説明

可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルター及びその製造方法並びに浄化装置

【課題】光触媒へ照射する光の管理が容易であり、しかも可視光でも作動し、高効率の光触媒作用が得られ、製造の容易な可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルター及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明にかかる可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターは、気孔率が85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体(A)表面に、アナタース型の酸化チタン皮膜が形成されてなり、且つ、前記スポンジ状多孔質構造体(A)が、(b)シリコン、並びに、炭化ケイ素、(d)アモルファス炭素、(e)チタン、並びに、炭素、からなる群より選ばれる何れか一種からなるスポンジ状多孔質構造(B)からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルター及びその製造方法並びに上記可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターを用いた浄化装置に関するものであり、より詳しくは、紫外線の他に可視光でも高効率の光触媒作用が得られる可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルター及びその製造方法、並びに、NOx等の有害物を含む汚染空気の浄化や汚染水の清浄化等を高効率に行うことができる浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンは太陽や蛍光灯等の光、特に紫外線による光触媒作用でその表面に強力な酸化力が生まれる。この結果、酸化チタンが、該酸化チタンと接触している有機化合物や細菌等の有害物質を除去することができることは、よく知られている(例えば日本国特許第2883761号公報参照、公開日:1993年6月22日、登録日:1999年2月5日、以下、特許文献1と記す)。しかしながら、酸化チタンは粉末状であるため、そのままの状態で使用すると、粉末状の酸化チタン(酸化チタン粉末)が気体や流体中に拡散してしまう。このため、酸化チタンを使用する場合、酸化チタン粉末を固定化する必要がある。この酸化チタン粉末を固定化する方法により、有害物質と酸化チタンとが接触する確率が大きく支配される。さらに、このとき光が酸化チタンに届かなければ光触媒作用は得られない。そして酸化チタンを固定化する対象としては、従来、特許文献1にも記載されているような各種形状の基板、あるいは、膜状体、ガラスビーズ、シリカゲル、ステンレスウール等、様々のものが提案されている。
【0003】
本願発明者等の一人も、微細中空ガラス球状体に酸化チタンを被覆した浄化装置を提案した(日本国公開公報である特開2001−179246号公報参照、公開日:2001年7月3日、以下、特許文献2と記す)。図示はしないが、この浄化装置は光源と外套管との間の空隙に多数の酸化チタン被覆微細中空ガラス球状体を充填したものであり、簡単な操作で、しかも二次公害のおそれなしに汚染流体を浄化し得るものであった。しかし、このような微細中空ガラス球状体もまた紫外線が酸化チタンに十分に届くとは言い難く、さらなる光触媒作用の向上が望まれている。
【0004】
以上のように、本願発明者の一人が提案した特許文献2の浄化装置は、画期的ではあったが、光触媒の作用効果を最大限まで引き出したとまでは言えないものであった。
【0005】
また、光触媒の利用が拡大するにつれ、紫外線領域だけでなく、太陽光等の可視光で高効率に機能する可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターに対する期待が高まっている。太陽光等で汚染空気の浄化や汚染水の清浄化が高効率に行えれば、電力も要らず、飛躍的に光触媒の用途を拡大するものと期待される。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、光触媒へ照射する光の管理が容易であり、しかも可視光でも作動し、高効率の光触媒作用が得られ、製造の容易な可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルター及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
また本発明のさらなる目的は、光触媒へ照射する光の管理が容易で、可視光でも高効率の光触媒作用が得られる浄化装置を提供することにある。
【0008】
本願発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意検討した。浄化作用を向上させるためには流体と接する確率が高いフィルターが好適であり、セラミックハニカムや3次元セラミックフォームフィルター(以下、3次元セラミックフィルターと記す)、中でも3次元セラミックフィルターが、最も流体と接触する確率が高い。例えば、従来、ブリジストン株式会社から販売されている鋳鉄用セラミックフォームフィルターも3次元セラミックフィルターの1つであるが、従来の3次元セラミックフィルターは、光を透過させることは想定外である。
【0009】
上記鋳鉄用セラミックフォームフィルターは、スポンジに炭化ケイ素粉末スラリーを含浸後、余剰スラリーの除去を行った後、乾燥、焼成して多孔質炭化ケイ素構造体として作成したものである。その物性値は、公称では、気孔率は約85%、嵩密度約0.42g/cmとなっている。
【0010】
しかしながら、本願発明者等が鋭意検討した結果、上記鋳鉄用セラミックフォームフィルターのような3次元セラミックフィルターに光触媒を固定化しても、蛍光灯のような可視光では光触媒作用を発揮しないことがわかった。
【0011】
すなわち、上記鋳鉄用セラミックフォームフィルターは、炭化ケイ素の粉末を焼結法で作製するため、スポンジ状骨格の架橋部分ではスラリーをある程度肉厚にしないと強度的に弱くなる。そこで、これを避けるためスラリーを肉厚にすると、気孔率が85容量%よりも低くなり、余剰スラリーがセルとなる部分の目を塞ぎ、スポンジ状骨格の架橋太さも太くなる。また、セルの大きさが小さくなればなるほど、余剰スラリーのため目が塞がれる。
【0012】
つまり、上記従来の3次元セラミックフィルターは、光を透過させることは想定外であるのみならず、焼結法で作製するため、ある程度肉厚に形成する必要があり、スポンジ状骨格の架橋太さの平均(骨部分の太さの平均値)が太くなり、前記したように、気孔率が85容量%よりも低くなる上に、余剰スラリーが残ってセルとなる部分の目を塞ぎ、流れを遮断し、内部に十分光が通らないものであった。
【0013】
以下に説明する可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターは、気孔率が85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体(A)表面に、アナタース型の酸化チタン皮膜が形成されてなり、且つ、前記スポンジ状多孔質構造体(A)が、
(a)炭素、並びに、シリコン及び/またはシリコン合金、
(b)シリコン、シリコン合金、炭素、からなる群より選ばれる少なくとも一種、並びに、炭化ケイ素、
(c)シリコン、シリコン合金、炭素、炭化ケイ素、からなる群より選ばれる少なくとも一種、並びに、窒化ケイ素、
(d)炭素、
(e)チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、白金、金、からなる群より選ばれる何れか一種の金属、並びに、炭素、
からなる群より選ばれる何れか一種を含むスポンジ状多孔質構造(B)からなる。
【0014】
また、以下に説明する可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターは、表面に酸化チタン皮膜が形成されたスポンジ状多孔質構造(B)を備えた可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターであって、前記スポンジ状多孔質構造(B)が、炭素と、シリコン及び/またはシリコン合金とを含むと共に気孔率85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体(A)を、酸化チタンを含有または生成する溶液に浸漬し、乾燥した後に酸化雰囲気下で、100℃〜800℃で焼成することにより構成されている。
【0015】
また、以下に説明する可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターは、表面に酸化チタン皮膜が形成されたスポンジ状多孔質構造(B)を備えた可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターであって、前記スポンジ状多孔質構造(B)が、炭化ケイ素と、シリコン、シリコン合金、炭素、からなる群より選ばれる少なくとも一種とを含むと共に気孔率85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体(A)を、酸化チタンを含有または生成する溶液に浸漬し、乾燥した後に酸化雰囲気下で、100℃〜800℃で焼成することにより構成されている。
【0016】
さらに、以下に説明する可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターは、表面に酸化チタン皮膜が形成されたスポンジ状多孔質構造(B)を備えた可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターであって、前記スポンジ状多孔質構造(B)が、
窒化ケイ素と、シリコン、シリコン合金、炭素、炭化ケイ素、からなる群より選ばれる少なくとも一種とを含むと共に気孔率85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体(A)を、酸化チタンを含有または生成する溶液に浸漬し、乾燥した後に酸化雰囲気下で、100℃〜800℃で焼成することにより構成されている。
【0017】
さらに、以下に説明する可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターは、表面に酸化チタン皮膜が形成されたスポンジ状多孔質構造(B)を備えた可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターであって、前記スポンジ状多孔質構造(B)が、炭素を含むと共に気孔率85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体(A)を、酸化チタンを含有または生成する溶液に浸漬し、乾燥した後に酸化雰囲気下で、100℃〜500℃で焼成することにより構成されている。
【0018】
また、以下に説明する可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターは、表面に酸化チタン皮膜が形成されたスポンジ状多孔質構造(B)を備えた可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターであって、前記スポンジ状多孔質構造(B)が、炭素と、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、白金、金、からなる群より選ばれる何れか一種の金属とを含むと共に気孔率85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体(A)を、酸化チタンを含有または生成する溶液に浸漬し、乾燥した後に酸化雰囲気下で、100℃〜500℃で焼成することにより構成されている。
【0019】
また、以下に説明する浄化装置は、前記可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターを備えている。
【0020】
さらに、以下に説明する可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターの製造方法は、炭素と、シリコン及び/またはシリコン合金とを含むと共に気孔率85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体(A)を、酸化チタンを含有または生成する溶液に浸漬し、乾燥した後、酸化雰囲気下において100℃〜800℃で焼成する。
【0021】
また、以下に説明する可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターの製造方法は、炭化ケイ素と、シリコン、シリコン合金、炭素、からなる群より選ばれる少なくとも一種とを含むと共に気孔率85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体(A)を、酸化チタンを含有または生成する溶液に浸漬し、乾燥した後、酸化雰囲気下において100℃〜800℃で焼成する。
【0022】
また、以下に説明する可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターの製造方法は、窒化ケイ素と、シリコン、シリコン合金、炭素、炭化ケイ素、からなる群より選ばれる少なくとも一種とを含むと共に気孔率85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体(A)を、酸化チタンを含有または生成する溶液に浸漬し、乾燥した後、酸化雰囲気下において100℃〜800℃で焼成する。
【0023】
さらに、以下に説明する可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターの製造方法は、炭素を含むと共に気孔率85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体(A)を、酸化チタンを含有または生成する溶液に浸漬し、乾燥した後、酸化雰囲気下において100℃〜500℃で焼成する。
【0024】
さらに、以下に説明する可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターの製造方法は、炭素と、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、白金、金、からなる群より選ばれる何れか一種の金属とを含むと共に気孔率85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体(A)を、酸化チタンを含有または生成する溶液に浸漬し、乾燥した後、酸化雰囲気下において100℃〜500℃で焼成する。
