説明

可視光応答型光触媒及びその製造方法並びにそれを用いた光触媒体

【課題】可視光の照射によって励起し、高い光触媒活性を安定して発現する光触媒を提供する。
【解決手段】紡錘状粒子、棒状粒子、針状粒子などの異方性形状を有する光触媒粒子の表面にハロゲン化白金化合物を担持させる。光触媒粒子としては、1.5〜10の範囲の軸比を有する酸化チタンが好ましく、ハロゲン化白金化合物としては塩化白金化合物が好ましい。ハロゲン化白金化合物の担持量は、光触媒粒子に対して、Pt換算で0.01〜1重量%の範囲が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可視光の照射下で励起可能な所謂可視光応答型光触媒及びその製造方法に関する。さらには、この可視光応答型光触媒を基材に固定したり、あるいは成形したりした光触媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒はそのバンドギャップ以上のエネルギーを持つ波長の光を照射すると励起し、強い触媒活性が発現するものである。特に有機物やNOxなどの一部無機物の酸化・分解力が大きく、エネルギー源として低コストで、環境負荷の非常に小さい光を利用できることから、近年環境浄化や脱臭、防汚、殺菌などへの応用が進められている。また、光触媒が励起するとその表面が親水性になり水との接触角が低下することが見出され、この作用を利用して防曇、防汚などへの応用も進められている。
【0003】
光触媒としては、酸化物や硫化物などの金属化合物が一般的に用いられているが、高い光触媒活性を有する酸化チタンや酸化亜鉛などは、励起光の波長が400nm以下の紫外線領域にあるため、紫外線ランプなど特別な光源が必要であり、利用分野が制限されている。一方、酸化鉄など励起光の波長を可視光部に有するものは光触媒活性が小さく、利用分野が大きく制限されている。
【0004】
そこで、可視光の照射下で充分高い光触媒活性を有する光触媒があれば、紫外線ランプなどの特別な光源が必要なくなり、可視光を多く含む通常の蛍光灯や太陽光などを利用でき、応用分野が拡大するものと考えられる。さらに、紫外線領域の波長で励起可能な光触媒を可視光の照射下でも励起するように処理すれば、紫外線領域のほか、可視光領域の光も有効に使うことができ、光触媒活性をより高めることができると期待されている。このため、可視光の照射下で励起可能な可視光応答型光触媒についての研究が行われている。例えば、酸化チタンなど紫外光領域で光触媒活性が発現する金属酸化物に異種の金属イオンを固溶させたり、前記の金属酸化物の構成成分である金属と酸素との組成比を変えたり、あるいは前記の金属酸化物と酸化鉄など可視光領域で光触媒活性が発現する化合物とを複合させる方法が提案されている。特開2000-262906公報には、平均粒径2nm以下の白金などの金属微粒子をルチル型二酸化チタン微粒子表面に担持したものを開示している。
【0005】
【特許文献1】特開2000−262906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の可視光応答型光触媒では、可視光の照射下での励起が充分に起こり得ず、可視光での光触媒活性が低かったり、光触媒活性が不安定であったりするため、さらなる改良が求められている。しかも、前記の可視光応答型光触媒では、種々の処理により光触媒粒子本来の励起がかえって阻害されてしまい、光触媒粒子に励起光を照射しても、元来の光触媒活性が得られなくなって、処理によってかえって光触媒活性が低下してしまうなどの問題が生じている。このため、本発明は、可視光下で高い光触媒活性を安定して発現する光触媒を提供しようとするものである。また、本発明は、この光触媒を工業的、経済的に有利に製造する方法、並びにこの光触媒を活用しやすくするために、本発明の光触媒を基材に固定したり、成形したりした光触媒体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ハロゲン化白金化合物を、異方性形状を有する光触媒粒子の表面に担持させれば、可視光の照射下で励起が可能であり、ハロゲン化白金化合物を担持した球状粒子のものと比べても、安定して高い光触媒活性が得られることを見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0008】
