説明

可燃性液体燃料

いくつかの実施形態において高爆発性構成成分を包含する可燃性液体燃料が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いくつかの実施形態において、燃料の分野、より具体的には、但し限定するものではないが、いくつかの実施形態において往復動内燃エンジンにおいて燃焼可能な燃料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車は、現在の産業社会から切り離すことのできない部分であり、人及び物資の安価で、簡単で、効率的な輸送を提供する。このような社会は、産業、商業及び住宅の所在地を効率的に集中及び分布させることができる自動車、トラック及びバスなしでは、機能することが非常に困難であると考えられる。
【0003】
この自動車の遍在は、往復動内燃エンジン、主に炭化水素化石燃料を動力とするオットーサイクル及びディーゼルサイクルエンジンの存在によるところが大きい。
【0004】
化石燃料の価格の上昇にともない、追加の燃料源を見つけることが必要性である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のいくつかの実施形態は、いくつかの態様において、既知の可燃性液体燃料に対する利点を有する。本発明のいくつかの実施形態は、高爆発性材料を包含する可燃性液体燃料に関する。
【0006】
本発明の態様は、以下の明細書及び添付の請求項に記載されている。
【0007】
特に定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術及び科学用語は、本発明が関係する当業者に共通して理解されるものと同じ意味を有する。矛盾が生じる場合には、定義を含めて本明細書に従うものとする。
【0008】
本明細書で使用するとき、文脈がそうでないことを明らかに示さない限り、「1つの」は「少なくとも1つの」又は「1つ又はそれ以上の」を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、高爆発性材料を包含する可燃性液体燃料に関する。
【0010】
本発明の教示の原理、使用及び実施は、添付の記載を参照することでよりよく理解されるであろう。本明細書に示された記載及び数字を精査することで、当業者は過度の努力又は実験を行うことなく本発明の教示を実施することができる。
【0011】
本発明の実施形態は、可燃性液体燃料であって、
a) 高爆発性材料と、
b) 流体キャリアと、
を含み、前記燃料が約20重量%以上の高爆発性材料を含み、
前記燃料が約30重量%以上の燃料キャリアを含む、可燃性液体燃料に関する。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記高爆発性材料は、溶剤として機能する流体キャリアに溶解し、その結果前記液体が大気圧において273Kの温度で流体であり、前記流体キャリアは約50%以上の芳香族構成成分を包含する。
【0013】
いくつかの実施形態において、高爆発性材料は、実質的に流体キャリアの連続相において粒子状物質の形態をしている。そのような実施形態のいくつかにおいて、高爆発性材料は固体粒子状物質の形態であり、例えば液体燃料は実質的にスラリー、懸濁液又はコロイドである。いくつかの実施形態においては、高爆発性材料は液体粒子状物質の形態であり、液体燃料は実質的に乳濁液である。
【0014】
高爆発性材料は、燃料としての使用が知られていない。往復動内燃エンジンの燃焼室のような筐体の中に入れると、高爆発性材料は爆発し、エンジンを破壊する傾向がある。
【0015】
驚くべきことに、20重量%以上の高爆発性材料と50重量%以上の流体キャリアとを含む液体燃料を、可燃性液体燃料として往復動内燃エンジンに使用できることが見出された。
【0016】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、流体キャリアは、高爆発性材料を保持して燃料が実質的に均質の流体となり、燃料を燃焼室に単純に輸送することを可能にするだけでなく、燃料の燃焼特性を往復動内燃エンジンへの使用が既知の燃料の燃焼特性に類似したものに変更すると考えられる。
【0017】
いくつかの実施形態において、可燃性液体燃料は、エンジンの燃焼室の内側で爆発する代わりに爆燃する。
【0018】
流体キャリア
【0019】
本発明の可燃性液体燃料の実施に使用される流体キャリアは、高爆発性材料を保持し、その結果前記燃料は大気圧において273Kの温度で、実質的に均質で流体である。
【0020】
一般に、流体キャリアは可燃性である。好適な流体キャリアとしては、油類、アルコール類、炭化水素類、例えばパラフィン、合成ポリアルファオレフィン類、燃料油、ケロセン、ディーゼル燃料、ガソリン、α−オレフィン類(例えば、1−ヘキセン)及びDOP(ビス(2−エチルヘキシルフタレート))のようなエステル系油類が挙げられる。
【0021】
