説明

可視光通信システム

【課題】可視光通信システムにおいて、受信器で十分な照度が得られる発光部の発光強度(一般的にはLED駆動電流)が簡易に求められる様にすることで、可視光通信システムの自動診断及び自動調光を行える様なシステムを提供する。
【解決手段】貫通孔を有する反射鏡22を受光部21の上方に配置し、送信器1には該反射鏡22からの反射光101bを受光するモニタ受光器12を配置する。本来の可視光通信は該反射鏡22の貫通孔を通過した可視光101aで行われ、一方該反射鏡22で反射した反射光101bは該モニタ受光器12で受光し、これを復調して得たデータと送信時のデータとを比較することにより、或いは該反射光101bの反射強度を測り予め求めておいた正常な可視光通信を行うのに必要な反射強度と比較することで、該送信器1のLEDの発光強度を決定したり、リアルタイムで修正したりすることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は、可視光通信システムに関し、特に受信器での安定した受光状態を確保するためのものである。
【背景技術】
【0002】

旧来の可視光通信システムでは、受信器は十分な受光強度が得られていることを前提に様々な提案がなされているが、送信器や受信器の可視光が通過する窓部の汚れや、送信器のLEDの劣化などがあり、実用時には十分な受光強度が得られない状況が想定される。

更に人の住空間として快適な照度を考えたとき、照度を極力抑えたい場面も存在するが、可視光通信に支障ない最低の発光強度を、場面ごとに簡易に決定することも困難であった。
【0003】

これらの対策として、受信器に光量センサを配置し送信器の発光強度を制御する方法が提案されているが、該受信器で得た光量データを該送信器にフィードバックする手段が必要となり、装置はその分複雑なものになる。

また受信器に光量センサを用いない対策を考えると、送信器の元データと受信器で復調されたデータを比較するなどの方法が挙げられるが、この場合でも該受信器からのデータをフィードバックする必要があり、可視光通信そもそもの意義をなくす上に、簡易なシステムでは実現が難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】

【特許文献1】特開2010−80102公報
【特許文献2】特開2008−243748公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】

可視光通信システムにおいて、受信器で十分な照度が得られる発光部の発光強度(一般的にはLED電流)が簡易に求められる様にすることで、可視光通信システムの自動診断及び自動調光を行える様なシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】

貫通孔を有する反射鏡を該受信器の構成要素の一つである受光部の上方に配置し、送信器には該反射鏡からの反射光を受光するモニタ受光部を配置する。

本来の可視光通信は該反射鏡の該貫通孔を通過した可視光で行われ、一方該反射鏡で反射した反射光は該送信器の該モニタ受光器で受光し、この反射光を復調して得られたデータと送信時のデータとを比較することにより、或いはこの反射光の強度を測り実験により予め求めておいた正常な可視光通信を行うのに必要な反射強度と比較することで、送信器のLEDの発光強度を決定したり調整したりすることが可能となる。
【0007】

また、可視光通信時に絶えずこのモニタ光量を監視し、経時変化を把握することにより、LEDの劣化や送受信器の窓部の汚れなどを検出することができ、該受信器への光量不足の予防が可能となる。
【発明の効果】
【0008】

以上の様に構成することにより、発光部の最適な発光強度の設定が簡易行え、且つLEDの劣化及び送受信器の窓部の汚れなどによる該受信器への光量不足の診断や予防が可能な可視光通信システムが簡易な装置で実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】

【図1】本発明の第1の実施形態で可視光通信システムの概念図。
【図2】本発明の第4の実施形態でモニタ受光部を分離した可視光通信システムの概念図。
【図3】本発明の第5の実施形態で反射鏡が曲面である可視光通信システムの概念図。
【発明を実施するための形態】
【0010】

(第1の実施形態)

第1の実施形態として図1を用いて説明する。

送信器1は、LEDを光源とし可視光101を出射する発光部11と、該可視光101の内後述する反射鏡22からの反射光101bを受光するモニタ受光部12と、送信したい情報(以下元データと呼ぶ)を可視光通信用に変調し該発光部11を駆動させ且つ該モニタ受光部12からの信号を処理する発光処理部13により構成される。ここで、該発光処理部13は、該発光部11を駆動させる機能は可視光通信の分野における公知技術を準用でき、該モニタ受光部12からの信号を処理する部分が付加機能であるがこの詳細は後述する。