本発明は可視光応答型光触媒であって、400〜800nmの波長を有する可視光の照射下で優れた光触媒活性を有しており、紫外線ランプなどの特殊な光源を必要としないため、一般家庭用途を中心に幅広い分野で光触媒作用を活用することができる。また、蛍光灯などの室内照明や太陽光でも、NOxや有機の環境汚染物質などを効果的に分解できるので、本発明の光触媒及びそれを用いた光触媒体は浄化材、脱臭材、防汚材、殺菌材、防曇材として好適なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、光触媒粒子が異方性形状を有し、その粒子表面にハロゲン化白金化合物を担持した可視光応答型光触媒である。本発明における可視光応答型光触媒とは、可視光、即ち400〜800nmの範囲の波長を有する光の照射により励起が可能であり、光触媒活性を発現する光触媒のことを言う。励起光の波長は、用いる光触媒粒子の種類によって異なり、450nm以下で励起するものもあれば、600nm以下、あるいは、800nm以下で励起する場合もある。励起の確認については、400〜800nmの波長の可視光を光触媒に照射した際の光触媒活性を測定して、少しでも光触媒活性があることを確認できた場合、励起したものとみなしている。光触媒活性の測定方法としては、有機物の分解活性や後述するNOxガスの除去活性、あるいは、水との接触角を測定しても良い。
【0010】
一個の一次粒子を最も安定な状態で平面上に静止させ、平面上への投影像を二つの平行線で挟み、その平行線の間隔が最小となるときの距離を粒子の幅または短軸径wといい、この2平行線に直角な方向の二つの平行線で粒子を挟むときの距離を粒子の長さまたは長軸径lといい、最大安定面に平行な面で挟むときの距離を粒子の高さhという(l>w>h)。立方体や球状の場合はl=w=hであり等方性形状というが、本発明で用いる光触媒粒子は等方性形状ではなく、長軸径lが短軸径wあるいは高さhよりも長いものであり、異方性形状を有しているものである。具体的には、一次粒子を電子顕微鏡で観察し、約1000個の粒子の長軸径の算術平均値、短軸径の算術平均値、必要に応じて高さの算術平均値を求め、その長軸径の算術平均値が短軸径の算術平均値あるいは高さの算術平均値より大きい粒子を異方性形状を有するものとする。一般的に紡錘状粒子、棒状粒子、針状粒子、板状粒子等と呼ばれるものであり、本発明では異方性形状の光触媒粒子を用いることで、その長軸径と同じ従来の球状粒子を光触媒粒子として用いたものより、比表面積が増えるため、ハロゲン化白金化合物を分散させて担持することができ、それによって、光触媒粒子とハロゲン化白金化合物との相互作用が強くなるため、可視光の照射下で強く励起すると推測される。光触媒粒子としては、比表面積が50〜500m/gの範囲にある、所謂超微粒子のものが好ましく、50〜300m/gの範囲がより好ましい。このような針状の超微粒子は、0.01〜0.5μmの範囲の平均長軸径と、0.001〜0.05μmの範囲の平均短軸径とを有しており、中でも軸比(平均長軸径/平均短軸径)が1.5以上の異方性形状の粒子(紡錘状粒子、棒状粒子、針状粒子と呼ばれるもの)が好ましく、1.5〜10の範囲がより好ましく、2〜7の範囲がさらに好ましい。軸比が1.5以上であれば、可視光下で所望の励起が生じ易く、1.5〜10の範囲であれば少なくとも所望の光触媒活性が得られ易い。尚、比表面積はBET法により測定したものである。
【0011】
光触媒粒子には公知の物質を用いることができ、特に励起光の波長が400nm以下の紫外線領域にあるものが好ましく、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステンなどの酸化物や、硫化亜鉛などの硫化物を用いることができる。その中でも、酸化チタンは光触媒活性が高いので好ましい。酸化チタンとしては、無水酸化チタン、含水酸化チタン、水和酸化チタン、水酸化チタン、チタン酸などと呼ばれるものを含み、アナターゼ型やルチル型など結晶形には特に制限は無く、不定形であっても良く、それらが混合したものであっても良い。また、光触媒粒子には、その励起に悪影響を与えない程度であれば、V、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ru、Rh、Pd、Ag、Auから選ばれる1種以上の異種元素または酸化物等の異種元素の化合物が、含まれていても良い。