いくつかの実施形態において、流体キャリアは高爆発性材料の溶剤であり、約50重量%以上の芳香族構成成分を包含する。いくつかの実施形態において、前記溶剤は約60重量%以上、約70重量%以上、約80重量%以上、約90重量%以上、及びさらには約95重量%以上の芳香族構成成分を包含する。いかなる好適な芳香族材料も、本発明の可燃性液体燃料の溶剤の一構成成分として使用されてもよい。好適な芳香族構成成分としては、これらに限定されるものではないが、ベンゼン、一置換(特にアルキル)置換ベンゼン類(例えば、トルエン、エチルベンゼン、クロロベンゼン)、二置換(特にアルキル)置換ベンゼン類(例えば、キシレン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン)、三置換(特にアルキル)置換ベンゼン(例えば、メシチレン、1,2,4−トリメチルベンゼン)、アニリン、ベンジルアルコール、ベンズアルデヒド及びこれらの混合物から成る群より選択される少なくとも1つの構成成分が挙げられる。いかなる理論にも束縛されるものではないが、このような実施形態のいくつかにおいて、溶剤は高爆発性材料を溶解して、その結果燃料が流体となり、燃料を燃焼室に単純に輸送することを可能にするだけでなく、当該溶液の燃焼特性を往復動内燃エンジンへの使用が知られる燃料の燃焼特性に類似したものに変更すると考えられる。
【0022】
高爆発性材料
【0023】
本発明の教示を実施するために使用される高爆発性材料は、任意の好適な高爆発性材料である。好適な高爆発性材料としては、これらに限定されるものではないが、TNT(トリニトロトルエン)、 RDX(シクロトリメチレントリニトロアミン)、TNT/RDX混合物、ニトログリセリン、HMX(シクロテトラメチレンテトラニトロアミン)、ヘキソゲン及びこれらの混合物からなる群より選択される高爆発性材料が挙げられる。
【0024】
いくつかの実施形態において、可燃性液体燃料は、燃料の約20重量%以上、約25重量%以上、及びさらには約30重量%以上の高爆発性材料を含む。
【0025】
高爆発性材料が固体粒子状物質である可燃性液体燃料の実施形態において、高爆発性材料はいかなる好適な粒径でも存在する。いくつかの実施形態において、当該粒径は約1000マイクロメートルのオーダー(例えば、平均粒径が約500〜2000マイクロメートル)である。いくつかの実施形態において、粒径は約100マイクロメートルのオーダー(例えば、平均粒径が約50〜5000マイクロメートル)である。いくつかの実施形態において、粒径は約10マイクロメートルのオーダー(例えば、平均粒径が約5〜50マイクロメートル)である。いくつかの実施形態において、粒径は約1マイクロメートル(例えば、平均粒径が約0.5〜5マイクロメートル)である。
【0026】
追加構成成分
【0027】
いくつかの実施形態において、可燃性液体燃料は、水(例えば、燃焼減速剤として)、粘度調節剤、乳化剤、懸濁剤、及び0℃以上で可燃性液体燃料の凝固を防止する「凍結防止」成分を包含する追加構成成分を含む。
【0028】
可燃性液体燃料の使用
【0029】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の可燃性液体燃料は、タービン駆動のための発熱に使用される。具体的には、いくつかの実施形態において、可燃性液体燃料は燃焼室(例えば炉又は同種のもの)で燃焼され、流体を加熱する。高温の流体はその後、発電のためのタービン駆動に使用される。いくつかの実施形態において、流体は発電の技術分野で既知であるように、閉鎖系に隔離される。例えば、いくつかの実施形態において、可燃性液体燃料は炉内で燃焼され、蒸気タービンを運転するために使用される熱を発生する。
【0030】
いくつかの実施形態において、往復動内燃エンジン、特に空気吸入エンジンの燃料としての、本明細書に記載の可燃性流体燃料の使用が提供される。
【0031】
いくつかの実施形態において、a)往復動内燃エンジンを提供することと、b)本発明に記載の可燃性液体燃料をエンジンの燃焼室に提供し、エンジンにトルク発生のための動力を与えることとを含む内燃エンジンの運転方法が提供される。いくつかの実施形態において、可燃性液体燃料は、燃焼室で空気と一緒に燃焼される。
【0032】
いくつかの実施形態において、往復動内燃エンジンはディーゼルサイクルエンジンである。
【0033】
いくつかの実施形態において、往復動内燃エンジンはオットーサイクルエンジンである。
【0034】
いくつかの実施形態において、エンジンは、炭化水素燃料(例えば、ディーゼル、ガソリン、燃料油)を燃焼するために構成されたエンジンであり、可燃性液体燃料は、タイミング及び点火サイクルの変更のような非実質的な変更が必要な場合はあるが、エンジンの燃焼室の実質的な変更なく燃焼される。このような実施形態は、本明細書に記載の可燃性液体燃料を当該技術分野で既知のようなエンジンと共に使用することを可能にする。
【実施例】
【0035】
ここで、以下の実施例を参照する。これは、上記の記載と共に本発明のいくつかの実施形態を非限定的な形で例示する。
【0036】
以下の実施例で見られるように、いくつかの実施形態において、燃焼中に、高爆発性材料及び燃料の溶剤が酸化されてCO、HO及びNが生成する。
【実施例1】
【0037】
TNT/トルエン
可燃性液体燃料の1つの実施形態は、35重量%のTNTを65%のトルエン中に含む。前記燃料は2ストロークディーゼルエンジンの燃料として通常の方法で使用される。酸素はエンジンの空気吸入口を通る空気と同様に、通常の方法で燃焼のため燃焼室に提供される。
【0038】
燃焼中:
(TNT)2C +10.5O → 14CO + 5HO + 3N
(トルエン) 2C + 18O →14CO+ 8H
【実施例2】
【0039】
TNT/ベンゼン
可燃性液体燃料の1つの実施形態は、30重量%のTNTを70%のベンゼン中に含み、実施例1と同様に使用される。
【0040】
燃焼中:
(TNT) 2C + 10.5O → 14CO + 5HO+ 3N
(ベンゼン) 2C + 15O → 12CO + 6H
【実施例3】
【0041】