受信器2は、受光部21と、貫通孔を有しこの貫通孔が該受光部21の直上で且つ反射面を該発光部11の方向に向け配置された該反射鏡22と、該受光部21からの信号を処理する受光処理部23により構成される。ここで、該受光処理部23には受信した信号を復調し画像や音声などを出力する機能を有するが、この部分は可視光通信の分野における公知技術を準用できる。
【0011】

以上構造の特徴を示したがこれの動作を順次説明する。

元データはデジタル信号として表されるが該発光処理部13からは可視光通信に適した変調をしたLED電流として出力され、該発光部11から可視光101として出射され、該発光部11の窓部14及び該受光部21の窓部24を透過し、該反射鏡22の貫通孔を通過した可視光101aが該受光部21に入射し、該受光処理部23にて復調し出力されることで通常の可視光通信が行われる。

一方該反射鏡22で反射した反射光101bは、上記101aとは反対のルートを通り該モニタ受光部12に入射し、電気信号として該発光処理部13にて復調される。

この復調されたデータと前記元データとを比較すれば、可視光通信が正常に行われているかどうかを診断することができる。(比較する信号は、該発光処理部13の出力(変調後の元データ)と該モニタ受光部12の出力(復調前の電気信号)でも良い。)

また、該発光部11の発光強度を例えば徐々に下げながら上記診断を繰り返すことにより、該発光部11の最低の発光強度を求めることができる。
【0012】

自動で診断を行うには、元データのとある一部分を一時記憶しておき、復調された該モニタ受光部12からのデータと比較することになるが、このデータ量や診断の頻度は可視光通信システムが使われる環境によって都度適切に設定する。

また、システム診断用パターンを作成しておき、更にこのシステム診断用パターンを送信し反射光を受信し比較するという診断プログラムを該発光処理部13に保存しておくと、自動診断時でも便利であるし、手動(例えば検査ボタン)での診断も可能となる。
【0013】

(第2の実施形態)

第1の実施形態ではシステムの診断に元データを用いビットエラーを検出する方法を説明したが、このためには該発光処理部13である程度の処理が必要であり、また完全なリアルタイムでの診断はできない。この対策として、該モニタ受光部12の受光強度を測定する方法もある。

該受信器2で判読できる該発光部11の最低の出射強度(つまりLED電流)を出射した時の該モニタ受光部12の受光強度を実験により予め求めておき、可視光通信時の該モニタ受光部12の受光強度がこの予め求めておいた受光強度を下回った場合を異常と判断する。また、該モニタ受光部12の受光強度が継続的に悪化し、近い将来異常となる様な傾向を検出した場合も異常と判断すれば、システム異常の予防も可能となる。

ここで、該モニタ受光部12の受光強度の測定は応答速度などの制約がないため、フォトダイオードなど受光素子の電流値(A)や、受光した信号のパルスの振幅や、輝度(例えばルクス;lx)など、光の強度が測れるものであれば受光原理は問わない。

また再現性良く診断するには上述のシステム診断用パターンを用いると、該発光部11の発光パターンが毎回一定に保てる(on/offが一定)ので安定した診断が可能となる。

この方法を用いると、診断の精度は第1の実施形態よりは劣るが、簡便に且つリアルタイムに可視光通信システムの診断が可能となる。
【0014】

(第3の実施形態)

以上第1及び第2の実施形態では、モニタ受光部12からの情報を基に、可視光通信システムを診断する方法を説明してが、これを用いると可視光通信をしながら発光部11の発光強度を適正に保つことが可能となる。

つまり、可視光通信時に該モニタ受光部12の出力の解析結果から、可視光通信システムの異常が判明した場合は、該モニタ受光部12出力をチェックしながら予め適正と設定しておいた状態になるまで該発光部11の量発光強度を徐々に上げ、結果として正常復帰すれば通常通りの可視光通信を続け、もし設定した最大LED電流を流しても正常復帰しない場合は警報を出すなど異常時処理を行う様に、発光処理部13にプログラムを入れておけば良い。(可視光通信システムでは、該窓部14、24の汚れなどの光路上の問題における異常発生が最も懸念される原因であるため、元データのビットエラーを検出する方法であっても、先ずは発光強度を上げて検査してみることが有効である。)