【0012】
本発明の可視光応答型光触媒は、前記の光触媒粒子の表面に、ハロゲン化白金化合物を担持させたものである。担持させるハロゲン化白金化合物は微量であるため、その組成を特定することは難しいが、蛍光X線分析によってハロゲン元素と白金とが検出されるような化合物であり、本発明ではハロゲン化白金化合物と呼んでいる。このようなハロゲン化白金化合物としては、本出願人の特願2001-39177号に記載しているものを用いることができ、無機系ハロゲン化白金化合物が好ましく、具体的には、PtCl2、PtCl4、PtCl4・2H2O、H2 [Pt(OH)2Cl4]・nH2O等の白金塩化物や、PtBr2、PtBr4等の白金臭化物、PtI2、PtI4等の白金ヨウ化物、PtF4等の白金フッ化物などの白金ハロゲン化物またはその水和物、塩化白金酸、塩化白金酸塩、ブロモ白金錯塩、ヨウ化白金酸塩等のハロゲン化白金酸、ハロゲン化白金酸塩またはハロゲン化白金錯塩、それらの水和物が挙げられる。あるいは、ハロゲン化白金化合物と光触媒粒子とが反応し、M[PtXn](M:光触媒粒子、X:ハロゲン、n=4または6)で表されるようなハロゲン化白金錯体を形成して、ハロゲン化白金化合物が光触媒粒子表面と強固に結合しているとも考えられる。ハロゲン化白金化合物の中でも塩素元素と白金の化合物である塩化白金化合物は効果が高く好ましい。
【0013】
ハロゲン化白金化合物の含有量は、光触媒粒子に対しPt換算で0.01〜5重量%の範囲が好ましく、0.01〜1重量%の範囲がより好ましく、0.01〜0.7重量%の範囲がさらに好ましい。ハロゲン化白金化合物の含有量が0.01〜5重量%の範囲であれば少なくとも可視光下での高い光触媒活性が得られ易くなるため好ましい。
【0014】
本発明の可視光応答型光触媒は、前記の光触媒粒子を、媒液中に懸濁させてからハロゲン化白金化合物の水溶液を添加するか、またはハロゲン化白金化合物の水溶液中に光触媒粒子を添加して撹拌すると、吸着作用により、光触媒粒子の表面にハロゲン化白金化合物を含有させることができる。しかし、光触媒粒子とハロゲン化白金化合物とを媒液中で撹拌下、加熱すれば、ハロゲン化白金化合物の歩留まりを高めることができるので好ましい。すなわち、本発明は、光触媒粒子とハロゲン化白金化合物とを媒液中で加熱して、光触媒粒子の表面にハロゲン化白金化合物を担持させる可視光応答型光触媒の製造方法である。光触媒粒子とハロゲン化白金化合物とを媒液中で加熱する温度は、50〜250℃の範囲が好ましく、50〜100℃の範囲がより好ましく、70〜100℃の範囲が最も好ましい。加熱温度が50〜250℃の範囲であれば少なくともハロゲン化白金化合物の歩留まりが高くなり易いため好ましい。100℃以上の温度では本発明を適用するには、オートクレーブなどの高温高圧装置を用いて行うことができる。
【0015】
本発明で用いる異方性形状を有する光触媒粒子としては公知の方法で製造されたものを用いることができる。例えば、酸化チタンは、含水酸化チタンを水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム等の塩基性ナトリウム化合物で処理した後、塩酸で処理する方法が知られている。このような方法で得られた酸化チタンは微粒子であり、所謂紡錘状のものであるため、好ましく用いられる。得られた紡錘状酸化チタン微粒子は、通常行われる手法で濾別、洗浄を行い、光触媒粒子として、ハロゲン化白金化合物を担持する工程に用いることができる。また、得られた紡錘状酸化チタン微粒子を洗浄後、乾燥あるいは焼成して、光触媒粒子として用いることもできる。
【0016】
ハロゲン化白金化合物としては、無機系ハロゲン化白金化合物が好ましく、具体的には、PtCl2、PtCl4、PtCl4・2H2O、H2 [Pt(OH)2Cl4]・nH2O等の白金塩化物やPtBr2、PtBr4等の白金臭化物、PtI2、PtI4等の白金ヨウ化物、PtF4等の白金フッ化物などの白金ハロゲン化物またはその水和物、塩化白金酸、塩化白金酸塩、ブロモ白金錯塩、ヨウ化白金酸塩等のハロゲン化白金酸、ハロゲン化白金酸塩またはハロゲン化白金錯塩、それらの水和物などを用いることができ、特にハロゲン化白金酸、ハロゲン化白金酸塩またはハロゲン化白金錯塩、それらの水和物などのハロゲン化白金酸化合物が好ましく用いられる。ハロゲン化白金酸化合物として具体的には、塩化白金酸、塩化白金酸塩、ブロモ白金錯塩、ヨウ化白金酸塩などを用いることができ、特に塩化白金酸化合物を用いるのが好ましい。
