破壊した。これらの条件下で、163kDaタンパク質のほとんどは不溶性形態であった。上清画分は、主に低分子量の小量のHisタグ化種を含んだ(結果省略)。従って本発明者らは、細胞破壊緩衝液中のNaClの濃度を1Mに増大させて非イオン性界面活性剤を導入することによって、細胞破壊緩衝液を最適化した。さらに、そのpHを9.3に増大させて、Hisタグ化QDE−1の理論上の等電点(約8.4のpI)から離し、プロテアーゼインヒビターカクテルを使用してタンパク質分解を妨げた。これらの条件下で、全長QDE−1の約3分の1を、ニッケルキレートカラムでの1工程の精製によって純粋な可溶性形態で回収することができた(図2A)。類似の発現および精製ストラテジーを利用して、N末端から376aaを欠く可溶性の短縮型QDE−1(ΔN)ならびに可能性のある触媒的アスパラギン酸を破壊するD1011A点変異を有するΔN(ΔNDA;全長QDE−1についての番号付け)を得た(図2A;および図1Cを参照のこと)。精製されたタンパク質の典型的な収率は、酵母培地1L当たり約0.5mg(QDE−1)または3〜5mg(ΔNおよびΔNDA)であった。現在好ましい発現プロトコルおよび精製プロトコルは以下の通りである:
S.cerevisiae培養物(40ml)を、SC−Ura,+Glu最小培地中で240rpmでOD600が約3になるまで30℃で一晩増殖させた。これらの細胞を室温で1500gで5分間遠心分離することによって収集し、20mlのSC−Ura,+Rafで1回洗浄して、0.4の最終OD600になるように300mlのSC−Ura,+Glu,+Raf中に再懸濁した。攪拌を28℃で22時間継続した。次いでこれらの細胞を4℃で5000gで5分間遠心分離することによって回収し、100mlの氷冷水で洗浄し、Complete Mini EDTAフリープロテアーゼインヒビターカクテル(Roche;7.5ml当たり1錠)を含む15mlの氷冷緩衝液H−5(50mM Tris−HCl(pH9.3);1M NaCl;1% Triton X−100;1% Tween 20;5% グリセロール;5mM イミダゾール)中に再懸濁した。この懸濁物を、必要になるまで5mlのアリコート中で−80℃で保存した。タンパク質精製を4℃で実施した。解凍した細胞懸濁物(5ml)を、予め冷却したフレンチプレスセルに約20,000psiで2回通過させた。最初の通過後に、PMSFを1mMになるように添加した。あるいは、これらの細胞を酸洗浄されたガラスビーズと共に攪拌することによって破壊した。この溶解物を13,000gで15分間遠心分離し、その上清を、緩衝液M−5(50mM Tris−HCl(pH8.9);300mM NaCl;0.5% Triton X−100;0.5% Tween 20;5mM イミダゾール)で平衡化した1mlのNi−NTAカラム(Qiagen)上にロードした。このカラムを20mlのM−5および10mlのM−50(50mM Tris−HCl(pH8.9);300mM NaCl;0.5% Triton X−100;0.5% Tween 20;50mM イミダゾール)で洗浄した。組換えタンパク質を、M−200(50mM Tris−HCl(pH8.9);300mM NaCl;0.5% Triton X−100;0.5% Tween 20;200mM イミダゾール)を用いてこのカラムから溶出させた。画分をSDS−PAGEによって分析し、タンパク質濃度を、タンパク質バンドを既知量のウシ血清アルブミン(BSA)を含むバンドと比較することによって決定した。精製したタンパク質を、比活性の検出可能な損失なしで、氷上で少なくとも2週間保存した。ネガティブ対照として、本発明者らはpYES2/CTプラスミドおよびpYES2/CT/lacZプラスミド(Invitrogen)を含むINVScl細胞を使用した。
【0076】
QDE−1由来のΔNタンパク質はまた、以前に公開された発現プロトコル(MakeyevおよびBamford、2000)を使用してpEM42で形質転換したE.coli BL21(DE3)においても産生できた。しかし、この組換えタンパク質は、本発明者らの最適化にもかかわらず、不溶性形態であった(結果省略)。
【実施例2】
【0077】
(QDE−1およびその誘導体のRNA重合活性の特徴付け)
(RNAテンプレート)
RdRPアッセイのための合成ssRNAテンプレートを、原則的に記載されるように(Gurevichら、1991;Makeyevら、1996)、T7 RNAポリメラーゼを用いたin vitroのラン−オフ転写によって調製した。この目的のために使用したプラスミドについての参考文献は、図の注釈中に示す。プラスミドpEM54を、ルシフェラーゼ遺伝子のHindIII−EcoRV 5’末端フラグメントを欠失させることによって、pTZluc(−ストップ)(Makeyevら、1996)から誘導した。ウイルス性RNAを、精製したウイルス粒子(φ6、LAおよびTMV)から、フェノールおよびクロロホルムを用いて抽出し、エタノールで沈殿させ、水または10mM Tris−HCl(pH8.0)、0.1mM EDTA中に溶解させた。RNA濃度を、260nmでの光学密度によって測定し、その品質を標準的なアガロースゲルまたは/およびホルムアルデヒド含有アガロースゲルでの電気泳動によって決定した(SambrookおよびRussell、2001)。
【0078】
(精製したQDE−1はin vitroで酵素的に活性である)
単離されたQDE−1を、50mM HEPES−KOH(pH7.8)、20mM 酢酸アンモニウム(NHOAc)、6%(w/v)PEG4000、5mM MgCl、0.1mM EDTA、0.1% Triton X−100、各1mMのATPおよびGTP、各0.2mMのCTPおよびUTP、0.8単位/μl RNasinならびに0.1mCi/mlの[α−32P]UTP(約3000Ci/mmol;Amersham Biosciences)を含む10μlの反応混合物において、その潜在的なRdRP活性についてアッセイした。90μg/mlのホタルルシフェラーゼ(luc)mRNAをテンプレートとして使用した。反応を、ポリメラーゼ調製物または緩衝液M−200の添加によって開始し、次に30℃で1時間インキュベートした。反応産物を、標準的なアガロースゲル電気泳動とその後のオートラジオグラフィーによって分析した。混合物中のQDE−1の存在は、2つの別個の反応産物の出現と相関した(図2B、レーン1および2)。一方の反応産物はssRNAテンプレートよりも僅かにゆっくりとネイティブのアガロースゲル中を移動し(下のバンド)、他方の反応産物はテンプレート長のdsRNAと共に移動した(上のバンド)。これらの産物がQDE−1調製物に混入した酵母の酵素によって合成されたということを排除するために、本発明者らは、ベクター(pYES2/CT)またはHisタグ化LacZをコードするプラスミド(pYES2/CT/lacZ;Invitrogen)を含む、ガラクトースにより誘導された細胞から同様に精製した対照画分をアッセイした。2つの場合のいずれにも重合産物は検出されなかった(結果省略)。
【0079】
(観察された活性は、QDE−1のC末端ドメインの機能である)
新たに見出された活性を特徴付けるために、精製された可溶性ΔN(QDE−1のカルボキシ末端フラグメント)を、上記のようにlucテンプレートを用いてアッセイした。2つの標識されたRNA産物は、QDE−1により触媒された反応と同様に、オートラジオグラム上に出現した(図2B、レーン3)。ΔNの比活性はQDE−1の比活性と類似であり、従ってこのことは、この触媒にC末端ドメインを関与させる。
【0080】
注目すべきことに、ΔNDA(推定触媒残基であるAsp1011がAlaに変化したΔN)を同じ条件下でアッセイした場合、活性は検出されなかった(図2B、レーン4および5)。ΔNDAにおける活性の喪失がタンパク質の折り畳みにおける変更に起因するものではないことを確認するために、ΔNおよびΔNDAの両方を、ΔNについて図2C中に示されるように、ネイティブ条件下でゲル濾過に供した。ΔNのピークおよびΔNDAのピークの位置においても形状においても検出可能な差異は存在せず、従ってこのことは、ΔNDAが適切に折り畳まれていることを示す(結果省略)。ΔNタンパク質のピークの位置は酵素活性のピークと一致し、従ってこのことは、細胞性酵素による潜在的な混入に対するさらなる証拠を提供する(図2D)。
【0081】
(QDE−1はRNA依存的RNA重合を触媒する)
QDE−1によって触媒される反応がRNA依存的RNA重合であることを確認するために、この酵素をテンプレートまたは未標識のヌクレオチド(ATP、CTPおよびGTP)のいずれかを欠く混合物中でアッセイした。予測されるように、標識された産物はこれら2つの反応において形成されなかった(図3A、レーン2および4)。本明細書中で対照として使用したdsRNAウイルスφ6の精製されたRdRPサブユニット(φ6Pol)は、本発明者らの以前の研究から予測された全長dsRNA産物を産生した(図3A、レーン1;ならびにMakeyevおよびBamford、2000を参照のこと)。φ6Polと同様に、QDE−1指向性の反応における上のバンドは、末端から末端までの重合によって生じる可能性が高い。ss種とds種との間のその中間の移動度に起因して、より速く移動する産物が不完全な合成の結果として出現し得、テンプレートの一部のみが二本鎖形態に転換される。
【0082】