【0025】
上記の各構成によれば、光触媒へ照射する光の管理が容易であり、しかも可視光でも作動し、高効率の光触媒作用が得られ、製造の容易な可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルター及びその製造方法を提供することができる。
【0026】
また、上記の各構成によれば、光触媒へ照射する光の管理が容易で、可視光でも高効率の光触媒作用を得ることができる浄化装置を提供することができる。
【0027】
以下に、本発明についてより詳細に説明する。
【0028】
先ず、本発明の実施の一形態にかかる浄化装置について、図1に基づいて説明する。図1は本発明の実施の一形態における透光窓を備えた浄化装置の断面図である。
【0029】
図1において、1は樹脂等で形成された平板状の容器、1aは流体導入口、1bは流体出口、1cは内部流路をジグザクに構成するための仕切り板である。また、図1中、2は骨格の架橋太さの平均が1mm以下、気孔率が85容量%以上で、炭素、あるいはモル比(Si/C)が0.1〜2の範囲内のシリコンと炭素、またはモル比(Si/SiC)が0.1〜4の範囲内のシリコンと炭化ケイ素、モル比(Ti/C)が0.1〜2の範囲内のチタンと炭素とによって構成され、表面に酸化チタンが被覆された可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターである。なお、上記チタンに代えて、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、白金、金、バナジウム、クロム、マンガンから選ばれた少なくとも1種の金属を採用してもよい。この可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルター2は、5mm〜30mm、好適には5mm〜20mmの厚さの平板状のフィルターユニットで構成されており、図1に示すようにジグザクの内部流路内に積層して容器1内に収容される。なお、仕切り板1cは1mm程度の薄い板であり、可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルター2の積層には妨げとならない。また、可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルター2の大きさは上述の5mm〜30mmに限られるものではなく、ブロックに近いフィルターユニットを組み合わせて使用してもよい。また、3は平板状の容器1の正面に設けられた透明なガラスや樹脂製板等の透光窓(本発明の透光域)であり、外表面全体を透光域としてもよい。なお、図1に示す浄化装置は物理的な濾過を行わず、流体導入口1aの上流に、図示しない物理的なフィルター要素が置かれている。
【0030】
流体導入口1aから導入された流体は、容器1内に入り、透光窓3を透過した外部からの可視光または紫外線等によって、高効率の光触媒作用を受け、ジグザクの内部流路を流れて流体出口1bから流出する。上記内部流路は、ジグザクであるため、流路長さを大きくとることができ、コンパクトな構成で効率的な処理を行うことができる。また、上記の浄化装置は、平板状のフィルターユニットを積層して利用するため、内部にまで光が届くとともに、整形と組み立てとが容易である。
【0031】
以上のように、図1にかかる浄化装置は、両端に流体導入口1aと流体出口1bとが設けられると共に外部(外壁)には可視光及び/または紫外線を透過できる透光域が設けられた容器1と、前記容器1の内部に収容された光触媒フィルターとを備え、前記透光域から受光した可視光及び/または紫外線により光触媒フィルターが前記流体導入口1aから流入した流体を浄化して前記流体出口1bから排出する可視光応答型の浄化装置であり、前記光触媒フィルターが、本発明にかかる可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターを平板状に形成したフィルターユニットで構成されている。
【0032】
上記の浄化装置によれば、外表面の少なくとも一部に、例えば透明なガラスや樹脂製板等を設ける等して、透光域(外表面の一部となる透光窓を設けるものでも、外表面全体を透光域とするものでもよい)を設けることで、流体を流すことができると共に、太陽光等の可視光、あるいは紫外線、もしくはその双方を透過させることができる。また、5mm〜30mm、好適には5mm〜20mmの厚さの平板状のフィルターユニットを利用することで、内部にまで光が届くと共に、整形と組み立てとが容易であり、太陽等の可視光を使う場合、運転に費用がかからず、低コストで、汚染物質を含むガスや液体に対して高効率の光触媒作用が得られる浄化装置を提供することができる。
【0033】
次に、本発明の実施の他の形態にかかる浄化装置について、図5に基づいて説明する。図5は本発明の実施の他の形態における、内部光源を備えた浄化装置の断面図である。
【0034】
なお、図1では平板状で透光窓(透光域)から紫外線を照射する浄化装置について例示したが、図5の浄化装置は、容器4内部、より具体的には容器4の内管7内に光源6を設けている。
【0035】
すなわち、本発明の浄化装置は、本発明にかかる可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターを使用し、透光域から光を照射したり、リング状にして、流体を流すと共に中央の空隙内部の光源から光を照射したりすることで、上記可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルター内部に光を導入するようになっている。
【0036】
図5において、4は円筒状の容器、4aは流体導入口、4bは流体出口、5はリング状可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルター、7は内管である。
【0037】
上記リング状可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルター5としては、前記可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルター2と同様の可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターを使用することができる。すなわち、図5中、5は骨格の架橋太さの平均が1mm以下、気孔率が85容量%以上で、炭素、あるいはモル比(Si/C)が0.1〜2の範囲内のシリコンと炭素、またはモル比(Si/SiC)が0.1〜4の範囲内のシリコンと炭化ケイ素、モル比(Ti/C)が0.1〜2の範囲内のチタンと炭素とによって構成され、表面に酸化チタンが被覆された可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターを使用することができる。また、図5に示す浄化装置においても、前記図1に示す浄化装置同様、チタンに代えて、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、白金、金、バナジウム、クロム、マンガンから選ばれた少なくとも1種の金属を採用してもよい。
【0038】
上記リング状可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルター5は、内径20〜40mm、外径50〜80mm、高さ20〜30mmのリング状のフィルターユニットであり、図5に示すように内管7の長手方向、つまり、光源6の長手方向に沿って積層して容器4内に収容される。なお、図5に示す浄化装置において、6としては、ブラックライトや殺菌灯、蛍光灯等の光源が使用される。また、7には透光性のあるガラスや樹脂等の内管が使用される。8は物理的フィルターであり、図5に示す浄化装置においては、物理的フィルター8は、流体導入口4aのリング状可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルター5への入口と、流体出口4bのリング状可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルター5からの出口とに設けられている。
【0039】
図5に示す浄化装置においても、流体導入口4aから導入された流体は、容器4内に入り、光源6からの可視光または紫外線等によって、高効率の光触媒作用を受けた後、流体出口4bから流出する。上記浄化装置はコンパクトな構成であり、光触媒へ照射する光の管理が容易で、高効率の光触媒作用を得ることができる。
【0040】
以上のように、図5に示す浄化装置は、流体導入口4aと流体出口4bとが両端に設けられた容器4と、前記容器4の内部に収容され、内部に円筒状空隙が設けられたリング状光触媒フィルターと、前記リング状光触媒フィルターの円筒状空隙内に設けられ可視光及び/または紫外線を照射できる光源6とを備え、前記光源6から照射された可視光及び/または紫外線により光触媒フィルターが前記流体導入口4aから流入した流体を浄化して前記流体出口4bから排出する可視光応答型の浄化装置であり、前記光触媒フィルターが、本発明にかかる可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターをリング状に形成したフィルターユニットで構成されている。
【0041】
上記の構成によれば、汚染物質を含むガスや液体に対して高効率の光触媒作用が得られる浄化装置を提供することができる。特に、図5に示す浄化装置は、流体導入口4aと流体出口4bとが両端に設けられた容器4内にリング状のフィルターユニットを設置するため、組み立てが容易であり、リング状のフィルターユニット内部の円筒状空隙に、直接または内管7を介して、ブラックライトや殺菌灯、さらには蛍光灯を配置することにより、容易に上記浄化装置を提供することができる。
【0042】
なお、上記した具体例においては、前記したように、骨格の架橋太さの平均が1mm以下、気孔率が85容量%以上で、炭素、あるいはモル比(Si/C)が0.1〜2の範囲内のシリコンと炭素、またはモル比(Si/SiC)が0.1〜4の範囲内のシリコンと炭化ケイ素、モル比(Ti/C)が0.1〜2の範囲内のチタンと炭素とによって構成され、表面に酸化チタンが被覆された可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターを例に挙げて説明したが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0043】
本発明にかかる可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターとしては、気孔率が85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体(A)表面に、アナタース型の酸化チタン皮膜が形成されてなり、且つ、前記スポンジ状多孔質構造体(A)が、下記(a)〜(e);
(a)炭素、並びに、シリコン及び/またはシリコン合金、
(b)シリコン、シリコン合金、炭素、からなる群より選ばれる少なくとも一種、並びに、炭化ケイ素、
(c)シリコン、シリコン合金、炭素、炭化ケイ素、からなる群より選ばれる少なくとも一種、並びに、窒化ケイ素、
(d)炭素、
(e)チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、白金、金、からなる群より選ばれる何れか一種の金属、並びに、炭素、
からなる群より選ばれる何れか一種を含むスポンジ状多孔質構造(B)からなる可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターが挙げられる。
【0044】
そのうち、例えば、前記スポンジ状多孔質構造体(A)が(a)炭素、並びに、シリコン及び/またはシリコン合金を含むスポンジ状多孔質構造(B)からなる可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターは、炭素と、シリコン及び/またはシリコン合金とを含むと共に気孔率85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体(A)を、酸化チタンを含有または生成する溶液に浸漬し、乾燥した後、酸化雰囲気下において100℃〜800℃で焼成することにより容易に製造することができる。
【0045】
つまり、上記視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターは、表面に酸化チタン皮膜が形成されたスポンジ状多孔質構造(B)を備えた可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターであって、前記スポンジ状多孔質構造(B)が、炭素と、シリコン及び/またはシリコン合金とを含むと共に気孔率85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体(A)を、酸化チタンを含有または生成する溶液に浸漬し、乾燥した後に酸化雰囲気下で、100℃〜800℃で焼成することにより構成されている。
【0046】
なお、本発明において、酸化チタンを含む溶液としては、アモルファス状またはアナタース型の酸化チタン微粉末を含むスラリーや酸化チタンのゾルがある。また、酸化チタンを生成する溶液としては、熱分解や化学分解後に酸化チタンを形成するチタンの塩化物、硝酸化合物、硫酸化合物、有機化合物等、どのようなものでもよい。
【0047】
上記溶液に使用される溶媒としては、具体的には、例えば、水、塩酸水溶液等が挙げられる。また、上記溶液中の酸化チタンの濃度としては、1回の処理で十分な量を得ることができることから、5重量%〜10重量%の範囲内が好適である。
【0048】
なお、後述する実施例では、酸化チタンを含む溶液として、市販の光触媒用酸化チタンコーティング剤(テイカ株式会社製、商品名「TKC−303」)を使用したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0049】