TNT/ベンジルアルコール 可燃性液体燃料の1つの実施形態は、25重量%のTNTを75%のベンジルアルコール中に含み、実施例1と同様に使用される。
【0042】
燃焼中:
(TNT) 2C + 27O → 14CO + 5HO+ 3N
(ベンジルアルコール) 2CO + 17O → 14CO + 8H
【実施例4】
【0043】
ニトログリセリン/トルエン
可燃性液体燃料の1つの実施形態は、20重量%のニトログリセリンを80%のトルエン中に含み、実施例1と同様に使用される。
【0044】
燃焼中:
(ニトログリセリン) 2C → 6CO + 5HO+ 3N + 0.5O
(トルエン) 2 C + 18O* → 14CO + 8H
*ニトログリセリンからの過剰な酸素の一部はトルエンを酸化する。
【実施例5】
【0045】
RDX/DOP
可燃性液体燃料の1つの実施形態は、高爆発性材料(36重量%)として実質的に等モル量のRDX(1,3,5−トリニトロ−1,3,5−トリアザシクロヘキサン、C、MW=222、平均粒径約500ナノメートルの固体粉末として)及び流体キャリア(64重量%)としてDOP(ビス(2−エチルヘキシルフタレート、C2438、MW=391)を含む。
【0046】
燃焼中:
+ C2438 +34O → 27CO + 22HO+ 3N
【0047】
明快さのために別の実施形態の文脈に記載されている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態との組み合わせでも提供されてもよい。逆に、簡潔さのために単一の実施形態に記載されている本発明の様々な特徴は、別々に又はいかなる好適な副結合でも、又は本発明のいかなる他の記載された実施形態に適するようにも、提供されてもよい。様々な実施形態の文脈に記載されている特定の特徴は、当該実施形態がそれらの要素なしで実行できない場合を除き、それらの実施形態の必須の特徴とみなされるべきではない。
【0048】
本発明はその特定の実施形態と合わせて記載されているが、多数の代替方法、変更及び変動が当業者に明らかであろうことは明白である。したがって、添付の請求項の範囲内に該当するそのような代替方法、変更及び変動をすべて包含することが意図される。
【0049】
本明細書におけるいかなる文献も、その引用又は識別を、そのような文献が本発明の先行技術として利用できることの許可と解釈されるべきではない。
【0050】
本明細書で使用される節の見出しは、本明細書の理解を容易にするためのものであり、必ずしも限定するものと解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性液体燃料であって、
a)高爆発性材料と、
b)流体キャリアと、
を含み、前記燃料が約20重量%以上の前記高爆発性材料を含み、
前記燃料が約30重量%以上の流体キャリアを含む、可燃性液体燃料。
【請求項2】
前記流体キャリアが約50%以上の芳香族構成成分を包含し、及び前記高爆発性材料が前記流体キャリアに実質的に溶解し、その結果前記燃料が大気圧において273Kの温度で流体である、請求項1に記載の可燃性液体材料。
【請求項3】
前記高爆発性材料が、連続相中、実質的には前記流体キャリア中で、粒子状物質の形態である、請求項1に記載の可燃性液体材料。
【請求項4】
可燃性液体燃料であって、実質的には本明細書に記載されている可燃性液体燃料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項の可燃性液体燃料の往復動内燃エンジンの燃料としての使用。
【請求項6】
前記エンジンが空気吸入エンジンである、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
タービンを駆動する方法であって、
a)請求項1〜6のいずれか一項に記載の可燃性液体燃料を前記エンジンの燃焼室内で燃焼して熱を発生することと、
b)前記発生した熱で流体を加熱することと、
c)前記加熱された流体をタービン駆動に使用することと、
を含む、タービンを駆動する方法。
【請求項8】
内燃エンジンを運転する方法であって、
a)往復動内燃エンジンを提供することと、
b)請求項1〜7のいずれか一項に記載の可燃性液体燃料を前記エンジンの燃焼室内で燃焼し、トルク発生のために前記エンジンに動力を与えることと、
を含む、内燃エンジンを運転する方法。
【請求項9】
前記可燃性液体燃料が前記燃焼室内で空気と一緒に燃焼される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記エンジンが炭化水素燃料を燃焼するために構成されており、及び
前記可燃性液体燃料が前記エンジンの燃焼室の実質的な変更なしで燃焼される、
請求項8及び9のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−532242(P2012−532242A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519118(P2012−519118)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際出願番号】PCT/IL2010/000529
【国際公開番号】WO2011/001436
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(510176569)
【出願人】(512003571)
【出願人】(512003582)
【出願人】(512003593)
【Fターム(参考)】