RNA産物のヌクレオチド組成がテンプレートによって指示されるか否かを試験するために、本発明者らは、RNA産物中に取り込まれたα標識されたヌクレオシド−5’−一リン酸に5’側で隣接するヌクレオシドの分布を決定することを可能にする「最近隣」分析を利用した。QDE−1を、各0.2mMの4種の未標識NTPおよび[α32P]UTPの存在下で、luc RNAまたはポリ(A)ホモポリマーのいずれかと共にインキュベートした。両方の反応において、標識された産物はアガロースゲル電気始動およびTCA沈殿によって容易に検出可能であった(結果省略)。これらの反応混合物をRNase T2で消化してヌクレオシド−3’−一リン酸(Ap、Cp、GpおよびUp)を生成し、これを薄層クロマトグラフィー(TLC)によって分離した。テンプレート依存的合成の場合、4種全てのヌクレオシド−3’−一リン酸はlucテンプレートについて標識されたリン酸を保有し、Cp、Gp、ApおよびUpは、1.0:1.1:1.4:1.8と分配される。標識されたUpのみがポリ(A)プログラムされた反応について予測される。図3Bは、これらの予測を完全に確認する。
【0083】
(QDE−1は、RNA合成を新たに開始し得る)
多数のRdRPが、プライマー依存性の開始機構を利用する(Butcherら、2001;Laurilaら、2002およびそれらの中の参考文献)。QDE−1もまたプライマー依存性の(新たな)開始を支持し得るか否かを試験するために、このポリメラーゼを、γ標識したヌクレオチドの存在下でアッセイした。新たに開始された娘鎖の最初の5’ヌクレオチドは、その三リン酸部分を保持するはずであるが、その一方で、プライムされた合成の場合にはα−リン酸のみが取り込まれる。標識されたRNA産物を両方とも、[γ−32P]GTPおよび[γ−32P]ATPの存在下で産生したが、[γ−32P]GTPの取り込み効率は顕著に高かった。図3Cは、5’ΔmRNAテンプレート(...UUCC−3’末端を有するφ6特異的RNA;MakeyevおよびBamford、2000)を使用して、QDE−1は標識を下のバンド(特に二本鎖種)中に優勢に取り込み、一方で上のバンド(全長dsRNA)は非常に弱く標識されたことを示す。類似のパターンがlucテンプレートについて観察された(結果省略)。このことは、部分的dsRNA種が、テンプレートにアニールした複数コピーの新たに開始された娘鎖を含み得ることを示す。
【0084】
γ−リン酸がRNA重合ではなくγ−リン酸転移によって導入されることを排除するために、本発明者らは、標識されたRNAをグアノシル特異的RNase T1で処理し、その消化物をTLCによって分析した(Vasiljevaら、2000)。この標識は、pppGpの形態でQDE−1のRNA産物から回収された。予測されるように、T4ポリヌクレオチドキナーゼによって5’α位置で標識されたオリゴヌクレオチド5’−GUUUUCACCCUAUCCUCCCC−3’(配列番号11)を含む対照消化物において、この標識はpGpの形態で放出された(図3D)。
【0085】
(二価カチオンの影響)
全ての既知のRdRPは二価金属イオンに対して感受性であるので、本発明者らは、QDE−1により触媒される反応に対するMg2+、Mn2+およびCa2+の影響を研究した(図3E)。Mg2+濃度の増大は、5mM〜9mMの範囲内でバンド強度に影響を与えなかった(レーン1〜4)。Mn2+は、1mMの濃度で両方の反応産物の合成を刺激した(レーン5)。しかし、2mM〜4mMまでの[Mn2+]の更なる増大は、上のバンドの消失を引き起こし、下のバンドには僅かな影響のみを有した(レーン6〜7)。カルシウムイオンは、4mMでほぼ完全にRdRP反応を阻害した(レーン10)。より低いCa2+濃度で、より速く移動する産物の合成は、上の産物よりも大きく影響を受けた(レーン8〜9)。RNA産物の分布に対するMn2+およびCa2+の影響は、QDE−1が異なる反応の最適条件で2つの重合様式を利用し得るという概念と一致する。
【0086】
(QDE−1は多数のssRNAテンプレートを受容する)
QDE−1のテンプレート優先性を評価するために、本発明者らはまた、いくつかの他の一本鎖テンプレート(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)mRNA、タバコモザイクウイルス(TMV)のゲノムRNA、ならびにいくつかのN.crassaのRNAおよびφ6特異的RNA)を用いてQDE−1をアッセイした(図4Aおよび図6A)。全ての場合において、QDE−1は全長dsRNAおよび部分的に二本鎖の種を、ちょうどlucテンプレートについてと同様に産生した。いくつかの実験において、反応産物を水で平衡化したSephadex G−50でのゲル濾過によって電気泳動の前に精製した場合、約20ntのssRNAとして移動するバンドは、オートラジオグラム上でも明らかであった(図4A中の矢頭)。これらも、部分的にdsRNAの産物も、対応するφ6Polレーン中に存在せず、従ってこのことは、これらがRNAサイレンシングプロセスに関与する細胞性RdRPの特異的な特性であり得ることを示唆する。
【0087】
(反応産物の性質)
QDE−1重合産物の性質を同定するために2つの独立したアプローチを使用した。第一に、RdRP産物を、ホルムアルデヒド含有ゲルでの電気泳動によって分離した(図4B)。これらの条件下で、dsRNA産物のRNA鎖は完全に変性され、それらの長さに従って移動する。以下の3つのバンドが、luc mRNAプログラムされた反応について検出された:テンプレート長(1×)の弱いバンド、テンプレートの2倍の長さ(2×)のより強いバンドおよび約20nt(簡潔にするためにsRNA)の位置で移動する最も強いバンド。φ6Polのみが1×産物および2×産物を産生し、sRNAの痕跡はなかった。1×種は、新たに開始されたRNA合成の結果として生じ、その一方で2×は戻って折り畳まれたテンプレートの3’末端の伸長(いわゆる「バックプライミング」;Laurilaら、2002)に起源することが以前に示されている。従って、QDE−1は、バックプライミング様式を主に使用して、luc mRNAの完全またはほぼ完全なコピーを産生した。ネイティブゲル上で、この産物はテンプレート長のdsRNAとして移動する(図4Aを参照のこと)。これらのsRNA産物は、不完全なdsRNA産物に見かけ上由来する。この産物はネイティブゲル上でluc mRNAよりも顕著にゆっくりと移動するので、複数コピーの相補的sRNAは各テンプレート分子に対して産生される可能性が高い。図4Bから、QDE−1が新たな開始機構を主に使用して、GFPテンプレートおよびTMVテンプレートに対して、小量のほぼ全長のdsRNAを産生することが明らかである。そして再度、20nt領域で移動する相補的sRNAは、主要な反応産物を示す。
【0088】
第二のアプローチについて、本発明者らは高いイオン強度でRNase Iの特性を使用して、dsRNAではなくssRNAを分解した。上記の実験から理解されるように、QDE−1が2つの別個のタイプのdsRNAエレメントを産生する場合、以下の2つの産物がRNase I消化から保護される:(i)短いdsRNAおよび(ii)(ほぼ)全長のdsRNA(図4C)。RNase保護アッセイを実施するために、標識されたluc RNA、4種の未標識NTPを含みかつ標識されたヌクレオチドを含まないQDE−1反応混合物を、250mM NHOAc、10mM EDTAを添加することによってクエンチした。次いで、これらの混合物に、0.05単位/μlのRNase I(RNase ONE;Promega)または同容量のRNase ONE 1×緩衝液を補充し、30℃で1時間インキュベートした。これらの反応を、0.2% SDSの添加によって停止させ、産物を標準的なアガロースゲル電気泳動によって分析した。図4Cにおいて予測された両方のRNase耐性種が電気泳動分離の後に実際に検出され(図4D)、従ってこのことは本発明者らの結論を支持する。
【0089】
(sRNAは9〜21ヌクレオチド長である)
sRNAの長さを正確に決定するために、本発明者らは、γ標識したGTPの存在下で異なるRNAテンプレートを用いた重合反応を実施した。30℃でのインキュベーション後、反応産物を高分解尿素含有PAGEを使用して分析した。テンプレートに関わらず、sRNAは、より短い産物およびより長い産物の時折の弱いバンドを伴って、9マー〜21マーのオリゴヌクレオチドの集団として出現した(図5および図6B)。QDE−1およびΔNによるsRNAパターンは同一であった;sRNAはφ6Pol対照においては検出されなかった(図5)。α標識したUTPをγ標識の代わりに使用した場合、より長い産物の相対強度がより高かったという差異のみを有する類似のパターンが得られた(結果省略)。
【0090】
(プライムされたssRNAテンプレートおよび平滑末端dsRNAテンプレートを用いた反応)
図1A中のモデル1および2は、QDE−1がdsRNAテンプレートを利用し得、かつ/またはssRNAテンプレートにアニールした相補的プライマーを伸長させ得ることを示す。これらの予測を扱うために、本発明者らは、φ6ビリオンまたは酵母LAウイルス様粒子から抽出された平滑末端dsRNAを用いて、QDE−1およびQDE−1ΔNをアッセイした(図10A)。標識された産物は、延長した露光の後にさえ検出されなかった。対称的に、予測されたように、φ6Polは半保存的(鎖置換)機構を介して合成された、容易に検出可能なdsRNA標識産物を産生した(MakeyevおよびBamford、2000)。
【0091】
QDE−1のプライマー伸長能力を評価するために、合成RNAオリゴヌクレオチド5’−CGACUCAUGGACCUUGGGAG−3’(配列番号12)を、T4−PNKおよび[γ−32P]ATPで標識し、sR5 RNAテンプレート(EcoRVで切断したpLM659のT7転写物;Gottliebら、1992)とアニールさせ、40μg/mlのQDE−1(またはφ6Pol)を含むRdRP反応混合物および標識されたヌクレオチドを含まないRdRP反応混合物(上の記載を参照のこと)中でアッセイした。対照として、同じプライマー−テンプレート基質を、推奨された緩衝液中に5単位のAMV−RT(Sigma)、8単位のRNasinおよび各0.5mMの4種のデオキシヌクレオチド三リン酸を含む10μlの混合物中で37℃で1時間インキュベートした。これらの反応混合物を、7.5Mの尿素を含む6% PAGEによって分離した(図10B)。
【0092】