上記可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターは、架橋部分(3次元の網目状の骨格部分)により微細セルが多数繋がった構成であり、上記スポンジ状多孔質構造体(A)が、炭素と、シリコン及び/またはシリコン合金とを含むと共に気孔率85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体であるため、酸化チタン、つまり光触媒を、容易に固定することができると共に、光触媒へ照射する光の管理が容易である。また、光透過率が高く、酸化チタンの付着率を上げることができると共に、例えば炭素とシリコンとで形成され、フリーのシリコン(遊離シリコン)が存在することにより、可視光でも光触媒作用を効果的に発現させることができる。さらに、酸化雰囲気下において100℃〜800℃で焼成した酸化チタンによって高効率の光触媒作用を発現させることができ、また、製造が容易である。
【0050】
ここで、100℃〜800℃で焼成する理由は、100℃より低い温度で焼成したときは、光触媒である酸化チタンがフィルターに固着し難く、酸化チタンの定着が十分ではなく、焼成温度が上がると、結晶子径が大きくなり、光触媒としての活性が低下すると共に、800℃より高い温度で焼成したときは、酸化チタンが、光触媒として活性のある酸化チタンの結晶構造であるアナタース型からルチル型に変化してしまうことから、光触媒としての浄化効率が低下するためである。
【0051】
すなわち、本発明にかかる可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターは、前記したように、上記スポンジ状多孔質構造体(A)表面に、アナタース型の酸化チタンが形成(固定)されている構成を有している。
【0052】
なお、炭素を含むスポンジ状多孔質体は、炭素の酸化が始まる500℃以下での焼成が望ましいが、500℃以上の酸化雰囲気でも短時間で処理すれば炭素を酸化させないで処理することができる。また炭素は樹脂等の炭素化から生じるアモルファス状炭素が強度的にも優れるので、望ましい。
【0053】
また、前記した本発明の方法によれば、前記スポンジ状多孔質構造体(A)として、例えば炭化ケイ素の粉末を使用して焼結法により作製した3次元セラミックフィルターを使用する場合と異なり、スポンジ状骨格の架橋太さの平均(骨部分の太さの平均値)が太くなって気孔率が低下したり、余剰スラリーが残ってセルとなる部分の目を塞いだりせず、蛍光灯のような可視光でも十分に光触媒作用を発揮させることができる。
【0054】
なお、本願発明者等の一人は、光触媒とは関係なく、本出願に先だって、ほとんど目が潰れることがないスポンジ状骨格の架橋部分が原料のものとほぼ同じ程度に細い新たな3次元セラミックフィルターの開発を行った。すなわち、スポンジ等の多孔質構造体の有形骨格に、炭素源としての樹脂及びシリコン粉末を含んだスラリーを含浸後、不活性雰囲気下で、900℃〜1300℃で炭素化後、真空、あるいは不活性雰囲気下の1300℃以上の温度で反応焼結させ、溶融シリコンとの濡れ性のよい炭化ケイ素を生成させると同時に、体積減少反応に起因する気孔を生成させ、最終的には真空、或いは不活性化雰囲気下において、1300℃〜1800℃の温度で、この多孔質構造体にシリコンを溶融含浸することにより、セルとなる部分の目が余剰スラリーによって潰れることがほとんどない炭化ケイ素系耐熱性超軽量多孔質材の製造を可能ならしめた(日本国公開公報である特開2003−119085号公報参照、公開日:2003年4月23日(特願2001−238547、特願2001−248484に対応))。
【0055】
従来は、3次元セラミックフィルターで光を透過させることは想定外であり、また、上記炭化ケイ素系耐熱性超軽量多孔質材のように酸化チタンの皮膜を形成していないスポンジ状多孔質構造体は、波長254nmの紫外線では、NOxガスの分解は可能であっても効果が非常に小さく、波長365nmの紫外線ではNOxガス濃度はほとんど低減しなかったが、上記のように原型構造体を使用することで、複雑な形状のものでも容易に製造が可能であり、セルが均一で、気孔率85容量%以上、特に90容量%以上の気孔率を実現することが可能となる。
【0056】
よって、例えば、上記スポンジ状多孔質構造体(A)は、例えば、スポンジ状骨格を有すると共に炭素化時に熱分解する原型構造体(C)に、炭素源となる樹脂と、シリコン粉末及び/またはシリコン合金とを含んだスラリーを含浸させた後、この原型構造体(C)を、不活性雰囲気下において800℃〜1300℃で炭素化させることにより容易に得ることができる。
【0057】
例えば、上記スポンジ状多孔質構造体(A)は、スポンジ状骨格を有する高分子化合物、あるいは天然素材の繊維、糸または紙類からなる原型構造体(C)に、炭素源となる樹脂と、シリコン粉末及び/またはシリコン合金とを含んだスラリーを含浸させた後、この原型構造体(C)を、不活性雰囲気下において800℃〜1300℃で炭素化させることにより形成されるスポンジ状骨格から構成されている構成とすることができる。
【0058】
上記原型構造体(C)としては、波状あるいはハニカム状等の三次元網目構造を有し、炭素化時に熱分解する材料からなる構造体、例えば、波状に成形した紙の片面または両面に厚紙を貼り合せてなる、所謂ダンボール等を用いることができる。
【0059】
上述した方法によれば、上記スポンジ状多孔質構造体(A)として炭素系耐熱性軽量多孔質複合材を使用した可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターを容易に製造することができる。
【0060】
このようなスポンジ状多孔質構造体(A)は、例えば、ポリウレタン等の高分子化合物製のスポンジ状の原型構造体(C)に、フェノール樹脂、フラン樹脂等の樹脂にシリコン粉末を含んだスラリーを含浸後、余剰のスラリーを除去し、不活性雰囲気下において800℃〜1300℃で炭素化することで製造することができる。このようにして得られる炭素化複合体は、原型構造体(C)が熱分解してなくなるため、樹脂が炭素化したアモルファス炭素部分とシリコン粉末とが混ざり合った構造体となり、スポンジ状の原型構造体(C)の形とほぼ同一のスポンジ状多孔質構造体(A)を得ることができる。このため、上記の構成によれば、酸化チタンを固定化したとき、スポンジ状多孔質構造体(A)の内部の光触媒にまで確実に光を到達させ、光触媒作用を効果的に発現させることが容易となる。アモルファス炭素は導電性であり、また、例えばシリコン粉末が加えられることで、フリーのシリコン(遊離シリコン)が存在することにより、可視光でも光触媒作用を効果的に発現させることが容易となる。
【0061】
前記スポンジ状多孔質構造体(A)における炭素並びにシリコン及び/またはシリコン合金(特にシリコン)の合計の割合は、これら成分がスポンジ骨格の基本となることより、体積割合で40%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。つまり、前記スポンジ状多孔質構造体(A)は、炭素並びにシリコン及び/またはシリコン合金(特にシリコン)を主成分として含んでいればよいが、これら成分の合計の割合が、100重量%、すなわち、前記スポンジ状多孔質構造体(A)が、例えば、炭素と、シリコン及び/またはシリコン合金(特にシリコン)とからなる構成を有していてもよい。また、上記炭素に対するシリコンの割合は、体積割合で60%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましい。
【0062】
また、上記スポンジ状多孔質構造体(A)は、前記スポンジ状多孔質構造(B)を構成するスポンジ状骨格の架橋太さの平均が1mm以下であり、且つ、シリコンと炭素との組成のモル比(Si/C)が0.1〜2の範囲内(具体的には、例えば、0.8、1.0等)であることがより好ましい。
【0063】
このため、本発明においては、前記原型構造体(C)のスポンジ状骨格における架橋太さの平均を1mm以下とし、シリコンと炭素との組成のモル比(Si/C)を0.1〜2の範囲内にする量のシリコン粉末及び/またはシリコン合金を使用(混合)して、前記原型構造体(C)の形状を保ったスポンジ状多孔質構造体(A)を形成することが好ましい。
【0064】
すなわち、上記スラリーは、上記条件を満足することができるようにその配合条件を適宜設定すればよく、その配合条件は、特に限定されるものではないが、上記スラリーの濃度があまりにも高いと、セル部分に膜が生じ、逆に上記スラリーの濃度が低いと、スラリー(液)が、乾燥時に落下してしまうため、使用成分等に応じて、上記問題を回避することができるように適宜設定されていることが望ましい。
【0065】
例えば、フェノール樹脂と分散媒(例えばエタノール)との重量割合を例に挙げれば、上記スラリーは、35重量%程度の濃度に調整されていることが、該スラリーを、前記原型構造体(C)に付着させるのに適していることから好ましい。
【0066】
なお、上記スラリーに使用される分散媒としては、例えば、エタノール、メタノール等の分散媒を使用することができるが、特に限定されるものではない。これら分散媒のなかでも、フェノール樹脂の溶解度が高いことから、エタノール、メタノールが好適に使用される。
【0067】
前記したように、スポンジ状骨格の架橋太さの平均が1mm以下であり、シリコンと炭素との組成のモル比(Si/C)が0.1〜2の範囲内である場合、原型構造体(C)と、得られるスポンジ状多孔質構造体(A)とのスポンジ状骨格の太さの差がほとんどなく、スポンジ状骨格の形状を保持することができる。これにより、複雑な形状の3次元微細セル構造光触媒フィルターでも容易に製造することができ、セルが均一で、気孔率85容量%以上、特に90容量%以上が実現でき、嵩密度0.3g/cm以下、特に0.2g/cm以下で透光性があり、可視光でも作動する3次元微細セル構造光触媒フィルターを実現することができる。なお、上記嵩密度は、0.3g/cm以下(すなわち、0を超えて、0.3g/cm以下)であることが好ましく、より望ましくは、0.2g/cm以下である。なお、本発明において、上記嵩密度の下限値は、特に限定されるものではないが、前記スポンジ状多孔質構造体(A)の嵩密度を考慮すれば、0.05g/cm以上であることが好ましい。また、上記気孔率の上限値は、100容量%未満であれば特に限定されるものではないが、98容量%以下であることが好ましい。
【0068】
同様に、スポンジ状多孔質構造体(A)が(b)シリコン、シリコン合金、炭素、からなる群より選ばれる少なくとも一種、並びに、炭化ケイ素を含むスポンジ状多孔質構造(B)からなる可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターは、炭化ケイ素と、シリコン、シリコン合金、炭素、からなる群より選ばれる少なくとも一種とを含むと共に気孔率85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体(A)を、酸化チタンを含有または生成する溶液に浸漬し、乾燥した後、酸化雰囲気下において100℃〜800℃で焼成することにより容易に製造することができる。
【0069】
つまり、上記視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターは、表面に酸化チタン皮膜が形成されたスポンジ状多孔質構造(B)を備えた可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターであって、前記スポンジ状多孔質構造(B)が、炭化ケイ素と、シリコン、シリコン合金、炭素、からなる群より選ばれる少なくとも一種とを含むと共に気孔率85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体(A)を、酸化チタンを含有または生成する溶液に浸漬し、乾燥した後に酸化雰囲気下で、100℃〜800℃で焼成することにより構成されている。
【0070】
上記可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターもまた、架橋部分(3次元の網目状の骨格部分)により微細セルが多数繋がった構成であり、上記スポンジ状多孔質構造体(A)が、炭化ケイ素と、シリコン、シリコン合金、炭素、からなる群より選ばれる少なくとも一種とを含むと共に気孔率85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体であるため光触媒を容易に固定することができると共に、光触媒へ照射する光の管理が容易である。また、光透過率が高く、酸化チタンの付着率を上げることができると共に、例えば炭化ケイ素とシリコンとで形成され、フリーのシリコン(遊離シリコン)が存在することにより、可視光でも光触媒作用を効果的に発現させることができる。
【0071】
なお、このように、スポンジ状多孔質構造体(A)が、(b)炭化ケイ素、並びに、シリコン、シリコン合金、炭素、からなる群より選ばれる少なくとも一種、あるいは、前記したように(a)炭素とシリコン及び/またはシリコン合金ではなく、炭素のみからなる場合でも可視光で光触媒作用があるが、上述したようにフリーのシリコンが存在することにより、可視光での光触媒作用をより効果的に発現させることができる。
【0072】
また、この場合にも、前記したように、酸化雰囲気下において100℃〜800℃で焼成した酸化チタンによって高効率の光触媒作用を発現させることができ、さらに、上記可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターもまた、製造が容易である。
【0073】
さらに、この場合においても、前記スポンジ状多孔質構造体(A)として、例えば炭化ケイ素の粉末を使用して焼結法により作製した3次元セラミックフィルターを使用する場合と異なり、スポンジ状骨格の架橋太さの平均(骨部分の太さの平均値)が太くなって気孔率が低下したり、余剰スラリーが残ってセルとなる部分の目を塞いだりせず、蛍光灯のような可視光でも十分に光触媒作用を発揮させることができる。
【0074】
そして、上記スポンジ状多孔質構造体(A)は、例えば、スポンジ状骨格を有すると共に炭素化時に熱分解する原型構造体(C)に、炭素源となる樹脂と、シリコン粉末及び/またはシリコン合金とを含んだスラリーを含浸させた後、この原型構造体(C)を、不活性雰囲気下において800℃〜1300℃で炭素化し、さらに、1300℃以上で反応焼結させることにより容易に得ることができる。
【0075】
また、上記スポンジ状多孔質構造体(A)は、上記反応焼結により得られた焼結体に、さらに、1300℃〜1800℃でシリコン及び/またはシリコン合金を溶融含浸させてなる構成を有していてもよい。
【0076】
つまり、上記スポンジ状多孔質構造体(A)は、例えば、スポンジ状骨格を有すると共に炭素化時に熱分解する原型構造体(C)に、炭素源となる樹脂と、シリコン粉末及び/またはシリコン合金とを含んだスラリーを含浸させた後、この原型構造体(C)を、不活性雰囲気下において800℃〜1300℃で炭素化し、さらに、1300℃以上で反応焼結させた後、上記反応焼結により得られた焼結体に、さらに、1300℃〜1800℃でシリコン及び/またはシリコン合金を溶融含浸させてなる構成を有していてもよい。上記原型構造体(C)には、前記例示の原型構造体を使用することができる。