【0017】
媒液としては、水、アルコール、トルエンなどの無機系、有機系の液を用いることもできるが、工業的には水が取り扱い易く好ましい。また、媒液に用いる水には加熱前、加熱途中、加熱後に、塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸などの酸、あるいはアンモニア、アミン類、水酸化ナトリウムなどのアルカリを添加しても良い。得られた光触媒は粉末とする場合、公知の方法によって洗浄後、濾別、乾燥を行っても良く、必要に応じて粉砕を行っても良い。
【0018】
また、前記の光触媒粒子とハロゲン化白金化合物と担持促進剤とを水などの媒液中で混合するか、または、前記の光触媒粒子とハロゲン化白金化合物とを水などの媒液中で混合し、次いで、担持促進剤を添加するなどして、光触媒粒子とハロゲン化白金化合物と担持促進剤とを媒液中で反応させることでも、本発明の可視光応答型光触媒を製造できる。この方法も、白金化合物の歩留まりを高くできるので、好ましい製造方法の一つである。特に、反応を前記の方法のように、加熱下で行うと、ハロゲン化白金化合物の歩留まりがさらに向上するので、最も好ましい方法である。この方法に用いる光触媒粒子、ハロゲン化白金化合物、媒液については前記のものを用いることができ、加熱条件も前記の条件で行うことができる。
【0019】
担持促進剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、硫化水素等の水素化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド類、クエン酸、ギ酸等の有機酸、硫化ナトリウム、硫化アンモニウム等の硫黄化合物、亜リン酸、次亜リン酸及びそれらの塩、ヒドラジンなどの還元作用を有する化合物が挙げられ、これらから選ばれる1種を用いるか、または2種以上を組み合わせて用いても良い。担持促進剤の含有量は、適宜設定することができるが、添加するハロゲン化白金化合物中のPt1重量部に対して、0.5〜1000重量部の範囲が好ましく、1〜500重量部の範囲がより好ましく、5〜100重量部の範囲がさらに好ましい。担持促進剤の含有量が、0.5〜1000重量部の範囲であれば少なくとも充分な効果が得られ易いため好ましい。
【0020】
担持促進剤は、光触媒粒子とハロゲン化白金化合物のいずれもが含まれない媒液中、あるいは、光触媒粒子、ハロゲン化白金化合物のどちらか一方が含まれる媒液中、さらには、光触媒粒子、ハロゲン化白金化合物のいずれもが含まれる媒液中のいずれかに添加し、担持促進剤の存在下で、光触媒粒子、ハロゲン化白金化合物を撹拌などの手段で混合することができる。あるいは、担持促進剤は、媒液中で光触媒粒子、ハロゲン化白金化合物を撹拌などの手段で混合した後に添加することもできる。さらには、担持促進剤は、加熱処理を行なう場合、加熱前、加熱途中、加熱終了直後に、光触媒粒子、ハロゲン化白金化合物を含む媒液中に添加したり、加熱前においては光触媒粒子、ハロゲン化白金化合物のいずれもが含まれない媒液中あるいは光触媒粒子、ハロゲン化白金化合物のどちらか一方が含まれる媒液中に添加することができる。
【0021】
担持促進剤を使用すると、担持促進剤とハロゲン化白金化合物とが錯体のような化合物を形成して、光触媒粒子の表面に析出する場合があり、例えば、次亜リン酸を用いた場合、リン元素、ハロゲン元素、白金元素を含有した組成となる考えられ、このような化合物を含めて本発明ではハロゲン化白金化合物と呼ぶ。
【0022】