検出可能な量の全長伸長産物がQDE−1のレーンにおいて検出され、「緩衝液のみ」の対照においてはこの位置にバンドは存在しなかった。類似の産物が、φ6Polのレーンにおいても見えた。使用した条件下で、トリ骨髄芽球症ウイルスの逆転写酵素(AMV−RT)は、2つのRdRPのいずれよりも10〜20倍多い伸長産物(cDNA)を産生した(図10C)。
【実施例3】
【0093】
(QDE−1ポリメラーゼおよびその誘導体の下流の適用)
(配列特異的プローブとしてのsRNAの使用)
sRNAが全テンプレートに沿って均等に分布する場合、これらはそれらのコーディングテンプレートおよびRdRP混合物の他の成分から精製されて、核酸ハイブリダイゼーションに基づく分子技術および細胞技術においてプローブとして使用され得る。この目的のために、luc RNAに対して合成されたγ−32P標識したsRNAを、ノザンブロッティングのためのプローブとして使用した(図9A)。以下の6つのRNAをハイブリダイゼーション標的として使用した:図9B中に示されるような異なる領域にわたるluc RNAの4つのセンスフラグメント、全長アンチセンスluc RNA(a−luc)およびφ6 sRNAに起源しかつルシフェラーゼ遺伝子に対する相同性を含まない対照sR5 RNA。
【0094】
ノザンブロッティングのためのsRNAプローブを調製するために、上に概説したように、ルシフェラーゼmRNAを、4種の未標識NTPおよび[γ−32P]GTPの存在下でQDE−1と共にインキュベートした。RNA産物を変性させ、低融点アガロースゲルでのゲル電気泳動を使用して分離した。標識されたsRNAを含む領域をゲルから切り出した;sRNAを70℃でアガロースを溶融させることによって回収し、さらなる精製なしで標的RNAを探索するために使用した。記載されるように(SambrookおよびRussell、2001)、標的RNA(上記で特定したもの)を、ホルムアルデヒド含有ゲル中で分離し、Hybond−N+(Amersham Biosciences)に移した。これらのメンブレンを6×SSC、7% SDS中で68℃で4時間ブロッキングし、その後sRNAプローブ(約10cpm/ml)を含む同じ緩衝液中で42℃で一晩のハイブリダイゼーションを実施した。ハイブリダイゼーション後、これらのメンブレンを2×SSCで室温で3回洗浄し、その後42℃で2×SSC、0.1% SDSで2回洗浄した(各々30分間の洗浄)。これらのメンブレンを風乾して、ホスホイメージャーで分析した。
【0095】
この実験の結果を図9Cに示す。4つ全てのセンスRNAがプローブによって認識され、従ってこのことは、sRNA集団が異なるテンプレートセグメントに相補的な種を含むことを示唆する。予測されるように、sR5のレーンにおいてはシグナルは検出されなかった。a−luc RNAバンドの非常に弱い標識が存在し、これは、プローブ中の低量のセンスsRNAの存在によって形式的に説明できた。しかし、低いストリンジェンシーの条件を使用したので、これはハイブリダイゼーションのアーチファクトの可能性もある。
【0096】
(新たに産生されたRNAへの化学的に改変されたヌクレオチドの取り込み)
非放射能標識を含むRNA産物を生成することは、多数の適用にとって有利である。QDE−1およびその誘導体についてこの可能性を探求するために、標識がヌクレオチド塩基に係留されたビオチン−11−CTPを用いて反応を実施した。図12Aに概説されるように、反応産物をメンブレン上に固定化して、HRP−ストレプトアビジンコンジュゲートを用いて探索した。強いシグナルが、ポリメラーゼ(ΔN)およびテンプレート(luc)の両方を含む混合物について検出され、従ってこのことは、標識されたシトシンが産物画分中に実際に取り込まれ得ることを示す。クマリン−5−CTPを標識として使用し、クマリン蛍光を精製された反応産物画分において測定した場合に類似の結果が得られた(図12B)。
【0097】
(QDE−1のRNA産物は、C.elegansにおいてRNAiを誘導する)
QDE−1反応産物の生物学的活性を扱うために、本発明者らは、RNAiアプローチを利用した。RNAiを許容しかつまたPTGS経路のRdRP成分を有する生物のうち、C.elegansは、最も便利な実験モデルである。基本的なC.elegans技術は記載されている(LewisおよびFleming、1995)。RNAi実験のために、実施例2に記載されるように、20μgのGFP mRNAを、50μlの反応混合物中で1μgのQDE−1または同容量の緩衝液M−200と共に30℃で1時間インキュベートした。反応産物を、フェノール−クロロホルムで抽出し、2.5Mの酢酸アンモニウムの存在下でエタノールで沈殿させた。これらのペレットを、3mMのスペルミジンおよび0.5mg/mlのBSAをさらに補充した15μlのM9緩衝液(Brenner、1974)中に溶解させた。RNA溶液の5μlのアリコートを、0.5mlのエッペンドルフチューブ中で、使用の直前に0.5μlの20mM CaClと混合した。5〜10匹の若い成体雌雄同体(C.elegans AZ218;咽頭GFP発現;Praitisら、2001)をM9で洗浄して、各チューブ中で20℃で24時間浸した。次いでこれらの虫を、20℃でさらに24時間にわたり、E.coli OP50−1を薄く播いたNGMプレート上にプレートした。これらの虫を、さらに72時間にわたり(20℃)、OP50−1の格子を塗った新たなNGMプレートにさらに移した。これらのプレート由来のF1子孫を、Olimpus IX70顕微鏡を使用して、咽頭におけるGFPの発現についてスコアリングした。GFP発現は、QDE−1反応産物で処理した親由来の約60%のF1世代において検出可能にサイレンシングされ、その一方で、全てのF1虫は、M−200緩衝液対照中で検出可能な咽頭GFP蛍光を示した。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】(A)先行技術で示唆されたが実験的に試験されていない、RNAサイレンシングにおけるRdRPの役割についての3つの仮説的モデルの図である。第一のモデルにおいて、RdRPはdsRNAテンプレートを複製し、従って、サイレンシングシグナルを増大させると考えられている(Waterhouseら、1998)。このモデル改変は、複数コピーのより短いRNAトリガーを生成するためにdsRNAテンプレートがRdRPによって使用され得ることを示唆する(「拡散性サイレンシング因子」;ChicasおよびMacino、2001)。第二のモデルによれば、RdRPはdsRNAトリガーの濃度をも増大させるが、その増幅は、dsRNAテンプレートを扱うのではなく、mRNAに対して相補的なRNAプライマーの3’末端を伸長させることによって達成される(Nishikura、2001)。開始dsRNAトリガーを切ることによって産生された小さいアンチセンスRNAは、多数のmRNAテンプレートにアニールするプライマーとして使用され得、RdRP伸長工程の後に、複数の二次的なdsRNAトリガーを生じ得る。C.elegansについての最近の研究により、これらの二次的なトリガーが実際存在し、それらの合成が機能的rrf−1遺伝子の存在を必要とすることが実証された(Sijenら、2001)。しかし、プライマーの関与はこの場合直接的に示されていない。これまで、二次的dsRNAのプライマー依存的な合成の唯一の明確な証拠は、D.melanogasterの胚抽出物において実施された研究に由来している(Lipardiら、2001)。興味深いことに、Drosophilaゲノムは細胞性RdRPファミリーの明らかなホモログを含まず、このことは、いくつかの他のポリメラーゼが観察された効果を担っていることを示している。最後に、RdRPは、dsRNA濃度を増大させる補助的増幅装置であるのではなく、ssRNAからの開始dsRNAトリガーの合成のために必要とされ得る(第三のモデル;CogoniおよびMacino、2000;WasseneggerおよびPelissier、1998)。このモデルは、異常な転写物およびいくつかのウイルス性ssRNAが如何に二本鎖サイレンシングトリガーへと転換され得るかを説明する。(B)PTGSにおける遺伝学的に報告された役割を有する5つのRdRP様タンパク質およびトマトの葉から単離されたそれらの生化学的対応物(T−RdRP)についての類似性プロフィールを示す図である。グラフは、40aaのスライディングウインドウを使用して、Vector NTI SuiteのAlignXプログラムで生成される。これらのタンパク質配列は、以下の番号の元でhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/においてアクセスされ得る:QDE−1、CAB42634;RrpA、CAC41974;EGO−1、AAF80367;RRF−1、AAF80368;SGS2/SDE1、AAF74208;T−RdRP、CAA71421。Dicerヘリカーゼドメインに対して相同なRrpAの1aa〜442aaフラグメントはアラインメントから排除した。20%未満の類似性を有する領域を灰色に着色している;20%以上の類似性を有する領域を黒に着色している。HSとは、細胞性RdRPのファミリー内の最も保存された範囲をいう。挿入図は、隣接結合法(SaitouおよびNei、1987)を使用した6つの推定タンパク質配列についての系統発生樹を示す。(C)HS範囲についてのタンパク質配列アラインメントを示す図である。黒の影、不変残基;灰色の影、保存された残基。提唱された触媒的役割を有するアスパラギン酸には、アスタリスクで印を付している。