【0077】
つまり、例えば、上記スポンジ状多孔質構造体(A)は、スポンジ状骨格を有する高分子化合物、あるいは天然素材の繊維、糸または紙類からなる原型構造体(C)に、炭素源となる樹脂と、シリコン粉末及び/またはシリコン合金とを含んだスラリーを含浸させた後、この原型構造体(C)を、不活性雰囲気下において800℃〜1300℃で炭素化し、さらに、1300℃以上で反応焼結させた後、この反応焼結により得られた焼結体に、必要に応じて、1300℃〜1800℃でシリコン及び/またはシリコン合金を溶融含浸させることにより形成されるスポンジ状骨格から構成されている構成とすることができる。
【0078】
これにより、上記スポンジ状多孔質構造体(A)として炭素系耐熱性軽量多孔質複合材を使用した可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターを容易に製造することができる。
【0079】
このようなスポンジ状多孔質構造体(A)は、例えば、以下のようにして得ることができる。先ず、ポリウレタン等の高分子化合物製のスポンジ状の原型構造体(C)に、フェノール樹脂、フラン樹脂等の樹脂及びシリコン粉末を含んだスラリーを含浸後、余剰のスラリーを除去し、不活性雰囲気下において800℃〜1300℃で炭素化する。有機物の熱分解を促進するためには、より好適には900℃〜1300℃にて炭素化する。このようにして得られる炭素化複合体は、スポンジ状の原型構造体(C)が熱分解してなくなるため、樹脂が炭素化した炭素部分とシリコン粉末とが混ざり合った構造体が得られる。次いで、この炭素化複合体を1300℃以上の温度で反応燒結させ、溶融シリコンと濡れ性のよいポーラスな炭化ケイ素を生成し、この炭化ケイ素に、必要に応じて、1300℃〜1800℃でシリコンを溶融含浸させることで、スポンジ状の原型構造体の形とほぼ同一のスポンジ状多孔質構造体(A)を得ることができる。
【0080】
具体的には、例えば、フェノール樹脂に、シリコン粉末、及びエタノールを混合したスラリーにスポンジを浸し、十分に余分なスラリーを絞り、70℃で12時間乾燥させる。このスポンジを不活性雰囲気下で、800℃〜1300℃、好適には900℃〜1300℃の温度で炭素化し、更にアルゴン等の不活性雰囲気下でさらに昇温させて焼成すると、シリコン粉末がフェノール樹脂からの炭素と反応して炭化ケイ素になる。このため、例えば1300℃〜1320℃程度で、炭素と、シリコンと、炭化ケイ素とが共存し始め、炭素源としてのフェノール樹脂とシリコン粉末との使用量(混合比率)にもよるが、例えば1400℃〜1450℃程度で炭化ケイ素が優位になる。この場合、炭素リッチ(例えば、モル比でSi/C<1)であれば炭素も残り、スポンジ形状の炭素と炭化ケイ素との混合物が得られるが、炭素が少なければ(例えばモル比でSi/C>1)、スポンジ形状の炭化ケイ素とシリコンの混合物が得られ、Si/C=1であれば炭化ケイ素のみが得られる。
【0081】
このため、反応燒結によって得られた上記炭化ケイ素に、必要に応じて、1300℃〜1800℃でシリコン及び/またはシリコン合金を溶融含浸させることで、上記成分にさらにシリコン及び/またはシリコン合金を含み、且つ、スポンジ状の原型構造体の形とほぼ同一のスポンジ状多孔質構造体(A)を得ることができる。
【0082】
上述した構成によれば、酸化チタンを固定化したとき、スポンジ状多孔質構造体(A)の内部の光触媒にまで確実に光を到達させ、光触媒作用を効果的に発現させることが容易となる。そして、この場合にも、フリーのシリコン(遊離シリコン)が存在することにより、可視光でも光触媒作用を効果的に発現させることが容易となる。
【0083】
なお、前記スポンジ状多孔質構造体(A)における、炭化ケイ素、並びに、シリコン、シリコン合金、炭素、からなる群より選ばれる少なくとも一種(特にシリコン)の合計の割合は、これら成分がスポンジ骨格の基本となることより、体積割合で40%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。つまり、前記スポンジ状多孔質構造体(A)は、炭化ケイ素、並びに、シリコン、シリコン合金、炭素、からなる群より選ばれる少なくとも一種(特にシリコン)を主成分として含んでいればよいが、これら成分の合計の割合が、100重量%、すなわち、前記スポンジ状多孔質構造体(A)が、炭化ケイ素と、シリコン、シリコン合金、炭素、からなる群より選ばれる少なくとも一種とからなる構成、例えば、前記したように、炭化ケイ素と炭素とからなる構成であってもよく、さらにシリコン及び/またはシリコン合金とを含む構成であってもよい。また、前記したように、前記スポンジ状多孔質構造体(A)は、炭化ケイ素と、シリコン及び/またはシリコン合金とからなる構成であってもよく、上記シリコン及び/またはシリコン合金は、炭化ケイ素と炭素とからなるスポンジ状骨格あるいは炭化ケイ素からなるスポンジ状骨格、若しくは、炭化ケイ素とシリコン及び/またはシリコン合金とからなるスポンジ状骨格に、溶融含浸されていてもよい。
【0084】
また、この場合、前記スポンジ状多孔質構造体(A)は、前記スポンジ状多孔質構造(B)を構成するスポンジ状骨格の架橋太さの平均が1mm以下であり、且つ、例えばシリコンと炭化ケイ素との組成のモル比(Si/SiC)が、0.1〜2の範囲内であることが好ましい。また、前記スポンジ状多孔質構造体(A)が、シリコン及び/またはシリコン合金を溶融含浸させてなる構成である場合には、前記スポンジ状多孔質構造(B)を構成するスポンジ状骨格の架橋太さの平均が1mm以下であり、且つ、例えばシリコンと炭化ケイ素との組成のモル比(Si/SiC)が、0.1〜4の範囲内であることがより好ましい。
【0085】
このため、本発明においては、前記原型構造体(C)のスポンジ状骨格における架橋太さの平均を1mm以下とし、シリコンと炭化ケイ素との組成のモル比(Si/SiC)を0.1〜2の範囲内にする量のシリコン及び/またはシリコン合金を使用(混合)、例えば、シリコンと炭素との組成のモル比(Si/C)が0.1〜2の範囲内となるようにシリコン粉末及び/またはシリコン合金を使用(混合)して、前記原型構造体(C)の形状を保ったスポンジ状多孔質構造体(A)を形成することが好ましい。また、前記スポンジ状多孔質構造体(A)が、シリコン及び/またはシリコン合金を溶融含浸させてなる構成である場合には、前記原型構造体(C)のスポンジ状骨格における架橋太さの平均を1mm以下とし、シリコンと炭化ケイ素との組成のモル比(Si/SiC)を0.1〜4にする量、もしくは、シリコンと炭素との組成のモル比(Si/C)を0.1〜4にする量のシリコン及び/またはシリコン合金を含浸させて、前記原型構造体(C)の形状を保ったスポンジ状多孔質構造体(A)を形成することが好ましい。
【0086】
上記スラリーは、上記条件を満足することができるようにその配合条件を適宜設定すればよく、その配合条件は、特に限定されるものではない。この場合にも、上記スラリーは、前記したように、使用成分等に応じて、前記原型構造体(C)に付着させるのに適した濃度に設定されていることが望ましく、フェノール樹脂と分散媒(例えばエタノール)との重量割合を例に挙げれば、例えば、35重量%程度の濃度に調整されていることが好ましい。また、この場合にも、上記スラリーに使用される分散媒としては、例えば前記例示の分散媒を使用することができる。
【0087】
前記したように、スポンジ状骨格の架橋太さの平均が1mm以下で、シリコンと炭化ケイ素との組成のモル比(Si/SiC)が0.1〜2(含浸溶融であれば0.1〜4)の範囲内である場合、原型構造体(C)と、得られるスポンジ状多孔質構造体(A)とのスポンジ状骨格の太さの差がほとんどなく、スポンジ状骨格の形状を保持することができる。これにより、複雑な形状の3次元微細セル構造光触媒フィルターでも容易に製造することができ、この場合にも、セルが均一で、気孔率85容量%以上、特に90容量%以上が実現でき、嵩密度0.3g/cm以下、特に0.2g/cm以下で透光性があり、可視光でも作動する3次元微細セル構造光触媒フィルターを実現することができる。
【0088】
なお、前記シリコン合金は、マグネシウム、アルミニウム、チタニウム、クロミウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ニオビウム、モリブデン、及びタングステンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、前記スラリーが、例えば上記シリコン合金、またはこれらシリコン合金とシリコン粉末との混合物を含むことで、例えば、前記焼結体にシリコンを溶融含浸させるときでも容易に含浸させることができ、スポンジ状骨格を容易に形成することができる。
【0089】
なお、上記した反応においては、炭素源となる樹脂と、シリコン粉末及び/またはシリコン合金とを含んだスラリーを含浸させた原型構造体(C)を、不活性雰囲気下で炭素化することにより、(b)シリコン、シリコン合金、炭素、からなる群より選ばれる少なくとも一種、並びに、炭化ケイ素、を含むスポンジ状多孔質構造体(A)を作製したが、上記炭素化を窒素ガス雰囲気下で行うことで、上記シリコンの窒化反応により窒化ケイ素を含むスポンジ状多孔質構造体(A)を得ることができる。
【0090】
すなわち、スポンジ状多孔質構造体(A)が(c)シリコン、シリコン合金、炭素、炭化ケイ素、からなる群より選ばれる少なくとも一種、並びに、窒化ケイ素炭素を含むスポンジ状多孔質構造(B)からなる可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターは、窒化ケイ素と、シリコン、シリコン合金、炭素、炭化ケイ素、からなる群より選ばれる少なくとも一種とを含むと共に気孔率85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体(A)を、酸化チタンを含有または生成する溶液に浸漬し、乾燥した後に酸化雰囲気下で、100℃〜500℃で焼成することにより容易に製造することができる。
【0091】
つまり、上記視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターは、表面に酸化チタン皮膜が形成されたスポンジ状多孔質構造(B)を備えた可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターであって、前記スポンジ状多孔質構造(B)が、窒化ケイ素と、シリコン、シリコン合金、炭素、炭化ケイ素、からなる群より選ばれる少なくとも一種とを含むと共に気孔率85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体(A)を、酸化チタンを含有または生成する溶液に浸漬し、乾燥した後に酸化雰囲気下で、100℃〜800℃で焼成することにより構成されている。
【0092】
上記の構成によれば、上記スポンジ状多孔質構造体(A)が、窒化ケイ素と、シリコン、シリコン合金、炭素、炭化ケイ素、からなる群より選ばれる少なくとも一種とを含む気孔率85%以上のスポンジ状多孔質構造体であるため、上記可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターもまた光触媒を容易に固定することができると共に、光触媒へ照射する光の管理が容易である。また、光透過率が高く、酸化チタンの付着率を上げることができる。また、上記スポンジ状多孔質構造体(A)は、例えば炭素を含んで形成され、導電性であるため、可視光でも光触媒作用を効果的に発現させることができる。なお、炭素は樹脂等の炭素化から生じるアモルファス状炭素が強度的にも優れるので、望ましい。また、この場合にも、前記したように、酸化雰囲気下において100℃〜800℃で焼成した酸化チタンによって高効率の光触媒作用を発現させることができ、さらに、上記可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターもまた、製造が容易である。
【0093】
さらに、この場合においても、前記スポンジ状多孔質構造体(A)として、例えば炭化ケイ素の粉末を使用して焼結法により作製した3次元セラミックフィルターを使用する場合と異なり、スポンジ状骨格の架橋太さの平均(骨部分の太さの平均値)が太くなって気孔率が低下したり、余剰スラリーが残ってセルとなる部分の目を塞いだりせず、蛍光灯のような可視光でも十分に光触媒作用を発揮させることができる。
【0094】
上記スポンジ状多孔質構造体(A)は、例えば、スポンジ状骨格を有すると共に炭素化時に熱分解する原型構造体(C)に、炭素源となる樹脂と、シリコン粉末及び/またはシリコン合金とを含んだスラリーを含浸させた後、この原型構造体(C)を、窒素雰囲気下において800℃〜1500℃で熱処理(窒素雰囲気焼成)して炭素化とシリコンの窒化反応とを行うことにより容易に得ることができる。
【0095】
つまり、例えば、上記スポンジ状多孔質構造体(A)は、スポンジ状骨格を有する高分子化合物、あるいは天然素材の繊維、糸または紙類からなる原型構造体(C)に、炭素源となる樹脂と、シリコン粉末及び/またはシリコン合金とを含んだスラリーを含浸させた後、この原型構造体(C)を、窒素雰囲気下において800℃〜1500℃で熱処理して炭素化とシリコンの窒化反応とを行うことにより形成されるスポンジ状骨格から構成されている構成とすることができる。
【0096】
これにより、上記スポンジ状多孔質構造体(A)として炭素系耐熱性軽量多孔質複合材を使用した可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターを容易に製造することができる。
【0097】
このようなスポンジ状多孔質構造体(A)は、例えば、以下のようにして得ることができる。先ず、例えば、フェノール樹脂に、シリコン粉末、及びエタノールを混合したスラリーにスポンジを浸し、十分に余分なスラリーを絞り、70℃で12時間乾燥させる。このスポンジを窒素雰囲気下で、例えば1500℃まで昇温させて800℃〜1500℃の温度で炭素化すると、先ず炭素化が開始され、その後、1100℃以上の温度でシリコンの窒化反応が生じ、窒化ケイ素(Si)が生成する。なお、炭化ケイ素も反応時間により生成する。この場合も、炭素とシリコンとのモル比並びに反応時間(反応速度)により、スポンジ状多孔質構造体(A)の組成が異なり、例えば、前記したように炭素リッチであれば炭素も残り、スポンジ形状の炭素と窒化ケイ素と炭化ケイ素との混合物が得られる。なお、シリコンの窒化反応(Si)はシリコンの炭化反応(SiC)よりも反応速度がかなり遅い。このため、上記フェノール樹脂とシリコン粉末との炭素化後も熱処理を継続して窒素雰囲気下で窒化反応させることにより、窒化ケイ素を含むスポンジ状多孔質構造体(A)を得ることができる。