本発明の可視光応答型光触媒を、光触媒反応に実際に用いる場合、必要に応じて、基材に固定させたり、光触媒を成形・造粒して成形体として用いるのが便利である。基材としては例えば、金属、タイル、ホーロー、セメント、コンクリート、ガラス、プラスチック、繊維、木材、紙などの種々の材質で形成されたものであり、その形状としては板状、波板状、ハニカム状、球状、曲面状など種々の形状のものを用いることができる。このような基材に光触媒を固定するには公知の方法、例えば、光触媒を基材表面に塗布あるいは吹きつけた後、乾燥、焼成する方法、光触媒とバインダとを含む塗液を基材表面に塗布あるいは吹きつけた後、乾燥、必要に応じて加熱する方法などで行うことができる。バインダとしては無機系樹脂、有機系樹脂を用いることができ、光触媒反応により分解され難いバインダ、例えばセメント、コンクリート、石膏、珪酸化合物、シリカ、ケイ素化合物、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などのバインダが好ましい。また、光触媒を成形して用いる場合には、必要に応じて粘土、珪藻土、有機系樹脂、無機系樹脂などのバインダと混合した後、任意の形状に成形することができる。
【実施例】
【0023】
次に実施例によって本発明をさらに説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0024】
実施例1
純水0.5リットルに、ヘキサクロロ塩化白金酸6水和物0.675g(TiOに対しPtとして0.5重量%相当)を添加、撹拌し、平均長軸径64nm、平均短軸径13nm(軸比4.9)、比表面積160m/gの異方性形状を有する紡錘状酸化チタン微粒子50gを添加した後、次いで、次亜リン酸水溶液(50%水溶液)を1.44ミリリットル添加し、90℃で1時間加熱処理を行った。加熱処理後、冷却してから濾過、洗浄し、110℃で1昼夜乾燥した後、ライカイ機にて粉砕し、淡黄色を呈した本発明の可視光応答型光触媒粒子(試料A)を得た。
【0025】
実施例2
平均長軸径36nm、平均短軸径9.5nm(軸比3.8)、比表面積190m/gの異方性形状を有する紡錘状酸化チタン微粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして淡黄色を呈した本発明の可視光応答型光触媒粒子(試料B)を得た。
【0026】
実施例3
平均長軸径64nm、平均短軸径13nm(軸比4.9)、比表面積120m/gの異方性形状を有する紡錘状酸化チタン微粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして淡黄色を呈した本発明の可視光応答型光触媒粒子(試料C)を得た。
【0027】
比較例1〜3
実施例1〜3で用いた異方性形状を有する紡錘状酸化チタン微粒子を、それぞれ比較例1〜3(試料D〜F)とする。
【0028】
比較例4
異方性形状を有する酸化チタン微粒子に替えて、球状の光触媒酸化チタン粒子(ST−01:石原産業製(平均粒子径4.5nm、比表面積320m/g))を用いた以外は実施例1と同様にして、淡黄色を呈した可視光応答型光触媒粒子(試料G)を得た。
【0029】
評価1:NOx除去率、NO転化率の評価
110℃×30分間乾燥後、デシケータ中で放冷した試料4gを秤量し、4cm×20cmのパイレックス(登録商標)ガラス製皿に均一に広げた。次にこの皿を反応装置(図1)内のスペーサー上に、試料が上となるように設置し、試料の表面と石英窓との距離が5mmとなるようにスペーサを調整して、空気が漏れないよう密閉した。次に、この反応装置を図2に示すように接続し、清浄空気で約3.0ppmに希釈されたNOガスを3リットル/分の流速で流入させた。このとき、NOガスは温度が25℃、標準湿度が50%となるように予め調整した。
【0030】
次いで、反応装置上部より光を照射した。光源として通常の蛍光灯(2500ルックス:照度計にて測定)と、この蛍光灯の波長が400nm未満の微弱紫外線を、ガラスフィルター(Y−41:旭ガラス製)にてカットしたものを用いた。
【0031】
反応装置に流入したNOガスは、光触媒試料と接触し、反応してNOガスとなり、NO3となって固定され除去される。未反応のNOガス、生成したNOガスは、反応装置出口より外部へ流出する。この時、電磁弁を3分間隔で切り替えることで反応装置入口と出口部分から、ガスの一部を採取し、化学発光式NOx分析計(ML9841A:モニターラボ社製)にてNOガス濃度及びNOxガス(NOガス、NOガスの総量)濃度を測定した。得られた濃度値から、次式(1)に従ってNOx除去率を、また、次式(2)に従ってNO転化率を算出した。
式(1):NOx除去率
=((NOx入口―NOx出口)/NOx入口 )× 100 (%)
式(2):NO転化率
=((NO入口―NO出口)/NO入口 )× 100 (%)
【0032】