【図2】QDE−1およびその遺伝学的誘導体の精製ならびに開始RNA重合アッセイを示す図である。(A)精製されたQDE−1(レーン1)、ΔN(レーン2)およびΔNDA(レーン3)のSDS−PAGE分析。M、マーカーレーン。タンパク質標準の分子量は右側に示される。Hisタグ化したQDE−1およびΔN(ΔNDA)の配列から推定した分子量は、それぞれ約163kDaおよび約122kDaである。(B)精製したタンパク質を、4種の未標識NTPおよび[α−32P]UTPの存在下で、90μg/mlのホタルルシフェラーゼ(luc)mRNA(HindIIIで切断したpT71ucのT7転写物;(Kolbら、2000)を含む10μlの混合物中でアッセイし、その反応産物をネイティブアガロースゲル電気泳動によって分析した。レーン1、M−200緩衝液対照;レーン2、10μg/mlのQDE−1を含む反応;レーン3、10μg/mlのΔNを含む反応;レーン4、10μg/mlのΔNDAを含む反応;レーン5、100μg/mlのΔNDAを含む反応。MdsはdsDNAマーカーである。上のパネル、エチジウムブロマイド(EtBr)染色したゲル;下のパネル、オートラジオグラム。テンプレートRNAのss形態および全長ds形態の位置は左側に示される。マーカーの長さは右側に示される。(C)Superdex 200カラム(Pharmacia;20mM Tris−HCl(pH8.9)、100mM NaCl;1ml/分;1mlの画分)で分離したΔN(30μg)のA280溶出プロフィール。矢印は、ゲル濾過マーカー(Sigma)の位置を示す:BD、ブルーデキストラン;βAM、β−アミラーゼ;AD、アルコールデヒドロゲナーゼ;BSA、ウシ血清アルブミン;CA、カルボニックアンヒドラーゼ;CC、シトクロムC。20分でのピークは、RdRP保存緩衝液由来の非イオン性界面活性剤に対応する。挿入図、溶出画分のSDS−PAGE分析。(D)luc RNAテンプレートを使用してSuperdex 200画分において測定したRdRP活性。活性ピークはΔNタンパク質の位置に対応することに留意のこと(画分12〜14)。
【図3】QDE−1がRNA依存的RNA重合を触媒することを示す図である。(A)QDE−1(4μg/ml)を、一定量の[α−32P]UTPの存在下で、4種全てのNTP(1mMのATPおよびGTPならびに0.2mMのCTPおよびUTP)を含む混合物(レーン2〜3)または0.2mMのUTPのみを含む混合物(レーン4)のいずれかにおいてインキュベートした。40μg/mlのバクテリオファージφ6 RdRP(レーン1;φ6Pol)を、4種のNTPの存在下で対照としてアッセイした。レーン2を除く全ての場合において、混合物は90μg/mlのluc RNAを含んだ。反応産物をネイティブ条件下で1%アガロースゲル中で分離した。luc RNAのss形態および全長ds形態の位置は左側に示される。(B)10μg/mlのQDE−1、各0.2mMの4種の未標識NTPのおよび[α−32P]UTPを含むRdRP反応を、90μg/mlのluc RNA(トラック2)、150μg/mlのポリ(A)ホモポリマー(Sigma;トラック3)またはRNAなし(トラック1)のいずれかを用いてプログラムした。反応産物を、取り込まれていないヌクレオチドからゲル濾過によって精製して、記載されるように(Schiebelら、1993)RNase T2消化およびTLC分離に供した。黒の矢印は4種のヌクレオシド−3’−一リン酸の位置を示す。白抜きの矢印は、TLC展開方向を示す。(C)[γ−32P]GTPの存在下(レーン1、2、4および1、2、4)または[γ−32P]ATPの存在下(レーン3および3)で、100μg/mlの5’ΔmRNAを用いて実施したRdRP反応についての、EtBr染色したアガロースゲル(レーン1〜4)および対応するオートラジオグラム(1〜4)。レーン1(1)および3(3)、20μg/mlのΔNポリメラーゼ;レーン2(2)、20μg/mlのφ6Pol;レーン4、M−200緩衝液。他の名称は図2Bと同様である。(D)(C)と同様に実施した反応を、取り込まれていないヌクレオチドから精製し、RNase T1で処理し、TLCで分離した。トラック1、RNAなし;トラック2、luc RNA;トラック3、T4 PNKおよび[γ−32P]ATPで標識した5’末端Gを有する対照RNAオリゴヌクレオチド。黒の矢印、リン酸グアノシンの位置;白抜きの矢印、TCL展開方向。(E)QDE−1(4μg/ml)により触媒される反応に対する二価金属イオンの影響。レーン1、5mM MgCl;他の反応は1mM、2mMまたは4mMのMgCl(レーン2〜4)、MnCl(レーン5〜7)またはCaCl(レーン8〜10)をさらに含んだ。
【図4】QDE−1が2つのタイプの反応産物を生成することを示す図である。(A〜B)RdRP反応を、90μg/mlのルシフェラーゼmRNA(レーン1〜3)、80μg/mlのGFP mRNA(レーン4〜6;EcoRIで切断したプラスミドTU58(Chalfieら、1994)のT7転写物)または100μg/mlのTMVゲノムRNA(レーン7〜10)を用いてプログラムした。反応は、[α−32P]UTPおよび10μg/mlのQDE−1(レーン2、5、8)または20μg/mlのφ6Polのいずれかを含んだ。レーン1、4、7は「緩衝液のみ」の対照である。(A)ネイティブ1.2%アガロースゲル。短いRNA産物(sRNA)は白抜きの矢頭で示される。dsDNAマーカーの位置は右側に示される。(B)ホルムアルデヒド含有1.5%アガロースゲル。RdRP反応のために使用した一本鎖テンプレートの位置は左側に示される。Mss、2つの32P標識したssRNAマーカー(20ntおよび1797nt);RNase保護アッセイの(C)模式的結果および(D)実際の結果。RdRP反応を、70μg/mlの32P標識したluc mRNAを用いかつ標識したNTPなしで実施した。反応は、40μg/mlのφ6Pol(レーン1、4)40μg/mlのQDE−1(レーン2、5)またはM−200緩衝液(レーン3、6)を含んだ。実験手順のもとに特定されるように、30℃で1時間のインキュベーションで、EDTAによって重合を停止させ、アリコートをRNase I(レーン4〜6)またはRNase I反応緩衝液(レーン1〜3)と共にインキュベートした。黒の矢頭は、レーン5中の短いdsRNAフラグメントの位置を示す。レーン3中のぼんやりした移動の遅いバンドは、luc mRNAの付随物を見かけ上示す。
【図5】sRNAのサイズ分布を示す図である。反応を、図4A〜Bと同様にであるが[γ−32P]GTPおよびパネルの上部に示した添加剤の存在下で実施した。アリコートを15分(レーン1〜6)および60分(レーン7〜15)の時点で採取し、15%尿素含有PAGEによって分析した。M、DNAテンプレートの混合物のT7転写によって産生された32P標識したssRNAマーカー。マーカーの位置は右側に示される(ntで)。矢印は21マーのRNAの位置を示す。ゲルの下側半分のみが示されている。
【図6】QDE−1が種々のssRNAテンプレートを受容することを示す図である。(A)RdRP反応を、[α−32P]UTPおよび種々のssRNAの存在下で、10μg/mlのQDE−1あり(偶数レーン)またはなし(奇数レーン)で実施し、ネイティブアガロースゲル電気泳動によって分析した。上のパネル、EtBr染色;下のパネル、オートラジオグラム。dsDNAマーカー(Mds)のサイズは右側に示される。レーン1〜2、φ6ウイルスsRNAセグメント(XbaIで切断したpLM659のT7転写物(Gottliebら、1992));レーン3〜4、COT−1 mRNAフラグメント(プライマー5’−GTAATACGACTCACTATAGGCCGTGGTGGT−3’(配列番号5)および5’−TTTTCTGAATTCTCTTGCCGCTTTTATTCT−3’(配列番号6)を使用してpOY18(Yardenら、1992)から誘導されたPCRフラグメントのT7転写物);レーン5〜6、VMA−2 mRNA(BamHIで切断したpRB30(Bowmanら、1988)のT7転写物);レーン7〜8、VMA−1 mRNA(NotIで切断したpRB34(Bowmanら、1988)のT7転写物);レーン9〜10、VMA−1アンチセンスRNA(EcoRVで切断したpRB34のT3転写物);レーン11〜12、PEP−4 mRNA(Asp718で切断されたpep4cDNAプラスミドのT3転写物);レーン13〜14、PEP−4アンチセンスRNA(BamHIで切断されたpep4cDNAのT7転写物);レーン15〜16、CCG−2遺伝子のアンチセンスRNA(Asp718で切断されたpLWdK1(Bell−Pedersenら、1992)のT3転写物)。COT−1、VMA−1、VMA−2、PEP−4およびCCG−2はN.crassaに特異的な遺伝子であり、関連するプラスミドはFGSC(Kansas City、USA)から得た。(B)(A)と同様にであるが[γ−32P]GTPの存在下で実施したQDE−1反応を、16%の変性PAGAによって分離した。レーン1、φ6 s+RNA;レーン2、COT−1 mRNAフラグメント;レーン3、VMA−2 mRNA;レーン4、VMA−1 mRNA;レーン5、VMA−1アンチセンスRNA;レーン6、PEP−4 mRNA;レーン7、PEP−4アンチセンスRNA;レーン8、CCG−2アンチセンスRNA;レーン9、luc RNA。ssRNAマーカーのサイズは右側に示される。