【0098】
この場合にも、前記スポンジ状の原型構造体(C)は熱分解してなくなり、この結果、スポンジ状の原型構造体(C)の形とほぼ同一のスポンジ状多孔質構造体(A)が得られる。このため、上記の構成においても、酸化チタンを固定化したとき、スポンジ状多孔質構造体(A)の内部の光触媒にまで確実に光を到達させ、光触媒作用を効果的に発現させることが容易となる。
【0099】
前記スポンジ状多孔質構造体(A)における、窒化ケイ素、並びに、シリコン、シリコン合金、炭素、炭化ケイ素、からなる群より選ばれる少なくとも一種(特にシリコン)の合計の割合は、これら成分がスポンジ骨格の基本となることより、体積割合で40%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。つまり、前記スポンジ状多孔質構造体(A)は、窒化ケイ素、並びに、シリコン、シリコン合金、炭素、炭化ケイ素、からなる群より選ばれる少なくとも一種(特にシリコン)を主成分として含んでいればよいが、これら成分の合計の割合が、100重量%、すなわち、前記スポンジ状多孔質構造体(A)が、例えば、窒化ケイ素と、シリコン、シリコン合金、炭素、炭化ケイ素、からなる群より選ばれる少なくとも一種とからなる構成、例えば、前記したように、窒化ケイ素と炭化ケイ素とからなる構成であってもよく、窒化ケイ素と炭化ケイ素と炭素とからなる構成であってもよく、窒化ケイ素とシリコン及び/またはシリコン合金とからなる構成であってもよい。 本発明によれば、前記したように、シリコンの窒化反応と炭化反応との反応速度の違いを利用して上記スポンジ状多孔質構造体(A)の組成を任意に変更することが可能であり、前記原型構造体(C)のスポンジ状骨格における架橋太さの平均を1mm以下とし、シリコンと炭素との組成のモル比(Si/C)を0.1〜2の範囲内にする量のシリコン粉末及び/またはシリコン合金を使用(混合)して、前記原型構造体(C)の形状を保ったスポンジ状多孔質構造体(A)を形成することが好ましい。
【0100】
この場合にも、上記スラリーは、上記条件を満足することができるようにその配合条件を適宜設定すればよく、その配合条件は、特に限定されるものではない。すなわち、この場合にも、上記スラリーは、前記したように、使用成分等に応じて、前記原型構造体(C)に付着させるのに適した濃度に設定されていることが望ましく、フェノール樹脂と分散媒(例えばエタノール)との重量割合を例に挙げれば、例えば、35重量%程度の濃度に調整されていることが好ましい。また、この場合にも、上記スラリーに使用される分散媒としては、例えば前記例示の分散媒を使用することができる。
【0101】
前記したように、スポンジ状骨格の架橋太さの平均が1mm以下であり、且つ、シリコンと炭素との組成のモル比(Si/C)が0.1〜2の範囲内となるように、炭素源となる樹脂とシリコン及び/またはシリコン金属とを使用(混合)することで、原型構造体(C)と、得られるスポンジ状多孔質構造体(A)とのスポンジ状骨格の太さの差がほとんどなく、スポンジ状骨格の形状を保持することができる。これにより、複雑な形状の3次元微細セル構造光触媒フィルターでも容易に製造することができ、この場合にも、セルが均一で、気孔率85容量%以上、特に90容量%以上が実現でき、嵩密度0.3g/cm以下、特に0.2g/cm以下で透光性があり、可視光でも作動する3次元微細セル構造光触媒フィルターを実現することができる。
【0102】
また、スポンジ状多孔質構造体(A)が(d)炭素を含むスポンジ状多孔質構造(B)からなる可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターは、炭素を含むと共に気孔率85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体(A)を、酸化チタンを含有または生成する溶液に浸漬し、乾燥した後に酸化雰囲気下で、100℃〜500℃で焼成することにより容易に製造することができる。
【0103】
つまり、上記視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターは、表面に酸化チタン皮膜が形成されたスポンジ状多孔質構造(B)を備えた可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターであって、前記スポンジ状多孔質構造(B)が、炭素を含むと共に気孔率85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体(A)を、酸化チタンを含有または生成する溶液に浸漬し、乾燥した後に酸化雰囲気下で、100℃〜500℃で焼成することにより構成されている。
【0104】
上記の構成によれば、上記スポンジ状多孔質構造体(A)が、炭素を含む気孔率85%以上のスポンジ状多孔質構造体であるため、上記可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターもまた光触媒を容易に固定することができると共に、光触媒へ照射する光の管理が容易である。また、光透過率が高く、酸化チタンの付着率を上げることができる。さらに、上記スポンジ状多孔質構造体(A)は、炭素を含んで形成され、導電性であるため、可視光でも光触媒作用を効果的に発現させることができる。なお、炭素は樹脂等の炭素化から生じるアモルファス状炭素が強度的にも優れるので、望ましい。また酸化雰囲気下において100℃〜500℃で焼成した酸化チタンによって高効率の光触媒作用を発現させることができ、さらに、上記可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターもまた、製造が容易である。なお、上記構成において酸化チタンの焼成を100℃〜500℃の範囲内にて行う理由は、前記したように、100℃よりも低い温度で焼成したときは酸化チタンの定着が十分ではなく、500℃よりも高い温度で焼成したときは、炭素の酸化が始まるからである。ただし、前記したように、500℃以上の酸化雰囲気でも短時間で処理すれば炭素を酸化させないで処理することができる。
【0105】
さらに、この場合においても、前記スポンジ状多孔質構造体(A)として、例えば炭化ケイ素の粉末を使用して焼結法により作製した3次元セラミックフィルターを使用する場合と異なり、スポンジ状骨格の架橋太さの平均(骨部分の太さの平均値)が太くなって気孔率が低下したり、余剰スラリーが残ってセルとなる部分の目を塞いだりせず、蛍光灯のような可視光でも十分に光触媒作用を発揮させることができる。
【0106】
上記スポンジ状多孔質構造体(A)は、例えば、スポンジ状骨格を有すると共に炭素化時に熱分解する原型構造体(C)に、炭素源となる樹脂を含んだスラリーを含浸させた後、この原型構造体(C)を、不活性雰囲気下において800℃〜1300℃で炭素化させることにより容易に得ることができる。
【0107】
例えば、上記スポンジ状多孔質構造体(A)は、スポンジ状骨格を有する高分子化合物、あるいは天然素材の繊維、糸または紙類からなる原型構造体(C)に、炭素源となる樹脂を含んだスラリーを含浸させた後、この原型構造体(C)を、不活性雰囲気下において800℃〜1300℃で炭素化させることにより形成されるスポンジ状骨格から構成されている構成とすることができる。
【0108】
これにより、上記スポンジ状多孔質構造体(A)として炭素系耐熱性軽量多孔質複合材を使用した可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターを容易に製造することができる。
【0109】
このようなスポンジ状多孔質構造体(A)は、例えば、ポリウレタン等の高分子化合物製のスポンジ状の原型構造体(C)に、フェノール樹脂、フラン樹脂等の樹脂を含んだスラリーを含浸後、余剰のスラリーを除去し、不活性雰囲気下において800℃〜1300℃で炭素化することで製造することができる。この場合にも、上記原型構造体(C)は、熱分解してなくなるため、樹脂が炭素化したアモルファス炭素の構造体となり、スポンジ状の原型構造体(C)の形とほぼ同一のスポンジ状多孔質構造体を得ることができる。このため、上記の構成によれば、酸化チタンを固定化したとき、スポンジ状多孔質構造体(A)の内部の光触媒にまで確実に光を到達させ、光触媒作用を効果的に発現させることが容易となる。
【0110】
なお、前記スポンジ状多孔質構造体(A)における炭素の割合は、炭素が、粉末を繋ぐ骨格を形成する基本成分であるため、体積割合で、40%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがより一層好ましい。つまり、前記スポンジ状多孔質構造体(A)は、炭素を主成分として含んでいればよいが、炭素のみからなる構成を有していてもよい。
【0111】
この場合にも、上記スラリーは、上記条件を満足することができるようにその配合条件を適宜設定すればよく、その配合条件は、特に限定されるものではない。すなわち、この場合にも、上記スラリーは、前記したように、使用成分等に応じて、前記原型構造体(C)に付着させるのに適した濃度に設定されていることが望ましく、フェノール樹脂と分散媒(例えばエタノール)との重量割合を例に挙げれば、例えば、35重量%程度の濃度に調整されていることが好ましい。また、この場合にも、上記スラリーに使用される分散媒としては、例えば前記例示の分散媒を使用することができる。
【0112】
また、スポンジ状多孔質構造体(A)が(e)チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、白金、金、からなる群より選ばれる何れか一種の金属、並びに、炭素、を含むスポンジ状多孔質構造(B)からなる可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターは、炭素と、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、白金、金、からなる群より選ばれる何れか一種の金属とを含むと共に気孔率85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体(A)を、酸化チタンを含有または生成する溶液に浸漬し、乾燥した後、酸化雰囲気下において100℃〜500℃で焼成することにより容易に製造することができる。
【0113】
つまり、上記視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターは、表面に酸化チタン皮膜が形成されたスポンジ状多孔質構造(B)を備えた可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターであって、前記スポンジ状多孔質構造(B)が、炭素と、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、白金、金、からなる群より選ばれる何れか一種の金属とを含むと共に気孔率85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体(A)を、酸化チタンを含有または生成する溶液に浸漬し、乾燥した後に酸化雰囲気下で、100℃〜500℃で焼成することにより構成されている。
【0114】
上記の構成によれば、上記スポンジ状多孔質構造体(A)が、炭素と、上記金属とを含む気孔率85%以上のスポンジ状多孔質構造体であるため、上記可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターもまた光触媒を容易に固定することができると共に、光触媒へ照射する光の管理が容易である。また、光透過率が高く、酸化チタンの付着率を上げることができる。さらに、上記スポンジ状多孔質構造体(A)は、例えば炭素と上記金属とで形成され、導電性であるため、可視光でも光触媒作用を効果的に発現させることができる。なお、炭素は樹脂等の炭素化から生じるアモルファス状炭素が強度的にも優れるので、望ましい。また酸化雰囲気下において100℃〜500℃で焼成した酸化チタンによって高効率の光触媒作用を発現させることができ、さらに、上記可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターもまた、製造が容易である。なお、上記構成において酸化チタンの焼成を100℃〜500℃の範囲内にて行う理由は、前述した通りである。ただし、この場合にも、前記したように、500℃以上の酸化雰囲気でも短時間で処理すれば炭素を酸化させないで処理することができる。
【0115】
さらに、この場合においても、前記スポンジ状多孔質構造体(A)として、例えば炭化ケイ素の粉末を使用して焼結法により作製した3次元セラミックフィルターを使用する場合と異なり、スポンジ状骨格の架橋太さの平均(骨部分の太さの平均値)が太くなって気孔率が低下したり、余剰スラリーが残ってセルとなる部分の目を塞いだりせず、蛍光灯のような可視光でも十分に光触媒作用を発揮させることができる。
【0116】
上記スポンジ状多孔質構造体(A)は、例えば、スポンジ状骨格を有すると共に炭素化時に熱分解する原型構造体(C)に、炭素源となる樹脂と、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、白金、金、からなる群より選ばれる何れか一種の金属の粉末とを含んだスラリーを含浸させた後、この原型構造体(C)を、不活性雰囲気下において800℃〜1300℃で炭素化させることにより容易に得ることができる。
【0117】
例えば、上記スポンジ状多孔質構造体(A)は、スポンジ状骨格を有する高分子化合物、あるいは天然素材の繊維、糸または紙類からなる原型構造体(C)に、炭素源となる樹脂と、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、白金、金、からなる群より選ばれる何れか一種の金属の粉末とを含んだスラリーを含浸させた後、この原型構造体(C)を、不活性雰囲気下において800℃〜1300℃で炭素化させることにより形成されるスポンジ状骨格から構成されている構成とすることができる。
【0118】
これにより、導電性であり、可視光でも光触媒作用を効果的に発現させることができる可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターを容易に製造することができる。