これにより、部屋の窓からの太陽光や、室内の照明のOn/Offや、煙草の煙などによる可視光の減衰や、LED劣化や、該受発光器の窓部(14、24)の汚れなどに自動で対応することができ、安定した可視光通信が確保される。

また、人の生活空間を考えたとき照度(該発光部11の発光強度)を暗くしたい場面もあるが、たとえ人が照度調整ツマミにより照度を調整しても、可視光通信時は予め設定した照度より暗くはならない様に発光処理部13にプログラムを入れておけば、可視光通信の適正な環境は確保される。
【0015】

(第4の実施形態)

第4の実施形態として図2を用いて説明する。

第1及び第2の実施形態では、モニタ受光部12は送信器1に内蔵された構造となっているが、該モニタ受光部12は独立させても良い。これにより該送信器1と該受信器2の相対的な位置関係(図2のx)の制約は大幅に軽減され、部屋の自由なレイアウトが可能となる。
【0016】

(第5の実施形態)

第5の実施形態として図3を用いて説明する。

図1及び図2では、反射鏡22は平面で説明をしたが、モニタ受光部12に集光する様に曲面を持たせても良い(図3の22')。これにより、該モニタ受光部12への集光効率が上がり外乱光の影響が少なくなる(S/N比の向上)や、該反射鏡22設置時に反射光の位置が視認しやすくなるなどの効果がある。

また、図には示さなかったが混信対策として、該受光部21、該モニタ受光部12ともに、受光したい可視光通信光のみが入射する様に遮蔽板などにより視野の調整をすると良い。
【0017】

以上本発明の特徴的な内容について説明したが、例えば送信データの入力や異常発生時の警報など可視光通信本来の機能は、可視光通信の分野における公知技術を準用できることから、可視光通信システムの製作時は勿論、既設の可視光通信システムへ付設する場合でも容易であるという利点もある。
【符号の説明】
【0018】

1:送信器

2:受信器

11:発光部

12:モニタ受光部

13:発光処理部

14:窓部

21:受光部

22:反射鏡(平板)

22':反射鏡(曲面)

23:受光処理部

24:窓部

101:LED可視光

101a:可視光通信に寄与するLED可視光

101b:反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】

可視光を光通信の媒体とする可視光通信システムにおいて、

受信器には、貫通孔を有しこの貫通孔が受光部の直上に位置する様に配置された反射鏡と、

送信器には、該反射鏡からの反射光を受け電気信号に変換するモニタ受光部を備えたことを特徴とする可視光通信システム。
【請求項2】

上記請求項1において

該発光部から出射された可視光の内、該反射鏡の貫通孔を通過した光は該受光部で受光し通常の可視光通信が行われ、該反射鏡により反射された反射光は該モニタ受光部で受光し、該送信器から送信した信号と該モニタ受光部で受信した信号とを比較することで、可視光通信が正しく作動しているかどうかを診断することを特徴とする可視光通信システム。
【請求項3】

上記請求項1において、

該発光部から出射された可視光の内、該反射鏡の貫通孔を通過した光は該受光部で受光し通常の可視光通信が行われ、該反射鏡により反射された反射光は該モニタ受光部で受光し、この受光強度から該発光部の発光強度が適正かどうかを診断することを特徴とする可視光通信システム。
【請求項4】

上記請求項2または請求項3において、

可視光通信時は該モニタ受光部の受光量を監視し、これを下に該発光部の発光強度を制御することにより、受光部の受光強度を絶えず適正に保つことを特徴とする可視光通信システム。
【請求項5】

上記請求項2または請求項3において、

人が可視光の照度を下げようとした場合、可視光通信時は予め設定した照度より暗くはならない様にインターロックされていることを特徴とする可視光通信システム。
【請求項6】

上記請求項1において、

該モニタ受光部が該送信器の筐体と分離して構成されていることを特徴とする可視光通信システム。
【請求項7】

上記請求項1において、

該反射鏡が曲面を含んで成ることを特徴とする可視光通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−100030(P2012−100030A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245459(P2010−245459)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(710008349)株式会社sky G laboratory (5)
【Fターム(参考)】