【図7】QDE−1が長いRNA産物の合成を好ましくはテンプレートの3’末端ヌクレオチドで開始することを実証する図である。(A)QDE−1開始部位を決定するために実施されるアッセイのためのフローチャート。RdRP反応を、20μg/mlのQDE−1、20μg/mlのφ6Polまたは同体積のM−200緩衝液のいずれかの存在下で、標識したヌクレオチドなしで、5’Δmテンプレート(90μg/ml;図3Cもまた参照のこと)を使用して実施した。G−50精製した反応産物を、40%ホルムアミド中で1分間煮沸することによって変性させ、20%ホルムアミドで平衡化したS−400スピンカラム(Amersham Biosciences)に直ぐに通過させてsRNAを除去した。長いRNAを含むフロースルー画分を、5’Δmのアンチセンスコピーに特異的な標識したプライマーとハイブリダイズさせた。プライマー伸長を記載されるように(MakeyevおよびBamford、2000)AMV−RTを用いて実施し、伸長産物を変性条件下で7% PAGEによって分離した。(B)(A)由来のPAGE分離した産物の放射能プロフィールを、ホスホイメージングを使用してプロットした。上のグラフは、QDE−1(黒の線)およびM−200緩衝液(灰色の線)についてのこのようなプロフィールを示す;中央のグラフは、φ6Pol反応産物についてのものである;下のグラフ(T7 RNAP)は、その5’末端が5’Δmの3’末端に相補的であるsR5 RNAに対して実施されたプライマー伸長を示す。テンプレート3’末端配列に対応する位置が各パネル上に示される。このデータは、QDE−1がRNA合成を開始するために3’末端のテンプレートヌクレオチドを好むが、他の開始位置はあまり頻繁に使用されない可能性があることを示す。予測されるように、φ6PolおよびT7 RNAポリメラーゼは、規定された位置(φ6Polの場合、最も3’側のヌクレオチド;MakeyevおよびBamford、2000もまた参照のこと)でRNA合成を正確に開始する。(C)(A)と同様に実施したRdRP反応の小さいアリコートを、[α−32P]の存在下でインキュベートし、ホルムアルデヒド含有アガロースゲル電気泳動によって分析した。テンプレート長のみ(1×;新たに開始された)の産物および2倍テンプレート長(2×;「バックプライミング」によって産生された)の産物がφ6Polの場合に出現するが、一方でこれら2つの産物に加えて、sRNAがQDE−1によって産生される。(B)中のピークは1×産物に対応する。
【図8】sRNAのサイズ分布に対するスペルミジンの影響を示す図である。QDE−1を、1mM スペルミジンの非存在下(灰色の線)または存在下(黒の線)で、luc RNAテンプレートおよび[γ−32P]GTPを含む混合物中で30℃で1時間インキュベートした。反応産物を変性条件下で16% PAGEによって分離し、そのsRNAプロフィールをホスホイメージャーを使用して決定した。スペルミジンが、sRNA合成の全体的な効率に対する影響を実質的に有さずに、sRNAのサイズ分布をより短い産物のほうにシフトさせることに留意のこと。ポリアミンはRNAの空間的構造を安定化させることが知られており(例えば、HannaおよびSzostak、1994;Quigleyら、1978)、このことは、QDE−1がRNAテンプレートの露出した一本鎖セグメントを選択的に認識してそれらをsRNAへとコピーするが、その一方でスペルミジンの添加がこれらのエレメントの有効な長さを減少させることを示唆する。
【図9】sRNAが全テンプレート長に沿って合成されることを実証する図である。(A)sRNAをluc mRNAに対してQDE−1を用いて合成し、アガロースゲルで精製して、固定化した標的RNAを探索するために使用した。(B)図は、ルシフェラーゼ特異的な標的RNAを示す:luc、lucΔl(EcoRIで切断したpTZluc(−ストップ)のT7転写物;Makeyevら、1996))、lucΔ2(EcoRVで切断したpTZluc(−ストップ)のT7転写物)、lucΔ3(XhoIで切断したpEM54のT7転写物)およびa−luc(BamHIで切断したpGEMlucのT7転写物;Promega)。(C)(B)と同様の標的RNAおよびφ6特異的sR5 RNA(EcoRVで切断したpLM659のT7転写物(Gottliebら、1992))を、ホルムアルデヒド含有1.5%アガロースゲル電気泳動によって分離し、メンブレンに移して、luc特異的sRNAを用いて探索した。上のパネル、EtdBr染色したゲル;下のパネル、ハイブリダイゼーション後のメンブレンのオートラジオグラフ。
【図10】dsRNAテンプレートおよびプライムしたssRNAテンプレートを用いた反応を示す図である。(A)200μg/mlのφ6ゲノムdsRNA(セグメントL、MおよびS)または100μg/mlのLAウイルス様粒子ゲノムdsRNAを含むRdRP混合物を、40μg/mlのQDE−1、QDE−1ΔNまたはφ6Polと共にインキュベートし、1%のネイティブアガロースゲル電気泳動によって分析した。実験手順のもとに記載されるように、40μg/mlのQDE−1もしくはφ6Polまたは500単位/mlのAMV−RTを用いて実施したプライマー伸長の(B)模式的結果および(C)実際の結果。矢印は、136ntの伸長産物の位置を示す。
【図11】本発明中に示されるデータから現れる、転写後遺伝子サイレンシングについての統合したモデルを示す図である。異常なssRNA(abRNA)は、細胞性RdRPによってdsRNAトリガーへと転換される。全長dsRNAフラグメントまたは短い(9〜21bp)dsRNAフラグメントのいずれかが産生される。長いdsRNAはDicer様ヌクレアーゼによってsiRNAへと切断されるが、その一方で短いdsRNAエレメントはRISC様ヌクレアーゼによって認識される。後者の事象は、QDE−2(AGO1/RDE−1)によって媒介されるsRNAの同族mRNAへの転移によって進行され得る。abRNAおよびmRNA分解産物のいくつかは、siRNAへと切られる二次的なdsRNAトリガーの合成に有効なテンプレートとしてRdRPによって使用され得る。その起源に関わらず、小さいssRNAはRISCにより触媒される切断のためのガイドとして作用する。このプライマー非依存的なシナリオは、C.elegansにおけるRRF−1により媒介される二次的なdsRNAトリガーの合成についての代替的な説明を提供する(Sijenら、2001)。
【図12】化学的に改変されたNTPの存在下でのRNA合成を示す図である。(A)ビオチン−11−CTP(NEN)を含む反応混合物を30℃で1時間インキュベートした。RNA産物を、水で平衡化したゲル濾過スピンカラム(AutoSeq G−50、Amersham)を通過させることによって取り込まれていないヌクレオチドから精製した。フロースルー画分由来のアリコートを、3M NaCl、10mM NaOHで希釈して、予め湿らせたHybond N+メンブレン(Amersham)上にスポットした。このメンブレンを2×SSC、2.5% BSA、0.5% Tween 20中で37℃で1時間ブロッキングし、次いで1:1000希釈のHRPコンジュゲート化ストレプトアビジン(NEN)と共に28℃で30分間インキュベートした。このメンブレンを2×SSC、0.5% Tween 20で4回洗浄し(各洗浄は10分間)、メンブレンに結合したHRPをELC(Pierce)を製造業者の指示に従って使用して検出した。P、25μg/mlのQDE−1ΔNポリメラーゼを含むがRNAを含まない反応;R、90μg/mlのluc RNAを含むがポリメラーゼを含まない反応;PR1およびPR2、25μg/mlのQDE−1ΔNおよび90μg/mlのluc RNAの両方を含む反応。上の列は5μlの元の重合反応に対応し、下の列は0.5μlの元の重合反応に対応する。反応は、各1mMのATPおよびGTP、0.2mMのUTPならびに0.15mM(PR2)または0.2mM(P、R、PR1)のいずれかのビオチン−11−CTPを含んだ。PR2反応はさらに、0.05mMの未改変CTPを含んだ。(B)ビオチン−11−CTPの代わりにクマリン−5−CTP標識(NEN)を使用したこと以外、反応を(A)と同様に実施した。ゲル濾過工程後、RNA産物へのクマリン標識の取り込みを、402nmの励起波長を用いた蛍光測定法を使用してスコアリングした。以下の発光スペクトルが示されている:P、25μg/mlのQDE−1ΔNポリメラーゼを含むがRNAを含まない反応;R、90μg/mlのluc RNAを含むがポリメラーゼを含まない反応;PR1、PR2およびPR3、25μg/mlのΔNおよび90μg/mlのluc RNAの両方を含む反応。反応は、各1mMのATPおよびGTP、0.2mMのUTPならびに0.025mMのクマリン−5−CTPを含んだ。未改変のCTPを0.2mMになるまで反応P、RおよびPR3に添加し、そして反応PR2に0.05mMになるまで添加した。
【図13】異なるDNAテンプレートの存在下でのRNA合成を示す図である。(A)および(B)はそれぞれ、非変性条件下での反応産物のアガロースゲル分離のEtBr染色およびオートラジオグラムである。反応を以下のテンプレートを用いてプログラムした:luc、ルシフェラーゼmRNA;M13、バクテリオファージM13の環状ssDNAゲノム;GEM、HincIIで線状化したpGEM3Zf(+)プラスミド;GEM−b、HincIIで線状化し、2分間煮沸することによって変性させ、次に氷上で冷却したpGEM3Zf(+)プラスミド。示されたところでΔNを反応混合物に添加して、25μg/mlの最終濃度にした。MはdsRNAマーカーのレーンである。(C)アガロースゲル電気泳動によって分析した、熱変性したQDE−1ΔN反応産物のオートラジオグラム。Mssは、1798nt長および20nt長の標識されたssRNAを含むマーカーのレーンである。
【図14】T7 RNAポリメラーゼ指向性の転写およびΔN指向性の合成を同じ反応容器中で同時に実施した系を示す図である。反応を、50ng/μlのXhoIで線状化したプラスミドpTZluc(−ストップ)(Makeyevら、1996)を用いてプログラムし、標準的なQDE−1反応について実施例2で記載した条件下で1時間実施した(インキュベーション温度が35℃であるという差異がある)。産物をアガロースゲル電気泳動によって分析した。パネルの上部に示されるように、0.25μgのΔNまたは/および40単位のT7 RNAポリメラーゼ(Promega)を、反応混合物10μl当たりに添加した。MはdsDNAマーカーのレーンである。左のパネル、エチジウムブロマイド染色;右のパネル、対応するオートラジオグラム。