【0119】
なお、前記スポンジ状多孔質構造体(A)における炭素並びに上記金属の合計の割合は、これら成分がスポンジ骨格の基本となることより、体積割合で40%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。つまり、前記スポンジ状多孔質構造体(A)は、炭素並びに上記金属を主成分として含んでいればよいが、これら成分の合計の割合が、100重量%、すなわち、前記スポンジ状多孔質構造体(A)が、例えば、炭素と上記金属とからなる構成を有していてもよい。
【0120】
また、前記スポンジ状多孔質構造体(A)中における金属の割合は、該金属が、炭素源としての樹脂によるアモルファス炭素で結合していることから、体積割合で60%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましい。
【0121】
この場合、前記スポンジ状多孔質構造体(A)は、例えば、炭素とチタンとからなることが好ましく、前記スポンジ状多孔質構造(B)を構成するスポンジ状骨格の架橋太さの平均が1mm以下であり、且つ、上記金属と炭素との組成のモル比、特に、前記スポンジ状多孔質構造体(A)が炭素とチタンとからなる場合、チタンと炭素との組成のモル比(Ti/C)が、0.1〜2の範囲内であることがより好ましい。
【0122】
このため、本発明においては、前記原型構造体(C)のスポンジ状骨格における架橋太さの平均を1mm以下とし、上記金属と炭素との組成のモル比、特に、前記スポンジ状多孔質構造体(A)が炭素とチタンとからなる場合、チタンと炭素との組成のモル比(Ti/C)を、0.1〜2の範囲内にする量のチタン粉末を混合させて、前記原型構造体(C)の形状を保ったスポンジ状多孔質構造体(A)を形成することが好ましい。
【0123】
この場合にも、上記スラリーは、上記条件を満足することができるようにその配合条件を適宜設定すればよく、その配合条件は、特に限定されるものではない。すなわち、この場合にも、上記スラリーは、前記したように、使用成分等に応じて、前記原型構造体(C)に付着させるのに適した濃度に設定されていることが望ましい。また、この場合にも、上記スラリーに使用される分散媒としては、例えば前記例示の分散媒を使用することができる。
【0124】
この場合、上記チタン粉末としては、表面酸化を防ぐため、水素化チタン粉末を用いることが望ましい。
【0125】
前記したように、スポンジ状骨格の架橋太さの平均が1mm以下で、前記金属、例えばチタンと炭素との組成のモル比(Ti/C)が0.1〜2の範囲内である場合、原型構造体(C)と、得られるスポンジ状多孔質構造体(A)とのスポンジ状骨格の太さの差がほとんどなく、スポンジ状骨格の形状を保持することができる。これにより、複雑な形状の3次元微細セル構造光触媒フィルターでも容易に製造することができ、この場合にも、セルが均一で、気孔率85容量%以上、特に90容量%以上が実現でき、嵩密度0.3g/cm以下、特に0.2g/cm以下で透光性があり、可視光でも作動する3次元微細セル構造光触媒フィルターを実現することができる。
【0126】
なお、本発明において、前記した各スラリーは、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、アルミナ、シリカ、ムライト、ジルコニア、からなる群より選ばれる少なくとも1種の粉末をさらに含んでいてもよい。すなわち、本発明において用いられる前記各スポンジ状多孔質構造体(A)は、前記(a)〜(e)における前記例示の成分以外に、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、アルミナ、シリカ、ムライト、ジルコニア等、上記粉末(セラミックス粉末)に基づく、1種または2種以上の成分を、さらに含んでいてもよい。
【0127】
このようにセラミックス粉末を添加することにより、炭素化焼成時のスポンジの収縮を少なくし、表面積を増加させることができる。これらセラミックス粉末は、例えば、炭素源として使用する前記樹脂に混合して使用することができる。なお、上記セラミックス粉末は、上記樹脂からの炭素に対して体積割合で、50%以下のセラミックス粉末量となるように使用することが望ましい。
【0128】
なお、本発明のさらに他の目的、特徴、及び優れた点は、以下に示す記載によって十分わかるであろう。また、本発明の利益は、添付図面を参照した次の説明で明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】図1は、本発明の実施の一形態にかかる、透光窓を備えた浄化装置の断面図である。
【図2(a)】図2(a)は、本発明の酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体のNOx分解に基づく光触媒作用を説明するグラフである。
【図2(b)】図2(b)は、本発明の酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体のNOx分解に基づく光触媒作用を説明する他のグラフである。
【図3】図3は、本発明の酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体を含む浄化装置を用いたNOx分解に基づく光触媒作用を説明するグラフである。
【図4】図4は、本発明における他の酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体のNOx分解に基づく光触媒作用を説明するグラフである。
【図5】図5は、本発明の実施の他の形態にかかる、内部光源を備えた他の浄化装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0130】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例及び比較例によりなんら限定されるものではない。
【0131】
なお、以下の実施例及び比較例において、嵩密度は、容積と重量とを測定することにより計算した。また、気孔率は嵩密度と真密度とから計算した。さらに、酸化チタン付着重量は、前後の重量を測定することにより得た。比表面積は窒素ガス吸着法により測定した。
【0132】
〔実施例1〕
先ず、約10mm×50mm×50mmの板状の形態を有し、スポンジ状骨格の架橋太さが約0.2mm、セル数が約13個/25mmのポリウレタン製のスポンジ状原型構造体を、炭素源としてのフェノール樹脂及びシリコン粉末をSi/C=0.8のモル比の組成でエタノールと混合したスラリーに浸した。次いで、過剰のスラリーを除去した上記スポンジ状原型構造体を、アルゴン雰囲気下、1000℃で1時間焼成して炭素化した。続いて、この炭素化したスポンジ状原型構造体を真空中、1450℃に昇温して反応焼結させ、得られた焼結体にシリコンを、炭素化後の重量の約1.4倍の割合で溶融含浸させることによりスポンジ状多孔質構造体を形成した。
【0133】
次に、上記スポンジ状多孔質構造体を、光触媒用酸化チタンコーティング剤(テイカ株式会社製、商品名「TKC−303」)の溶液に浸漬し、乾燥した後、大気中等の酸化雰囲気において昇温速度10℃/分で400℃まで昇温して1時間保持した後、室温まで冷却することにより、上記スポンジ状多孔質構造体に酸化チタンを固定した。
【0134】
表1に、本発明の酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体と後述する比較例に記載の試料とにおける嵩密度、気孔率、酸化チタン付着重量、光透過率をまとめて示す。
【0135】
【表1】

【0136】
上記のようにして得られた本実施例にかかる酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体は、炭化ケイ素(SiC)とシリコン(Si)とのモル比が約1:1であり、約10mm×50mm×50mmの板状であって、表1に示すように嵩密度が0.14g/cm、気孔率が94.8容量%、比表面積が約0.1m/gであった。
【0137】
このように、実施例1の酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体は、約10mm×50mm×50mmの板状形態を有し、ポリウレタン製のスポンジ状原型構造体の形態とほぼ同一形態を保持しており、架橋太さもほぼ同一であった。酸化チタンは0.0893g付着した。
【0138】
続いて、厚さ約10mmの酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体に365nmの波長の紫外線を照射したときの光透過率を測定した。表1に示すように、365nmの紫外線を照射したときの光透過率は5.23%であった。
【0139】
次いで、酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体の光触媒効果の比較を行うため、この酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体を密閉容器中に入れ、複数の波長の光を照射し、約5ppmのNOxガスを含む空気を500ml/分で通過させて、NOxガス濃度を測定し、次にこの酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体通過後のNOxガス測定濃度と同じ濃度のNOxガスを調整して上記と同様の実験を5回繰り返し流してNOxガス濃度の測定を行った。NOxガス濃度の低下が大きいものほど、酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体の光触媒効果が大きいことを示す。
【0140】
表2は、NOx分解に基づく酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体の光触媒作用の比較表である。
【0141】
【表2】

【0142】
図2(a)および図2(b)に、上記表2に記載の光触媒作用を図示する。図2(a)は、実施例1・2及び比較例1・2における酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体のNOx分解に基づく光触媒作用を示すグラフであり、図2(b)は、実施例2・3における酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体のNOx分解に基づく光触媒作用を説明するグラフである。より詳しくは、図2(a)は、表2の測定No.1〜6、No.10〜15における光触媒効果を示し、図2(b)は、表2の測定No.4〜9における光触媒効果を示している。なお、図2(a)および図2(b)中、測定No.を丸付き数字にて示す。
【0143】
なお、表1及び表2において、「実施例1」は、実施例1の酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体を示している。同様に、「実施例2」は、後述の実施例2の酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体、「実施例3」は後述の実施例3の酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体を示している。なお、測定は、各実施例及び比較例とも、最強波長254nmの紫外線(殺菌灯)、最強波長365nmの紫外線(ブラックライト)、蛍光灯をそれぞれ照射することで行った。
【0144】
表2の測定No.1〜3に示すように、実施例1の酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体通過後のNOxガス濃度は、波長254nmの紫外線では、通過回数が2回で2.88ppm、5回で0.91ppmになり、大きな光触媒効果が認められた。また、波長365nmの紫外線では、通過回数が2回で1.72ppm、5回で0ppmとなり、顕著な光触媒効果が認められた。さらに、蛍光灯でも、通過回数が5回で3.55ppmになり、かなりの光触媒作用が確認できた。
【0145】
〔実施例2〕
先ず、約10mm×50mm×50mmの板状の形態を有し、スポンジ状骨格の架橋太さが約0.1mm、セル数が約18個/25mmのポリウレタン製のスポンジ状原型構造体を、炭素源としてのフェノール樹脂及びシリコン粉末をSi/C=0.8のモル比の組成でエタノールと混合したスラリーに浸した。次いで、過剰のスラリーを除去した上記スポンジ状原型構造体を、アルゴン雰囲気下、1000℃で1時間焼成して炭素化した。続いて、この炭素化したスポンジ状原型構造体を真空中、1450℃に昇温して反応焼結させ、得られた焼結体にシリコンを、炭素化後の重量の約1.4倍の割合で溶融含浸させることによりスポンジ状多孔質構造体を形成した。すなわち、前記実施例1において、スポンジ状骨格の架橋太さ並びにセル数が異なるスポンジ状原型構造体を用いた以外は、実施例1と同様の反応・操作を行って本実施例2のスポンジ状多孔質構造体を形成した。
【0146】
次いで、このスポンジ状多孔質構造体に、前記実施例1と同様にして酸化チタンを固定することにより本発明にかかる酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体を得た。
【0147】
このようにして得られた酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体は、炭化ケイ素(SiC)とシリコン(Si)とのモル比が約1:1の約10mm×50mm×50mmの板状であり、表1の「実施例2」に示すように嵩密度が0.17g/cm、気孔率が93.7%、比表面積が約0.1m/gであった。実施例2の酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体は実施例1と同様、約10mm×50mm×50mmの板状形態を有し、ポリウレタン製のスポンジ状原型構造体の形態とほぼ同一形態を保持しており、架橋太さもほぼ同一であった。酸化チタンは0.4484g付着した。また、厚さ約10mmの酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体に365nmの紫外線を照射したときの光透過率は、表1に示すように0.34%であった。実施例2の酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体は、実施例1と比較してセル数が多いため、光透過率は下がるが、酸化チタンの付着量が多いため、光触媒効果は大きくなっていることがわかる。
【0148】