前記の方法にしたがって、実施例1〜3及び比較例1〜4の試料A〜GのNOx除去率、NO転化率を測定した結果を表1に示す。本発明の可視光応答型光触媒は、波長が400〜800nmの可視光の照射下での光触媒活性が、高いことがわかった。
【0033】
【表1】

【0034】
本発明の光触媒を、バインダを用いて基材に固定させたり、粘土を用いて光触媒を成形・造粒して光触媒体としても、可視光の照射下での光触媒活性が高く、安定していることが確認され、しかも、紫外線照射下での光触媒活性も高く、照射する光が有効に使用でき、優れた光触媒活性を有していることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は評価1に用いる反応装置を示す。
【図2】図2は評価1に用いる評価装置を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異方性形状を有する光触媒粒子の表面に、ハロゲン元素、白金元素を含有したハロゲン化白金化合物を担持したことを特徴とする可視光応答型光触媒。
【請求項2】
光触媒粒子の比表面積が50〜500m/gの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の可視光応答型光触媒。
【請求項3】
光触媒粒子が1.5〜10の範囲の軸比を有することを特徴とする請求項1に記載の可視光応答型光触媒。
【請求項4】
光触媒粒子が酸化チタン粒子であることを特徴とする請求項1に記載の可視光応答型光触媒。
【請求項5】
光触媒粒子に対して、Pt換算で0.01〜1重量%のハロゲン化白金化合物を有することを特徴とする請求項1に記載の可視光応答型光触媒。
【請求項6】
ハロゲン化白金化合物が塩化白金化合物であることを特徴とする請求項1に記載の可視光応答型光触媒。
【請求項7】
光触媒粒子が0.01〜0.5μmの範囲の平均長軸径と、0.001〜0.05μmの範囲の平均短軸径とを有し、軸比が1.5以上であることを特徴とする請求項1に記載の可視光応答型光触媒。
【請求項8】
異方性形状を有する光触媒粒子とハロゲン化白金化合物とを媒液中で撹拌して、光触媒粒子の表面に、ハロゲン元素、白金元素を含有したハロゲン化白金化合物を担持させることを特徴とする可視光応答型光触媒の製造方法。
【請求項9】
異方性形状を有する光触媒粒子、ハロゲン化白金化合物、還元作用を有する化合物を媒液中で反応させて、光触媒粒子の表面に、ハロゲン元素、白金元素を含有したハロゲン化白金化合物を担持させることを特徴とする可視光応答型光触媒の製造方法。
【請求項10】
異方性形状を有する光触媒粒子、ハロゲン化白金化合物、還元作用を有する化合物を加熱下で反応させることを特徴とする請求項9に記載の可視光応答型光触媒の製造方法。
【請求項11】
比表面積が50〜500m/gの範囲の光触媒粒子を用いることを特徴とする請求項8または9に記載の可視光応答型光触媒の製造方法。
【請求項12】
光触媒粒子として1.5〜10の範囲の軸比を有する異方性形状の粒子を用いることを特徴とする請求項8または9に記載の可視光応答型光触媒の製造方法。
【請求項13】
光触媒粒子として酸化チタン粒子を用いることを特徴とする請求項8または9に記載の可視光応答型光触媒の製造方法。
【請求項14】
ハロゲン化白金化合物として塩化白金酸を用いることを特徴とする請求項8または9に記載の可視光応答型光触媒の製造方法。
【請求項15】
請求項1に記載の可視光応答型光触媒を基材に固定してなる光触媒体。
【請求項16】
請求項1に記載の可視光応答型光触媒を基材にバインダを用いて固定してなる光触媒体。
【請求項17】
請求項1に記載の可視光応答型光触媒を成形してなる光触媒体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−190556(P2007−190556A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100334(P2007−100334)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【分割の表示】特願2002−233996(P2002−233996)の分割
【原出願日】平成14年8月9日(2002.8.9)
【出願人】(000000354)石原産業株式会社 (289)
【Fターム(参考)】