【図15】QDE−1反応産物を使用してC.elegansにおける遺伝子特異的なサイレンシングを誘導したRNAi実験を示す図である。QDE−1反応産物は、C.elegansにおいてRNAiを誘導し得る。QDE−1のGFP特異的dsRNA産物(a〜b)またはGFPssRNA(c〜d)のいずれかによって処理した雌雄同体のF1子孫の代表的な画像が示されている。(a)および(c)中の写真は、Hoffmanモジュレーションコントラストを使用して撮影した;(b)および(d)は対応する蛍光画像である。(a〜b)中の3匹の虫のうち2匹が検出可能なGFP蛍光を示さないことに留意のこと。類似の結果がΔNポリメラーゼ反応産物を使用して得られた(結果省略)。
【配列表】



















【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸産物を産生するための方法であって、ポリメラーゼタンパク質が前記酵素の機能に充分な条件下で核酸テンプレートと接触することを含み、前記ポリメラーゼタンパク質は、
(a)全テンプレート長中に分散した前記テンプレートの短い相補的RNAコピー、および任意選択で
(b)テンプレート長の相補的RNAコピー
を産生し得るRNAポリメラーゼである方法。
【請求項2】
前記核酸テンプレートがDNAまたはRNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記短いRNAコピーとテンプレート長のRNAコピーとの比率が反応条件によって調整され得る、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記短いRNAコピーの長さが反応条件によって調整され得る、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記短いRNAコピーまたはテンプレート長のRNAコピーが、前記テンプレートにアニールされるかまたは前記テンプレートから変性される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記核酸テンプレートが線状または環状である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリメラーゼが真核細胞起源である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリメラーゼが、真菌、緑色植物門、後生動物の界、または動菌類の群から選択される生物起源である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリメラーゼが、Neurospora属、Arabidopsis属、Caenorhabditis属およびDictyostelium属のサブセット、好ましくは生物Neurospora crassa、Arabidopsis thaliana、Caenorhabditis elegansおよびDictyostelium discoideumから選択される生物起源である、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリメラーゼがNeurospora crassaのQDE−1タンパク質またはQDE−1の変更された誘導体もしくは遺伝学的に改変された誘導体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記RNAポリメラーゼが、
(a)配列番号1または配列番号3の核酸配列を含む核酸配列;
(b)配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸配列;
(c)遺伝子コードの縮重に起因して(a)または(b)の核酸配列とは異なる核酸配列;
(d)ストリンジェントな条件下で(a)、(b)および/または(c)の核酸配列にハイブリダイズする核酸配列;および
(e)配列番号4のアミノ酸709から1402を含むポリペプチド、または配列番号2のアミノ酸2から1402を含む配列までの、配列番号4のアミノ酸709から1402を含むポリペプチドよりも長い任意の配列をコードする核酸配列;および
(f)配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも50%の同一性を示すアミノ酸配列をコードする核酸配列
の群から選択される核酸配列によってコードされる、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
単離されたポリペプチドであって、
(i)前記ポリペプチドが充分なRNAポリメラーゼ活性を有する;
(ii)前記ポリペプチドが増強された可溶性を有し、配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは配列番号1を含む核酸配列によってコードされるポリペプチドの場合よりも、少なくとも3倍高い収率の活性ポリメラーゼを生じる;および
(iii)前記ポリペプチドが、
(a)配列番号3の核酸配列を含む核酸配列;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸配列;
(c)遺伝子コードの縮重に起因して(a)または(b)の核酸配列とは異なる核酸配列;
(d)ストリンジェントな条件下で(a)、(b)および/または(c)の核酸配列にハイブリダイズする核酸配列;
(e)配列番号4のアミノ酸709から1402を含むポリペプチド、または配列番号2のアミノ酸2から1402を含む配列までの、配列番号4のアミノ酸709から1402を含むポリペプチドよりも長い任意の配列をコードする核酸配列;および
(f)配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも50%の同一性を示すアミノ酸配列をコードする核酸配列
の群から選択される核酸配列によってコードされる
ことを特徴とする、単離されたポリペプチド。
【請求項13】
配列番号2のアミノ酸配列の位置1011でアスパラギン酸を有する、請求項12に記載のポリペプチド。
【請求項14】
配列番号2のアミノ酸配列のアミノ酸1から1402または710から1402をコードする核酸配列によってコードされない、請求項12に記載のポリペプチド。
【請求項15】
請求項12に記載のポリペプチドをコードする、単離された核酸配列。
【請求項16】
遺伝子発現に必要な調節配列と作動可能に連結された、請求項15に記載の核酸配列を含むベクター。
【請求項17】
請求項15に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項18】
ポリメラーゼタンパク質を産生するための方法であって、前記タンパク質の発現に適切な条件下で請求項17に記載の宿主細胞を培養する工程を含む方法。
【請求項19】
前記タンパク質が細胞または培養培地から回収され、かつ任意選択で精製される工程を含む、請求項18に記載の方法
【請求項20】
in vitroでRNAを産生するための方法であって、
(a)ssRNAテンプレートまたはssDNAテンプレートを提供する工程;
(b)前記ssRNAテンプレートまたはssDNAテンプレートを、RNA合成に充分な条件下で請求項1または12に記載のタンパク質またはポリペプチドと接触させる工程
を含む方法。
【請求項21】
前記ssRNAテンプレートが、DNA依存的RNAポリメラーゼ、好ましくはDNAバクテリオファージによりコードされるDNA依存的RNAポリメラーゼの群から選択されるポリメラーゼ、最も好ましくはバクテリオファージT7、バクテリオファージT3またはバクテリオファージSP6のDNA依存的RNAポリメラーゼを用いてDNAテンプレートを転写することによって提供される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
工程(a)および(b)が、同じ反応容器中で同時または連続的に実施される、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
新たに産生されたRNA種が反応混合物から回収される、請求項20乃至22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記新たに産生されたRNA鎖が、前記テンプレートとアニールされてdsRNAエレメントを形成するか、あるいは前記テンプレートから変性される、請求項20乃至23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
RNA合成がRNAテンプレートまたはDNAテンプレートに相補的な核酸プライマーの3’末端から開始されるか、あるいはRNA合成がプライマーなしで開始される、請求項20乃至24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
RNA合成のための前記反応混合物が、放射性同位体で任意選択で標識されたかまたは化学的に改変された少なくとも1種のヌクレオシド三リン酸、pH緩衝液、酢酸アンモニウム、PEG、Mg2+イオン、Mn2+イオンおよび/または非イオン性界面活性剤を含む、請求項20乃至25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
放射能によりまたは化学的に標識されたRNAプローブを産生するために特に使用され、かつ新たに産生された標識されたRNAを前記反応混合物の成分から精製する任意選択の工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記標識されたRNAが、前記任意選択の精製工程後にサザンブロット分析またはノザンブロット分析のためのプローブとして使用される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記標識されたRNAが、前記任意選択の精製工程後に蛍光in situハイブリダイゼーション分析のためのプローブとして使用される、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記標識されたRNAが、前記任意選択の精製工程後にマイクロアレイ分析のためのプローブとして使用される、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