表2の測定No.4〜6によれば、実施例2の酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体通過後のNOxガス濃度は、波長254nmの紫外線では、通過回数が2回で2.36ppm、5回で0.56ppmになり、大きな光触媒効果が認められた。また、波長365nmの紫外線では、通過回数が2回で1.37ppm、5回で0ppmとなり、顕著な光触媒効果が認められた。さらに、蛍光灯でも、通過回数が5回で1.82ppmになり、蛍光灯でも高効率の光触媒作用が確認できた。これにより、3次元微細セル構造光触媒フィルターを可視光応答型とすることができることがわかる。また、図2(a)に示すように、測定No.4〜6によれば、比較例である測定No.10〜15よりは確実にNOxガス濃度が低下している。
【0149】
〔実施例3〕
実施例2と同じスポンジ状多孔質構造体を、酸化チタンを含む溶液に浸漬し、乾燥した試料を酸化雰囲気において昇温速度10℃/分で600℃まで昇温して1時間保持した後、室温まで冷却した以外は、実施例2と同様の反応・操作を行って本発明にかかる酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体を得た。
【0150】
表2の測定No.7〜9によれば、実施例3の酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体通過後のNOxガス濃度は、波長254nmの紫外線では、通過回数が3回で3.62ppm、5回で2.79ppmになり、大きな光触媒効果が認められた。また、波長365nmの紫外線では、通過回数が2回で2.91ppm、5回で0.99ppmとなり、顕著な光触媒効果が認められた。さらに、蛍光灯でも、通過回数が5回で3.46ppmになり、蛍光灯でも光触媒作用が確認できた。図2(b)の測定No.7〜9は、図2(a)に示す比較例としての測定No.10〜15よりは確実にNOxガス濃度が低下している。また、実施例2のように400℃まで昇温して1時間保持した方(図2(b)の測定No.4〜6)が、600℃昇温して1時間保持する(測定No.7〜9)よりも比較的大きな光触媒効果を示すことがわかる。
【0151】
〔実施例4〕
本実施例4では、実施例2と同じ条件で酸化チタンを被覆した酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体を、浄化装置で動作させるために加工し、浄化装置内に収容して測定した。先ず、スポンジ状多孔質構造体の形状を内径約31mm、外径約41mm、高さ約30mmのリング状のフィルターユニットに加工し、これを積層して高さ約350mmのリング状のフィルターユニット積層体を得た。このリング状のフィルターユニット積層体を、本発明にかかる光触媒フィルター(リング状可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルター5)として、両端に流体導入口4aと流体出口4bとが設けられた内径45mmのアクリル製外套管からなる容器4と、内部に光源6が配設され、透光構造に形成された外径30mmの内管7(石英管)とからなる長さ約450mmの二重管から構成された、図5に示す浄化装置内に収容した。
【0152】
なお、上記光源6には、蛍光灯、ブラックライト(最強波長365nm)、殺菌灯(最強波長254nm)を使用した。また、本実施例4では、15ppm〜0ppmのNOxガスを含む空気を500ml/分でこの浄化装置に通過させて、NOxガス濃度を測定した。
【0153】
表3に、上記浄化装置によるNOxガスの測定値を示す。また、図3は、表3に記載の本発明の酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体を含む浄化装置を用いたNOx分解に基づく光触媒作用を説明するグラフである。
【0154】
【表3】

【0155】
表3及び図3から、酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体通過後のNOxガス濃度は、蛍光灯でも7ppm程度のNOxガスなら、1回の処理でほぼ0ppmになり、15ppmのNOxガスでも1回の処理で3.5ppmまで下がるので、この浄化装置を直列に2本連結すれば、0ppmになることがわかる。また、ブラックライト(波長365nm)では、約12ppmのNOxガスも1回の処理でほぼ0ppmになる。殺菌灯(波長254nm)では、9ppmのNOxガスが1回の処理でほぼ0ppmになり、約13ppmのNOxガスでも0.3ppmまで分解できる。このように実施例4のスポンジ状多孔質構造体からなる3次元微細セル構造光触媒フィルターは、蛍光灯でも、ブラックライトでも、殺菌灯でも、大きな光触媒効果を示すことがわかる。
【0156】
〔実施例5〕
実施例2において、フェノール樹脂及びシリコン粉末をエタノールと混合してなるスラリーに代えて、シリコン粉末を使用せず、炭素源としてのフェノール樹脂をエタノールに溶解した液を使用し、該液に、実施例2と同じポリウレタン製のスポンジ状原型構造体を浸し、過剰の液体を除去した後、アルゴン雰囲気下、1000℃で1時間焼成して炭素化させることにより、スポンジ状多孔質構造体を得た。次いで、このスポンジ状多孔質構造体を、酸化チタンを含有または生成する溶液に浸漬し、乾燥した後、酸化雰囲気下で、100℃〜500℃で焼成することにより酸化チタンを固定化した以外は、実施例2と同様の反応・操作を行って本発明にかかる酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体を得た。
【0157】
このようにして得られた本実施例5にかかる酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体は、アモルファス炭素からなる約8mm×44mm×44mmの板状物であり、導電性を有し、約12%程度の収縮を示した。上記酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体の嵩密度は0.06g/cmであり、気孔率は97%であり、比表面積は約0.1m/gであった。酸化チタンは、0.242g付着した。本実施例にかかる酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体は、1450℃での反応焼結やシリコンの溶融含浸、並びに、シリコン粉末の添加を行わないことから、実施例2よりも製造が容易であった。
【0158】
表4に、NOx分解に基づく上記酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体の光触媒作用を示す。
【0159】
【表4】

【0160】
また、図4は本発明にかかる酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体のNOx分解に基づく光触媒作用を説明するグラフであり、上記表4並びに後述する表5に記載の光触媒作用を併せて図示したものである。なお、図4中、測定No.を丸付き数字にて示す。
【0161】
表4及び図4に示すように、酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体通過後のNOxガス濃度は、波長254nmの紫外線では、通過回数が2回で1.29ppm、5回で0.06ppmになり、大きな光触媒効果が認められた。また、波長365nmの紫外線では、通過回数が2回で0.99ppm、5回で0.06ppmとなり、顕著な光触媒効果が認められた。さらに、蛍光灯でも、通過回数が5回で2.32ppmになり、蛍光灯でも光触媒作用が確認できた。
【0162】
〔実施例6〕
実施例2において、フェノール樹脂及びシリコン粉末をエタノールと混合してなるスラリーを使用し、該スラリーに、実施例2と同じポリウレタン製のスポンジ状原型構造体を浸し、過剰のスラリーを除去した後、アルゴン雰囲気下、1000℃で1時間焼成して炭素化させることにより、1450℃での反応焼結及びシリコンの溶融含浸を行わずに得られたスポンジ状多孔質構造体を用いて酸化チタンを固定化した以外は、実施例2と同様の反応・操作を行って本発明にかかる酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体を得た。
【0163】
このようにして得られた本実施例6にかかる酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体は、アモルファス炭素とシリコン粉末との混合物からなる約10mm×50mm×50mmの板状物であり、嵩密度は0.07g/cm、気孔率は97%、比表面積は約68m/gであった。酸化チタンは、0.400g付着した。本実施例にかかる酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体は、1450℃での反応焼結やシリコンの溶融含浸を行わないことから、実施例2よりも製造が容易であった。
【0164】
表4及び図4に示すように、酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体通過後のNOxガス濃度は、波長254nmの紫外線では、通過回数が2回で0.58ppm、5回で0.00ppmになり、大きな光触媒効果が認められた。また、波長365nmの紫外線では、通過回数が2回で0.31ppm、5回で0.00ppmとなり、顕著な光触媒効果が認められた。さらに、蛍光灯でも、通過回数が5回で1.34ppmになり、蛍光灯でも光触媒作用が大きいことが確認できた。
【0165】
〔実施例7〕
先ず、約10mm×50mm×50mmの板状の形態を有し、スポンジ状骨格の架橋太さの平均が約0.2mm、セル数が約18個/25mmのポリウレタン製のスポンジ状原型構造体を、炭素源としてのフェノール樹脂及び水素化チタン粉末をTi/C=0.6のモル比の組成でエタノールと混合したスラリーに浸した。次いで、過剰のスラリーを除去した上記スポンジ状原型構造体を、アルゴン雰囲気下、1000℃で1時間焼成して炭素化した。続いて、実施例1と同様の反応・操作を行って、上記の炭素化したスポンジ状原型構造体に、酸化雰囲気中、400℃で酸化チタンを固定化した。
【0166】
表5に、チタンと炭素とで構成された上記酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体に、殺菌灯、ブラックライト、蛍光灯を照射して光触媒作用を発現してNOx分解させたときの光触媒作用を示す。
【0167】
表5及び図4に示すように、酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体通過後のNOxガス濃度は、波長254nmの紫外線では、通過回数が2回で0.51ppm、5回で0.00ppmになり、大きな光触媒効果が認められた。また、波長365nmの紫外線では、通過回数が2回で0.10ppm、5回で0.00ppmとなり、顕著な光触媒効果が認められた。さらに、蛍光灯でも、通過回数が5回で1.46ppmになり、蛍光灯でも光触媒作用が大きいことが確認できた。
【0168】
【表5】

【0169】
〔比較例1〕
ブリジストン株式会社製の嵩密度0・55g/cm、気孔率83%、約10mm×50mm×50mmの板状の炭化ケイ素セラミックフォーム#06(セル数約6個/25mm)を用いて酸化チタン被覆を行って比較用の酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体を得た。表1に示すように、本比較例1で得られた比較用の酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体に365nmの紫外線を照射したときの光透過率は5.06%であり、0.1361gの酸化チタンが付着した。実施例1と比較した場合、本比較例1で得られた比較用の酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体の光透過率は、実施例1で得られた本発明にかかる酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体の光透過率とほぼ同じであり、酸化チタンの付着量は実施例1よりも多かった。
【0170】
しかしながら、実施例1〜3と同様に、最初に5ppmのNOxガスを含む空気を500ml/分で流して、上記比較用の酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体通過後のNOxガス濃度を測定したところ、表2の測定No.10に示すように、波長254nmの紫外線では、通過回数が2回で4.8ppm、5回で4.07ppmになり、NOxガスの低減効果は非常に小さいものであった。また、測定No.11に示す波長365nmの紫外線の場合は、通過回数が2回で4.81ppm、5回で4.73ppmとなり、ほとんどNOxガス濃度は低減しない。さらに、測定No.12の蛍光灯では、通過回数が5回で4.96ppmであり、光触媒作用が確認できなかった。図2(a)においても、明らかにNOxガス濃度は低下していない。これは、逆に、実施例2のNo.6に示したように、本発明の酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体が明らかに可視光応答型になっていることを示している。また実施例1で得られた酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体と比べて、本比較例1で得られた比較用の酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体が、光透過率はほぼ同じであり、かつ、酸化チタンの付着量は多いにもかかわらず光触媒作用が劣っているという事実は、本発明の酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体の光触媒作用がいかに優れているかを示している。
【0171】
〔比較例2〕
ブリジストン株式会社製の嵩密度0・57g/cm、気孔率82%、約10mm×50mm×50mmの板状の炭化ケイ素セラミックフォーム#13(セル数約13個/25mm)を用いて酸化チタン被覆を行って比較用の酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体を得た。表1に示すように、本比較例2で得られた比較用の酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体に365nmの紫外線を照射したときの光透過率は0.17%であり、0.2293gの酸化チタンが付着した。同じセル数の実施例1と比較し、光透過率は低いが、酸化チタンの付着量は多かった。