核酸の二次構造、好ましくはRNAの二次構造を研究するための方法であって、
(a)核酸標的分子、好ましくはRNA標的分子を提供する工程;
(b)放射能によりまたは化学的に標識されたヌクレオチドをさらに含む混合物において、前記標的分子を、RNA合成に充分な条件下で請求項1または12に記載のタンパク質またはポリペプチドと接触させて、その結果前記標的RNAの一本鎖エレメントが本発明のポリメラーゼによってコピーされる工程;
(c)新たに産生された標識された核酸種を前記反応混合物から回収し、任意選択で精製する工程;
(d)前記標的分子の核酸フラグメントを含むマイクロアレイチップのためのプローブとして前記標識された核酸種を使用する工程;
(e)前記マイクロアレイ分析からのデータを解釈して、前記標的分子のどの部分が一本鎖であるかを推定する工程;および任意選択で
(f)前記標的分子の二次構造または三次構造についてのモデルを構築する工程
を含む方法。
【請求項32】
核酸−タンパク質相互作用、好ましくはRNA−タンパク質相互作用を研究するための方法であって、
(a)核酸標的および核酸結合タンパク質、好ましくはRNA標的およびRNA結合タンパク質を提供する工程;
(b)標的−タンパク質相互作用に充分な条件下で、前記標的と実験混合物中の前記タンパク質の溶液とを接触させ、かつ別個の容器中で前記標的を前記タンパク質を欠く対照溶液と接触させる工程;
(c)前記実験混合物および対照混合物を、RNA合成に充分な条件下で請求項1または請求項12に記載のタンパク質またはポリペプチドと接触させる工程;
(d)新たに産生された標識された核酸種を両方の反応混合物から回収し、任意選択で精製する工程;
(e)前記標的の核酸フラグメントを含む2つの同一なマイクロアレイチップのためのプローブとして2セットの前記標識された核酸種を使用する工程;
(f)前記2つのマイクロアレイ分析からのデータを解釈して、前記標的分子のどの部分がRNA合成のためにアクセス可能であるかを推定する工程;
(g)前記2つのデータセットを比較して、実験混合物中の標的と対照混合物中の標的との間の差異を決定する工程;および任意選択で
(h)前記2つのデータセット間の差異を、核酸−タンパク質相互作用についてのモデルとして解釈する工程
を含む方法。
【請求項33】
in vivoまたはin vitroでRNA干渉を誘導するためのRNAトリガー分子を産生するための方法であって、
(a)RNAテンプレートまたはDNAテンプレートを提供する工程;
(b)核酸テンプレート、請求項1または12に記載のタンパク質、ヌクレオシド三リン酸および任意選択でpH緩衝液、酢酸アンモニウム、PEG、Mg2+イオン、Mn2+イオンおよび/または非イオン性界面活性剤を含む混合物中で、RNA合成に充分な条件下で、前記RNAテンプレートまたはDNAテンプレートを請求項1または12に記載のタンパク質またはポリペプチドと接触させる工程;および
(c)RNA合成に充分な温度で前記反応混合物をインキュベートする工程
を含む方法。
【請求項34】
前記RNAテンプレートまたはDNAテンプレートが細胞またはウイルス起源である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記RNAテンプレートが、T7バクテリオファージ、T3バクテリオファージおよびSP6バクテリオファージの群から選択されるバクテリオファージから、好ましくは由来するDNA依存的RNAポリメラーゼを用いてDNAテンプレートを転写することによって提供される、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
工程(a)および(b)が、同じ反応容器中で同時または連続的に実施される、請求項33または35に記載の方法。
【請求項37】
請求項1または12に記載のタンパク質またはポリペプチドを含むキット。
【請求項38】
検出可能なレベルのRNA合成に必要な添加剤をさらに含む、請求項37に記載のキット。
【請求項39】
RNA合成に充分な濃度でヌクレオシド三リン酸を含む、請求項37または38に記載のキット。
【請求項40】
少なくとも1種のヌクレオシド三リン酸が、放射性同位体で標識されているかまたは化学的に改変されている、請求項37乃至39のいずれか1項に記載のキット。
【請求項41】
請求項1または12に記載のタンパク質またはポリペプチドによるRNA合成のためのテンプレートとして働く特徴付けられた能力を有する標準的な核酸調製物をさらに含む、請求項37乃至40のいずれか1項に記載のキット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸産物を産生するための方法であって、単離されたポリメラーゼタンパク質が前記酵素の機能に充分な条件下で核酸テンプレートと接触することを含み、前記ポリメラーゼタンパク質は、
(a)全テンプレート長中に分散した前記テンプレートの短い相補的RNAコピー、および任意選択で
(b)テンプレート長の相補的RNAコピーを産生し得るRNAポリメラーゼである方法。
【請求項2】
前記核酸テンプレートがDNAまたはRNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記短いRNAコピーとテンプレート長のRNAコピーとの比率が反応条件によって調整され得る、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記短いRNAコピーの長さが反応条件によって調整され得る、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記短いRNAコピーまたはテンプレート長のRNAコピーが、前記テンプレートにアニールされるかまたは前記テンプレートから変性される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記核酸テンプレートが線状または環状である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリメラーゼが真核細胞起源である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリメラーゼが、真菌、緑色植物門、後生動物の界、または動菌類の群から選択される生物起源である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリメラーゼが、Neurospora属、Arabidopsis属、Caenorhabditis属およびDictyostelium属のサブセット、好ましくは生物Neurospora crassa、Arabidopsis thaliana、Caenorhabditis elegansおよびDictyostelium discoideumから選択される生物起源である、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリメラーゼがNeurospora crassaのQDE−1タンパク質またはQDE−1の変更された誘導体もしくは遺伝学的に改変された誘導体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記RNAポリメラーゼが、
(a)配列番号1または配列番号3の核酸配列を含む核酸配列;
(b)配列番号2または配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸配列;
(c)遺伝子コードの縮重に起因して(a)または(b)の核酸配列とは異なる核酸配列;
(d)ストリンジェントな条件下で(a)、(b)および/または(c)の核酸配列にハイブリダイズする核酸配列;および
(e)配列番号2のアミノ酸709から1402を含むポリペプチド、または配列番号2のアミノ酸2から1402を含む配列までの、配列番号2のアミノ酸709から1402を含むポリペプチドよりも長い任意の配列をコードする核酸配列;および
(f)配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも50%の同一性を示すアミノ酸配列をコードする核酸配列
の群から選択される核酸配列によってコードされる、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
(a)ssRNAテンプレートまたはssDNAテンプレートを提供する工程;
(b)前記ssRNAテンプレートまたはssDNAテンプレートをin vitroで、RNA合成に充分な条件下でポリメラーゼと接触させる工程
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ssRNAテンプレートが、DNA依存的RNAポリメラーゼ、好ましくはDNAバクテリオファージによりコードされるDNA依存的RNAポリメラーゼの群から選択されるポリメラーゼ、最も好ましくはバクテリオファージT7、バクテリオファージT3またはバクテリオファージSP6のDNA依存的RNAポリメラーゼを用いてDNAテンプレートを転写することによって提供される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記反応が同じ反応容器中で同時または連続的に実施される、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
新たに産生されたRNA種が反応混合物から回収される、請求項12乃至14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記新たに産生されたRNA鎖が、前記テンプレートとアニールされてdsRNAエレメントを形成するか、あるいは前記テンプレートから変性される、請求項12乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
RNA合成がRNAテンプレートまたはDNAテンプレートに相補的な核酸プライマーの3’末端から開始されるか、あるいはRNA合成がプライマーなしで開始される、請求項12乃至16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
RNA合成のための前記反応混合物が、放射性同位体で任意選択で標識されたかまたは化学的に改変された少なくとも1種のヌクレオシド三リン酸、pH緩衝液、酢酸アンモニウム、PEG、Mg2+イオン、Mn2+イオンおよび/または非イオン性界面活性剤を含む、請求項12乃至17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
放射能によりまたは化学的に標識されたRNAプローブを産生するために特に使用され、かつ新たに産生された標識されたRNAを前記反応混合物の成分から精製する任意選択の工程を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記標識されたRNAが、前記任意選択の精製工程後にサザンブロット分析またはノザンブロット分析のためのプローブとして使用される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記標識されたRNAが、前記任意選択の精製工程後に蛍光in situハイブリダイゼーション分析のためのプローブとして使用される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記標識されたRNAが、前記任意選択の精製工程後にマイクロアレイ分析のためのプローブとして使用される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
単離されたポリペプチドであって、
(i)前記ポリペプチドが充分なRNAポリメラーゼ活性を有し、かつ核酸テンプレートと接触させた場合に、前記テンプレートの短い相補的なRNAコピーを産生し得、前記RNAコピーは、全テンプレート長中に分散し、任意選択で、テンプレート長の相補的RNAコピーを産生し得る;
(ii)前記ポリペプチドが増強された可溶性を有し、配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドまたは配列番号1を含む核酸配列によってコードされるポリペプチドの場合よりも、少なくとも3倍高い収率の活性ポリメラーゼを生じる;および
(iii)前記ポリペプチドが、
(a)配列番号3の核酸配列を含む核酸配列;
(b)配列番号4のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸配列;
(c)遺伝子コードの縮重に起因して(a)または(b)の核酸配列とは異なる核酸配列;
(d)ストリンジェントな条件下で(a)、(b)および/または(c)の核酸配列にハイブリダイズする核酸配列;
(e)配列番号2のアミノ酸709から1402を含むポリペプチド、または配列番号2のアミノ酸2から1402を含む配列までの、配列番号2のアミノ酸709から1402を含むポリペプチドよりも長い任意の配列をコードする核酸配列;および
(f)配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも50%の同一性を示すアミノ酸配列をコードする核酸配列
の群から選択される核酸配列によってコードされる
ことを特徴とする単離されたポリペプチド。
【請求項24】
請求項23に記載のポリペプチドをコードする、単離された核酸配列。
【請求項25】
遺伝子発現に必要な調節配列と作動可能に連結された、請求項24に記載の核酸配列を含むベクター。
【請求項26】
請求項25に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項27】
ポリメラーゼタンパク質を産生するための方法であって、前記タンパク質の発現に適切な条件下で請求項26に記載の宿主細胞を培養する工程を含む方法。
【請求項28】
前記タンパク質が細胞または培養培地から回収され、かつ任意選択で精製される工程を含む、請求項27に記載の方法
【請求項29】
核酸の二次構造、好ましくはRNAの二次構造を研究するための方法であって、
(a)核酸標的分子、好ましくはRNA標的分子を提供する工程;
(b)放射能によりまたは化学的に標識されたヌクレオチドをさらに含む混合物において、前記標的分子を、RNA合成に充分な条件下で、テンプレートとしての前記核酸標的の短い相補的なRNAコピーであって、テンプレート長のssRNA領域中に分散しているRNAコピー、任意選択で、テンプレート長の相補的RNAコピーを産生し得る単離されたRNAポリメラーゼと接触させて、その結果前記標的RNAの一本鎖エレメントが前記ポリメラーゼによってコピーされる工程;
(c)新たに産生された標識された核酸種を反応混合物から回収し、任意選択で精製する工程;
(d)前記標的分子の核酸フラグメントを含むマイクロアレイチップのためのプローブとして前記標識された核酸種を使用する工程;
(e)前記マイクロアレイ分析からのデータを解釈して、前記標的分子のどの部分が一本鎖であるかを推定する工程;および任意選択で
(f)前記標的分子の二次構造または三次構造についてのモデルを構築する工程
を含む方法。
【請求項30】
核酸−タンパク質相互作用、好ましくはRNA−タンパク質相互作用を研究するための方法であって、
(a)核酸標的および核酸結合タンパク質、好ましくはRNA標的およびRNA結合タンパク質を提供する工程;
(b)標的−タンパク質相互作用に充分な条件下で、前記標的と実験混合物中の前記タンパク質の溶液とを接触させ、かつ別個の容器中で前記標的を前記タンパク質を欠く対照溶液と接触させる工程;
(c)前記実験混合物および対照混合物を、RNA合成に充分な条件下で、テンプレートとしての前記核酸標的の短い相補的なRNAコピーであって、タンパク質によって覆われていないテンプレート長中に分散しているRNAコピー、任意選択で、テンプレート長の相補的RNAコピーを産生し得る単離されたRNAポリメラーゼと接触させる工程;
(d)新たに産生された標識された核酸種を両方の反応混合物から回収し、任意選択で精製する工程;
(e)前記標的の核酸フラグメントを含む2つの同一なマイクロアレイチップのためのプローブとして2セットの前記標識された核酸種を使用する工程;
(f)前記2つのマイクロアレイ分析からのデータを解釈して、前記標的分子のどの部分がRNA合成のためにアクセス可能であるかを推定する工程;
(g)前記2つのデータセットを比較して、実験混合物中の標的と対照混合物中の標的との間の差異を決定する工程;および任意選択で
(h)前記2つのデータセット間の差異を、核酸−タンパク質相互作用についてのモデルとして解釈する工程
を含む方法。
【請求項31】
in vivoまたはin vitroでRNA干渉を誘導するためのRNAトリガー分子を産生するための方法であって、
(a)RNAテンプレートまたはDNAテンプレートを提供する工程;
(b)核酸テンプレート、RNAポリメラーゼ、ヌクレオシド三リン酸および任意選択でpH緩衝液、酢酸アンモニウム、PEG、Mg2+イオン、Mn2+イオンおよび/または非イオン性界面活性剤を含む混合物中で、RNA合成に充分な条件下で、前記RNAテンプレートまたはDNAテンプレートを、前記テンプレートの短い相補的なRNAコピーであって、全テンプレート長中に分散しているRNAコピー、任意選択で、テンプレート長の相補的RNAコピーを産生し得る前記単離されたRNAポリメラーゼと接触させる工程;および
(c)RNA合成に充分な温度で前記反応混合物をインキュベートする工程、
を含む、方法。
【請求項32】
前記RNAテンプレートまたはDNAテンプレートが細胞またはウイルス起源である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記RNAテンプレートが、T7バクテリオファージ、T3バクテリオファージおよびSP6バクテリオファージの群から選択されるバクテリオファージから、好ましくは由来するDNA依存的RNAポリメラーゼを用いてDNAテンプレートを転写することによって提供される、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
工程(a)および(b)が、同じ反応容器中で同時または連続的に実施される、請求項31または33に記載の方法。
【請求項35】
請求項23に記載のポリペプチドを含むキット。
【請求項36】
検出可能なレベルのRNA合成に必要な添加剤をさらに含む、請求項35に記載のキット。
【請求項37】
RNA合成に充分な濃度でヌクレオシド三リン酸を含む、請求項35または36に記載のキット。
【請求項38】
少なくとも1種のヌクレオシド三リン酸が、放射性同位体で標識されているかまたは化学的に改変されている、請求項35乃至37のいずれか1項に記載のキット。
【請求項39】
請求項23に記載のポリペプチドによるRNA合成のためのテンプレートとして働く特徴付けられた能力を有する標準的な核酸調製物をさらに含む、請求項35乃至38のいずれか1項に記載のキット。
【請求項40】
核酸の二次構造を研究するため、核酸−タンパク質相互作用を研究するため、またはRNAトリガー分子を産生するための、請求項1に記載の方法の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2006−503562(P2006−503562A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544352(P2004−544352)
【出願日】平成15年10月17日(2003.10.17)
【国際出願番号】PCT/FI2003/000776
【国際公開番号】WO2004/035784
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(502225383)
【Fターム(参考)】