【0172】
しかしながら、実施例1〜3と同様に、最初に5ppmのNOxガスを含む空気を500ml/分で流して、上記比較用の酸化チタン被覆スポンジ状多孔質構造体通過後のNOxガス濃度を測定したところ、表2の測定No.13に示すように、波長254nmの紫外線では、通過回数が2回で4.56ppm、5回で3.86ppmになり、NOxガスの低減効果は非常に小さいものであった。また、測定No.14に示す波長365nmの紫外線の場合は、通過回数が2回で4.4ppm、5回で3.68ppmとなり、ほとんどNOxガス濃度は低減しない。ことがわかった。さらに、蛍光灯では、通過回数5回で4.84ppmでであり、光触媒作用が確認できなかった。
【0173】
〔比較例3〕
実施例1において、酸化チタンの皮膜が形成されていないスポンジ状多孔質構造体を、実施例1〜3と同様に、最初に5ppmのNOxガスを含む空気を500ml/分で流して、上記比較用のスポンジ状多孔質構造体通過後のNOxガス濃度を測定したところ、表2に示すように、波長254nmの紫外線では、通過回数が2回で4.83ppm、5回で4.66ppmになり、酸化チタンが無くてもNOxガスを分解することができたが、効果は非常に小さかった。また、波長365nmの紫外線では、通過回数が2回で4.93ppmとなり5回目もほとんど変わらず、NOxガス濃度は低減しなかった。
【0174】
〔比較例4〕
比較例4は、実施例2の酸化チタンの皮膜を形成されていないスポンジ状多孔質構造体を、実施例1〜3と同様に、最初に5ppmのNOxガスを含む空気を500ml/分で流して、上記比較用のスポンジ状多孔質構造体通過後のNOxガス濃度を測定したところ、表2に示すように、波長254nmの紫外線では、通過回数が2回で4.85ppm、5回で4.65ppmになり、酸化チタンが無くてもNOxガスを分解することができたが、効果は非常に小さかった。また、波長365nmの紫外線では、通過回数が2回で4.95ppmとなり、5回目もほとんど変わらず、NOxガス濃度は低減しなかった。
【0175】
尚、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する特許請求の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明の可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターは、NOx等の有害物を含む汚染空気の浄化や汚染水の清浄化等を高効率に行うことができる浄化装置に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気孔率が85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体(A)表面に、アナタース型の酸化チタン皮膜が形成されてなり、且つ、前記スポンジ状多孔質構造体(A)が、炭化ケイ素とシリコンとからなるスポンジ状多孔質構造(B)からなるとともに、
前記スポンジ状多孔質構造(B)を構成するスポンジ状骨格の架橋太さの平均が1mm以下であり、且つ、シリコンと炭化ケイ素との組成のモル比(Si/SiC)が0.1〜4であることを特徴とする可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルター。
【請求項2】
表面にアナタース型の酸化チタン皮膜が形成されたスポンジ状多孔質構造(B)を備えた可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターであって、
前記スポンジ状多孔質構造(B)が、
炭化ケイ素とシリコンとからなると共に気孔率85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体(A)を、酸化チタンを含有または生成する溶液に浸漬し、乾燥した後に酸化雰囲気下で、100℃〜800℃で焼成することにより構成されていることを特徴とする可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルター。
【請求項3】
表面にアナタース型の酸化チタン皮膜が形成されたスポンジ状多孔質構造(B)を備えた可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターであって、
前記スポンジ状多孔質構造(B)が、
アモルファス炭素からなると共に気孔率85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体(A)を、酸化チタンを含有または生成する溶液に浸漬し、乾燥した後に酸化雰囲気下で、100℃〜500℃で焼成することにより構成されていることを特徴とする可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルター。
【請求項4】
気孔率が85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体(A)表面に、アナタース型の酸化チタン皮膜が形成されてなり、且つ、前記スポンジ状多孔質構造体(A)が、炭素とチタンとからなるスポンジ状多孔質構造(B)からなるとともに、
前記スポンジ状多孔質構造(B)を構成するスポンジ状骨格の架橋太さの平均が1mm以下であり、且つ、チタンと炭素との組成のモル比(Ti/C)が0.1〜2の範囲内であることを特徴とする可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルター。
【請求項5】
表面にアナタース型の酸化チタン皮膜が形成されたスポンジ状多孔質構造(B)を備えた可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターであって、
前記スポンジ状多孔質構造(B)が、
炭素とチタンとからなると共に気孔率85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体(A)を、酸化チタンを含有または生成する溶液に浸漬し、乾燥した後に酸化雰囲気下で、100℃〜500℃で焼成することにより構成されていることを特徴とする可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルター。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターを備えていることを特徴とする浄化装置。
【請求項7】
両端に流体導入口と流体出口が設けられるとともに外部には可視光及び/または紫外線を透過できる透光域が設けられた容器と、前記容器の内部に収容された光触媒フィルターとを備え、前記透光域から受光した可視光及び/または紫外線により光触媒フィルターが前記流体導入口から流入した流体を浄化して前記流体出口から排出する可視光応答型の浄化装置であり、
前記光触媒フィルターが、前記可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターを平板状に形成したフィルターユニットで構成されていることを特徴とする請求項6に記載の浄化装置。
【請求項8】
流体導入口と流体出口とが両端に設けられた容器と、前記容器の内部に収容され内部に円筒状空隙が設けられたリング状光触媒フィルターと、前記リング状光触媒フィルターの円筒状空隙内に設けられ可視光及び/または紫外線を照射できる光源とを備え、前記光源から照射された可視光及び/または紫外線により光触媒フィルターが前記流体導入口から流入した流体を浄化して前記流体出口から排出する可視光応答型の浄化装置であり、
前記光触媒フィルターが、前記可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターをリング状に形成したフィルターユニットで構成されていることを特徴とする請求項6に記載の浄化装置。
【請求項9】
炭化ケイ素とシリコンとを含むと共に気孔率85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体(A)を、酸化チタンを含有または生成する溶液に浸漬し、乾燥した後、酸化雰囲気下において100℃〜800℃で焼成することを特徴とする可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターの製造方法。
【請求項10】
スポンジ状骨格を有すると共に炭素化時に熱分解する原型構造体(C)に、炭素源となる樹脂と、シリコン粉末とを含んだスラリーを含浸させた後、この原型構造体(C)を、不活性雰囲気下において800℃〜1300℃で炭素化し、さらに、1300℃以上で反応焼結させて得られた焼結体に、さらに、1300℃〜1800℃でシリコンを溶融含浸させて前記スポンジ状多孔質構造体(A)を形成することを特徴とする請求項9に記載の可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターの製造方法。
【請求項11】
前記スポンジ状多孔質構造体(A)が、スポンジ状骨格を有する高分子化合物、あるいは天然素材の繊維、糸または紙類からなる原型構造体(C)に、炭素源となる樹脂と、シリコン粉末とを含んだスラリーを含浸させた後、この原型構造体(C)を、不活性雰囲気下において800℃〜1300℃で炭素化し、さらに、1300℃以上で反応焼結させて得られた焼結体に、さらに、1300℃〜1800℃でシリコンを溶融含浸させることにより形成されるスポンジ状骨格から構成されていることを特徴とする請求項9に記載の可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターの製造方法。
【請求項12】
前記原型構造体(C)のスポンジ状骨格における架橋太さの平均を1mm以下とし、シリコンと炭素との組成のモル比(Si/C)を0.1〜2の範囲内にする量の上記シリコン粉末を用いて、前記原型構造体(C)の形状を保ったスポンジ状多孔質構造体(A)を形成することを特徴とする請求項10または11に記載の可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターの製造方法。
【請求項13】
前記原型構造体(C)のスポンジ状骨格における架橋太さの平均を1mm以下とし、上記反応焼結により得られた焼結体に、シリコンと炭化ケイ素との組成のモル比(Si/SiC)を0.1〜4にする量のシリコンを含浸させて、前記原型構造体(C)の形状を保ったスポンジ状多孔質構造体(A)を形成することを特徴とする請求項10または11に記載の可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターの製造方法。
【請求項14】
アモルファス炭素からなると共に気孔率85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体(A)を、酸化チタンを含有または生成する溶液に浸漬し、乾燥した後、酸化雰囲気下において100℃〜500℃で焼成することを特徴とする可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターの製造方法。
【請求項15】
スポンジ状骨格を有すると共に炭素化時に熱分解する原型構造体(C)に、炭素源となる樹脂を含んだスラリーを含浸させた後、この原型構造体(C)を、不活性雰囲気下において800℃〜1300℃で炭素化させて前記スポンジ状多孔質構造体(A)を形成することを特徴とする請求項14に記載の可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターの製造方法。
【請求項16】
前記スポンジ状多孔質構造体(A)が、スポンジ状骨格を有する高分子化合物、あるいは天然素材の繊維、糸または紙類からなる原型構造体(C)に、炭素源となる樹脂を含んだスラリーを含浸させた後、この原型構造体(C)を、不活性雰囲気下において800℃〜1300℃で炭素化させることにより形成されるスポンジ状骨格から構成されていることを特徴とする請求項14に記載の可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターの製造方法。
【請求項17】
炭素とチタンとからなると共に気孔率85容量%以上のスポンジ状多孔質構造体(A)を、酸化チタンを含有または生成する溶液に浸漬し、乾燥した後、酸化雰囲気下において100℃〜500℃で焼成することを特徴とする可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターの製造方法。
【請求項18】
スポンジ状骨格を有すると共に炭素化時に熱分解する原型構造体(C)に、炭素源となる樹脂とチタン粉末とを含んだスラリーを含浸させた後、この原型構造体(C)を、不活性雰囲気下において800℃〜1300℃で炭素化させて前記スポンジ状多孔質構造体(A)を形成することを特徴とする請求項17に記載の可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターの製造方法。
【請求項19】
前記スポンジ状多孔質構造体(A)が、スポンジ状骨格を有する高分子化合物、あるいは天然素材の繊維、糸または紙類からなる原型構造体(C)に、炭素源となる樹脂とチタン粉末とを含んだスラリーを含浸させた後、この原型構造体(C)を、不活性雰囲気下において800℃〜1300℃で炭素化させることにより形成されるスポンジ状骨格から構成されていることを特徴とする請求項17に記載の可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターの製造方法。
【請求項20】
前記原型構造体(C)のスポンジ状骨格における架橋太さの平均を1mm以下とし、チタンと炭素との組成のモル比(Ti/C)を0.1〜2の範囲内にする量のチタン粉末を用いて、前記原型構造体(C)の形状を保ったスポンジ状多孔質構造体(A)を形成することを特徴とする請求項18または19に記載の可視光応答型3次元微細セル構造光触媒フィルターの製造方法。

【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−589(P2011−589A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192924(P2010−192924)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【分割の表示】特願2005−505785(P2005−505785)の分割
【原出願日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】